(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
列車に搭載された車上装置と地上装置との間の無線通信が、列車が車両基地の建屋に入庫した場合には不可能又は困難となるが、営業線走行中には無線通信可能に構成された在線管理システムであって、
前記車上装置は、
列車を構成する単位編成それぞれに搭載され、
当該単位編成のIDを記憶し、前記地上装置からの問合せに応答して当該単位編成のIDを含む列車情報を前記地上装置に送信し、
前記建屋から出庫した後、前記地上装置からの前記問合せがないと判断した場合に所定の非常停止制御を行う、
ように構成されており、
前記地上装置は、
前記建屋に入庫する列車がある場合に、当該列車の各単位編成のIDを入庫順にFILO(First-In-Last-Out)方式で記憶・管理し、
前記建屋から出庫する列車がある場合に、前記FILO方式で前記IDを順次読み出し、当該読み出しの順番に前記IDに基づく前記問合せを行って、当該列車を構成する各単位編成それぞれの前記車上装置から前記列車情報を取得し、
前記問合せに対して前記車上装置が応答せず、前記列車情報の取得に失敗した場合に所定の警報出力制御を行う、
ように構成された、
在線管理システム。
列車に搭載された車上装置と地上装置との間の無線通信が、列車が車両基地の建屋に入庫した場合には不可能又は困難となるが、営業線走行中には無線通信可能に構成された在線管理システムの前記地上装置であって、
前記車上装置は、列車を構成する単位編成それぞれに搭載され、当該単位編成のIDを記憶し、前記地上装置からの問合せに応答して当該単位編成のIDを含む列車情報を前記地上装置に送信し、前記建屋から出庫した後、前記地上装置からの前記問合せがないと判断した場合に所定の非常停止制御を行うように構成されており、
前記建屋に入庫する列車がある場合に、当該列車の各単位編成のIDを入庫順にFILO(First-In-Last-Out)方式で記憶・管理し、
前記建屋から出庫する列車がある場合に、前記FILO方式で前記IDを順次読み出し、当該読み出しの順番に前記IDに基づく前記問合せを行って、当該列車を構成する各単位編成それぞれの前記車上装置から前記列車情報を取得し、
前記問合せに対して前記車上装置が応答せず、前記列車情報の取得に失敗した場合に所定の警報出力制御を行う、
地上装置。
列車に搭載された車上装置と地上装置との間の無線通信が、列車が車両基地の建屋に入庫した場合には不可能又は困難となるが、営業線走行中には無線通信可能に構成された在線管理システムにおける列車管理方法であって、
前記車上装置は、列車を構成する単位編成それぞれに搭載され、当該単位編成のIDを記憶しており、
前記車上装置が、前記地上装置からの問合せに応答して当該単位編成のIDを含む列車情報を前記地上装置に送信することと、
前記地上装置が、前記建屋に入庫する列車がある場合に、当該列車の各単位編成のIDを入庫順にFILO(First-In-Last-Out)方式で記憶・管理することと、
前記地上装置が、前記建屋から出庫する列車がある場合に、前記FILO方式で前記IDを順次読み出し、当該読み出しの順番に前記IDに基づく前記問合せを行って、当該列車を構成する各単位編成それぞれの前記車上装置から前記列車情報を取得することと、
前記地上装置が、前記問合せに対して前記車上装置が応答せず、前記列車情報の取得に失敗した場合に所定の警報出力制御を行うことと、
前記車上装置が、前記建屋から出庫した後、前記地上装置からの前記問合せがないと判断した場合に所定の非常停止制御を行うことと、
を含む列車管理方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。また、理解を容易にするために単位編成を1両として図示しているが、単位編成の両数は何両でもよく、また、単位編成毎に両数が異なることとしてよい。
【0013】
図1は、本実施形態における在線管理システムの全体構成例を示す図である。
図1に示すように、在線管理システムは、所定線区の軌道1を走行する列車2に搭載された車上装置200と、車上装置200との間で無線通信を行う地上装置500とを含む。
図1において、向かって左方向を上り方(軌道1の起点側)とし、右方向を下り方とする。
【0014】
車上装置200は、列車2を構成する各単位編成20(20−1,2)に搭載される。ここで、軌道1を走行する列車2は、1つの単位編成で構成される列車(単位編成列車)と、複数の単位編成が連結されて併結運転している列車(併結運転列車)とがある。各単位編成には固有のID(単位編成ID)が割り当てられており、単位編成列車の場合は、その単位編成の単位編成IDが列車IDとされる。一方、併結運転列車の場合には、当該併結運転列車を構成する単位編成のうち、親装置とされる所定の車上装置200を搭載した単位編成の単位編成IDが列車IDとされる。具体的には、当該列車2を構成する最も上り方および下り方の単位編成のうち、車両基地30の軌道終端寄りの単位編成の車上装置200を親装置とする。
図1の例では、簡単のために、1車両で単位編成を構成することとし、列車2は、2つの単位編成20−1,2が連結された併結運転列車としている。
図1において、列車2の単位編成20−1,2のうち、車両基地30の軌道終端寄りの単位編成20−1の車上装置200が親装置200となる。以下、併結運転列車を構成する単位編成のうち、親装置を搭載した単位編成を適宜「親単位編成」といい、それ以外の単位編成を適宜「子単位編成」という。
【0015】
地上装置500は無線基地局51を備えており、所定線区に設けられる車両基地30の全域が無線通信制御領域70内となるように設置される。なお、地上装置500が備える無線基地局51は1台に限らず、2台以上としてもよい。1つの地上装置500が所掌する制御区間10を、地上装置500が備えるX台(X≧1)の無線基地局51による無線通信制御領域70でカバーできればよい。また、無線基地局51を設置する場合に限らず、軌道1に沿って敷設されたループアンテナや漏洩同軸ケーブル(LCX)を用いて無線通信制御領域70を形成してもよい。
【0016】
本実施形態の在線管理システムでは、一次局である地上装置500が、二次局である列車2(実際には車上装置200)とポーリング方式で無線通信を行う(ポーリング通信)。ポーリング通信は、一次局が二次局のリスト(ポーリングリスト)を用いて全ての二次局に対し順番に問合せを行い、この問合せに二次局が応答することで必要なデータ(送信データ)を送受する無線通信のことである。
【0017】
本実施形態では、地上装置500は、ポーリング通信が可能な列車2、すなわち、その無線通信制御領域70内に存在している列車2を管理対象としており、管理対象の列車2の列車IDを設定した列車リストを保持している。車両基地30に入場するために無線通信制御領域70内に進入した列車2がいればその列車IDが列車リストに設定され、車両基地30から出場した列車2が無線通信制御領域70から進出すると、その列車IDが列車リストから削除されるようになっている。そして、地上装置500は、列車リストをポーリングリストとして用いたポーリング通信によって、走行制御情報D13(
図2を参照)を含む地上情報を車上装置200に送信する。
【0018】
一方、車上装置200は、地上装置500からの自列車宛ての地上情報を受けて、自列車の列車IDや列車位置情報等を含む列車情報を返信する。詳細には、単位編成列車の場合はその単位編成の車上装置200、併結運転列車の場合は親装置200が、列車IDとされる自単位編成の単位編成ID(自単位編成ID)を宛先とする地上情報を自列車宛てとして受信し、列車情報の返信を行う。したがって、
図1に示すように列車2が併結運転列車の場合は、後述する建屋40(
図4を参照)からの出庫時は別にして、基本的に親装置(
図1の場合、親単位編成20−1の車上装置)200が代表して地上装置500とのポーリング通信を行う。また、本実施形態では、車上装置(併結運転列車の場合は親装置)200が計測している自単位編成の走行位置を自列車の走行位置(列車位置情報)として用いる。
【0019】
ここで、本実施形態の在線管理システムは、
図1に示すように、その無線通信制御領域70内に車両基地30を含む地上装置500と車上装置200とが無線通信を行うことで実現されるが、実際には、該当線区の営業線を含む軌道1の全域が何れかの無線基地局の無線通信制御領域内となるように、複数の地上装置が軌道1に沿って設置されている。そして、車上装置200は、管理主体の地上装置、すなわち、自列車の走行位置を無線通信制御領域に含む地上装置(以下、適宜「相手地上装置」ともいう)とポーリング通信を行って列車情報を送信するとともに、相手地上装置から受信した走行制御情報D13に基づき営業線走行に係る自列車の走行制御を行う。
【0020】
このポーリング通信は、所定の問合せ周期で繰り返し行われる。地上装置500は、列車情報を取得できれば当該列車情報に係る列車2の存在を確認でき、その列車位置情報D23(
図3を参照)によって当該列車2の位置を把握できる。問合せ周期は、例えば1秒毎であってもよいし、5秒毎等であってもよく、適宜設定される。
【0021】
図2は、地上情報のフォーマット例を示す図であり、
図3は、列車情報のフォーマット例を示す図である。
図2に示すように、地上情報は、当該地上情報の宛先列車IDD11と、当該地上情報の送信元地上装置IDD12と、送信データである走行制御情報D13等とを含む。走行制御情報D13には、宛先列車IDD11の列車2に対する各種運行指令情報や、当該列車2に対して許容される軌道1上の進入範囲(進入許容範囲)等が設定される。
【0022】
一方、
図3に示すように、列車情報は、当該列車情報の宛先地上装置IDD21と、当該列車情報の送信元列車IDD22と、送信データである列車位置情報(位置情報)D23、併結フラグD24、軌道終端寄り連結フラグD25、併結列車情報D26、入庫留置線番号D27、建屋入庫通知フラグD28等とを含む。
【0023】
宛先地上装置IDD21には、地上装置500に割り当てられた地上装置IDが設定される。
【0024】
送信元列車IDD22は、当該列車情報に係る列車2の列車IDとされる単位編成IDの情報であり、当該列車情報を送信した車上装置(併結運転列車の場合は親装置)200において車上記憶部22(
図10を参照)に記憶されている自単位編成ID222が設定される。
【0025】
列車位置情報D23は、当該列車情報に係る列車2において車上装置(併結運転列車の場合は親装置)200が計測している走行位置の情報である。
【0026】
併結フラグD24には、当該列車情報に係る列車2が併結運転列車である場合は「ON」、単位編成列車であれば「OFF」が設定される。
【0027】
軌道終端寄り連結フラグD25には、当該列車情報を送信した車上装置200が搭載された単位編成に対して、車両基地30の軌道終端寄りに別の単位編成が連結されている場合に「ON」が設定される。それ以外の場合は「OFF」が設定される。
【0028】
ここで、車上装置200は、自単位編成に対する他の単位編成の連結検知を随時行うことができる。すなわち、他の単位編成との連結は、自単位編成の上り方末端車両又は下り方末端車両に設けられた連結器29(
図10を参照)を介して行われ、連結が完了すると、連結信号が連結器29から車上装置200に出力されるようになっている。逆に、連結されていた単位編成が切り離されると、連結信号の入力が途切れる。車上装置200は、連結信号の入力があれば併結フラグD24を「ON」、入力がなければ「OFF」にする。そして、車両基地30の軌道終端寄りの末端車両からの連結信号の入力があれば軌道終端寄り連結フラグD25を「ON」、入力がなければ「OFF」にする。
【0029】
併結列車情報D26は、当該列車情報に係る列車2が併結運転列車の場合(併結フラグD24が「ON」の場合)に設定され、子単位編成の単位編成IDを親単位編成に対する連結順(親単位編成に近い順)に並べることで当該連結順を示す。以下例示する2つの単位編成を連結した併結運転列車の場合は子単位編成は1つであるため、その単位編成IDが併結列車情報D26に設定される。一方、3つ以上の単位編成が連結された併結運転列車の場合は、併結列車情報D26には、2つ以上の子単位編成の単位編成IDが、親単位編成に対する連結順に並べて設定される。例えば、単位編成ID「22」の親単位編成に対して単位編成ID「54」の子単位編成が連結され、この子単位編成に対して単位編成ID「58」の子単位編成が連結された構成の併結運転列車の場合、併結列車情報D26は「54,58」とされる。
【0030】
入庫留置線番号D27は、当該列車情報に係る列車2が入線する或いは入線している留置線50(
図4を参照)を示し、当該列車2の建屋40への入庫に先立ち、後述する地上子63から取得した留置線番号が設定される。
【0031】
建屋入庫通知フラグD28は、地上装置500に対し、建屋40への入庫を通知するための情報であり、例えば地上子63から留置線番号を取得したタイミングで「ON」が設定される。
【0032】
なお、地上情報および列車情報には、図示したデータの他にも、例えば送信時刻や誤り検出用のCRC(Cyclic Redundancy Checking)符号等、必要なデータが適宜設定される。送信データとして地上情報や列車情報に含めるデータについても、適宜設定される。例えば列車情報には、当該列車2の走行速度や列車長、列車占有範囲の情報等を適宜含めることができる。
【0033】
[原理]
図4は、車両基地30を模式的に示す図である。車両基地30には、車両を収容して点検等をしたり、或いは車両の連結や分割といった列車の編成作業を行う等のために列車2が随時入場し、建屋40内に留置される。そのために、車両基地30の構内には、入場した列車2を建屋40内へと導く複数本(
図4では留置線番号=N1,N2,N3の3本)の留置線群が敷設されている。ここで、各留置線50(50−1,2,3)には、留置線50の長さ(或いは建屋40の面積)と、単位編成の長さ(単位編成長)とに基づき留置可能な単位編成20の数が予め定められている。本実施形態では、説明の簡明化のため、単位編成長を固定とし、各留置線50に留置できる単位編成20を2つとするが、留置可能な単位編成の数が3つ以上であっても処理は同じである。また、単位編成長は可変であってもよく、その場合は、すでに留置されている列車2の単位編成数や個々の単位編成長等をもとに留置可能な長さの列車2を選択的に入庫させる構成とすることができる。
【0034】
ここで、
図4中において単位編成20に付している数字は、括弧なしのものがその単位編成IDを示し、括弧付きのものは、親装置において保持される上記併結列車情報D26の内容を示している。例えば、併結運転列車である留置線50−3の列車2の場合、括弧付きの数字が付されている軌道終端寄り(
図4に向かって右寄り)の単位編成20が親単位編成であり、前述のとおり、その単位編成ID「76」が列車IDとしても用いられる。
【0035】
各留置線50の出入口となる軌道1の分岐部分には、入換信号機61と、地上子63とが留置線50毎に設置されている。また、建屋40の出入口付近には、留置線50毎に入換標識65が設置されている。
【0036】
入換信号機61は、留置線50側から分岐点を超えた先の営業線への列車2の進行/停止を現示する。なお、この入換信号機61は、分岐部分以外にも適所に設置される。
【0037】
地上子63は、該当する留置線50に出入りする列車2に向けて送信するために、対応する留置線番号や、予め定められている当該地上子63の設置位置(絶対位置)等を保持している。建屋40に入庫する列車2の車上装置(併結運転列車の場合は親装置)200は、地上子63の近接位置を通行したときに当該地上子63と近距離無線通信を行い、入線する留置線番号を当該地上子63から取得する。また、併せて地上子63の設置位置を取得し、適宜自列車の走行位置を補正するために用いる。列車2が建屋40から出庫し、分岐点を超えるときも同様に、適宜位置補正が行われる。
【0038】
入換標識65は、建屋40内において該当する留置線50に留置されている列車2の建屋40からの出庫可/出庫不可を表示する。入換標識65の表示は、後述する、建屋40からの列車2の出庫時を除いて「出庫不可」とされる。
【0039】
列車2が建屋40に入庫すると、車上装置200と地上装置500との間の無線通信が不可能又は困難な状態となる。地上装置500の無線基地局51は建屋40外に設置されており、建屋40内からでは無線基地局51との間で電波が届かない、或いは届き難い状態となるためである。また、建屋40内では点検等のために列車2の車両電源が遮断される場合があり、その場合に通信不可能となることも勿論ある。以下、地上装置500と、建屋40内の車上装置200との間の無線通信は不可能であることとする。
【0040】
そこで、地上装置500は、建屋40への列車2の入庫および出庫を管理する。
図5は、建屋40への列車2の出入庫管理の概要を説明する図である。
図5に示すように、地上装置500は、無線通信の対象としている(上記したポーリング通信を行う)管理対象の列車2の列車IDを設定した列車リストL1とは別に、建屋40に対する列車2の入庫及び出庫を留置線50毎に管理するための留置リストL2(L2−1,2,3)を保持している。この留置リストL2を用い、地上装置500は、建屋40へと入庫する列車2を構成する単位編成の単位編成IDを、単位編成の入庫順にFILO(First-In-Last-Out)方式で記憶・管理する。なお、
図5に示す列車リストL1および留置リストL2は、
図4の在線状況をもとにしている。
【0041】
例えば、
図4において、列車ID(単位編成IDでもある)「13」の列車(単位編成列車)2が留置線50−1から建屋40に入庫したとする。この場合は、
図5に示すように、留置リストL2−1の最後尾に「13」が追加され、併せて列車リストL1から「13」が削除される(
図5の(A))。列車リストL1から「13」を削除するのは、「13」の列車2が建屋40に入庫したことで無線通信が不可能となるためであり、これにより地上装置500は、「13」の列車2を管理対象から外す。
【0042】
また別のタイミングで、留置線50−2の「71」の列車(単位編成列車)2が建屋40から出庫する場合は、留置リストL2−2の最後尾から「71」が読み出され、「71」が列車リストL1に設定される。またその際、留置リストL2−2の「71」は削除される(
図5の(B))。
【0043】
詳細に説明する。本実施形態では、各留置線50に留置可能な単位編成は2つであるから、留置線50毎の建屋40内への列車2の入庫パターンは、
図4の留置線50−1のように単位編成列車が1本入庫する場合と、留置線50−2のように単位編成列車が2本入庫する場合と、留置線50−3のように2つの単位編成20で構成される併結運転列車が1本入庫する場合の3通りとなる。
【0044】
一方で、建屋40内では、併結運転列車の分割作業や、単位編成列車の連結作業が適宜実施される。そのため、各留置線50からの列車2の出庫パターンには、留置線50−1において入庫時の単位編成列車のまま列車2が出庫する場合、留置線50−2において入庫時の単位編成列車のまま入庫順とは逆の順番で2本の列車2が出庫する場合、および留置線50−3において入庫時の併結運転列車のまま列車2が出庫する場合の他に、留置線50−2において各単位編成列車が連結され、併結運転列車として出庫する場合と、留置線50−3において併結運転列車が分割され、2本の単位編成列車となって、該当する各単位編成の入庫順とは逆の順番で出庫する場合とがある。
【0045】
先ず、建屋40に単位編成列車である列車2が入庫し、建屋40内で連結又は分割されることなくそのまま出庫する場合の入出庫管理の詳細な流れについて、
図6を参照して説明する。
図6の最上段に示すように、留置線50−2から建屋40に「83」の列車2が入庫したとする。地上装置500は、「83」を送信元列車IDD22とする列車情報の建屋入庫通知フラグD28が「ON」となったことによって、当該列車2の建屋40への入庫を把握することができる。この場合は、地上装置500は、留置リストL2−2に「83」を追加する。すでに留置リストL2−2に設定されている単位編成IDがある場合は、最後尾に追加する。また、列車リストL1から「83」を削除する。
【0046】
同様に、続く「71」の列車2の入庫にあたっては、留置リストL2−2の最後尾に「71」を追加し、列車リストL1からは「71」を削除する。
【0047】
次に、以上のように2台の列車2が入庫した留置線50−2(
図6の3段目)から列車2が出庫する手順を説明する。地上装置500において係員が留置線50(
図6の例では留置線50−2)を指定した列車出発操作を入力すると、地上装置500は、進路構成の後、列車出発操作で指定された留置線50−2の入換標識65を制御して、その表示を「出庫可」に変更する。
【0048】
すると、地上装置500は、留置リストL2−2の最後尾から「71」を読み出し削除するとともに、列車リストL1に「71」を設定して、ポーリング通信を行う管理対象に「71」の列車2を加える(
図6の4段目)。これにより地上装置500は、ポーリング通信に際して「71」を宛先列車IDD11とする地上情報を送信するようになる。
【0049】
建屋40内では、留置線50−2に留置されている建屋40の出入口寄りの列車2(
図6の例では「71」の列車2)の乗務員が入換標識65の表示を確認し、「出庫可」となったことを受けて当該列車2を出発させる。これにより、「71」の列車2が建屋40から出庫する。
【0050】
列車2が建屋40から出庫すると、その車上装置200は、前述のように地上装置500から送信される地上情報を受信できるようになる。そして、地上情報を受信したならば、列車情報を返信する。「71」の列車2は単位編成列車であるから、当該列車情報の併結フラグD24は「OFF」である。一方、地上装置500は、取得した列車情報の列車位置情報によって「71」の列車2の位置を把握する。その後列車2は、入換信号機61の手前で停車する。
【0051】
さて、地上装置500が「71」の列車2を管理対象に加えて地上情報の送信を開始したとしても、「71」の列車2の車上装置200に何らかの異常が発生しており無線通信が不能(無線通信異常)となっている場合、地上装置500は、列車情報を取得できないままである。逆に、地上装置500側が無線通信異常の場合、「71」の列車2の車上装置200は、建屋40外へ出ても地上情報を受信できないままである。そこで、地上装置500は、列車出発操作の入力を受けて「71」の列車2を管理対象としてから予め定められる所定時間が経過しても当該列車2が問合せに対して返信せず、正常通信がなされない場合、すなわち、列車情報の取得に失敗した場合は、出庫が適正でないとして所定の警報出力制御を行う。一方、車上装置200側では、建屋40から出庫した後、地上子63を通過するまでの間に地上装置500との間でポーリング通信がない場合に、地上装置500からの問合せがないと判断して所定の非常停止制御を行う。
【0052】
また、地上装置500と出庫した列車2との間で無線通信が正常に行われない場合には、上記無線通信異常の場合の他にも、建屋40からの列車2の出庫順が適正でない場合がある。例えば、
図6の1〜2段目の順に列車2が入庫したにもかかわらず、「71」の列車2が出庫することなく「83」の列車2が出庫した場合や、「71」でも「83」でもない別の列車2が出庫した場合である。本実施形態では、地上装置500は、留置リストL2−2の最後尾から単位編成IDを読み出し、これを列車IDとして列車リストL1に追加することで該当する列車2に対する地上情報の送信を行うため、入庫順の逆順に従わない順番で列車2が出庫すると、出庫した列車2の車上装置200は地上情報を受け取れず、列車情報の返信は不可能である。したがって、上記無線通信異常の場合と同様にポーリング通信は正常に行われないことから、地上装置500は、無線通信異常の場合と同様に、出庫が適正でないとして警報出力制御を行う。また、車上装置200は、地上装置500からの問合せがないと判断して非常停止制御を行う。
【0053】
このように、単位編成列車が建屋40に入庫し、単位編成列車のままで出庫する場合は、その出庫順がその入庫順の逆順に従っており、出庫時にポーリング通信が正常に行われたのであれば、その後の入換信号機61の現示が「進行」となったタイミングで営業線への列車2の進入が許可される。ポーリング通信が正常に行われなければ、入換信号機61の現示は「停止」のままであり、営業線への列車2の進入は許可されない。
【0054】
次に、建屋40内で2本の単位編成列車が連結され、その後出庫する場合の入出庫管理の詳細な流れについて、
図7を参照して説明する。入庫時の手順は
図6と同様である。
図7の例では、留置線50−2から入庫した2台の列車2は、建屋40内での連結作業によって併結運転列車とされる(1〜2段目)。
【0055】
続いて出庫時であるが、基本的に手順は
図6の場合と同じである。地上装置500は、留置線50−2に対する列車出発操作に応じてその入換標識65の表示を「出庫可」に変更し、留置リストL2−2の最後尾から「71」を読み出し削除するとともに、列車リストL1に「71」を設定する(
図7の3段目)。
【0056】
一方、建屋40からは、列車(併結運転列車)2が出庫する。先に建屋40外へと出るのは単位編成20−4であり、その車上装置200は、前述のように地上装置500から送信される地上情報を受信できるようになる。単位編成20−4の車上装置200は、地上情報を受信したならば、列車情報を返信する。「71」の列車2は併結運転列車であるから、返信される列車情報の併結フラグD24は「ON」である。
【0057】
ここで、併結フラグD24が「ON」である列車情報を取得した場合は、軌道終端寄り連結フラグD25を参照する。そして、軌道終端寄り連結フラグD25が「ON」の場合は、地上装置500は、再度留置リストL2−2の読み出しおよび削除と列車リストL1の設定を行う。ここでは、留置リストL2−2の最後尾から「83」を読み出し削除するとともに、列車リストL1に「83」を設定する(
図7の4段目)。そして、列車2がさらに走行を続けることで単位編成20−3の車上装置200が建屋40外へと出ると、当該車上装置200は、地上情報を受信し列車情報を返信する。
【0058】
なお、この結果、単位編成20−3の車上装置200から地上装置500が取得する列車情報の併結フラグD24は「ON」であるが、軌道終端寄り連結フラグD25は「OFF」である。単位編成20−3に対しては、車両基地30の軌道終端寄りとは反対側に単位編成20−4が連結されており、車両基地30の軌道終端寄りには他の単位編成は連結されていないためである。軌道終端寄り連結フラグD25が「OFF」の場合は、列車(併結運転列車)2の全体が建屋40外へと出たと判断し、後段の処理に移る。なお、軌道終端寄り連結フラグD25が「ON」の場合は、地上装置500は、さらに留置リストL2−2の読み出しおよび削除と列車リストL1の設定を行うこととなる。
【0059】
そして、地上装置500は、以上のようにして列車2の全体が建屋40の外に出て、且つ全ての単位編成20−3,4の車上装置200から列車情報を取得できたならば、親装置の特定を行う。上記したように、親装置は親単位編成に搭載され、車両基地の軌道終端寄りの単位編成20(
図7では単位編成20−3)が親単位編成である。したがって、親装置は、当該列車2の出庫において必ず最後に建屋40から出庫する。本実施形態では、地上装置500は、前述の併結フラグD24が「ON」であるが、軌道終端寄り連結フラグD25が「OFF」である列車情報の送信元列車IDを親単位編成のものと特定し、その車上装置200を親装置とする。
【0060】
親装置200を特定したならば、地上装置500はそれ以前に子単位編成の車上装置200から受けた列車情報の送信元列車ID(当該子単位編成の単位編成IDを示す)を受信順と逆順に並べ、併結列車情報を生成する。そして、生成した併結列車情報を特定した親装置200に送信する。また、子単位編成の単位編成IDを列車リストL1から削除し、親単位編成の単位編成IDのみを残して列車リストL1を更新する(
図7の5段目)。
【0061】
次に、建屋40内で併結運転列車が2本の単位編成列車に分割され、その後出庫する場合の入出庫管理の詳細な流れについて、
図8を参照して説明する。
図8の最上段に示すように、留置線50−2から建屋40に「83」の列車(併結運転列車)2が入庫したとする。当該列車2の入庫は、「83」を送信元列車IDD22とする列車情報の建屋入庫通知フラグD28によって把握できる。また、その併結フラグD24は「ON」であることから、地上装置500は、当該列車2が併結運転列車であることを把握できる。加えて、地上装置500は、併結列車情報D26によって、子単位編成の単位編成IDおよびその親単位編成に対する連結順を把握することができる。
【0062】
この場合は、地上装置500は、留置リストL2−2の最後尾に「83」を追加するとともに、併結列車情報D26の「71」を留置リストL2−2に続けて追加する。なお、
図8の最上段では、列車リストL1において、「83」とともに、設定されていないはずの「71」を記しているが、これは理解を容易にするためであり、実際には、列車リストL1には「71」は格納されていない。併結列車情報D26に複数の単位編成IDが並べて設定されている場合には、各単位編成IDをその並び順に留置リストL2−2の最後尾から追加する。入庫の後、建屋40内の分割作業によって
図8の3段目に示すように単位編成列車とされた後の各列車2の出庫の手順は、
図6と同様である。
【0063】
以上説明した建屋40への列車2の入出庫の管理によれば、建屋40に入庫する列車2がいるときには、当該列車2が単位編成列車なのか併結運転列車なのかにかかわらず、入線する留置線50毎に単位編成の入庫順を記憶しておくことができる。一方、建屋40から出庫する列車2があるときは、その単位編成の出庫順を監視することで、建屋40からの列車2の出庫が適正か否かを正しく判断することが可能となる。また、建屋40内で単位編成の連結や分割が行われた場合であっても、留置リストL2や列車リストL1を手動で編集する必要がなく、入力ミスの心配もない。
【0064】
[機能構成]
1.地上装置
図9は、地上装置500の機能構成例を示すブロック図である。
図9に示すように、地上装置500は、軌道1の近傍適所に設置された無線基地局51と、地上制御部52と、操作部53と、表示部54と、音出力部55と、地上通信部56と、地上記憶部57とを備えた一種のコンピュータ制御装置である。
【0065】
地上制御部52は、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の演算装置や演算回路を有して構成され、地上記憶部57に記憶されたプログラムやデータ、車上装置200(列車2)や他の地上装置から受信したデータ等をもとに地上装置500を構成する各部への指示やデータの転送を行って、地上装置500の動作を統括的に制御する。この地上制御部52は、在線検知処理部521と、入庫管理部522と、出庫管理部524とを含む。地上制御部52が有する各機能部は、個別の演算回路で実現することとしてもよいし、演算回路がソフトウェア的な演算処理で個別に実現することとしてもよい。
【0066】
在線検知処理部521は、列車リスト573を用い、所定の問合せ周期で管理対象の列車2とポーリング通信を行って、当該列車2の在線(位置)を検知する。
【0067】
入庫管理部522は、建屋40への列車2の入庫管理に係る処理を行う。具体的には、建屋40への列車2の入庫にあたり、その入線する留置線50の留置リスト574の最後尾に、当該列車2を構成する単位編成の単位編成IDを建屋40への入庫順に追加する。また、追加した単位編成IDを、列車リスト573から削除する。
【0068】
出庫管理部524は、建屋40からの列車2の出庫管理に係る処理を行う。この出庫管理部524は、入換標識制御部525と、出庫列車登録部526と、併結列車情報生成部527と、警報出力制御部528とを備える。
【0069】
入換標識制御部525は、建屋40の出入口付近において留置線50毎に設置された入換標識65を制御する。この入換標識制御部525は、操作部53により入力された列車出発操作を受けて、当該列車出発操作で指定された留置線50の入換標識65の表示を「出庫可」に変更する。
【0070】
出庫列車登録部526は、列車出発操作で指定された留置線50の留置リスト574から最後に登録されている単位編成IDを読み出して削除するとともに、当該単位編成IDを列車リスト573に設定する。当該列車2が併結運転列車の場合は、当該列車2を構成する各単位編成についてこれを繰り返す。また、当該列車2が併結運転列車であり、当該列車2を構成する全ての単位編成の車上装置200から列車情報を取得した場合には、親単位編成の単位編成IDのみを残して子単位編成の単位編成IDを列車リスト573から削除する。
【0071】
併結列車情報生成部527は、出庫列車登録部526が列車リスト573から削除した子単位編成の単位編成IDを、その親単位編成に対する連結順に並べて併結列車情報を生成する。そして、生成した併結列車情報を、親単位編成の車上装置(すなわち親装置)200に送信する。
【0072】
警報出力制御部528は、建屋40からの列車2の出庫が適正でない場合、具体的には、当該列車2を構成する単位編成に搭載された車上装置200からの列車情報の取得に失敗した場合に、その旨の警報出力制御を行って係員に報知する。この警報出力制御は、出庫異常の旨の警報メッセージを表示部54に表示させる処理や、その旨の警報音を音出力部55から音出力させる処理等を含む。
【0073】
操作部53は、ボタンスイッチ、レバースイッチ、ダイヤルスイッチ等の各種スイッチやタッチパネル等の入力装置によって実現されるものであり、列車出発操作等の係員による各種操作入力を受け付け、操作入力に応じた操作信号を地上制御部52に出力する。
【0074】
表示部54は、LCDやELディスプレイ等の表示装置によって実現されるものであり、地上制御部52から入力される表示信号をもとに各種画面を表示する。
【0075】
音出力部55は、地上制御部52から出力される音信号に基づく音を放音する装置であり、スピーカーである。
【0076】
地上通信部56は、例えば無線通信モジュールやルータ、モデム、TA、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等で実現される有線或いは無線の通信装置であり、外部装置との間で通信を行う。
【0077】
地上記憶部57は、ICメモリやハードディスク、光学ディスク等の記憶媒体により実現されるものである。この地上記憶部57には、地上装置500を動作させ、地上装置500が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、当該プログラムの実行中に使用されるデータ等が記憶される。本実施形態では、地上記憶部57には、地上側プログラム571と、自装置ID572と、列車リストデータ(列車リスト)573と、留置リストデータ(留置リスト)574と、管理対象列車情報575とが記憶される。
【0078】
地上制御部52は、地上記憶部57から地上側プログラム571を読み出して実行することにより、在線検知処理部521や入庫管理部522、出庫管理部524等の機能を実現する。自装置ID572には、当該地上装置500の地上装置IDが設定される。
【0079】
列車リスト573には、管理対象の列車2の列車IDが設定される。留置リスト574は、留置線番号毎に用意される。各留置リスト574には、該当する留置線50から建屋40に入庫し、まだ出庫していない単位編成の単位編成IDがその入庫順に設定される。
【0080】
管理対象列車情報575は、ポーリング通信の結果把握した管理対象の列車2の走行位置や走行速度等を記憶する。例えば、管理対象列車情報575は、管理対象の列車2の列車ID毎に用意され、前回のポーリング通信までに該当する列車2から受信(取得)した列車情報の受信履歴として設定される。
【0081】
2.車上装置
図10は、車上装置200の機能構成例を示すブロック図である。
図10に示すように、車上装置200は、車上制御部21と、車上記憶部22とを備えて構成される一種のコンピュータ制御装置であり、入力装置23や表示装置24、音出力装置25、車上無線機26、ブレーキ機構(制動装置)27、自単位編成を構成する各車両の連結器29等と接続されている。
【0082】
車上制御部21は、例えばCPU、FPGA等の演算装置や演算回路を有して構成され、車上記憶部22に記憶されたプログラムやデータ、地上装置500から受信したデータ等をもとに車上装置200を構成する各部への指示やデータの転送を行って、車上装置200の動作を統括的に制御する。この車上制御部21は、走行情報計測部211と、地上間データ送受処理部212と、走行制御部213と、入庫時通知処理部214と、出庫時処理部215と、非常停止制御部216とを含む。当該車上装置200を搭載した単位編成が単位編成列車として運転している場合は、全ての機能部211〜216が処理を行う。一方、その単位編成が併結運転列車を構成しているときには、当該車上装置200が親装置となる場合、すなわち、当該併結運転列車を構成する単位編成のうちの車両基地30の軌道終端寄りの単位編成に搭載された車上装置200である場合は、全ての機能部211〜216が処理を行う。これに対し、軌道終端寄りの単位編成以外の単位編成に搭載された車上装置200である場合は、当該併結運転列車が建屋40から出庫する場合のみ、地上間データ送受処理部212および出庫時処理部215が処理を行う。車上制御部21が有する各機能部は、個別の演算回路で実現することとしてもよいし、演算回路がソフトウェア的な演算処理で個別に実現することとしてもよい。
【0083】
走行情報計測部211は、車軸の回転数に応じた検出信号を出力する速度発電機の当該検出信号に基づいて車軸の回転数を判断して、自列車の走行位置(キロ程で表される走行距離)および走行速度を随時計測する。また、速度発電機の検出信号に基づく計測に置き換えて、或いは、速度発電機の検出信号に基づく計測と併用して、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムによる計測値を用いて、自列車の走行位置や走行速度を計測することとしてもよい。
【0084】
地上間データ送受処理部212は、営業線走行中のポーリング通信により地上装置500が送信した地上情報であって、宛先列車IDが自単位編成ID222である地上情報を車上無線機26を介して受信する制御を行う。そして、受信した場合に、その送信元地上装置IDD12を宛先地上装置ID、自単位編成ID222を送信元列車IDとして送信データ224を含めた列車情報を生成し、車上無線機26を介して送信する制御を行う。
【0085】
走行制御部213は、地上装置500の他、相手地上装置から受信した進入許容範囲等の走行制御情報に従って、自列車の走行制御を行う。走行制御自体は公知技術を用いて実現でき、例えば、進入許容範囲に応じた停止位置で停止する速度照査パターンに従って自列車の走行を制御する。
【0086】
入庫時通知処理部214は、建屋40への列車2の入庫に際し、列車情報の建屋入庫通知フラグを「ON」にすることで、自列車の建屋40への入庫を地上装置500に知らせる。
【0087】
出庫時処理部215は、建屋40からの列車2の出庫に際し、地上装置500とのポーリング通信の有無を監視して必要なデータの設定等を行う。
【0088】
非常停止制御部216は、建屋40からの列車2の出庫時に、その単位編成が地上子63の近接位置を通行したことで当該地上子63と行う近距離無線通信の有無を監視し、当該近距離無線通信が行われるまでの間に地上装置500とのポーリング通信がない場合に非常停止制御を行う。この非常停止制御は、実際にブレーキ機構27を駆動して非常ブレーキを作動させる制御の他、運転士に向けて非常停止を指示する旨のメッセージを表示装置24に表示させる処理や、その旨の報知音を音出力装置25から音出力させる処理等を含む。
【0089】
車上記憶部22は、ICメモリやハードディスク、光学ディスク等の記憶媒体により実現されるものである。この車上記憶部22には、車上装置200を動作させ、車上装置200が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、当該プログラムの実行中に使用されるデータ等が予め記憶され、或いは処理の都度一時的に記憶される。本実施形態では、車上記憶部22には、車上側プログラム221と、自単位編成ID222と、走行情報223と、送信データ224と、留置フラグ226とが記憶される。
【0090】
車上制御部21は、車上記憶部22から車上側プログラム221を読み出して実行することにより、走行情報計測部211や地上間データ送受処理部212、走行制御部213、入庫時通知処理部214、出庫時処理部215、非常停止制御部216等の機能を実現する。
【0091】
自単位編成ID222には、列車IDとされる自単位編成の単位編成IDが設定される。
【0092】
走行情報223は、自列車の走行位置および走行速度を含み、走行情報計測部211によって随時計測される最新の走行位置および走行速度で随時書き換えられる。
【0093】
送信データ224は、
図3に示したフォーマットに従って地上間データ送受処理部212が送信し、或いは出庫時処理部215が送信する列車情報に含める送信データを随時更新・記憶する。送信データ224は、例えば
図3に例示して説明したように、列車位置情報や併結フラグ、軌道終端寄り連結フラグ、併結列車情報、入庫留置線番号、建屋入庫通知フラグ等を含む。この送信データ224において、列車位置情報には、走行情報に設定される最新の走行位置が随時設定される。
【0094】
留置フラグ226は、当該列車情報に係る列車2が建屋40内にいるか否かを示すフラグ情報である。この留置フラグ226には、当該列車2の建屋40への入庫完了時に「ON」が設定され、建屋40からの出庫完了時に「OFF」が設定される。
【0095】
[処理の流れ]
以下、本実施形態における地上装置500および車上装置200の処理の流れを説明する。なお、以下説明する処理は、地上装置500において地上制御部52が地上記憶部57から地上側プログラム571を読み出して実行し、車上装置200において車上制御部21が車上記憶部22から車上側プログラム221を読み出して実行することによって実現される。
【0096】
先ず、地上装置500が行う全体処理の流れについて、
図11を参照して説明する。先ず、在線検知処理部521が、在線検知処理を開始する(ステップa1)。
図12は、在線検知処理およびこれに伴う車上装置200の列車情報返信処理の流れを示すフローチャートである。地上装置500は、所定の問合せ周期で
図12に示す在線検知処理を繰り返し行う。
【0097】
在線検知処理では、在線検知処理部521は、列車リスト573に設定されている全ての列車IDを順次処理対象IDとしてループAの処理を繰り返し、1回のポーリング通信を行う(ステップb1〜ステップb7)。すなわち、在線検知処理部521は、処理対象IDを宛先列車IDとし、自装置ID572を送信元地上装置IDとして、該当する列車2に送信する地上情報を生成する(ステップb3)。地上情報には、該当する列車2の走行制御情報を含めることができる。そして、在線検知処理部521は、生成した地上情報を無線基地局51を介して送信することで、処理対象IDの列車2に問合せを行う(ステップb5)。
【0098】
この問合せがあるたびに、車上装置200では、地上間データ送受処理部212が、列車情報返信処理を行う。すなわち、地上間データ送受処理部212は、地上装置500からの自列車宛ての地上情報を受信する制御を行う。そして、地上装置500によるポーリング通信があり、自列車宛ての地上情報を受信した場合は(ステップc1:YES)、地上間データ送受処理部212は、受信した地上情報の送信元地上装置IDを宛先地上装置ID、自単位編成ID222を送信元列車IDとし、送信データ224を含めて列車情報を生成する(ステップc3)。そして、地上間データ送受処理部212は、生成した列車情報を車上無線機26を介して送信する(ステップc5)。
【0099】
一方、地上装置500では、在線検知処理部521は、列車情報を受信する制御を行う(ステップb9)。全ての管理対象の列車2から列車情報を取得できれば、今回の問合せ周期にかかるポーリング通信を終える。
【0100】
図11に戻る。ステップa3で在線検知処理を開始した後は、ポーリング通信によって管理対象の列車2から取得した列車情報の建屋入庫通知フラグをもとに、建屋40に入庫する列車2を監視する。そして、建屋入庫通知フラグが「ON」の列車情報を取得したときは(ステップa3:YES)、入庫管理部522が、当該取得した列車情報に基づき入庫管理処理を行う(ステップa5)。
図13は、入庫管理処理の流れを示すフローチャートである。
【0101】
先ず、入庫管理部522は、その送信元列車IDとされている(当該列車2の列車IDである)単位編成IDを、その入庫留置線番号の留置リスト574の最後に追加する(ステップd1)。
【0102】
次に、入庫管理部522は、その併結フラグを判別する。そして、併結フラグが「OFF」であれば(ステップd3:NO)、ステップd7に移行する。一方、併結フラグが「ON」の場合には(ステップd3:YES)、入庫管理部522は、その併結列車情報D26に従い、子単位編成の単位編成IDを留置リスト574の最後にさらに追加する(ステップd5)。
【0103】
その後は、該当する列車2が実際に建屋40内に進入し、建屋40への入庫が完了したことでその車上装置(親装置)200との無線通信が途絶したときに(ステップd7:YES)、ステップd1で留置リスト574に追加した単位編成ID(当該列車2の列車ID)を列車リスト573から削除する(ステップd9)。建屋40への列車2の入庫完了は、例えば、ポーリング通信に対する当該列車2からの列車情報の返信が所定時間ないことで判断が可能である。
【0104】
図11に戻る。続くステップa7では、列車出発操作の入力を監視する。この列車出発操作は、留置線50を指定して行う建屋40からの列車2の出庫指示である。列車出発操作が入力された場合は(ステップa7:YES)、出庫管理部524が、出庫管理処理を実行する(ステップa9)。
図14は、出庫管理処理の流れを示すフローチャートである。
【0105】
先ず、入換標識制御部525が、列車出発操作で指定された留置線50の入換標識65の表示を「出庫可」に変更する(ステップe1)。そして、出庫列車登録部526が、当該指定された留置線50の留置リスト574に登録されている登録順が最後の単位編成IDを読み出して留置リスト574から削除する(登録抹消する)とともに(ステップe3)、当該読み出した単位編成IDを列車IDとして列車リスト573に設定する(ステップe5)。ここでの処理の結果、
図12の在線検知処理において該当する単位編成の車上装置200に地上情報が送信されることとなる。
【0106】
続いて、出庫管理部524が、当該車上装置200からの列車情報の取得の成否を判定する。ここでの処理は、ステップe5で列車リスト573に設定した単位編成IDを送信元列車IDとする列車情報を、
図12のステップb9において受信したか否かを判定することで行う。受信した場合は列車情報の取得成功として(ステップe7:YES)、ステップe13に移行する。受信しないまま(ステップe7:NO)、予め定められている所定時間が経過した場合は(ステップe9:YES)、警報出力制御部528が、警報出力制御を行う(ステップe11)。
【0107】
そして、ステップe13では、出庫管理部524は、当該受信した列車情報の併結フラグを判別し、併結フラグが「OFF」の場合は(ステップe13:NO)、出庫管理処理を終える。一方、併結フラグが「ON」の場合は(ステップe13:YES)、軌道終端寄り連結フラグを判別する。軌道終端寄り連結フラグが「ON」であれば(ステップe15:YES)、ステップe3に戻る。一方、軌道終端寄り連結フラグが「OFF」の場合は(ステップe15:NO)、ステップe17に移行する。
【0108】
そして、ステップe17では、出庫管理部524は、当該受信した列車情報の送信元列車IDを親単位編成のものと特定し、その車上装置200を親装置とする。この場合は、出庫列車登録部526が、親単位編成の単位編成IDのみを残し、当該列車2の出庫に際してそれ以前に受信した列車情報の送信元列車IDである子単位編成の単位編成IDを列車リスト573から削除する(ステップe19)。
【0109】
また、併結列車情報生成部527が、子単位編成の単位編成IDを、列車情報の受信順と逆順に並べて併結列車情報を生成する(ステップe21)。そして、併結列車情報生成部527は、親単位編成の単位編成IDを宛先とすることで生成した併結列車情報を親装置200に送信する(ステップe23)。
【0110】
図11に戻る。その後は、シャットダウン時等、本処理を終了するまでの間は(ステップa11:NO)、ステップa3に戻って上記した処理を繰り返す。
【0111】
次に、車上装置200が行う全体処理の流れについて、
図15を参照して説明する。車上装置200は、自列車の立上時に
図15に示す処理を開始する。すなわち、車両電源を投入して車上装置200が起動されると先ず、車上制御部21は、他の単位編成の連結の有無を判別し、連結されている場合は併結フラグを「ON」、連結されていなければ併結フラグを「OFF」として初期設定し、送信データ224を更新する(ステップf1)。また、車上制御部21は、併せて軌道終端寄り連結フラグを初期設定し、送信データ224を更新する(ステップf3)。他の単位編成が車両基地30の軌道終端寄りに連結されているのであれば軌道終端寄り連結フラグを「ON」、軌道終端寄りと反対側に連結されている場合、あるいは併結フラグが「OFF」の場合は、軌道終端寄り連結フラグを「OFF」とする。
【0112】
次に、地上間データ送受処理部212が、
図12に示した列車情報返信処理を開始する(ステップf5)。ここで開始した列車情報返信処理により受信した走行制御情報に従い、走行制御部213が自列車の走行を制御することとなる。ただし、自単位編成が子単位編成の場合には、走行制御は行わない。走行制御部213が走行制御を行うのは、送信データ224の併結フラグが「OFF」の場合(単位編成列車である場合)、又は併結フラグが「ON」であって且つ軌道終端寄り連結フラグが「OFF」の場合(自単位編成が親単位編成である場合)である。そして、実際に走行制御を開始するのは、運行開始の指示があった後や出庫の指示があった後であり、運転士の操作に従うものである。
【0113】
次に、車上制御部21が、留置フラグ226を参照し、自単位編成が建屋40内にいるのか建屋40外にいるのかを判別する。そして、留置フラグ226が「OFF」であり建屋40外にいる場合は(ステップf7:YES)、ステップf11に移行する。そして、その後の走行の過程で留置線50に入線し、地上子63の近接位置を通行した場合には(ステップf11:YES)、車上制御部21は、当該地上子63から取得した留置線番号を入庫留置線番号として送信データ224を更新する(ステップf13)。また、併せて建屋入庫通知フラグを「ON」として送信データ224を更新する(ステップf15)。
【0114】
その後は、自列車が実際に建屋40内に進入し、建屋40への入庫が完了したことで地上装置500との無線通信が途絶した際(ステップf17:YES)、車上制御部21は、建屋入庫通知フラグを「OFF」にリセットして送信データを更新するとともに(ステップf19)、留置フラグ226を「ON」に更新する(ステップf21)。自列車の建屋40への入庫(無線通信の途絶)は、地上装置500からのポーリングがないまま所定時間が経過したことで判断が可能である。
【0115】
次に、自列車が建屋40内の場合には(ステップf7:NO)、出庫時処理部215が、地上装置500とのポーリング通信の有無を監視する。そして、ポーリング通信があった場合、すなわち、ステップf5で開始した列車情報返信処理において
図12のステップc1で地上情報を受信した場合には(ステップf23:YES)、送信データ224の併結フラグおよび軌道終端寄り連結フラグを判定する。そして、併結フラグが「ON」であって且つ軌道終端寄り連結フラグが「OFF」の場合には(ステップf25:YES)、地上装置500から併結列車情報を受信するまで待機状態となる(ステップf27:NO)。自単位編成が親単位編成である場合(自装置が親装置200である場合)には、
図14のステップe23で地上装置500から併結列車情報が送信されるためである。そして、併結列車情報を受信した場合には(ステップf27:YES)、出庫時処理部215は、受信した併結列車情報を設定して送信データ224を更新する(ステップf29)。その後、出庫時処理部215は、留置フラグ226を「OFF」に更新し(ステップf31)、ステップf47に移行する。
【0116】
一方、地上装置500とのポーリング通信がないまま地上子63の近接位置を通行した場合には(ステップf39:YES)、送信データ224の併結フラグが「OFF」の場合、又は併結フラグが「ON」であって且つ軌道終端寄り連結フラグが「OFF」の場合は(ステップf41:YES)、非常停止制御部216が、非常停止制御を行う(ステップf43)。一方、併結フラグが「ON」であって軌道終端寄り連結フラグが「ON」の場合には(ステップf41:NO)、当該併結運転列車を構成する単位編成のうちの車両基地30の軌道終端寄りの単位編成に搭載された車上装置200に対し、その旨の通知を送信する(ステップf45)。ここでの通知は、双方の車上装置200が車上無線機26を介して無線通信を行うことで実現できる。
【0117】
また、当日の列車運行が終了した場合や、車両の点検のために電源を切る場合等、シャットダウンする場合は(ステップf47:YES)、処理を終える。
【0118】
以上説明したように、本実施形態によれば、地上装置500は、車両基地30の建屋40に列車2が入庫する際、当該列車2を構成する各単位編成に搭載された車上装置200の各々から各単位編成の単位編成IDを取得することができる。そして、入線する留置線50の留置リスト574に対し、取得した各単位編成IDをその建屋40への入庫順に設定することができる。一方、建屋40から列車2が出庫する際には、当該列車2を構成する各単位編成の車上装置200から当該車上装置200が建屋40外に進出したことで順次送信されてくるIDをもとに、各単位編成の建屋40からの出庫順を監視することができる。そして、出庫する単位編成の出庫順が、該当する留置線50の留置リスト574における単位編成IDの設定順が示す各単位編成の入庫順の逆順に従っているか否かによってその出庫の適否を判定することができる。結果、出庫が適正でないと判定した場合は、地上装置500においては係員に報知するための警報出力制御を行い、車上装置200においては非常停止制御を行って例えば非常ブレーキを作動させることができる。これによれば、建屋40への列車2の入庫および出庫を単位編成毎に管理することがで、確実且つ安全に列車管理を行うことができる。
【0119】
なお、上記した実施形態では、列車2を構成する単位編成のうちの車両基地30の軌道終端寄りの単位編成の車上装置200を親装置とした。これに対し、軌道終端寄りと反対寄り(車両基地30が上り方にあるのであれば、下り方寄り)の単位編成の車上装置200を親装置としてもよい。この場合には、地上装置500は、併結フラグが「ON」である併結運転列車が建屋40から出庫した際に最初に建屋40から出た単位編成を親装置として特定すればよい。