(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のドアにおいては、アルミ押出形材からなる上枠、下枠、左右の縦枠を枠組みしてドア枠を構成していた。このため、ドア枠部分を介して熱が流出し、断熱性能を低下させていた。特に、ドアにおいては、縦枠の長さ寸法が大きいため、縦枠を介した熱流出が大きかった。
このため、ドアの縦枠における熱流量を低減させて、断熱ドアの断熱性能をさらに向上させることが求められている。
【0005】
本発明の目的は、ドアの縦枠の熱流量を低減できて断熱性能を向上できる断熱ドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の断熱ドアは、上枠および左右の縦枠を備えるドア枠と、前記ドア枠に対して開閉可能に取り付けられる扉とを備え、前記扉は、室内外の熱流通を低減する断熱層が設けられた断熱扉であり、前記ドア枠の縦枠は、金属製の室外側部材と、中空部を備えて構成されて前記室外側部材に連結される樹脂製の室内側部材と、前記室内側部材に設けられた樹脂製の戸当り部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、金属製の室外側部材に樹脂製の室内側部材を連結して縦枠を構成したので、金属製の室外側部材が室内空間に露出することがない。特に、室内側部材は、中空部を備えているため、断熱性を向上でき、縦枠における室内空間から室外空間への熱流出量を低減でき、断熱性能を向上できる。
また、戸当り部材が金属製の室外側部材に取り付けられていると、戸当り部材を保持する金属部分から熱流出して断熱性能が低下するが、本発明では、戸当り部材を樹脂製の室内側部材に設けているので、戸当り部材を保持する部分からの熱流出を低減できて断熱性能を向上できる。
従って、扉を閉めて戸当り部材が扉内面に当接した状態では、扉の断熱層と、前記戸当り部材および室内側部材とによって、断熱ドアの室内面において連続する断熱ラインを形成できるため、熱流出を効果的に抑制でき、断熱性能を向上できる。
【0008】
本発明の断熱ドアにおいて、前記室内側部材の中空部内には、断熱材が配置されていることが好ましい。
室内側部材の中空部に断熱材を配置すれば、中空部が空気層の場合に比べて、室内側部材の断熱性能をさらに向上でき、縦枠の熱流量をより低減できてドアの断熱性能も向上できる。
さらに、室内側部材に中空部を形成しているので、この中空部への断熱材の配置の有無や、配置する断熱材の種類によって、縦枠の断熱性能を容易に調整できる。
【0009】
本発明の断熱ドアにおいて、前記扉は、4本の骨材からなる枠体と、前記枠体の室外面に配置された室外面材と、前記枠体の室内面に配置された室内面材と、前記室外面材および前記室内面材間に配置された断熱芯材と、前記枠体の外周側に配置されたエッジ材とを備え、前記各骨材は、樹脂製の樹脂骨材と、前記樹脂骨材の内周側に配置された金属製の補強材とを備え、前記補強材および前記エッジ材の金属部品は、前記室内面材から見込み方向に離れて配置され、前記断熱層は、前記室内面材の裏面に沿って形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、金属製の補強材やエッジ材を室内面材から見込み方向に離して配置することで、室内面材に沿って金属部品が存在しない領域を設けることができ、この領域に断熱層を形成できる。このため、扉の辺縁部に配置される補強材やエッジ材に熱伝導率の高い金属材を使用していても、これらの金属製の補強材やエッジ材は室内面材から離れて配置されるため、これらの部品が熱橋となることを防止でき、扉の断熱性能も向上できる。
【0011】
本発明の断熱ドアにおいて、前記樹脂骨材は、前記室外面材に密着する室外片部と、前記室内面材に密着する室内片部と、前記室外片部および室内片部間を連結する見込み片部とを備え、前記補強材は前記室内片部から室外側に離れた位置に配置され、前記補強材および前記室内片部間には断熱材が配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、樹脂骨材の室内片部と、金属製の補強材との間に断熱材を配置しているので、樹脂骨材の室内片部と、補強材との間を空気層とした場合に比べて、扉の断熱性能をさらに向上できる。
【0013】
本発明の断熱ドアにおいて、前記縦枠は、前記扉の見込み面に当接する樹脂製の気密材を備え、前記扉を閉めた状態では、前記戸当り部材および前記気密材で区画される空気層が形成されることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、縦枠と扉との隙間において、戸当り部材の室外側に気密材が配置され、これら戸当り部材および気密材の間に密閉空気層が形成されるため、戸当り部材が外気に直接晒されることを防止できる。このため、戸当り部材の熱損失を抑制でき、断熱性能を向上できる。
【0015】
本発明の断熱ドアにおいて、前記ドア枠の上枠は、金属製の室外側部材と、中空部を備えて構成されて前記室外側部材に連結される樹脂製の室内側部材と、前記室内側部材に設けられた樹脂製の戸当り部材とを備え、前記室内側部材の中空部には断熱材が配置されていることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、縦枠と同様に、中空部を備える室内側部材を金属製の室外側部材に連結しているので、熱伝導率の高い金属製の室外側部材が室内空間に露出せず、室内側部材の断熱性能も向上でき、室内空間から室外空間への熱流出量を低減でき、断熱性能を向上できる。
また、室内側部材の中空部に断熱材を配置しているので、中空部が空気層の場合に比べて、室内側部材の断熱性能をさらに向上できる。
さらに、戸当り部材を樹脂製の室内側部材に設けているので、戸当り部材を保持する部分からの熱流出を低減できて断熱性能を向上できる。
従って、扉を閉めて戸当り部材が扉内面に当接した状態では、扉の断熱層と、前記戸当り部材および室内側部材とによって、断熱ドアの上枠部分から扉に跨がって連続する断熱ラインを形成できるため、熱流出を効果的に抑制でき、断熱性能を向上できる。
【0017】
本発明の断熱ドアにおいて、前記上枠の室内側部材には、前記扉の上面側に突出するヒレ部が設けられ、前記扉を閉めた状態では、前記ヒレ部と、前記上枠の戸当り部材との間に空気層が形成されることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、上枠と扉上面との隙間において、戸当り部材の室外側にヒレ部が配置されて空気層が形成されるため、戸当り部材が外気に直接晒されることを抑制できる。このため、上枠における戸当り部材の熱損失を抑制でき、断熱性能を向上できる。
なお、下枠と扉下面との隙間にもヒレ部を配置して、戸当り部材の室外側に空気層を形成してもよい。この場合、下枠における戸当り部材の熱損失も抑制でき、断熱性能を向上できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、断熱ドアにおいて縦枠の熱流量を低減できて断熱性能を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1,2に、本発明の断熱ドアの第1実施形態である玄関ドア(以下、ドア1と略称)を示す。ドア1は、いわゆる片開きドアであり、建物の外壁開口部に固定されるドア枠2と、このドア枠2に開閉自在に支持される扉5とを備えて構成されている。
【0022】
[ドア枠の構成]
ドア枠2は、
図3,4にも示すように、上枠10、下枠20および左右の縦枠30,40を有する。なお、
図1の右側に配置される縦枠30が吊元側とされて丁番4が取り付けられ、
図1の左側に配置される縦枠40が戸先側とされている。
【0023】
上枠10は、
図5にも示すように、室外側部材11と、室内側部材13と、AT材(エアータイト材、気密材)としても機能する戸当り部材15と、水密材18とを備える。
室外側部材11は、アルミ押出形材からなる室外部材111および室内部材112を、ウレタン樹脂等の断熱部材113で連結して構成されたアルミ断熱形材で構成されている。
【0024】
室内側部材13は、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やPVC(ポリ塩化ビニル)などの樹脂製であり、室外側部材11に連結されている。本実施形態では、室内側部材13は、室外側部材11を介して躯体にねじ込まれるネジによって、室外側部材11に連結されている。これにより、室内側部材13は、扉5を閉めた際に室外側部材11において室内側に露出する面を被覆し、室外側部材11が室内空間に露出しないようにしている。
室内側部材13は、中空部(ホロー部)131と、戸当り部材15が装着される装着溝132と、ヒレ部133とを備える。中空部131は、室内側部材13において略矩形枠状に形成された部分で構成されている。この中空部131内には、フェノール樹脂やEPS(発泡ビーズ法ポリスチレン)等で構成される断熱材141が配置されている。
室内側部材13は、室内部材112および断熱部材113の下面全体を覆い、さらに室外部材111において断熱部材113に隣接する下面部分を覆っている。室内側部材13の室外側の端部には、斜め下方つまり扉5上面側に向かって、前記ヒレ部133が突出されている。
【0025】
戸当り部材15は、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やPVC(ポリ塩化ビニル)などの樹脂製であり、扉5を閉めた際に扉5の室内面に当接する。この際、扉5の上面と上枠10間の隙間部分には、前記ヒレ部133および戸当り部材15で空間が区画され、空気層16が形成される。この空気層16は、前記ヒレ部133が扉5上面から離れているため、完全に密閉された空間ではないが、ヒレ部133が設けられていることで、外気の流入が抑制された空気層とされている。
水密材18は、室外側部材11の室外側端部に設けられ、室外側部材11および扉5間の隙間への雨水の吹き込みを低減する。
【0026】
下枠20は、
図5にも示すように、室外側部材21と、カバー部材23と、AT材としても機能する戸当り部材25とを備える。下枠20は、モルタルで納まるため、熱の出入りが少ない。このため、室外側部材21は、室外側部材11のようにアルミ断熱形材で構成する必要が無いため、アルミ押出形材で構成されている。
室外側部材21には、前記カバー部材23が装着される溝部と、戸当り部材25が装着される溝部とが形成されている。
カバー部材23は、EPDMやPVCなどの樹脂製であり、室外側部材21において、戸当り部材25よりも室内側の露出面を被覆している。
戸当り部材25は、戸当り部材15と同一の部品であり、扉5を閉めた際に扉5の室内面に当接する。
したがって、下枠20の室外側部材21の室内露出面は、カバー部材23および戸当り部材25で被覆されている。
【0027】
なお、本実施形態では、下枠20および扉5の下面間の隙間部分において、戸当り部材25の室外側には、ヒレ部133のようなヒレ部材は設けられていない。そこで、扉5の下面から下枠20に向かって突出するヒレ部を形成し、ヒレ部および戸当り部材25間に空気層を形成してもよい。
【0028】
吊元側の縦枠30は、
図6にも示すように、室外側部材31と、室内側部材33と、AT材としても機能する戸当り部材35と、AT材37と、水密材38とを備える。
室外側部材31は、アルミ押出形材からなる室外部材311および室内部材312を、ウレタン樹脂等の断熱部材313で連結して構成されたアルミ断熱形材で構成されている。
【0029】
室内側部材33は、第1室内側部材331および第2室内側部材335の2つの室内側部材で構成されている。各室内側部材331,335は、EPDMやPVC等の樹脂部材で構成され、扉5を閉めた際に室外側部材31において室内側に露出する面を被覆している。
第1室内側部材331は、室内部材312の露出面を被覆するベース材であり、戸当り部材35が装着される装着溝332も形成されている。この第1室内側部材331は、
図4に示すように、室内部材312を介して躯体にねじ込まれるネジ333によって、室内部材312と共に躯体に固定されている。
第1室内側部材331に装着される戸当り部材35は、EPDMやPVCなどの樹脂製であり、
図6に示すように、扉5を閉めた際に扉5の室内面に当接する。
【0030】
第2室内側部材335は、前記ネジ333を被覆するものであり、第1室内側部材331に係合する2つの係合片336と、この係合片336に連結する略矩形枠状の中空部(ホロー部)337と、第1室内側部材331の装着溝332部分を被覆する被覆片338とを備えている。
第2室内側部材335において、前記2つの係合片336間と、中空部337とには、それぞれフェノール樹脂やEPS等を用いた断熱材341,342が配置されている。
【0031】
AT材37は、室外部材311および室内部材312に跨がって装着され、断熱部材313を覆っている。このAT材37は、扉5を閉めた際に、扉5において縦枠30に対向する見込み面(具体的には後述する樹脂エッジ材642)に当接する。
本実施形態では、縦枠30にAT材37および戸当り部材35を取り付けて、AT材を二重に配置したダブルエアタイト構造を採用している。すなわち、扉5を閉めた際に、戸当り部材35およびAT材37が扉5に当接すると、戸当り部材35およびAT材37間に密閉空気層39が形成される。
水密材38は、室外側部材31の室外側端部に設けられ、室外側部材31および扉5間の隙間への雨水の吹き込みを低減する。
【0032】
戸先側の縦枠40は、縦枠30と同様の構成を備える。すなわち、
図4に示すように、縦枠40は、室外側部材41と、室内側部材43と、戸当り部材45と、AT材47と、水密材48とを備える。
室外側部材41は、室外側部材31と同様に、アルミ押出形材からなる室外側部材および室内側部材を、ウレタン樹脂等の断熱部材で連結して構成されたアルミ断熱形材である。
室内側部材43は、室内側部材33と同様に、第1室内側部材431および第2室内側部材435を備える。第1室内側部材431は第1室内側部材331と同一の部品で構成され、第2室内側部材435は第2室内側部材335と同一の部品で構成される。第2室内側部材435の係合片間および中空部には、断熱材341、342と同一材質の断熱材441、442が配置されている。なお、断熱材141、341、342、441、442の材質は、フェノール樹脂やEPSに限らず、要求される断熱性能などに応じて、各種断熱材から選択できる。
戸当り部材45およびAT材47は、戸当り部材35およびAT材37と同一の部品であり、扉5を閉めた際には、戸当り部材45およびAT材47間に密閉空気層49が形成される。
水密材48は、水密材38と同様に、室外側部材41および扉5の戸先間の隙間への雨水の吹き込みを低減する。
【0033】
[扉の構成]
扉5は、
図1、2に示すように、扉体6と、扉体6の中央部分の開口に配置される採光用パネル7と、パネル保持枠8とを備えている。
図3、4に示すように、扉体6を貫通する前記開口にはパネル保持枠8が取り付けられ、このパネル保持枠8に前記採光用パネル7が保持されている。
【0034】
扉体6は、枠体60と、枠体60の室外側に固定された表面材である室外面材66と、枠体60の室内側に固定された表面材である室内面材67と、室外面材66と室内面材67との間に設けられた断熱芯材68とを備えている。
断熱芯材68は、フェノール樹脂系の断熱材で構成されている。なお、断熱芯材68は、フェノール樹脂系の断熱材に限られず、例えば、EPS(発泡ビーズ法ポリスチレン)の断熱材を用いてもよいし、ハニカム材(水酸化アルミハニカム、セラミックハニカム、ペーパーハニカム)、フォーム材(イソシアヌレートフォーム、ウレタンフォーム、フェノール樹脂フォーム)等の断熱材が使用されてもよい。
【0035】
枠体60は、上骨と、下骨と、吊元側および戸先側の縦骨とを、矩形状に組んで構成される。各骨材は、同一の構成を備えている。
図5,6にも示すように、各骨材は、PVC等の樹脂製の樹脂骨材61と、スチールなどの鋼材で構成された補強材62とを備えて構成されている。
樹脂骨材61は、扉5の見込み方向に沿って形成された見込み片部611と、見込み片部611の室外側から見付け方向に延長された室外片部612と、見込み片部611の室内側から見付け方向に延長された室内片部613とを備える。また、樹脂骨材61の室外片部612、室内片部613間には、見込み片部611から見付け方向に突出する区画片部614が設けられている。区画片部614は、見込み片部611の見込み方向の中央位置よりも室内側にずれて配置され、室外片部612および区画片部614間の寸法は、室内片部613および区画片部614間の寸法よりも大きく設定されている。
【0036】
補強材62は、鋼製のチャンネル材で構成され、樹脂骨材61の見込み片部611、室外片部612、区画片部614に沿って配置されている。
また、区画片部614および室内片部613間の空間には、断熱芯材68と同じフェノール樹脂やEPS等の断熱材63が配置され、前記空間を充填している。
【0037】
室外面材66および室内面材67は、鋼板で構成されている。室外面材66は、断熱芯材68の室外面に沿って配置され、その外縁部は、樹脂骨材61の室外片部612から見込み片部611に沿って室内側に折り曲げられ、樹脂骨材61および補強材62にリベットやネジを用いて固定されている。
室内面材67は、断熱芯材68の室外面に沿って配置され、その外縁部は、樹脂骨材61の室内片部613から見込み片部611に沿って、室外側に折り曲げられている。
【0038】
各樹脂骨材61のうち、吊元側および戸先側の各縦骨における見込み片部611には、
図6に示すように、エッジ材64が取り付けられている。エッジ材64は、アルミ製のエッジ本体641と、エッジ本体641の室内側に連結された樹脂エッジ材642とを備える。樹脂エッジ材642は、PVCなどで構成され、扉5を閉めた際に、前記AT材37,47が当接する位置に配置されている。このため、扉5を閉めた場合に形成される密閉空気層39,49は、樹脂製の戸当り部材35,45、第1室内側部材331,431、AT材37,47、樹脂エッジ材642で囲まれる。したがって、密閉空気層39,49の周囲が熱伝導率の低い樹脂材で囲まれるため、密閉空気層39,49における断熱性能が向上する。
各樹脂骨材61のうち、上骨および下骨における見込み片部611には、
図5に示すように、アルミ製のエッジ材65が取り付けられている。
【0039】
吊元側の樹脂骨材(縦骨)61および縦枠30には、丁番4がネジ止めされている。この際、丁番4は、樹脂骨材61の補強材62にネジ止めされており、十分な取付強度を確保できる。
戸先側の樹脂骨材(縦骨)61には、錠ケース等がネジ止めされ、縦枠40には錠受けがネジ止めされている。そして、錠ケース等も樹脂骨材61の補強材62にネジ止めされているので、十分な取付強度を確保できる。
【0040】
また、扉体6において、室内面材67に沿って断熱芯材68および断熱材63が配置されており、扉体6の室内面に沿った断熱ラインを構成している。さらに、扉体6の戸先側には、操作ハンドル3が設けられている。
【0041】
採光用パネル7は、
図3,4,6にも示すように、3枚のガラス70を用いたトリプルガラスで構成されている。扉体6の開口が上下方向の細長い矩形形状とされているため、前記ガラス70も上下に細長い矩形状に形成されている。
採光用パネル7の各ガラス70間には、スペーサ71が配置され、アルゴンガスを封入した2つの空気層が形成されている。前記スペーサ71は樹脂製とされ、採光用パネル7は断熱性能に優れたパネルとされている。
【0042】
前記採光用パネル7は、断熱芯材68の開口部に配置されたパネル保持枠8で保持されている。パネル保持枠8は、4つの樹脂製枠体81を四周枠組みして構成されている。4つの樹脂製枠体81のうち、採光用パネル7の下端部を保持する樹脂製枠体81は、
図3に示すように、断面略凹溝形状に構成され、室内側の立ち上がり片にはガラス70に当接するシール材83が固定されている。
採光用パネル7の上端部および左右の側端部を保持する3つの樹脂製枠体81は、断面略L字状に形成され、室内側に押縁82が装着されている。押縁82には、ガラス70に当接するシール材83が固定されており、樹脂製枠体81および押縁82間に形成される凹部に、前記採光用パネル7が配置されて保持されている。
【0043】
パネル保持枠8の室外側および室内側には、外額縁85および内額縁86が配置されている。
外額縁85は、採光用パネル7の左右に2本設けられ、互いに断面形状が同一の形材によって構成されている。外額縁85は、樹脂製枠体81の室外面を被覆し、扉5の上端から下端に渡って配置されている。
内額縁86は、採光用パネル7の上下左右に4本設けられ、互いに断面形状が同一の形材によって構成されている。内額縁86は、樹脂製枠体81を室内側から覆って設置されている。
【0044】
[ドア1の断熱構造]
ドア1の扉5を閉めた際に、扉5およびドア枠2の室内面には、連続する断熱ラインが形成される。すなわち、扉5においては、断熱芯材68と、断熱芯材68の上下および左右に配置される断熱材63とで、室内面材67の室外側に沿った断熱層が形成される。この際、室内面材67は鋼板であり、熱伝導率も高いが、薄板であり、かつ、その室外側に前記断熱層が配置されて扉5の見込み方向に連続していないので、前記断熱層で熱流出を抑えることができる。
そして、前記断熱材63が配置された樹脂骨材61の室内側の位置に、前記戸当り部材15,25,35,45が当接する。また、戸当り部材15,25,35,45の室内側には、室内側部材13,33,43やカバー部材23が配置され、金属製の室外側部材11,21,31,41は室内空間に露出しない。このため、ドア1の室内面には、各室内側部材13,33,43やカバー部材23から戸当り部材15,25,35,45を介して、扉5の断熱層に続く連続した断熱ラインが形成され、扉5だけでなく、ドア枠2からの熱流出も低減でき、ドア1の断熱性能を向上できる。その上、熱が流出しやすい上枠10、縦枠30,40の各室内側部材13,33,43には、中空部131,337,437を形成し、断熱材141、341,342,441,442を配置しているので、ドア枠2からの熱流出をより一層低減できる。
【0045】
[第1実施形態による効果]
(1)ドア1において、縦枠30,40に室内側部材33,43を設けたので、室外側部材31,41が室内空間に露出することを防止できる。ここで、室内側部材33,43は、中空部337,437を備えており、その分、厚さ寸法を大きくできる。このため、熱伝導率の高い金属製の室外側部材31,41を室内空間から離して配置でき、縦枠30,40における室内空間から室外空間への熱流出量を低減でき、断熱性能を向上できる。
また、戸当り部材35,45を樹脂製の室内側部材33,43に取り付けているので、戸当り部材35,45を保持する部分からの熱流出を低減できて断熱性能を向上できる。
従って、扉5を閉めて戸当り部材35,45が扉内面に当接した状態では、扉5の断熱層(断熱材63、断熱芯材68)と、戸当り部材35,45および室内側部材33,43によって、ドア1の室内面に、連続する断熱ラインを形成でき、熱流出を効果的に抑制でき、断熱性能を向上できる。
【0046】
(2)上枠10においても、中空部131を有する室内側部材13や戸当り部材15で、室外側部材11が室内側に露出することを防止できる。また、下枠20においても、カバー部材23、戸当り部材25で、室外側部材21が室内側に露出することを防止できる。したがって、上枠10から扉体6を介して下枠20まで、連続する断熱ラインを形成でき、熱流出を効果的に抑制でき、断熱性能を向上できる。
【0047】
(3)室内側部材13,33,43の中空部131,337,437に、断熱材141,341,342,441,442を配置している。このため、断熱材を配置せずに空気層とした場合に比べて、室内側部材13,33,43の断熱性能をさらに向上でき、ドア枠2における熱流量をより低減できてドア1の断熱性能も向上できる。
また、中空部131,337,437への断熱材の配置の有無や、配置する断熱材の種類によって、ドア枠2の断熱性能を容易に調整できる。このため、ドア1を設置する地域の気候条件等に応じて、ドア枠2の断熱性能を容易に調整できる。
【0048】
(4)扉5においても、扉体6の周囲に配置される金属製の補強材62やエッジ材64,65を、室内面材67から見込み方向に離して配置し、断熱材63、断熱芯材68を配置して断熱層を形成できる。このため、扉5の辺縁部に配置された補強材62やエッジ材64,65が熱橋となることを防止でき、扉5の断熱性能も向上できる。
そして、扉5の辺縁部やドア枠2の断熱性能を向上できるので、扉5の断熱芯材68を、断熱性能が高い材質に変更する場合に比べて、ドア1全体の断熱性能を容易に向上できる。このため、扉5において採光用パネル7が配置される採光部の面積も大きくできる。
さらに、採光用パネル7としてトリプルガラスを用い、パネル保持枠8として樹脂製の枠体81や押縁82を用いたので、採光部の断熱性能を向上できる。この点でも採光部の面積を大きくできる。
【0049】
(5)また、扉5は、断熱芯材68を挟んで室外面材66、室内面材67を配置しているので、従来の貼り合わせ工法で製造されるサンドイッチパネルと同様の構造にできる。このため、扉5は、断熱性能を向上させるための特殊な構造ではないため、従来の製造設備や品質によって容易に製造できる。
さらに、扉5の断熱性能は、断熱芯材68を断熱性能グレードの異なる断熱芯材に差し替えることで、容易に調整できる。
(6)さらに、扉5は、樹脂骨材61の室内片部613と、金属製の補強材62との間に断熱材63を配置しているので、断熱材63を配置せずに空気層とした場合に比べて、扉5の断熱性能を容易に向上できる。
また、枠体60に金属製の補強材62を含めているので、丁番4や、錠ケースなどのドア1に設けられる標準的な機能部品を容易に装備できる。
【0050】
(7)縦枠30、40に、戸当り部材35,45と、AT材37,47との2つのAT材を配置し、2つのAT材間に密閉空気層39,49を形成しているので、戸当り部材35,45が外気に直接晒されることを防止できる。このため、戸当り部材35,45の熱損失を抑制でき、断熱性能を向上できる。
また、上枠10の室内側部材13にヒレ部133を形成したので、ヒレ部133と戸当り部材15の間にも空気層16を形成でき、上枠10においても戸当り部材15の熱損失を抑制でき、断熱性能を向上できる。さらに、扉5の上面にヒレ部を設けた場合には、扉5の上面に浸入した雨水を室外側に排水し難くなるが、上枠10側にヒレ部133を設けたので、浸入した水がヒレ部133で停滞することを防止できる。
【0051】
[第2実施形態]
図7〜9に、第2実施形態の断熱ドアである玄関ドア(以下、ドア1Aと略称)を示す。ドア1Aは、主に、ドア枠2における上枠10Aおよび縦枠30A,40Aの構成と、採光用パネル7を保持するパネル保持枠8Aの構成が第1実施形態のドア1と相違する。
【0052】
図7に示すように、上枠10Aは、室外側部材11Aと、室内側部材13Aと、戸当り部材15と、アルミ製などのカバー12とを備えている。
室外側部材11Aは、アルミ押出形材で構成されている。室内側部材13Aは、EPDMやPVCなどの樹脂材であり、室外側部材11Aの室内側に連結されている。室内側部材13Aは、フェノール樹脂やEPS等の断熱材141が配置される中空部131と、戸当り部材15が装着される溝と、躯体取付用のネジが配置される凹溝部135とを備える。
カバー12は、凹溝部135に係合され、室内側部材13Aの室内露出面を被覆し、室内側部材13Aが傷ついたり、割れたりすることを防止する。
【0053】
図8,9に示すように、ドア枠2において吊元側の縦枠30Aは、室外側部材31Aと、室内側部材33Aと、戸当り部材35と、AT材37と、アルミ製などのカバー32とを備えている。戸先側の縦枠40Aは、室外側部材41Aと、室内側部材43Aと、戸当り部材45と、AT材47と、アルミ製などのカバー42とを備えている。
室外側部材31A、41Aは、アルミ押出形材で構成され、その見込み面の室内側端部にはAT材37、47が装着されている。
室内側部材33A、43Aは、EPDMやPVCなどの樹脂材であり、室外側部材31A、41Aの室内側に連結されている。室内側部材33A、43Aは、フェノール樹脂やEPS等の断熱材341、441が配置される中空部337、437と、戸当り部材35、45が装着される装着溝とを備える。
カバー32、42は、室内側部材33A、43Aに係合され、室内側部材33A、43Aの室内露出面を被覆し、室内側部材33A、43Aが傷ついたり、割れたりすることを防止する。
そして、第1実施形態と同じく、AT材37、47は、エッジ材64の樹脂エッジ材642に当接し、戸当り部材35、45およびAT材37、47間には密閉空気層39、49が区画される。
【0054】
扉5の基本構成は、第1実施形態と同じである。ただし、パネル保持枠8Aは、
図9にも示すように、アルミ押出形材などの金属製の室外側枠体81Aと、EPDMやPVCなどの樹脂製の室内側枠体82Aとを、ネジなどで連結した構成とされている。室外側枠体81Aは、外額縁を兼ねている。また、室内側枠体82Aの室内側には、アルミ押出形材などの金属製の内額縁86が取り付けられている。
その他の構成は、前記第1実施形態のドア1の各構成に対応するため、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
[第2実施形態による効果]
このような構成のドア1Aにおいても、前記第1実施形態のドア1と同様の作用効果を奏する。さらに、上枠10A、縦枠30A、40Aでは、金属製の室外側部材11A、31A、41Aに、樹脂製の室内側部材13A、33A、43Aを連結して構成したので、扉5の断熱層(断熱材63、断熱芯材68)から、戸当り部材15や、戸当り部材35,45およびAT材37、47間の密閉空気層39、49を通り、室内側部材13A、33A、43Aまで連続する断熱ラインを、室外側部材11A、31A、41Aよりも室内側に形成できる。このため、室内空間から室外側部材11A、31A、41Aへの熱流出を効果的に抑制でき、断熱性能をより向上できる。
【0056】
また、室内側部材13A、33A、43Aの室内面は、カバー12、32、42で覆っているため、ドア枠2の内観意匠を向上できるとともに、樹脂製の室内側部材13A、33A、43Aが割れたり、傷つくことを防止できる。
さらに、室内空間に露出しているカバー12、32、42から、室外側部材11A、31A、41Aへの熱流出は、その間に配置された室内側部材13A、33A、43Aで遮断されるため、ドア1Aにおける断熱性能が低下することを防止できる。特に、室内側部材13A、33A、43Aは、断熱材141、341、441が配置される中空部131,337,437を備えているため、カバー12、32、42が設けられていても断熱性能を向上できる。
また、パネル保持枠8Aは、外額縁を兼ねる室外側枠体81Aと、室内側枠体82Aとで、採光用パネル7を挟持しているので、第1実施形態に比べて部品点数を少なくできる。
【0057】
[変形例]
なお、本発明は以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、扉5の断熱性能を調整する場合には、
図10に示すように、扉5において、室内片部613および区画片部614間に断熱材を配置せずに、空気層としてもよい。さらに、断熱芯材68として、フェノール樹脂系の断熱材ではなく、EPS等の断熱性能グレードの異なる他の断熱材を用いてもよい。
さらに、室内側部材13,33,43の中空部131,337,437に、断熱材を配置せずに空気層としてもよい。また、パネル保持枠8の樹脂製枠体81や、パネル保持枠8Aの室内側枠体82Aの中空部に、断熱材を配置してもよい。
このように、断熱材の材質や、断熱材の配置の有無をそれぞれで選択することで、ドア1の断熱性能を容易に調整できる。
【0058】
また、本発明は、少なくとも縦枠30、40に室内側部材33,43を設ければよい。このため、上枠10や下枠20には、必ずしも室内側部材13、カバー部材23を配置しなくてもよい。すなわち、ドア枠2では、上枠10、下枠20に比べて、縦枠30、40の長さ寸法が大きく、縦枠30、40からの熱流出が断熱性能に影響するためである。
【0059】
第1実施形態において、室内側部材33、43は、第1室内側部材331、431および第2室内側部材335、435の2つの部品で構成されていたが、一体の部品で構成してもよい。
戸当り部材35、45は、室内側部材33、43、33A、43Aとは別体に構成されていたが、室内側部材33、43、33A、43Aと一体に形成してもよい。この際、室内側部材33、43、33A、43Aと、戸当り部材35、45とで求められる特性が異なるため、二色成形で成形すればよい。
【0060】
扉5の枠体60の構成は、前記実施形態に限定されない。例えば、補強材62を設けずに、丁番4や錠ケース等を樹脂骨材61に取り付けることができる場合には、補強材62を設けなくてもよい。
【0061】
本発明の断熱ドアは、採光用パネル7を設けていたが、採光部を備えないドア1であってもよい。また、本発明の断熱ドアは、玄関ドアに限らず、断熱性能が求められる出入り口の各種ドアとして利用できる。さらに、断熱ドアのドア枠は、上枠および左右の縦枠を備えた三方枠でもよい。