特許第6557796号(P6557796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6557796混合洗浄溶剤を用いた被洗浄物の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6557796
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】混合洗浄溶剤を用いた被洗浄物の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/08 20060101AFI20190729BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20190729BHJP
   C23G 5/028 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20190729BHJP
   C11D 7/30 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B08B3/08 Z
   B08B3/04 Z
   C23G5/028
   C11D7/50
   C11D7/30
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-23761(P2019-23761)
(22)【出願日】2019年2月13日
【審査請求日】2019年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019884
【氏名又は名称】ジャパン・フィールド株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517330818
【氏名又は名称】内野 正英
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】特許業務法人 銀座総合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 正英
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−194890(JP,A)
【文献】 特開2007−146166(JP,A)
【文献】 特開2011−132302(JP,A)
【文献】 特開2018−187593(JP,A)
【文献】 特開2017−000958(JP,A)
【文献】 特開2017−047340(JP,A)
【文献】 特開2012−120958(JP,A)
【文献】 特開2017−216431(JP,A)
【文献】 特開2003−027268(JP,A)
【文献】 特表2018−517789(JP,A)
【文献】 有限会社アイケミック 取扱商品,2019年 3月20日,第2石油類、インターネット,URL,http://aichemic.co.jp/products/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/08
B08B 3/04
C11D 7/30
C11D 7/50
C23G 5/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水よりも比重の大きいHFOと、このHFOよりも沸点が高いとともに水よりも比重の小さい石油系溶剤とを混合して溶解させることにより、水よりも比重の大きい混合洗浄溶剤を生成し、この混合洗浄溶剤と水とを洗浄槽内に収納して、この洗浄槽内の混合洗浄溶剤の液面を水の層にて被覆した状態で、上記混合洗浄溶剤に被洗浄物を浸漬させて洗浄する被洗浄物の液洗浄、及び/又は、上記混合洗浄液を加熱してこの混合洗浄液の洗浄蒸気を発生させ、この洗浄蒸気に被洗浄物を接触させて洗浄する被洗浄物の蒸気洗浄を行うことを特徴とする混合洗浄溶剤による被洗浄物の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品、電子部品、医療機器等の被洗浄物を洗浄する際に使用する、フッ素系溶剤と石油系溶剤との混合洗浄溶剤を用いた被洗浄物の洗浄方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−34789号公報 従来より、1995年に洗浄溶剤として広く使用されてきたフロン113(フッ素系溶剤)、1.1.1トリクロロエタン(塩素系溶剤)は、オゾン層を破壊するという環境への悪影響を及ぼすため世界的に全廃となり、それ以後はフロン代替溶剤及びフロン、エタン全廃から20年以上が経過し、現在においてフロン代替の主流は石油系溶剤となっている。
【0004】
しかし、一般的な石油系溶剤は可燃性であることから、常圧下で使用した場合には引火爆発や火災事故が発生するおそれがある。また引火点が高い石油系溶剤も存在するため、このような石油系溶剤を減圧下で使用することも可能であるが、特許文献1に示す如き減圧を行うための装置を必要とするため洗浄装置のコストが高くつくものとなっていた。そのため、このような洗浄方法よりもむしろ既設の洗浄装置を利用して低コストで行うことが可能なトリクロロエチレンや塩化メチレン等(塩素系溶剤)を使用した洗浄が依然として行われているという実情がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、上記石油系溶剤に取って替わるものとして、フロン代替として開発されたフッ素系溶剤を用いた洗浄方法が従来より公知となっているが、フッ素系溶剤は一般的に値段が高く、更に沸点が低いため、溶剤の消耗が激しく洗浄コストが高くつくものとなっていた。
【0006】
そこで、本願は上述の如き課題を解決しようとするものであって、フッ素系溶剤を用いた被洗浄物の洗浄時において、フッ素系溶剤の使用量を少量に抑えて経済性を向上させるとともに、洗浄時の安全性を向上させることができる洗浄溶剤、及び、この洗浄溶剤を用いた洗浄方法を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
願は上述の如き課題を解決するため、水よりも比重の大きいHFOと、このHFOよりも沸点が高いとともに水よりも比重の小さい石油系溶剤とを混合して溶解させることにより、水よりも比重の大きい混合洗浄溶剤を生成し、この混合洗浄溶剤と水とを洗浄槽内に収納して、この洗浄槽内の混合洗浄溶剤の液面を水の層にて被覆した状態で、上記混合洗浄溶剤に被洗浄物を浸漬させて洗浄する被洗浄物の液洗浄、及び/又は、上記混合洗浄液を加熱してこの混合洗浄液の洗浄蒸気を発生させ、この洗浄蒸気に被洗浄物を接触させて洗浄する被洗浄物の蒸気洗浄を行うものである。
【0008】
また本願発明に係る混合洗浄溶剤を構成する石油系溶剤は、該混合洗浄溶剤を構成するHFOよりも沸点が高いものである。このようにHFOよりも沸点の高い石油系溶剤を用いることにより、もともと沸点の低いHFO単体で洗浄溶剤として使用する場合よりも、混合洗浄溶剤の沸点を高くすることが可能となる。そのため、混合洗浄溶剤の無駄な蒸発を防ぐことができるとともに、安全性を高めることができる。
【0009】
また本願発明に係る混合洗浄溶剤を構成するHFOは、該混合洗浄溶剤を構成する石油系溶剤に溶解するものである。これにより、HFOと石油系溶剤とを混合させた際に、両者が分離することなく混合洗浄溶剤を常時安定的な状態で使用することができる。
【0010】
また本願発明に係るHFOは従来使用されていたフッ素系溶剤と比較して石油系溶剤への溶解力が高いという利点がある。
【発明の効果】
【0011】
願発明は上述の如く構成したものであるから、比較的高価なフッ素系溶剤と比較的安価な石油系溶剤を混合させることにより、フッ素系溶剤を用いた被洗浄物の洗浄時において、フッ素系溶剤のみを使用する場合よりもフッ素系溶剤の使用量を少なく抑えることができる。従って、全体的な洗浄コストを低く抑えることが可能となる。また、可燃性溶剤の石油系溶剤と不燃性溶剤のフッ素系溶剤とを混合させることにより、引火爆発や火災事故の危険性を低減することができるため、使用時の安全性を向上させることができる。
【0012】
また本願発明は、水よりも比重の大きいフッ素系溶剤と、水よりも比重の小さい石油系溶剤とを混合させて混合洗浄溶剤を生成することにより、フッ素系溶剤と石油系溶剤との混合比によってこの混合洗浄溶剤の比重を水の比重よりも大きくしたり小さくしたり調整することが可能となる。
【0013】
そのため、水よりも比重の大きい混合洗浄溶剤を生成した場合には、この混合洗浄溶剤と水とを洗浄槽内に収納した場合には両者が分離するものとなる。そして、この洗浄槽内の混合洗浄溶剤の液面を水の層にて被覆した状態で、混合洗浄溶剤による液洗浄や蒸気洗浄を行うことができる。従って、上記の如く形成された水の層によって洗浄槽内に収納した混合洗浄溶剤の蒸発を防ぐことが可能となり、混合洗浄溶剤の無駄な消耗を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、水よりも比重の大きいフッ素系溶剤と、水よりも比重の小さい石油系溶剤とを混合させて混合洗浄溶剤を生成し、両者の配合比率を変えた場合の混合洗浄溶剤の比重の変化についての実験を行った。本実験で用いたフッ素系溶剤は、商品名AS-300(AGC株式会社製)のHFOであってその比重は1.39g/cm3であり、石油系溶剤は 商品名NSクリーン220(JXTGグループ製)であってその比重は0.752である。この実験結果を下記表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
表1の結果より、水よりも比重の大きいフッ素系溶剤と、水よりも比重の小さい石油系溶剤とを混合させて混合洗浄溶剤を生成する場合において、両者の配合比率を変えることにより、混合洗浄溶剤の比重を適宜変化させることができることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本願発明を示す実施例1の概念図。
【実施例1】
【0018】
願発明の実施例1を図1に於いて説明すると、(1)は洗浄槽であって、開口部(2)側の内周には冷却コイル(3)を設けている。そしてこの洗浄槽(1)内の冷却コイル(3)よりも下方には、2枚の隔壁(4)を間隔を介して立設して洗浄槽(1)内を三等分し、図1に示す如く図1の左側から前洗い槽(5)、液洗浄槽(6)、及び蒸気洗浄槽(7)としている。そして、上記液洗浄槽(6)の底部(8)側の内周には冷却コイル(10)を設けている。また蒸気洗浄槽(7)の底部(11)側には、温度センサー(12)及びヒーター(13)を設けている。
【0019】
また本実施例では、水(15)よりも比重の大きいフッ素系溶剤としてHFOを使用するとともに、石油系溶剤は水(15)よりも比重の小さく、更に上記フッ素系溶剤よりも沸点が高いものを用いている。また、上記フッ素系溶剤は、上記石油系溶剤に溶解する性質を備えている。そして上記フッ素系溶剤と石油系溶剤とを適宜の配合割合にて混合することにより、水(15)よりも比重の大きい混合洗浄溶剤(14)を生成している。
【0020】
上記の如く、フッ素系溶剤と石油系溶剤とを混合することにより、比較的高価なフッ素系溶剤と比較的安価な石油系溶剤を混合させることにより、フッ素系溶剤を用いた被洗浄物(17)の洗浄時において、フッ素系溶剤のみを使用する場合よりもフッ素系溶剤の使用量を少なく抑えることができる。従って、洗浄コストを抑えることが可能となる。また、可燃性溶剤の石油系溶剤と不燃性溶剤のフッ素系溶剤とを混合させることにより、石油系溶剤のみを洗浄溶剤として使用する場合よりも引火爆発や火災事故の危険性を低減することができるため、洗浄時の安全性を向上させることができる。
【0021】
そして上記前洗い槽(5)、液洗浄槽(6)、及び蒸気洗浄槽(7)内には、上記の如く生成した混合洗浄溶剤(14)を収納している。そして、液洗浄槽(6)内の混合洗浄溶剤(14)を冷却コイル(10)にて冷却するとともに、蒸気洗浄槽(7)内の混合洗浄溶剤(14)をヒーター(13)にて加熱することにより、この混合洗浄溶剤(14)の洗浄蒸気(16)を発生させる。
【0022】
また、液洗浄槽(6)、及び蒸気洗浄槽(7)内には、水(15)を収納している。これにより、混合洗浄溶剤(14)と水(15)とが分離するとともに、上記の如く混合洗浄溶剤(14)は水(15)よりも比重が大きいことから、図1に示す如く混合洗浄溶剤(14)の表面には水(15)の層が形成されるものとなる。尚、蒸気洗浄槽(7)では、混合洗浄溶剤(14)を加熱することにより、混合洗浄溶剤(14)の液面上の水(15)の層を介して洗浄蒸気(16)が発生するものとなる。
【0023】
上記の如く構成したものにおいて、被洗浄物(17)の洗浄方法について以下に説明する。まず、前洗い槽(5)に被洗浄物(17)を挿入配置するとともに、この被洗浄物(17)に付着した汚れを混合洗浄溶剤(14)にて液洗浄にて除去する前洗いを行う。次に前洗いを終えた被洗浄物(17)を、液洗浄槽(6)内に挿入配置し、冷却された混合洗浄溶剤(14)によって液洗浄を行うとともに被洗浄物(17)を冷却する。
【0024】
そして、上記液洗浄の終了後、被洗浄物(17)を上記の如く蒸気洗浄槽(7)内に発生させた洗浄蒸気(16)の雰囲気下に配置し、被洗浄物(17)の蒸気洗浄を行う。この蒸気洗浄及び液洗浄の際には、図1に示す如く混合洗浄溶剤(14)の表面に水(15)の層を被覆していることから、洗浄時、及び非洗浄時のいずれにおいても混合洗浄溶剤(14)の無駄な蒸発を防ぐことができる。従って、混合溶剤の消耗を低減して洗浄コストを抑えることが可能となる。
【0025】
尚、本実施例では、前洗い槽(5)に混合洗浄溶剤(14)のみを収納するとともに、液洗浄槽(6)及び蒸気洗浄槽(7)内に混合洗浄溶剤(14)及び水(15)の両方を収納しているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、液洗浄槽又は蒸気洗浄槽のいずれかにのみ混合洗浄槽及び水を収納し、それ以外の槽には混合洗浄溶剤のみを収納したものであっても良いし、前洗い槽、液洗浄槽、及び蒸気洗浄槽の全てに混合洗浄溶剤及び水の両方を収納したものであっても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 洗浄槽
14 混合洗浄溶剤
15 水
16 洗浄蒸気
17 被洗浄物
【要約】
【課題】
フッ素系溶剤を用いた被洗浄物の洗浄時において、フッ素系溶剤の使用量を少量に抑えて経済性を向上させるとともに、洗浄時の安全性を向上させることができる洗浄溶剤、及び、この洗浄溶剤を用いた洗浄方法を得る。
【解決手段】
水よりも比重の大きいフッ素系溶剤と、水よりも比重の小さい石油系溶剤とを混合させることにより、水よりも比重の大きい混合洗浄溶剤14,44を生成し、この混合洗浄溶剤14,44と水15,45とを洗浄槽1,31内に収納して、この洗浄槽1,31内の混合洗浄溶剤14,44の液面を水15,45の層にて被覆した状態で、上記混合洗浄溶剤14,44に被洗浄物17,47を浸漬させて洗浄する被洗浄物17,47の液洗浄、及び/又は、上記混合洗浄液を加熱してこの混合洗浄液の洗浄蒸気16,46を発生させ、この洗浄蒸気16,46に被洗浄物17,47を接触させて洗浄する被洗浄物17,47の蒸気洗浄を行う。
【選択図】図1
図1