特許第6557831号(P6557831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6557831アキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557831
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】アキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   H02K1/27 503
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-117291(P2015-117291)
(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-5866(P2017-5866A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】岡島 徹弥
【審査官】 三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−055577(JP,A)
【文献】 特開2008−199811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(53)上でステータ(40)を介して互いに対向配置された第1ロータ片(14A)及び第2ロータ片(14B)からなるロータ(10)を備えたアキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造において、
前記各ロータ片(14A,14B)に設けられた軸孔(21)を中心(A)に有するロータ基盤(14)の周縁(14a)に形成された複数のマグネット用孔(22)と、前記マグネット用孔(22)内に嵌合して設けられたマグネット(12)と、前記マグネット(12)の面(12a)側で、かつ前記ロータ基盤(14)の前記軸孔(21)をなす筒状軸壁(30)の外周(30a)に嵌合され、前記外面(12a)と接する輪状マグネット固定板(15)と、からなり、
前記マグネット(12)の外周に形成されたマグネット用段部(24B)、前記マグネット用孔(22)の内周(23)に形成された孔用段部(24A)に嵌合させ、前記各マグネット(12)の前記ステータ(40)と対面する内面(12c)は、前記マグネット用孔(22)の開口面(22A)よりも前記ステータ(40)側に突出している構成とし、前記マグネット(12)は、接着剤を用いることなく、機械的構造のみによって前記ロータ基盤(14)に固定されていると共に、前記各ロータ片(14A,14B)は同一構造であることを特徴とするアキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造に関し、特に、ロータに取り付ける各マグネットを機械的に強固に固定し、耐久性を向上させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のモータのロータ構造としては、例えば、特許文献1に示される構成を図5から図7として開示することができる。
すなわち、図5に示すように、アキシャルギャップ型の回転電機の回転子(ロータ)10は、例えば、積層鋼板により外歯車状に形成したプレート11と、プレート11に組み込んだ複数の磁石12を有している。
【0003】
前記プレート11は、回転軸が貫通するリング状部(図示しない)と、リング状部から車輪のスポーク状に放射状に伸び、周方向に等間隔で隣接する複数本のビーム状部(図示しない)を有している。磁石12は、隣接するビーム状部間に形成される空間形状に合わせた横断面形状を有しており、隣接ビーム状部間に挿入配置される。ビーム状部には、表裏両面側から挟み込むように長板状の軟磁性圧紛材料からなるブリッジ13が装着されている(図5図6参照)。
【0004】
また、磁石12の内周側のプレート11には、プレート11の回転軸方向の剛性を高めるため、非磁性体からなるカラー14がプレート11を表裏両面側から挟み込むように装着されている(図5図7参照)。磁石12の外周側には、回転子10の回転強度を高めるため、プレート11を挟み込むブリッジ13及び磁石12の外縁部を一体的に保持するように、これらを表裏両面側から挟み込む円環部材(リング)15が装着されている(図5図7参照)。
【0005】
前記磁石12とブリッジ13の接触部は、磁石12がブリッジ13を押さえ込むことができる形状に形成されている。例えば、ブリッジ13は、間接接触が外向き傾斜、すなわち、プレート11側(底面側)の幅が広い台形状断面(図6参照)を有して、或いは、階段状段差面を有して、形成されており、磁石12は、ブリッジ13の形状に対応する。両接触面が内向き傾斜、すなわち、厚み方向中央部の幅が最も狭いプーリ―形状(図6参照)を有して、或いは、裏側階段状段差面を有して、形成されている。
【0006】
つまり、脆性材料からなる部材と延性材料からなる部材を回転平面上に配置して形成した回転電機の回転子は、脆性材料からなる部材と延性材料からなる部材の接触部が、脆性材料からなる部材の配置により延性材料からなる部材の回転軸方向への移動を規制することができる形状に形成され、脆性材料からなる部材と延性材料からなる部材を接触状態にすることで形状的に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−37210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のモータのロータ構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述のように、カラー14上の各ブリッジ13を介して磁石12をカラー14上に取り付け、各ブリッジ13及び磁石12をリング15で固定し、ブリッジ13の外端とリング15の接触部分とを接着剤αで接着すると共に、磁石12の外周とリング15の内周とを接着剤αで固定していたため、ロータ10が高速で回転した場合、磁石12に大きい応力がかかる過酷な使用条件下においては、接着剤では強度が持たず、剥がれてしまう可能性があるため、接着剤を用いることなく、機械的に磁石を固定する構造が求められている。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、ロータに取り付ける各マグネットを機械的に強固に固定し、耐久性を向上させるようにしたアキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるアキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造は、回転軸上でステータを介して互いに対向配置された第1ロータ片及び第2ロータ片からなるロータを備えたアキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造において、前記各ロータ片に設けられた軸孔を中心に有するロータ基盤の周縁に形成された複数のマグネット用孔と、前記マグネット用孔内に嵌合して設けられたマグネットと、前記マグネットの面側で、かつ前記ロータ基盤の前記軸孔をなす筒状軸壁の外周に嵌合され、前記外面と接する輪状マグネット固定板と、からなり、前記マグネットの外周に形成されたマグネット用段部、前記マグネット用孔の内周に形成された孔用段部に嵌合させ、前記各マグネットの前記ステータと対面する内面は、前記マグネット用孔の開口面よりも前記ステータ側に突出している構成とし、前記マグネットは、接着剤を用いることなく、機械的構造のみによって前記ロータ基盤に固定されていると共に、前記各ロータ片は同一構造である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるアキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、軸孔を中心に有するロータ基盤の周縁に形成された複数のマグネット用孔と、前記各マグネット用孔内に設けられたマグネットと、前記マグネットの面側で前記ロータ基盤のロータ面に取り付けられたマグネット固定板と、からなり、前記マグネットの外周に形成されたマグネット用段部が、前記マグネット用孔の内周に形成された孔用段部に係合している構成としたことにより、マグネットは純機械的、すなわち、機械的のみによってロータ基盤に強固に固定することができ、高速回転、大きい振動及び高温状態下でも安定したロータの回転を得ることができる。
また、前記マグネットは板状に形成され、前記マグネット固定板は輪状板よりなることにより、各マグネットはマグネット用孔内に強固に固定される。
また、前記各マグネットの内面は、前記マグネット用孔の開口面よりも内側に突出していることにより、マグネットの内面とステータとの間のギャップの管理が容易となり、設計値に沿ったアキシャル型モータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるアキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造のロータ片を示す分解断面斜視図である。
図2図1のロータ片の組み立て後の断面図である。
図3図2のロータ片を図4のアキシャル型モータのロータ片に適用する前の状態を示す断面図である。
図4図1図3に示されるロータ片を一対用いたアキシャル型モータを示す断面図である。
図5】従来のアキシャル型モータのロータ構造の要部を示す部分平面図である。
図6図5のD−D線に沿う断面図である。
図7図5のE−E線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるアキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造は、ロータ基盤に形成したマグネット用孔の孔用段部にマグネットのマグネット用段部を係合させ、全てのマグネットをマグネット固定板で固定することにより、マグネットを機械的構造のみで強固に固定することである。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明によるアキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1は、図4で示されるアキシャル型モータ20の第1、第2ロータ片14A,14Bのうちの一方の第2ロータ片14Bを示すもので、特に、前記第2ロータ片14Bは前記第1ロータ片14Aと同一で、前記アキシャル型モータ20に組み込まれた前記第1、第2ロータ片14A,14Bは向きが異なるのみで、全く同一構造であるため、同一符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0015】
前記第2ロータ片14Bは、軸孔21を有する円盤状のロータ基盤14の周縁14aには、円周方向に沿って貫通状の複数個のマグネット用孔22が形成され、各マグネット用孔22の内周23には孔用段部24が形成されている。
前記ロータ基盤14の軸心である中心Aには、軸孔21が形成されていると共に前記各マグネット用孔22内には、板状のマグネット12が嵌合されている。
【0016】
前記各マグネット12の外周には、マグネット用段部24が形成され、前記各マグネット12を前記マグネット用孔22に嵌合する時は、前記孔用段部24内に前記マグネット用段部24を嵌合させて係合することにより、図2で示されるように、前記マグネット12は前記マグネット用孔22に対して強嵌合によって一体状に接続される。
【0017】
前述のように、前記各マグネット用孔22内にマグネット12を強嵌合で取り付けた後は、接着剤を用いることなく機械的構成のみで前記マグネット12とマグネット用孔22は一体的に結合している。
前記各マグネット12の面12aには、前記ロータ基盤14のロータ面14bを覆うように、輪状板をなすマグネット固定板15が設けられ、前記軸孔21の筒状軸壁30の外周に前記マグネット固定板15の取付孔15aが図2のように、強嵌合されている。
【0018】
従って、前記マグネット固定板15を取り付けることにより、前記各マグネット12の面12aが固定するため、各マグネット12は前記各マグネット用孔22から外れることはなく、高速回転あるいは高振動においても前記ロータ基盤14には、各マグネット12が確実に保持される。
また、図1及び図4で示されるように、各マグネット12の内面12cは、前記ロータ基盤14の前記マグネット用孔22の開口面22Aよりも内側に突出していることにより、図4の巻線からなるステータ40とのギャップDを所定通りに保つことができるように構成されている。
【0019】
前述のように構成された第1、第2ロータ片14A,14Bは、図4で示されるように、モータケース50に設けられた一対の軸受51,52によって回転自在に設けられた回転軸53を、前記各軸孔21に貫通させることにより、前記各ロータ片14A,14Bからなるロータ10が前記回転軸53と共に一体回転できるように構成されている。
前記各ロータ片14A,14B間に位置し、かつ、前記モータケース50に固定された前記ステータ40が図示しない制御部を介して励磁されることにより、前記各ロータ片14A,14Bの各マグネット12との磁気作用によって、前記ロータ10は所定の方向へ回転するように構成されている。
【0020】
尚、前記各ロータ基盤14,14は、前記回転軸53上で当接部60を介して一体状に接続され、前記各軸受51,52のうち、一方の軸受52の外輪52aには、前記モータケース50との間に設けられたワッシャ等からなる付勢手段61によって常時一方の方向(図4では左方向)に予圧が与えられている。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によるアキシャル型モータ又は発電機のマグネット固定構造は、アキシャル型モータを構成する各ロータ片に取付けるマグネットが接着剤を用いることなく、機械的構成のみで各ロータ片に強固に設けられているため、高速回転、大きい振動及び高温状況下等においても、マグネットの離脱が起こることなく、安定動作を得ることができる。
【符号の説明】
【0023】
12 マグネット
12a
12c 内面
14 ロータ基盤
14A 第1ロータ片
14B 第2ロータ片
14a 周縁
14b ロータ面
15 輪状マグネット固定板
15a 取付孔
20 アキシャル型モータ
21 軸孔
22 マグネット用孔
22A 開口面
23 内周
24A 孔用段部
24 マグネット用段部
30 筒状軸壁
40 ステータ
50 モータケース
51,52 軸受
53 回転軸
60 当接部
61 付勢手段
A 中心
D ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7