(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前端部に鏡裏板を有した引出し本体と、この引出し本体の前面側に装着される鏡板とを備え、前記鏡板の一端部を前方から前記鏡裏板の一端部側に接近させて、その鏡板の一端部を前記鏡裏板の一端部側に止着するようにした引出しであって、
前記鏡板の一端部と前記引出し本体との間に、部材の弾性変形を利用して係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する前方への移動を禁止する弾性係合手段と、前記鏡板の背面以外の部位に係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する後方への移動を禁止する位置決め手段とを設けたものであり、
スチール製の前記鏡板と樹脂製の前記鏡板とを前記鏡裏板に対して選択的に取付け得るものであり、
前記鏡裏板が、前記スチール製の鏡板に設けた掛け爪が係わり合うスチール用の掛け孔と、前記樹脂製の鏡板に設けた樹脂爪が掛けられる樹脂用の掛け孔とを備えたものであることを特徴とする引出し。
前記弾性係合手段が、前記鏡裏板の下鍔部側及び前記鏡板の下鍔部の何れか一方に設けられた係合凹所と、他方に設けられ部材の弾性変形を利用して前記係合凹所に係合する係合爪とを備えたものである請求項2記載の引出し。
前端部に鏡裏板を有した引出し本体と、この引出し本体の前面側に装着される鏡板とを備え、前記鏡板の一端部を前方から前記鏡裏板の一端部側に接近させて、その鏡板の一端部を前記鏡裏板の一端部側に止着するようにした引出しであって、
前記鏡板の一端部と前記引出し本体との間に、部材の弾性変形を利用して係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する前方への移動を禁止する弾性係合手段と、前記鏡板の背面以外の部位に係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する後方への移動を禁止する位置決め手段とを設けたものであり、
前記鏡裏板が、上縁に前方に突出する上鍔部を有するとともに下縁に前方に突出する下鍔部を有するものであり、
前記鏡板が、上縁に後方に突出する上鍔部を有するとともに下縁に後方に突出する下鍔部を有するものであり、
前記鏡裏板の前記上鍔部に前記鏡板の前記上鍔部を回動可能に係わり合わせた上で、前記鏡板をその下鍔部が前記鏡裏板の下鍔部が平面視において重なり合う位置まで回動させ、前記下鍔部同士を前記弾性係合手段と前記位置決め手段とによって直接又は間接的に取付けるようにしたものであり、
前記位置決め手段が、前記鏡裏板の下鍔部側及び前記鏡板の下鍔部の何れか一方に設けられた切欠と、他方に設けられ前記切欠に侵入して当該切欠の奥端に係止される突起とを備えたものであることを特徴とする引出し。
前端部に鏡裏板を有した引出し本体と、この引出し本体の前面側に装着される鏡板とを備え、前記鏡板の一端部を前方から前記鏡裏板の一端部側に接近させて、その鏡板の一端部を前記鏡裏板の一端部側に止着するようにした引出しであって、
前記鏡板の一端部と前記引出し本体との間に、部材の弾性変形を利用して係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する前方への移動を禁止する弾性係合手段と、前記鏡板の背面以外の部位に係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する後方への移動を禁止する位置決め手段とを設けたものであり、
前記引出し本体が前記鏡裏板の下端に取付けるスペーサーを有するものであり、
前記鏡板の一端部を前方から前記鏡裏板の一端部側に接近させて、その鏡板の一端部を前記鏡裏板の一端部側に前記スペーサーを介して間接的に止着するようにしたことを特徴とする引出し。
前記鏡裏板及び前記鏡板が板金素材により作られたスチール製のものであり、前記弾性係合手段及び前記位置決め手段が、前記板金素材の素材端面同士を当接させることにより前記鏡板の前記引出し本体に対する前後方向の位置決めを行うようにしたものである請求項4、5又は6記載の引出し。
前端部に鏡裏板を有した引出し本体と、この引出し本体の前面側に装着される異なる素材厚みを有する複数の鏡板からなる鏡板群から選ばれた一の鏡板とを備え、前記鏡板の一端部を前方から前記鏡裏板の一端部側に接近させて、その鏡板の一端部を前記鏡裏板の一端部側に止着するようにした引出しであって、
前記鏡板群から選ばれた前記一の鏡板の一端部と前記引出し本体との間に、部材の弾性変形を利用して係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する前方への移動を禁止する弾性係合手段と、前記鏡板の背面以外の部位に係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する後方への移動を禁止する位置決め手段とを設けて前記鏡板の背面と前記鏡裏板との間の寸法を調節することにより、前記鏡板群における他の鏡板を前記鏡裏板に装着したときの前記他の鏡板の前面の位置と
前記一の鏡板を前記鏡裏板に装着したときの一の鏡板の前面の位置とを等しくすることを特徴とする引出し。
【背景技術】
【0002】
従来、前端部に鏡裏板を有した引出し本体と、この引出し本体の前面側に装着される鏡板とを備えた、デスクの袖やワゴンに適用される引出しが周知である(例えば、特許文献1参照)。当該引出しにおいては、鏡裏板に対してスチール製の鏡板を正確に取り付けるべく、ビスやリベットを用いた取付構造が適用されている一方、樹脂製の鏡板に関してはビスやリベットを使用しないようにし、鏡板の下端部を前方から鏡裏板の下端部側に接近させて、その鏡板の下端部を鏡裏板の下端部側に鏡板の経過的な弾性変形を利用し止着するようにしていた。
【0003】
ここで、スチール製の鏡板と樹脂製の鏡板とでは通常素材の厚みが大きく異なるため、これら素材が異なる鏡板を同じ形状として同じ鏡裏板に取り付けようとすると素材の厚みが異なる分、引出し本体に対する前面の位置が異なってしまう。その結果、デスクの袖やワゴンの外形も大きく異なるものとなってしまう。つまり、素材が異なる鏡板を用いても同じ仕様であるデスクの袖やワゴンを構成するためには引出し本体に対する鏡板の前面の位置を正確に揃えるべく、従来では鏡板の素材に応じて鏡裏板の構造をそれぞれ異ならせる必要があった。
【0004】
そして現在では、スチール製の鏡板であっても樹脂製の鏡板であっても、できるだけ共通した取付手順並びに設計手法によって、共通の引出し本体に取り付けたいという要望がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような要望に応えるためのものであり、鏡板の素材に拘わらず共通の引出し本体に取り付けることができる引出しを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち本発明に係る引出しは、前端部に鏡裏板を有した引出し本体と、この引出し本体の前面側に装着される鏡板とを備え、前記鏡板の一端部を前方から前記鏡裏板の一端部側に接近させて、その鏡板の一端部を前記鏡裏板の一端部側に止着するようにした引出しであって、前記鏡板の一端部と前記引出し本体との間に、部材の弾性変形を利用して係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する前方への移動を禁止する弾性係合手段と、前記鏡板の背面以外の部位に係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する後方への移動を禁止する位置決め手段とを設けたことを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、素材厚みの違う複数種類の鏡板を、引出し本体に対する前面の位置を揃えた状態で、共通の鏡裏板に取付けることができるように設計することが容易になる。
【0010】
そして、鏡板がスチール製のものに対し上記構成を適用すれば、より素材の厚みが大きい樹脂製の鏡板を用いた場合に対し、容易に鏡板の前面の位置を揃えることができる。
【0011】
鏡板を引出し本体に対し容易に取り付けるようにするための構造の一例としては、鏡裏板が、上縁に前方に突出する上鍔部を有するとともに下縁に前方に突出する下鍔部を有するものであり、鏡板が、上縁に後方に突出する上鍔部を有するとともに下縁に後方に突出する下鍔部を有するものであり、鏡裏板の上鍔部に鏡板の上鍔部を回動可能に係わり合わせた上で、鏡板をその下鍔部が鏡裏板の下鍔部が平面視において重なり合う位置まで回動させ、下鍔部同士を弾性係合手段と位置決め手段とによって直接又は間接的に取付けるようにしたものである構造を挙げることができる。
【0012】
容易且つ確実な鏡板の取り付けに資する弾性係合手段の一例としては、鏡裏板の下鍔部側及び鏡板の下鍔部の何れか一方に設けられた係合凹所と、他方に設けられ部材の弾性変形を利用して係合凹所に係合する係合爪とを備えた構成をなす弾性係合手段を挙げることができる。
【0013】
鏡板の前面の位置を正確に位置決めし得る位置決め手段の一例としては、鏡裏板の下鍔部側及び鏡板の下鍔部の何れか一方に設けられた切欠と、他方に設けられ切欠に侵入して当該切欠の奥端に係止される突起とを備えたものである位置決め手段を挙げることができる。
【0014】
厚みが薄く撓みを生じ易い素材としても鏡板の確実な位置決めを実現するためには、鏡裏板及び鏡板が板金素材により作られたスチール製のものであり、弾性係合手段及び位置決め手段が、板金素材の素材端面同士を当接させることにより鏡板の引出し本体に対する前後方向の位置決めを行うようにすれば良い。
【0015】
鏡板の一端部は鏡裏板の一端部に対し直接的に取り付けても間接的に止着しても良いが、間接的に止着する態様として、引出し本体が鏡裏板の下端に取付けるスペーサーを有するものであり、鏡板の一端部を前方から鏡裏板の一端部側に接近させて、その鏡板の一端部を鏡裏板の一端部側にスペーサーを介して間接的に止着するようにした態様を挙げることができる。
【0016】
また、本発明に係る引出しは、前端部に鏡裏板を有した引出し本体と、この引出し本体の前面側に装着される異なる素材厚みを有する複数の鏡板からなる鏡板群から選ばれた一の鏡板とを備え、前記鏡板の一端部を前方から前記鏡裏板の一端部側に接近させて、その鏡板の一端部を前記鏡裏板の一端部側に止着するようにした引出しであって、前記鏡板群から選ばれた前記一の鏡板の一端部と前記引出し本体との間に、部材の弾性変形を利用して係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する前方への移動を禁止する弾性係合手段と、前記鏡板の背面以外の部位に係合し得るように構成され係合した状態で前記鏡板の前記引出し本体に対する後方への移動を禁止する位置決め手段とを設けて前記鏡板の背面と前記鏡裏板との間の寸法を調節することにより、前記鏡板群における他の鏡板を前記鏡裏板に装着したときの前記他の鏡板の前面の位置と前記一の鏡板を前記鏡裏板に装着したときの一の鏡板の前面の位置とを等しくすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、鏡板の素材に拘わらず共通の引出し本体に取り付けることができる引出しを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態は、本発明をワゴンとして用いられる什器Wに適用した場合のものである。
【0021】
什器Wは、前面に開口部を有した什器本体W1に、上段の引出し1と下段の引出し1(L)とを上下方向に隣接させて収納したものである。
【0022】
上段の引出し1は、前端部に鏡裏板2を有した引出し本体10と、この引出し本体10の前面側に装着されるスチール製の鏡板3とを備え、鏡板3の一端部である下端部を前方から鏡裏板2の一端部である下端部側に接近させて、その鏡板3の下端部を鏡裏板2の下端部側に止着するようにしたものである。
【0023】
詳述すれば、引出し本体10は、上方に開放された収容空間を形成する箱体11と、この箱体11の前端に設けた鏡裏板2とを備えたものである。箱体11は、板金素材に打ち抜き及び曲げ加工を施して作られたスチール製のもので、底板12と、この底板12の左右両側縁から上方に延びる左右の側板13と、これら両側板13の後端及び底板12の後端を閉塞する背面板14とを備えている。
【0024】
鏡裏板2は、板金素材に打ち抜き及び曲げ加工を施すことによって作られたスチール製のもので、起立した平板状をなす裏板本体20と、この裏板本体20の下縁に一体に設けられた下鍔部21と、裏板本体20の上縁に一体に設けられた上鍔部22と、裏板本体20の左右両側縁にそれぞれ一体に設けられた側鍔部23とを備えている。下鍔部21は、裏板本体20の下縁から前方に延出する平板状のものである。上鍔部22は、裏板本体20の上縁から前方に延出する下延出部分22aと、この下延出部分22aの前縁から上方に起立する起立部分22bと、この起立部分22bの上縁から前方に延びる上延出部分22cとを備えた段付きフレーム状のものである。側鍔部23は、裏板本体20の両側縁から前方に延出する内延出部分23aと、この内延出部分23aの前縁から外側方に延びる拡開部分23bと、この拡開部分23bの外縁から前方に延びる外延出部分23cとを備えたものである。これら側鍔部23の内延出部分23aの外面側には箱体11の側板13の前端部が溶接により固着されているとともに、下鍔部21の下面後半部分には、箱体11の底板12の前端部が溶接により固着されている。
【0025】
この鏡裏板2の下鍔部21には、鏡板3の下端部を前方への移動を禁止した状態で取付けるための係合凹所24を設けるとともに、鏡板3の下端部を後方への移動を禁止した状態で位置決めするための切欠25を設けている。係合凹所24は、平面視左右方向に延びる素材端面からなる内周面27が平面視長方形をなす貫通孔状のもので、下鍔部21の前半部分に左右方向に間隔を空けて複数個設けられている。切欠25は、前方に開放された前後方向に細長い平面視長方形状のもので、前端部分に前方に向かって漸次幅広となるように拡開する後述する突起35案内用の傾斜案内面29を有している。切欠25の奥端は、後述する突起35を係止するための係止面28を有しており、板金素材の素材端面を露出させてある。
【0026】
鏡裏板2の上鍔部22には、鏡板3の上端部を上下方向に回動可能なように掛けるためのスチール用の掛け孔26が設けてある。すなわち、スチール用の掛け孔26は、スチール製の鏡板3を取付けるためのもので、上鍔部22の下延出部分22a及び起立部分22bに亘って形成された貫通孔状のものである。また、上鍔部22には、後述する樹脂製の鏡板3eの上端部を上下方向に回動可能に掛けるための樹脂用の掛け孔22dも設けられている。樹脂用の掛け孔22dは、上鍔部22の起立部分22b及び上延出部分22cに亘って形成された貫通孔状のものである。
【0027】
鏡板3は、板金素材に打ち抜き及び曲げ加工を施すことによって作られたスチール製のもので、起立した平板状をなす鏡板本体30と、この鏡板本体30の下縁に一体に設けられた下鍔部31と、鏡板本体30の上縁に一体に設けられた上鍔部32と、鏡板本体30の左右両側縁にそれぞれ一体に設けられた側鍔部33とを備えている。下鍔部31は、鏡板本体30の下縁から後方に延出する概ね平板状のものである。すなわち、下鍔部31は、鏡板本体30の下縁に連続する下延出部分32aと、この下延出部分32aの後縁に連続する隆起部分32bとを備えたもので、隆起部分32bは、組立状態において鏡裏板2の下鍔部21の下面に添接し得るように隆起している。上鍔部32は、鏡板本体30の上縁から後方に延出する延出部分31aと、この延出部分31aの後縁から下方に垂下する垂下部分31bとを有したものである。側鍔部33は、鏡板本体30の両側縁に連続する湾曲部分33aと、この湾曲部分33aの後縁から後方に延びる延出部分33bとを備えたものである。
【0028】
鏡板3の下鍔部31には、鏡裏板2の係合凹所24と協働して弾性係合手段Xを構成する係合爪34と、鏡裏板2の切欠25と協働して位置決め手段Yを構成する突起35とが設けられている。すなわち、弾性係合手段Xは、鏡裏板2の下鍔部21に設けられた係合凹所24と、鏡板3の下鍔部31に設けられ部材の弾性変形を利用して係合凹所24に係合する係合爪34とを備えたものであり、係合状態において鏡板3の引出し本体10に対する前方への移動を禁止するものである。位置決め手段Yは、鏡裏板2の下鍔部21に設けられた切欠25と、鏡板3の下鍔部31に設けられ切欠25に侵入して当該切欠25の奥端に係止される突起35とを備えたものであり、係止状態において鏡板3の引出し本体10に対する後方への移動を禁止するものである。
【0029】
具体的に説明すれば、下鍔部31には、係合凹所24に対応する数の係合爪34が設けられている。これら各係合爪34は、下鍔部31にプレス加工により一体に形成されたもので、前端が最も高く、後方に向かって漸次低くなる傾斜面39を有した形態をなしている。すなわちこれら各係合爪34は、下鍔部31に左右に延びるスリットを形成し、そのスリットに隣接する後側の部分をプレス加工により上方に膨出させることにより形成されている。そのため、これら係合爪34の前端側はスリットに対応した素材端面により形成され、当該素材端面を係合凹所24に係り合う係合面37としている。なお、この実施形態においては中央よりの2つの係合爪34aは係合凹所24に対応した幅寸法を有したものであり、左右両側近傍の2つの係合爪34bは係合凹所24よりも小さな幅寸法を有したものである。
【0030】
また、下鍔部31には、切欠25に対応する数の突起35が設けられている。これら各突起35は、下鍔部31にプレス加工により一体に形成されたもので、まず、下鍔部31に左右に延びるスリットを形成し、そのスリットと、下鍔部31の後縁との間に位置する部分をプレス加工により上方に膨出させることにより形成されている。そのため、これら突起35の後端側は下鍔部31の後縁に対応した素材端面により形成され、鏡裏板2に設けられた係止面28に当接する当接面38となっている。
【0031】
鏡板3の上鍔部32には、鏡裏板2のスチール用の掛け孔26に掛けるための掛け爪36が設けられている。具体的には、上鍔部32の垂下部分31bの下縁に掛け孔26に対応する数の掛け爪36が一体に突設されている。掛け爪36は、素材厚み寸法に対応する厚み寸法を備えたものであり、これら掛け爪36が係わり合うスチール用の掛け孔26は、スチール製の鏡板3の素材の厚み寸法に対応した前後寸法を有している。これにより
図4に示すように、組み付け状態においては鏡板3の上端部はこれら掛け爪36と掛け孔26との係合により引出し本体10に対して前後移動し得ないように保持されるようになっている。
【0032】
なお、この引出し1には、上述した鏡裏板2及び鏡板3に関連して施錠機構やラッチ操作機構が設けられるのは勿論であるが、これら施錠機構やラッチ操作機構は通常のものであるため、図示及び説明を省略する。
【0033】
次いで、この鏡板3を鏡裏板2に取付ける手順を説明する。本実施形態に係る引出し1は、鏡板3の鏡裏板2に対する組付けを工具を要することなく取付け得るよう、ビスや別体の部品を何ら用いない、所謂ノンビスにより行うことができる。すなわち本実施形態に係る引出し1は、鏡裏板2の上鍔部22に鏡板3の上鍔部32を回動可能に係わり合わせた上で、鏡板3をその下鍔部31が鏡裏板2の下鍔部21が平面視において重なり合う位置まで回動させ、下鍔部21、31同士を弾性係合手段Xと位置決め手段Yとによって直接取付けることができる。詳述すれば、まず、
図9に示すように、鏡板3を仰向け姿勢にした上でその鏡板3の掛け爪36を鏡裏板2のスチール用の掛け孔26に係合させる。その状態から
図10に示すように鏡板3を鏡裏板2に接近する方向に回動させて、鏡板3の下端部を鏡裏板2の下端部に接近させ、最終的に鏡板3の下鍔部31を鏡裏板2の下鍔部21の下面側に重なり合わせる。その際に、係合爪34が両下鍔部21、31の厚み方向の一時的な弾性変形を利用して対応する係合凹所24にそれぞれ係合するとともに、突起35が切欠25に侵入してその奥端に設けられた係止面28に当接して係止され、鏡板3の取り付けが完了する。この取付け状態においては、弾性係合手段X及び位置決め手段Yが、板金素材の素材端面27、37並びに28、38同士を当接させることにより鏡板3の引出し本体10に対する前後方向の位置決めを行うものである。言い換えれば、前述した取付け状態においては係合爪34の前端を構成する素材端面たる係合面37が係合凹所24の内周面27を形成する素材端面たる内周面27に当接して鏡板3の引出し本体10に対する前方への移動を禁止するとともに、突起35の後端を形成する素材端面たる当接面が切欠25の係止面28を構成する素材端面に当接して鏡板3の引出し本体10に対する後方への移動を禁止するようになっている。そして位置決め手段Yによって鏡板3の前端位置が調整されているため本実施形態では、鏡板3と鏡裏板2との間、詳細には鏡板本体30の裏面と鏡裏板2の上鍔部22並びに下鍔部21の前端との間に所定の前後寸法をなすクリアランスcが形成される。
【0034】
このような構成のものであれば、鏡裏板2の上鍔部22の前端及び下鍔部21の前端を、鏡板3の背面に当接することなく鏡板3を前後移動不能に取付けることができる。そのため、鏡板3を構成する素材の厚み寸法に影響されることなく種々の鏡板3(3e)を取付けることができるように設計することが容易になる。
【0035】
極端な場合、スチール製の鏡板3よりも素材厚み寸法の遙かに大きな樹脂製の鏡板3eを共通の鏡裏板2に取付けるようにすることも容易になる。その一例として、
図11、
図12及び
図13に示すように、上鍔部22及び下鍔部21の前端とスチール製鏡板3との背面のクリアランスcを適切に設定しておけば、鏡板3の前面を一致させた状態で共通の鏡裏板2にスチール製の鏡板3と樹脂製の鏡板3eとを選択的に取付けるようにすることもできる。
【0036】
樹脂製の鏡板3eは、同図に示すように、樹脂板からなる樹脂板本体30eの周縁を後方にリブ状に延出させた樹脂の一体成形品であり、上端部分の樹脂爪36eを鏡裏板2の樹脂用の掛け孔22dに掛けた状態で上記同様に回動させ、上記実施形態同様、各係合凹所24に対応する一端側たる下端に設けた弾性爪34eを係合させることによって取り付けている。
【0037】
同図では、樹脂製の鏡板3eの引出し本体10に対する後方への移動の禁止は、鏡板本体30に相当する樹脂板本体30eの背面側の鏡裏板2、詳細には上鍔部22及び下鍔部21の前端への当接によって実現されている。すなわち樹脂製の鏡板3eは突起35及び切欠25による位置決め手段Yを有さないため、本実施形態に含まれない参考例となる。換言すれば、樹脂製の鏡板3eの後方にはスチール製の鏡板3では形成されていた鏡裏板2との間のクリアランスcが存在していない。すなわち上述したクリアランスcの寸法は、スチール製の鏡板3と樹脂製の鏡板3eとの素材厚み寸法の差に対応している。すなわち、
図11、
図12及び
図13に示される樹脂製の鏡板3eの前端面の位置に等しくなるよう、スチール製の鏡板3の上記クリアランスc寸法すなわち突起35及び切欠25の位置が調整されている。
【0038】
また本実施形態では図示しないが、上記のようなクリアランスcの有無のみならず、当該クリアランスcの具体的な寸法を調整すべく突起35及び切欠25の位置を調整すれば他の種々の素材厚みを有する鏡板を引出し本体10に装着することが可能である。換言すれば、スチール製の鏡板3よりも素材厚みが大きな別異の鏡板が、鏡板3、3eの他に引出し本体10に対して装着しようとする鏡板群に存在していたとしても、突起35及び切欠25の位置を調整すれば、本明細書では図示していない種々の厚みを有する別異の鏡板を用いても、引出し1の前面が鏡板3、3eを装着したときと同じ位置となるように装着することができる。
【0039】
すなわち本実施形態に係る引出し1は、引出し本体1の前面側に装着される異なる素材厚みを有する複数の鏡板からなる鏡板群から選ばれた一の鏡板3とを備え、鏡板3の一端部を前方から前記鏡裏板2の下鍔部21側に接近させて、その下鍔部同士21、31を止着するようにした引出し1であって、前記鏡板群から選ばれた一の鏡板3の下鍔部31と引出し本体1との間に弾性係合手段Xと位置決め手段Yとを設けて鏡板3の背面である鏡板本体30の背面と鏡裏板2との間の寸法であるクリアランスcを調節することにより、前記鏡板群における他の鏡板を鏡裏板2に装着したときの他の鏡板の前面の位置と一の鏡板3を鏡裏板2に装着したときの鏡板3の前面の位置とを等しくすることを特徴とする。
【0040】
なお、以上の説明では上段の引出し1について説明したが、下段の引出し1(L)についても同様な考え方を適用することができる。
【0041】
下段の引出し1(L)は、上段の引出し1の鏡板3(以下「小さな鏡板3」と称する)よりも上下方向寸法が大きな鏡板3(以下「大きな鏡板3」と称する)を有したもので、この下段の引出し1(L)の引出し本体10は上段の引出し本体10にスペーサー4を装着したものであり、上段の引出し1と同一又は相当する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
スペーサー4は、
図14に示すように、樹脂により一体に成形されたもので、上面に鏡裏板2の係合凹所24に係合する係合要素を有するとともに、下面に係合凹所24及び切欠25にそれぞれ対応する部位に代替の係合凹所(図示せず)及び代替の切欠45を有している。スペーサー4の上下方向寸法は大きな鏡板3と小さな鏡板3の寸法差を埋める寸法を有している。
【0043】
大きな鏡板3は、上下方向寸法以外は小さな鏡板3と全く同一の構造をなすものであり、小さい鏡板3の構成要素に相当するものには同一の符号を付して説明を省略する。この大きな鏡板3は、小さな鏡板3と同じ手順で鏡裏板2の前面に取付けられるものであり、取付けた状態においては大きな鏡板3の係合爪34がスペーサー4の代替の係合凹所に係合するとともに、大きな鏡板3の突起35がスペーサー4の代替の切欠45に侵入して係止されるようになっている。すなわち大きな鏡板3の一端部側である下端部側はスペーサー4を介して間接的に鏡裏板2の一端部側である下端部側に取付けられている。大きな鏡板3の下鍔部31中央部下面には周知な構成のキャスタ(図示せず)が取付けられる。2h、4hは、キャスタを取付けるための取付け孔である。
【0044】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る引出し1は、クリアランスcの寸法或いは有無を適宜調節すべく弾性係合手段X、位置決め手段Yの位置を調節することによって、素材厚みの違う複数種類の鏡板3(3e)を、引出し本体10に対する前面の位置を揃えた状態で、共通の鏡裏板2に取付けることができるようにしている。
【0045】
そして、本実施形態では特に鏡板3がスチール製のものに対し上記構成を適用し、クリアランスcが生じるようにし、より素材の厚みが大きい樹脂製の鏡板3eを用いた場合に対し当該クリアランスcの寸法により素材の厚み寸法の差を吸収させることで、容易に鏡板3の前面の位置を揃えている。
【0046】
また鏡板3を引出し本体10に対し容易に取り付けるようにするための構造の一例として本実施形態では、鏡裏板2を、上縁に前方に突出する上鍔部22を有するとともに下縁に前方に突出する下鍔部21を有するものとし、鏡板3を、上縁に後方に突出する上鍔部32を有するとともに下縁に後方に突出する下鍔部31を有するものとし、鏡裏板2の上鍔部22に鏡板3の上鍔部32を回動可能に係わり合わせた上で、鏡板3をその下鍔部31が鏡裏板2の下鍔部21が平面視において重なり合う位置まで回動させ、下鍔部21、31同士を弾性係合手段Xと位置決め手段Yとによって直接又は間接的に取付けるようにしている。
【0047】
容易且つ確実な鏡板3の取り付けに資する弾性係合手段Xの一例として本実施形態では、鏡裏板2の下鍔部21側及び鏡板3の下鍔部31の何れか一方に設けられた係合凹所24と、他方に設けられ部材の弾性変形を利用して係合凹所24に係合する係合爪34とを備えた構成を適用している。
【0048】
加えて鏡板3の前面の位置を正確に位置決めし得る位置決め手段Yの一例として本実施形態では、鏡裏板2の下鍔部21側及び鏡板3の下鍔部31の何れか一方に設けられた切欠25と、他方に設けられ切欠25に侵入して当該切欠25の奥端に係止される突起35とを備えた構成を適用している。
【0049】
特に本実施形態では、厚みが薄く撓みを生じ易い素材としても鏡板3の確実な位置決めを実現するために、鏡裏板2及び鏡板3が板金素材により作られたスチール製の鏡板3を適用するとき、換言すればスペーサー4を用いないときは、弾性係合手段X及び位置決め手段Yが、板金素材の素材端面24、34並びに25、35同士を当接させることにより鏡板3の引出し本体10に対する前後方向の位置決めを行うようにしている。
【0050】
また本実施形態では、鏡板3の一端部は鏡裏板2の一端部に対し間接的に止着する態様として、引出し本体10が鏡裏板2の下端に取付けるスペーサー4を有するようにして、鏡板3の一端部を前方から鏡裏板2の一端部側に接近させて、その鏡板3の一端部を鏡裏板2の一端部側にスペーサー4を介して間接的に止着するようにした態様を適用し、これにより、寸法が異なる鏡板3に対しても同一の構成をなす鏡裏板2を用いることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では什器としてのワゴンを開示した態様を開示したが、勿論、什器であれば本発明に係る引出しを幅広く適用し得る。また、上記実施形態では鏡裏板をスチール素材のものとしたが勿論、樹脂製の鏡裏板を適用してもよい。また鏡板の具体的な形状や寸法、鏡板及び鏡裏板に搭載するラッチ機構や施錠機構等の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0053】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。