(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1ないし10のいずれかに記載のピンニング工法用の注入ノズルと、前記注入ノズルが着脱自在に装着された前記注入器本体と、から成る接着剤注入器を用い、前記壁体を補修するピンニング工法であって、
前記壁体を所定の深さまで穿孔して前記下穴を形成する穿孔工程と、
前記接着剤注入器により、前記下穴の開口部を封止しつつ前記下穴に接着剤を注入する注入工程と、
接着剤が注入された前記下穴に、アンカーピンを挿入・装着する装着工程と、を備えたことを特徴とするピンニング工法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ピンニングの対象となる壁体において、例えば外壁では、コンクリート躯体と下地モルタルとの界面、下地モルタルと張付けモルタルとの界面、張付けモルタルとタイルとの界面に、それぞれ「浮き部」が生ずる可能性がある。このため、現場によって「浮き部」の発生個所や発生数が区々となり、これら界面の一箇所のみ「浮き部」が生じている場合のみならず、複数個所に「浮き部」が生じている場合も珍しくはない。
一方、従来のピンニング工法用の注入ノズルでは、接着剤が、第1注入流路に連なるノズル内筒の吐出口から吐出されると共に、第2注入流路に連なるノズル外筒の漏出口から吐出される。このため、張付けモルタルとタイルとの界面を含む複数個所に「浮き部」が生じている壁体に対し、接着剤を効率良く注入することができる。しかし、張付けモルタルとタイルとの界面に生じた「浮き部」の容積が大きい場合(例えば、大型タイルや規格石の「ダンゴ張り」)や、張付けモルタルとタイルとの界面に「浮き部」が生じていない場合には、接着剤を効率良く注入することができない問題があった。
【0005】
本発明は、壁体に生ずる「浮き部」の数や発生個所等の性状に合わせて、接着剤を効率良く注入することができるピンニング工法用の注入ノズルおよびこれを用いたピンニング工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のピンニング工法用の注入ノズルは、注入器本体に装着して用いられ、壁体を所定の深さまで穿孔した下穴に、その開口部を封止しながら接着剤を注入するピンニング工法用の注入ノズルであって、下穴の奥部に臨む第1ノズル口と、下穴の開口部近傍に臨む第2ノズル口と、第1ノズル口に連通する第1接着剤流路と、第2ノズル口に連通する第2接着剤流路と、第1接着剤流路を開放し且つ第2接着剤流路を開放する全開放位置と、第1接着剤流路を開放し且つ第2接着剤流路を閉塞する第1開放位置と、第1接着剤流路を閉塞し且つ第2接着剤流路を開放する第2開放位置と、の相互間で接着剤の流路を切り替える流路切替え機構部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、流路切替え機構部を全開放位置に切り替えておいて、注入器本体から接着剤を送り込むと、接着剤は、第1接着剤流路を介して第1ノズル口から吐出されると共に、第2接着剤流路を介して第2ノズル口から吐出される。これにより、下穴の奥部および下穴の開口部近傍から接着剤を注入することができる。また、流路切替え機構部を第1開放位置に切り替えておいて、注入器本体から接着剤を送り込むと、接着剤は、第1接着剤流路を介して第1ノズル口のみから吐出される。これにより、下穴の奥部からのみ接着剤を注入することができる。また、流路切替え機構部を第2開放位置に切り替えておいて、注入器本体から接着剤を送り込むと、接着剤は、第2接着剤流路を介して第2ノズル口のみから吐出される。これにより、下穴の開口部近傍からのみ接着剤を注入することができる。
したがって、壁体において、下穴の開口部近傍を含む複数個所に「浮き部」が発生している場合には、流路切替え機構部を全開放位置に切り替え、下穴の開口部近傍に「浮き部」が発生していない場合には、流路切替え機構部を第1開放位置に切り替えて、接着剤の注入を行うことができる。さらに、下穴の開口部近傍に生じた「浮き部」の容積が大きい場合には、流路切替え機構部を、注入途中から第2開放位置に切り替えて、接着剤の注入を行うことができる。このように、壁体に生ずる「浮き部」の数や発生個所等の性状に合わせて、接着剤を効率良く注入することができる。
【0008】
この場合、上流側を前記注入器本体に連通し、下流側を第1接着剤流路および第2接着剤流路に連通する共有接着剤流路と、第1ノズル口を有すると共に、第1接着剤流路に連通する第1注入流路を有する第1ノズル部と、第2ノズル口を有すると共に、第2接着剤流路に連通する第2注入流路を有する第2ノズル部と、第1ノズル部および第2ノズル部を保持すると共に、第1接着剤流路、第2接着剤流路および共有接着剤流路が形成されたノズルボディと、を備え、第1接着剤流路および第2接着剤流路は、相互に平行に配設され且つ上流端を共有接着剤流路に連通する第1直線流路部および第2直線流路部を有し、流路切替え機構部は、ノズルボディにおいて、第1直線流路部と第2直線流路部との途中部分に介設され、または第1直線流路部および第2直線流路部と共有接着剤流路との境界部分に介設されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第1ノズル部に連なる第1接着剤流路および第2ノズル部に連なる第2接着剤流路が形成されたノズルボディに、流路切替え機構部を作り込むことで、流路切替え機構部を簡単に構成することができる。また、流路切替え機構部を、相互に平行に配設された第1直線流路部と第2直線流路部との途中部分に介設し、或いは第1直線流路部および第2直線流路部と共有接着剤流路との境界部分に介設することで、流路切替え機構部をバルブ形式とすることができ、この点でも、流路切替え機構部を適切且つ簡単に構成することができる。
【0010】
この場合、流路切替え機構部は、第1直線流路部および第2直線流路部に直交し、内部周面壁に第1直線流路部および第2直線流路部が開口する円柱空間状の弁座部と、弁座部に嵌合し、軸線廻りに回転操作される円柱状の弁体部と、を有し、弁体部は、第1直線流路部に対応する第1貫通孔と、第2直線流路部に対応する第2貫通孔と、を有し、弁体部は、全開放位置、第1開放位置および第2開放位置に対応して、3つの回転角度位置に回転操作可能に構成され、第1貫通孔と第2貫通孔とは、3つの回転角度位置において、それぞれ全開放位置、第1開放位置および第2開放位置となるように、軸線廻りの貫通角度が異なることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、弁体部を3つの回転角度位置に適宜回転操作するだけで、第1貫通孔および第2貫通孔を介して、接着剤の流路を全開放位置、第1開放位置および第2開放位置の相互間で簡単に切り替えることができる。また、流路切替え機構部を、部品点数の少ない簡単な構造とすることができ、注入作業後の分解、洗浄、組立を容易に行うことができる。
【0012】
この場合、ノズルボディおよび流路切替え機構部が、樹脂で形成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、流路切替え機構部を含んでノズルボディを使い捨てとすることができる。したがって、注入作業後の分解、洗浄、組立を容易に行うことができる。
【0014】
また、流路切替え機構部は、第1直線流路部および第2直線流路部に直交し、内部周面壁に第1直線流路部および第2直線流路部が開口する円柱空間状の弁座部と、弁座部に嵌合すると共に、軸線廻りに回転操作される円柱状の弁体部と、を有し、弁体部は、第1直線流路部に対応する第1切欠き溝と、第2直線流路部に対応する第2切欠き溝と、を有し、弁体部は、全開放位置、第1開放位置および第2開放位置に対応して、3つの回転角度位置に回転操作可能に構成され、第1切欠き溝と第2切欠き溝とは、3つの回転角度位置において、それぞれ全開放位置、第1開放位置および第2開放位置となるように、軸線廻りの切欠き角度が異なることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、弁体部を3つの回転角度位置に適宜回転操作するだけで、第1切欠き溝および第2切欠き溝を介して、接着剤の流路を全開放位置、第1開放位置および第2開放位置の相互間で簡単に切り替えることができる。また、流路切替え機構部を、部品点数の少ない簡単な構造とすることができ、注入作業後の分解、洗浄、組立を容易に行うことができる。
【0016】
同様に、流路切替え機構部は、第1直線流路部および第2直線流路部に直交し、内部周面壁に第1直線流路部および第2直線流路部が開口する円柱空間状の弁座部と、弁座部に嵌合すると共に、軸線廻りに回転操作される円柱状の弁体部と、を有し、弁体部は、第1直線流路部および第2直線流路部に対応する単一且つ断面長円状を為す長円状貫通孔を有し、弁体部は、全開放位置、第1開放位置および第2開放位置に対応して、3つの回転角度位置に回転操作可能に構成され、長円状貫通孔は、3つの回転角度位置において、それぞれ全開放位置、第1開放位置および第2開放位置となるように、軸方向に対し斜めに延在していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、弁体部を3つの回転角度位置に適宜回転操作するだけで、長円状貫通孔を介して、接着剤の流路を全開放位置、第1開放位置および第2開放位置の相互間で簡単に切り替えることができる。また、流路切替え機構部を、部品点数の少ない簡単な構造とすることができ、注入作業後の分解、洗浄、組立を容易に行うことができる。
【0018】
また、弁座部は、雌ネジ状を為し、弁体部は、弁座部に螺合する雄ネジ状を為していることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、弁座部および弁体部をネジ機構とすることで、接着剤の圧力による弁体部の浮き或いは抜けを防止することができ、その分、構造を単純化することができる。なお、この場合のネジは、ネジ山のピッチが小さいものを用いることが好ましい。
【0020】
また、流路切替え機構部は、第1直線流路部および第2直線流路部に直交し、内部周面壁に第1直線流路部および第2直線流路部が開口するシリンダー状の弁座部と、弁座部に嵌合すると共に、軸方向にスライド操作されるプランジャー状の弁体部と、を有し、弁体部は、第1直線流路部および第2直線流路部に選択的に臨む第1環状溝および第2環状溝を有し、弁体部は、全開放位置、第1開放位置および第2開放位置に対応して、3つの進退位置にスライド操作可能に構成され、第1環状溝と第2環状溝とは、3つの進退位置において、それぞれ全開放位置、第1開放位置および第2開放位置となるように、第1直線流路部と第2直線流路部との離間寸法と同寸法、軸方向に離間して配設されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、弁体部を3つの進退位置に適宜スライド操作するだけで、第1環状溝および第2環状溝を介して、接着剤の流路を全開放位置、第1開放位置および第2開放位置の相互間で簡単に切り替えることができる。また、第1環状溝および第2環状溝では、流路の断面積を第1直線流路部および第2直線流路部の断面積と同等とすることができ、流路摩擦損失による圧力損失を低く抑えることができる。しかも、流路切替え機構部を、部品点数の少ない簡単な構造とすることができ、注入作業後の分解、洗浄、組立を容易に行うことができる。
【0022】
同様に、流路切替え機構部は、第1直線流路部および第2直線流路部に直交し、内部端面壁に第1直線流路部および第2直線流路部が開口する円柱空間状の弁座部と、弁座部に嵌合すると共に、軸線廻りに回動操作される円柱状の弁体部と、を有し、弁体部は、同軸上において、第1直線流路部および第2直線流路部に対応する単一且つ断面円弧状を為す円弧状貫通孔を有し、弁体部は、全開放位置、第1開放位置および第2開放位置に対応して、3つの回動角度位置に回動操作可能に構成され、円弧状貫通孔は、3つの回転角度位置において、それぞれ全開放位置、第1開放位置および第2開放位置となるように、第1直線流路部と第2直線流路部との中間点を中心とする略半円の円弧状に形成されていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、弁体部を3つの回動角度位置に適宜回転操作するだけで、円弧状貫通孔を介して、接着剤の流路を全開放位置、第1開放位置および第2開放位置の相互間で簡単に切り替えることができる。
【0024】
本発明の他のピンニング工法用の注入ノズルは、注入器本体に装着して用いられ、 壁体を所定の深さまで穿孔した下穴に、その開口部を封止しながら接着剤を注入するピンニング工法用の注入ノズルであって、下穴の奥部に臨む第1ノズル口と、下穴の開口部近傍に臨む第2ノズル口と、第1ノズル口に連通する第1接着剤流路と、第2ノズル口に連通する第2接着剤流路と、上流側を注入器本体に連通し、下流側を第1接着剤流路および第2接着剤流路に連通する共有接着剤流路と、第1接着剤流路および第2接着剤流路と共有接着剤流路との間に介設した流路開閉アタッチメントと、を備え、流路開閉アタッチメントは、第1接着剤流路と共有接着剤流路との間に選択的に介設される、流路閉塞用の第1パッキンおよび流路開放用の第1Oリングと、第2接着剤流路を共有接着剤流路との間に選択的に介設される、流路閉塞用の第2パッキンおよび流路開放用の第2Oリングと、介設した第1パッキンまたは第1Oリングと、介設した第2パッキンまたは第2Oリングと、を共有接着剤流路側から押さえるアタッチメント本体と、を有することを特徴とする。
【0025】
接着剤を注入するこの種の注入ノズルでは、作業完了後或いは接着剤の硬化時間を勘案して、注入ノズルを分解して洗浄する必要がある。
この構成によれば、注入ノズルを洗浄した後の組立てにおいて、次作業における壁体の「浮き部」の性状に合わせて、接着剤の注入形態を調整することができる。具体的には、壁体において、下穴の開口部近傍を含む複数個所に「浮き部」が発生している場合には、第1Oリングを装着して第1接着剤流路を開放すると共に、第2Oリングを装着して第2接着剤流路を開放する。これにより、第1ノズル口および第2ノズル口から接着剤の注入するようにする。また、下穴の開口部近傍に「浮き部」が発生していない場合には、第1Oリングを装着して第1接着剤流路を開放すると共に、第2パッキンを装着して第2接着剤流路を閉塞する。これにより、第1ノズル口からのみ接着剤の注入するようにする。さらに、下穴の開口部近傍にのみ「浮き部」が発生している場合には、第1パッキンを装着して第1接着剤流路を閉塞すると共に、第2Oリングを装着して第2接着剤流路を開放する。これにより、第2ノズル口からのみ接着剤の注入するようにする。このように、接着剤の流路を変更することで、壁体に生ずる「浮き部」の数や発生個所等の性状に合わせて、接着剤を効率良く注入することができる。
【0026】
本発明のピンニング工法は、上記したピンニング工法用の注入ノズルと、注入ノズルが着脱自在に装着された注入器本体と、から成る接着剤注入器を用い、壁体を補修するピンニング工法であって、壁体を所定の深さまで穿孔して下穴を形成する穿孔工程と、接着剤注入器により、下穴の開口部を封止しつつ下穴に接着剤を注入する注入工程と、接着剤が注入された下穴に、アンカーピンを挿入・装着する装着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、壁体の要補修箇所に下穴を穿孔した後、接着剤注入器により下穴に接着剤を注入する。その際、壁体におけるの「浮き部」の数や発生個所等の性状に合わせて、第1ノズル部および第2ノズル部から接着剤を注入する場合と、第1ノズル部からのみ接着剤を注入する場合と、第2ノズル部からのみ接着剤を注入する場合と、の3通りの注入形態のうちから適切な注入形態を執ることができる。したがって、接着剤の下穴への充填および「浮部」への充填を、壁体の性状に合わせて適切且つ効率良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るピンニング工法用の注入ノズル(以下、単に「注入ノズル」と言う)およびこれを用いたピンニング工法について説明する。ピンニング工法における注入ノズルは、これが装着される注入器本体と共に、接着剤を下穴に注入するための接着剤注入器を構成する。ピンニング工法は、「浮き」が生じた建物の外壁や内壁等の壁体の要補修箇所に下穴を穿孔し、この下穴に接着剤注入器を用いて接着剤を注入し、その後、下穴にアンカーピンを装填して、これを補修する(剥落防止)ものである。以下、建物の外壁を例に、これを補修する場合について説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、外壁と接着剤注入器との関係を表した断面模式図である。同図に示すように、外壁1は、コンクリート躯体2と、コンクリート躯体2の表面に塗り付けた下地モルタル3と、下地モルタル3の表面に塗り付けた張付けモルタル4と、張付けモルタル4の表面に張り付けたタイル等の仕上げ材5とで構成されている。なお、仕上げ材5には、大型タイルや規格石(石材)も含まれる。
【0031】
本実施形態の外壁1では、コンクリート躯体2と下地モルタル3との界面に第1浮き部6aが、下地モルタル3と張付けモルタル4との界面に第2浮き部6bが、さらに張付けモルタル4と仕上げ材5との界面に第3浮き部6cが生じているものとする。外壁1には、これを補修すべく、仕上げ材5、張付けモルタル4および下地モルタル3を貫通し、且つコンクリート躯体2を所定の深さまで穿孔した下穴8が形成されている。そして、外壁1の補修に際し、この下穴8に接着剤注入器10により接着剤Rが注入される。
【0032】
[接着剤注入器]
ここで、
図1および
図2を参照して、接着剤注入器10について簡単に説明する。両図に示すように、接着剤注入器10は、接着剤Rを供給するポンプ形式の注入器本体11と、注入器本体11の先端部に着脱自在に装着されたピンニング工法用の注入ノズル12と、で構成されている。
【0033】
注入器本体11は、有底円筒状の接着剤貯留部15と、接着剤貯留部15が着脱自在に取り付けられたポンプ部16と、ポンプ部16に保持された略「L」字状の操作レバー17とを備えている。ポンプ部16の基端側には、内部に接着剤Rが貯留された接着剤貯留部15が取り付けられ、先端側には注入ノズル12が装着されている。接着剤貯留部15を手持ちすると共に、手動で操作レバー17を操作する(ポンピング)ことにより、ポンプ部16を介して注入ノズル12から接着剤Rが一定量ずつ吐出される。
【0034】
接着剤Rには、いわゆる2液タイプのエポキシ樹脂接着剤を用いることが好ましい。もっとも、接着剤Rは、粘性を有する無機接着剤であってもよい。なお、注入器本体11は、上記のような、手動でポンプ駆動を行うタイプの他、モーターやエアーアクチュエータ等により自動でポンプ駆動を行うタイプであってもよい。
【0035】
[注入ノズル]
次に、
図3の構造図および
図4の分解図を参照して、注入ノズル12について詳細に説明する。注入ノズル12は、注入器本体11に装着される装着部21と、装着部21に連なるノズルボディ22と、ノズルボディ22の先端部に取り付けられた開口封止部23と、ノズルボディ22に支持され、開口封止部23を軸方向に貫通して先方に延びる第1ノズル部24と、第1ノズル部24と開口封止部23との間隙に構成された第2ノズル部25と、を備えている。
【0036】
[第1ノズル部]
第1ノズル部24は、下穴8に挿入され下穴8の奥部に接着剤Rを注入する部位であり、ステンレスやスチール等の細径の金属パイプにより、注射針様に形成されている。第1ノズル部24の基端部には、ロート状に拡開した規制部31が形成され、先端部には斜めにカットした第1ノズル口32が形成されている。また、第1ノズル部24の内部には、後述するノズルボディ22の第1接着剤流路61に連通する第1注入流路33が構成されている。そして、第1ノズル部24は、軸方向において、後述するノズルボディ22のノズル保持部64に進退自在(スライド自在)に保持され、開口封止部23を遊嵌状態で貫通し、開口封止部23から大きく突出している。
【0037】
[開口封止部]
開口封止部23は、接着剤Rの注入に際し下穴8の開口部8aを封止する部位であり、下穴8の開口部8aを封止する封止部本体35と、封止部本体35をノズルボディ22に締結する締結部36と、を備えている。封止部本体35は、開口部8aを直接封止するテーパー形状のテーパー部41と、テーパー部41の基端側に連なるストレート部42と、環状の外周段部43を存してストレート部42の基端側に連なるボディ接合部44と、で一体に形成されている。そして、封止部本体35は、フッ素ゴム等の耐薬品性の弾性材料で形成され、締結部36は、ステンレスやスチール等で形成されている。
【0038】
ボディ接合部44は、ストレート部42に対し十分に太径に形成され、基端側の内部にノズルボディ22の先端部が接合される接合凹部46が形成されている。また、テーパー部41、ストレート部42およびボディ接合部44には、その軸心部に第1ノズル部24が遊嵌される遊嵌孔47が貫通形成されている。そして、この遊嵌孔47の基端が接合凹部46に連通している。いうまでもないが、遊嵌孔47とこれに挿通(貫通)する第1ノズル部24とは、間隙を存して同軸上に配設されている。
【0039】
締結部36は、上記の外周段部43に係合する引付け部位51と、引付け部位51に連なりノズルボディ22の先端部に螺合する螺合部位52とで一体に形成されている。螺合部位52を介して、締結部36をノズルボディ22の先端部に螺合すると、引付け部位51により、封止部本体35がノズルボディ22側に引き付けられる。これにより、封止部本体35の接合凹部46とノズルボディ22の先端部とが接合され、且つこの部分が封止される。なお、
図3(a)中の符号53は、締結部36をノズルボディ22に螺合するための工具掛け部である。
【0040】
[第2ノズル部]
第2ノズル部25は、下穴8の開口部8a近傍に接着剤Rを注入する部位であり、封止部本体35に形成された上記の遊嵌孔47と第1ノズル部24との間隙に構成された第2注入流路55と、第2注入流路55に連通し、封止部本体35の先端と第1ノズル部24との間に構成された環状の第2ノズル口56と、有している。そして、第2注入流路55は、後述するノズルボディ22の第2接着剤流路62に連通している。上述のように、第1ノズル部24は、ノズルボディ22のノズル保持部64にがたつきなく保持されており、第1ノズル部24と封止部本体35との間に構成された第2注入流路55の流路断面は、適切に維持されている。
【0041】
[ノズルボディ]
ノズルボディ22は、ステンレスやスチール等で略円柱状に形成されている。ノズルボディ22の内部には、下流側を第1ノズル部24の第1注入流路33に連通する第1接着剤流路61と、下流側を第2ノズル部25の第2注入流路55に連通する第2接着剤流路62と、上流側を注入器本体11に連通し下流側を第1接着剤流路61および第2接着剤流路62に連通する共有接着剤流路63と、が形成されている。また、ノズルボディ22の内部には、第1接着剤流路61の下流端から延びる嵌合孔65で構成された上記のノズル保持部64が形成されている。さらに、ノズルボディ22には、第1接着剤流路61と第2接着剤流路62とを選択的に流路切替えするバルブ形式の流路切替え機構部66が組み込まれている。なお、流路切替え機構部66については、後に詳述する。
【0042】
第1接着剤流路61は、直線状に延在しており、第1接着剤流路61と第1注入流路33(第1ノズル部24)とは同軸上に配設されている。嵌合孔65(ノズル保持部64)に対し第1接着剤流路61は太径に形成され、第1接着剤流路61と嵌合孔65との間の段部67に、第1ノズル部24の規制部31が突き当たることにより、第1ノズル部24の前進端位置が規制される。なお、第1ノズル部24の後退端位置は、上記の流路切替え機構部66により規制される。
【0043】
第2接着剤流路62は、第1接着剤流路61と平行に延在する第2直線流路部62aと、第2直線流路部62aの下流側に連なる細径流路部62bと、細径流路部62bの下流側に連なる円形のオフセット流路部62cと、を有している。オフセット流路部62cは、接着剤溜りを構成しており、このオフセット流路部62cに第2ノズル部25の第2注入流路55が連通している。なお、以降の説明では、第2接着剤流路62の第2直線流路部62aに対応して、第1接着剤流路61を第1直線流路部61aと称呼する場合がある。
【0044】
ノズルボディ22の先端部には、前方雄ネジ部71および環状接合部72が形成されており、環状接合部72の先端面には、円形の窪み部73が形成されている。この窪み部73は、封止部本体35の接合凹部46の端壁に対峙して密閉空間を構成し、この密閉空間により上記のオフセット流路部62cが構成されている。締結部36を前方雄ネジ部71に螺合すると、封止部本体35がノズルボディ22側に強く引き付けられる。これにより、ノズルボディ22の環状接合部72に封止部本体35の接合凹部46が強く密接し、オフセット流路部62cが封止される。
【0045】
また、ノズルボディ22の基端部には、後方雄ネジ部75が形成されており、後方雄ネジ部75の基端面には、円形の浅溝部76が形成されている。この浅溝部76は、ノズルボディ22に取り付けた上記の装着部21の内壁と対峙して密閉空間を構成し、この密閉空間により上記の共有接着剤流路63が構成されている。装着部21を後方雄ネジ部75に螺合すると、装着部21とノズルボディ22との間に介設され太径Oリング77により、共有接着剤流路63が封止される。
【0046】
[装着部]
装着部21は、注入ノズル12を注入器本体11に装着する部位であり、ステンレスやスチール等で形成されている。装着部21は、ノズルボディ22の後方雄ネジ部75に螺合する有底円筒状の装着部本体81と、装着部本体81の外端面に突設した装着ネジ部82と、で一体に形成されている。また、装着部本体81および装着ネジ部82の軸心部には、連通流路83が形成されている。
【0047】
太径Oリング77を介在させた状態で、ノズルボディ22に装着部21を螺合すると、連通流路83の下流端が共有接着剤流路63に連通する。また、この状態で、装着ネジ部82を介して注入ノズル12を注入器本体11に螺合すると、注入ノズル12が注入器本体11に装着されると共に、連通流路83の上流端が注入器本体11(の送込み流路)に連通する。なお、
図3(a)中の符号84は、装着部21をノズルボディ22および注入器本体11に螺合するための工具掛け部である。
【0048】
ポンピングにより注入器本体11から送り込まれた接着剤Rは、共有接着剤流路63に流れ込み、更に共有接着剤流路63から分流して、第1接着剤流路61および第2接着剤流路62に導かれる。第1接着剤流路61に導かれた接着剤Rは、第1注入流路33を通って第1ノズル口32から吐出される。同様に、第2接着剤流路62に導かれた接着剤Rは、第2注入流路55を通って第2ノズル口56から吐出される。
【0049】
[流路切替え機構部]
ここで、
図3ないし
図5を参照して、流路切替え機構部66について詳細に説明する。流路切替え機構部66は、相互に平行に配設した第1直線流路部61a(第1接着剤流路61)および第2直線流路部62aに臨み、第1接着剤流路61と第2接着剤流路62とを選択的に流路切替え可能に構成されている。具体的には、流路切替え機構部66は、第1接着剤流路61を開放し且つ第2接着剤流路62を開放する全開放位置と、第1接着剤流路61を開放し且つ第2接着剤流路62を閉塞する第1開放位置と、第1接着剤流路61を閉塞し且つ第2接着剤流路62を開放する第2開放位置と、の間で接着剤Rの流路を切り替え得るようになっている。なお、第1直線流路部61aと第2直線流路部62aとは相互に平行に配設され、且つ同径に形成されている。
【0050】
流路切替え機構部66を全開放位置に切り替えると、接着剤Rは第1ノズル口32および第2ノズル口56から吐出され、第1開放位置に切り替えると、接着剤Rは第1ノズル口32からのみ吐出され、さらに第2開放位置に切り替えると、接着剤Rは第2ノズル口56からのみ吐出される。詳細は後述するが、外壁1における「浮き」の発生個所や数等に応じて、接着剤Rの注入形態を適宜変更できるようになっている。
【0051】
流路切替え機構部66は、第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aに直交し、内部周面壁に第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aが上下に開口した雌ネジ状の弁座部91と、弁座部91に螺合し、軸線廻りに回転操作される雄ネジ状の弁体部92と、を有している。弁体部92は、弁座部91に螺合する弁体部本体94と、弁体部本体94を回転操作するための操作摘み部95と、操作摘み部95を弁体部本体94に固定するユリヤネジ等の小ネジ96と、を有している。
【0052】
弁体部本体94には、第1直線流路部61aに対応する第1貫通孔97と、第2直線流路部62aに対応する第2貫通孔98と、が第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aの離間寸法分の距離を隔てて上下に、且つ軸線廻りに相互に直交するように貫通形成されている。第1貫通孔97は、第1直線流路部61aより細径に形成され、その開口縁部には2つの第1切欠き部97aが形成されている。同様に、第2貫通孔98は、第2直線流路部62aより細径に形成され、その開口縁部には2つの第2切欠き部98aが形成されている(いずれも
図5参照)。また、弁体部本体94の上部は、ノズルボディ22から露出しており、この部分に操作摘み部95が廻止め状態で係合し、且つ操作摘み部95は、小ネジ96により弁体部本体94に固定されている。
【0053】
ノズルボディ22から露出するように設けられた操作摘み部95は、弁体部本体94の位置からノズルボディ22の軸方向先方に延在しており(
図3(a)参照)、この状態(角度0°)が、上記の第1開放位置に対応している。そして、この第1開放位置から軸線廻りに角度45°回転させた位置が全開放位置に対応し、さらにこの全開放位置から軸線廻りに角度45°回転させた位置(第1開放位置から角度90°回転させた位置)が第2開放位置に対応している(
図5参照)。なお、詳細は後述するが、現場における使用頻度は、経験的に第1開放位置、全開放位置、第2開放位置の順となる。
【0054】
ノズルボディ22と操作摘み部95との間には、弁体部本体94に巻回するようにして弁部Oリング99が介設されている。弁部Oリング99は、操作摘み部95に押圧されて変形することにより、弁座部91と弁体部92との間隙を封止している。弁座部91と弁体部92とで構成される実施形態のネジ機構は、ピッチの短い1条ネジで構成されており、操作摘み部95を全開放位置、第1開放位置および第2開放位置の相互間における回転角度操作に際し、弁部Oリング99は変形状態を維持する。これにより、ポンピング時において、弁座部91と弁体部92との間隙からの接着剤Rの漏れが防止される。
【0055】
図5は、流路切替え機構部66の切替え操作を表している。同図に示すように、弁体部92に形成された第1貫通孔97と第2貫通孔98とは、軸線廻りにおいて相互に直交しており、また第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aは、ノズルボディ22の軸方向に延在している。3つの回転角度操作位置は、使用頻度の多い順に第1開放位置(
図5(a))、全開放位置(
図5(b))、第2開放位置(
図5(c))となっており、第1開放位置における操作摘み部95は、ノズルボディ22の軸方向に向いている(これが「デフォルト」角度0°)。
【0056】
第1開放位置において弁体部92は、第1貫通孔97が角度0°の方向を向き、第2貫通孔98が角度90°の方向を向いている(
図5(a)参照)。この状態では、第1切欠き部97aを含む第1貫通孔97が第1直線流路部61aに臨み、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となる。一方、第2切欠き部98aを含む第2貫通孔98は第2直線流路部62aから外れ、第2直線流路部62aは閉塞状態(非連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1直線流路部61aを介して第1ノズル部24(第1ノズル口32)からのみ吐出される。
【0057】
第1開放位置から操作摘み部95を角度45°左廻りに回転させた全開放位置では、弁体部92は、第1貫通孔97が角度45°の方向を向き、第2貫通孔98が角度逆45°の方向を向いている(
図5(b)参照)。この状態では、第1切欠き部97aを含む第1貫通孔97が第1直線流路部61aに臨むと共に、第2切欠き部98aを含む第2貫通孔98は第2直線流路部62aに臨む。これにより、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となり、第2直線流路部62aも開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1直線流路部61aを介して第1ノズル部24(第1ノズル口32)から、および第2直線流路部62aを介して第2ノズル部25(第2ノズル口56)からそれぞれ吐出される。
【0058】
全開放位置から操作摘み部95を更に角度45°(第1開放位置から角度90°)左廻りに回転させた第2開放位置では、弁体部92は、第1貫通孔97が角度90°の方向を向き、第2貫通孔98が角度0°の方向を向いている(
図5(c)参照)。この状態では、第1直線流路部61aは閉塞状態(非連通状態)となり、第2直線流路部62aは開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第2直線流路部62aを介して第2ノズル部25(第2ノズル口56)からのみ吐出される。なお、操作摘み部95は、ノズルボディ22の上面に設けた凸部22aの回転規制により左廻りに回転操作されるようになっているが、右廻りに回転操作されるものであってもよい。
【0059】
[変形例]
ここで、
図6を参照して、第1実施形態の第1変形例に係る流路切替え機構部66について説明する。この変形例では、弁体部92において、第1貫通孔97が第1直線流路部61aと同径に形成されると共に、第2貫通孔98が第2直線流路部62aと同径に形成されている。また、上記と同様に、第1貫通孔97と第2貫通孔98とは、軸線廻りにおいて相互に直交している。
【0060】
第1開放位置において弁体部92は、第1貫通孔97が角度0°の方向を向き、第2貫通孔98が角度90°の方向を向いている(
図6(a)参照)。この状態では、第1貫通孔97が第1直線流路部61aに臨み、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となる。一方、第2貫通孔98は第2直線流路部62aから外れ、第2直線流路部62aは閉塞状態(非連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24からのみ吐出される。
【0061】
第1開放位置から操作摘み部95を角度45°左廻りに回転させた全開放位置では、弁体部92は、第1貫通孔97が角度45°の方向を向き、第2貫通孔98が角度逆45°の方向を向いている(
図6(b)参照)。この状態では、第1貫通孔97が第1直線流路部61aに斜めに臨むと共に、第2貫通孔98は第2直線流路部62aに斜めに臨む。これにより、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となり、第2直線流路部62aも開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24および第2ノズル部25からそれぞれ吐出される。
【0062】
全開放位置から操作摘み部95を更に角度45°(第1開放位置から角度90°)左廻りに回転させた第2開放位置では、弁体部92は、第1貫通孔97が角度90°の方向を向き、第2貫通孔98が角度0°の方向を向いている(
図6(c)参照)。この状態では、第1直線流路部61aは閉塞状態(非連通状態)となり、第2直線流路部62aは開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第2ノズル部25からのみ吐出される。
【0063】
次に、
図7および
図8を参照して、第1実施形態の第2変形例および第3変形例に係る流路切替え機構部66について説明する。両変形例では、弁体部92に、第1貫通孔97に代えて第1切欠き溝101が形成されると共に、第2貫通孔98に代えて第2切欠き溝102が形成されている。第2変形例の操作摘み部95は、左廻りに回転操作され、第3変形例の操作摘み部95は、右廻りに回転操作される。第2変形例と第3変形例とは、操作摘み部95の回転操作方向が異なるため、第1切欠き溝101および第2切欠き溝102の軸線廻りの配置が異なるものの、基本構造は同一となる。そこで以下、第2変形例について説明し、第3変形例の説明は省略する。
【0064】
弁体部92の弁体部本体94には、第1直線流路部61aに対応して、軸線廻りに角度270°に亘って切り欠いた第1切欠き溝101と、残余の角度90°に亘る第1非切欠き部103が形成されている。同様に、弁体部本体94には、第2直線流路部62aに対応して、軸線廻りに角度270°に亘って切り欠いた第2切欠き溝102と、残余の角度90°に亘る第2非切欠き部104が形成されている。第1切欠き溝101(および第1非切欠き部103)と、第2切欠き溝102(および第2非切欠き部104)とは、操作摘み部95の回転操作方向に角度90°位置ズレして配設されている。
【0065】
第1開放位置における弁体部92は、第1切欠き溝101が第1直線流路部61aに臨む一方、第2非切欠き部104が第2直線流路部62aに臨んでいる(
図7(a)参照)。この状態では、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となり、第2直線流路部62aは閉塞状態(非連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24からのみ吐出される。
【0066】
全開放位置における弁体部92は、第1切欠き溝101が第1直線流路部61aに臨むと共に、第2切欠き溝102が第2直線流路部62aに臨んでいる(
図7(b)参照)。この状態では、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となり、第2直線流路部62aも開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24および第2ノズル部25からそれぞれ吐出される。
【0067】
第2開放位置における弁体部92は、第1非切欠き部103が第1直線流路部61aに臨む一方、第2切欠き溝102が第2直線流路部62aに臨んでいる(
図7(c)参照)。この状態では、第1直線流路部61aは閉塞状態(非連通状態)となり、第2直線流路部62aは開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第2ノズル部25からのみ吐出される。
【0068】
[注入形態]
流路切替え機構部66の切替え操作は、例えば
図1において、第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cのうち、第1浮き部6aおよび第2浮き部6bの2箇所に「浮き」が生じている場合には、操作摘み部95を第1開放位置に切り替えて、接着剤Rを第1ノズル部24からのみ吐出させる。また、第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cの3箇所に「浮き」が生じている場合や、第1浮き部6aおよび第3浮き部6cの2箇所に「浮き」が生じている場合には、操作摘み部95を全開放位置に切り替えて、接着剤Rを第1ノズル部24および第2ノズル部25から吐出させる。
【0069】
また、この場合において、第3浮き部6cの容積が極端に大きい場合、全開放位置における接着剤Rの注入をある程度行った後、接着剤注入器10の注入姿勢を維持したまま、操作摘み部95を第2開放位置に切り替えて、接着剤Rの注入を続行する。すなわち、注入の最終段階で、接着剤Rを第2ノズル部25からのみ吐出させ、第3浮き部6cに接着剤Rを行き渡らせるようにする。
【0070】
[ピンニング工法]
次に、
図9および
図10を参照して、上記の接着剤注入器10を用いたピンニング工法について説明する。このピンニング工法では、前工程として、ハンマー等により外壁1を打鍵して第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cを探査し、下穴8の穿孔位置(タイルの中心部表面にマーキング)および穿孔深さが決定されているものとする。なお、後述する注入工程において、
図9では、上記の全開放位置に切替えた注入形態について、
図10(a)では、第1開放位置に切替えた注入形態について、
図10(b)では、第2開放位置に切替えた注入形態について、それぞれ説明する。
【0071】
ピンニング工法は、外壁1を所定の深さまで穿孔して下穴8を形成する穿孔工程(
図9(a)参照)と、接着剤注入器10により、下孔8の開口部8aを封止しつつ下孔8に接着剤Rを注入する注入工程(
図9(b)および(c)参照)と、接着剤Rが注入された下孔8に、アンカーピン110を挿入・装着する装着工程(
図9(d)参照)と、を備えている。
【0072】
穿孔工程では、ダイヤモンドビットを装着した電動ドリル等の穿孔工具112を使用し、上記のマーキングに倣って外壁1に下穴8を穿孔する。具体的には、仕上げ材5(タイル)、張付けモルタル4および下地モルタル3を貫通してコンクリート躯体2を所定の深さまで穿孔し、下穴8を形成する(
図9(a)参照)。その際、穿孔は外壁1に対し直角に行い、コンクリート躯体2への穿孔深さは30mm以上とする。また、下穴8は、アンカーピン110が遊挿できるように、アンカーピン110よりも一回り大きい径(1〜2mm太径)とする。なお、後述するアンカーピン110を用いる場合には、この時点で、球形の研削ビットを用い、下穴8の開口部8aを面取りしておく。
【0073】
下穴8を形成した後には、下穴8に残った切削粉等をブロアー等の噴気で清掃し除去する。もっとも、穿孔に際し冷却水を用い、切削粉を冷却水と共に排水除去できる場合には、清掃は省略される。なお、この時点で内視鏡等を用い、下穴8を介して第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cを確認することが好ましい。ここでは、第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cが確認できたものとし、流路切替え機構部66を全開放位置に切替えて接着剤Rの注入を行う。
【0074】
注入工程では、先ずノズルボディ22から第1ノズル部24を最大限引き出しておいて、第1ノズル部24を下穴8に挿入してゆく。この挿入の過程において、第1ノズル部24の先端が下穴8の穴底に到達すると、第1ノズル部24は相対的に後退してゆく。続いて、封止部本体35が下穴8の開口部8aに達し、そのテーパー部41により開口部8aが封止される。この状態では、第1ノズル部24の第1ノズル口32が下穴8の奥部に位置し、第2ノズル部25の第2ノズル口56が下穴8の開口部8a近傍に位置することとなる(
図9(b)参照)。
【0075】
ここで、注入器本体11の操作レバー17を操作(ポンピング)し、接着剤Rを注入ノズル12に送り込んで、下穴8への接着剤Rの注入を開始する(
図9(b)参照)。接着剤Rの注入を開始すると、接着剤Rは、第1ノズル部24の第1ノズル口32から吐出され、下穴8の奥部から満たされ、第1浮き部6aに円状に広がるようにして充填され、さらに第2浮き部6bに円状に広がるようにして充填されてゆく。同様に、接着剤Rは、第2ノズル部25の第2ノズル口56から吐出され、第3浮き部6cに円状に広がるようにして充填されてゆく(
図9(c)参照)。
【0076】
このようにして、接着剤Rが、下穴8、第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cに行き渡ると、ポンピング操作が重くなり、接着剤Rが適切に注入されたことが体感される。ここで、開口封止部23を下穴8から引き離すと共に、第1ノズル部24を下穴8からゆっくり引き抜く。なお、本実施形態では、下穴8の奥部から接着剤Rの注入を行うため、奥部にエアー溜りが生ずることが無く、第1ノズル部24の引き抜きの際に、接着剤Rが下穴8の開口部8aから漏れ出ることもない。
【0077】
装着工程では、接着剤Rが注入された下穴8にアンカーピン110を挿入・装着する。この場合のアンカーピン110は、ピン軸部110aを全ネジとし、ピン頭部110bを皿状としたものが好ましい。また、ピン頭部110bは、仕上げ材5と同色に着色されたものが好ましい。下穴8に挿入したアンカーピン110は、そのピン頭部110bが開口部8aの面取り部分に没入し、その天面が仕上げ材5の表面と面一となったところで、装着を完了する(
図9(d)参照)。なお、この面一は、好ましくは挿入の最終段階で、ピン頭部110bにヘラ等を突き当て押し込むことで達成される。そして、アンカーピン110の装着が完了したら、接着剤Rが硬化するまで養生を行う。
【0078】
図10(a)は、流路切替え機構部66を第1開放位置に切替えて行う注入形態である。第1浮き部6aおよび第2浮き部6bの2箇所に「浮き」が生じている場合を想定している。接着剤Rの注入を開始すると、接着剤Rは、第1ノズル部24の第1ノズル口32から吐出され、下穴8の奥部から満たされ、続いて第1浮き部6aに円状に広がるようにして充填され、さらに第2浮き部6bに円状に広がるようにして充填されてゆく。接着剤Rが、下穴8、第1浮き部6aおよび第2浮き部6bに行き渡ると、ポンピング操作が重くなり、接着剤Rが適切に注入されたことが体感される。
【0079】
図10(b)は、流路切替え機構部66を第2開放位置に切替えて行う注入形態である。第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cの3箇所に「浮き」が生じている場合や、第1浮き部6aおよび第3浮き部6cの2箇所に「浮き」が生じている場合であって(図示のものは、3箇所に「浮き」)、特に第3浮き部6cの容積が極端に大きい場合を想定している(例えば、大型タイルや規格石の「ダンゴ張り」等)。
【0080】
この場合には、上記した全開放位置における接着剤Rの注入をある程度行った後、接着剤注入器10の注入姿勢を維持したまま、操作摘み部95を第2開放位置に切り替えて、接着剤Rの注入を続行する。すなわち、接着剤Rが、下穴8、第1浮き部6aおよび第2浮き部6bに行き渡った段階で、操作摘み部95を全開放位置から第2開放位置に切り替える。ここで接着剤Rの注入を続行すると、接着剤Rは、第2ノズル部25からのみ吐出し、第3浮き部6cに円状に広がるようにして充填される。
【0081】
以上のように、第1実施形態によれば、操作摘み部95を回転角度操作することにより、接着剤Rを、第1ノズル口32および第2ノズル口56から吐出させる場合、第1ノズル口32のみから吐出される場合、および第2ノズル口56のみから吐出させる場合の、3つの注入形態を執ることができる。したがって、外壁1に生ずる「浮き」の数や発生個所等の性状に合わせて、接着剤Rを効率良く注入することができる。また、流路切替え機構部66を、部品点数の少ない簡単な構造とすることができ、注入作業後の分解、洗浄、組立を容易に行うことができる。
【0082】
[第2実施形態]
次に、
図11を参照して、第2実施形態に係る注入ノズル12Aについて説明する。なお、第2実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。第2実施形態の注入ノズル12Aは、流路切替え機構部66Aの弁座部91Aと弁体部92Aとがネジ機構を構成しておらず、単に弁座部91Aに弁体部92Aが回転可能に嵌合している。
【0083】
図11に示すように、流路切替え機構部66Aは、第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aに直交し、内部周面壁に第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aが上下に開口した円柱空間状の弁座部91Aと、弁座部91Aに嵌合すると共に回転操作される円柱状の弁体部92Aと、を有している。この場合も、弁体部92Aは、弁座部91Aに嵌合する弁体部本体94と、弁体部本体94を回転操作するための操作摘み部95と、操作摘み部95を弁体部本体94に固定する小ネジ96と、を有している。もっとも、この場合の弁体部本体94には、上部に鍔部114が一体に形成されると共に、第1貫通孔97と第2貫通孔98との間に環状溝部115が形成されている。
【0084】
一方、ノズルボディ22の外周面には、弁体部本体94を囲繞するように突条ネジ部116が形成され、この突状ネジ部116には、キャップ状ネジ117が螺合している。具体的には、突状ネジ部116と鍔部114との間に、弁部主Oリング118が介在され、この状態で、鍔部114を押さえるようにキャップ状ネジ117が突状ネジ部116に螺合している。これにより、回転操作される弁体部92Aと弁座部91Aとの間が封止されている。また、上記の環状溝部115には、弁部副Oリング119が装着され、第1直線流路部61aと第2直線流路部62aとの間が封止されている。
【0085】
そして、弁体部本体94には、第1実施形態と同様に、第1直線流路部61aに対応する第1貫通孔97と、第2直線流路部62aに対応する第2貫通孔98と、が貫通形成されている。この場合も、操作摘み部95が角度0°に位置する状態が第1開放位置に対応している。また、この第1開放位置から軸線廻りに角度45°回転させた位置が全開放位置に対応し、さらにこの全開放位置から軸線廻りに角度45°回転させた位置(第1開放位置から角度90°回転させた位置)が第2開放位置に対応している。したがって、流路切替え機構部66Aの切替え操作は、第1実施形態と同様となる(
図5参照)。
【0086】
このように、第2実施形態においても、操作摘み部95を回転角度操作することにより、接着剤Rを、第1ノズル口32および第2ノズル口56から吐出させる場合、第1ノズル口32のみから吐出される場合、および第2ノズル口56のみから吐出させる場合の、3つの注入形態を執ることができる。したがって、外壁1に生ずる「浮き」の数や発生個所等の性状に合わせて、接着剤Rを効率良く注入することができる。なお、第2実施形態でも、第1実施形態の変形例を適用することが可能である。
【0087】
[第3実施形態]
次に、
図12および
図13を参照して、第3実施形態に係る注入ノズル12Bについて説明する。なお、第3実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。第3実施形態の注入ノズル12Bでは、流路切替え機構部66Bが、第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aと、共有接着剤流路63との境界部分に配設されている。また、弁体部92Bにおいて、上記の第1貫通孔97および第2貫通孔98に代えて、単一の長円状貫通孔121が形成されている。
【0088】
図12および
図13に示すように、流路切替え機構部66Bは、第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aに直交し、内部周面壁に第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aが上下に開口した雌ネジ状の弁座部91Bと、弁座部91Bに螺合すると共に回転操作される雄ネジ状の弁体部92Bと、を有している。また、弁体部92Bには、第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aに対応する単一、且つ断面長円状の長円状貫通孔121が形成されている。
【0089】
図13に示すように、長円状貫通孔121は、断面方向において第1直線流路部61aから第2直線流路部62aに亘る長さを有し、軸方向に対し斜めに傾いている。また、この場合の共有接着剤流路63は、弁体部92Bが第1開放位置、全開放位置および第2開放位置のいずれの位置にあっても、長円状貫通孔121と連通するようになっている。そして、この場合も、操作摘み部95が角度0°に位置する状態が第1開放位置、第1開放位置から軸線廻りに角度45°回転させた位置が全開放位置、全開放位置から軸線廻りに角度45°回転させた位置(第1開放位置から角度90°回転させた位置)が第2開放位置となっている。
【0090】
第1開放位置における弁体部92Bは、長円状貫通孔121の一方の端部(下端部)が第1直線流路部61aに臨む一方、他方の端部(上端部)が第2直線流路部62aから外れている(
図13(a)参照)。この状態では、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となり、第2直線流路部62aは閉塞状態(非連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24からのみ吐出される。
【0091】
全開放位置における弁体部92Bは、長円状貫通孔121の一方の端部(下端部)が第1直線流路部61aに臨むと共に、他方の端部(上端部)が第2直線流路部62aに臨んでいる(
図13(b)参照)。この状態では、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となり、第2直線流路部62aも開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24および第2ノズル部25からそれぞれ吐出される。
【0092】
第2開放位置における弁体部92Bは、長円状貫通孔121の一方の端部(下端部)が第1直線流路部61aから外れる一方、他方の端部(上端部)が第2直線流路部62aに臨んでいる(
図13(c)参照)。この状態では、第1直線流路部61aは閉塞状態(非連通状態)となり、第2直線流路部62aは開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第2ノズル部25からのみ吐出される。
【0093】
このように、第3実施形態においても、操作摘み部95を回転角度操作することにより、接着剤Rを、第1ノズル口32および第2ノズル口56から吐出させる場合、第1ノズル口32のみから吐出される場合、および第2ノズル口56のみから吐出させる場合の、3つの注入形態を執ることができる。したがって、外壁1に生ずる「浮き」の数や発生個所等の性状に合わせて、接着剤Rを効率良く注入することができる。また、流路切替え機構部66Bを、部品点数の少ない簡単な構造とすることができ、注入作業後の分解、洗浄、組立を容易に行うことができる。なお、第3実施形態の弁座部91Bおよび弁体部92Bは、第2実施形態のものと同様の形態であってもよい(円柱空間状および円柱状)。
【0094】
[第4実施形態]
次に、
図14を参照して、第4実施形態に係る注入ノズル12Cについて説明する。なお、第4実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。第4実施形態の注入ノズル12Cでは、流路切替え機構部66Cが、シリンダー状の弁座部91Cと、プランジャー状の弁体部92Cとを有し、弁座部91Cに対し弁体部92Cをスライド(進退)させることにより、切替え操作される。
【0095】
図14に示すように、流路切替え機構部66Cは、第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aに直交し、内部周面壁に第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aが上下に開口したシリンダー状の弁座部91Cと、弁座部91Cに嵌合すると共に軸方向(上下方向)にスライド操作されるプランジャー状の弁体部92Cと、を有している。
【0096】
弁座部91Cは、第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aを含んでノズルボディ22を上下に貫通している。ノズルボディ22の上面および下面には、弁体部92Cに巻回するようにして一対の封止Oリング131が設けられ、また封止Oリング131を押さえるように一対の押え板132が設けられている。そして、この一対の封止Oリング131により、スライドする弁体部92Cと弁座部91Cとの間が封止されている。
【0097】
弁体部92Cは、第1直線流路部61aに対応する第1環状溝134と、第2直線流路部62aに対応する第2環状溝135とを有している。第1環状溝134は、断面半円状の溝であり、第1直線流路部61aと同径に形成されている。同様に、第2環状溝135は、断面半円状の溝であり、第2直線流路部62aと同径に形成されている。
【0098】
図14(a)は、弁体部92Cが全開放位置にある状態であり、弁体部92Cの上端部および下端部が、それぞれノズルボディ22(押え板132)から突出している。また、
図14(b)は、弁体部92Cが第1開放位置にある状態であり、弁体部92Cの上端部が押え板132と略面一となると共に、下端部がノズルボディ22(押え板132)から下方に大きく突出している。さらに、
図14(c)は、弁体部92Cが第2開放位置にある状態であり、弁体部92Cの上端部がノズルボディ22(押え板132)から上方に大きく突出すると共に、下端部が押え板132と略面一となっている。
【0099】
図14(b)の第1開放位置における弁体部92Cは、第2環状溝135が第1直線流路部61aに臨む一方、第1環状溝134が第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aから下方に外れている。この状態では、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となり、第2直線流路部62aは閉塞状態(非連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24からのみ吐出される。
【0100】
図14(a)の全開放位置における弁体部92Cは、第1環状溝134が第1直線流路部61aに臨むと共に、第2環状溝135が第2直線流路部62aに臨んでいる。この状態では、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となり、第2直線流路部62aも開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24および第2ノズル部25からそれぞれ吐出される。
【0101】
図14(c)の第2開放位置における弁体部92Cは、第2環状溝135が第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aから上方に外れる一方、第1環状溝134が第2直線流路部62aに臨んでいる。この状態では、第1直線流路部61aは閉塞状態(非連通状態)となり、第2直線流路部62aは開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第2ノズル部25からのみ吐出される。
【0102】
このように、第4実施形態においても、弁体部92Cを上下方向にスライド操作することにより、接着剤Rを、第1ノズル口32および第2ノズル口56から吐出させる場合、第1ノズル口32のみから吐出される場合、および第2ノズル口56のみから吐出させる場合の、3つの注入形態を執ることができる。したがって、外壁1に生ずる「浮き」の数や発生個所等の性状に合わせて、接着剤Rを効率良く注入することができる。また、第1環状溝134および第2環状溝135では、流路の断面積を第1直線流路部61aおよび第2直線流路部61bの断面積と同等とすることができ、流路摩擦損失による圧力損失を低く抑えることができる。しかも、流路切替え機構部66Cを、部品点数の少ない簡単な構造とすることができ、注入作業後の分解、洗浄、組立を容易に行うことができる。
【0103】
なお、図示では省略したが、ノズルボディ22にクリック機構を組み込んで、弁体部92Cを第1開放位置、全開放位置および第2開放位置において、クリック的に位置規制することが好ましい。クリック機構は、例えば弁体部92Cに形成した冠球状の3つの溝と、ノズルボディ22に組み込まれ、3つの溝に選択的に係合する球体および球体を付勢するバネと、で構成することが好ましい。
【0104】
[第5実施形態]
次に、
図15および
図16を参照して、第5実施形態に係る注入ノズル12Dについて説明する。なお、第5実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。第5実施形態の注入ノズル12Dでは、流路切替え機構部66Dが、第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aと、共有接着剤流路63との境界部分に配設されている。また、弁体部92Dが、ノズルボディ22の軸線廻りに回動操作されるようになっている。
【0105】
図15および
図16に示すように、流路切替え機構部66Dは、第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aに直交し、内部端面壁に第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aが上下に開口した円柱空間状の弁座部91Dと、弁座部91Dに嵌合すると共にノズルボディ22の軸線廻りに回動操作される弁体部92Dと、を有している。弁体部92Dは、ノズルボディ22と同軸上に配設された円柱状の弁本体141と、弁本体141を回動操作するための摘み部142とを有している。そして、弁本体141には、同軸上おいて、第1直線流路部61aおよび第2直線流路部62aに対応する単一且つ断面円弧状を為す円弧状貫通孔144が形成されている。
【0106】
図16に示すように、円弧状貫通孔144は、断面方向において、第1直線流路部61aから第2直線流路部62aに亘る長さを有している。すなわち、円弧状貫通孔144は、ノズルボディ22の軸線廻りにおいて、断面略半円状に形成されている。また、共有接着剤流路63は、弁体部92Dが第1開放位置、全開放位置および第2開放位置のいずれの位置にあっても、円弧状貫通孔144と連通するようになっている。ノズルボディ22の内部に配設された弁本体141に対し、摘み部142はノズルボディ22の外側から螺合しており、ノズルボディ22には、摘み部142の回動操作を許容するためのスリット145(
図15(a)参照)が形成されている。
【0107】
一方、
図15に示すように、弁体部92D(弁本体141)とノズルボディ22に螺合した装着部21との間には、太径の後方Oリング146が介設されている。そして、この後方Oリング146が介設された間隙に共有接着剤流路63が構成され、共有接着剤流路63は、後方Oリング146により封止されている。また、弁体部92D(弁本体141)とノズルボディ22との間には、第1直線流路部61aを封止する細径の第1前方Oリング147と、第2直線流路部62aを封止する細径の第2前方Oリング148とが介設されている。このように、第1前方Oリング147、第2前方Oリング148および後方Oリング146により、摘み部142による弁本体141の回動操作の際の、接着剤Rの漏れが防止される。
【0108】
この場合は、摘み部142がセンターに位置する状態が全開放位置であり(
図16(a)参照)、この状態から、摘み部142を右に角度45°回動させた状態が第1開放位置となる(
図16(b)参照)。一方、摘み部142を全開放位置から左に角度45°回動させた位置が第2開放位置となる(
図16(c)参照)。
【0109】
図16(b))の第1開放位置では、弁体部92D(弁本体141)の円弧状貫通孔144が、第1直線流路部61aに臨む一方、第2直線流路部62aから外れている。この状態では、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となり、第2直線流路部62aは閉塞状態(非連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24からのみ吐出される。
【0110】
図16(a)の全開放位置では、弁体部92D(弁本体141)の円弧状貫通孔144が、両端部において第1直線流路部61aに臨むと共に第2直線流路部62aに臨んでいる。この状態では、第1直線流路部61aは開放状態(連通状態)となり、第2直線流路部62aも開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24および第2ノズル部25からそれぞれ吐出される。
【0111】
図16(c)の第2開放位置では、弁体部92D(弁本体141)の円弧状貫通孔144が、第1直線流路部61aから外れる一方、第2直線流路部62aに臨んでいる。この状態では、第1直線流路部61aは閉塞状態(非連通状態)となり、第2直線流路部62aは開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第2ノズル部25からのみ吐出される。
【0112】
このように、第5実施形態においても、弁体部92Dを回動操作することにより、接着剤Rを、第1ノズル口32および第2ノズル口56から吐出させる場合、第1ノズル口32のみから吐出される場合、および第2ノズル口56のみから吐出させる場合の、3つの注入形態を執ることができる。したがって、外壁1に生ずる「浮き」の数や発生個所等の性状に合わせて、接着剤Rを効率良く注入することができる。
【0113】
[第6実施形態]
次に、
図17を参照して、第6実施形態に係る注入ノズル12Eについて説明する。なお、第6実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。第6実施形態の注入ノズル12Eでは、上記の複数の実施形態とは異なり、流路切替え機構部66に代えて、流路開閉アタッチメント150が設けられている。
【0114】
図17に示すように、ノズルボディ22とこれに螺合した装着部21との間の内部空間には、装着部21側に太径Oリング77が介設されると共に、ノズルボディ22側に流路開閉アタッチメント150が介設されている。そして、太径Oリング77による間隙には、連通流路83に連なる共有接着剤流路63が構成されている。
【0115】
流路開閉アタッチメント150は、第1接着剤流路61と共有接着剤流路63との間に選択的に介設される、流路閉塞用の第1パッキン151および流路開放用の第1Oリング152と、第2接着剤流路62を共有接着剤流路63との間に選択的に介設される、流路閉塞用の第2パッキン153および流路開放用の第2Oリング154と、介設した第1パッキン151または第1Oリング152と、介設した第2パッキン153または第2Oリング154と、を共有接着剤流路63側から押さえるアタッチメント本体156と、を有している。すなわち、流路開閉アタッチメント150は、第1接着剤流路61および第2接着剤流路62と共有接着剤流路63との間に介設されている。
【0116】
アタッチメント本体156には、同軸上において第1接着剤流路61に連通する第1アタッチメント流路161が形成されると共に、同軸上において第2接着剤流路62に連通する第2アタッチメント流路162が形成されている。また、アタッチメント本体156の後端部には、上流側が共有接着剤流路63に連通すると共に、下流側が第1アタッチメント流路161および第2アタッチメント流路162に連通する共有アタッチメント流路163が形成されている。この場合、第1接着剤流路61、第2接着剤流路62、第1アタッチメント流路161、第2アタッチメント流路162は、同径に形成されている。
【0117】
そして、第1アタッチメント流路161を形成したアタッチメント本体156の第1凸部165が、第1パッキン151または第1Oリング152を介設した状態で、ノズルボディ22の第1凹部166に嵌合するようになっている。同様に、第2アタッチメント流路162を形成したアタッチメント本体156の第2凸部167が、第2パッキン153または第2Oリング154を介設した状態で、ノズルボディ22の第2凹部168に嵌合するようになっている。なお、第1パッキン151と第2パッキン153とは同一のものであり、また第1Oリング152と第2Oリング154とは同一のものである。
【0118】
この場合、第1凸部165と第1凹部166との間に第1Oリング152を介設すると共に、第2凸部167と第2凹部168との間に第2パッキン153を介設した状態が、第1開放位置となる(
図17(a)参照)。また、第1凸部165と第1凹部166との間に第1Oリング152を介設すると共に、第2凸部167と第2凹部168との間に第2Oリング154を介設した状態が、全開放位置となる(
図17(b)参照)。さらに、第1凸部165と第1凹部166との間に第1パッキン151を介設すると共に、第2凸部167と第2凹部168との間に第2Oリング154を介設した状態が、第2開放位置となる(
図17(c)参照)。
【0119】
図17(a)の第1開放位置では、第1Oリング152により第1接着剤流路61と第1アタッチメント流路161とが連通する一方、第2パッキン153により第2接着剤流路62と第2アタッチメント流路162とが非連通状態となる。すなわち、第1接着剤流路61は開放状態(連通状態)となり、第2接着剤流路62は閉塞状態(非連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24からのみ吐出される。
【0120】
図17(b)の全開放位置では、第1Oリング152により第1接着剤流路61と第1アタッチメント流路161とが連通すると共に、第2Oリング154により第2接着剤流路62と第2アタッチメント流路162とが連通する。すなわち、第1接着剤流路61は開放状態(連通状態)となり、第2接着剤流路62も開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第1ノズル部24および第2ノズル部25からそれぞれ吐出される。
【0121】
図17(c)の第2開放位置では、第1パッキン151により第1接着剤流路61と第1アタッチメント流路161とが非連通状態となる一方、第2Oリング154によりにより第2接着剤流路62と第2アタッチメント流路162とが連通状態となる。すなわち、第1接着剤流路61は閉塞状態(非連通状態)となり、第2接着剤流路62は開放状態(連通状態)となる。したがって、接着剤Rは、第2ノズル部25からのみ吐出される。
【0122】
このように、第6実施形態では、流路開閉アタッチメント150を用いて、第1接着剤流路61および第2接着剤流路62を選択的に開閉することにより、接着剤Rを、第1ノズル口32および第2ノズル口56から吐出させる場合、第1ノズル口32のみから吐出される場合、および第2ノズル口56のみから吐出させる場合の、3つの注入形態を執ることができる。したがって、外壁1に生ずる「浮き」の数や発生個所等の性状に合わせて、接着剤Rを効率良く注入することができる。
【0123】
[第7実施形態]
次に、
図18を参照して、第7実施形態に係る注入ノズル12Fについて説明する。なお、第7実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。第7実施形態の注入ノズル12Fでは、ノズルボディ22および流路切替え機構部66Fが、接着剤R(の溶剤)に対し耐薬品性を有する樹脂で形成されている。また、ノズルボディ22は、ステンレスやスチールで形成されたケーシンク部171により、覆われている。
【0124】
ノズルボディ22は、略円柱状に形成されている。ノズルボディ22の内部には、第1実施形態と同様に、第1接着剤流路61、第2接着剤流路62および共有接着剤流路63が形成されている。流路切替え機構部66Fは、第1実施形態と同様に、弁座部91と弁体部92とを有している。この場合の弁体部92は、弁座部91に嵌合する弁体部本体173と、段部174を存して弁体部本体173に連なる摘み取付部175と、摘み取付部175に溶着した操作摘み部176と、を有している。
【0125】
一方、ノズルボディ22の表面には、弁体部本体173を囲繞するように環状突起177が設けられ、環状突起177には、段部174を介して弁体部本体173を押さえるように環状キャップ178が溶着されている。これにより、弁体部92がノズルボディ22と一体化すると共に、弁体部92の回転操作を許容した状態で、弁体部92の弁座部91からの離脱が防止されている。
【0126】
弁体部本体172には、第1接着剤流路61(第1直線流路部61a)に対応する第1貫通孔181と、第2接着剤流路62(第2直線流路部62a)に対応する第2貫通孔182が形成されている。この場合、第1実施形態の第1変形例と同様に、第1貫通孔181は第1接着剤流路61と同径に形成され、第2貫通孔182は第2接着剤流路62と同径に形成されている。この場合の流路切替え機構部66Fの切替え操作は、第1実施形態の第1変形例と同様となる。このため、流路切替え機構部66Fの切替え操作に関する図示および説明は省略する。
【0127】
ケーシンク部171は、ノズルボディ22を保護するものであり、第1ノズル部24側の前ケーシング部191と、注入器本体11側の後ケーシング部192と、を有している。すなわち、ケーシンク部171は、前後に2分割可能に構成されている。前ケーシング部191には、先端側に、封止部本体35をノズルボディ22側に引き付ける引付け部193が一体に形成され、基端側に、流路切替え機構部66Fを逃げる大切欠き部194が形成されている。また、前ケーシング部191の基端部には、分割雄ネジ部195が形成されている。
【0128】
一方、後ケーシング部192には、先端側に、上記の分割雄ネジ部195に対応する分割雌ネジ部196が形成されている。また、後ケーシング部192の基端側には、引付け部193に対応する押さえ部197と、押さえ部197に連なり、注入器本体11に装着される装着部198と、が一体に形成されている。封止部本体35のボディ接合部44およびノズルボディ22を内包した状態で、前ケーシング部191と後ケーシング部192とを相互に螺合すると、注入ノズル12Fが一体に組み立てられる。
【0129】
このように、第7実施形態においても、操作摘み部176を回転角度操作することにより、接着剤Rを、第1ノズル口32および第2ノズル口56から吐出させる場合、第1ノズル口32のみから吐出される場合、および第2ノズル口56のみから吐出させる場合の、3つの注入形態を執ることができる。したがって、外壁1に生ずる「浮き」の数や発生個所等の性状に合わせて、接着剤Rを効率良く注入することができる。
【0130】
また、ノズルボディ22および流路切替え機構部66Fが、樹脂で形成されているため、これらを使い捨てとすることができる。このため、注入ノズル12Fの洗浄を簡易化することができる。すなわち、注入ノズル12Fにおける注入作業後の分解、洗浄、組立の一連の洗浄作業を容易に行うことができる。なお、第7実施形態では、装着部198を後ケーシング部192に設けるようにしているが、これをノズルボディ22に設けるようにしてもよい。具体的には、ノズルボディ22の基端を延長してネジ付きの装着部198とし、この装着部198が押さえ部197を貫通するようにする。そして、この装着部198には、共有接着剤流路63に連通する連通流路を形成する。
【0131】
以上、これらの実施形態における注入ノズル12,12A,12B、12C,12D、12E、は、作業後の洗浄(溶剤により接着剤Rを洗い落とす)を考慮して、封止部本体35以外の主な構成部品をステンレス等の金属材料で形成することとしている。しかし、この主な構成部品は、溶剤に対し耐薬品性を有する材料であれば、プラスチックやセラミック等で形成することも可能である。
【0132】
また、流路切替え機構部66は、上記の実施形態の他、一般的なバルブ(ボールバルブ、ゲートバルブ、バタフライバルブ等)を2連として構成したものであってもよい。かかる場合には、2つ(2連)のバルブにおいて、弁体の開閉角度が異なるものとなる。
【解決手段】下穴8の奥部に臨む第1ノズル口32と、下穴8の開口部8a近傍に臨む第2ノズル口56と、第1ノズル口32に連通する第1接着剤流路61と、第2ノズル口56に連通する第2接着剤流路62と、第1接着剤流路61を開放し且つ第2接着剤流路62を開放する全開放位置と、第1接着剤流路61を開放し且つ第2接着剤流路62を閉塞する第1開放位置と、第1接着剤流路61を閉塞し且つ第2接着剤流路62を開放する第2開放位置と、の相互間で接着剤Rの流路を切り替える流路切替え機構部66と、を備えたものである。