(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着剤層における少なくとも前記保護膜形成フィルムと接触する部分は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を含むことを特徴とする請求項1に記載の保護膜形成用複合シート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、基材21の一方の面に粘着剤層22が積層されてなる粘着シート2と、粘着シート2の粘着剤層22側に積層された保護膜形成フィルム3と、保護膜形成フィルム3における粘着シート2とは反対側に積層された剥離シート4とを備えて構成される。ただし、剥離シート4は、保護膜形成用複合シート1の使用時に剥離されるものである。
【0019】
実施形態における保護膜形成フィルム3は、面方向にてワークとほぼ同じか、ワークよりも少し大きく形成されており、かつ粘着シート2よりも面方向に小さく形成されている。保護膜形成フィルム3が積層されていない部分の粘着剤層22には、剥離シート4が積層されており、剥離シート4を剥離して露出した粘着剤層22は、リングフレーム等の治具に貼付することが可能となっている。
【0020】
実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、ワークを加工するときに、当該ワークに貼付されて当該ワークを保持するとともに、当該ワークまたは当該ワークから得られるチップに保護膜を形成するために用いられる。この保護膜は、保護膜形成フィルム3、好ましくは硬化した保護膜形成フィルム3から構成される。一例として、ワークとしての半導体ウエハのダイシング加工時に半導体ウエハを保持するとともに、ダイシングによって得られる半導体チップに保護膜を形成するために用いられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
1.物性
実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、粘着シート2の波長532nmの光線透過率が75〜85%であることを要する。なお、本明細書における光線透過率は、積分球を使用して測定した値とし、測定器具としては分光光度計を使用する。
【0022】
保護膜形成フィルム3(保護膜)に対して施すレーザー印字に使用するレーザー光の波長が532nmの場合に、粘着シート2の上記波長の光線透過率が75〜85%であると、粘着シート2に対して上記波長のレーザー光を照射した時に、粘着シート2においてレーザー光のエネルギーが比較的大きい量吸収される。これにより、粘着シート2におけるレーザー光照射部分の材料が分解・蒸発して、粘着シート2を貫通する細孔が形成される。したがって、レーザー印字により保護膜形成フィルム3(保護膜)からガスが発生したとしても、この細孔を介してガスが抜けるため、粘着シート2と保護膜形成フィルム3(保護膜)との間にガス溜まりが発生することが効果的に抑制される。しかも、保護膜形成フィルム3(保護膜)からガスが発生する箇所は、レーザー光照射部分、すなわち粘着シート2に細孔が形成される箇所であるため、発生したガスは高い確率で細孔から除去される。このようにガス溜まりの発生が抑制されることにより、保護膜形成フィルム3に形成される印字の視認性が良好なものとなり、また、粘着シート2と保護膜形成フィルム3(保護膜)との密着性が確保されて、ダイシング工程中にチップが粘着シート2から脱落することを抑制することができる。
【0023】
ここで、保護膜形成フィルム3(保護膜)に形成された印字は、粘着シート2を介して視認することとなる。可視光線の波長は、一般的に380〜780nmであるが、その範囲内にある波長532nmの光線透過率が75〜85%である粘着シート2は、可視光線をある程度透過することとなる。したがって、粘着シート2は、保護膜形成フィルム3(保護膜)に形成された印字を視認し易い透明性を有するものであり、実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、粘着シート2を介した印字視認性に優れるものである。
【0024】
粘着シート2の上記波長の光線透過率が75%未満の場合、保護膜形成フィルム3(保護膜)に形成された印字が、当該粘着シート2に阻まれて見難くなることがある。一方、粘着シート2の上記波長の光線透過率が85%を超える場合、粘着シート2の材料は分解・蒸発し難く、上記のような細孔は形成されない。保護膜形成フィルム3の印字視認性、および粘着シート2の細孔形成の観点から、粘着シート2の上記波長の光線透過率は、75〜83%であることが好ましい。
【0025】
保護膜形成フィルム3の光線透過率は、レーザー光照射により良好に印字される範囲であれば、特に限定されない。通常は、保護膜形成フィルム3(保護膜)に対して施すレーザー印字に使用するレーザー光の波長が532nmの場合、保護膜形成フィルム3の波長532nmの光線透過率が20%以下であることが好ましい。保護膜形成フィルム3には、硬化後の保護膜の硬度を高く維持するとともに、耐湿性を向上させるために、多量の無機系材料(例えばシリカ等の無機系フィラー、カーボンブラック等の無機系顔料)を含有させるのが一般的である。保護膜形成フィルム3の上記波長の光線透過率が20%以下であると、保護膜形成フィルム3(保護膜)に対して上記波長のレーザー光を照射した時に、保護膜形成フィルム3(保護膜)におけるレーザー光のエネルギーの吸収量が非常に大きいものとなるが、上記無機系材料は分解・蒸発し難いものであるため、保護膜形成フィルム3(保護膜)におけるレーザー光照射部分の材料は、細孔が形成されることなく、変質により色が変わり、もって印字されることとなる。
【0026】
保護膜形成フィルム3のレーザー印字性の観点から、保護膜形成フィルム3の上記波長の光線透過率は、上記の通り20%以下であることが好ましく、特に15%以下であることが好ましく、さらには10%以下であることが好ましい。
【0027】
2.粘着シート
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1の粘着シート2は、基材21と、基材21の一方の面に積層された粘着剤層22とを備えて構成される。粘着シート2は、前述した光線透過率を有するようにするために、基材21および/または粘着剤層22を着色してもよいし、別途着色シートを備えてもよいし、それら両者であってもよい。ただし、製造コストを考慮すると、基材21および/または粘着剤層22を着色することが好ましく、また粘着剤層22の粘着力への影響を考慮すると、基材21を着色することが好ましい。
【0028】
なお、本実施形態における粘着シート2は、保護膜形成用複合シート1の使用前には、当該粘着シート2を厚さ方向に貫通する貫通孔を有していない。
【0029】
2−1.基材
粘着シート2の基材21は、ワークの加工、例えば半導体ウエハのダイシングおよびエキスパンディングに適するとともに、レーザー光照射により前述した細孔が形成されるものであれば、その構成材料は特に限定されず、通常は樹脂系の材料を主材とするフィルム(以下「樹脂フィルム」という。)から構成される。
【0030】
樹脂フィルムの具体例として、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。またこれらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムのような変性フィルムも用いられる。上記の基材21はこれらの1種からなるフィルムでもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
【0031】
上記の中でも、レーザー光照射による細孔の形成性、環境安全性、コスト等の観点から、ポリオレフィン系フィルムが好ましく、その中でも耐熱性に優れるポリプロピレンフィルムが好ましい。ポリプロピレンフィルムであれば、粘着シート2のエキスパンド適性やチップのピックアップ適性を損なうことなく、基材21に耐熱性を付与することができる。基材21がかかる耐熱性を有することにより、保護膜形成用複合シート1をワークに貼付した状態で保護膜形成フィルム3を熱硬化させた場合にも、粘着シート2の弛みの発生を抑制することができる。
【0032】
上記樹脂フィルムは、その表面に積層される粘着剤層22との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。
【0033】
粘着シート2に前述した光線透過率を付与するために基材21を着色する場合、基材21は、上記樹脂フィルム中に、着色剤を含有することが好ましい。着色剤としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料など公知のものを使用することができるが、レーザー光照射による細孔の形成性の観点から、有機系顔料又は有機系染料を使用することが好ましい。
【0034】
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0035】
有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色等が挙げられる。これらの顔料又は染料は、目的とする光線透過率に調整するため適宜混合して使用することができる。
【0036】
樹脂フィルム中における着色剤の配合量は、粘着シート2の上記光線透過率が前述した範囲となるよう適宜調整すればよいが、通常は0.001〜2質量%であることが好ましく、特に0.01〜1.5質量%であることが好ましく、さらには0.1〜1質量%であることが好ましい。
【0037】
基材21は、上記樹脂フィルム中に、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。
【0038】
基材21の厚さは、保護膜形成用複合シート1が使用される各工程において適切に機能でき、かつレーザー光照射により前述した細孔が形成される限り、特に限定されない。好ましくは20〜450μm、より好ましくは25〜400μm、特に好ましくは50〜350μmの範囲である。
【0039】
本実施形態における粘着シート2の基材21の破断伸度は、23℃、相対湿度50%のときに測定した値として100%以上であることが好ましく、特に200〜1000%であることが好ましい。ここで、破断伸度はJIS K7161:1994(ISO 527−1 1993)に準拠した引張り試験における、試験片破壊時の試験片の長さの元の長さに対する伸び率である。上記の破断伸度が100%以上である基材21は、エキスパンド工程の際に破断し難く、ワークを切断して形成したチップを離間し易いものとなる。
【0040】
また、本実施形態における粘着シート2の基材21の25%ひずみ時引張応力は5〜15N/10mmであることが好ましく、最大引張応力は15〜50MPaであることが好ましい。ここで25%ひずみ時引張応力および最大引張応力はJIS K7161:1994に準拠した試験により測定される。25%ひずみ時引張応力が5N/10mm以上、最大引張応力が15MPa以上であると、ダイシングシート1にワークを貼着した後、リングフレームなどの枠体に固定した際、基材2に弛みが発生することが抑制され、搬送エラーが生じることを防止することができる。一方、25%ひずみ時引張応力が15N/10mm以下、最大引張応力が50MPa以下であると、エキスパンド工程時にリングフレームからダイシングシート1自体が剥がれたりすることが抑制される。なお、上記の破断伸度、25%ひずみ時引張応力、最大引張応力は基材21における原反の長尺方向について測定した値を指す。
【0041】
2−2.粘着剤層
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1の粘着シート2が備える粘着剤層22は、単層からなってもよいし、2層以上の多層からなってもよい。単層の場合でも、多層の場合でも、粘着剤層22における少なくとも保護膜形成フィルム3と接触する部分は、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化した材料からなることが好ましい。また、多層の場合には、保護膜形成フィルム3と接触する層(接触層)が、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化した材料からなることが好ましい。
【0042】
エネルギー線硬化性粘着剤を硬化した材料は、通常、弾性率が高く、かつ表面の平滑性が高いため、かかる材料からなる硬化部分に接触している保護膜形成フィルム3を硬化させて保護膜を形成すると、保護膜の当該硬化部分と接触している表面は、平滑性が高くなり、それに伴い光沢(グロス)が高くなり、チップの保護膜として美観に優れたものとなる。また、表面光沢(グロス)の高い保護膜にレーザー印字が施されると、その印字の視認性が向上する。
【0043】
粘着剤層22が多層からなり、上記接触層がエネルギー線硬化性粘着剤を硬化した材料からなる場合、上記接触層は、粘着剤層22における接触層以外の層よりも、保護膜形成フィルム3とともに面方向に小さく形成されていることが好ましい。かかる実施形態の一例を
図2に示す。
【0044】
図2に示す実施形態に係る保護膜形成用複合シート1Aでは、粘着剤層22は、基材21に接触して積層された第1の粘着剤層221と、第1の粘着剤層221における基材21側とは反対側に積層された第2の粘着剤層222(上記接触層に該当)とを備えている。第1の粘着剤層221は、基材21と同じ大きさに形成されている。一方、第2の粘着剤層222は、保護膜形成フィルム3と同じ大きさに形成されており、第1の粘着剤層221および基材21よりも面方向に小さく形成されている。
【0045】
上記のような構成においては、第1の粘着剤層221における第2の粘着剤層222および保護膜形成フィルム3が積層されていない部分に対してリングフレーム等の治具を接着することができる(
図4参照)。このとき、第1の粘着剤層221の粘着力を、第2の粘着剤層222や保護膜形成フィルム3の粘着力よりも高くすることにより、第1の粘着剤層221に対してリングフレーム等を強い力で固定することができる。したがって、エキスパンド工程時等においても、リングフレームから保護膜形成用複合シート1が脱離することを防止することが可能となる。
【0046】
なお、上記リングフレーム等の治具を接着するために、治具用粘着剤層を別途設けてもよい。例えば、
図3に示す保護膜形成用複合シート1Bでは、保護膜形成用複合シート1と同様の粘着シート2の粘着剤層22上に、当該粘着シート2と同じ大きさの保護膜形成フィルム3が積層されており、その保護膜形成フィルム3における粘着シート2とは反対側の周縁部に、リングフレーム等の治具を接着するための治具用粘着剤層5が設けられている。
【0047】
粘着剤層22(の一部)または第2の粘着剤層222を構成するエネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、エネルギー線硬化性を有しないポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。
【0048】
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
【0049】
エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「エネルギー線硬化型重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。このエネルギー線硬化型重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有する(メタ)アクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0050】
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とからなる。
【0051】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
【0052】
上記官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0054】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常3〜100質量%、好ましくは5〜40質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を通常0〜97質量%、好ましくは60〜95質量%の割合で含有してなる。
【0055】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にもジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0056】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0057】
不飽和基含有化合物(a2)が有する置換基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、官能基がヒドロキシル基、アミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはアミノ基、カルボキシル基またはアジリジニル基が好ましい。
【0058】
また不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0059】
不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマー100当量当たり、通常10〜100当量、好ましくは20〜95当量の割合で用いられる。
【0060】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、官能基と置換基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の置換基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0061】
このようにして得られるエネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量は、1万以上であるのが好ましく、特に15万〜150万であるのが好ましく、さらに20万〜100万であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0062】
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
【0063】
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0064】
かかるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、エネルギー線硬化性粘着剤中におけるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、5〜80質量%であることが好ましく、特に20〜60質量%であることが好ましい。
【0066】
ここで、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤(C)を添加することが好ましく、この光重合開始剤(C)の使用により、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0067】
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
光重合開始剤(C)は、エネルギー線硬化型共重合体(A)(エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、エネルギー線硬化型共重合体(A)およびエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して0.1〜10質量部、特には0.5〜6質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0069】
エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)等が挙げられる。
【0070】
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000〜250万のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。
【0071】
架橋剤(E)としては、エネルギー線硬化型共重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアナート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0072】
これら他の成分(D),(E)をエネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。これら他の成分の配合量は特に限定されず、エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して0〜40質量部の範囲で適宜決定される。
【0073】
次に、エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
【0074】
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。エネルギー線硬化性樹脂組成物中におけるエネルギー線硬化性を有しないポリマー成分の含有量は、20〜99.9質量%であることが好ましく、特に30〜80質量%であることが好ましい。
【0075】
エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択される。エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、ポリマー成分100質量部に対して、多官能モノマーおよび/またはオリゴマー10〜150質量部であるのが好ましく、特に25〜100質量部であるのが好ましい。
【0076】
この場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(C)や架橋剤(E)を適宜配合することができる。
【0077】
粘着剤層22における保護膜形成フィルム3と接触しない部分は、リングフレーム等の治具に対する粘着力の観点から、非エネルギー線硬化性の粘着剤から構成されてもよいし、材料の単一化のために、保護膜形成フィルム3と接触する部分と同じエネルギー線硬化性粘着剤であって、硬化していないものから構成されてもよい。また、保護膜形成フィルム3と接触しない層(第1の粘着剤層221)は、リングフレーム等の治具に対する粘着力の観点から、非エネルギー線硬化性の粘着剤から構成されることが好ましい。治具用粘着剤層5についても、リングフレーム等の治具に対する粘着力の観点から、非エネルギー線硬化性の粘着剤から構成されることが好ましい。
【0078】
非エネルギー線硬化性の粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。
【0079】
ここで、粘着シート2に前述した光線透過率を付与するために、粘着剤層22を着色することもできる。粘着剤層22が多層からなる場合、その全部の層を着色してもよいし、一部の層を着色してもよい。粘着剤層22を着色する場合、粘着剤層22は、着色剤を含有することが好ましい。着色剤としては、基材21にて説明した公知のものを使用することができるが、レーザー光照射による細孔の形成性や粘着力等の観点から、有機系染料または有機系顔料を使用することが好ましく、特に有機系染料を使用することが好ましい。
【0080】
粘着剤層22中における着色剤の配合量は、粘着シート2の上記光線透過率が前述した範囲となるよう適宜調整すればよいが、通常は0.001〜2質量%であることが好ましく、特に0.01〜1.5質量%であることが好ましく、さらには0.1〜1質量%であることが好ましい。
【0081】
粘着剤層22の厚さは、保護膜形成用複合シート1が使用される各工程において適切に機能でき、かつレーザー光照射により前述した細孔が形成される限り、特に限定されない。具体的には、1〜50μmであることが好ましく、特に2〜30μmであることが好ましく、さらには3〜20μmであることが好ましい。また、粘着剤層22が上記のように第1の粘着剤層221および第2の粘着剤層222からなる場合、第1の粘着剤層221および第2の粘着剤層222の厚さは、それぞれ1〜50μmであることが好ましく、特に2〜30μmであることが好ましく、さらには3〜20μmであることが好ましい。
【0082】
一方、治具用粘着剤層5の厚さは、リングフレーム等の治具に対する接着性の観点から、5〜200μmであることが好ましく、特に10〜100μmであることが好ましい。
【0083】
3.保護膜形成フィルム
保護膜形成フィルム3は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。この場合、保護膜形成フィルム3に半導体ウエハ等のワークを重ね合わせた後、保護膜形成フィルム3を硬化させることにより、保護膜をワークに強固に接着することができ、耐久性を有する保護膜をチップ等に形成することができる。また、硬化性接着剤を硬化させた後は、レーザー光照射によって良好に印字することが可能となる。
【0084】
なお、保護膜形成フィルム3が未硬化の硬化性接着剤からなる場合、当該保護膜形成フィルム3の光線透過率は、硬化前であっても硬化後であっても殆ど変化しない。したがって、硬化前の保護膜形成フィルム3の波長532nmの光線透過率が20%以下であれば、硬化後の保護膜形成フィルム3(保護膜)の波長532nmの光線透過率も20%以下となる。
【0085】
保護膜形成フィルム3は、常温で粘着性を有するか、加熱により粘着性を発揮することが好ましい。これにより、上記のように保護膜形成フィルム3に半導体ウエハ等のワークを重ね合わせるときに両者を貼合させることができる。したがって、保護膜形成フィルム3を硬化させる前に位置決めを確実に行うことができ、保護膜形成用複合シート1の取り扱い性が容易になる。
【0086】
上記のような特性を有する保護膜形成フィルム3を構成する硬化性接着剤は、硬化性成分とバインダーポリマー成分とを含有することが好ましい。硬化性成分としては、熱硬化性成分、エネルギー線硬化性成分、またはこれらの混合物を用いることができるが、保護膜形成フィルム3の硬化方法や硬化後の耐熱性を考慮すると、熱硬化性成分を用いることが特に好ましい。
【0087】
熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0088】
エポキシ樹脂は、加熱を受けると三次元網状化し、強固な被膜を形成する性質を有する。このようなエポキシ樹脂としては、従来より公知の種々のエポキシ樹脂が用いられるが、通常は、分子量300〜2000程度のものが好ましく、特に分子量300〜500のものが好ましい。さらには、分子量330〜400の常態で液状のエポキシ樹脂と、分子量400〜2500、特に500〜2000の常温で固体のエポキシ樹脂とをブレンドした形で用いることが好ましい。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、50〜5000g/eqであることが好ましい。
【0089】
このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型もしくはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−ジシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等のように、分子内の炭素−炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシドを挙げることができる。その他、ビフェニル骨格、ジシクロヘキサジエン骨格、ナフタレン骨格等を有するエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0090】
これらの中でも、ビスフェノール系グリシジル型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。これらエポキシ樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
エポキシ樹脂を用いる場合には、助剤として、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤を併用することが好ましい。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤とは、室温ではエポキシ樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ樹脂と反応するタイプの硬化剤である。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の活性化方法には、加熱による化学反応で活性種(アニオン、カチオン)を生成する方法;室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法;モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤で高温で溶出して硬化反応を開始する方法;マイクロカプセルによる方法等が存在する。
【0092】
熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、各種オニウム塩や、二塩基酸ジヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、アミンアダクト硬化剤、イミダゾール化合物等の高融点活性水素化合物等を挙げることができる。これら熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、特に好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部の割合で用いられる。
【0093】
フェノール系樹脂としては、アルキルフェノール、多価フェノール、ナフトール等のフェノール類とアルデヒド類との縮合物などが特に制限されることなく用いられる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、p−クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ポリパラビニルフェノール樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、あるいはこれらの変性物等が用いられる。
【0094】
これらのフェノール系樹脂に含まれるフェノール性水酸基は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と加熱により容易に付加反応して、耐衝撃性の高い硬化物を形成することができる。このため、エポキシ樹脂とフェノール系樹脂とを併用してもよい。
【0095】
バインダーポリマー成分は、保護膜形成フィルム3に適度なタックを与え、保護膜形成用複合シート1の操作性を向上することができる。バインダーポリマーの重量平均分子量は、通常は5万〜200万、好ましくは10万〜150万、特に好ましくは20万〜100万の範囲にある。分子量が低過ぎると、保護膜形成フィルム3のフィルム形成が不十分となり、高過ぎると他の成分との相溶性が悪くなり、結果として均一なフィルム形成が妨げられる。このようなバインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー等が用いられ、特にアクリル系ポリマーが好ましく用いられる。
【0096】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(メタ)アクリル酸誘導体から導かれる構成単位とからなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が用いられる。また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
【0097】
上記の中でもメタクリル酸グリシジル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーにグリシジル基を導入すると、前述した熱硬化性成分としてのエポキシ樹脂との相溶性が向上し、保護膜形成フィルム3の硬化後のガラス転移温度(Tg)が高くなり、耐熱性が向上する。また、上記の中でもアクリル酸ヒドロキシエチル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーに水酸基を導入すると、ワークへの密着性や粘着物性をコントロールすることができる。
【0098】
バインダーポリマーとしてアクリル系ポリマーを使用した場合における当該ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10万以上であり、特に好ましくは15万〜100万である。アクリル系ポリマーのガラス転移温度は通常20℃以下、好ましくは−70〜0℃程度であり、常温(23℃)においては粘着性を有する。
【0099】
熱硬化性成分とバインダーポリマー成分との配合比率は、バインダーポリマー成分100重量部に対して、熱硬化性成分を、好ましくは50〜1500重量部、特に好ましくは70〜1000重量部、さらに好ましくは80〜800重量部配合することが好ましい。このような割合で熱硬化性成分とバインダーポリマー成分とを配合すると、硬化前には適度なタックを示し、貼付作業を安定して行うことができ、また硬化後には、被膜強度に優れた保護膜が得られる。
【0100】
保護膜形成フィルム3は、着色剤および/またはフィラーを含有することが好ましい。これにより、光線透過率を所望の範囲に制御して、視認性に優れたレーザー印字を可能にすることができる。また、保護膜形成フィルム3がフィラーを含有すると、硬化後の保護膜の硬度を高く維持することができるとともに、耐湿性を向上させることができる。さらには、形成される保護膜の表面のグロスを所望の値に調整することもできる。さらにまた、硬化後の保護膜の熱膨張係数を半導体ウエハの熱膨張係数に近づけることができ、これによって加工途中の半導体ウエハの反りを低減することができる。
【0101】
着色剤としては、基材21にて説明した公知のものを使用することができるが、レーザー光照射による印字性の観点から、顔料、特に無機系顔料を使用することが好ましい。無機系顔料の中でも、特にカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは、通常は黒色であるが、レーザー光照射による変性によって白くなり、コントラスト差が大きくなるため、レーザー印字された部分の視認性に非常に優れる。
【0102】
フィラーとしては、結晶シリカ、溶融シリカ、合成シリカ等のシリカや、アルミナ、ガラスバルーン等の無機フィラーが挙げられる。中でも合成シリカが好ましく、特に半導体装置の誤作動の要因となるα線の線源を極力除去したタイプの合成シリカが最適である。フィラーの形状としては、球形、針状、不定形のいずれであってもよい。
【0103】
また、保護膜形成フィルム3に添加するフィラーとしては、上記無機フィラーの他にも、機能性のフィラーが配合されていてもよい。機能性のフィラーとしては、例えば、ダイボンド後の導電性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、セラミック、またはニッケル、アルミニウム等を銀で被覆した導電性フィラーや、熱伝導性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、シリコン、ゲルマニウム等の金属材料やそれらの合金等の熱伝導性フィラーなどが挙げられる。
【0104】
保護膜形成フィルム3中における着色剤およびフィラーの配合量は、レーザー光照射による印字が可能となり、またフィラーの上記作用が奏されるよう適宜調整すればよい。具体的に、着色剤の配合量は、通常は0.001〜5質量%であることが好ましく、特に0.01〜3質量%であることが好ましく、さらには0.1〜2.5質量%であることが好ましい。また、フィラーの配合量は、通常は40〜80質量%であることが好ましく、特に50〜70質量%であることが好ましい。
【0105】
保護膜形成フィルム3は、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤を含有することにより、保護膜形成フィルム3の硬化後において、保護膜の耐熱性を損なわずに、保護膜とワークとの接着性・密着性を向上させることができるとともに、耐水性(耐湿熱性)を向上させることができる。カップリング剤としては、その汎用性とコストメリットなどからシランカップリング剤が好ましい。
【0106】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0107】
保護膜形成フィルム3は、硬化前の凝集力を調節するために、有機多価イソシアナート化合物、有機多価イミン化合物、有機金属キレート化合物等の架橋剤を含有してもよい。また、保護膜形成フィルム3は、静電気を抑制し、チップの信頼性を向上させるために、帯電防止剤を含有してもよい。さらに、保護膜形成フィルム3は、保護膜の難燃性能を高め、パッケージとしての信頼性を向上させるために、リン酸化合物、ブロム化合物、リン系化合物等の難燃剤を含有してもよい。
【0108】
保護膜形成フィルム3の厚さは、保護膜としての機能を効果的に発揮させるために、3〜300μmであることが好ましく、特に5〜250μmであることが好ましく、さらには7〜200μmであることが好ましい。
【0109】
ここで、粘着シート2における粘着剤層22(特にエネルギー線硬化性粘着剤を硬化させた部分)と接触させた状態で保護膜形成フィルム3を硬化させて保護膜を形成した場合、当該保護膜における粘着シート2側の表面のグロス値は、25以上であることが好ましく、特に30以上であることが好ましい。なお、本明細書におけるグロス値は、JIS Z8741に準じ、測定角60°にて光沢計を使用して測定した値とする。チップに形成された保護膜表面のグロス値が上記の範囲にあることで、美観が優れるとともに、レーザー印字によって形成される印字の視認性に優れる。
【0110】
4.剥離シート
剥離シート4は、保護膜形成用複合シート1が使用されるまでの間、保護膜形成フィルム3および粘着剤層22を保護するものであり、必ずしもなくてもよい。剥離シート4の構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。剥離シート4の厚さについては特に制限はないが、通常20〜250μm程度である。
【0111】
5.保護膜形成用複合シートの製造方法
保護膜形成用複合シート1は、好ましくは、保護膜形成フィルム3を含む第1の積層体と、粘着シート2を含む第2の積層体とを別々に作製した後、第1の積層体および第2の積層体を使用して、保護膜形成フィルム3と粘着シート2とを積層することにより製造することができるが、これに限定されるものではない。
【0112】
第1の積層体を製造するには、第1の剥離シート(
図1中では剥離シート4)の剥離面(剥離性を有する面;通常は剥離処理が施された面であるが、これに限定されない)に、保護膜形成フィルム3を形成する。具体的には、保護膜形成フィルム3を構成する硬化性接着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する保護膜形成フィルム用の塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって第1の剥離シートの剥離面に塗布して乾燥させて、保護膜形成フィルム3を形成する。次に、保護膜形成フィルム3の露出面に第2の剥離シートの剥離面を重ねて圧着し、2枚の剥離シートに保護膜形成フィルム3が挟持されてなる積層体(第1の積層体)を得る。
【0113】
この第1の積層体においては、所望によりハーフカットを施し、保護膜形成フィルム3(および第2の剥離シート)を所望の形状、例えば円形等にしてもよい。この場合、ハーフカットにより生じた保護膜形成フィルム3および第2の剥離シートの余分な部分は、適宜除去すればよい。
【0114】
一方、第2の積層体を製造するには、剥離シートの剥離面に、粘着剤層22を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する粘着剤層用の塗布剤を塗布し乾燥させて粘着剤層22を形成する。その後、粘着剤層22の露出面に基材21を圧着し、基材21および粘着剤層22からなる粘着シート2と、剥離シートとからなる積層体(第2の積層体)を得る。
【0115】
ここで、粘着剤層22がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合には、少なくとも保護膜形成フィルム3と接触する部分に対してエネルギー線を照射して、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させることが好ましい。また、粘着剤層22が多層からなり、保護膜形成フィルム3と接触する層(接触層;
図2では第2の粘着剤層222)が、エネルギー線硬化性粘着剤からなる場合には、当該接触層に対してエネルギー線を照射して、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させることが好ましい。
【0116】
エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で50〜1000mJ/cm
2が好ましく、特に100〜500mJ/cm
2が好ましい。また、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0117】
上記のように保護膜形成フィルム3と接触する部分または層を硬化させることにより、当該硬化した粘着剤層22に接触する保護膜形成フィルム3の硬化後の表面は、平滑性が高くなり、それに伴い(グロス)が高くなり、チップの保護膜として美観に優れたものとなる。また、表面光沢(グロス)の高い保護膜にレーザー印字が施されると、その印字の視認性が向上する。
【0118】
以上のようにして第1の積層体および第2の積層体が得られたら、第1の積層体における第2の剥離シートを剥離するとともに、第2の積層体における剥離シートを剥離し、第1の積層体にて露出した保護膜形成フィルム3と、第2の積層体にて露出した粘着シート2の粘着剤層22とを重ね合わせて圧着する。粘着シート2は、所望によりハーフカットし、所望の形状、例えば保護膜形成フィルム3よりも大きい径を有する円形等にしてもよい。この場合、ハーフカットにより生じた粘着シート2の余分な部分は、適宜除去すればよい。
【0119】
このようにして、基材21の上に粘着剤層22が積層されてなる粘着シート2と、粘着シート2の粘着剤層22側に積層された保護膜形成フィルム3と、保護膜形成フィルム3における粘着シート2とは反対側に積層された剥離シート4とからなる保護膜形成用複合シート1が得られる。
【0120】
なお、
図2に示す保護膜形成用複合シート1Aは、基本的には保護膜形成用複合シート1と同様にして製造することができるが、第1の粘着剤層221は、上記第2の積層体側に形成し、第2の粘着剤層222は、上記第1の積層体側に形成することが好ましい。すなわち、第1の積層体において保護膜形成フィルム3を形成した後、保護膜形成フィルム3の露出面に、第2の粘着剤層222を形成することが好ましい。ハーフカットを行う場合には、保護膜形成フィルム3および第2の粘着剤層222を併せてハーフカットすることが好ましい。
【0121】
また、
図3に示す保護膜形成用複合シート1Bも、基本的には保護膜形成用複合シート1と同様にして製造することができるが、剥離シート4を剥離した後、保護膜形成フィルム3における粘着シート2とは反対側の周縁部に、治具用粘着剤層5を形成することが好ましい。
【0122】
6.保護膜形成用複合シートの使用方法
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1を用いて、一例としてワークとしての半導体ウエハから保護膜付きチップを製造する方法を以下に説明する。最初に、保護膜形成用複合シート1の剥離シート4を剥離し、保護膜形成フィルム3および粘着シート2の粘着剤層22の周縁部を露出させる。
【0123】
そして、
図4に示すように、保護膜形成フィルム3を半導体ウエハ6に貼付するとともに、粘着剤層22の周縁部をリングフレーム7に貼付する。保護膜形成フィルム3を半導体ウエハ6に貼付するにあたり、所望により保護膜形成フィルム3を加熱して、粘着性を発揮させてもよい。
【0124】
次いで、保護膜形成フィルム3を硬化させて、保護膜を形成する。保護膜形成フィルム3が熱硬化性接着剤の場合には、保護膜形成フィルム3を所定温度で適切な時間加熱すればよい。
【0125】
上記のようにして硬化した保護膜形成フィルム3によって保護膜が形成されたら、その保護膜に対して、粘着シート2を介してレーザー光を照射し、レーザー印字を行う。保護膜におけるレーザー光照射部分は、色が変わり、もって印字されることとなる。本実施形態では、レーザー光としては、532nmの波長のレーザー光を使用することが好ましい。
【0126】
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1では、粘着シート2の上記波長の光線透過率が75〜85%であることにより、粘着シート2におけるレーザー光照射部分の材料が分解・蒸発して、粘着シート2を貫通する細孔が形成される。したがって、レーザー印字により保護膜からガスが発生したとしても、この細孔を介してガスが抜けるため、粘着シート2と保護膜との間にガス溜まりが発生することが効果的に抑制される。また、保護膜に形成された印字は、粘着シート2を介して良好に視認される。これにより、保護膜に形成された印字の視認性が優れたものとなり、また、粘着シート2と保護膜との密着性が確保されて、後に行うダイシング工程中にチップが粘着シート2から脱落することが抑制される。
【0127】
上記のレーザー印字が完了したら、常法に従って半導体ウエハ6をダイシングし、レーザー印字された保護膜を有するチップ(保護膜付きチップ)を得る。その後、所望により粘着シート2を平面方向にエキスパンドし、粘着シート2から保護膜付きチップをピックアップする。
【0128】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0129】
例えば、上記保護膜形成用複合シート1の粘着シート2の粘着剤層22における基材21とは反対側の周縁部には、リングフレーム6等の治具を接着するための治具用粘着剤層が別途設けられていてもよい。
【実施例】
【0130】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0131】
〔実施例1〕
実施例1では、以下のようにして、
図1および
図5に示すような保護膜形成用複合シート1を製造した。
(1)保護膜形成フィルムを含む第1の積層体の作製
次の(a)〜(f)の成分を混合し、固形分濃度が50質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成フィルム用塗布剤を調製した。
(a)バインダーポリマー:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート55質量部、メチルアクリレート10質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部、およびグリシジルメタクリレート20質量部を共重合して得た共重合体,重量平均分子量:80万)17質量部(固形分換算,以下同じ)
(b)熱硬化性成分:混合エポキシ樹脂(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180−200)60質量部、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量800−900)10質量部、およびジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量274−286)30質量部の混合物)17質量部
(c)硬化剤:ジシアンアミド(旭電化社製:アデカハ−ドナー3636AS)0.3質量部、および2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール(四国化成工業社製:キュアゾール2PHZ)0.3質量部
(d)着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製:#MA650,平均粒径:28nm)2質量部
(e)シランカップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−403,メトキシ当量:12.7mmol/g,分子量:236.3)0.4質量部
(f)フィラー:不定形シリカフィラー(平均粒径:3μm)63質量部
【0132】
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1の剥離シート(リンテック社製:SP−PET381031)と、厚さ38μmのPETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第2の剥離シート(リンテック社製:SP−PET381130)とを用意した。
【0133】
最初に、第1の剥離シートの剥離面上に、前述の保護膜形成フィルム用塗布剤を、最終的に得られる保護膜形成フィルムの厚さが25μmとなるように、ナイフコーターにて塗布し、乾燥させて、保護膜形成フィルムを形成した。その後、保護膜形成フィルムに第2の剥離シートの剥離面を重ねて両者を貼り合わせ、第1の剥離シート(
図1における剥離シート4)と、保護膜形成フィルム(
図1における保護膜形成フィルム3)(厚さ:25μm)と、第2の剥離シートとからなる積層体を得た。この積層体は長尺であり、巻き取って巻収体とした。
【0134】
上記で得られた長尺の積層体の巻収体を、幅方向300mm(
図5中、w
1で示す)に裁断した。次いで、上記積層体に対し、第2の剥離シート側から、第2の剥離シートおよび保護膜形成フィルムを切断するように、当該積層体の幅方向中央部に円形(直径d
1:220mm;
図5中の符号301)のハーフカットを連続的に施した。その後、ハーフカットで形成した円形よりも外側に存在する第2の剥離シートおよび保護膜形成フィルムを除去した。これにより、第1の剥離シートの剥離面上に円形の保護膜形成フィルム、その上に円形の第2の剥離シートが積層された第1の積層体を得た。
【0135】
(2)粘着シートを含む第2の積層体の作製
次の(g)および(h)の成分を混合し、固形分濃度が30質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、粘着剤層用塗布剤を調製した。
(g)粘着主剤:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート40質量部、2−エチルヘキシルアクリレート55質量部、および2−ヒドロキシルエチルアクリレート5質量部を共重合して得られた共重合体,重量平均分子量:60万)100質量部
(h)架橋剤:芳香族系ポリイソシアネート化合物(三井化学社製,タケネートD110N)10質量部
【0136】
厚さ38μmのPETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製:SP−PET381031)と、基材として、青色ポリ塩化ビニルフィルム(オカモト社製,厚さ:80μm)の片面にコロナ処理を施したものとを用意した。
【0137】
最初に、剥離シートの剥離面上に、前述の粘着剤層用塗布剤を、最終的に得られる粘着剤層の厚さが10μmとなるように、ナイフコーターにて塗布し、乾燥させて、粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層に上記基材のコロナ処理面を重ねて両者を貼り合わせ、基材(
図1における基材21)および粘着剤層(
図1における粘着剤層22)(厚さ:10μm)からなる粘着シート(
図1における粘着シート1)と、剥離シートとからなる第2の積層体を得た。この積層体は長尺であり、巻き取って巻収体とした後、幅方向300mm(
図5中、w
1で示す)に裁断した。
【0138】
(3)保護膜形成用複合シートの作製
上記(1)で得られた第1の積層体から円形の第2の剥離シートを剥離し、円形の保護膜形成フィルムを露出させた。一方、上記(2)で得られた第2の積層体から剥離シートを剥離して、粘着剤層を露出させた。その粘着剤層に、上記保護膜形成フィルムが接触するように、第1の積層体と第2の積層体とを貼り合わせ、基材および粘着剤層からなる粘着シートと、保護膜形成フィルムと、第1の剥離シートとが積層されてなる第3の積層体を得た。
【0139】
次いで、第3の積層体に対し、上記基材側から、粘着シート(基材および粘着剤層)を切断するようにハーフカットを施した。具体的には、
図5に示すように、上記円形の保護膜形成フィルム(直径d
1:220mm)よりも大きい同心円の円形(直径d
2:270mm;
図5中の符号201)(円形の粘着シート)を形成するとともに、その円形から外側に20mmの間隔(
図5中、w
2で示す)を有する円弧(
図5中の符号202)を形成した。また、隣り合う円形同士の間には、第3の積層体の幅方向端部と平行する2本の直線(
図5中の符号203)を形成し、当該直線にて隣り合う上記円弧を連結した。
【0140】
その後、上記円形の粘着シートと上記円弧との間の部分および上記2本の直線で挟まれた部分を除去し、
図1および
図5に示す保護膜形成用複合シートを得た。
【0141】
〔実施例2〕
基材として青色PET/ポリエチレン複合フィルム(アジヤアルミ社製,厚さ:100μm)を使用する以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
【0142】
〔実施例3〕
実施例3では、以下のようにして、
図2および
図5に示すような保護膜形成用複合シート1Aを製造した。
(1)保護膜形成フィルムを含む第1の積層体の作製
次の(i)および(j)の成分を混合し、固形分濃度が50質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、第2の粘着剤層用塗布剤を調製した。
(i)粘着主剤:エネルギー線硬化型アクリル系共重合体(2−エチルヘキシルアクリレート80質量部および2−ヒドロキシルエチルアクリレート20質量部を共重合したものに、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート21.4質量部(2−ヒドロキシルエチルアクリレートの水酸基に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのイソシアネート基が80モル%となる量)を反応させて得られた共重合体,重量平均分子量:60万)100質量部
(j)架橋剤:芳香族系ポリイソシアネート化合物(トーヨーケム社製,BHS8515)0.5質量部
【0143】
実施例1と同様にして、第1の剥離シートの剥離面上に保護膜形成フィルムを形成した。一方、第2の剥離シートの剥離面に、前述した第2の粘着剤層用塗布剤を、最終的に得られる第2の粘着剤層の厚さが10μmになるように、ナイフコーターにて塗布し、乾燥させて、第2の粘着剤層を形成した。その後、上記保護膜形成フィルムと、第2の粘着剤層とを貼り合わせ、第1の剥離シート(
図2における剥離シート4)と、保護膜形成フィルム(
図2における保護膜形成フィルム3)(厚さ:25μm)と、第2の粘着剤層(
図2における第2の粘着剤層222)(厚さ:10μm)と、第2の剥離シートとからなる積層体を得た。
【0144】
次いで、実施例1と同様に裁断してハーフカットを施し、第1の剥離シートの剥離面上に円形の保護膜形成フィルム、その上に円形の第2の粘着剤層、その上に円形の第2の剥離シートが積層された積層体を得た。
【0145】
そして、上記積層体の第2の粘着剤層に対し、第2の剥離シート側から紫外線を照射し(照度:140mW/cm
2,光量:510mJ/cm
2)、第2の粘着剤層を硬化させて、これを第1の積層体とした。
【0146】
(2)粘着シートの一部を含む第2の積層体の作製
実施例1と同様にして、剥離シートの剥離面上に第1の粘着剤層を形成し、基材を積層した後、裁断することにより、基材(
図2における基材21)と、第1の粘着剤層(
図2における粘着剤層221)(厚さ:10μm)と、剥離シートとからなる第2の積層体を得た。
【0147】
(3)保護膜形成用複合シートの作製
上記(1)で得られた第1の積層体から円形の第2の剥離シートを剥離し、第2の粘着剤層を露出させた。一方、上記(2)で得られた第2の積層体から剥離シートを剥離して、第1の粘着剤層を露出させた。その第1の粘着剤層に、上記第2の粘着剤層が接触するように、第1の積層体と第2の積層体とを貼り合わせ、基材、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層からなる粘着シートと、保護膜形成フィルムと、第1の剥離シートとが積層されてなる第3の積層体を得た。
【0148】
次いで、実施例1と同様にしてハーフカットを施し、
図2および
図5に示す保護膜形成用複合シートを得た。
【0149】
〔実施例4〕
基材として淡青色ポリプロピレンフィルム(三菱樹脂社製,厚さ:80μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
【0150】
〔比較例1〕
基材として無色ポリオレフィンフィルム(三菱樹脂社製,厚さ:80μm)を使用した以外は実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
【0151】
〔比較例2〕
基材として淡黒色ポリ塩化ビニルフィルム(オカモト社製,厚さ:50μm)を使用した以外は実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
【0152】
〔比較例3〕
基材として濃黒色ポリ塩化ビニルフィルム(オカモト社製,厚さ:100μm)を使用した以外は実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
【0153】
〔比較例4〕
基材として無色ポリオレフィンフィルム(三菱樹脂社製,厚さ:80μm)を使用し、かつ、粘着シートを含む積層体を裁断した後に、CO
2ガスレーザー(パナソニック社製,YB−HCS03T04,波長:10.6μm)を用いて粘着シートに貫通孔(貫通孔直径:50μm,間隔:5.0mm)を形成した以外は、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
【0154】
〔試験例1〕<光線透過率の測定>
実施例および比較例の各粘着シートについて、分光光度計(SHIMADZU社製,UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600)を用いて、波長300〜1200nmの領域の光の透過率を測定した。得られた測定結果より、波長532nmにおける光線透過率を算出した。測定には、分光光度計に付属する大形試料室MPC−3100を用い、分光光度計に内蔵された積分球を使用した。
【0155】
また、実施例および比較例の各保護膜形成用フィルムについても同様に測定し、波長532nmにおける光線透過率を算出した。さらに、参考例として、ダイシングテープ(リンテック社製,Adwill D−676)についても同様に測定し、波長532nmにおける光線透過率を算出した。結果を表1に示す。
【0156】
〔試験例2〕<保護膜のグロス値の測定>
テープマウンター装置(リンテック社製,RAD2700)を用いて、実施例および比較例の保護膜形成用複合シートから第1の剥離シートを剥離して露出した保護膜形成フィルムを、♯2000研磨したシリコンウエハ(直径:8インチ,厚さ:350μm)の研磨面に、70℃に加熱しながら貼付した。それとともに、露出した粘着剤層または第1の粘着剤層をリングフレームに貼付した。次いで、130℃で2時間加熱を行うことにより、保護膜形成用フィルムを硬化させて、シリコンウエハ上に保護膜を形成した。
【0157】
得られた保護膜付きウエハから粘着シートを剥離し、露出した保護膜の表面(シリコンウエハとは反対側の面)について、光沢計(日本電色工業社製,VG2000)を用い、JIS Z8741に準じて60°の鏡面光沢度を測定し、得られた値を保護膜のグロス値とした。結果を表2に示す。
【0158】
〔試験例3〕<ガス溜まりの評価>
試験例2と同様にして、リングフレームに固定された、粘着シートと保護膜付きウエハとの積層体を得た。次いで、印字装置(KEYENCE社製,MD−T1000,使用波長532nm)を用い、粘着シート側から波長532nmのレーザー光をそれぞれ照射して、保護膜にレーザー印字(文字サイズ:0.5mm×0.5mm,文字間隔:0.3mm,文字数:20文字)を行った。
【0159】
上記積層体における保護膜付ウエハと粘着シートとの界面に、レーザー印字によるガス溜まりが発生しているか否かを、以下に示す基準に基づき目視にて評価した。結果を表2に示す。
【0160】
=ガス溜まりの評価=
A:全ての文字でガス溜まりが発生しなかった。
B:部分的にガス溜まりが発生した。
C:全ての文字でガス溜まりが発生した。
【0161】
〔試験例4〕<文字視認性/レーザー印字性の評価>
試験例3にて保護膜に形成したレーザー印字文字の、粘着シートを介した視認性について、以下に示す基準に基づき目視にて評価した。また、ガス溜まり・文字視認性が共にAである場合をレーザー印字性評価○、いずれかがA以外であった場合をレーザー印字性評価×とした。結果を表2に示す。
【0162】
=文字視認性の評価=
A:全ての文字を問題なく読むことができた。
B:不鮮明な部分があるが、全ての文字を読むことができた。
C:部分的に読めない文字があった。
D:全て又は殆どの文字を読むことができなかった。
【0163】
【表1】
【0164】
【表2】
【0165】
表1および表2から分かるように、積分球を使用して光線透過率を測定したときに、粘着シートの波長532nmの光線透過率が75〜85%の範囲にある実施例の保護膜形成用複合シートは、ガス溜まりの発生がなく、また粘着シートを介した文字視認性も高く、したがってレーザー印字性に優れていた。
【0166】
これに対し、比較例1の保護膜形成用複合シートは、粘着シートに細孔が形成されずガス溜まりが発生した。また、比較例2の保護膜形成用複合シートは、粘着シートに細孔が形成されるが、粘着シートを介した文字視認性が良好でなかった。一方、比較例3の保護膜形成用複合シートは、粘着シートにレーザー光が吸収されてしまい、保護膜に印字することができなかった。また、比較例4の保護膜形成用複合シートは、粘着シートに予め形成した貫通孔付近の文字以外は、ガス溜まりが発生して文字を読むことができなかった。