特許第6557922号(P6557922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557922
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】送信制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   H04B1/04 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-121700(P2015-121700)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-11345(P2017-11345A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】石澤 尚
(72)【発明者】
【氏名】田口 恵一
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−220426(JP,A)
【文献】 特開2003−332918(JP,A)
【文献】 特開2006−186873(JP,A)
【文献】 特開平09−289425(JP,A)
【文献】 特開平09−172380(JP,A)
【文献】 特開平07−131365(JP,A)
【文献】 特開平10−056345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/00−1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信起動の時点以降に始動するAPC(Auto Power Control)を備えた無線装置によって送信される送信波の波形を整える送信制御装置であって、
前記送信波における主信号の出力が開始される時点で、当該送信波のレベルが定常値に収束するように、前記主信号の出力が開始される時点より所定の時間前から、前記主信号の前縁部に疑似信号を付加して、当該前縁部の波形を設定する前縁波形設定手段と、
前記波形の設定に並行して前記APCの下で前記送信波のレベルが定常値に収束する期間に、前記APCによる前記送信波のレベルの増減を規制する処理を行う過渡期間制御手段と、
前記期間の後に、前記規制を解除する定常電力設定手段と
前記期間の長さをランダムに設定する期間長設定手段と
を備えたことを特徴とする送信制御装置。
【請求項2】
送信起動の時点以降に始動するAPC(Auto Power Control)を備えた無線装置によって送信される送信波の波形を整える送信制御装置であって、
前記送信波における主信号の出力が開始される時点で、当該送信波のレベルが定常値に収束するように、前記主信号の出力が開始される時点より所定の時間前から、前記主信号の前縁部に疑似信号を付加して、当該前縁部の波形を設定する前縁波形設定手段と、
前記前縁波形設定手段による前記波形の設定の下で、前記送信波のレベルが定常値となった後、前記APCの下で生成された送信波のレベルが定常値に収束する期間に、前記無線装置によって送信される送信波のレベルを既定の値に固定する処理を行う過渡期間制御手段と、
前記期間の後に、前記レベルの固定を解除する定常電力設定手段と
前記期間の長さをランダムに設定する期間長設定手段と
を備えたことを特徴とする送信制御装置。
【請求項3】
送信起動の時点以降に始動するAPC(Auto Power Control)を備えた無線装置によって送信される送信波の波形を整える送信制御装置であって、
前記送信波における主信号の出力が開始される時点で、当該送信波のレベルが定常値に収束するように、前記主信号の出力が開始される時点より所定の時間前から、前記主信号の前縁部に疑似信号を付加して、当該前縁部の波形を設定する前縁波形設定手段と、
前記前縁波形設定手段による前記波形の設定の下で、前記送信波のレベルが定常値となった後、かつ前記APCの下で生成された送信波のレベルが定常値に収束する期間に、前記無線装置によって送信される送信波のレベルをランダムに変更する処理を行う過渡期間制御手段と、
前記期間の後に、前記送信波のレベルのランダムな変更を解除する定常電力設定手段と
前記期間の長さをランダムに設定する期間長設定手段と
を備えたことを特徴とする送信制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の送信制御装置において、
前記送信波は、
ベースバンド信号に基づいて搬送波信号の振幅を変調する変調方式により生成され、
前記過渡期間制御手段は、
前記ベースバンド信号の振幅の操作により前記処理および前記波形の前縁部の設定を行う
ことを特徴とする送信制御装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載の送信制御装置において、
前記前縁波形設定手段は、
前記APCの応答性を左右する時定数と、前記APCの形態との双方または何れか一方を変更することにより、前記波形の前縁部を設定する
ことを特徴とする送信制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の送信制御装置において、
前記期間の一部または全部に所定の疑似信号が含まれる
ことを特徴とする送信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信起動の時点以降に始動するAPC(Auto Power Control;自動電力制御)を備えた無線装置において、送信されるべき送信波の波形を整える送信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている無線装置では、次のような構成によって周波数ホッピングに伴って生じるスペクトルの不要な広がりを軽減している。すなわち、搬送波周波数の切換時に、変化が緩やかとなるように整形したダミーの波形を送信する。その際、APCの制御信号をサンプルホールド回路を用いて保持することで、波形整形期間に不適切に自動送信電力制御が行われないようにしている。この特許文献1に記載されている無線装置では、波形整形を行わない期間は、測定した送信電力が予め定めた送信電力となるようにAPCの制御信号を生成し、生成したAPCの制御信号に応じて増幅器の利得を制御する。一方、波形整形を行う期間は、周波数切換期間の直前にAPCの制御信号をサンプルホールド回路を用いて保持し、当該期間中、増幅器の利得を一定に保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−220426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている無線装置では、増幅器の利得を制御する信号を、ダミー信号の送信期間中は直前の値で一定値に保持し、ダミー信号送信後に通常の信号に切り替える。この構成では制御信号の切換時に制御信号が階段状に変化する場合があり、送信波に階段状の変化が発生することがあった。すなわち、APCに不適切な変動が発生する場合があるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、無線装置におけるAPCにおいて不適切な変動の発生を防止することができる送信制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明による送信制御装置の一態様は、送信起動の時点以降に始動するAPC(Auto Power Control)を備えた無線装置によって送信される送信波の波形を整える送信制御装置であって、前記送信波における主信号の出力が開始される時点で、当該送信波のレベルが定常値に収束するように、前記主信号の出力が開始される時点より所定の時間前から、前記主信号の前縁部に疑似信号を付加して、当該前縁部の波形を設定する前縁波形設定手段と、前記波形の設定に並行して前記APCの下で前記送信波のレベルが定常値に収束する期間に、前記APCによる前記送信波のレベルの増減を規制する処理を行う過渡期間制御手段と、前記期間の後に、前記規制を解除する定常電力設定手段と、前記期間の長さをランダムに設定する期間長設定手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明による送信制御装置の一態様は、送信起動の時点以降に始動するAPC(Auto Power Control)を備えた無線装置によって送信される送信波の波形を整える送信制御装置であって、前記送信波における主信号の出力が開始される時点で、当該送信波のレベルが定常値に収束するように、前記主信号の出力が開始される時点より所定の時間前から、前記主信号の前縁部に疑似信号を付加して、当該前縁部の波形を設定する前縁波形設定手段と、前記前縁波形設定手段による前記波形の設定の下で、前記送信波のレベルが定常値となった後、前記APCの下で生成された送信波のレベルが定常値に収束する期間に、前記無線装置によって送信される送信波のレベルを既定の値に固定する処理を行う過渡期間制御手段と、前記期間の後に、前記レベルの固定を解除する定常電力設定手段と、前記期間の長さをランダムに設定する期間長設定手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明による送信制御装置の一態様は、送信起動の時点以降に始動するAPC(Auto Power Control)を備えた無線装置によって送信される送信波の波形を整える送信制御装置であって、前記送信波における主信号の出力が開始される時点で、当該送信波のレベルが定常値に収束するように、前記主信号の出力が開始される時点より所定の時間前から、前記主信号の前縁部に疑似信号を付加して、当該前縁部の波形を設定する前縁波形設定手段と、前記前縁波形設定手段による前記波形の設定の下で、前記送信波のレベルが定常値となった後、かつ前記APCの下で生成された送信波のレベルが定常値に収束する期間に、前記無線装置によって送信される送信波のレベルをランダムに変更する処理を行う過渡期間制御手段と、前記期間の後に、前記送信波のレベルのランダムな変更を解除する定常電力設定手段と、前記期間の長さをランダムに設定する期間長設定手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の送信制御装置において、前記送信波は、ベースバンド信号に基づいて搬送波信号の振幅を変調する変調方式により生成され、前記過渡期間制御手段は、前記ベースバンド信号の振幅の操作により前記処理および前記波形の前縁部の設定を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の送信制御装置において、前記前縁波形設定手段は、前記APCの応答性を左右する時定数と、前記APCの形態との双方または何れか一方を変更することにより、前記波形の前縁部を設定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の送信制御装置において、前記期間の一部または全部に所定の疑似信号が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前縁波形設定手段による送信波の前縁部の波形の設定と連動して、APCの下で送信波のレベルが定常値に収束する期間に、送信波のレベルが適切に制御される。よって、無線装置におけるAPCにおいて不適切な変動が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による送信制御装置の一実施形態の構成例を説明するためのブロック図である。
図2図1に示した無線装置1が送信する送信波18の一例を説明するための模式図である。
図3図1に示した無線装置1が送信する送信波18の他の例を説明するための模式図である。
図4図1に示した無線装置1が送信する送信波18の他の例を説明するための模式図である。
図5】本発明による送信制御装置の他の実施形態の構成例を説明するためのブロック図である。
図6図5に示した無線装置100の動作例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明による送信制御装置の一実施形態の構成例を説明するためのブロック図である。図1に示した送信制御装置2は、無線装置1から送信される送信波18の波形を整える装置である。なお、図1に示した例では、送信制御装置2と無線装置1とを別の装置としているが、送信制御装置2は無線装置1と一体として構成されていてもよい。
【0016】
無線装置1は、入力部11と、合成/(または)切換部12と、出力部13と、電力増幅部14と、電力検出部15と、空中線16と、APC部17とを備える。また、送信制御装置2は、前縁波形設定手段21と、過渡期間制御手段22と、定常電力設定手段23と、期間長設定手段24とを備える。
【0017】
入力部11は3つの入力を有し、1つの入力にはベースバンド信号が入力され、残りの2つの入力は前縁波形設定手段21の出力と過渡期間制御手段22の出力とにそれぞれ接続されている。入力部11の出力は合成/切換部12の一方の入力に接続されている。合成/切換部12の出力は出力部13の一方の入力に接続されている。合成/切換部12の他方の入力は前縁波形設定手段21の出力に接続されている。出力部13の出力は電力増幅部14の入力に接続されている。出力部13の他方の入力は前縁波形設定手段21の出力に接続されている。電力増幅部14の出力は電力検出部15の入力に接続されている。電力検出部15の一方の出力は空中線16の入力に接続され、他方の出力はAPC部17の1つの入力に接続されている。APC部17は3つの入力を有し、他の2つの入力は前縁波形設定手段21の出力と過渡期間制御手段22の出力とにそれぞれ接続されている。期間長設定手段24の3つの出力は、前縁波形設定手段21の一方の入力と、過渡期間制御手段22の一方の入力と、定常電力設定手段23の入力とにそれぞれ接続されている。定常電力設定手段23の2つの出力は、前縁波形設定手段21の他方の入力と、過渡期間制御手段22の他方の入力とにそれぞれ接続されている。
【0018】
以上の構成において、入力部11は、入力したベースバンド信号と、前縁波形設定手段21の出力と過渡期間制御手段22の出力とに応じて、所定形式の信号を生成して出力する。合成/切換部12は、前縁波形設定手段21の出力に応じて所定形式の疑似信号を生成し、入力部11が出力した信号と生成した疑似信号との両方の信号を合成して出力するかまたはいずれか一方を選択して出力する。出力部13は、合成/切換部12が出力した信号と、前縁波形設定手段21の出力とに応じて、無線周波数帯の信号を生成して出力する。
【0019】
電力増幅部14は、APC部17が出力した制御信号に応じて増幅利得を可変し、出力部13から入力した信号を増幅して出力する。電力検出部15は、電力増幅部14から入力した信号の一部を取り出してAPC部17へ出力するとともに、残部を空中線16へ出力する。空中線16は、無線装置3を受信側として送信波18を出力する。
【0020】
APC部17は、電力検出部15の出力と、前縁波形設定手段21の出力と、過渡期間制御手段22の出力とに応じて、電力増幅部14の利得を可変するための制御信号を生成して出力する。APC部17は、前縁波形設定手段21の出力または過渡期間制御手段22の出力に応じて、制御信号の生成形態を変化させる。APC部17は、APCの動作状態において、電力検出部15から入力した信号のレベルが、所定の基準レベルに一致するように制御信号を生成する。APC部17は、電力検出部15から入力した信号のレベルが零または所定のレベルより小さい場合には、APCを停止状態として、電力増幅部14へ出力する制御信号を例えば一定の値で保持する。また、APC部17は、出力部13が信号を出力した後に動作状態となる。すなわちAPC部17は、送信起動の時点以降に始動して、電力検出部15から入力した信号のレベルに応じて電力増幅部14の利得を可変制御する。
【0021】
前縁波形設定手段21、過渡期間制御手段22および定常電力設定手段23が、送信波の波形を整える動作には、次の(1)から(3)がある。
【0022】
(1)前縁波形設定手段21は、送信波18を受信し得る受信端(無線装置3)が送信波18の立ち上がりに対して既定の時間内に応答できる形態に、送信波18の前縁部の波形を設定する。過渡期間制御手段22は、波形の設定に並行してAPCの下で送信波18のレベルが定常値に収束する期間に、APCによる送信波18のレベルの増減を規制する処理を行う。そして、定常電力設定手段23は、その期間の後に、規制を解除する。
【0023】
ここで、図2を参照して、送信波18の波形を整える(1)の動作について説明する。図2は、送信波18の一例を説明するための模式図である。図2において、横軸は時間、縦軸は送信波18の波高を表す。図2に示したように、本実施形態において、無線装置1が送信する送信波18は、主信号と、主信号の前縁部に付加された網掛けして示した疑似信号とから構成されている。ここで、主信号は、ベースバンド信号が示す情報を含む信号であり、伝送情報で変調されている信号である。図2において、時刻t10は疑似信号の出力開始時刻であって、送信波18の出力開始時刻である。時刻t11は主信号の出力開始時刻である。本実施形態では、この主信号の送信開始時刻t11を送信波18の立ち上がりと呼ぶ。そして、時刻t12は疑似信号の出力終了時刻である。
【0024】
例えば、受信側の無線装置3に対して主信号の出力開始時刻t11から主信号を正常に受信可能となるまでの応答時間が時間T23と既定されている場合に、無線装置3が受信可能となるまでの実際の応答時間が時間T22であるとき、前縁波形設定手段21は、主信号の出力開始時刻t11から既定の時間T23後の時刻t12から時間T22前の時刻t10に送信波18の出力を開始するため、時刻t10から疑似信号の出力が開始されるように、送信波18の前縁部の波形を設定する。すなわち、前縁波形設定手段21は、時刻t10から疑似信号が出力されるように、入力部11、合成/切換部12、出力部13またはAPC部17の少なくとも1つに所定の信号を出力する。図2に示した例において、規定の振幅がL11であるとすると、前縁波形設定手段21は、時刻t10で疑似信号の出力を開始し、時刻t11で疑似信号の振幅がL11となるように疑似信号の振幅を設定する。さらに、前縁波形設定手段21は、時刻t11から時刻t12までの間、主信号の振幅の変化に応じて、疑似信号の振幅をL12からL13やL14のように減少させる。なお、疑似信号の振幅の設定値は、予め実験やシミュレーションを行うことで適切な値とすることができる。
【0025】
一方、上述したように、過渡期間制御手段22は、前縁波形設定手段21による波形の設定に並行してAPCの下で送信波18のレベルが定常値に収束する期間に、APCによる送信波18のレベルの増減を規制する処理を行う。ここで、送信波18のレベルが定常値に収束する期間は、図2に示した例では、時間T22に対応する。この場合、時間T22の間、過渡期間制御手段22は、APC部17による電力増幅部14の利得の可変制御を制限(オフ)する。時間T22の間、APC部17は、例えば電力増幅部14の利得を一定値に保持するように制御信号を生成して電力増幅部14へ出力する。
【0026】
また、定常電力設定手段23は、時間T22経過後の時刻t12に、APC部17による電力増幅部14の利得の可変制御を規制を解除する(可変制御をオンする)。
【0027】
なお、図2に示した例では、時刻t11から時刻t12までの時間T22の期間にレベルを変化させた疑似信号が主信号に対して付加されている。ただし、時間T22の期間の全てで疑似信号を付加するのに代えて、一部の期間のみ疑似信号を付加してもよい。すなわち、時刻t11(すなわち送信波の立ち上がり)から時間T22の期間の末尾(時刻t12)に至る全てまたは一部の期間に、主信号の送信波に代わる疑似信号が送信波18として適用されてもよい。あるいは、前縁波形設定手段21による波形の設定の下で、送信波のレベルが定常値に収束した時点(時刻t11)から期間の末尾(時刻t12)に至る全てまたは一部の期間に、主信号の送信波に代わる疑似信号が送信波18として適用されてもよい。すなわち、時間T22の期間の一部または全部に所定の疑似信号を含ませることができる。
【0028】
一方、期間長設定手段24は、時間T22の長さ、時刻t10から時刻t11までの時間T21の長さや時間T23の長さをランダムに設定する機能を有する。
【0029】
なお、過渡期間制御手段22は、送信波18がベースバンド信号に基づいて搬送波信号の振幅を変調する変調方式により生成される場合に、ベースバンド信号の振幅の操作により、APCによる送信波18のレベルの増減を規制する処理を行うこともできる。
【0030】
(2)前縁波形設定手段21は、送信波18を受信し得る受信端(無線装置3)が送信波18の立ち上がりに対して既定の時間内に応答できる形態に、送信波の前縁部の波形を設定する。過渡期間制御手段22は、前縁波形設定手段32による波形の設定の下で、送信波18のレベルが定常値となった後、APCの下で生成された送信波18のレベルが定常値に収束する期間に、無線装置1よって送信される送信波18のレベルを既定の値に固定する処理を行う。そして、定常電力設定手段23は、その期間の後に、レベルの固定を解除する。
【0031】
図3を参照して、送信波18の波形を整える(2)の動作について説明する。図3は、送信波18の一例を説明するための模式図である。図2に示したものに対応するものには同一の符号を用いて説明を省略する。図2に示した例と、図3に示した例では、APCの制御動作をオフからオンに変化させる時刻が異なる。すなわち、図3に示した例では、主信号の出力開始時刻である時刻t11でAPCの制御動作がオフからオンに変化している。
【0032】
この場合、前縁波形設定手段32による波形の設定の下で、送信波18のレベルが定常値となった時刻が、時刻t11である。また、APCの下で生成された送信波18のレベルが定常値に収束する期間が、時間T23である。
【0033】
なお、前縁波形設定手段21は、例えば、入力部11等において、送信波18がベースバンド信号に基づいて搬送波信号の振幅を変調する変調方式により生成される場合に、ベースバンド信号の振幅の操作により、波形の前縁部を設定することができる。あるいは、前縁波形設定手段21は、APCの応答性を左右する時定数と、APCの形態との双方または何れか一方を変更することにより、波形の前縁部を設定することができる。あるいは、前縁波形設定手段21は、APCにおけるフィードバック制御をフィードフォワード制御に変更することにより、波形の前縁部を設定することができる。すなわち、APCにおける電力制御をフィードフォワード制御とすることで波形の前縁部の設定を行っても良い。
【0034】
(3)前縁波形設定手段21は、送信波18を受信し得る受信端(無線装置3)が送信波18の立ち上がりに対して既定の時間内に応答できる形態に、送信波の前縁部の波形を設定する。過渡期間制御手段22は、前縁波形設定手段21による波形の設定の下で、送信波18のレベルが定常値となった後、かつAPCの下で生成された送信波18のレベルが定常値に収束する期間に、無線装置1によって送信される送信波のレベルをランダムに変更する処理を行う。そして、定常電力設定手段23は、その期間の後に、送信波のレベルのランダムな変更を解除する。
【0035】
図4を参照して、送信波18の波形を整える(3)の動作について説明する。図4は、送信波18の一例を説明するための模式図である。図3に示したものに対応するものには同一の符号を用いて説明を省略する。図3に示した例と、図4に示した例とでは、時間T23の間に主信号に付加する疑似信号のレベルが互いに異なる。なお、図4においても、図3と同様、前縁波形設定手段32による波形の設定の下で、送信波18のレベルが定常値となった時刻が、時刻t11である。また、APCの下で生成された送信波18のレベルが定常値に収束する期間が、時間T23である。
【0036】
動作(3)では、過渡期間制御手段22が、動作(2)において一定とした疑似信号のレベルL13やL14を、例えば、レベルL15やレベルL16のようにランダムに変化させる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、動作(1)〜(3)のいずれかによって、前縁波形設定手段21による送信波の前縁部の波形の設定と連動して、APCの下で送信波のレベルが定常値に収束する期間に、送信波のレベルが適切に制御される。よって、無線装置1におけるAPCにおいて不適切な変動が発生することを容易に防止することができる。したがって、APCの特性に偏差や変動が生じても、受信端において受信波に施されるべき処理の所望のタイミングにおける起動が確度高く安定に所望のタイミングで実現される。
【0038】
なお、APCが始動する時点は、送信起動の時点と同時または所定時間遅れた時点とすることができる。また、前縁波形設定手段21は、既存のAPCの併用により実現されなくてもよい。
【0039】
次に、図5および図6を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。図5は。本発明による送信制御装置の他の実施形態の構成例を説明するためのブロック図である。図6は、図5に示した無線装置100の動作例を説明するための模式図である。
【0040】
図5に示した無線装置100は、入力回路101と、ランダム発生器102と、ダミー信号発生器103と、切替器104と、出力回路105と、APC部106と、励振部107と、PA(Power Amplifier;電力増幅器)108と、電力検出部109と、空中線110と、送信制御装置111とを備える。
【0041】
入力回路101は主信号を入力する。ランダム発生器102の出力は、ダミー信号発生器103の入力に接続されている。切替器104の3つの入力には入力回路101の出力とダミー信号発生器103の出力と送信制御装置111の出力とが接続され、切替器104の出力は出力回路105の入力に接続されている。出力回路105の出力は、APC部106の3入力のうちの1入力に接続されている。APC部106の出力は、励振部107の入力に接続されている。励振部107の出力は、PA108の入力に接続されている。PA108の出力は、電力検出部109の入力に接続されている。電力検出部109の一方の出力は空中線110の入力に接続され、他方の出力はAPC部106の入力に接続されている。送信制御装置111の一方の出力は切替器104の入力に接続され、他方の出力はAPC部106の入力に接続されている。
【0042】
以上の構成において、入力回路101は、例えば、図5に模式的に示したような周波数特性を有する音声通信信号を入力し、入力した信号を内部のバッファアンプ等を通して出力する。ランダム発生器102は乱数を生成し、生成した乱数を表す信号を出力する。ダミー信号発生器103は、ランダム発生器102が生成した乱数に応じてダミー信号を生成して出力する。ダミー信号は、AM(振幅変調)、FM(周波数変調)、PM(位相変調)等の変調方式を、入力した乱数に応じてランダムに選択した変調信号である。ダミー信号は、図5に模式的に示したような主信号の周波数特性とは異なる周波数特性を持つ。切替器104は、送信制御装置111から入力した信号に応じて、入力回路101から入力した主信号と、ダミー信号発生器103から入力したダミー信号とのいずれか一方を選択して出力する。また、切替器104は、出力を無信号状態とすることもできる。出力回路105は、切替器104の出力を入力し、2次変調、増幅、周波数変換等の処理を施し、処理した信号を出力する。APC部106は、電力検出部109が出力した信号と所定の基準値との偏差が小さくなるように、出力回路105から入力した信号の大きさを変化させて出力する。励振部107は、APC部106から入力した信号に例えば位相補償等を施し、さらに増幅して出力する。PA18は、励振部107から入力した信号を増幅して出力する。電力検出部109は、PA18から入力した信号の一部を取り出してAPC部106へ出力するとともに、残部を空中線110へ出力する。
【0043】
一方、送信制御装置111は、切替器104の切り替え動作を制御するとともに、APC部106の動作を制御する。本実施形態において送信制御装置111は、切替器104の接続状態を制御することで、切替器104からダミー信号を出力した後、一定の空白期間を置いた後、切替器104から主信号を出力させる。送信制御装置111は、また、ダミー信号から主信号への切り替えの際に送信波の変化を緩やかにするための制御をAPC部106に対して実行する。送信制御装置111の制御の詳細は、図1等を参照して説明した送信制御装置2と同一であり説明を省略する。
【0044】
次に、図6を参照して、図5に示した無線装置100の動作例について説明する。図6は、切替器104が出力した信号の変化と、一般的なAPCの場合と本実施形態のAPCの場合との2つの場合について空中線110が出力した送信波の波高の変化を示した。ここで、一般的なAPCとは、送信制御装置111によるAPC部106に対する制御を実行せずに、APC部106が電力検出部109からの入力に応じて出力信号を変化させる制御を実行することを意味する。図6に示した動作例では、時刻t21で切替器104がダミー信号を出力し、時刻t22で切替器104が出力を無信号状態とする。そして、時刻t23で切替器104が主信号を出力する。
【0045】
一般的なAPCの場合、送信波の波高値は、ダミー信号の入力時(t21)以降、徐々に増加し、一定レベルを一旦超えた後、一定レベルに収束する。次に、送信波の波高値は、ダミー信号の停止時(t22)以降、徐々に減少する。次に、送信波の波高値は、主信号の入力時(t23)以降、徐々に増加し、一定レベルを一旦超えた後、一定レベルに収束する。このように、一般的なAPCの場合、ダミー信号と主信号の切り替え時に送信波の波高値が変動する。
【0046】
一方、本実施形態のAPCの場合、送信波の波高値は、ダミー信号の入力時(t21)以降、徐々に増加し、一定レベルを一旦超えた後、一定レベルに収束する。次に、ダミー信号の停止時(t22)以降、主信号の入力時(t23)までの期間、APC部106はAPCを破線で示したようにホールドする(すなわち信号の増幅利得を送信波が基準レベルに収束したときの値で固定する)。次に、送信波の波高値は、主信号の入力時点(t23)から、時刻t22でホールドされたAPCによる増幅利得で一定レベルに収束した状態となる。このように、本実施形態のAPCの場合、ダミー信号と主信号の切り替え時に送信波の波高値の変動を抑えることができる。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、無線装置100におけるAPCにおいて不適切な変動が発生することを防止することができる。
【0048】
なお、図5に示した無線装置100における信号処理の方法や実現手段はハードウエア的であっても、デジタル信号処理であっても不問であり、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等様々な処理プロセッサを使用しても問題ない。
【0049】
なお、本発明の実施形態は上記のものに限定されない。また、本発明は、通信機や放送機だけではなく、レーダ等の航法機器にも適用可能である。例えば、変調方式、キャリア(マルチキャリア)、周波数配置、チャネル配置、チャネル制御の方式、多元接続方式、無線伝送路のトポロジー、通信制御の形態(機能や負荷の分散を含む)、通信制御が通信レイヤについても限定はなく、適宜選択可能である。
【符号の説明】
【0050】
1、100 無線装置
2、111 送信制御装置
21 前縁波形設定手段
22 過渡期間制御手段
23 定常電力設定手段
24 期間長設定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6