(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電源系統における三相交流電源に接続される3つの配線における3つの異なる電圧の位相に基づいて、前記電圧の位相の所定の範囲ごとに、制御対象とする相を切り替える切替部と、
前記切替部が切り替えた制御対象の相について、出力した指令電流値と取得した実電流値との差に基づいて制御対象の電流を制御し、前記指令電流値が前記実電流値よりも大きいことが所定回数連続した場合には、前記実電流値をより大きくする制御を行い、前記指令電流値が前記実電流値よりも小さいことが所定回数連続した場合には、前記実電流値をより小さくする制御を行う電流制御部と、
を備えるアクティブフィルタ。
電源系統における三相交流電源に接続される3つの配線における3つの異なる電圧の位相に基づいて、前記電圧の位相の所定の範囲ごとに、制御対象とする相を切り替えることと、
切り替えた制御対象の相について、出力した指令電流値と取得した実電流値との差に基づいて制御対象の電流を制御することと、
前記指令電流値が前記実電流値よりも大きいことが所定回数連続した場合には、前記実電流値をより大きくする制御を行い、前記指令電流値が前記実電流値よりも小さいことが所定回数連続した場合には、前記実電流値をより小さくする制御を行うことと、
を含む制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態によるモータ駆動装置の構成について説明する。
モータ駆動装置1は、
図1に示すように、三相交流電源10と、系統電圧検出部20と、コンバータ電流検出部30と、ノイズフィルタ40と、ダイオードモジュール50と、平滑化コンデンサ60と、インテリジェントパワーモジュール70と、コンプレッサモータ80と、アクティブフィルタ90と、電流補正部100と、平滑リアクトル110と、を備える。
【0015】
三相交流電源10は、位相が120度ずつ異なる3つの交流電圧(R相、S相、T相)を出力する。三相交流電源10は、例えば、商用電源である。
【0016】
系統電圧検出部20は、三相交流電源10が出力するR相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線、S相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線、T相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線のそれぞれにおいて、電圧を検出する。
【0017】
コンバータ電流検出部30は、カレントトランス301aと、カレントトランス301bと、を備える。
カレントトランス301aは、三相交流電源10からノイズフィルタ40に供給されるR相の電流の大きさと向きを検出する。
カレントトランス301bは、三相交流電源10からノイズフィルタ40に供給されるT相の電流の大きさと向きを検出する。なお、R相の電流の位相は、R相の電圧の位相と同位相である。また、T相の電流の位相は、T相の電圧と同位相である。また、R相の電流、S相の電流、T相の電流の総和は、常にゼロである。そのため、S相の電流の大きさと向きは、R相の電流とT相の電流の検出結果から算出することができる。S相の位相は、S相の電圧の位相と同位相である。
【0018】
ノイズフィルタ40は、三相交流電源10の3つの配線に於いてノイズ成分のような数十[kHz]以上の高周波成分を除去する。
【0019】
ダイオードモジュール50は、R相の電流、S相の電流、T相の電流のそれぞれを整流し、直流電圧を生成する。ダイオードモジュール50は、例えば、三相ブリッジ回路である。
【0020】
平滑化コンデンサ60は、ダイオードモジュール50が生成した直流電圧における高周波成分を除去する。
なお、上記のノイズフィルタ40、ダイオードモジュール50、及び、平滑化コンデンサ60により三相交流電源10が出力する交流電圧を直流電圧に変換している。すなわち、ノイズフィルタ40、ダイオードモジュール50、及び、平滑化コンデンサ60によりコンバータが構成されている。
【0021】
インテリジェントパワーモジュール70は、ダイオードモジュール50が生成した直流電圧からコンプレッサモータ80を駆動するための三相交流電圧を生成する。インテリジェントパワーモジュール70は、例えば、インバータである。
【0022】
アクティブフィルタ90は、系統電圧検出部20が検出した電圧とコンバータ電流検出部30が検出した電流とに基づいて、R相の電圧、S相の電圧、T相の電圧のそれぞれを正弦波になるように補正するための補正電流を特定し、特定した補正電流の大きさを示す指令電流値を電流補正部100に送信する機能部である。
具体的には、電流補正部100が端子である場合、アクティブフィルタ90は、補正信号としてR相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流そのものを生成し、その補正信号を電流補正部100に供給する。
また、具体的には、電流補正部100が補正信号に応じた電流を新たに生成する場合、アクティブフィルタ90は、補正信号として例えばR相の配線、S相の配線、T相の配線における電圧と電流に基づいて、R相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流を示す数ビットのデジタル信号を生成し、その補正信号を電流補正部100に送信する。R相の配線、S相の配線、T相の配線におけるインピーダンスは予めわかるため、アクティブフィルタ90は、R相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流がわかれば、その電流を示す数ビットのデジタル信号を生成することも可能である。
【0023】
電流補正部100は、アクティブフィルタ90からの指令電流値に基づいて、R相の配線、S相の配線、T相の配線に電流を流す。
具体的には、電流補正部100が端子である場合、電流補正部100は、アクティブフィルタ90からR相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流そのものを受け、その受けた電流をR相の配線、S相の配線、T相の配線に流すことで、R相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す。
また、具体的には、電流補正部100が補正信号に応じた電流を新たに生成する場合、アクティブフィルタ90からR相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流を示す数ビットのデジタル信号を受信する。そして、電流補正部100は、受信したデジタル信号が示すR相の配線、S相の配線、T相の配線における高調波電流を打ち消す電流を生成し、生成した電流をR相の配線、S相の配線、T相の配線に供給する。
これにより、三相交流電源10の出力、すなわち、モータ駆動装置1の最上流部において、歪の少ない正弦波波形の電流が実現される。
なお、
図1では、電流補正部100と系統電圧検出部20は、R相の配線、S相の配線、T相の配線において同一箇所に一部共通の構成を有している。
【0024】
平滑リアクトル110は、平滑コンデンサ60とダイオードモジュール50の間に設けられる。平滑リアクトル110は、コンバータに入力されるコンバータ電流の通電期間の電流を一定に保つ。
なお、コンバータ電流の通電期間の電流が許容範囲内で一定に保たれれば、平滑リアクトル110は無くてもよい。
【0025】
アクティブフィルタ90は、所定の時間間隔ごとにR相、S相、T相のうちの1つに対応するコンバータ電流のみの高調波信号を打ち消す機能を有する。具体的には、アクティブフィルタ90は、
図2に示すように、切替部901と、電流制御部902と、記憶部903と、を備える。
【0026】
切替部901は、電源系統における三相交流電源10に接続されるR相、S相、T相の3つの配線における3つの異なる電圧の位相に基づいて、電圧の位相の所定の範囲ごとに、制御対象とする相を切り替える。
【0027】
電流制御部902は、切替部901が切り替えた制御対象の相について制御対象の電流を制御する。
電流制御部902は、自身が出力する指令電流値と制御対象における実電流値との差に基づいて制御対象の電流を制御する。
電流制御部902は、指令電流値が実電流値よりも大きいこと、または、小さいことが所定回数連続したと判定した場合に、追加の電流制御を行う。
記憶部903は、アクティブフィルタ90が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。
【0028】
次に、アクティブフィルタ90を実現する情報処理装置の構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態によるアクティブフィルタ90を実現する情報処理装置の構成を示すブロック図である。アクティブフィルタ90は、情報処理装置である、例えば
図3に示す一般的なコンピュータ200を用いて実現される。コンピュータ200は、CPU(Central Processing Unit)201、RAM(Random Access Memory)202、ROM(Read Only Memory)203、ストレージ装置204、外部I/F(Interface)205、および通信I/F206などを有する。
【0029】
CPU201は、ROM203やストレージ装置204などに格納されたプログラムやデータをRAM202に記憶させ、処理を実行することで、コンピュータ200の各機能を実現する演算装置である。RAM202は、CPU201のワークエリアなどとして用いられる揮発性のメモリである。ROM203は、電源を切ってもプログラムやデータを保持する不揮発性のメモリである。ストレージ装置204は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などにより実現され、OS(Operation System)、アプリケーションプログラム、および各種データなどを記憶する。
【0030】
アクティブフィルタ90における切替部901、電流制御部902、記憶部903のそれぞれは、CPU201が例えばストレージ装置204に格納された制御プログラムを実行することにより実現される。
【0031】
外部I/F205は、外部装置とのインターフェースである。外部装置には、例えば、記録媒体207などがある。コンピュータ200は、外部I/F205を介して、記録媒体207の読取り、書き込みを行うことができる。記録媒体207には、例えば、光学ディスク、磁気ディスク、メモリカード、USB(Universal Serial Bus)メモリなどが含まれる。
【0032】
次に、アクティブフィルタ90を備えるモータ駆動装置1の処理について説明する。
ここでは、
図4に示すモータ駆動装置1の処理フローについて説明する。
【0033】
系統電圧検出部20は、三相交流電源10が出力するR相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線、S相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線、T相の電圧をノイズフィルタ40に供給する配線のそれぞれにおいて、電圧を検出する。
系統電圧検出部20は、検出した電圧を示す電圧信号を切替部901に送信する。
【0034】
切替部901は、系統電圧検出部20から電圧信号を受信する。
切替部901は、受信した電圧信号が示す電圧値から電圧の位相を特定する(ステップS1)。例えば、切替部901は、R相の電圧のゼロクロス点を示す時刻を位相の基準である0度とする。なお、切替部901は、R相ではなくS相またはT相の電圧のゼロクロス点を示す時刻を位相の基準としてもよい。
【0035】
切替部901は、電圧の1周期を6つの範囲に分けて、制御対象とする相を切り替える(ステップS2)。具体的には、例えば、
図5に示すように、切替部901は、0度以上60度未満のときの制御対象となる電圧信号をS相の電圧信号とする。切替部901は、60度以上120度未満のときの制御対象となる電圧信号をR相の電圧信号とする。切替部901は、120度以上180度未満のときの制御対象となる電圧信号をT相の電圧信号とする。切替部901は、180度以上240度未満のときの制御対象となる電圧信号をS相の電圧信号とする。切替部901は、240度以上300度未満のときの制御対象となる電圧信号をR相の電圧信号とする。切替部901は、300度以上360度未満のときの制御対象となる電圧信号をT相の電圧信号とする。
切替部901は、位相の基準と、6つのそれぞれの位相の範囲と、その位相の範囲における制御対象とする相とを含む制御対象情報を電流制御部902に送信する。
【0036】
電流制御部902は、切替部901から制御対象情報を受信する。
電流制御部902は、受信した制御対象情報に基づいて切替部901の切り替えによる制御対象のみにおける電流を制御する(ステップS3)。
具体的には、電流制御部902は、制御対象情報に含まれる位相の基準を示す時刻と同期をとる。電流制御部902は、その基準から60度ごとに制御対象であるR相、S相、またはT相のみに対応する電流補正部100に指令電流値を送信する。電流補正部100は、指令電流値が示す電流を制御対象に流す。
【0037】
電流制御部902は、制御対象の相の実電流値であるコンバータ電流を取得する(ステップS4)。例えば、電流制御部902は、制御対象に接続されているカレントトランスから実電流値であるコンバータ電流を取得する。また、例えば、電流制御部902は、制御対象以外に接続されているカレントトランスから演算したコンバータ電流を他機能部から取得してもよい。また、例えば、電流制御部902は、制御対象以外に接続されているカレントトランスから自身がコンバータ電流を演算してもよい。
【0038】
電流制御部902は、制御対象に対応する電流補正部100に送信した指令電流値と、そのときの実電流値であるコンバータ電流とを比較する(ステップS5)。
電流制御部902は、指令電流値が実電流値よりも大きい場合、実電流値が所望の電流値よりも小さいことを示している。また、電流制御部902は、指令電流値が実電流値よりも小さい場合、実電流値が所望の電流値よりも大きいことを示している。
【0039】
電流制御部902は、指令電流値が実電流値よりも大きい場合(ステップS5においてYES)、現在の実電流値よりも大きくなるように実電流値を調整する(ステップS6)。
そして、電流制御部902は、ステップS5における今回の判定が前回の同一の相についての判定と同一であるか否かを判定する(ステップS7)。
電流制御部902は、今回の判定が前回の同一の相についての判定と同一であると判定した場合(ステップS7においてYES)、同一と判断した回数が連続して所定回数となったか否かを判定する(ステップS8)。
電流制御部902は、同一と判断した回数が連続して所定回数となったと判定した場合(ステップS8においてYES)、追加の電流制御を行う(ステップS9)。この追加の電流制御とは、例えば、通常時よりも電流値を大きくする制御である。
電流制御部902は、ステップS2の処理に戻す。
【0040】
また、電流制御部902は、指令電流値が実電流値よりも小さい場合(ステップS5においてNO)、現在の実電流値よりも小さくなるように実電流値を調整する(ステップS10)。
【0041】
そして、電流制御部902は、ステップS5における今回の判定が前回の同一の相についての判定と同一であるか否かを判定する(ステップS11)。
電流制御部902は、今回の判定が前回の同一の相についての判定と同一であると判定した場合(ステップS11においてYES)、同一と判断した回数が連続して所定回数となったか否かを判定する(ステップS12)。
電流制御部902は、同一と判断した回数が連続して所定回数となったと判定した場合(ステップS12においてYES)、追加の電流制御を行う(ステップS13)。この追加の電流制御とは、例えば、通常時よりも電流値を小さくする制御である。
電流制御部902は、ステップS2の処理に戻す。
【0042】
電流制御部902は、ステップS7において今回の判定が前回の同一の相についての判定と同一であると判定した場合(ステップS7においてNO)、ステップS2の処理に戻す。
電流制御部902は、ステップS8において同一と判断した回数が連続して所定回数となったと判定した場合(ステップS8においてNO)、ステップS2の処理に戻す。
電流制御部902は、ステップS11において今回の判定が前回の同一の相についての判定と同一であると判定した場合(ステップS11においてNO)、ステップS2の処理に戻す。
電流制御部902は、ステップS12において同一と判断した回数が連続して所定回数となったと判定した場合(ステップS12においてNO)、ステップS2の処理に戻す。
【0043】
このようにすれば、電流制御部902は、より短時間に実電流値を所望の実電流値に近づけることができ、系統電流を理想的な正弦波波形の電流に近づけることができる。
なお、指令電流値と実電流値とで差が生じた場合の補正値は、実験やシミュレーションなどで予め決定し、記憶部903に記憶しておけばよい。
【0044】
図6は、電流制御部902が上述の制御対象における電流を制御した場合の理想電流値と実電流値との比較結果である。また、
図7は、電流制御部902による制御対象への制御が行われない場合の理想電流値と実電流値との比較結果である。
図6と
図7からわかるように、電流制御部902が上述の制御対象における電流を制御した場合の実電流値は、電流制御部902による制御対象への制御が行われない場合の実電流値に比べて、理想電流値により近い。すなわち、本発明の一実施形態によるアクティブフィルタ90により、実電流値を理想電流値により近づけることができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態によるアクティブフィルタ90を備えるモータ駆動装置1について説明した。
本発明の一実施形態によるアクティブフィルタ90において、切替部901は、電源系統における三相交流電源10に接続されるR相、S相、T相の3つの配線における3つの異なる電圧の位相に基づいて、電圧の位相の所定の範囲ごとに、制御対象とする相を切り替える。電流制御部902は、切替部901が切り替えた制御対象の相について制御対象の電流を制御する。電流制御部902は、自身が出力する指令電流値と制御対象における実電流値との差に基づいて制御対象の電流を制御する。電流制御部902は、指令電流値が実電流値よりも大きいこと、または、小さいことが所定回数連続したと判定した場合に、追加の電流制御を行う。記憶部903は、アクティブフィルタ90が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。
こうすることで、アクティブフィルタ90は、発振が生じない範囲で理想的な正弦波波形の系統電流を実現することができる。
【0046】
なお、本発明の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0047】
記憶部のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0048】
本発明の実施形態について説明したが、上述のモータ駆動装置1のそれぞれは内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータがそのプログラムを実行するようにしてもよい。
【0049】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。