(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正量設定部は、前記工作機械において前記定量補正量に基づき加工された加工済ワークの寸法計測値と前記設計値との差分が前記設計値の公差内に収まる定量補正量を設定する請求項1記載の補正量入力装置。
前記差分設定部は、前記差分範囲のうち、前記補正量設定部による前記定量補正量が設定できない範囲について、前記工作機械の確認指示を前記表示部に表示させる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の補正量入力装置。
前記転送部により前記定量補正量が転送可能な複数の工作機械を前記表示部に表示させ、前記入力部により選択された前記工作機械に対して前記定量補正量の転送を許容する工作機械設定部を備える請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の補正量入力装置。
前記転送部は、転送指示を前記表示部に表示させ、前記入力部により前記転送指示が選択された際に、前記定量補正量の転送を実行する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の補正量入力装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した工作機械では、計測器の不具合等によりワークの寸法の計測誤差などが発生した場合、誤った寸法計測値に基づいて補正量が設定されてしまう。この場合、加工済のワークの寸法が設計値から大きくずれ、連続加工の場合、不良品を大量に発生させてしまうことになる。このような事態が生じるのを回避するために、工作機械がワークの設計値からのずれを自動的に補正するだけでなく、オペレータが例えば所定個数毎に計測器を用いて手動でワークの寸法を計測し、寸法計測値と設計値との差分を確認することが行われている。そして、オペレータが差分が大きいと判断した場合に、オペレータが差分に応じた補正量を工作機械に設定する。
【0005】
しかしながら、複数のオペレータがそれぞれ独自に差分に応じた補正量を工作機械に設定する場合、オペレータの経験や勘に頼る必要があり、同じ差分であってもオペレータによって補正量のばらつきが生じてしまう。このように、補正量のばらつきが生じると、加工済のワークの寸法にもばらつきが生じてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、加工済ワークの寸法計測値と設計値との差分に応じた差分範囲を設定し、その差分範囲に応じた定量補正量を設定することで、加工済ワークの寸法のばらつきが生じるのを防止することができるとともに、簡単な選択操作で工作機械に定量補正量を入力することができる補正量入力装置及び補正量の入力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、ワークの寸法計測値に対する補正量を工作機械に入力可能な補正量入力装置であって、表示部と、入力部と、加工済ワークの寸法計測値と設計値との差分に応じた複数の差分範囲を設定する差分設定部と、差分範囲を示す複数の数値を表示部に並べて表示させ、かつ、複数の数値のうち隣り合う2つの数値の間である差分範囲のそれぞれに対応して補正量指定を表示部に表示させ、入力部により補正量指定が選択された際に、予め入力された複数の定量補正量の中から、選択された補正量指定に対応する定量補正量を設定する補正量設定部と、補正量設定部で設定された定量補正量を工作機械に転送する転送部と、を備え
、入力部は、表示部上に形成されたタッチパネルであり、複数の補正量指定は、隣り合う2つの数値の間にそれぞれ対応付けられて配置され、かつ、オペレータによるタッチパネルのタッチ操作によって選択される補正量指定ボタンであることを特徴とする。
【0008】
また、補正量設定部は、工作機械において定量補正量に基づき加工された加工済ワークの寸法計測値と設計値との差分が設計値の公差内に収まる定量補正量を設定する構成でもよい。また、定量補正量は、設計値との差分を0とする補正量より小さい補正量に設定されてもよい。
【0009】
また、差分設定部は、ワークの加工部分ごとに複数の差分範囲を設定し、補正量設定部は、差分範囲のそれぞれに対応して補正量指定を表示部に表示させ、補正量指定のそれぞれに対応して定量補正量を設定する構成でもよい。
【0010】
また、差分設定部は、差分範囲のうち、補正量設定部による定量補正量が設定できない範囲について、工作機械の確認指示を表示部に表示させる構成でもよい。また、転送部により定量補正量が転送可能な複数の工作機械を表示部に表示させ、入力部により選択された工作機械に対して定量補正量の転送を許容する工作機械設定部を備える構成でもよい。
【0011】
また、複数のワークを表示部に表示させ、入力部により選択されたワークの情報を差分設定部及び補正量設定部に送るワーク設定部を備え、差分設定部は、情報に対応した差分範囲を設定し、補正量設定部は、情報に対応した定量補正量を設定する構成でもよい。また、補正量設定部は、補正量を数値指定により設定可能であってもよい。
【0012】
また、転送部は、転送指示を表示部に表示させ、入力部により転送指示が選択された際に、定量補正量の転送を実行する構成でもよい
。また、工作機械から離れて、加工済ワークの寸法を計測するための計測ステーションに設置される構成でもよい。
【0013】
また、本発明では、ワークの寸法計測値に対する補正量を工作機械に入力する方法であって、加工済ワークの寸法計測値と設計値との差分に応じた複数の差分範囲を設定することと、差分範囲を示す複数の数値を表示部に並べて表示させ、かつ、複数の数値のうち隣り合う2つの数値の間である差分範囲のそれぞれに対応して補正量指定を表示部に表示させ、入力部により補正量指定のいずれかが選択された際に、予め入力された複数の定量補正量の中から、選択された補正量指定に対応する定量補正量を設定することと、設定された定量補正量を工作機械に転送することと、を含
み、入力部は、表示部上に形成されたタッチパネルであり、複数の補正量指定は、隣り合う2つの数値の間にそれぞれ対応付けられて配置され、かつ、オペレータによるタッチパネルのタッチ操作によって選択される補正量指定ボタンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、差分設定部が加工済ワークの寸法計測値と設計値との差分に応じた差分範囲を設定し、補正量設定部が差分範囲に応じた定量補正量を設定するので、差分範囲に応じた統一された定量補正量を設定することができ、加工済ワークの寸法のばらつきが生じるのを防止することができる。また、補正量設定部が差分範囲に対応して補正量指定を表示部に表示させ、入力部により補正量指定が選択された際に予め入力された定量補正量を設定し、転送部が定量補正量を工作機械に転送するので、オペレータが差分範囲に応じた補正量指定を選択するだけで工作機械に定量補正量が転送されることになり、簡単な選択操作で工作機械に定量補正量を入力することができる。
また、補正量設定部は、複数の差分範囲のそれぞれに対応して複数の補正量指定を表示部に表示させ、入力部により補正量指定のいずれかが選択された際に、選択された補正量指定に対応する定量補正量を設定するので、差分範囲を複数に分割して設定することができるとともに、複数の差分範囲のそれぞれに対応した適正な定量補正量を設定することができる。
【0015】
また、補正量設定部は、工作機械において定量補正量に基づき加工された加工済ワークの寸法計測値と設計値との差分が設計値の公差内に収まる定量補正量を設定するので、工作機械における補正後のワークの寸法計測値が設計値に近い値となるような補正量を設定することができる。また、定量補正量は、設計値との差分を0とする補正量より小さい補正量に設定されるので、補正後のワークの寸法が大きく変動してしまうのを防止することができる。
【0016】
また、差分設定部は、ワークの加工部分ごとに複数の差分範囲を設定し、補正量設定部は、複数の差分範囲のそれぞれに対応して補正量指定を表示部に表示させ、補正量指定のそれぞれに対応して定量補正量を設定するので、ワークの加工部分毎に差分範囲を複数に分割して設定することができるとともに、ワークの加工部分毎に複数の差分範囲のそれぞれに対応した適正な定量補正量を設定することができる。
【0017】
また、差分設定部は、差分範囲のうち、補正量設定部による定量補正量が設定できない範囲について、工作機械の確認指示を表示部に表示させるので、オペレータは差分が大きすぎること、工作機械に異常が発生している可能性があること、などを容易に認識することができる。
【0018】
また、転送部により定量補正量が転送可能な複数の工作機械を表示部に表示させ、入力部により選択された工作機械に対して定量補正量の転送を許容する工作機械設定部を備えるので、複数の工作機械に対して補正量の入力を行うことができ、コストの削減や補正量入力操作の統一などを測ることができる。また、複数のワークを表示部に表示させ、入力部により選択されたワークの情報を差分設定部及び補正量設定部に送るワーク設定部を備え、差分設定部は、情報に対応した差分範囲を設定し、補正量設定部は、情報に対応した定量補正量を設定するので、工作機械が加工可能な複数のワークに対して補正量の入力を行うことができるとともに、オペレータがワークの情報を記憶しておく必要がなくなり、補正量の入力作業が容易となる。
【0019】
また、補正量設定部は、補正量を数値指定により設定可能であるので、補正量の設定の微調整を行うことができる。また、転送部は、転送指示を表示部に表示させ、入力部により転送指示が選択された際に、定量補正量の転送を実行するので、オペレータは定量補正量の転送を実行する前に転送を実行するか否かの確認を行うことができるとともに、転送が実行されたことを確実に認識することができる。また、入力部は、表示部上に形成されたタッチパネルであるので、オペレータのタッチ操作という簡易な操作で補正量を入力することができる。また、補正量入力装置が工作機械から離れて、加工済ワークの寸法を計測するための計測ステーションに設置されているので、工作機械を操作する作業を妨げずにワークの寸法の計測や補正量の入力を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現する場合がある。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の補正量入力装置1、複数台の工作機械2A〜2D、及びPC7(Personal Computer)の配置を示す図である。
図1に示す第1実施形態の補正量入力装置1は、オペレータ(作業者)が計測器(測定器ともいう。)3を用いて手動で計測(測定)したワークの寸法計測値に対する補正量(補正値やオフセット値ともいう。)を例えば旋盤のような工作機械2A〜2Dに入力する装置である。本実施形態において、「補正量」は、工作機械2A〜2Dにおいてワークの加工部分(例えば、内径、外径、幅)の寸法をどの程度補正するかを示す寸法データ(例えばμm単位のデータ)で表される。また、「補正量」は、工作機械2A〜2Dにおいて補正量に基づき加工された補正後の加工済ワークの寸法が予め設定されたワークの加工部分の設計値(基準値)の公差(すなわち許容される加工最大誤差)内に収まるような補正量とされる。なお、ワークの加工部分の設計値は、図面等に記述されたワークの加工部分において要求される寸法の値である。
【0023】
この補正量入力装置1は、工作機械2A〜2Dで加工された加工済のワークの寸法を計測する場所である計測ステーション5に設置されている。また、この補正量入力装置1は、工作機械2A〜2D及びPC7との間でデータ通信可能に構成されている。本実施形態においては、補正量入力装置1は、工作機械2A〜2D及びPC7との間で無線通信可能に構成されている。ただし、補正量入力装置1は、工作機械2A〜2D及びPC7との間においてLAN(Local Area Network)などのような有線でデータ通信可能に構成されてもよい。本実施形態では、補正量入力装置1は、PC7から送信される工作機械に関する工作機械情報及びワークに関するワーク情報を受信して登録する。また、補正量入力装置1は、オペレータの操作に応じて入力した補正量を示す補正量データを工作機械2A〜2Dに転送する。
【0024】
計測ステーション5には、オペレータが加工済のワークの加工部分の寸法を計測するためのノギスなどの計測器3が置かれている。なお、
図1では、計測ステーション5に置かれている計測器として1つの計測器3だけを示しているが、ワークの複数の加工部分を計測するための複数の計測器3が計測ステーション5に置かれる。この計測ステーション5は、例えば工作機械2A〜2Dが設けられている工場内であって、工作機械2A〜2Dが設けられている場所とは異なる場所に設けられている。
【0025】
工作機械2A〜2Dは、加工設定値に基づいてワークを加工する機械である。ここで、「加工設定値」としては、ワークの加工を行うための加工プログラム及び各種パラメータを含む。また、「ワーク」とは、加工される対象物、すなわち被加工物のことをいう。工作機械2A〜2Dは、それぞれ、補正量入力装置1との間でデータ通信可能に構成されている。本実施形態においては、工作機械2A〜2Dは、それぞれ、補正量入力装置1との間で無線通信可能に構成されている。ただし、工作機械2A〜2Dは、それぞれ、補正量入力装置1との間においてLANなどのような有線でデータ通信可能に構成されてもよい。工作機械2A〜2Dは、それぞれ、補正量入力装置1から転送される補正量データを受信すると、受信した補正量データに基づいて加工設定値(例えばパラメータ)を変更することで、ワークの加工部分における寸法の補正(調整)を行う。なお、
図1においては、工作機械として4台の工作機械2A〜2Dが設けられているが、4台未満の工作機械であっても、5台以上の工作機械であってもよい。
【0026】
PC7は、例えば工場内に設けられている管理用端末である。このPC7は、工場内に設けられている工作機械2A〜2Dに関する工作機械情報と、各工作機械2A〜2Dが加工可能なワークに関するワーク情報とを不図示の記憶装置などに記憶している。そして、PC7は、管理者(この管理者は工作機械を操作するオペレータであってもよくオペレータでなくてもよい。以下同じ。)の操作に応じて、工作機械情報及びワーク情報を補正量入力装置1に送信する。
【0027】
オペレータによる補正量の入力操作について
図1を参照して簡単に説明する。工作機械(例えば工作機械2C)の稼働中に、オペレータ(例えば工作機械2Cのオペレータ)が所定個数毎(例えば100個毎)や所定時間毎(例えば1時間毎)に工作機械(例えば工作機械2A)で加工された加工済のワークを計測ステーション5に持っていく。そして、オペレータは、計測器3を用いて手動でワークの加工部分の寸法を計測する。次に、オペレータは、補正量入力装置1の入力部(
図2に示すタッチパネル11)を操作して、計測器3で計測したワークの加工部分の寸法(つまり寸法計測値)とワークの設計値との差分(差、誤差)に対応する補正量を補正量入力装置1に入力する。補正量入力装置1は、オペレータによって入力された補正量を示す補正量データを工作機械(例えば工作機械2A)に転送する。その工作機械は、補正量入力装置1から転送された補正量データに基づきワークの加工部分における寸法の補正を行う。
【0028】
次に、補正量入力装置1及び工作機械2A〜2Dの具体的な構成について説明する。
図2は、
図1に示す補正量入力装置1及び工作機械2A〜2Dの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、補正量入力装置1は、表示部10、演算処理部20、通信部30、及び記憶部40を備えている。表示部10は、例えば液晶画面(表示画面)に画像を表示する表示装置で構成される。この表示部10の表示画面上にタッチパネル11が配置されている。このタッチパネル11は、オペレータの表示画面のタッチ操作の位置又は領域を検出し、その位置又は領域に応じた検出信号を演算処理部20に出力する。このタッチパネル11が、表示部10で表示された情報のいずれかを入力するための入力部を構成する。
【0029】
演算処理部20は、補正量入力装置1の制御全般を司る処理部である。この演算処理部20は、工作機械設定部21、ワーク設定部22、差分設定部23、補正量設定部24、及び転送部25を有している。なお、演算処理部20の構成(演算処理部20が備える各部の構成)は、CPU(Central Processing Unit )やマイクロコンピュータなどの演算装置が記憶部40に記憶されているプログラムに従って実行する制御や処理に相当する。
【0030】
工作機械設定部21は、PC7から送信される工作機械情報を記憶部40に登録する。この工作機械情報は、各工作機械2A〜2Dの名称を含む。また、工作機械設定部21は、記憶部40に登録された工作機械情報に基づいて、複数の工作機械2A〜2D(ここでは工作機械の名称)を表示部10の表示画面に表示させる(
図6に示す転送先表示領域110の転送先選択ボタン111を参照)。また、工作機械設定部21は、オペレータによるタッチパネル11のタッチ操作で選択された工作機械を、補正量データを転送する工作機械(転送先)として設定する。
【0031】
ワーク設定部22は、ワークに関するワーク情報を、当該ワークを加工する工作機械2A〜2Dの工作機械情報に対応付けて記憶部40に登録する。このワーク情報は、ワークの名称、ワークの加工部分の設計値、ワークの加工部分の設計値の公差、ワークの加工部分の差分範囲(すなわちワークの加工部分の寸法計測値と設計値との差分が属する範囲)、その差分範囲に対応した定量の補正量(以下、定量補正量という。)を含む。
【0032】
ワークの加工部分の差分範囲としては、例えば、ワークの内径の差分範囲として「−15〜−10」「−10〜−5」「−5〜5」「5〜10」「10〜15」が設定され、ワークの幅の差分範囲として「−25〜−15」「−15〜−10」「−10〜10」「10〜15」「15〜25」が設定される(
図6に示す第1補正量設定領域130の差分範囲表示領域132、及び第2補正量設定領域140の差分範囲表示領域142を参照)。これらの差分範囲は、ワークの加工部分の設計値の公差(例えばワークの内径の設計値の公差「−5〜5」、ワークの幅の設計値の公差「−10〜10」)などの情報を勘案して管理者によって事前に設定される。なお、これらの差分範囲や公差における数値は、例えばμmの単位とする。
【0033】
また、ワークの内径の差分範囲に対応した定量補正量としては、例えば、差分範囲「−15〜−10」に対応した定量補正量「+10」が設定され、差分範囲「−10〜−5」に対応した定量補正量「+5」が設定され、差分範囲「5〜10」に対応した定量補正量「−5」が設定され、差分範囲「10〜15」に対応した定量補正量「−10」が設定される。また、ワークの幅の差分範囲に対応した定量補正量としては、例えば、差分範囲「−25〜−15」に対応した定量補正量「+15」が設定され、差分範囲「−15〜−10」に対応した定量補正量「+8」が設定され、差分範囲「10〜15」に対応した定量補正量「−8」が設定され、差分範囲「15〜25」に対応した定量補正量「−15」が設定される。これらの定量補正量は、差分範囲、チップ(工具における交換用の刃先)の硬さ、ワークの素材などの情報を総合的に勘案して管理者によって事前に設定される。なお、これらの定量補正量における数値は、例えばμmの単位とする。
【0034】
本実施形態においては、管理者は、寸法計測値と設計値との差分を0とする補正量を設定するのではなく、その差分を0とする補正量よりも小さい補正量を定量補正量として設定する。上記した例において、例えばワークの内径の寸法計測値と設計値との差分が「−13」である場合、管理者は、寸法計測値と設計値との差分を0とする補正量(つまり差分の値「+13」)を設定するのではない。管理者は、その差分を0とする補正量「+13」よりも小さい補正量「+10」を、その差分「−13」が属する差分範囲「−15〜−10」に対応した定量補正量として設定する。
【0035】
差分が0となるような補正量を設定した方が、ワークの寸法の補正が精度よく行われるように思われるが、実際の工作機械におけるワークの補正では所望の補正量よりも大きな量の補正が行われる傾向がある。従って、差分が0となるような補正量を設定する場合(すなわちゼロ点補正を行う場合)、ワークの寸法の補正を行う度にワークの寸法が揺れ動いて安定せず、補正後のワークの寸法が設計値に近付いて行かないことになる。そこで、上記したように、管理者は、寸法計測値と設計値との差分を0とする補正量よりも小さい補正量を定量補正量として設定することにより、確実に補正後のワークの寸法を設計値に近付ける。
【0036】
また、同じ工作機械で加工されたワークであっても、ワークの加工精度に誤差があり、ワーク毎に寸法に誤差が生じる。従って、管理者は、差分と補正量との合計値が設計値の公差(許容される加工最大誤差)内に収まるような補正量を差分範囲に対応した定量補正量として設定する。上記した例において、ワークの幅の公差は例えば「−10〜10」とされている。また、定量補正量「+15」は、差分範囲「−25〜−15」のいずれの値においても、差分と補正量との合計値が公差内に収まる補正量である。また、定量補正量「+8」も、差分範囲「−15〜−10」のいずれの値においても、差分と補正量との合計値が公差内に収まる補正量である。また、定量補正量「−8」も、差分範囲「10〜15」のいずれの値においても、差分と補正量との合計値が公差内に収まる補正量である。また、定量補正量「−15」も、差分範囲「15〜25」のいずれの値においても、差分と補正量との合計値が公差内に収まる補正量である。これらの定量補正量は、管理者の判断によって決定される。従って、オペレータごとに異なる補正量が設定されることがなくなる。
【0037】
また、ワーク設定部22は、記憶部40に登録されたワーク情報に基づいて、工作機械設定部21で設定された工作機械が加工可能な1つ又は複数のワーク(ここではワークの名称)を表示部10の表示画面に表示させる(
図6に示すワーク名称表示領域120のワーク選択ボタン121を参照)。また、ワーク設定部22は、オペレータによるタッチパネル11のタッチ操作で選択されたワークを補正対象のワーク(工作機械において補正量に基づき加工の補正が行われるワーク)として設定する。
【0038】
差分設定部23は、加工済のワークの寸法計測値と設計値との差分を参照するための参照スケール(
図6に示す第1補正量設定領域130の参照スケール131、及び第2補正量設定領域140の参照スケール141を参照)を表示部の表示画面に表示させる。また、差分設定部23は、タッチパネル11のタッチ操作でワークが選択された際に、選択されたワークに対応する複数の差分範囲を記憶部40に登録されたワーク情報から読み出す。そして、差分設定部23は、読み出した差分範囲を参照スケール内の1部に対応付けて表示部10の表示画面に表示する(
図6に示す第1補正量設定領域130の差分範囲表示領域132、及び第2補正量設定領域140の差分範囲表示領域142を参照)。
【0039】
補正量設定部24は、複数の差分範囲に対応付けて補正量指定ボタン(
図6に示す補正少ボタン133、補正多ボタン134、補正少ボタン135、補正多ボタン136、補正少ボタン143、補正多ボタン144、補正少ボタン145、補正多ボタン146を参照。補正量指定ともいう。)を表示部10の表示画面に表示させる。また、補正量設定部24は、タッチパネル11のタッチ操作で補正量指定ボタンが選択された際に、選択された補正量指定ボタンに対応する定量補正量を記憶部40に登録されたワーク情報から読み出す。そして、補正量設定部24は、読み出した定量補正量を工作機械に転送する補正量として設定する。
【0040】
また、補正量設定部24は、数値指定ボタン(
図6に示す定量+ボタン137、定量−ボタン138、定量+ボタン147、定量−ボタン148を参照。数値指定ともいう。)を表示部10の表示画面に表示させる。また、補正量設定部24は、タッチパネル11のタッチ操作で数値指定ボタンが選択された際に、選択された数値指定ボタンに対応する補正量(これは定量でない補正量)を工作機械に転送する補正量として設定する。
【0041】
また、転送部25は、補正量を工作機械に転送するための転送実行ボタン(
図6に示す転送実行ボタン130A,140Aを参照)を表示部10の表示画面に表示させる。また、転送部25は、タッチパネル11のタッチ操作で転送実行ボタンが選択された場合に、補正量設定部24で設定された補正量を示す補正量データを通信部30を介して工作機械(工作機械設定部21で設定された工作機械)に転送する。
【0042】
通信部30は、工作機械2A〜2D及びPC7とデータ通信を実行する処理部である。具体的には、通信部30は、PC7から送信される工作機械情報及びワーク情報を受信し、受信した工作機械情報及びワーク情報を演算処理部20に出力する。また、通信部30は、転送部25による転送処理に応じて補正量データを所定の工作機械に送信する。上述したように、本実施形態では、通信部30は、無線で工作機械2A〜2D及びPC7とデータ通信を実行する。
【0043】
記憶部40は、上述したように、演算処理部20における各部の制御を実行させるためのプログラムを記憶する。また、記憶部40は、PC7から送信される工作機械情報及びワーク情報を記憶する。
【0044】
図2に示すように、工作機械2Aは、通信部51、工作機械制御部52、及び旋盤本体53を有している。なお、工作機械2B〜2Dは、工作機械2Aの構成(通信部51、工作機械制御部52、及び旋盤本体53)と同一の構成であっても異なる構成であってもよい。
【0045】
通信部51は、補正量入力装置1とデータ通信を実行する処理部である。本実施形態では、通信部51は、補正量入力装置1から送信される補正量データを受信する。上述したように、通信部51は、無線で補正量入力装置1とデータ通信を実行する。工作機械制御部52は、旋盤本体53を含む工作機械
2Aの制御全般を司る処理部である。旋盤本体53は、ワークを回転させ、バイトと呼ばれる工具(ツール)でワークを削る機械である。
【0046】
旋盤本体53の構造の一例について簡単に説明する。
図3は、旋盤本体53の構造を示す断面図である。
図3に示すように、旋盤本体53は、モータ(図示せず)の回転力を伝達する主軸61と、ワーク200を保持(把持)するチャック62と、ワーク200を削る工具(ツール)63とを有している。
【0047】
主軸61は、モータの回転に伴って軸心Aを中心に回転する。チャック62は、軸心Aと同軸上に主軸61に固定されている。このチャック62は、図示しないチャック移動機構の動作に応じて、三方爪62aが径方向(
図3に示す方向S)に移動することによりワーク200を保持する。すなわち、円筒形状のワーク200がチャック62の三方爪62aの間に挿入され、三方爪62aが径方向内側に移動することによりチャック62が閉まる。これにより、円筒形状のワーク200がチャック62に保持(把握)される。この把握力は主軸61が回転した際にワーク200をしっかり保持できる程度の大きな力とされる。この状態で主軸61が回転すると、チャック62も回転し、チャック62に保持されたワーク200も回転する。
【0048】
工具63は、回転しているワーク200の周面を削るためのチップ63aが取り付けられている。工具63は、図示しないツール移動機構の動作に応じて、
図3に示すようなワーク200に向かう方向Tや、軸心Aと平行な方向Uに移動する。なお、工具63の方向Tを切り込み方向という。また、工具63の切り込み方向Tの移動量を切り込み量という。また、工具63の方向Uを送り方向という。また、工具63の送り方向Uの移動量を送り量という。この工具63が切り込み方向Tに移動することにより、チップ63aがワーク200の周面と接触する。これにより、円筒形状のワーク200の周面が削られる。また、この工具63が送り方向Uに移動することにより、ワーク200の周面が送り方向Uに向かって順に削られていく。
【0049】
なお、工具63として複数種類の工具が用意されている。例えば、
図2に示すようなチップ63aが右片刃バイトの工具のほかに、チップが突切りバイトの工具、中ぐりバイトの工具などが用意されている。そして、ツール移動機構が、加工設定値に基づいて自動的に所定の種類のツールに切り替えることも可能である。
【0050】
上記した「加工設定値」は、「ツールの軌跡」、「ツールの送り速度」、「送りの加減速」、及び「ツールの種類」のデータを含んでいる。これらのデータは、工具63の移動及び種類を制御するためのデータである。ここで、「ツールの軌跡」は、工具63の刃先(すなわちチップ63aにおけるワーク200と接触する先端部)がどのような軌跡を描いて移動するかを示すデータである。つまり、「ツールの軌跡」は、工具63の刃先の切り込み量及び送り量がどのように変化するかを示すデータである。このデータは、例えば座標データ(x,y,z)で表される。
【0051】
「ツールの送り速度」は、工具63の送り方向Uの移動速度に関するデータである。「送りの加減速」は、工具63の送り方向Uの加速度・減速度に関するデータである。「ツールの種類」は、工具63のチップ63aがどのタイプであるか(右片刃バイト、突切りバイト、中ぐりバイトなど)を示すデータである。
【0052】
これら工具63の移動及び種類を制御するためのデータに基づいて工具63(すなわちツール移動機構)が工作機械制御部52により制御される。なお、「ツールの軌跡」、「ツールの送り速度」、「送りの加減速」、及び「ツールの種類」のデータは、加工設定値の加工プログラムとして設定されてもよく、また、これらのデータは、加工プログラムによって参照されるパラメータとして設定されてもよい。
【0053】
また、工作機械制御部52は、補正量入力装置1から転送される補正量データに基づいて、ワーク200の加工部分における寸法の補正を行う。例えば、工作機械制御部52は、ワーク200の外径の寸法を現在の寸法よりも5μm小さくすることを示す補正量データ(「−5」)を受け取ると、ワーク200の外径の寸法が5μm小さくなるように、加工設定値における「ツールの軌跡」、「ツールの送り速度」、及び「送りの加減速」のデータを変更する。これにより、ワーク200の外径の寸法が補正される。
【0054】
次に、上記の補正量入力装置1の動作について説明する。
【0055】
本実施形態では、工作機械情報及びワーク情報は、上述したように、予め管理者によってPC7に記憶されているものとする。管理者は、工作機械情報として各工作機械2A〜2Dの名称などをPC7に記憶する。また、管理者は、加工対象のワークの設計図面などに基づいて、ワークの名称、ワークの加工部分の設計値、ワークの加工部分の設計値の公差などをPC7に記憶する。また、管理者は、ワークの加工部分の設計値の公差などの情報に基づいてワークの加工部分の差分範囲を決定し、決定した差分範囲をPC7に記憶する。また、管理者は、差分範囲、チップの硬さ、ワークの素材などの情報に基づいて、差分範囲に対応した定量補正量を決定し、決定した定量補正量をPC7に記憶する。
【0056】
図4は、補正量入力装置1によるデータ登録処理の一例を示すフローチャートである。まず、管理者は、PC7を操作して、PC7に記憶されている工作機械情報を読み出し、読み出した工作機械情報を補正量入力装置1に送信する。補正量入力装置1の通信部30は、PC7から送信された工作機械情報を受信し、受信した工作機械情報を演算処理部20に送る。演算処理部20の工作機械設定部21は、PC7から送信された工作機械情報を通信部30を介して受け取り、受け取った工作機械情報を記憶部40に登録する(ステップS1)。
【0057】
次に、管理者は、PC7を操作して、PC7に記憶されているワーク情報を読み出し、読み出したワーク情報を補正量入力装置1に送信する。補正量入力装置1の通信部30は、PC7から送信されたワーク情報を受信し、受信したワーク情報を演算処理部20に送る。演算処理部20のワーク設定部22は、PC7から送信されたワーク情報を通信部30を介して受け取り、受け取ったワーク情報を工作機械情報に対応付けて記憶部40に登録する(ステップS2)。
【0058】
図5は、補正量入力装置1による補正量入力処理の一例を示すフローチャートである。また、
図6は、表示部10の表示画面100の例を示す図である。
図5に示す処理において、補正量入力装置1の動作が開始されると、工作機械設定部21は、記憶部40に記憶されている工作機械情報に含まれる工作機械2A〜2Dの名称を読み出す。そして、工作機械設定部21は、
図6に示す表示部10の表示画面100の転送先表示領域110における複数の転送先選択ボタン111に、補正量データの転送先としての工作機械の名称を表示する(ステップS11)。
【0059】
図6に示す例では、工作機械の名称として、「フランジ加工1号機」、「フランジ加工2号機」、「ボディ加工」、及び「スプール加工機」が転送先選択ボタン111に表示される。なお、本実施形態において、
図1及び
図2の工作機械2Aはフランジ加工1号機に対応し、工作機械2Bはフランジ加工2号機に対応し、工作機械2Cはボディ加工に対応し、工作機械2Dはスプール加工機に対応する。なお、作業者や顧客で使用される工作機械の名称を登録し表示することで、補正を行う工作機械を明確に把握することができる。
【0060】
オペレータは、工作機械(本実施形態ではボディ加工である工作機械2C)において所定個数(例えば100個)のワークが加工されるタイミングで、又は工作機械においてワークの加工が所定時間(例えば1時間)行われたタイミングで、加工済のワークを計測ステーション5に持っていく。そして、オペレータは、計測器3を用いて手動でワークの各加工部分(内径、幅)の寸法を計測する。その後、オペレータは、補正量入力装置1のタッチパネル11を操作することにより、ワークの寸法計測値に対する補正量を設定する。
【0061】
オペレータは、転送先選択ボタン111の位置をタッチすることで、補正量を入力する工作機械、すなわち、寸法を計測した加工済のワークを加工した工作機械を選択する。
図6に示す例では、オペレータは、ボディ加工(工作機械2C)を選択したものとする。工作機械設定部21は、オペレータによって工作機械が選択されたか否かを判定する(ステップS12)。工作機械設定部21は、オペレータによって工作機械が選択されたと判定すると(ステップS12のYES)、選択された工作機械(
図6に示す例ではボディ加工)の転送先選択ボタン111の色を変更する。そして、ワーク設定部22は、選択された工作機械に対応する全てのワーク(選択された工作機械が加工可能な全てのワーク)のワーク名称を記憶部40から読み出し、読み出したワーク名称の一覧をワーク名称表示領域120のワーク選択ボタン121に表示する(ステップS13)。
図6に示す例では、工作機械2Cが加工可能なワークのワーク名称として、「LA**」「LF**」「HF**」「13S***」「12V***」がワーク選択ボタン121に表示されている。なお、作業者や顧客で使用されるワークの名称を登録し表示することで、補正対象のワークを明確に把握することができる。
【0062】
オペレータは、ワーク選択ボタン121の位置をタッチすることで、計測ステーション5に持ってきた加工済のワーク、すなわち、計測器3で寸法を計測したワークをワーク名称の一覧の中から選択する。
図6に示す例では、オペレータは、「LF**」を選択したものとする。ワーク設定部22は、オペレータによってワークが選択されたか否かを判定する(ステップS14)。ワーク設定部22は、オペレータによってワークが選択されたと判定すると(ステップS14のYES)、選択されたワーク(
図6に示す例では「LF**」)のワーク選択ボタン121の色を変更する。そして、差分設定部23は、選択されたワークに対応する差分範囲を記憶部40から読み出し、読み出した差分範囲を第1補正量設定領域130の差分範囲表示領域132及び第2補正量設定領域140の差分範囲表示領域142に表示する(ステップS15)。このとき、差分設定部23は、差分範囲のうち、補正量設定部24による定量補正量が設定できない範囲(つまり差分が大きすぎて定量補正量を設定できない差分範囲)について、工作機械の確認指示を第1補正量設定領域130及び第2補正量設定領域140に表示させる。
【0063】
図6に示す例では、ワークの内径の差分範囲として、「−15〜−10」「−10〜−5」「−5〜5」「5〜10」「10〜15」が差分範囲表示領域132に表示されている。すなわち、差分範囲表示領域132において、差分範囲の区切りの値「−15」「−10」「−5」「5」「10」「15」が表示されている。これにより、オペレータはワークの内径の差分範囲を認識する。また、ワークの幅の差分範囲として、「−25〜−15」「−15〜−10」「−10〜10」「10〜15」「15〜25」が差分範囲表示領域142に表示されている。すなわち、差分範囲表示領域142において、差分範囲の区切りの値「−25」「−15」「−10」「10」「15」「25」が表示されている。これにより、オペレータはワークの幅の差分範囲を認識する。なお、本実施形態において、ワークの内径の設計値の公差は「−5〜5」であるものとし、ワークの幅の設計値の公差は「−10〜10」であるものとする。また、参照スケール131,141の両端の差分範囲は、定量補正量が設定できない範囲である。差分設定部23は、定量補正量が設定できない範囲に対しては、工作機械の確認指示(
図6に示す例では、「機械確認」の表示)を表示する。
【0064】
次に、補正量設定部24は、補正量指定ボタンを差分範囲に対応付けて表示するとともに、補正量指定ボタンの間に数値指定ボタンを表示する(ステップS16)。
図6に示す例では、補正量指定ボタンとして、補正少ボタン133、補正多ボタン134、補正少ボタン135、及び補正多ボタン136が第1補正量設定領域130に表示され、補正少ボタン143、補正多ボタン144、補正少ボタン145、及び補正多ボタン146が第2補正量設定領域140に表示されている。また、数値指定ボタンとして、定量+ボタン137及び定量−ボタン138が第1補正量設定領域130に表示され、定量+ボタン147及び定量−ボタン148が第2補正量設定領域140に表示されている。なお、数値指定ボタン137,138の上には、数値指定ボタン137,138で指定される数値の単位「1」(つまり1μm)が表示されている。また、数値指定ボタン147,148の上には、数値指定ボタン147,148で指定される数値の単位「3」(つまり3μm)が表示されている。
【0065】
オペレータは、計測器3で計測したワークの内径の寸法計測値と設計値との差分が属する差分範囲に対応した補正量指定ボタンをタッチして選択する。例えば、オペレータは、計測器3で計測したワークの内径の寸法計測値と設計値との差分が「−7」である場合、差分「−7」が属する差分範囲「−10〜−5」に対応する補正少ボタン133をタッチして選択する。また、オペレータは、計測器3で計測したワークの幅の寸法計測値と設計値との差分が「22」である場合、差分「22」が属する差分範囲「15〜25」に対応する補正多ボタン146をタッチして選択する。
【0066】
補正量設定部24は、オペレータによって補正量指定ボタンが選択されたか否かを判定する(ステップS17)。補正量設定部24は、補正量指定ボタンが選択されたと判定すると(ステップS17のYES)、選択された補正量指定ボタンの色を変更する。
図6に示す例では、補正多ボタン146が選択され、その補正多ボタン146の色が変更されている。そして、補正量設定部24は、オペレータによって選択された補正量指定ボタンに対応する定量補正量を設定する(ステップS18)。例えば、補正量設定部24は、オペレータによってワークの幅の差分範囲「15〜25」に対応した補正量指定ボタン146が選択された場合、その補正量指定ボタン146に対応して予め設定された定量補正量「−15」を補正量として設定する。
【0067】
オペレータは、計測器3で計測したワークの内径の寸法計測値と設計値との差分が0を含む前後の範囲(差分が最も小さい差分範囲)に属する場合、例えば差分範囲表示領域132における「−5〜5」や差分範囲表示領域142における「−10〜10」の場合、差分が十分小さいことから補正量を設定しなくてもよい。しかし、オペレータは、ワークの寸法の微調整を行う場合は、数値指定ボタンをタッチして定量でない補正量を設定することも可能である。例えば、オペレータは、定量+ボタン137をタッチする毎に補正量を「1」ずつ増やしていく。すなわち、オペレータは、補正量「2」を設定する場合、定量+ボタン137を2回タッチして補正量「2」を設定する。また、オペレータは、定量−ボタン138をタッチする毎に補正量を「−1」ずつ減らしていく。すなわち、オペレータは、補正量「−2」を設定する場合、定量−ボタン138を2回タッチして補正量「−2」を設定する。また、オペレータは、定量+ボタン147をタッチする毎に補正量を「3」ずつ増やしていく。すなわち、オペレータは、補正量「3」を設定する場合、定量+ボタン147を1回タッチして補正量「3」を設定する。また、オペレータは、定量−ボタン148をタッチする毎に補正量を「−3」ずつ減らしていく。すなわち、オペレータは、補正量「−6」を設定する場合、定量−ボタン148を2回タッチして補正量「−6」を設定する。
【0068】
補正量設定部24は、補正量指定ボタンが選択されていない場合(ステップS17のNO)、オペレータによって数値指定ボタンが選択されたか否かを判定する(ステップS19)。補正量設定部24は、数値指定ボタンが選択されたと判定すると(ステップS19のYES)、数値指定ボタンで入力された数値を補正量として設定する(ステップS20)。なお、差分が「機械確認」の差分範囲の場合は、オペレータは工作機械に行き、工作機械に異常がないか確認する。異常があるような場合は、オペレータは工作機械を停止させる。
【0069】
転送部25は、補正量設定部24により補正量が設定された場合(ステップS18又はS20)、補正量が指定された補正量設定領域130又は140の転送実行ボタン130A又は140Aを表示する(ステップS21)。そして、転送部25は、オペレータのタッチ操作による転送実行ボタン130A又は140Aの選択に応じて(ステップS22)、補正量設定部24で設定された補正量を示す補正量データを、工作機械設定部21で設定された工作機械(例えば工作機械2C)に転送する(ステップS23)。転送部25は、補正量データの工作機械への転送中に、オペレータによって選択された転送実行ボタン130A又は140Aの色を変更する。また、転送部25は、補正量データの工作機械の転送が終了すると、転送実行ボタン130A又は140Aの色を元の色に戻す。
【0070】
工作機械の通信部51は、補正量入力装置1から転送される補正量データを受信する。そして、工作機械制御部52は、補正量データに基づいて工具のワーク200に対する相対移動量を制御することでワーク200の加工部分における寸法の補正を行う。なお、工作機械制御部52は、補正量データを受け取ったときの次のワークの加工から、ワーク200の加工部分における寸法の補正を行う。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態では、表示部10と、入力部11と、加工済ワークの寸法計測値と設計値との差分に応じた差分範囲を設定する差分設定部23と、差分範囲に対応して補正量指定133〜138,143〜148を表示部10に表示させ、入力部11により補正量指定133〜138,143〜148が選択された際に、予め入力された定量補正量を設定する補正量設定部24と、補正量設定部24で設定された定量補正量を工作機械2A〜2Dに転送する転送部25とを備える。このような構成によれば、加工済ワークの寸法計測値と設計値との差分に応じた定量補正量を設定することで、加工済ワークの寸法のばらつきが生じるのを防止することができる。また、オペレータが差分範囲に対応した補正量指定133〜138,143〜148を選択するだけで定量補正量を入力することができ、簡易な操作で補正量を入力することができる。
【0072】
<第2実施形態>
上記した第1実施形態では、オペレータは計測器3で計測したワークの加工部分の寸法計測値を記憶し、記憶した寸法計測値に基づいて補正量指定ボタンなどを選択して定量補正量を設定していた。これに対し、第2実施形態では、計測器3が計測したワークの加工部分の寸法計測値を補正量入力装置1に出力し、補正量入力装置1は、計測器3から出力された寸法計測値に基づいて定量補正量を設定する。
【0073】
図7は、第2実施形態における補正量入力装置1、複数台の工作機械2A〜2D、及びPC7の配置を示す図である。なお、
図1に示す構成と同一の構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図7に示すように、補正量入力装置1は計測器3と接続されている。計測器3は、自動的に又はオペレータの計測器3の操作に応じて、計測したワークの加工部分の寸法計測値を補正量入力装置1に出力する。
【0074】
補正量入力装置1は、計測器3から出力された寸法計測値を入力する。工作機械設定部21は、オペレータによるタッチパネル11のタッチ操作で選択された工作機械を設定する。ワーク設定部22は、オペレータによるタッチパネル11のタッチ操作で選択されたワークを設定する。差分設定部23は、計測器3から出力された寸法計測値と、ワーク設定部22で設定されたワークの設計値とに基づいて、それらの差分を認識する。そして、差分設定部23は、差分に応じた差分範囲を特定する。補正量設定部24は、差分設定部23で特定された差分範囲に対応した定量補正量を設定する。転送部25は、オペレータの転送実行ボタンの選択などに応じて、補正量設定部24で設定された定量補正量を工作機械に転送する。このような構成によれば、容易かつ確実に差分に応じた定量補正量を設定し、工作機械に転送することができる。
【0075】
以上の実施形態について説明したが、本発明は図示の構成等に限定されるものではなく、各構成の機能や用途などを逸脱しない範囲で変更は可能である。
【0076】
例えば、上記した実施形態では、PC7が工作機械情報やワーク情報を管理していたが、工場内又は工場外の上位のコントローラが工作機械情報やワーク情報を管理してもよい。また、オペレータが補正量入力装置1の入力部などを操作して、直接、工作機械情報やワーク情報を補正量入力装置1に入力してもよい。また、入力部はタッチパネル11で構成されていたが、補正量入力装置1に設けられたスイッチ、ボタンなどであってもよい。また、補正量設定部24は、補正量指定ボタンの選択に応じて設定した定量補正量を、数値指定ボタンの選択に応じて微調整して補正量を設定してもよい。
【0077】
また、上記した実施形態では、ワークの寸法計測値に対する補正量として、工作機械2A〜2Dにおいてワークの加工部分の寸法をどの程度補正するかを示す寸法データ(例えばμm単位のデータ)で表していたが、工具のワークに対する相対移動量をどの程度補正するかを示すデータで表してもよい。また、上記した実施形態では、定量補正量は、加工済ワークの寸法計測値と設計値との差分が設計値の公差内に収まる補正量であったが、工作機械において定量補正量に基づき加工された加工済ワークの寸法計測値が設計値の公差内に収まる補正量であればよく、必ずしも差分が設計値の公差内に収まる補正量でなくてもよい。
【0078】
また、上記した実施形態では、表示画面100には、ワークの内径補正量を設定する第1補正量設定領域130と、ワークの幅補正量を設定する第2補正量設定領域140とが表示されていた。しかし、演算処理部20(例えばワーク設定部22)は、オペレータによって選択されたワークに応じてワークの加工部分の補正量を設定する補正量設定領域を選択して表示画面100に表示させる。例えば、演算処理部20は、フランジ加工機のワークの場合は、ワークの外径の補正量を設定する補正量設定領域表示画面100に表示する。
【0079】
また、上記した実施形態では、演算処理部20はボタンの色を変更するなどして選択されたボタンをオペレータに認識させていたが、特にスイッチやボタンで定量補正量などを選択する場合は、ランプなどを点灯して選択されたボタンなどを認識させてもよい。また、補正量データの転送は、転送実行ボタンを2回(又は2回以上)選択した場合に実行されるようにしてもよい。例えば、オペレータが転送実行ボタンを1回選択すると転送実行ボタンの色が変わり、転送実行ボタンをもう1度選択すると補正量データが転送される構成でもよい。
【0080】
また、上記した実施形態において、補正量指定ボタンや数値指定ボタン、転送実行ボタンなどの画像の表示タイミングは、
図5の処理で説明したタイミングに限定されず、例えば表示部10における最初の画面表示のタイミングなどであってもよい。また、上記した実施形態では、計測ステーションは工場内に設けられていたが、工場内以外の場所(例えば工場外)に設けられてもよい。