特許第6557975号(P6557975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557975
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】三相電力変換器およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   H02M7/12 B
   H02M7/12 601D
   H02M7/12 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-2721(P2015-2721)
(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公開番号】特開2016-129440(P2016-129440A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】小堀 賢司
(72)【発明者】
【氏名】濱田 鎮教
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勇
【審査官】 白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−287137(JP,A)
【文献】 特開2006−340466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00〜 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧源に遮断器を介して接続され、ダンピング抵抗とフィルタコンデンサとフィルタリアクトルとを備えた交流フィルタ回路と、
各相にスイッチング素子を有し、交流フィルタ回路から出力された交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、
コンバータから出力された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
コンバータのスイッチング素子をオンオフ動作させるゲート指令を出力する制御回路と、
を有する三相電力変換器の制御方法であって、
前記制御回路は、
前記三相電力変換器の運転停止時、かつ、遮断器の開放時に、
0である回転座標系のd軸電圧指令値、または、0である回転座標系のq軸電圧指令値、または、0である固定座標系のα軸電圧指令値、または、0である固定座標系のβ軸電圧指令値に、単振動をする電圧指令値Vsin(ωt)を加え、
二相三相変換部において、前記d軸電圧指令値に前記単振動する電圧指令値Vsin(ωt)を加えた値=Vsin(ωt),q軸電圧指令値=0、系統位相=0、または、d軸電圧指令値=0,前記q軸電圧指令値に前記単振動する電圧指令値Vsin(ωt)を加えた値=Vsin(ωt),系統位相=0、または、前記α軸電圧指令値に前記単振動する電圧指令値Vsin(ωt)を加えた値=Vsin(ωt),β軸電圧指令値=0,系統位相=0、または、α軸電圧指令値=0,前記β軸電圧指令値に前記単振動する電圧指令値Vsin(ωt)を加えた値=Vsin(ωt),系統位相=0の信号を入力して三相電圧指令値を算出し、
PWM制御回路において、前記三相電圧指令値とキャリア信号とを比較することにより、ゲート指令を生成し、
前記コンバータのスイッチング素子をオンオフ動作させ ることによって前記交流フィルタ回路の前記ダンピング抵抗に強制的に電流を流して前記平滑コンデンサに蓄えられた電荷を放電させ、
前記単振動する電圧指令値の角周波数ωが以下の式であることを特徴とする三相電力変換器の制御方法。
【数6】
【請求項2】
交流電圧源に遮断器を介して接続され、ダンピング抵抗とフィルタコンデンサとフィルタリアクトルとを備えた交流フィルタ回路と、
各相にスイッチング素子を有し、交流フィルタ回路から出力された交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、
コンバータから出力された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
コンバータのスイッチング素子をオンオフ動作させるゲート指令を出力する制御回路と、
を有する三相電力変換器の制御方法であって、
前記制御回路は、
ACR部において、d軸電流指令値とd軸電流検出値との偏差、および、q軸電流指令値とq軸電流検出値との偏差に基づいて電流制御を行い、d軸電圧指令値とq軸電圧指令値を算出し、
前記三相電力変換器の運転停止時、かつ、遮断器の開放時に、
回転座標系のd軸電圧指令値、または、回転座標系のq軸電圧指令値に、単振動をする電圧指令値Vsin(ωt)を加え、
二相三相変換部において、前記d軸電圧指令値に前記単振動する電圧指令値Vsin(ωt)を加えた値,q軸電圧指令値、系統位相=0、または、d軸電圧指令値,前記q軸電圧指令値に前記単振動する電圧指令値Vsin(ωt)を加えた値,系統位相=0の信号を入力して三相電圧指令値を算出し、
PWM制御回路において、前記三相電圧指令値とキャリア信号とを比較することにより、ゲート指令を生成し、
前記コンバータのスイッチング素子をオンオフ動作させ ることによって前記交流フィルタ回路の前記ダンピング抵抗に強制的に電流を流して前記平滑コンデンサに蓄えられた電荷を放電させ、
前記単振動する電圧指令値の角周波数ωが以下の式であることを特徴とする三相電力変換器の制御方法。
【数6】
【請求項3】
交流電圧源に遮断器を介して接続され、ダンピング抵抗とフィルタコンデンサとフィルタリアクトルとを備えた交流フィルタ回路と、
各相にスイッチング素子を有し、交流フィルタ回路から出力された交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、
コンバータから出力された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
コンバータのスイッチング素子をオンオフ動作させるゲート指令を出力する制御回路と、
を有する三相電力変換器の制御方法であって、
前記制御回路は、
前記三相電力変換器の運転停止時、かつ、遮断器の開放時に、
PWM制御回路において、単振動する三相電圧指令値Vsin(ωt),Vsin(ωt+120°),Vsin(ωt+240°)とキャリア信号を比較することにより、ゲート指令を生成し、
前記コンバータのスイッチング素子をオンオフ動作させることによって前記交流フィルタ回路の前記ダンピング抵抗に強制的に電流を流して前記平滑コンデンサに蓄えられた電荷を放電し、
前記単振動する電圧指令値の角周波数ωが以下の式であることを特徴とする三相電力変換器の制御方法。
【数6】
【請求項4】
請求項1〜3のうち何れかに記載の三相電力変換器の制御方法を用いることを特徴とする三相電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流フィルタ回路を用いた三相電力変換器に係り、特に、平滑コンデンサに充電された電荷を放電する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に系統連系された中性点クランプ式の三相電力変換器の主回路構成図を示す。三相電力変換器は、交流電圧源1に接続された交流フィルタ回路6と、交流フィルタ回路6から出力された交流電圧を直流電圧に変換するコンバータCONVと、コンバータCONVから出力された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサCdc1,Cdc2と、を有する。
【0003】
交流電圧源1と主回路は、遮断器VCBを介して接続および遮断が行われる。この回路は直流電圧P−N間を平滑コンデンサCdc1,Cdc2を用いて分割し、直流電位P、Nおよび中性点電位NPをPWM(パルス幅変調:Pulse Width Modulation)制御を用いて出力するものである。
【0004】
図6に示すように、P−NP間の直流電圧をVdc1,N−NP間の直流電圧をVdc2,交流電圧源1の線間電圧をVrs,Vst,Vtrとする。また、交流フィルタ回路6の電流検出値をIu,Iv,Iwとする。交流フィルタ回路6は、フィルタリアクトルLf1,Lf2,フィルタコンデンサCf1および交流フィルタ回路6による共振を抑制するダンピング抵抗Rf1を有している。
【0005】
図7に、三相電力変換器の制御ブロック構成図を示す。図6の基準電圧をVrs(または、Vst,Vtr)とし、線間電圧Vrs(または、Vst,Vtr)を計測しPLL(Phase Locked Loop)回路を用いて線間電圧の位相を示す系統位相plloutを導出する。系統位相plloutは三相二相変換部2、および、二相三相変換部3で用いられる。
【0006】
三相二相変換部2は、電流検出値Iu,Iv,Iwを固定座標(α軸成分とβ軸成分を持つ座標)系の電流Iα_det,Iβ_detに変換し、さらに回転座標(d軸成分とq軸成分を持つ座標)系の電流Id_det,Iq_detに変換する機能をもつ。
【0007】
二相三相変換部3は、d軸電圧指令値Vd_cmd,q軸電圧指令値Vq_cmdを固定座標系のα軸電圧指令値Vα_cmd,β軸電圧指令値Vβ_cmd、に変換し、さらに三相電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdに変換する機能をもつ。
【0008】
三相二相変換部2により、系統位相plloutに基づいて電流検出値Iu,Iv、Iwを三相二相変換し、d軸電流検出値Id_detおよびq軸電流検出値Iq_detを生成する。d軸電流指令値Id_cmdとd軸電流検出値Id_det,q軸電流指令値Iq_cmdとq軸電流検出値Id_detとの偏差を算出し、目標値であるd軸電流指令値Id_cmd,q軸電流指令値Iq_cmdに追従するようにACR(電流制御:Automatic Current Regulator)を行う。
【0009】
二相三相変換部3では、系統位相plloutに基づいてACRの出力であるd軸電圧指令値Vd_cmd,q軸電圧指令値Vq_cmdを二相三相変換し、三相電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdを生成する。
【0010】
PWM制御回路4では、三相電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdとキャリア信号とを比較し、ゲート指令GI_H,GI_Lを出力する。このゲート指令GI_H,GI_Lに従ってコンバータCONV内のスイッチング素子をオンオフ動作させる。
【0011】
これらの技術は、特許文献1等で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4051833号
【特許文献2】特開2001−157359号公報
【特許文献3】特開2013−121300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、三相電力変換器の運転の停止後(すなわち、直流電圧P−N間への給電の停止と遮断器VCBの開放後)にメンテナンスを行う作業者の感電防止のため、平滑コンデンサCdc1,Cdc2に蓄えられている電荷を放電して直流電圧を確実に低下させ、三相電力変換器を安全な停止状態としておく必要がある。
【0014】
平滑コンデンサCdc1,Cdc2の電荷を放電する従来の方式として、特許文献2が開示されている。しかし、この特許文献2では、直流電圧を放電するために三相電力変換器内に放電用の抵抗を用意しなければならず、三相電力変換器が大型化してしまう問題があった。
【0015】
以上示したようなことから、三相電力変換器において、放電用抵抗を用いることなく現状の回路構成のみで平滑コンデンサの電荷を放電し、三相電力変換器の小型化を図ることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、 交流電圧源に遮断器を介して接続され、ダンピング抵抗とフィルタコンデンサとフィルタリアクトルとを備えた交流フィルタ回路と、各相にスイッチング素子を有し、交流フィルタ回路から出力された交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、コンバータから出力された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、コンバータのスイッチング素子をオンオフ動作させるゲート指令を出力する制御回路と、を有する三相電力変換器の制御方法であって、前記制御回路は、回転座標系のd軸電圧指令値と回転座標系のq軸電圧指令値と系統位相、または、固定座標系のα軸電圧指令値と固定座標系のβ軸電圧指令値と系統位相に基づいて三相電圧指令値を算出する二相三相変換部と、前記三相電圧指令値とキャリア信号とを比較することにより、ゲート指令を生成するPWM制御回路と、を備え、前記三相電力変換器の運転停止時、かつ、遮断器の開放時に、回転座標系のd軸電圧指令値、または、回転座標系のq軸電圧指令値、または、固定座標系のα軸電圧指令値、または、固定座標系のβ軸電圧指令値に、単振動をする電圧指令値を加え、前記コンバータのスイッチング素子をオンオフ動作させることを特徴とする。
【0017】
また、他の態様として、交流電圧源に遮断器を介して接続され、ダンピング抵抗とフィルタコンデンサとフィルタリアクトルとを備えた交流フィルタ回路と、各相にスイッチング素子を有し、交流フィルタ回路から出力された交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、コンバータから出力された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、コンバータのスイッチング素子をオンオフ動作させるゲート指令を出力する制御回路と、を有する三相電力変換器の制御方法であって、前記制御回路は、三相電圧指令値とキャリア信号とを比較することにより、ゲート指令を生成するPWM制御回路を備え、前記三相電力変換器の運転停止時、かつ、遮断器の開放時に、前記三相電圧指令値に単振動をする電圧指令値を加え、前記コンバータのスイッチング素子をオンオフ動作させることを特徴とする。
【0018】
また、その一態様として、前記二相三相変換部は、d軸電圧指令値=Vsin(ωt),q軸電圧指令値=0、系統位相=0、または、d軸電圧指令値=0,q軸電圧指令値=Vsin(ωt),系統位相=0、または、α軸電圧指令値=Vsin(ωt),β軸電圧指令値=0,系統位相=0、または、α軸電圧指令値=0,β軸電圧指令値=Vsin(ωt),系統位相=0の信号を入力することを特徴とする。
【0019】
また、その一態様として、前記PWM制御回路は、前記三相電圧指令値として、Vsin(ωt),Vsin(ωt+120°),Vsin(ωt+240°)の信号を入力することを特徴とする。
【0020】
また、その一態様として、前記制御回路は、d軸電流指令値とd軸電流検出値との偏差、および、q軸電流指令値とq軸電流検出値との偏差に基づいて電流制御を行い、d軸電圧指令値とq軸電圧指令値を算出するACR部を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、その一態様として、前記単振動する電圧指令値の角周波数ωが以下の式であることを特徴とする。
【0022】
【数1】
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、三相電力変換器において、放電用抵抗を用いることなく現状の回路構成のみで平滑コンデンサの電荷を放電し、三相電力変換器の小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1における放電時の制御回路を示すブロック図。
図2】単振動の電圧指令値を加えた場合の直流電圧,三相電圧指令値,電流検出値を示すタイムチャート。
図3】交流フィルタ回路の出力電流の向きを示す図。
図4】実施形態2における放電時の制御回路を示すブロック図。
図5】実施形態3における放電時の制御回路を示すブロック図。
図6】三相電力変換器の主回路を示す構成図。
図7】従来の三相電力変換器の制御回路を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、三相電力変換器の停止直後に現状の三相電力変換器の構成要素である交流フィルタ回路6のダンピング抵抗Rf1に強制的に電流を生じさせ、平滑コンデンサに蓄えられた電荷を放電させる制御方式を提案するものである。
【0026】
以下、本発明に係る三相電力変換器の実施形態1〜3を図1図6に基づいて詳述する。
【0027】
[実施形態1]
本実施形態1では、図6に示す三相電力変換器の主回路を例にして放電時の制御方法について説明する。図6は3レベルコンバータであるが、交流フィルタ回路6にダンピング抵抗Rf1を備え、かつ、平滑コンデンサCdc1,Cdc2を備えた主回路構成であれば、3レベルコンバータに限らず本実施形態1の原理を使用できる。
【0028】
本実施形態1は三相電力変換器停止直後の平滑コンデンサCdc1,Cdc2の電荷の放電を目的とする以下の運転モードを設け、遮断器VCBを遮断した状態で、特定の空間ベクトル上を単振動するような電圧を加えたものである。図1に本実施形態1における放電時の制御回路を示す。
【0029】
本実施形態1では、図1に示すように、正弦波発信器5から、d軸電圧指令値Vd_cmdとして(1)式のような予め設定された電圧振幅Vと角周波数ωを有する正弦波を二相三相変換部3に出力する。また、q軸電圧指令値Vq_cmdは(2)式に示すように零電圧指令のまま二相三相変換部3に入力する。回転座標変換の基準位相を生成する系統位相plloutについては、零(pllout=0)として二相三相変換部3に入力する。すなわち、d軸電圧指令値Vd_cmd=0、q軸電圧指令値Vq_cmd=0、系統位相pllout=0に対し、(1)式のd軸電圧指令値を加算したものである。これにより、回転座標系で電圧指令を与えているが、実際には固定座標系で電圧指令を与えていることと同様の作用効果を奏する。
【0030】
【数2】
【0031】
【数3】
【0032】
【数4】
【0033】
本実施形態1では、回転座標系のd軸に単振動するような電圧指令値を与えているが、回転座標系のq軸成分に単振動するような電圧指令値を与えても良い。
【0034】
同様に固定座標系のα軸成分やβ軸成分に単振動するような電圧指令値に与えてもよい。この場合、図1の二相三相変換部3は、α軸成分やβ軸成分の電圧指令値を入力して三相電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdを出力する構成になる。ここで、二相三相変換部3に入力される信号はα軸電圧指令値Vα_cmd=Vsin(ωt),β軸電圧指令値Vβ_cmd=0,系統位相pllout=0、または、α軸電圧指令値Vα_cmd=0,β軸電圧指令値Vβ_cmd=Vsin(ωt),系統位相pllout=0となる。
【0035】
また、三相電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdに単振動をするような電圧指令値を与えても同様の効果が得られる。この場合、図1の二相三相変換部3はなく、正弦波発信器5が単振動する三相電圧指令値Vu_cmd=Vsin(ωt),Vv_cmd=Vsin(ωt+120°),Vw_cmd=Vsin(ωt+240°)を出力する構成になる。
【0036】
また、一例として、単振動するような電圧指令値を正弦波としたが、正負の波形がほぼ対称でさえあれば他の波形でも同様の機能が実現できる。また、本実施形態1では、二相三相変換部3において、d軸電圧指令値Vd_cmd,q軸電圧指令値Vq_cmdに基づいて三相電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdを算出しているが、α軸,β軸の電圧指令値に基づいて三相電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdを算出してもよい。
【0037】
ここでは、代表してd軸成分に正弦波の電圧指令値を与えた場合を図1に示している。図2に示すように単振動をするような電圧指令値が加えられることにより、図3に示すように交流フィルタ回路6に電流が流れ、この電流をダンピング抵抗Rf1で消費させることにより、平滑コンデンサCdc1,Cdc2の電荷を放電させることができる。
【0038】
以上示したように、本実施形態1における三相電力変換器によれば、特定の空間ベクトル上で単振動する電圧指令値を与え、ダンピング抵抗Rf1で出力電流を消費させることにより、平滑コンデンサCdc1,Cdc2の電荷を放電させることが可能となる。
【0039】
これにより、放電専用の抵抗を三相電力変換器内に設ける必要がなくなり、三相電力変換器の小型化を図ることが可能となる。
【0040】
[実施形態2]
交流フィルタ回路6の共振周波数がキャリア周波数以下であれば、数式(1)の角周波数ωを交流フィルタ回路6の共振周波数とすることで、特定の空間ベクトル上に共振周波数で単振動する電圧指令値を出力することが可能となる。これは、ダンピング抵抗Rf1に流れる電流が増加されるため、放電時間の短縮につながる。
【0041】
図4に示すように、本実施形態2では、実施形態1と同様にd軸電圧指令値Vd_cmdを(1)式のような電圧指令値とし、q軸電圧指令値Vq_cmdを(2)式のように零電圧指令のまま、系統位相plloutを0とする。また、回転座標変換の基準位相を生成する角周波数ωについては、(4)式のように、交流フィルタ回路6の共振周波数とする。
【0042】
【数5】
【0043】
Lはフィルタリアクトル(図2および図6のLf2)のインダクタンス、Cはフィルタコンデンサ(図1および図4のCf)の静電容量である。図4では回転座標系のd軸電圧指令値Vd_cmdに単振動する電圧指令値を与えているが、回転座標系のq軸電圧指令値Vq_cmdに単振動する電圧指令値を与えても良い。また、実施形態1と同様に固定座標系のα軸成分やβ軸成分、三相電圧指令値Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmdでもよく、電圧指令値は正負の波形がほぼ対象であればよい。代表してd軸成分に正弦波の電圧指令を与えた場合のブロック図を図4に示している。
【0044】
本実施形態2における三相電力変換器によれば、実施形態1と同様の作用効果を奏する。さらに、実施形態1よりも放電時間を短縮することが可能となる。
【0045】
[実施形態3]
実施形態1や実施形態2では、ダンピング抵抗Rf1やリアクトルLf1,Lf2といった主回路の特性が等しい場合を想定しているが、製造のばらつきや経年劣化等により特性は異なる。このように、主回路の特性が異なると特定相のみ出力電流が大きくなり、平滑コンデンサCdc1,Cdc2の電荷放電の運転モード時に過電流による三相電力変換器の破損が想定される。
【0046】
そこで、図5に示すように、電流制御部ACRにより、零電流指令(Id_cmd=0,Iq_cmd=0)と電流検出値Id_det,Iq_detに基づいてACR制御を行い、過電流を抑制する。その他の構成は、図1,2,6と同様である。
【0047】
また、実施形態2と同様に各周波数ω=1/√LCとした場合、共振周波数が高周波となり得るため、制御ゲインKpを高速応答に設定してしまうと、高周波電流が抑制されてしまう。そのため、電流制御部ACRでは周波数帯域に影響を与えないような低い応答性の比例制御のみとしている。
【0048】
本実施形態3によれば、実施形態1,2の作用効果に加え、電流制御を適用することで、平滑コンデンサCdc1,Cdc2の電荷放電の運転モード時に、過電流による三相電力変換器の破損を抑制することが可能となる。
【0049】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0050】
1…交流電圧源
6…交流フィルタ回路
Lf1,Lf2…フィルタリアクトル
Cf…フィルタコンデンサ
Rf1…ダンピング抵抗
CONV…コンバータ
Cdc1,Cdc2…平滑コンデンサ
3…二相三相変換部
4…PWM制御回路
GI_H,GI_L…ゲート指令
Vd_cmd…d軸電圧指令値
Vq_cmd…q軸電圧指令値
pllout…系統位相
Vu_cmd,Vv_cmd,Vw_cmd…三相電圧指令値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7