(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に発光ダイオードは、周波数応答が遅いために、その特性に応じた周波数帯域や変調方式に沿った可視光通信に限られてきた。そのため、データ伝送容量に関しては十分なものではなかった(例えば、特許文献1参照)。
図8は、従来の発光ダイオードを用いた可視光通信用途の電気・光変換回路(以下、光電変換回路という)構成を示す図である。
図8に示すように、可視光通信用途の光電変換回路1は、RFin端子と、電力増幅器1と、図示しない伝送線路上に設けられたバイアス回路2と、光電変換素子としての発光ダイオード3と、光受光素子としてのフォトダイオード4と、図示しない伝送線路上に設けられたバイアス回路5と、高周波の低雑音増幅に適した低雑音増幅器(low noise amplifier)6と、RFout端子と、を備える。なお、伝送線路の特性インピーダンスZ
0は、一般的な装置で使用されている50Ωである。
【0003】
RFin端子は、外部の信号源(内部インピーダンスZs=50Ω、出力電圧Vo)からアナログ信号(高周波電力)を入力する端子である。
電力増幅器1は、一段または複数段のスイッチング素子(例えばFET)からなり、最終段に電力増幅段を設けて増幅電流を出力する。
発光ダイオード3は、図示しない伝送線路の出力側と接地との間に接続され、フォトダイオード4は、図示しない伝送線路の入力側と接地との間に接続される。
バイアス回路2は、伝送線路を通る高周波信号に影響を与えないように、キャリア周波数に対して外乱が小さくなるようにするものであり、図示しない電流源が発生する電流を発光ダイオード3に流す。
バイアス回路5は、フォトダイオード4をいわゆる光導電モードで使用する逆バイアスをかける。
低雑音増幅器6は、GaAs FETやGaAs HEMT等の増幅素子を使用し、静電保護回路等を含む整合回路をパッケージ化した例えばGPS(Global Positioning System)用低雑音増幅器である。
【0004】
発光ダイオード3は、バイアス回路2により電圧または電流が印加されて駆動される。発光ダイオード3を強度変調する場合、発光ダイオード3の周波数帯域は小さいので、変調帯域幅を狭くする必要がある。周波数が十分低い場合、高周波回路に必要であるインピーダンス変換による整合回路は不要である。
図8の回路では、バイアス回路2と発光ダイオード3とは、直接接続している。発光ダイオード3へ入力するアナログ信号の信号レベルが小さい場合には、電力増幅器1により信号を増幅する。
発光ダイオード3で強度変調された光は、光学的に接続されたフォトダイオード4で受光され、光・電気変換される。変換された電気信号の信号レベルは、非常に小さいので、低雑音増幅器6で復調可能な信号レベルまで増幅し、RFout端子から出力される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、可視光通信用途の光電変換回路1に使用される発光ダイオード3は、周波数特性が低く、また発光強度を大きくするために発光面積を増加させる構造を採ると更に周波数特性が低くなるという問題がある。
図9は、高速動作が可能とされる発光ダイオードの可視光帯域における周波数特性を示す図である。
図9に示すように、3dB利得帯域で70MHzまで周波数特性が伸びていることが分かる。一般に購入できる発光ダイオードは、これよりも周波数特性は低く、発光強度の大きい発光ダイオードは更に周波数特性が低くなる。論文発表レベルの発光ダイオードでも動作周波数は数百MHzである。
また、一般的な発光ダイオードの周波数特性内での伝送容量は小さく、今後のデータ容量増大に向けて変調帯領域を大きくする必要がある。キャリア周波数の低い領域、例えば数十MHz程度のキャリア周波数において、数十MHz程度の変調帯域を用いる場合、数GHz帯で用いる場合に比べ、相対的に変調帯域幅が非常に大きいと考えられる。
【0007】
図10は、OFDM信号の変調周波数帯域における周波数特性を示す図であり、
図10(a)は周波数特性が平坦な場合の周波数特性を、
図10(b)は周波数特性が平坦でない場合の周波数特性をそれぞれ示す。
図10は、低周波数側の利得が小さい時の伝送特性の結果である。一般的な発光ダイオードの場合、高周波側の利得が下がるので、
図10では右肩下がりの特性となる。
発光ダイオードの周波数特性とほぼ同じ変調帯域幅を使用する場合、変調帯域内の平坦度が伝送特性に大きな影響を与え、特に利得が圧縮される利得圧縮部にかかる領域(
図9の70〜100MHzの領域)では伝送特性を悪化させる問題がある。
【0008】
図11は、64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)のコンスタレーション(Constellation)を示す図であり、
図11(a)は周波数特性が平坦な場合のコンスタレーションを、
図11(b)は周波数特性が平坦でない場合のコンスタレーションをそれぞれ示す。
図11(b)に示すように、周波数特性が平坦でない場合、コンスタレーションは劣化する。
このように、変調帯域内で利得変動がある場合、伝送特性の指標であるEVM(Error Vector Magnitude)が劣化し、伝送品質の劣化・データ伝送容量の低下、そして最終的には伝送できなくなるという問題がある。
現在のところ、可視光通信に用いる光電変換素子を使用した光電変換回路は提案されていない。
【0009】
そこで、本発明は、可視光通信用途の光電変換素子を用いた光電変換回路を提供することを目的とする。また、「光電変換」とは、光と物質の相互作用により、光の持つ情報を電気信号に変換すること、あるいは逆に、電気信号を光信号に変換することも光電変換という。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の光電変換回路は、
可視光通信可能な周波数帯域を発光する光電変換素子と、高周波電力を前記光電変換素子に供給する電力増幅器と、前記電力増幅器と前記光電変換素子との間に配置される出力インピーダンス整合回路と、
を備え、前記
出力インピーダンス整合回路は、
前記光電変換素子の周波数特性の高周波領域にピークを持つ整合状態にあらかじめ設定されていることを特徴とする。なお、「光電変換」とは、光と物質の相互作用により、光の持つ情報を電気信号に変換すること、あるいは逆に、電気信号を光信号に変換することも光電変換という。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可視光通信用途の光電変換素子を用いた光電変換回路を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施の形態」と称する)につき詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光電変換回路100の構成を示すブロック図である。本実施の形態の光電変換回路100は、可視光通信に用いる発光ダイオードを使用した電気・光変換回路や、フォトダイオード等を用いた光・電気変換回路に適用した例である。
発光ダイオード等を用いた電気・光変換回路において、特にIEEE802.11a/n/acに代表されるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号と、例えば10MHz以上の広帯域変調帯域幅を用いて、大容量データ伝送を実現するものがある。
本実施の形態は、可視光通信に用いる発光ダイオードを使用した光電変換回路について、可視光通信向け高周波アナログ回路構成を提案する。
【0014】
図1に示すように、可視光通信用途の光電変換回路100は、RFin端子と、電力増幅器210と、インピーダンス整合回路211と、図示しない伝送線路上に設けられたバイアス回路220と、発光ダイオード130と、フォトダイオード140と、図示しない伝送線路上に設けられたバイアス回路250と、高周波の低雑音増幅に適した低雑音増幅器260と、RFout端子と、を備える。なお、伝送線路の特性インピーダンスZ
0は、一般的な装置で使用されている50Ωである。
【0015】
RFin端子は、外部の信号源(内部インピーダンスZs=50Ω、出力電圧Vo)からデータ信号(高周波電力)を入力する端子である。本実施形態では、RoF(Radio over(on)Fiber)を前提にしているので、この信号源は複数の周波数帯の高周波信号を発生するものとする。RoFは、放送や無線電波と同じ高周波信号で光をアナログ変調し、この光を光ファイバに通して送信し、光検出器により元の高周波信号に戻され、アンテナから放射される無線方式である。
【0016】
電力増幅モジュールモジュール110は、モジュールまたはMMIC(monolithic microwave integrated circuit:モノリシックマイクロ波集積回路)で構成される。
【0017】
第1バイアス回路120は、電力増幅モジュールモジュール110を通る高周波信号に影響を与えないように、キャリア周波数に対して外乱が小さくなるようにするものであり、図示しない電流源が発生する電流I
LEDを発光ダイオード130に流す。第1バイアス回路120は、電力増幅器113の駆動方式や電圧電流値がそれぞれ異なるので、発光ダイオード130の直近に設ける。
第2バイアス回路150は、低雑音増幅モジュール160を通る高周波信号に影響を与えないように、キャリア周波数に対して外乱が小さくなるようにするものであり、図示しない電圧源が発生する電圧VPDをフォトダイオード140に逆バイアスで印加する。
【0018】
低雑音増幅モジュール160はGaAs FETやGaAs HEMT等の増幅素子を使用し、静電保護回路等を含む整合回路をパッケージ化した例えばGPS用低雑音増幅器である。
なお、
図1に示す光電変換回路100は、見かけの構成は、
図8に示す従来の光電変換回路10の構成と同じである。
【0019】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る光電変換回路100の構成を示す回路図である。
図2に示すように、可視光通信用途の光電変換回路100は、RFin端子と、カップリングキャパシタC1と、電力増幅モジュールモジュール110と、第1バイアス回路120と、光電変換素子としての発光ダイオード130と、光受光素子としてのフォトダイオード140(光電変換素子)と、第2バイアス回路150と、低雑音増幅モジュール160と、RFout端子と、を備える。
【0020】
RFin端子は、外部の信号源(内部インピーダンスZs=50Ω、出力電圧Vo)からデータ信号(高周波電力)を入力する端子である。本実施形態では、RoFを前提にしているので、この信号源は複数の周波数帯の高周波信号を発生するものとする。RoFは、放送や無線電波と同じ高周波信号で光をアナログ変調し、この光を光ファイバに通して送信し、光検出器により元の高周波信号に戻され、アンテナから放射される無線方式である。
【0021】
電力増幅モジュールモジュール110は、インダクタL
11およびキャパシタC
11からなる入力インピーダンス整合回路111と、インダクタL
12およびキャパシタC
12からなる出力インピーダンス整合回路112と、FETからなる電力増幅器(PA:Power Amplifier)113と、カップリングキャパシタC
1と、を備える。電力増幅モジュールモジュール110は、モジュールまたはMMIC(monolithic microwave integrated circuit:モノリシックマイクロ波集積回路)で構成される。
【0022】
電力増幅器113は、FET(Field Effect Transistor)を用いた一段構成を示したが多段構成であってもよい。また、電力増幅器113のバイアス回路は省略している。本実施形態では、可視光通信用途の光電変換回路100は、IEEE802.11a/n/acに代表されるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号と、例えば10MHzs以上の広帯域変調帯域幅を用いて、大容量データ伝送を実現する。このため、電力増幅器113は、線形性と優れたEVM(Error Vector Magnitude :変調精度)特性が必要である。例えば、一般的なGaAs FETのほか、InGaP/GaAs HBTプロセスを適用したPAが用いられる。
【0023】
入出力インピーダンス整合回路111,112は、発光ダイオード130に対して直列にL
11,L
12を挿入し、並列にキャパシタC
11,C
12を挿入して構成され、発光ダイオード130と電力増幅器113とをインピーダンス整合する。
特に、入出力インピーダンス整合回路111,112は、発光ダイオード130の周波数特性において、高周波領域にピークを持つようなインピーダンス整合に調整されている。なお、出力インピーダンス整合回路112のみで、上記高周波領域にピークを持つようなインピーダンス整合に調整することも可能であるが、電力増幅器113の前段に入力インピーダンス整合回路111を設けることで、インピーダンス整合の調整がより容易となる。
【0024】
第1バイアス回路120は、直列にL
13を挿入し、並列にキャパシタC
13を挿入して構成され、電力増幅モジュールモジュール110を通る高周波信号に影響を与えないように、キャリア周波数に対して外乱が小さくなるようにするものであり、図示しない電流源が発生する電流I
LEDを発光ダイオード130に流す。第1バイアス回路120は、電力増幅器113の駆動方式や電圧電流値がそれぞれ異なるので、発光ダイオード130の直近に設ける。
第2バイアス回路150は、直列にL14を挿入し、並列にキャパシタC
14を挿入して構成され、低雑音増幅モジュール160を通る高周波信号に影響を与えないように、キャリア周波数に対して外乱が小さくなるようにするものであり、図示しない電圧源が発生する電圧V
PDをフォトダイオード140に逆バイアスで印加する。これにより、フォトダイオード140は、光導電モードで動作する。バイアス回路150は、低雑音増幅器163の駆動方式や電圧電流値がそれぞれ異なるので、フォトダイオード140の直近に設ける。
【0025】
低雑音増幅モジュール160は、インダクタL
15およびキャパシタC
15からなる入力インピーダンス整合回路161と、インダクタL
16およびキャパシタC
16からなる出力インピーダンス整合回路162と、FETからなる低雑音増幅器163と、カップリングキャパシタC3,C4と、を備え、モジュール構成されている。
低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)163は、光電変換された微弱な信号にノイズを付加しないで増幅する。低雑音増幅器163は、GaAs FETやGaAs HEMT等の増幅素子を使用し、図示しない静電保護回路等を含んでパッケージ化されている。
図2では、低雑音増幅器163は、FETを用いた一段構成を示したが多段構成であってもよい。
【0026】
入出力インピーダンス整合回路161,162は、フォトダイオード140に対して直列にL
15,L
16を挿入し、並列にキャパシタC
15,C
16を挿入して構成され、フォトダイオード140と低雑音増幅器163とをインピーダンス整合する。
カップリングキャパシタC
1〜C
4は、直流成分遮断用のカップリングコンデンサである。カップリングキャパシタC
1〜C
4は、DC入力を認めている場合は、挿入する必要はない。カップリングキャパシタC
1〜C
4は、キャリア周波数が低くなると,1/2πfc(c=const.)より抵抗成分が大きくなる性質を有している。なお、カップリングキャパシタC
1〜C
4は、例えば、GHz帯ならば数十pFあれば十分であるが、MHz帯では1μF程度である。
【0027】
以上のように構成された光電変換回路100の動作について説明する。
図3は、高速動作が可能とされる発光ダイオード130の可視光帯域における周波数特性を示す図である。
図3の太破線に示すように、発光ダイオード130単体では、可視光帯域における周波数特性は右肩下がりの特性となっている。
発光ダイオード130と電力増幅器113は、入出力インピーダンス整合回路111,112によりインピーダンス整合される。ここで、
図3の細破線に示すように、入出力インピーダンス整合回路111,112は、発光ダイオード130の周波数特性において、高周波領域にピークを持つようなインピーダンス整合に調整されている。
入出力インピーダンス整合回路111,112は、発光ダイオード130の右肩下がりの周波数特性を補償するようなインピーダンス整合の調整を行うので、
図3の実線に示すように、電力増幅器113による電力増幅後の発光ダイオード130の周波数特性は、変調帯域特性が平坦、かつ、高周波帯域側での落ち込みが減少する。これにより、使用の変調帯域幅を増大することができる。
【0028】
本実施の形態では、電力増幅モジュールモジュール110は、電力増幅器113と入出力インピーダンス整合回路111,112とを内部に有する。入出力インピーダンス整合回路111,112は、発光ダイオード130と電力増幅器113とをインピーダンス整合する。このとき、入出力インピーダンス整合回路111,112は、発光ダイオード130の周波数特性において、高周波領域にピークを持つようなインピーダンス整合となるように調整される。
【0029】
本来の発光ダイオード130と電力増幅器113とのインピーダンス整合の際、発光ダイオード130の右肩下がりの周波数特性を補償するようなインピーダンス整合の調整を行うので、発光ダイオード130の周波数特性は、変調帯域特性が平坦、かつ、高周波帯域側での落ち込みを減少させることができる。
図8および
図9の従来技術に比べて、電気・光変換部(本実施の形態では、電力増幅モジュールモジュール110側)の周波数および利得平坦度が向上し、大きな変調帯域幅を使用することができる。この場合、前記
図11(a)に示すように、コンスタレーションも向上する。その結果、可視光通信に用いる発光ダイオード130を使用した光電変換回路100を、可視光通信向け無線システムに適用可能となり、新たな用途およびデータ伝送容量の向上が可能となる。
【0030】
また、本実施の形態では、電力増幅モジュールモジュール110内の既設の入出力インピーダンス整合回路111,112を用いるので、新たな部材の追加がなく、低コストで実施することができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る光電変換回路200の構成を示すブロック図である。
図2と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図4に示すように、可視光通信用途の光電変換回路200は、RFin端子と、電力増幅器210と、インピーダンス整合回路211と、図示しない伝送線路上に設けられたバイアス回路220と、発光ダイオード130と、フォトダイオード140と、図示しない伝送線路上に設けられたバイアス回路250と、高周波の低雑音増幅に適した低雑音増幅器260と、RFout端子と、を備える。なお、伝送線路の特性インピーダンスZ
0は、一般的な装置で使用されている50Ωである。
【0032】
ここで、電力増幅器210とインピーダンス整合回路211は、
図2の光電変換回路100のようにモジュール化されていない。
電力増幅器260は、汎用品であり周波数特性が規格内に限定されているものである。電力増幅器260は、一段または複数段のスイッチング素子(例えばFET)からなり、最終段に電力増幅段を設けて増幅電流を出力する。電力増幅器260は、汎用品であるので、インピーダンス整合回路211を別体で伝送線路上に挿入する。インピーダンス整合回路211は、発光ダイオード130の前段に挿入する。この場合、発光ダイオード130の前段であればよく、この例ではバイアス回路220の前段である。バイアス回路220の構成によっては、バイアス回路220の後段でもよい。
【0033】
インピーダンス整合回路211は、発光ダイオード130と電力増幅器260とのインピーダンス整合の際、発光ダイオード130の右肩下がりの周波数特性を補償するようなインピーダンス整合の調整を行う。
バイアス回路220は、伝送線路を通る高周波信号に影響を与えないように、キャリア周波数に対して外乱が小さくなるようにするものであり、図示しない電流源が発生する電流を発光ダイオード130に流す。
バイアス回路250は、フォトダイオード140をいわゆる光導電モードで使用する逆バイアスをかける。
低雑音増幅器260は、GaAs FETやGaAs HEMT等の増幅素子を使用し、静電保護回路等を含む整合回路をパッケージ化した例えばGPS(Global Positioning System)用低雑音増幅器である。
【0034】
図5は、本実施の形態に係る光電変換回路200の構成を示す回路図である。
図2および
図4と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図5に示すように、可視光通信用途の光電変換回路200Aは、
図2の光電変換回路100と異なり、入出力インピーダンス整合回路111,112および電力増幅器210とがモジュール化されていない。すなわち、光電変換回路200Aは、電力増幅器260が、汎用品であり、インピーダンス整合回路211も別体で伝送線路上に挿入される。同様に、入出力インピーダンス整合回路161,162および低雑音増幅器260とがモジュール化されていない。
【0035】
本実施の形態の光電変換回路200,200Aは、入出力インピーダンス整合回路111,112および電力増幅器210とがモジュール化されていない点を除けば、
図2の光電変換回路100と機能は同一である。機能が同一であるので、光電変換回路200,200Aは、第1の実施の形態の光電変換回路100と同様の動作を行う。すなわち、光電変換回路200,200Aは、入出力インピーダンス整合回路111,112(
図4のインピーダンス整合回路211)が、発光ダイオード130の周波数特性において、高周波領域にピークを持つようなインピーダンス整合となるように調整しつつ、発光ダイオード130と電力増幅器113とをインピーダンス整合する。
【0036】
図6は、高速動作が可能とされる発光ダイオード130の可視光帯域における周波数特性を示す図である。
図6の太破線に示すように、発光ダイオード130単体では、可視光帯域における周波数特性は右肩下がりの特性となっている。これに対して、
図6の太実線に示すように、入出力インピーダンス整合回路111,112は、発光ダイオード130の右肩下がりの周波数特性を補償するようなインピーダンス整合の調整を行うので、電力増幅器113による電力増幅後の発光ダイオード130の周波数特性は、変調帯域特性が平坦、かつ、高周波帯域側での落ち込みが減少する。これにより、使用の変調帯域幅を増大することができる。
【0037】
ここで、本実施の形態では、光電変換回路200は、電力増幅器113を備えているが、例えば発光ダイオード130へのアナログ信号強度が十分ある場合、電力増幅器113を省略することも可能である。電力増幅器113を用いない構成の場合、電気・光変換部の消費電力を下げる効果が得られる。
【0038】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)〜(d)のようなものがある。
(a) 上記各実施の形態では、電気・光変換部に本インピーダンス整合回路を適用した例について説明したが、光・電気変換部に本インピーダンス整合回路を適用してもよく、フォトダイオード140と低雑音増幅器163とのインピーダンス整合において、同様の効果を得ることができる。
【0039】
(b) 上記各実施の形態では、発光ダイオード130およびフォトダイオード140は、1つの例を示したが、複数用いた回路構成でもよい。
【0040】
(c) 上記各実施の形態では、発光ダイオード130の高域側(利得圧縮部の領域)の特性改善について説明したが、発光ダイオード130の低域側の利得を落とす回路構成に応用することもできる。この場合、本インピーダンス整合回路は、ハイパスフィルタ構成を採る。
【0041】
(d) 上記各実施の形態の各インピーダンス整合回路111,112,211,116,162について、
図7(a)〜(f)に示す回路構成を採ることができる。
図7(a)〜(f)において、入力インピーダンスZ
INは、Z
IN=50[Ω]である。Z
Lは、発光ダイオード130またはフォトダイオード140の負荷インピーダンスである。一般に、伝送線路の特性インピーダンスが、入力インピーダンスZ
INと負荷インピーダンスZ
Lとが整合状態にない場合、反射が起こる。このため、インピーダンス整合回路111,112,211,116,162を用いて、インピーダンス整合を図る。上記各実施の形態では、このインピーダンス整合において周波数特性を補償するようなインピーダンス整合の調整を行う。