(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0024】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向およびY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、およびZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、およびθZ方向とする。
【0025】
(空気入りタイヤの構造)
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の一例を示す断面図である。
図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の一部を拡大した断面図である。
図3は、タイヤ1のトレッド部6の一例を示す図である。以下の説明においては、空気入りタイヤ1を適宜、タイヤ1、と称する。また、タイヤ1は、乗用車用、重荷重用、産業車両用、二輪車用のいずれであっても構わない。
【0026】
タイヤ1は、中心軸(回転軸)AXを中心に回転可能である。
図1および
図2はそれぞれ、タイヤ1の中心軸AXを通る子午断面を示す。タイヤ1の中心軸AXは、タイヤ1の赤道面CLと直交する。
【0027】
本実施形態においては、タイヤ1の中心軸AXとY軸とが平行である。すなわち、本実施形態において、中心軸AXと平行な方向は、Y軸方向である。Y軸方向は、タイヤ1の幅方向又は車幅方向である。赤道面CLは、Y軸方向に関してタイヤ1の中心を通る。θY方向は、タイヤ1(中心軸AX)の回転方向である。X軸方向およびZ軸方向は、中心軸AXに対する放射方向である。タイヤ1が走行(転動)する路面(地面)は、XY平面とほぼ平行である。
【0028】
以下の説明においては、タイヤ1(中心軸AX)の回転方向を適宜、周方向、と称し、中心軸AXに対する放射方向を適宜、径方向と称し、中心軸AXと平行な方向を適宜、幅方向、と称する。
【0029】
タイヤ1は、カーカス部2と、ベルト層3と、ベルトカバー4と、ビード部5と、インナーライナー7と、ゴム層とを有する。ゴム層は、トレッド部6と、サイドウォール部8とを有している。また、ゴム層は、ビード部5の周囲のゴムの部分を含む。
【0030】
カーカス部2、ベルト層3、およびベルトカバー4のそれぞれは、コードを含む。コードは、補強材である。コードを、ワイヤと称してもよい。カーカス部2、ベルト層3、およびベルトカバー4のような補強材を含む層をそれぞれ、コード層と称してもよいし、補強材層と称してもよい。
【0031】
カーカス部2は、タイヤ1の骨格を形成する強度部材である。カーカス部2は、コードを含む。カーカス部2のコードを、カーカスコードと称してもよい。カーカス部2は、タイヤ1に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。カーカス部2は、ビード部5に支持される。ビード部5は、Y軸方向に関してカーカス部2の一側および他側のそれぞれに配置される。カーカス部2は、ビード部5において折り返される。カーカス部2は、有機繊維のカーカスコードと、そのカーカスコードを覆うゴムとを含む。なお、カーカス部2は、ポリエステルのカーカスコードを含んでもよいし、ナイロンのカーカスコードを含んでもよいし、アラミドのカーカスコードを含んでもよいし、レーヨンのカーカスコードを含んでもよい。
【0032】
ベルト層3は、タイヤ1の形状を保持する強度部材である。ベルト層3は、コードを含む。ベルト層3のコードを、ベルトコードと称してもよい。ベルト層3は、カーカス部2とトレッド部6との間に配置される。ベルト層3は、例えばスチールなどの金属繊維のベルトコードと、そのベルトコードを覆うゴムとを含む。なお、ベルト層3は、有機繊維のベルトコードを含んでもよい。本実施形態において、ベルト層3は、第1ベルトプライ3Aと、第2ベルトプライ3Bとを含む。第1ベルトプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとは、第1ベルトプライ3Aのコードと第2ベルトプライ3Bのコードとが交差するように積層される。
【0033】
ベルトカバー4は、ベルト層3を保護し、補強する強度部材である。ベルトカバー4は、コードを含む。ベルトカバー4のコードを、カバーコードと称してもよい。ベルトカバー4は、タイヤ1の中心軸AXに対してベルト層3の外側に配置される。ベルトカバー4は、例えばスチールなどの金属繊維のカバーコードと、そのカバーコードを覆うゴムとを含む。なお、ベルトカバー4は、有機繊維のカバーコードを含んでもよい。
【0034】
ビード部5は、タイヤ1をリムに固定させる。ビード部5は、ビード50を有する。ビード50は、カーカス部2の両端を固定する強度部材である。ビード50は、スチールワイヤの束である。なお、ビード50は、炭素鋼の束でもよい。
【0035】
トレッド部6は、センター部11と、Y軸方向に関してセンター部11の両側に配置されたショルダー部12とを含む。トレッド部6は、カーカス部2を保護する。トレッド部6は、路面と接触する接地部を含む。
【0036】
トレッド部6は、タイヤ径方向外側の表面に複数の溝20が形成されている。溝20は、タイヤ1の周方向に延びる主溝21と、少なくとも一部がタイヤ1の幅方向に延びるラグ溝(横溝)22と、を含む。溝20の周囲に、陸部が設けられる。陸部は、溝20と、その溝20に隣り合う溝20との間に設けられる。トレッド部6は、溝20の間に配置される複数の陸部を含む。
【0037】
主溝21は、タイヤ1の周方向に設けられる。主溝21の少なくとも一部は、トレッド部6のセンター部11に設けられる。主溝21は、内部にトレッドウェアインジケータを有する。トレッドウェアインジケータは、摩耗末期を示す。主溝21は、4.0mm以上の幅を有し、5.0mm以上の深さを有してもよい。
図2および
図3に示すように、本例において、タイヤ1は、4つの主溝21を有する。
【0038】
ラグ溝22の少なくとも一部は、タイヤ1の幅方向に設けられる。ラグ溝22の少なくとも一部は、トレッド部6のショルダー部12に設けられる。ショルダー部12は、幅方向(Y軸方向)に関してセンター部11の一側(+Y側)および他側(−Y側)のそれぞれに配置される。ラグ溝22は、1.5mm以上の幅を有する。ラグ溝22は、4.0mm以上の深さを有してもよく、部分的に4.0mm未満の深さを有していてもよい。
【0039】
インナーライナー7は、タイヤ1の内面に貼り付けられた気密保持性の高いゴム層または熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物である。サイドウォール部8は、カーカス部2を保護する。サイドウォール部8は、Y軸方向に関してトレッド部6の一側および他側のそれぞれに配置される。サイドウォール部8は、Y軸方向に関してトレッド部6の一側および他側のそれぞれに配置されるサイドウォールゴムを有する。
【0040】
本実施形態において、タイヤ外径はODである。タイヤリム径はRDである。タイヤ総幅はSWである。トレッド接地幅はWである。トレッド展開幅はTDWである。
【0041】
タイヤ外径ODとは、タイヤ1を正規リムに組み付け、正規内圧を充填して、タイヤ1に荷重を加えないときの、タイヤ1の直径をいう。
【0042】
タイヤリム径RDとは、タイヤ1に適合するホイールのリム径をいう。タイヤリム径RDは、タイヤ内径と等しい。
【0043】
タイヤ総幅SWとは、タイヤ1を正規リムに組み付け、正規内圧を充填して、タイヤ1に荷重を加えないときの、中心軸AXと平行な方向に関するタイヤ1の最大の寸法をいう。すなわち、タイヤ総幅SWとは、トレッド部6の+Y側に配置されたサイドウォール部8の最も+Y側の部位と、−Y側に配置されたサイドウォール部8の最も−Y側の部位との距離をいう。
【0044】
トレッド接地幅Wとは、タイヤ1を正規リムに組み付け、正規内圧を充填して、平面上に垂直に置いて、正規荷重を加えたときに測定される、中心軸AXと平行な方向に関する接地幅の最大値をいう。接地端部STA、STBとは、トレッド接地幅Wのエッジ部をいう。
【0045】
トレッド展開幅TDWとは、タイヤ1を正規リムに組み付け、正規内圧を充填して、タイヤ1に荷重を加えないときの、タイヤ1のトレッド部6の展開図における両端の直線距離をいう。
【0046】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1毎に定めているリムであり、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”である。但し、タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、このタイヤ1が組まれる純正ホイールを用いる。
【0047】
「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。但し、タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、車両に表示された空気圧とする。
【0048】
「正規荷重」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。但し、タイヤ1が乗用車である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、車両の車検証記載の前後軸重をそれぞれタイヤの数で除して求めた輪荷重とする。
【0049】
ここで、タイヤ1は、磁石30と、検出部311と、を有する。磁石30は、トレッド部6の溝20の間に配置される陸部の少なくとも1つに配置されている。本例では、磁石30は、タイヤ1の赤道面CLが通る、中央の陸部の内部に配置されている。なお、磁石30を設けるゴム層は、車両が走行する際に変形する部分であれば、トレッド部6、サイドウォール部8、ビード部5のいずれでもよい。検出部311は、磁石30を備えている陸部の径方向内側に配置されている。
図2に示す例では、検出部311は、磁石30の位置から、ベルトカバー4、ベルト層3およびインナーライナー7を介して、タイヤ1の径方向内側に配置されている。以下、各部について説明する。
【0050】
(磁石)
図4は、磁石30の外観の例を示す斜視図である。
図4において、磁石30は、本例では、円柱形であり、永久磁石である。ネオジム磁石などを磁石30として用いることができる。磁石30の上面の直径Rは、例えば、1.5〜8mm、高さHは、例えば、0.5〜3mmである。
【0051】
(検出部、および、磁石との位置関係)
図5は検出部311と磁石30との位置関係を示す図、
図6は磁石30の上面から基板31を見た平面図である。
図5および
図6において、ゴム層の図示は省略してある。
図5および
図6に示すように、検出部311は、本例では、基板31と、4つの磁気センサ32A〜32Dと、4つのインダクタ33A〜33Dとを有する。基板31は、その主表面310が正方形である。本例では、磁気センサ32A〜32Dおよびインダクタ33A〜33Dは、基板31の主表面310に実装されている。
【0052】
本例では、4つの磁気センサ32A〜32D、および、4つのインダクタ33A〜33Dは、基板31の中心CSを中心とする円CC上に均等な間隔で配置されている。4つの磁気センサ32A〜32Dは、基板31への実装の方向を示すマークMKを有し、磁気センサ32A〜32DのマークMKは、基板31の中心CSに向いている。このため、基板31に設けられている磁気センサ32A〜32Dは、それらの中心に対して同じ方向であって、磁石30に対して均等距離に配置されている。4つのインダクタ33A〜33Dも同様に、それらの中心に対して同じ方向であって、磁石30に対して均等距離に配置されている。
【0053】
図7は、磁石30および基板31とタイヤ1との配置の例を示す断面図である。
図7では、カーカス部2、ベルト層3、ベルトカバー4およびインナーライナー7の図示は省略してある。以降に参照する各図においても、これらの図示を省略することがある。
【0054】
図7に示すように、本例において、磁石30は、タイヤ1のセンター陸部CR内に設けられている。センター陸部CRは、赤道面CLと交差する陸部である。基板31は、磁石30から見た場合に、タイヤ1の径方向内側に設けられている。また、
図5および
図6に示すように、基板31の中心CSと磁石30の中心の位置とは平面視で見た場合に一致している。
【0055】
インダクタ33Aの中心CSから遠い側の端部とインダクタ33Cの中心CSから遠い側の端部との距離31WAは、例えば、接地するリブ幅LWの0.2倍〜0.9倍である。また、インダクタ33Bの中心CSから遠い側の端部とインダクタ33Dの中心CSから遠い側の端部との距離31WBは、例えば、接地するリブ幅LWの0.2倍〜0.9倍である。
【0056】
磁気センサ32A〜32Dは、例えば、磁気抵抗素子である、GMR(Giant Magnetic Resistance)素子である。ホール素子など、その他の磁気センサを用いてもよい。磁気センサ32A〜32Dを有する検出部311は、後述するように、各磁気センサ32A〜32Dが検出する磁束密度により、ゴム層表面の変位あるいは力ベクトルを計測することができる。
【0057】
インダクタ33Aは、磁気センサ32Aと32Bとの間に設けられている。インダクタ33Bは、磁気センサ32Bと32Cとの間に設けられている。インダクタ33Cは、磁気センサ32Cと32Dとの間に設けられている。インダクタ33Dは、磁気センサ32Dと32Aとの間に設けられている。
【0058】
また、4つのインダクタ33A〜33Dは、基板31の中心CSに対して同じ方向であって、磁石30に対して均等距離に配置されている。インダクタ33A〜33Dは、磁石30による磁束密度の変化を検出する。インダクタ33A〜33Dの出力値とその過去の値から標準偏差を算出して、磁束密度の変動範囲に基づいて、ゴム層のすべりを検出することができる。つまり、インダクタ33A〜33Dを有する検出部311は、後述するように、各インダクタ33A〜33Dが検出する磁束密度の値とその過去の値から算出される標準偏差とによって決定される変動範囲を用いて、ゴム層の変位に伴い変位する磁石30の磁束密度の動的変化によって、ゴム層のすべりを検出することができる。
【0059】
ここで、磁石30と基板31との距離は、次のようになる。
図8A、
図8B、
図9Aおよび
図9Bは、磁石30と基板31との距離を説明するための断面図である。
図8Aに示すように基板31をベルトカバー4およびベルト層3のタイヤ径方向内側に設けられたインナーライナー7よりもタイヤ径方向内側に配置する場合、
図8Bに示すように磁石30の下面と基板31の上面との距離D1は、例えば、4〜10mmである。なお、
図8Bでは、ベルト層の図示を省略してある。
【0060】
ここで、
図8Aに示すように基板31をインナーライナー7のタイヤ径方向内側すなわち、タイヤ1の最内面に配置する場合、正確な測定のために、ベルト層3には、非金属製の繊維を用いることが望ましい。例えば、非金属製の繊維として、ケブラー(登録商標)繊維をベルト層3に用いる。
【0061】
一方、
図9Aに示すように基板31をベルトカバー4およびベルト層3よりもタイヤ径方向外側に配置する場合、
図9Bに示すように磁石30の下面と基板31の上面との距離D2は、例えば、1〜7mmである。なお、
図9Bでは、ベルト層の図示を省略してある。
【0062】
(磁石および基板の配置例)
図10A〜
図10Dは、磁石30および基板31の配置例を示す断面図である。
図10A〜
図10Dに示すように、磁石30は、赤道面CLを挟んで、接地端部STAと接地端部STBとの間に設け、磁石30から例えば上述した距離D1をおいて基板31を設ける。
【0063】
図10Aでは、赤道面CLと交差するセンター陸部CRに磁石30を設け、磁石30から例えば上述した距離D1をおいて基板31を設ける。このように磁石30および基板31を配置することにより、タイヤ1のセンター陸部CRにおける3軸変位および力の算出、すべりの検出を行うことができる。
【0064】
図10Bでは、センター陸部に磁石30および基板31を設けず、センター陸部CRの両隣にあり、ショルダー陸部SRとセンター陸部CRとの間のセカンド陸部RRに磁石30A、30Bを設け、磁石30A、30Bからそれぞれ例えば上述した距離D1をおいて基板31A、31Bを設ける。このように磁石30A、30Bおよび基板31A、31Bを配置することにより、タイヤ1のセカンド陸部RRにおける3軸変位および力の算出、すべりの検出を行うことができる。
【0065】
図10Cでは、接地端部STA、STBに近いショルダー陸部SRに、磁石30C、30Dを設け、磁石30C、30Dからそれぞれ例えば上述した距離D1をおいて基板31C、31Dを設ける。このように磁石30C、30Dおよび基板31C、31Dを配置することにより、ショルダー陸部SRにおける3軸変位および力の算出、すべりの検出を行うことができる。
【0066】
図10Dでは、センター陸部CRに磁石30を設けるとともに、ショルダー陸部SRに磁石30C、30Dを設け、磁石30から例えば上述した距離D1をおいて基板31を設けるとともに、磁石30C、30Dからそれぞれ例えば上述した距離D1をおいて基板31C、31Dを設ける。このように磁石30、30C、30Dおよび基板31、31C、31Dを配置することにより、センター陸部CRと、ショルダー陸部SRとで、算出した3軸変位および力、検出したすべりをそれぞれ比較することができ、タイヤ1にかかる3軸変位、力およびすべりをより詳細に把握することができる。
【0067】
図11は、
図2に示すタイヤ1を赤道面CLに沿って切断した断面図である。
図11に示すように、本例では周方向の8箇所に、磁石30および基板31を設けている。つまり、本例では、赤道面CLに沿ってタイヤ1の回転中心に対して45度(360度/8)ごとに、磁石30および基板31の組を設けている。このように磁石30および基板31の複数組設けることにより、タイヤ1の周方向の複数の位置において、3軸変位および力、すべりをそれぞれ取得することができる。
【0068】
(基板への電力供給、基板からの信号伝送)
図12Aおよび
図12Bは、基板31への電力供給方法の例を示す図である。
図12Aに示すように、基板31の近傍に、基板31に電力を供給する電池BTを設ける。基板31と電池BTとを配線L1で接続することにより、電池BTから配線L1を介して、基板31の動作に必要な電力を供給することができる。
【0069】
また、
図12Bに示すように、電池BTの近傍に、発電部PGを設けてもよい。発電部PGは、タイヤ1の転動に伴って発電を行う。発電部PGと電池BTとを配線L2で接続することにより、発電部PGによって発電した電力を電池BTに蓄積し、基板31の動作に必要な電力をより安定して供給することができる。なお、例えば、特開2014−155247号公報に記載されている、振り子式構造を有する発電機を、発電部PGとして用いることができる。
【0070】
図13は、基板31をベルト層の径方向外側に設けた場合において信号伝送を行う方法の例を示す図である。
図13に示すように、タイヤ1は、信号伝送部34Aおよび34Bを備える。信号伝送部34Aは、ベルト層の径方向外側に設けられている。信号伝送部34Bは、ベルト層を挟んで信号伝送部34Aに対向する位置に設けられている。信号伝送部34Aは、配線L3を介して基板31と接続されている。信号伝送部34Bは、配線L4を介して電気信号を伝送する。
【0071】
信号伝送部34Aおよび34Bは、非接触で信号を伝送する機能を有している。このため、基板31によって得られた情報を、配線L3、信号伝送部34Aおよび34B、配線L4を介して、伝送することができる。例えば、基板31によって得られた情報を電気信号として、タイヤ1を有する車両に伝送することができる。なお、信号伝送部34Aおよび34Bの電気信号を伝送する方式は、電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電波方式のいずれでもよい。
【0072】
信号伝送部34Aおよび34Bは、例えば、金属製のワイヤを避けた領域に設けられる。基板31の位置は、ベルトカバー4の外側すなわちトレッド部6の最下部、または、ベルト層3とベルトカバー4との間が好ましい。なお、信号伝送部34Aおよび34Bに磁界共鳴方式を採用した場合、金属製のワイヤが間に存在しても、信号伝送部34Aおよび34Bは信号を伝送することができる。
【0073】
図14は、
図13に示すタイヤ1において電源を供給する方法および電気信号を伝送する方法の例を示す図である。
図14に示すタイヤ1は、
図13に示す構成に、電池BT、発電部PG、配線L1およびL2、信号伝送部35Aおよび35Bを追加した構成を示す図である。信号伝送部35Aおよび35Bは、上記信号伝送部34Aおよび34Bと同様に、非接触で電気信号を伝送する機能を有している。このため、
図12Bを参照して説明したように、発電部PGによって発電した電力を電池BTに蓄積し、基板31の動作に必要な電力を電池BTから基板31へ供給することができる。なお、
図12Aを参照して説明したように、発電部PGおよび配線L2を設けずに、電池BTおよび配線L1によって基板31の動作に必要な電力を電池BTから基板31へ供給するようにしてもよい。
【0074】
図15は、ホイールを介して有線で車両へ電気信号を伝送する場合の構造を示す断面図である。
図15に示すように、タイヤ1はホイールのリムRMに組み付けられている。基板31には、配線L5が接続される。配線L5は、タイヤ1のインナーライナー7の内面およびリムRMに沿って設けられる。配線L5の他端は、例えば、ナックル、ハブおよびスリップリングを介して車両に電気的に接続される。このような構造を採用することにより、配線L5を介して電気信号を車両に伝送することができる。
【0075】
図16は、車両内の各部と基板とを有線によって接続する例を示す図である。配線L5を複数設けておくことにより、配線L5を介して基板31から車両100へ電気信号を伝送することができ、かつ、車両100から基板31へ電源を供給することができる。
【0076】
図16において、車両100は、スリップリング36と、配線L6およびL7と、通信部37と、電源部38とを備えている。スリップリング36は、車両100の車体からハブ(図示せず)に対して電力と電気信号を伝達することのできる回転コネクタである。配線L6は、複数の配線L5のうちの電源を供給するものに接続される。配線L7は、複数の配線L5のうちの信号を伝達するものに接続される。
【0077】
このため、電源部38は、配線L6およびスリップリング36により、ハブ、ナックル(図示せず)、配線L5を介して基板31へ電力を供給することができる。また、基板31は、配線L5、ハブ、ナックル、スリップリング36および配線L7を介して、例えば車両100の通信部37へ電気信号を伝送することができる。通信部37は、車両100のタイヤ1の力や変形に関する情報を他車(例えば後続車)に直接送信してもよいし、自車で演算した情報において、周囲に危険を及ぼすと判断した場合に、それを告げる警告を送信してもよい。通信部37は、電波や光を用いた通信を行う。車両100の尾灯40を用いた光通信を行ってもよい。
【0078】
(磁石と基板との配置の維持)
ところで、ゴム層を加硫する際に、磁石30と基板31との配置が変化することは好ましくない。磁石30と基板31との配置が変化することを防止するために、磁石30の下方に高硬度ゴム層を設けてもよい。
【0079】
図17Aおよび
図17Bは、高硬度ゴム層の配置を示す図である。
図17Aに示すように、高硬度ゴム層35は、磁石30と基板31と間、例えば磁石30の直下に設ける。高硬度ゴム層35は、磁石30が設けられるゴム層よりも硬度が高い。高硬度ゴム層35は、例えば、JISA硬度(20℃)が55以上のゴム材料を用いる。高硬度ゴム層35を設けることにより、加硫を行った場合に、基板31と磁石30との配置を
図17Bに示すように維持することができる。なお、高硬度ゴム層35の厚みは、
図8Bを参照して説明した距離D1から、ベルトカバー4、ベルト層3、カーカス部2およびインナーライナー7の厚みを減じた値である。
【0080】
ところで、高硬度ゴム層35を設ける場合、磁石30の近傍に空気溜まりが生じる場合がある。
図18Aは、磁石30の近傍に生じる空気溜まりを示す図である。
図18Aにおいて、空気溜まり300は、高硬度ゴム層35の上面において、磁石30の側面の周囲に生じる。
図18Bおよび
図18Cは、空気溜まり300が生じることを防止する構成例を示す図である。
【0081】
図18Bに示すように、磁石30の形状に孔を開けたゴム層351を用意し、ゴム層351で磁石30の周囲を包囲する。これにより、ゴム層351の上面から下面までの厚みを均一にすることができる。さらに、孔の無いゴム層352をゴム層351の下に設けることにより、磁石30と基板31との距離D1を調整することができる。このようにすれば、
図18Cに示すように空気溜まり300が生じることを防止でき、タイヤ1の性能を維持することができる。
【0082】
(接地タイミング)
ところで、タイヤ1の変形状態を解析する必要があるのは、接地しているタイミングである。すなわち、タイヤ1が接地したタイミングにおいて、ゴム層表面の変位あるいは力ベクトルを計測し、ゴム層のすべりを検出すればよい。
【0083】
図19は、タイヤ1が接地したタイミングでタイヤ1の変形状態を解析するための構成例を示す図である。
図19に示すように、基板31の近傍に加速度センサ39を設ける。基板31は、配線L8を介して加速度センサ39の出力を入力する。タイヤ1が路面に接触して回転する場合、タイヤ1が接地している位置、および、接地位置から遠い位置において、加速度センサ39の出力は低下する。
【0084】
したがって、加速度センサ39の出力が低下し、かつ、基板31の磁気センサまたはインダクタによって磁束密度の変化が検出されるタイミングが、基板31の近傍部分の接地タイミングである。このため、加速度センサ39の出力に基づき、基板31の近傍部分の接地タイミングおよびその前後のタイミングを判別することができる。検出部311は、接地タイミングおよびその前後のタイミングにおける、磁束密度に基づき、ゴム層の表面の変位あるいは力ベクトルを計測し、ゴム層のすべりを検出すれば、タイヤ1の変形状態を適切に解析できる。
【0085】
図20Aは、タイヤ1が接地したタイミングでタイヤ1の変形状態を解析するための他の構成例を示す図である。
図20Bは、基板31において検出できる磁束密度の変化の例を示す図である。
図20Bの横軸は時間、縦軸は磁束密度である。
【0086】
図20Aに示すように、車両100は、磁石41を備える。磁石41は、例えば、永久磁石である。磁石41は、車両100のタイヤハウス101内の、最も高い位置(路面Mから最も離れた位置)に固定される。車両100が走行し、タイヤ1が矢印Y1の方向に回転すると、タイヤ1に設けられた基板31が磁石41の近傍を通過するとき、基板31が検出する磁束密度がもっとも大きくなる。つまり、車両100の磁石41から磁界を発生させて、基板31がその磁束密度を検出することで、タイヤ1の回転のトリガーパルスとして扱うことができる。
【0087】
基板31において検出する磁束密度が、例えば
図20Bに示すように変化する場合、基板31において検出する磁束密度が大きくなる時刻T1およびT2は、基板31が磁石41の近傍を通過するタイミングである。このため、時刻T1と時刻T2との間の中間のタイミングTCは、基板31が路面Mに最も近づいたタイミングすなわち基板31の近傍部分の接地タイミングとなる。このように、車体に他の磁石41を固定しておくことにより、基板31の出力に基づき、タイヤ1の接地タイミングを判別することができる。
【0088】
したがって、磁束密度が大きくなる時刻T1、T2をトリガーとして磁束密度の波形を容易に切り取ることができる。このため、タイヤが1回接地する場合の磁束密度の波形のデータをその前後領域TRを包含して採取することができ、基板31において波形を処理(演算)しやすくなる。
【0089】
次に、検出部311による検出の原理について説明する。
【0090】
(原理)
磁気センサ32A〜32Dと磁石30との間の距離の変化が小さい場合、その距離に応じて磁気センサ32A〜32Dの出力が決定される。このことから、反対に磁気センサ32A〜32Dの出力から磁気センサと磁石30との間の距離を求めることができる。例えば、磁気センサ32A〜32Dの出力を計測して計算した磁気センサ32A〜32Dと磁石30との間の距離から、磁石30の3軸変位やそれを決定するゴム層表面の3軸変位を求めることができる。さらに、力覚センサなどを用いて較正値を取ることによってその変位が加えられる際の力の大きさおよび方向の算出も可能である。
【0091】
インダクタ33A〜33Dは、磁石30の変位時に起こる磁束密度の変化に応じて、電磁誘導現象に基づく誘導起電力を発生する。誘導起電力の大きさは、磁束密度の変化量よりもその速度に依存する。このため、ゴム層表面の変位が高速なほど大きくなる。ゴム層表面において、微小で高速な変位が発生する例の1つとして、固着と滑りとを繰り返すスティックスリップ現象があり、インダクタ33A〜33Dによる誘導起電力が、初期滑り時に大きく変化する。インダクタ33A〜33Dはスティックスリップ現象を伴う滑りを検出する役割を担う。
【0092】
次に、3軸変位および力の算出方法、すべりの検出方法、について説明する。
【0093】
(3軸変位・力の算出方法)
図6に示す4つのGMR素子の出力電圧からゴム層表面の3軸変位と力の算出は、例えば、次の手順によって行う。以下の例では、4つの磁気センサ32A,32B,32C,32DにGMR素子を用い、GMR1,GMR2,GMR3,GMR4とする。なお、以下の方法では事前にゴム層の変位の範囲を格子状に網羅したJ個の基準点pj(j=1,…,J)のGMR素子の出力、3軸変位と力に関する較正値の取得が必要である。
【0094】
I.4つのGMR素子GMR1,GMR2,GMR3,GMR4の出力電圧を計測し、それぞれV
GMRi(i=1,…,4)とする。
【0095】
II.すべてのjに関して
【数1】
を求める。
ただし、
【数2】
は基準点pjにおけるGMRiの出力電圧である。
III.Sjの最小値から3番目までを計測点と近傍にある基準点とし、それぞれ候補点
【数3】
(k=1,…,3)とする。
【0096】
IV.候補点
【数4】
の3軸変位に関する出力電圧の勾配をx,y,z軸で
【数5】
とし、計測点の候補点
【数6】
に対する相対的な3軸変位を
【数7】
とすると次式が成り立つ。
【数8】
【0097】
V.式(2)は各GMR素子について成り立つことから4つの式から成る連立方程式とし、ピボット選択とガウスの消去法により
【数9】
を求める。そして、求めた
【数10】
と候補点
【数11】
の3軸変位を加算し原点からの3軸変位Δx,Δy,Δzを算出する。
VI.上記IVと上記Vとを3つの候補点
【数12】
に対して行い、求められたΔx,Δy,Δzの平均値を柔軟層表面の3軸変位
【数13】
とする。
【0098】
3軸力は前述で求めた柔軟層表面の3軸変位
【数14】
を用いて算出する。この変位とユークリッド距離の最も小さい基準点
【数15】
を選択し、この基準点に対する柔軟層表面の相対的な3軸変位を
【数16】
とする。このとき、基準点の3軸力
【数17】
と、基準点の変位に関する3軸力の勾配を用いて次の3つの式が成り立つ。
【数18】
式(3)〜(5)の各右辺は先に求めた柔軟層表面の3軸変位と基準点
【数19】
の較正値から求められることから、計測したGMR素子の出力電圧から3軸力が算出できる。
【0099】
以上のように、磁気センサは、それらの中心に対して同じ方向に配置されており、ゴム層表面の3軸方向の変位の範囲を格子状に網羅した複数の基準点のそれぞれにおいて取得した、磁気センサの出力並びに、3軸方向の変位に関する磁気センサの出力の勾配および3軸力の勾配である較正値を用いて係数を決定した近似式に磁気センサの出力を代入し、ゴム層に与えられたゴム層表面の変形とそのときの力とを算出することによって、磁気センサが検出する磁束密度の静的情報によるゴム層表面の変位あるいは力ベクトルを計測することができる。
【0100】
磁束密度の静的情報によるゴム層表面の変位あるいは力ベクトルの算出処理は、車両100において行ってもよいし、基板31において行ってもよい。前者の場合、車両100に演算処理部を設けておき、基板31の磁気センサによって磁束密度の測定を行い、測定結果を車両100に伝送して、上記演算処理部が磁束密度の静的情報によるゴム層表面の変位あるいは力ベクトルの算出処理を行う。後者の場合、基板31に演算処理部を設けておき、基板31の磁気センサによって磁束密度の測定を行うとともに、基板31の演算処理部によってゴム層表面の変位あるいは力ベクトルの算出処理を行い、処理の結果を車両100に伝送する。後者の場合、タイヤ1の内部に無線通信部を設けておき、処理の結果を無線通信部から車両100または他の車両に送信してもよい。
【0101】
(すべりの検出方法)
インダクタの発生する誘導起電力は、磁束密度の変化が速い場合に大きくなる。スティックスリップのすべりの際は、変形したゴム層が元の形状に戻ろうとした瞬間にゴム層表面の急激な変位が起こり、特に大きな誘導起電力が発生する。このすべり発生時の誘導起電力の急激な変化を、3σ管理を用いて検出する。すべり開始時の微小かつ急激な変形を検出可能である。
【0102】
3σ管理は、N個(Nは自然数)の出力電圧の平均値A、標準偏差σとした場合、現在の出力電圧V
nowがA−3σ≦V
now≦A+3σであれば検出なし、そうでなければ検出ありとする方法である。本例では4つのインダクタを用いていることから、例えば、すべりの検出条件として4つのインダクタすべての出力が3σ管理で検出ありとなった場合にすべり検出とする。
【0103】
なお、インダクタを設ける個数は4つに限定されることはない。少なくとも1つのインダクタを設ければ、変形したゴム層が元の形状に戻ろうとした瞬間にゴム層表面の急激な変位が起こり、特に大きな誘導起電力が発生するため、スティックスリップのすべりを容易に検出できる。
【0104】
スティックスリップのすべりの検出処理は、車両100において行ってもよいし、基板31において行ってもよい。前者の場合、車両100に演算処理部を設けておき、基板31のインダクタによって磁束密度の検出を行い、検出結果を車両100に伝送して、上記演算処理部がすべりの検出処理を行う。後者の場合、基板31に演算処理部を設けておき、基板31のインダクタによって磁束密度の検出を行うとともに、基板31の演算処理部によってすべりの検出処理を行い、処理の結果を車両100に伝送する。後者の場合、タイヤ1の内部に無線通信部を設けておき、処理の結果を無線通信部から車両100または他の車両に送信してもよい。
【0105】
上述したように、ゴム層表面の変位あるいは力ベクトルを計測する場合は磁石30および磁気センサ32A〜32Dが必要である。また、スティックスリップのすべりを検出する場合は磁石30およびインダクタ33A〜33Dが必要である。したがって、計測または検出する対象に応じて磁気センサまたはインダクタを基板31に設ければよく、必ずしも両者を設ける必要があるわけではない。
【0106】
上記のタイヤ1を車両に複数(左右または前後)設けておき、複数のタイヤ1において各検出部311が検出した結果に基づいて、車両の挙動や力の状態を推定するようにしてもよい。例えば、複数のタイヤ1における磁束密度の動的変化の検出結果である、変形や力の状態を左右または前後のタイヤ間で比較するようにしてもよい。このようにすれば、車両の挙動や力の状態を推定することができる。したがって、路面とタイヤとの摩擦状態や、タイヤにかかる力や変形を総合的に判断して車両の姿勢制御等に用いることができる。車両の走行中に、装着されているタイヤの状態すなわちタイヤにかかる力や変形の情報を車両の制御(例えば、安全運転支援)に用いることで、より高度な安全運転支援が可能になる。
【0107】
なお、すでに述べたように、磁石30は、ゴム層のいずれに設けてもよい。ただし、正確な測定のためには、磁石30と基板31との間に、金属が存在しないことが好ましい。
【0108】
(アーストレッドとの配置関係)
ところで、タイヤの帯電抑制性能を向上させるため、トレッド部6に、低い電気抵抗のアーストレッドを配置することがある(例えば、特許第5344098号公報、特許第4547136号公報、特許第4255435号公報)。アーストレッドを用いた帯電防止構造により、車両走行時にて発生する静電気を空気入りタイヤを介して路面に放出する。この帯電防止構造では、アーストレッドは、その一端がトレッド部6の踏面に露出し、キャップトレッドおよびアンダートレッドを貫通してベルト層に導電可能に接触して配置される。これにより、車両側からの静電気がベルト層からアーストレッドを介して路面に放出されて、車両の帯電が防止される。
【0109】
トレッド部6にアーストレッドを配置すると、静電気が路面に放出される際、アーストレッドに電流が流れる。アーストレッドに流れる電流は、上述した磁石30と基板31との間の磁界に影響を与えて、測定結果にノイズを発生させる場合がある。測定結果への影響を抑制するためには、アーストレッドを、磁石30または基板31が設けられた陸部とは異なる陸部に配置すればよい。
【0110】
図21Aは、アーストレッドを有する空気入りタイヤの一例を示す断面図である。
図21Bから
図21Dは、実施形態に係る空気入りタイヤの一例を示す断面図である。例えば、
図21Aに示すように、アーストレッド42をセンター陸部CRに設ける場合がある。アーストレッド42は、その一端がトレッドゴム15の踏面に露出するとともに、他端が図示しないベルト層に導電可能に接触する。
【0111】
この場合、
図21Bに示すように、セカンド陸部RRに磁石30A、30Bおよび基板31A、31Bを設ければよい。これにより、アーストレッドに流れる電流が測定結果に与える影響を抑制することができる。
【0112】
また、
図21Cに示すように、アーストレッド42をセカンド陸部RRに設ける場合は、センター陸部CRに磁石30および基板31を設ければよい。センター陸部CRではなく、ショルダー陸部SRに磁石30および基板31を設けてもよい。これにより、アーストレッドに流れる電流が測定結果に与える影響を抑制することができる。
【0113】
また、アーストレッド42をセカンド陸部RRに設ける場合は、
図21Dに示すように、センター陸部CRに磁石30および基板31を設けるとともに、ショルダー陸部SRに磁石30C、30Dおよび基板31C、31Dを設けてもよい。これにより、アーストレッドに流れる電流が測定結果に与える影響を抑制することができる。
【0114】
つまり、空気入りタイヤ1は、一端がトレッド部6のゴム層の踏面に露出するアーストレッド42をさらに有していてもよい。その場合、磁石および検出部は、アーストレッド42が設けられていない陸部に設けられることが好ましい。
【0115】
(磁石を設置する陸部)
上述したように、磁石30を設置する場所は、周方向溝で区画される陸部である。その陸部にラグ溝やサイプなどの溝が設けられていると、ラグ溝やサイプの周辺でゴムのひずみが増える。すると、ゴム層表面の変位あるいは力ベクトルやゴム層のすべりの測定結果が、ラグ溝やサイプの局所的な変形に左右される。このように、上記の測定結果がラグ溝やサイプの局所的な変形に左右されることは好ましくない。そこで、磁石30を設置する陸部にはラグ溝やサイプを設けないことが好ましい。この反面、磁石30を少数しか設置しない場合は、センター陸部CRにおける測定を行うニーズが高いと考えられる。
【0117】
センター陸部CRに磁石30を設置する場合、タイヤトレッドのパターンは、例えば、
図22Aに示すように、2本の主溝21に挟まれたセンター陸部CRに赤道面CLが通過している構成であり、かつ、磁石30を設置する陸部は赤道面CLを含むセンター陸部CRであることが好ましい。
図22Aに示すセンター陸部CRには、センター陸部CRを貫通またはセンター陸部CRにおいて終端する溝、例えばラグ溝やサイプなどが設けられていない。
【0118】
これに対し、
図22Bまたは
図22Cに示すように、ラグ溝23が設けられたセンター陸部CRに磁石30を設けることは好ましくない。ラグ溝23は、センター陸部CRにおいて終端しており、ラグ溝23の局所的な変形が測定結果に影響を与えるからである。また、
図22Dに示すように、赤道面CLが通過するセンター陸部が存在しない場合において、ラグ溝23、24が設けられた陸部R1に磁石30を設けることは好ましくない。ラグ溝23、24は、センター陸部CRを貫通しており、ラグ溝23、24の局所的な変形が測定結果に影響を与えるからである。つまり、磁石および検出部は、溝が終端または貫通していない陸部に設けられることが望ましい。
【0119】
なお、ゴム層表面の変位あるいは力ベクトルやゴム層のすべりを測定するためには、ある程度の大きさ以上の磁石を用いることが好ましい。磁石の大きさを考慮すると、
図22Aにおいて、磁石を設置する陸部のタイヤ幅方向の幅CRHは18mm以上であることが好ましい。