特許第6558035号(P6558035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558035電磁式摩擦係合装置及び電磁式摩擦係合装置の組付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558035
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】電磁式摩擦係合装置及び電磁式摩擦係合装置の組付方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/112 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   F16D27/112 W
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-77912(P2015-77912)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-196948(P2016-196948A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】竹内 義揮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小久保 直之
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−20975(JP,A)
【文献】 特開2000−104756(JP,A)
【文献】 特開平2−292524(JP,A)
【文献】 特開2008−207741(JP,A)
【文献】 特開平5−234652(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0188212(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1510715(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 27/10
F16D 49/00− 71/04
B60R 16/02
H02K 5/00− 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容空間が形成されたハウジング部材と、
前記収容空間に少なくとも一部が収容され、前記ハウジング部材に対して相対回転可能な回転部材と、
前記ハウジング部材に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結された第1のクラッチプレートと、
前記回転部材に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結された第2のクラッチプレートと、
前記第1クラッチプレートと前記第2クラッチプレートとを摩擦係合させる電磁力を発生する電磁コイルと、
前記電磁コイルを収容すると共に前記電磁コイルへの通電により発生する磁束の磁路を形成する磁路形成部材と、
一端が外部電源に接続され、他端が前記磁路形成部材及び前記ハウジング部材の外部に通じる開口を有して形成された配置孔に配置され、前記電磁コイルに電力を供給するハーネスと、
前記配置孔の内面と前記ハーネスとの間を封止する封止部材と、を備え、
前記封止部材は、前記磁路形成部材と前記ハウジング部材とにまたがって嵌合して固定される、
電磁式摩擦係合装置。
【請求項2】
前記配置孔は、前記開口側の内面に係合溝が形成されており、
前記封止部材は、前記配置孔の前記係合溝と係合する鍔部を有する、
請求項1に記載の電磁式摩擦係合装置。
【請求項3】
前記電磁コイルに接続された第1のコネクタと、
前記ハーネスの前記他端に接続され、前記第1のコネクタと結合することにより前記電磁コイルに電力を供給する第2のコネクタと、をさらに備え、
前記配置孔には、前記第1及び第2のコネクタと前記ハーネスとが配置されている、
請求項1又は2に記載の電磁式摩擦係合装置。
【請求項4】
同軸状で相対回転可能なハウジング部材及び回転部材と、
前記ハウジング部材側の第1のクラッチプレートと前記回転部材側の第2のクラッチプレートとを非締結状態から締結状態にする電磁力を発生する電磁コイルと、
前記電磁コイルを収容すると共に前記電磁コイルへの通電により発生する磁束の磁路を形成する磁路形成部材と、
前記電磁コイルに接続された第1のコネクタと、
一端が外部電源に接続されたハーネスの他端に接続され、前記第1のコネクタと結合することにより前記電磁コイルに電力を供給する第2のコネクタと、
前記ハウジング部材及び前記磁路形成部材に外部に通じる開口を有して形成された配置孔と、
前記配置孔の内面と前記ハーネスとの間を封止する封止部材とを備える電磁式摩擦係合装置の組付方法であって、
前記ハーネスを前記封止部材に挿通させる第1の工程と、
前記第1の工程後に、前記第2のコネクタを前記封止部材と共に前記配置孔内に進入させて、前記封止部材を前記配置孔の前記開口を閉塞するように固定させると共に、前記第1のコネクタに前記第2のコネクタを接続させる第2の工程とを有する、
電磁式摩擦係合装置の組付方法。
【請求項5】
同軸上で相対回転可能なハウジング部材及び回転部材とを有し、前記ハウジング部材側の第1のクラッチプレートと前記回転部材側の第2のクラッチプレートを、電磁コイルが発生した電磁力によって非締結状態から締結状態にすることにより、前記ハウジング部材と前記回転部材との間に摩擦力を発生させる電磁式摩擦係合装置であって、
前記電磁コイルがコイル用絶縁電線を巻き回して形成された環状の巻線部と、前記巻線部の少なくとも外周面を樹脂で被膜した環状の保持部と、前記保持部上の所定の位置に配置されて電源側コネクタと挿抜接続される電磁コイル側コネクタと、を含む電磁式摩擦係合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁コイルが発生する電磁力によって複数のクラッチプレートを非締結状態から締結状態にする電磁式摩擦係合装置及び電磁式摩擦係合装置の組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のクラッチプレート間に摩擦力を発生させる電磁式摩擦係合装置が、例えば車両の駆動源の駆動力を伝達するための電磁クラッチ装置として用いられている。この種の電磁クラッチには、電磁コイルが発生する電磁力によって非締結状態にある複数のクラッチプレートを締結して、例えばハウジングとシャフトを相対回転できないようにする電磁クラッチ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電磁クラッチ装置は、同軸上で相対回転可能に配置されたハウジング及びシャフトと、ハウジングとシャフトとの間に配置された複数のクラッチプレートと、複数のクラッチプレートを非締結状態から締結状態にする電磁力を発生させる電磁コイルとを備えている。
【0004】
この種の電磁クラッチ装置では、電磁コイルに外部電源から電力を供給するためにハーネスが電磁コイルに接続されている。このハーネスは、ハウジングに設けられた貫通孔を通って電磁コイルとの接触部から外部へと導出されている。ハウジングの貫通孔には、弾性を有するグロメットが組み込まれていて、ハウジングの貫通孔の内周面とハーネスとの間を封止しており、貫通孔から異物、湿気等が混入しないようにしてハウジング内部の電磁コイル等が保護されている。グロメットにはハーネスを挿通する挿通孔が形成されており、ハーネスはこの挿通孔を通って外部へ導出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−139164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の電磁クラッチ装置では、ハーネスが挿通されたグロメットをハウジングの貫通孔に組み付けるとき、例えばハーネスが貫通孔の内周面と干渉しないようにして組付けるため、組付けに必要なスペースが制限され、あるいは貫通孔の内周面との干渉に起因してハーネスが断線するおそれがあることから、組付作業が困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、ハーネスが挿通されたグロメットの組付性を向上させることが可能な電磁式摩擦係合装置及び電磁式摩擦係合装置の組付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、内部に収容空間が形成されたハウジング部材と、前記収容空間に少なくとも一部が収容され、前記ハウジング部材に対して相対回転可能な回転部材と、前記ハウジング部材に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結された第1のクラッチプレートと、前記回転部材に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結された第2のクラッチプレートと、前記第1クラッチプレートと前記第2クラッチプレートとを摩擦係合させる電磁力を発生する電磁コイルと、前記電磁コイルを収容すると共に前記電磁コイルへの通電により発生する磁束の磁路を形成する磁路形成部材と、一端が外部電源に接続され、他端が前記磁路形成部材及び前記ハウジング部材の外部に通じる開口を有して形成された配置孔に配置され、前記電磁コイルに電力を供給するハーネスと、前記配置孔の内面と前記ハーネスとの間を封止する封止部材と、を備え、前記封止部材は、前記磁路形成部材と前記ハウジング部材とにまたがって嵌合して固定される、電磁式摩擦係合装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決するために、同軸上で相対回転可能なハウジング部材及び回転部材とを有し、前記ハウジング部材側の第1のクラッチプレートと前記回転部材側の第2のクラッチプレートを、電磁コイルが発生した電磁力によって非締結状態から締結状態にすることにより、前記ハウジング部材と前記回転部材との間に摩擦力を発生させる電磁式摩擦係合装置であって、前記電磁コイルがコイル用絶縁電線を巻き回して形成された環状の巻線部と、前記巻線部の少なくとも外周面を樹脂で被膜した環状の保持部と、前記保持部上の所定の位置に配置されて電源側コネクタと挿抜接続される電磁コイル側コネクタと、を含む電磁式摩擦係合装置を提供する。
【0010】
またさらに、本発明は、上記課題を解決するために、同軸状で相対回転可能なハウジング部材及び回転部材と、前記ハウジング部材側の第1のクラッチプレートと前記回転部材側の第2のクラッチプレートとを非締結状態から締結状態にする電磁力を発生する電磁コイルと、前記電磁コイルを収容すると共に前記電磁コイルへの通電により発生する磁束の磁路を形成する磁路形成部材と、前記電磁コイルに接続された第1のコネクタと、一端が外部電源に接続されたハーネスの他端に接続され、前記第1のコネクタと結合することにより前記電磁コイルに電力を供給する第2のコネクタと、前記ハウジング部材及び前記磁路形成部材に外部に通じる開口を有して形成された配置孔と、前記配置孔の内面と前記ハーネスとの間を封止する封止部材とを備える電磁式摩擦係合装置の組付方法であって、前記ハーネスを前記封止部材に挿通させる第1の工程と、前記第1の工程後に、前記第2のコネクタを前記封止部材と共に前記配置孔内に進入させて、前記封止部材を前記配置孔の前記開口を閉塞するように固定させると共に、前記第1のコネクタに前記第2のコネクタを接続させる第2の工程とを有する、電磁式摩擦係合装置の組付方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電磁式摩擦係合装置及び電磁式摩擦係合装置の組付方法によれば、ハーネスが挿通されたグロメットの組付性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る電磁クラッチ装置を示す断面図である。
図2】グロメット等が取り外された状態の電磁クラッチ装置の断面図である。
図3】電磁クラッチ装置の動作状態を示す断面図である。
図4】グロメット等の組付方法について説明するための模式図であり、(a)はグロメットとハーネスとを組付ける状態、(b)はグロメット及びハーネスを本体に組付ける状態、(c)は組付が完了した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
以下、本実施の形態に係る電磁式摩擦係合装置について、図1乃至図4を参照して説明する。本実施の形態では、電磁式摩擦係合装置が電磁コイルへの通電により発生する磁力によってクラッチプレート間に摩擦力を発生させる電磁クラッチ装置として構成され、電磁コイルへの通電時にシャフトに制動力を発生させるように機能する場合について説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る電磁クラッチ装置1を示す断面図である。図2は、グロメット等が取り外された電磁クラッチ装置1を示す断面図である。図1及び図2では、回転軸線Oに沿った電磁クラッチ装置1の断面の上側の半分を示している。なお、以下の説明では、回転軸線Oに対して平行な方向を単に軸方向ということがある。
【0015】
図1において、電磁クラッチ装置1は、共通の回転軸線Oを中心として相対回転可能なハウジング部材としてのハウジング2及び回転部材としてのシャフト3と、ハウジング2とシャフト3との間の相対回転を許容し、または禁止する電磁ユニット4とを備えている。
【0016】
電磁ユニット4は、電磁力を発生する電磁コイル40と、電磁コイル40への通電により発生する磁束の磁路を形成する磁路形成部材41と、ハウジング2に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されたアウタクラッチプレート42と、シャフト3に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されたインナクラッチプレート43と、電磁コイル40が発生する磁力によって磁路形成部材41側に引き寄せられるアーマチャ44と、複数のアウタクラッチプレート42の間に配置され、アウタクラッチプレート42同士を軸方向に離隔する皿バネ45とを有している。
【0017】
電磁クラッチ装置1は、電磁ユニット4を作動させることにより、アウタクラッチプレート42とインナクラッチプレート43とが締結して、その間に発生する摩擦力によってハウジング2とシャフト3との相対回転を抑制あるいは禁止する。
【0018】
ハウジング2は、例えばアルミニウム等の非磁性金属からなり、円筒状の円筒部20と、円筒部20の外周面から外方に向かって立設されたフランジ部21と、円筒部20の後端側(図1における右側)における内周面から内方に向かって張り出した張出部22とを一体に有している。
【0019】
円筒部20は、環状の内径が異なる大径筒部201及び小径筒部202を有し、これらの大径筒部201及び小径筒部202が軸方向に並列している。大径筒部201の内周部には、軸方向に延在する複数のスプライン突起からなるスプライン係合部201aが形成されている。小径筒部202の内側には、後述する磁路形成部材41が例えば圧入によって固定されている。フランジ部21には、例えば車体に搭載された回転体に電磁クラッチ装置1を取り付けるためのボルト挿通孔21aが形成されている。
【0020】
張出部22は環状であり、その周方向の一箇所には、外部に通じる開口としての開口部220を有し、一端が図略の外部電源に接続されたハーネス8及びハーネス8の他端に接続された第2のコネクタ6をハウジング2内の電磁コイル40側に導入して収容するための導入孔22aが形成されている。この導入孔22aは、軸方向に貫通して形成された貫通孔であり、軸方向に沿って見た場合の形状が円形である。また、張出部22の開口部220は封止部材としての略円筒状のグロメット7によって閉塞されている。導入孔22aの内面には、グロメット7が係合する環状の係合溝22bが形成されている。
【0021】
シャフト3は、ハウジング2の大径筒部201に対向する大径部31と、ハウジング2の小径筒部202に対向する小径部32と、大径部31と小径部32との間に形成される中径部33とを一体に有している。つまり、シャフト3の外周面は、それぞれ外径が異なる大径部31,中径部33,及び小径部32によって軸方向に段差を有する段差状に形成されている。大径部31の外周部には、軸方向に延在する複数のスプライン突起からなるスプライン係合部31aが形成されている。小径部32の外周部には、軸受11及びシール部材12が配置されている。
【0022】
磁路形成部材41は、第1乃至第3環状部材411〜413が溶接等により一体に結合してなり、第1環状部材411は第2環状部材412の外側に、また第3環状部材413は第2環状部材412の内側に、それぞれ配置されている。
【0023】
第1環状部材411及び第3環状部材413は、例えば鉄系金属からなる磁性体であり、第2環状部材412は、例えばオーステナイト系ステンレス等からなる非磁性体である。第2環状部材412と第1環状部材411及び第3環状部材413とは、磁路形成部材41の軸方向の一端部において、溶接によって結合されている。
【0024】
電磁コイル40は、エナメル線からなる巻線400と、巻線400を収容する樹脂からなる環状の保持部材401とを有している。保持部材401の軸方向端面の周方向の1箇所には、第2のコネクタ6と接続される第1のコネクタ5が接続されている。第1のコネクタ5には、巻線400の末端が接続された図略の端子が設けられ、この端子に第2のコネクタ6を介してハーネス8に収容される導線80が電気的に接続される。 また、電磁コイル40は、第1環状部材411と第3環状部材433との間の第2環状部材412側に形成された環状空間41aに収容されている。
【0025】
図2に示すように、第1環状部材411及び第3環状部材413には、その周方向の1箇所が軸方向に開口した収容孔46が形成され、この収容孔46に第1のコネクタ5及び第2のコネクタ6が収容されている。収容孔46は、軸方向の電磁コイル40側で環状空間41aと連通し、軸方向の電磁コイル40とは反対側でハウジング2における張出部22の導入孔22aと連通している。換言すれば、電磁コイル40が収容される環状空間41aは、周方向の1箇所が軸方向に開口し、この開口を通じて筒状の収容孔46が連通している。
【0026】
収容孔46は、その内面が軸方向に小径部460と大径部461とが連続した段付き形状であり、小径部460に第1のコネクタ5及び第2のコネクタ6が収容され、大径部461にグロメット7の前端部(図1及び2における軸方向左側の端部)収容されている。収容孔46の大径部461は張出部22の導入孔22aと連通し、大径部461及び導入孔22aは、その内径が同一である。また、収容孔46は、軸方向に沿って見た形状が円形である。なお、本実施の形態では、収容孔46と張出部22の導入孔22aとが、本発明における「配置孔」を構成する。
【0027】
導線80は、ハーネス8に被膜されており、その一端が第2のコネクタ6に電気的に接続され、他端が図略の外部電源に接続されている。第2のコネクタ6は、電磁クラッチ装置1に組付けられた状態において、第1のコネクタ5とは反対側を指向する端面6aがグロメット7と接触し、第1のコネクタ5と結合した状態で収容孔46に収容されている。
【0028】
グロメット7は、必須ではないが、例えば磁路の磁気抵抗を低下させる磁性粉を混入したゴム製の弾性を有する部材であってもよく、ハーネス8を密着させて挿通する挿通孔7aが中心部に形成された円筒部70と、円筒部70の軸方向の後端側における外周面から径方向の外方へ突出した鍔部71とを一体に有している。
【0029】
図1において、グロメット7の円筒部70が磁路形成部材41における収容孔46の大径部461とハウジング2における張出部22の導入孔22aに収容されている。すなわち、グロメット7は、磁路形成部材41及びハウジング2にまたがって篏合固定されている。
【0030】
グロメット7の挿通孔7aの内面には、例えば径方向の内方に突出した図略の複数の突起が形成されており、この複数の突起が弾性圧縮された状態でハーネス8の外面に密着することで、ハーネス8とグロメット7の挿通孔7aの内面との間が封止されている。なお、グロメット7の挿通孔7a内のシール方法についてはこれに限定されず、挿通孔7a内にシール剤を充填して、グロメット7の挿通孔7aとハーネス8との間のシール性を確保してもよい。
【0031】
円筒部70の外周には、径方向の外側に突出した複数(本実施の形態では3箇所)のシール突起70aがそれぞれ軸方向に間隙を有して形成されている。このシール突起70aは、周方向の全周にわたって形成されており、その外径が収容孔46の大径部461及びハウジング2の導入孔22aの内径よりも僅かに大きく設定されている。この寸法構成により、グロメット7が組み付けられた状態において、シール突起70aが導入孔22aの内面、及び収容孔46の大径部461の内面に弾性圧縮された状態で密着する。これにより、ハーネス8と導入孔22a及び収容孔46の大径部461の内面との間のシール性が確保される。
【0032】
また、円筒部70の電磁コイル40を指向する軸方向端面70bは、その内周側が第2のコネクタ6の端面6aと接触し、収容孔46の小径部460及び大径部461との間に形成された段差部462に接触している。鍔部71は、ハウジング2の張出部22における係合溝22b内に収容され、グロメット7の軸方向の電磁コイル40とは反対側への移動を規制している。これにより、グロメット7のハウジング2からの抜け止め防止が図られている。
【0033】
アウタクラッチプレート42及びインナクラッチプレート43は、鉄系金属等の磁性体からなる平坦な環板状であり、軸方向に沿って交互に配置され、ハウジング2の収容空間2aに封入された潤滑油によって摩擦摺動が潤滑される。
【0034】
アウタクラッチプレート42の外周側の端部には、ハウジング2における大径筒部201のスプライン係合部201aと係合する複数の係合突起421が形成されている。複数の係合突起421がハウジング2のスプライン係合部201aに係合することにより、アウタクラッチプレート42は、ハウジング2に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されている。また、アウタクラッチプレート42には、周方向に沿って延びる複数の円弧溝422が形成されている。
【0035】
インナクラッチプレート43の内周側の端部には、シャフト3における大径部31のスプライン係合部31aと係合する複数の係合突起431が形成されている。複数の係合突起431がシャフト3のスプライン係合部31aに係合することにより、インナクラッチプレート43は、シャフト3に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されている。また、インナクラッチプレート43には、周方向に沿って延びる複数の円弧溝432が形成されている。複数の円弧溝432は、アウタクラッチプレート42の複数の円弧溝422と相俟って、電磁コイル40への通電により発生する磁束の短絡を抑制している。
【0036】
アーマチャ44は、鉄系金属等の磁性体からなる環板状の部材であり、磁路形成部材41との間にアウタクラッチプレート42及びインナクラッチプレート43を位置させるよう配置されている。アーマチャ44の外周側の端部には、ハウジング2の大径筒部201におけるスプライン係合部201aに係合する複数の係合突起441が形成されている。複数の係合突起441がハウジング2のスプライン係合部201aに係合することにより、アーマチャ44は、ハウジング2に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されている。
【0037】
また、アーマチャ44は、ハウジング2のスプライン係合部201aの端部に嵌着された止め部材としてのスナップリング13によって磁路形成部材41から離間する方向への軸方向移動が規制されている。アーマチャ44の外周部には、軸方向に窪んだ窪部440が形成され、アーマチャ44がスナップリング13に当接したとき、スナップリング13は、この窪部440に収容される。これにより、電磁クラッチ装置1の軸方向の薄型化が図られている。
【0038】
皿バネ45は、例えばバネ鋼等の金属からなる板状の弾性体であり、2枚のアウタクラッチプレート42の間であって、インナクラッチプレート43の外側にあたる位置に配置されている。
【0039】
皿バネ45を挟む2枚のアウタクラッチプレート42のうち、磁路形成部材41側のアウタクラッチプレート42を第1のアウタクラッチプレート42Aとし、アーマチャ44側のアウタクラッチプレート42を第2のアウタクラッチプレート42Bとすると、アーマチャ44の軸方向の位置にかかわらず、皿バネ45の内周端部が第1のアウタクラッチプレート42Aに常に接触し、皿バネ45の外周端部が第2のアウタクラッチプレート42Bに常に接触する。
【0040】
以上、図1乃至図2において説明した構成において、電磁クラッチ装置1は以下のように動作する。この電磁クラッチ装置1の動作について、図3を参照して説明する。図3は、図1に示した電磁クラッチ装置1の動作状態を示す断面図である。
【0041】
電磁コイル40の巻線400に通電されると、図3に示すように、第1環状部材411、アウタクラッチプレート42ならびにインナクラッチプレート43の外周部、アーマチャ44、アウタクラッチプレート42及びインナクラッチプレート43の内周部、第3環状部材413、及びグロメット7を経由する磁路Gに磁束が発生する。すなわち、磁路形成部材41の第1環状部材411ならびに第3環状部材413、アウタクラッチプレート42、インナクラッチプレート43、アーマチャ44、及びグロメット7は、電磁コイル40への通電により発生する磁束の磁路を構成する。
【0042】
シャフト3の回転中に電磁コイル40に通電されると、アーマチャ44は磁路Gに形成される磁束の磁力によって磁路形成部材41側に吸引され、アウタクラッチプレート42及びインナクラッチプレート43を軸方向に押圧する。これにより、アウタクラッチプレート42とインナクラッチプレート43とが摩擦摺動し、アウタクラッチプレート42とインナクラッチプレート43との間に発生する摩擦力によってシャフト3の回転が制動される。すなわち、本実施の形態では、電磁クラッチ装置1が電磁ブレーキとして機能する。
【0043】
一方、電磁コイル40への通電が遮断されると、皿バネ45の弾性力(復元力)によって2枚のアウタクラッチプレート42(第1のアウタクラッチプレート42A及び第2のアウタクラッチプレート42B)が離隔し、これに伴ってアーマチャ44が初期の位置へ復帰してスナップリング13に接触する。これにより、アウタクラッチプレート42とインナクラッチプレート43とが摩擦摺動しなくなり、シャフト3への制動力が解除される。
【0044】
次に、電磁クラッチ装置1の組付時において、第1のコネクタ5に第2のコネクタ6を接続する際の組付手順について図4を参照して説明する。図4は、組付手順を模式的に説明するための説明図であり、(a)はグロメット7とハーネス8の組付を示し、(b)がハーネス8及びグロメット7をハウジング2内への組付を示し、(c)は組付が完了した状態を示す。
【0045】
図4(a)に示すように、先ず、第2のコネクタ6の端面6aとグロメット7の軸方向端面70bを対向させた状態で、グロメット7の挿通孔7aにハーネス8を挿通させて、第2のコネクタ6の端面6aにグロメット7の軸方向端面70bが近づく方向(図4(a)に示す矢印方向)に移動させて、第2のコネクタ6の端面6aにグロメット7の軸方向端面70bを接触させる(図4(b)参照)。
【0046】
次に、図4(b)に示すように、第2のコネクタ6の端面6aとグロメット7の軸方向端面70bを接触させた状態で、第2のコネクタ6及びグロメット7をハウジング2の外部から、ハウジング2における張出部22の導入孔22a内へ軸方向に沿って挿入する。この際、グロメット7のシール突起70aが導入孔22aの内面と軸方向に摺動して、挿入される。上記した作業工程が、本発明における「第1の工程」の一態様である。
【0047】
そして、グロメット7を軸方向の電磁コイル40側(図4(b)に示す矢印方向)に押圧して第2のコネクタ6を収容孔46の大径部461内に進入させると、第2のコネクタ6がグロメット7を介して軸方向の押圧力を受け、第1のコネクタ5に接続される。この際、グロメット7の軸方向端面70bが収容孔46の段差部462に接触すると共に、グロメット7の鍔部71が係合溝22bに係合する。これにより、ハーネス8及びハーネス8に接続された第2のコネクタ6と、グロメット7とを同時にハウジング2内へ組み付けられる。そうすると、図4(c)に示すように、電磁コイル40に第1のコネクタ5及び第2のコネクタ6を介して図略の外部電源から電力を供給することが可能な状態となり、ハーネス8が挿通されたグロメット7の電磁クラッチ装置1への組付が完了する。なお、上記した作業工程が、本発明における「第2の工程」の一態様である。
【0048】
(本実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態に係る電磁クラッチ装置1によれば、以下に述べる作用及び効果が得られる。
【0049】
(1)電磁クラッチ装置1は、電磁コイル40に設けられた第1のコネクタ5と、ハーネス8の一端に接続された第2のコネクタ6と、ハーネス8を挿通させたグロメット7とを有しているので、グロメット7の組付時において、グロメット7をハウジング2の外部から固定するとともに、第1のコネクタ5に第2のコネクタ6を接続することができる。これにより、例えば、特許文献1に記載の電磁クラッチ装置のように電磁コイルに接続されたハーネスが挿通されたグロメットを、ハウジングに組み付ける場合はハーネスが貫通孔の内周に干渉するおそれがあるが、本実施の形態によれば、このような干渉を回避しつつ、容易に組み付けることができる。すなわち、ハーネス8が挿通されたグロメット7のハウジング2への組付性が向上する。
【0050】
(2)ハウジング2における張出部22の導入孔22aの内面には、グロメット7の鍔部71が係合する係合溝22bが形成されているので、グロメット7の軸方向の移動が規制されてハウジング2からの脱落を防止することができる。
【0051】
(3)グロメット7は、磁路形成部材41及びハウジング2にまたがって嵌合固定されているので、例えばハウジング2のみに固定されている場合に比較して、グロメット7がより強固に保持されて、上記(2)に記載の効果をさらに向上させることができる。また、上述したように、グロメット7が磁路形成部材41及びハウジング2にまたがって嵌合固定されているので、単一の部品で磁路形成部材41及びハウジング2に対するシール性を確保することができる。詳細には、例えば、グロメット7がハウジング2のみに固定されている場合は、アウタクラッチプレート42及びインナクラッチプレート43が収容された空間に封入された潤滑材が収容孔46内に流入するのを防止するためのOリングが別途必要となるが、本実施の形態によればグロメット7がこのOリングの役割を果たすため、部品点数を削減することができる。
【0052】
(付記)
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0053】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、本実施の形態では、電磁クラッチ装置1が電磁ブレーキとして機能する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えばハウジング2がシャフト3に対して同軸上で相対回転可能な回転体であり、ハウジング2の回転力をアウタクラッチプレート4及びインナクラッチプレート43を介してシャフト3へトルク伝達可能な駆動力伝達装置として機能させてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…電磁クラッチ装置、2…ハウジング、2a…収容空間、3…シャフト、4…電磁ユニット、5…第1のコネクタ、6…第2のコネクタ、6a…端面、7…グロメット、7a…挿通孔、8…ハーネス、11…軸受、12…シール部材、13…スナップリング、20…円筒部、21…フランジ部、21a…ボルト挿通孔、22…張出部、22a…導入孔、22b…係合溝、31…大径部、31a…スプライン係合部、32…小径部、33…中径部、40…電磁コイル、41…磁路形成部材、41a…環状空間、42,42A,42B…アウタクラッチプレート、43…インナクラッチプレート、44…アーマチャ、45…皿バネ、46…収容孔、80…導線、70…円筒部、70a…シール突起、70b…軸方向端面、71…鍔部、201…大径筒部、201a…スプライン係合部、202…小径筒部、220…開口部、221…拡径部、400…巻線、401…保持部材、402…コネクタ、411…第1環状部材、412…第2環状部材、413…第3環状部材、421…係合突起、422…円弧溝、431…係合突起、432…円弧溝、433…環状部材、440…窪部、441…係合突起、460…小径部、461…大径部、462…段差部
図1
図2
図3
図4