特許第6558042号(P6558042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558042
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20190805BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B60N2/427
   B60N2/68
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-82861(P2015-82861)
(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公開番号】特開2016-199238(P2016-199238A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慎司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩久
(72)【発明者】
【氏名】若山 修平
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−166658(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/033963(WO,A1)
【文献】 特開2002−012072(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/093644(WO,A1)
【文献】 特開平11−115594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の背部に位置するシートバックフレームと、乗員の臀部下方に位置するシートクッションフレームと、を有して構成されたシートフレームを骨格として有する車両用シートであって、
前記シートクッションフレームは、車両幅方向において離隔して配置される複数のクッション側サイドフレームにより側部が規定されており、
少なくとも一つの前記クッション側サイドフレームには、上方から下方へと切り欠かれた切欠き部を有する変形部が形成されていて、
前記変形部は前記クッション側サイドフレームの上端から下端まで形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記シートバックフレームの下端部には、該シートバックフレームの前記シートクッションフレームに対する角度を変化させるリクライニング機構が配置されており、
前記変形部は、前記リクライニング機構よりも前方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートバックフレームの下端部と前記クッション側サイドフレームの後端部とは、直接的又は間接的に連結されており、
前記変形部は、前記クッション側サイドフレーム上にある前記シートバックフレームとの連結点よりも前方に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シートクッションフレームの下方には、前記車両用シートを車体フロアに対して移動させるためのレール装置が備えられ、
該レール装置は、前後方向に延びるように前記車体フロアに固定されるロワレールと、該ロワレールに対してスライドするアッパレールと、を備えて構成されており、
前記シートクッションフレームは、直接的若しくは間接的に前記アッパレールに連結されるものであり、
前記変形部は、前後方向において、前記アッパレールの後端部と前端部との間に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記切欠き部の上下方向に延びる両側辺からは、外側へ向かって突出する突出縁であるフランジ部が各々形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記変形部は、前記切欠き部と、該切欠き部の下部に形成される屈曲部と、から形成されており、
該屈曲部は、上下方向に延びるとともに外側方向に向かって突出するよう形成された内側視溝状の部分であることを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記変形部の前記切欠き部と前記屈曲部とは連続して形成されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記変形部の前記切欠き部と前記屈曲部との間には、前記切欠き部の切欠きが延びる方向に対して直交する方向に切り欠かれた第二の切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに係り、特に衝突時等の衝撃エネルギーが付加された際、衝撃荷重を低減することができる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車などの車両に衝突等が起こった際には、車両用シートに大きな荷重がかかることとなる。
【0003】
一般に、車両用シートには、このような状況への対策が採られている。例えば、一般的には、車両用シートの骨格は、乗員の背部を支持するシートバックフレームと、乗員の臀部を支持するシートクッションフレームとを連結することにより構成されており、これらシートバックフレームやシートクッションフレームに衝突時の荷重を吸収する構造が形成される。
【0004】
例えば、特許文献1では、後面衝突が起き、シートバックフレームの上部に後ろ向きの荷重が加わった場合、サイドフレーム(特許文献1では「サイドメンバ」と記載されている)が曲がる構成とし、後方移動時に乗員に加わる荷重を緩和する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4200580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されたシートバックフレームは、後面衝突時等、乗員の後方移動に伴って後方への荷重が加わると、サイドフレームが屈曲し、シートバックフレームによって後方移動の衝撃エネルギーが吸収される。しかし、特許文献1のシートバックフレームは、サイドフレームの変形箇所(屈曲箇所)を限定して変形させることが不可能であるため、サイドフレームの上下方向にわたって何れかの点において屈曲する。その結果、屈曲点を限定することができないため、シートバックフレーム全体に衝撃エネルギーが伝達され、衝撃エネルギーの吸収効率が低下し、安定して衝撃エネルギーを緩和することが難しい。
【0007】
そこで、本出願人は、シートバックフレームを変形させることにより衝撃エネルギーを吸収する技術に関し、可撓性のくびれ部を下部フレームに形成することにより、後面衝突時等、衝撃エネルギーが加わった際にくびれ部を優先的に屈曲させ、衝撃エネルギーを効率よく吸収する技術を提案している(特願2010−273867)。このように、シートバックフレームの変形箇所を限定することにより、効率よく衝撃エネルギーを吸収することが可能となる。
【0008】
このように、様々な技術が提供されているが、シートクッションフレームにおいて、当該衝撃を吸収する技術もまた望まれていた。
【0009】
加えて、後面衝突ではなく、特に前面衝突時において、通常レール装置(シートクッションフレームに連結されて車両用シートを車体フロアに対し相対的にスライド移動させる装置である)に連結されているシートクッションフレームにて衝突による荷重を吸収し、レール装置への影響を小さくするための技術が望まれていた。
【0010】
本発明の目的は、衝突時、特に前面衝突時の衝撃エネルギーが加わった際、シートが撓み変形することにより衝撃エネルギーを吸収する車両用シートにおいて、衝突時、効率良く衝撃荷重を吸収し、レール装置等の周辺部材への影響を小さくすることを可能とした車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明の車両用シートによれば、乗員の背部に位置するシートバックフレームと、乗員の臀部下方に位置するシートクッションフレームと、を有して構成されたシートフレームを骨格として有する車両用シートであって、前記シートクッションフレームは、車両幅方向において離隔して配置される複数のクッション側サイドフレームにより側部が規定されており、少なくとも一つの前記クッション側サイドフレームには、上方から下方へと切り欠かれた切欠き部を有する変形部が形成されていて、前記変形部は前記クッション側サイドフレームの上端から下端まで形成されていることにより解決される。
【0012】
このように、本発明に係る車両用シートにおいては、クッション側サイドフレームに切欠き部を有する変形部を形成した。
【0013】
当該構成により、シートクッションフレームに大きな衝撃荷重が付加された際には、このクッション側サイドフレームに形成された切欠き部を優先的に潰す(つまり、切欠き部の空隙を狭める)ことができ、よって、この切欠き部により衝撃荷重吸収することができる。
【0014】
よって、シートクッションに間接的若しくは直接的に連結される周辺部材への影響を緩和することができる。
【0015】
このとき、請求項2に記載のように、前記シートバックフレームの下端部には、該シートバックフレームの前記シートクッションフレームに対する角度を変化させるリクライニング機構が配置されており、前記変形部は、前記リクライニング機構よりも前方に設けられていると好適である。
【0016】
更に、このとき、請求項3に記載のように、前記シートバックフレームの下端部と前記クッション側サイドフレームの後端部とは、直接的又は間接的に連結されており、前記変形部は、前記クッション側サイドフレーム上にある前記シートバックフレームとの連結点よりも前方に設けられていると好適である。
【0017】
このように構成されていると、シートバックフレームから入力される大きな衝撃荷重を効率良く吸収することができる。
【0018】
つまり、請求項2及び請求項3のような位置に変形部(切欠き部)を形成することにより、シートバックフレームとの連結部分付近に変形部(切欠き部)を形成することとなるため、シートバックフレームから入力される大きな衝撃荷重を直近にて効率良く吸収することができる。
【0019】
また更にこのとき、請求項4に記載のように、前記シートクッションフレームの下方には、前記車両用シートを車体フロアに対して移動させるためのレール装置が備えられ、該レール装置は、前後方向に延びるように前記車体フロアに固定されるロワレールと、該ロワレールに対してスライドするアッパレールと、を備えて構成されており、前記シートクッションフレームは、直接的若しくは間接的に前記アッパレールに連結されるものであり、前記変形部は、前後方向において、前記アッパレールの後端部と前端部との間に形成されていると好適である。
【0020】
このように構成されていると、アッパレールの上方部分で大きな衝撃荷重を吸収することができるため、レール装置への衝撃荷重の影響を低減させることができる。
【0021】
よって、アッパレールとの接続部分の強度を上昇させることなく、衝撃荷重の影響を低減させることができる。
【0022】
また、さらに良好な構成として、請求項5に記載のように、前記切欠き部の上下方向に延びる両側辺からは、外側へ向かって突出する突出縁であるフランジ部が各々形成されているとよい。
【0023】
このように構成されていると、切欠き部が潰れた際に、フランジ部同士が接触し、過剰な潰れを抑制するストッパとなる。
【0024】
よって、切欠き部の潰れ具合をコントロールすることができる。
【0025】
また、フランジ部同士の面接触となるため、効率的に両者が接触してストッパ機能を果たすことができる。
【0026】
また、請求項6に記載のように、前記変形部は、前記切欠き部と、該切欠き部の下部に形成される屈曲部と、から形成されており、該屈曲部は、上下方向に延びるとともに外側方向に向かって突出するよう形成された内側視溝状の部分であると好適である。
【0027】
このように構成されていると、切欠き部に加えて溝状の屈曲部もまた潰れることができ、衝撃荷重の吸収がより効率的になる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明によれば、シートクッションフレームに大きな衝撃荷重が付加された際に、クッション側サイドフレームに形成された切欠き部を優先的に潰して、衝撃荷重吸収することができる。よって、シートクッションに間接的若しくは直接的に連結される周辺部材への影響を緩和することができる。
【0029】
請求項2及び請求項3の発明によれば、シートバックフレームから入力される大きな衝撃荷重を効率良く吸収することができる。
【0030】
請求項4の発明によれば、レール装置への衝撃荷重の影響を低減させることができ、アッパレールとの接続部分の強度を上昇させることなく、衝撃荷重の影響を低減させることができる。
【0031】
請求項5の発明によれば、切欠き部が潰れた際に、過剰な潰れを抑制することができる。
【0032】
請求項6の発明によれば、衝撃荷重の吸収がより効率的になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係るシートフレームの概略斜視図である。
図2図1のX視である。
図3】本発明の一実施形態に係るサイドフレームを示す要部側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る切欠き部の機能を示す説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係るフランジ部の機能を示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る切欠き部の位置構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。また、本明細書において、乗物とは、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物、地上以外を移動する航空機や船舶など、シートを装着できる移動用のものをいうものとする。また通常の着座荷重とは、着座するときに生じる着座衝撃、乗物の急発進によって生じる加速時の荷重などを含むものである。また、前面衝突時の衝撃エネルギーとは、前面衝突時に生じる大きな荷重によるエネルギーであって、前方側からの乗物による大きな追突、走行時における大きな衝突等に伴うものであり、通常の着座時に生じる荷重と同様な荷重領域の荷重によるエネルギーは含まないものである。
【0035】
また、左右方向とは、車両前方を向いた状態での左右方向を意味し、後述するシートバックフレーム1及びシートクッションフレーム2の幅方向と一致する方向である。また、前後方向とは、乗員が着座した状態での前後方向を意味するものである。
【0036】
図1乃至図6は本発明の一実施形態に係るもので、図1はシートフレームの概略斜視図、図2図1のX視、図3はサイドフレームを示す要部側面図、図4は切欠き部の機能を示す説明図、図5はフランジ部の機能を示す説明図、図6は切欠き部の位置構成を示す説明図である。
【0037】
<<車両用シートSの基礎構成>>
図1乃至図3を参照して、実施形態に係る車両用シートSについて説明する。
【0038】
車両用シートSは、図1で示すように、シートフレームFを骨格と有するシートであり、使用時には、このシートフレームFにクッションパッドを配置するとともにその表面を表皮材で被覆した状態となるものである。
【0039】
なお、図示は省略しているが、完成品には公知のヘッドレストが備えられており、このヘッドレストは、例えば、頭部の芯材(不図示)にクッションパッド及び表皮材が装着されて形成されている。また、下方からはシートバックフレーム1と連結するためのヘッドレストピラー(不図示)が、突出している。なお、符号Hは、ヘッドレストピラーを支持するピラー支持部である。
【0040】
車両用シートSのシートフレームFは、図1で示すように、シートバックフレーム1、シートクッションフレーム2から構成されている。
【0041】
シートバックフレーム1は、乗員の背部を支持するものであり、クッションパッドと表皮材を装着されて車両用シートSのシートバックを構成する。
【0042】
また、シートクッションフレーム2は、乗員の臀部を下方から支持するものであり、同様に、クッションパッドと表皮材を装着されて車両用シートSの着座部を構成する。
【0043】
そして、シートバックフレーム1の下端とシートクッションフレーム2の後端とは連結部材3,3を介して連結されており、リクライニング機構11により、シートクッションフレーム2に対するシートバックフレーム1の角度は調整可能となるように構成されている。
【0044】
≪シートバックフレーム≫
図1乃至図3に示すように、シートバックフレーム1は、車幅方向に離隔して配置されたシートバック側サイドフレーム1a,1aと、これらの上端を架橋するように配置された略コ字形状の上部フレーム1bと、で構成された枠状(下方に開口のある枠状)の部材である。
【0045】
上部フレーム1bは、両自由端部が各々シートバック側サイドフレーム1a,1a上端部に連結された上方に凸の略コ字型パイプであり、その上方辺にはピラー支持部Hが溶接されている。
【0046】
また、シートバック側サイドフレーム1a,1aの下端部は各々、シートクッションフレーム2の後端側に、リクライニング機構11及び連結部材3,3を介して連結されている。
【0047】
≪シートクッションフレーム≫
図1乃至図3に示すように、シートクッションフレーム2を構成する各クッション側サイドフレーム2aは、前後方向に延出した部材であり、後端部にてシートバックフレーム1と連結している。
【0048】
また、左右方向一端側(左側)のクッション側サイドフレーム2aと、左右方向他端側(右側)のクッション側サイドフレーム2aとは、互いに平行な状態で左右方向に離間している。クッション側サイドフレーム2a,2a同士は、後端側で後側連結パイプ2bを介して、前端上方側で前側上部連結パイプ2cを介して、それぞれ連結している。
【0049】
この後側連結パイプ2bは、車両用シートSの幅方向一端から他端に亘って伸びたパイプ部材である。
【0050】
また、前側連結パイプ2cは、略コ字形状に屈曲形成されたパイプ部材であり、両自由端は、クッション側サイドフレーム2a,2aの前端部に連結されている。つまり、略コ字形状の前側上部連結パイプ2cは、前側に凸となる状態で、その両自由端がクッション側サイドフレーム2a,2aの前端部に連結されている。
【0051】
また、クッション側サイドフレーム2a,2aの前端下方側には角筒状の前側下部連結バー2dが架橋されている。
【0052】
このように、これらクッション側サイドフレーム2a,2a、後側連結パイプ2b、前側上部連結パイプ2c、後側下部連結バー2dとで、矩形枠状のシートクッションフレーム2が形成される。
【0053】
また、クッション側サイドフレーム2a,2aの下方には、レール連結部材5,5が配設されている。
【0054】
一方のクッション側サイドフレーム2aには、その下方にレール連結部材5が直接溶接されている。
【0055】
他方のクッション側サイドフレーム2a側の構成は、本発明の主要構成であるため、レール連結部材5との連結構成も併せて次述する。
【0056】
なお、図示は省略するが、シートクッションフレーム2の下方には、公知のレール装置が備えられている。このレール装置は、公知の構成と同様、アッパレールとロワレールとの組合体二組により構成されており、各々のアッパレールとロワレールとの組合体は、両クッション側サイドフレーム2a,2aの下方に各々配置されている。
【0057】
そして、双方のロワレールは、車体フロアに固定され、双方のアッパレールは、直接的若しくは間接的にクッション側サイドフレーム2a,2aに各々連結されている。
【0058】
本例においては、上述したとおり、一方のクッション側サイドフレーム2aには、その下方にレール連結部材5が直接溶接され、このレール連結部材5にアッパレールが取付けられる。
【0059】
以下、他方のクッション側サイドフレーム側について説明する。
【0060】
他方のクッション側サイドフレーム2aには、変形部21が形成されている。
【0061】
以下、この変形部21が形成されている側のクッション側サイドフレーム2a側の構成について説明する。
【0062】
クッション側サイドフレーム2aの内側においては、下方フレーム4が、後側連結パイプ2b及び前側下部連結バー2dを架橋するように配置されている。
【0063】
この下方フレーム4は、後端側は、後側連結パイプ2bを貫通させた状態で、この後側連結パイプ2bに固定されており、前端側は、前側下部連結バー2dを嵌合させた状態で当該嵌合部が溶接固定されている。
【0064】
そして、この下方フレーム4の下端部には、レール連結部材5の上端部が溶接固定されている。
【0065】
レール連結部材5は、無底筐体構造を取り、その上方に位置する天面側に下方フレーム4の下端側が取付けられる。
【0066】
そして、長手方向の両側面(前後方向に延びる側面)は、その中央側が上方に向けて略円弧状に切欠かれており、よって、前後両端部には、下方へ突出する突起部が形成される。
【0067】
これら前後端部に形成される下方への両突起が、アッパレール取付部51,51となる。
【0068】
つまり、レール連結部材5において、前後端から下方に突出する両突起がアッパレール取付部51,51である。
【0069】
このように、本例では、他方のクッション側サイドフレーム2a側においては、下方フレーム4の下方にレール連結部材5が直接溶接され、このレール連結部材5にアッパレールが取付けられる。
【0070】
次いで、変形部21について説明する。変形部21は、クッション側サイドフレーム2aの上端辺の略中央部に形成された機能部である。
【0071】
図2及び図3に示すように、この変形部21は、切欠き部21Aと、屈曲部21Bと、を有して構成されている。
【0072】
切欠き部21Aは、クッション側サイドフレーム2aの上端辺の略中央部から、下方に向かって切り欠かれた切欠き部である。
【0073】
そして、切欠き部21Aの上下方向に延びる両側辺からは外側へ向けて突出する略矩形状のフランジ部21a,21aが形成されている。
【0074】
また、切欠き部21Aの下方には、外方向へ向けてドーム状に凸とすることで、内側から見ると上下方向に延びる溝となるよう形成された屈曲部21Bが配設されている。
【0075】
この屈曲部21Bの幅(前後方向の距離)は、切欠き部21Aの幅(前後方向の距離)とほぼ同一となるように構成されているとともに、屈曲部21Bは切欠き部21Aと上下方向にて連続する位置に形成されている。
【0076】
これは、後述するが、切欠き部21Aに付加される変形力が潤滑に屈曲部21Bへと付加されることを目的としたものであり、これにより、衝撃力が加わった際、変形部21が効率良く変形して衝撃力を吸収することができる。
【0077】
次いで、図4及び図5により、変形部21の機能により説明する。
【0078】
図4(a)に示すように、通常状態では、変形部21は変形しておらず、よって、切欠き部21Aもまた、前後方向に所定の間隙を有した切欠き部分として存在する。
【0079】
しかし、図4(b)に示すように、白抜き矢印のような衝撃荷重が付加された場合、切欠き部21Aが潰れる(幅が縮まる)とともに屈曲部21Bが変形する。
【0080】
このような変形により、衝撃荷重を効率良く吸収することができる。
【0081】
このようにして、衝撃荷重を吸収することで、レール連結部材5への衝撃力の伝達を低減することができるため、レール連結部材5自体をより強固なものにすることなく、レール装置への影響を少なくすることができる。
【0082】
また、前述したように、切欠き部21Aには、フランジ部21a,21aが形成されている。
【0083】
このため、衝撃荷重が加わり切欠き部21Aが潰れた場合、これらフランジ部21a,21aが接触することとなる(図5参照)。
【0084】
つまり、フランジ部21a,21aが接触することにより、変形ストッパとしての機能を果たし、よって、変形量を規制することが可能となる。
【0085】
また、フランジ部21a,21aの接触は面接触となるため、当接しやすくなり、よってより効率良く変形量を規制することが可能となる。
【0086】
次いで、図6により、変形部21の形成箇所について説明する。
【0087】
図6に示すように、変形部21は、リクライニング機構11よりも前方に形成されることが望ましい。
【0088】
また、更に望ましくは、クッション側サイドフレーム2a上においてシートバックフレーム1との連結部となる連結部材3の連結点3aよりも前方にあることが望ましい。更に、これの前方であって近接する箇所であると望ましい。これにより、シートバックフレーム1から伝達される衝撃力をより効率的に吸収することができる。
【0089】
また、変形部21はレール連結部材5が連結されるアッパレール(図6の一点鎖線にて簡略図示)の前後端間に形成されていると望ましく、更に、望ましくは、アッパレール取付部51,51間に形成されているとよい。
【0090】
これにより、レール連結部材5及びこれに連結されるアッパレール(図6の一点鎖線にて簡略図示)への衝撃力付与が緩和される。
【0091】
なお、上記各実施形態では、具体例としての説明を行ったものであるが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各部材の構成配置等は変更することが可能である。
【0092】
つまり、クッション側サイドフレーム2aにおいて、変形部21を形成し、この変形部21を変形させることにより衝撃荷重を吸収する構成を有するものであれば、例えば、連結部材3をシートバック側サイドフレーム1aと一体形成する等の変更は可能である。
【符号の説明】
【0093】
S 車両用シート
F シートフレーム
1 シートバックフレーム
1a シートバック側サイドフレーム
1b 上部フレーム
H ピラー支持部
2 シートクッションフレーム
2a クッション側サイドフレーム
21 変形部
21A 切欠き部
21a フランジ部
21B 屈曲部
2b 後側連結パイプ
2c 前側上部連結パイプ
2d 前側下部連結バー
3 連結部材
3a 連結点
4 下方フレーム
5 レール連結部材
51 アッパレール取付部
11 リクライニング機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6