特許第6558047号(P6558047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558047
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】信号処理装置及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   H03G 3/02 20060101AFI20190805BHJP
   H03M 1/10 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H03G3/02
   H03M1/10 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-89031(P2015-89031)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-208336(P2016-208336A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】中村 真巳
【審査官】 及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−235210(JP,A)
【文献】 特開平01−170119(JP,A)
【文献】 特開2010−197091(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0243338(US,A1)
【文献】 特開2008−022092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G 3/02
H03M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LチャンネルとRチャンネルとを含むステレオ信号のデジタルオーディオ信号における前記Lチャンネルである第1のデジタル信号に−1から+1までの任意の値係数を乗算して第2のデジタル信号にレベル変換する第1のレベル変換部と、
前記デジタルオーディオ信号における前記Rチャンネルである第3のデジタル信号に−1から+1までの任意の値の係数であって、前記第1のデジタル信号に乗算する係数と同じ値の係数を乗算して第4のデジタル信号にレベル変換する第2のレベル変換部と、
前記第2のデジタル信号から前記第4のデジタル信号が減算された第5のデジタル信号と、前記第1のデジタル信号と前記第4のデジタル信号とが加算された第6のデジタル信号とを生成する演算部と、
前記第5のデジタル信号を第1のアナログ信号にDA変換する第1のDAコンバータと、
前記第6のデジタル信号を第2のアナログ信号にDA変換する第2のDAコンバータと、
前記第1のアナログ信号と前記第2のアナログ信号とを加算して第3のアナログ信号を生成し、Lチャンネルのオーディオ信号として出力する第1の加算器と、
を備える信号処理装置。
【請求項2】
第3のDAコンバータと、
第4のDAコンバータと、
第2の加算器と、
をさらに備え、
前記演算部は、前記第2のデジタル信号と前記第3のデジタル信号とが加算された第7のデジタル信号と、前記第4のデジタル信号から前記第2のデジタル信号が減算された第8のデジタル信号とをさらに生成し、
前記第3のDAコンバータは、前記第7のデジタル信号を第4のアナログ信号にDA変換し、
前記第4のDAコンバータは、前記第8のデジタル信号を第5のアナログ信号にDA変換し、
前記第2の加算器は、前記第4のアナログ信号と前記第5のアナログ信号とを加算して第6のアナログ信号を生成し、Rチャンネルのオーディオ信号として出力する
請求項1記載の信号処理装置。
【請求項3】
LチャンネルとRチャンネルとを含むステレオ信号のデジタルオーディオ信号における前記Lチャンネルである第1のデジタル信号に−1から+1までの任意の値である係数を乗算して第2のデジタル信号にレベル変換し、
前記デジタルオーディオ信号における前記Rチャンネルである第3のデジタル信号に−1から+1までの任意の値の係数であって、前記第1のデジタル信号に乗算する係数と同じ値の係数を乗算して第4のデジタル信号にレベル変換し、
前記第2のデジタル信号から前記第4のデジタル信号が減算された第5のデジタル信号と、前記第1のデジタル信号と前記第4のデジタル信号とが加算された第6のデジタル信号とを生成し、
前記第5のデジタル信号を第1のアナログ信号にDA変換し、
前記第6のデジタル信号を第2のアナログ信号にDA変換し、
前記第1のアナログ信号と前記第2のアナログ信号とを加算して、Lチャンネルのオーディオ信号である第3のアナログ信号を生成する
信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号処理装置及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
信号処理装置の一形態であるオーディオ信号処理装置には、一般的にコンパクトディスク(CD)等のデジタル音源が用いられている。最近では、デジタルオーディオ信号を、DAコンバータによりアナログ変換した後に音量調整するのではなく、アナログ変換する前にデジタルデータ上で音量調整している。
【0003】
特許文献1には、アナログ変換する前にデジタルデータ上で音量を調整する手段の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−022092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、アナログ変換する前にデジタルデータ上で音量を調整する場合、オーディオ信号であるデジタルデータを小さくすることで、音量を小さくさせている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来の信号処理装置では、音量を小さくさせるほど、下位ビットが失われていくため、ビット分解能が低下する。
【0007】
従って、従来の信号処理装置では、音量を小さくさせるとビット分解能が低下するため、オーディオ信号のパルス波形が粗くなって音質を悪化させたり、入出力レベルの相関性にずれが生じたりする。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑み、音量を小さくさせた場合においても、従来よりも音質の悪化を抑制し、入出力レベルの相関性を改善することができる信号処理装置及び信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、LチャンネルとRチャンネルとを含むステレオ信号のデジタルオーディオ信号における前記Lチャンネルである第1のデジタル信号に−1から+1までの任意の値係数を乗算して第2のデジタル信号にレベル変換する第1のレベル変換部と、前記デジタルオーディオ信号における前記Rチャンネルである第3のデジタル信号に−1から+1までの任意の値の係数であって、前記第1のデジタル信号に乗算する係数と同じ値の係数を乗算して第4のデジタル信号にレベル変換する第2のレベル変換部と、前記第2のデジタル信号から前記第4のデジタル信号が減算された第5のデジタル信号と、前記第1のデジタル信号と前記第4のデジタル信号とが加算された第6のデジタル信号とを生成する演算部と、前記第5のデジタル信号を第1のアナログ信号にDA変換する第1のDAコンバータと、前記第6のデジタル信号を第2のアナログ信号にDA変換する第2のDAコンバータと、前記第1のアナログ信号と前記第2のアナログ信号とを加算して第3のアナログ信号を生成し、Lチャンネルのオーディオ信号として出力する第1の加算器とを備える信号処理装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、LチャンネルとRチャンネルとを含むステレオ信号のデジタルオーディオ信号における前記Lチャンネルである第1のデジタル信号に−1から+1までの任意の値である係数を乗算して第2のデジタル信号にレベル変換し、前記デジタルオーディオ信号における前記Rチャンネルである第3のデジタル信号に−1から+1までの任意の値の係数であって、前記第1のデジタル信号に乗算する係数と同じ値の係数を乗算して第4のデジタル信号にレベル変換し、前記第2のデジタル信号から前記第4のデジタル信号が減算された第5のデジタル信号と、前記第1のデジタル信号と前記第4のデジタル信号とが加算された第6のデジタル信号とを生成し、前記第5のデジタル信号を第1のアナログ信号にDA変換し、前記第6のデジタル信号を第2のアナログ信号にDA変換し、前記第1のアナログ信号と前記第2のアナログ信号とを加算して、Lチャンネルのオーディオ信号である第3のアナログ信号を生成する信号処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の信号処理装置及び信号処理方法によれば、音量を小さくさせた場合においても、従来よりも音質の悪化を抑制し、入出力レベルの相関性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の信号処理装置を説明するための概念図である。
図2】比較例の信号処理装置を説明するための概念図である。
図3A】比較例の信号処理装置の入出力レベルのシミュレーション結果を示す図である。
図3B】比較例の信号処理装置の入出力レベルのシミュレーション結果を示す図である。
図4A】実施形態の信号処理装置の入出力レベルのシミュレーション結果を示す図である。
図4B】実施形態の信号処理装置の入出力レベルのシミュレーション結果を示す図である。
図5】実施例及び比較例の信号処理装置の入出力レベルの相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態では、信号処理装置の一形態として、オーディオ信号処理装置について説明する。
【0014】
図1に示すように、オーディオ信号処理装置1は、制御部2、再生部3、DSP(digital signal processor)4、DAコンバータ5,6,7,8、加算器9,10、アンプ11,12、及び、スピーカ13,14を備えている。
【0015】
制御部2は、再生部3及びDSP4を制御する。
【0016】
再生部3は、CD等のデジタル音源からデジタルオーディオ信号をDSP4へ出力する。デジタルオーディオ信号は、LチャンネルとRチャンネルのステレオ信号である。
【0017】
なお、図1中の符号LはLチャンネルのデジタルオーディオ信号(第1のデジタル信号)である。符号RはRチャンネルのデジタルオーディオ信号(第3のデジタル信号)である。以降、Lチャンネルのオーディオ信号をオーディオ信号Lと称し、Rチャンネルのオーディオ信号をオーディオ信号Rと称す。
【0018】
DSP4は、ボリューム41,42と演算部43とを有する。
【0019】
ボリューム41には再生部3からオーディオ信号Lが入力される。
オーディオ信号Lは、ボリューム41によってデジタルデータ上で音量調整される。具体的には、オーディオ信号Lは、ボリューム41により、所望の音量に調整するための係数αが乗算され、オーディオ信号(第2のデジタル信号)αLにレベル変換される。
【0020】
即ち、ボリューム41は、第1のデジタル信号Lを第2のデジタル信号αLにレベル変換するレベル変換部(第1のレベル変換部)として機能する。
【0021】
ボリューム42には再生部3からオーディオ信号Rが入力される。
オーディオ信号Rは、ボリューム42によってデジタルデータ上で音量調整される。具体的には、オーディオ信号Rは、ボリューム42により、所望の音量に調整するための係数αが乗算され、オーディオ信号(第4のデジタル信号)αRにレベル変換される。
【0022】
即ち、ボリューム42は、第3のデジタル信号Rを第4のデジタル信号αRにレベル変換するレベル変換部(第2のレベル変換部)として機能する。
【0023】
なお、係数αは−1から+1までの任意の値に設定される。
【0024】
演算部43には、再生部3からオーディオ信号L及びオーディオ信号Rが入力される。
演算部43には、ボリューム41でレベル変換されたオーディオ信号αLが入力される。
演算部43には、ボリューム42でレベル変換されたオーディオ信号αRが入力される。
【0025】
演算部43は、オーディオ信号αLからオーディオ信号αRが減算されたデジタル信号(第5のデジタル信号)αL−αRを生成し、DAコンバータ(第1のDAコンバータ)5へ出力する。
【0026】
演算部43は、オーディオ信号Lとオーディオ信号αRとが加算されたデジタル信号(第6のデジタル信号)L+αRを生成し、DAコンバータ(第2のDAコンバータ)6へ出力する。
【0027】
演算部43は、オーディオ信号Rとオーディオ信号αLとが加算されたデジタル信号(第7のデジタル信号)R+αLを生成し、DAコンバータ(第3のDAコンバータ)7へ出力する。
【0028】
演算部43は、オーディオ信号αRからオーディオ信号αLが減算されたデジタル信号(第8のデジタル信号)αR−αLを生成し、DAコンバータ(第4のDAコンバータ)8へ出力する。
【0029】
DAコンバータ5は、デジタル信号αL−αRをアナログ変換し、アナログ信号(第1のアナログ信号)αL−αRを加算器(第1の加算器)9へ出力する。
【0030】
DAコンバータ6は、デジタル信号L+αRをアナログ変換し、アナログ信号(第2のアナログ信号)L+αRを加算器9へ出力する。
【0031】
DAコンバータ7は、デジタル信号R+αLをアナログ変換し、アナログ信号(第4のアナログ信号)R+αLを加算器(第2の加算器)10へ出力する。
【0032】
DAコンバータ8は、デジタル信号αR−αLをアナログ変換し、アナログ信号(第5のアナログ信号)αR−αLを加算器10へ出力する。
【0033】
加算器9は、アナログ信号αL−αRとアナログ信号L+αRとを加算してアナログ信号(第3のアナログ信号)(1+α)Lを生成する。アナログ信号(1+α)Lは、Lチャンネルのオーディオ信号Lchとしてアンプ11へ出力される。
【0034】
オーディオ信号Lchは、式(1)で表される。
Lch=(αL−αR)+(L+αR)=(1+α)L …(1)
【0035】
加算器10は、アナログ信号R+αLとアナログ信号αR−αLとを加算してアナログ信号(第6のアナログ信号)(1+α)Rを生成する。アナログ信号(1+α)Rは、Rチャンネルのオーディオ信号Rchとしてアンプ12へ出力される。
【0036】
オーディオ信号Rchは、式(2)で表される。
Rch=(R+αL)+(αR−αL)=(1+α)R …(2)
【0037】
オーディオ信号Lchは、アンプ11で増幅されてスピーカ13へ出力される。
オーディオ信号Rchは、アンプ12で増幅されてスピーカ14へ出力される。
【0038】
ここで、図2を用いて、比較例のオーディオ信号処理装置について説明する。
【0039】
比較例のオーディオ信号処理装置20は、制御部21、再生部22、DSP23、DAコンバータ24,25、アンプ26,27、及び、スピーカ28,29を備えている。DSP23は、ボリューム31,32を有する。
【0040】
制御部21、再生部22、DSP23、アンプ26,27、スピーカ28,29、及び、ボリューム31,32は、図1の制御部2、再生部3、DSP4、アンプ11,12、スピーカ13,14、及び、ボリューム41,42にそれぞれ対応する。DAコンバータ24は図1のDAコンバータ5またはDAコンバータ6に対応する。DAコンバータ25は図1のDAコンバータ7またはDAコンバータ8に対応する。
【0041】
図1に示す実施形態のオーディオ信号処理装置1は、オーディオ信号L,R,αL,αRを演算部43によってデジタルデータ上で演算処理し、デジタル信号αL−αR、L+αR、R+αL、αR−αLを生成する。デジタル信号αL−αR、L+αR、R+αL、αR−αLは、それぞれ対応する第1〜第4のDAコンバータ5,6,7,8でDA変換される。
【0042】
それに対して、比較例のオーディオ信号処理装置20は、ボリューム31,32によってデジタルデータ上で音量調整された第1及び第2のオーディオ信号αL,αRをDAコンバータ24,25でDA変換する点で相違する。
【0043】
図3A及び図3Bは、比較例のオーディオ信号処理装置20において、DAコンバータ24に入力されるオーディオ信号αLの入力レベルと、DAコンバータ24から出力されるオーディオ信号Lchの出力レベルのシミュレーション結果を示す図である。
【0044】
なお、図3Aは入力レベルが0dB〜−68dBの範囲を示している。図3Bは入力レベルが−70dB〜−140dBの範囲を示している。
【0045】
図3A及び図3B中の入力レベル(dB)の欄は、図2中のDAコンバータ24に入力されるオーディオ信号αLの入力レベルを示している。入力レベル(相対値)の欄はオーディオ信号αLの入力レベルを、入力レベルが0dBである状態を1としたときの相対値で示している。
【0046】
出力レベル(dB)の欄は、DAコンバータ24から出力されるオーディオ信号Lchの出力レベルを示している。誤差の欄は、入力レベルに対する出力レベルの差分を示している。
【0047】
比較例のオーディオ信号処理装置20では、入力レベルが−80dB以下になると、出力レベルに誤差が生じる。出力レベルの誤差は、入力レベルが小さくなるほど、即ち、音量を小さくさせるほど、大きくなる。
【0048】
入力レベルが−80dB以下になると出力レベルに生じる誤差は、主として、DAコンバータの性能に起因する。即ち、比較例のオーディオ信号処理装置20では、DAコンバータの性能によって入出力レベルの相関性にずれが生じる。
【0049】
図4A及び図4Bは、実施形態のオーディオ信号処理装置1において、演算部43に入力されるオーディオ信号αLの入力レベルと、DAコンバータ5,6に入力されるデジタル信号αL−αR,L+αRの入出力レベルと、加算器9から出力されるオーディオ信号Lchの出力レベルのシミュレーション結果を示す図である。
【0050】
なお、図4Aは入力レベルが0dB〜−68dBの範囲を示している。図4Bは入力レベルが−70dB〜−140dBの範囲を示している。
【0051】
図4A及び図4B中の入力レベル(dB)の欄は図1中の演算部43に入力されるオーディオ信号αLの入力レベルを示している。入力レベル(相対値)の欄はオーディオ信号αLの入力レベルを、入力レベルが0dBである状態を1としたときの相対値で示している。
【0052】
αL−αR(DA変換前)の欄は、図1中の演算部43から出力されるデジタル信号αL−αRのDAコンバータ5での入力レベルを示している。αL−αR(DA変換後)の欄は、DAコンバータ5から加算器9へ出力されるアナログ信号αL−αRの出力レベルを示している。
【0053】
L+αR(DA変換前)の欄は、演算部43から出力されるデジタル信号L+αRのDAコンバータ6での入力レベルを示している。L+αR(DA変換後)の欄は、DAコンバータ6から加算器9へ出力されるアナログ信号L+αRの出力レベルを示している。なお、デジタル信号L+αRはデジタル信号L+αRよりも0.011dB分が加算されたレベルになるように設定されている。
【0054】
出力レベルの欄は、加算器9から出力されるオーディオ信号Lchの出力レベルを示している。誤差の欄は、入力レベルに対する出力レベルの差分を示している。
【0055】
図3A及び図3Bに示すように、比較例のオーディオ信号処理装置20では、入力レベルが−80dB以下になると、出力レベルに誤差が生じる。この場合のDAコンバータ24の入力レベルは0.0001以下である。
【0056】
それに対して、図4A及び図4Bに示すように、実施形態のオーディオ信号処理装置1では、入力レベルが−80dB以下であっても、デジタル信号αL−αRのDAコンバータ5への入力レベル、及び、デジタル信号L+αRのDAコンバータ6への入力レベルは、いずれも0.0001よりも大きいレベルである。
【0057】
従って、実施形態のオーディオ信号処理装置1によれば、音量を小さくさせてもビット分解能の低下を抑制することができ、DAコンバータ5,6の性能に影響されず、DAコンバータ5,6の入出力レベルの相関性が確保される。
【0058】
DAコンバータ5,6に対して入力レベルとそれぞれ相関性を有する出力レベルのアナログ信号αL−αRとアナログ信号L+αRとが加算器9で加算される。従って、実施形態のオーディオ信号処理装置1では、オーディオ信号の入力レベルと出力レベルとは相関性を有し、誤差が生じない。
【0059】
また、DA変換された後にアナログ信号αL−αRとアナログ信号L+αRとが加算されるので、DA変換後の変換ノイズや外部ノイズが同相でない場合は6dB下がり、同相の場合は打ち消すことができる。
【0060】
なお、Rチャンネルのオーディオ信号のDA変換についても、上記のLチャンネルのオーディオ信号のDA変換と同様の効果が得られる。
【0061】
図5は、実施例及び比較例のオーディオ信号処理装置におけるオーディオ信号の入出力レベルの相関図である。図5に示すように、比較例のオーディオ信号処理装置においては、入力レベルと出力レベルとは実線で示すような特性を示す相関性を有する。実施例のオーディオ信号処理装置においては、入力レベルが−80dB以上では比較例のオーディオ信号処理装置と同様に実線で示すような特性であり、−80dB以下では一点鎖線で示すような特性を示す相関性を有する。
【0062】
比較例のオーディオ信号処理装置では、入力レベルが−80dB以上では出力レベルが入力レベルと相関性を有するものの、入力レベルが−80dB以下では相関性にずれが生じている。
【0063】
それに対して、実施例のオーディオ信号処理装置では、入力レベルが−80dB以下であっても出力レベルは入力レベルと相関性を有している。
【0064】
従って、実施形態の信号処理装置及び信号処理方法によれば、音量を小さくさせた場合に生じるビット分解能の低下を抑制することができるので、従来よりも音質の悪化を抑制し、入力レベルに対する出力レベルの相関性を改善することができる。
【0065】
なお、本発明に係る実施形態は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0066】
例えば、デジタルブロックでクリップする場合は、ボリューム41,42の前段、または演算部43の前段でレベルを1/2処理することで対応可能である。
【0067】
また、本実施形態では、オーディオ信号Lを第1のデジタル信号、オーディオ信号αLを第2のデジタル信号、オーディオ信号Rを第3のデジタル信号、オーディオ信号αRを第4のデジタル信号としたが、LとRとを逆にしてもよい。
【0068】
即ち、オーディオ信号Rを第1のデジタル信号、オーディオ信号αRを第2のデジタル信号、オーディオ信号Lを第3のデジタル信号、オーディオ信号αLを第4のデジタル信号としてもよい。
【0069】
この場合、デジタル信号αR−αLは第5のデジタル信号となる。デジタル信号R+αLは第6のデジタル信号となる。デジタル信号L+αRは第7のデジタル信号となる。デジタル信号αL−αRは第5のデジタル信号となる。
【0070】
DAコンバータ8は第1のDAコンバータとなる。DAコンバータ7は第2のDAコンバータとなる。DAコンバータ6は第3のDAコンバータとなる。DAコンバータ5は第4のDAコンバータとなる。
加算器10は第1の加算器となる。加算器9は第2の加算器となる。
【符号の説明】
【0071】
1 オーディオ信号処理装置
5,6 DAコンバータ(第1,第2のDAコンバータ)
9 加算器
41,42 ボリューム(第1,第2のレベル変換部)
43 演算部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5