(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例1は、無線装置を所持するユーザに対して、避難経路を誘導する誘導システムに関する。ここでは、一例として、ユーザは、災害救助を実行すべき消防隊員などの隊員であるとし、無線装置は、業務用無線システム、携帯電話システム等の無線通信システムに対応した装置であるとする。このような誘導システムとして、前述のごとく、これまでの無線装置は、建物内に予め配置された複数の屋内位置情報送信機からの情報を受信し、カメラで撮影した映像に誘導用の画像を重ねて表示していた。また、加速度センサやジャイロセンサなどで自律的に測位可能な無線装置が、位置情報と避難経路を地図上に表示することもなされていた。
【0013】
屋内位置情報送信機を予め設置する場合、屋内位置情報送信機が設置されていない建物内の緊急を要する現場での使用は現実的ではない。また、屋内位置情報送信機が設置されている建物内であっても、ユーザが無線装置の小さな画面の情報を見ながら、実際の避難経路を短時間に把握することは困難である。例えば、火災や地震等の非常時において、無線装置に表示される情報から、現在位置から出口までの方向や最適な避難経路を瞬時に正確に把握することは困難である。そのため、特別な装置を設置する手間やコストをかけることなく、どのような場所においても、ユーザが容易に避難経路を把握させることが望まれる。
【0014】
本実施例において、建物内に存在する複数の無線装置のそれぞれは、周囲の環境に関するステータス情報と、位置情報とを管理装置に送信する。ステータス情報では、安全、視界が悪い、火災が広がっている等が示される。管理装置は、複数の無線装置のそれぞれに対するステータス情報、位置情報を管理する。複数の無線装置のうちの1つが、避難経路の誘導を要求する場合に、当該1つの無線装置(以下、「要求側無線装置」という)は、管理装置に要求信号を送信する。管理装置は、要求信号を受信すると、要求側無線装置が存在する位置から出口までの避難経路を導出する。ここで、避難経路は、要求側無線装置以外の無線装置(以下、「誘導側無線装置」という)を含むように、ステータス情報と位置情報とをもとに導出される。例えば、避難経路には、出口への方向に沿って、2つ以上の誘導側無線装置が配置される。管理装置は、要求側無線装置に近い誘導側無線装置に対して、通知を指示する。
【0015】
指示を受けた誘導側無線装置は、通知としてLED(Light Emitting Diode)を点灯したり、スピーカから音声を出力したりする。要求側無線装置を所持したユーザは、通知を実行している誘導側無線装置の方向に移動する。その間も、要求側無線装置は、位置情報を周期的に管理装置に送信し続ける。管理装置は、受信した位置情報をもとに、通知を指示した誘導側無線装置の方向に要求側無線装置が近づくことを認識する。管理装置は、通知を指示した誘導側無線装置の位置に、要求側無線装置が到達すると、当該誘導側無線装置に通知を停止させるとともに、避難経路に含まれた次の誘導側無線装置に通知を指示する。
【0016】
指示を受けた次の誘導側無線装置は、通知としてLEDを点灯したり、スピーカから音声を出力したりする。このような処理は、出口に近い誘導側無線装置が通知を実行するまで、繰り返しなされる。つまり、通常時には通話等を実行する複数の無線装置が、緊急時には連携して避難経路を誘導する。そのため、特別な機器の設置する手間やコストが不要になる。また、避難経路の通知に使用されるLED、スピーカは、もともと無線装置に備えられている。また、管理装置は、複数の無線装置のそれぞれからステータス情報と位置情報とを受けつけているので、環境に適した避難経路を設定可能である。
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係る誘導システム100の構成を示す。誘導システム100は、無線装置10と総称される第1無線装置10a、第2無線装置10b、第N無線装置10n、基地局装置12、ネットワーク14、管理装置16を含む。
【0018】
複数の無線装置10のそれぞれは、隊員であるユーザに所持される。無線装置10は、無線通信システムに対応し、後述の基地局装置12に接続する。前述のごとく、無線通信システムとして、業務用無線システム、携帯電話システム等が使用されるが、これらは公知の技術であるので、ここでは説明を省略する。基地局装置12は、一端側において、無線装置10と同一の無線通信システムに対応し、複数の無線装置10を接続する。また、基地局装置12は、他端側において、ネットワーク14を接続する。
【0019】
ネットワーク14は、基地局装置12に接続されるとともに、管理装置16を接続する。ネットワーク14は、さまざまな装置間のデータを送受信する。ネットワーク14は、任意のものでよく、例えば、有線ネットワークでもよく、無線ネットワークでもよく、それらの組合せであってもよい。このような構成によって、複数の無線装置10は、基地局装置12、ネットワーク14を介して互いに通信可能である。この通信は、通話であったり、データ通信であったりする。
【0020】
管理装置16は、ネットワーク14、基地局装置12を介して、複数の無線装置10のそれぞれと通信する。管理装置16は、各無線装置10からのステータス情報、位置情報を受信し、それらを管理する。また、管理装置16は、複数の無線装置10のうちの1つの無線装置10からの要求信号を受信する。当該1つの無線装置10が前述の要求側無線装置に相当する。管理装置16は、要求信号を受信すると、避難経路を導出する。管理装置16は、避難経路に含まれた無線装置10である誘導側無線装置の1つに対して、通知指示を送信する。当該1つの誘導側無線装置は、通知指示を受信すると、通知としてLEDを点灯したり、スピーカから音声を出力したりする。避難経路における要求側無線装置の位置から出口への方向に沿って、誘導側無線装置が順に通知を実行する。
【0021】
以下では、無線装置10、管理装置16の構成を説明する前に、
図2から
図6を使用しながら、誘導システム100における避難経路の誘導処理を具体的に説明する。
図2は、誘導システム100における複数の無線装置10の配置を示す。ここでは、一例として、火災等の災害が発生している建物の1フロアの平面図を示す。図示のごとく、第1無線装置10aから第4無線装置10dのそれぞれを所持したユーザが、救助活動で建物内に存在する。各無線装置10は、図示しない基地局装置12、ネットワーク14を介して、管理装置16と通信可能である。
【0022】
誘導システム100は、前述のステータス情報として、例えば、「安全」、「粉塵で視界が悪い」、「煙が充満している」、「火災が広がっている」、「天井や壁が崩落している」を規定する。ここで、「粉塵で視界が悪い」の危険性は「要注意」であり、「煙が充満している」の危険性は「装備があれば通行可」であり、「火災が広がっている」の危険性は「通行不可」であり、「天井や壁が崩落している」の危険性は「通行不可」である。各無線装置10は、ユーザの災害活動中に、周囲の環境に応じたステータス情報を管理装置16に送信する。周囲の環境に応じたステータス情報の選択は、ユーザによってなされればよい。また、ステータス情報は、定期的あるいは情報が変化した場合に送信される。
【0023】
さらに、各無線装置10は、位置情報も管理装置16に送信する。位置情報は、ステータス情報とともに送信されてもよく、ステータス情報とは別に送信されてもよい。また、位置情報も、定期的あるいは情報が変化した場合にされる。
図2においては、このように送信されるステータス情報と位置情報は、ステータス情報・位置情報200としてまとめて示される。管理装置16は、各無線装置10からのステータス情報・位置情報200を受信し、受信したステータス情報・位置情報200を無線装置10と対応づけながら記憶する。その結果、管理装置16は、建物内の場所と状況を把握する。
【0024】
図3は、誘導システム100における複数の無線装置10の別の配置を示す。第1無線装置10aから第4無線装置10dの配置は、
図2と同様である。ここで、第1無線装置10aが前述の要求側無線装置に相当し、管理装置16に要求信号を送信する。管理装置16は、第1無線装置10aからの要求信号を受信すると、第1無線装置10aが存在する位置から出口までの避難経路を導出する。例えば、管理装置16は、避難経路の候補として第1候補210、第2候補212を生成する。第1候補210は、第1無線装置10aから第2無線装置10b、第4無線装置10dを経由して出口に至る経路であり、第2候補212は、第1無線装置10aから第3無線装置10c、第4無線装置10dを経由して出口に至る経路である。管理装置16は、建物内の部屋、廊下の配置を認識しており、かつ各無線装置10の位置情報も認識しているので、それらを利用して第1候補210、第2候補212を生成する。なお、候補の数は「2」に限定されず、それ以上であってもよい。
【0025】
さらに、管理装置16は、各無線装置10から受けつけたステータス情報をもとに、第1候補210、第2候補212のいずれかを選択する。例えば、第2無線装置10bからのステータス情報が「安全」であり、第3無線装置10cからのステータス情報が「天井や壁が崩落している」であり、第4無線装置10dからのステータス情報が「煙が充満している」であるとする。これらを考慮すると、第2無線装置10bの周囲は通行可能であり、第3無線装置10cの周囲は通行不可能であり、第4無線装置10dの周囲は、ユーザの装備次第では通行可能である。そのため、管理装置16は、第1候補210を避難経路として選択する。第1候補210に含まれた第2無線装置10b、第4無線装置10dが前述の誘導側無線装置に相当する。
【0026】
図4は、誘導システム100における複数の無線装置10のさらに別の配置を示す。管理装置16は、避難経路を導出すると、避難経路の誘導を開始する。管理装置16は、避難経路に配置された複数の無線装置10のうち、最も第1無線装置10aに近い無線装置10を選択する。ここでは、第2無線装置10bが選択される。管理装置16は、選択した第2無線装置10bに対して、通知指示220を送信する。第2無線装置10bは、通知指示220を受信すると、ビープ音を出力したり、LEDを点灯させたりすることによって、自身の位置を視覚的・聴覚的に周囲に報知する。第1無線装置10aを所持したユーザは、第2無線装置10bの発する音や光によって目指すべき方向を認識する。当該ユーザは、方向を認識すると、第2無線装置10bの方向に進行する。この間も、第1無線装置10aは、位置情報を管理装置16に定期的に送信し続ける。
【0027】
図5は、誘導システム100における複数の無線装置10のさらに別の配置を示す。管理装置16は、第1無線装置10aの位置情報と第2無線装置10bの位置情報とをもとに、第1無線装置10aが第2無線装置10bに近づいたこと、例えば、第1無線装置10aが第2無線装置10bの1m以内の範囲に入ったことを認識する。認識がなされると、管理装置16は、第2無線装置10bに対して停止指示222を送信する。第2無線装置10bは、停止指示222を受信すると通知を停止する。また、管理装置16は、避難経路に含まれた次の無線装置10を選択する。ここでは、第4無線装置10dが選択される。
【0028】
管理装置16は、選択した第4無線装置10dに対して、通知指示220を送信する。第4無線装置10dは、通知指示220を受信すると、ビープ音を出力したり、LEDを点灯させたりすることによって、自身の位置を視覚的・聴覚的に周囲に報知する。第1無線装置10aを所持したユーザは、第4無線装置10dの発する音や光によって目指すべき方向を認識する。ここでの避難経路には、第4無線装置10dに続く無線装置10が含まれないが、含まれる場合、以上の処理が繰り返されることによって、第1無線装置10aを所持したユーザが出口まで誘導される。
【0029】
図6は、誘導システム100における複数の無線装置10のさらに別の配置を示す。
図4の状況において、第2無線装置10bを所持するユーザと、第4無線装置10dを所持するユーザとが移動することもあり得る。その結果、避難経路における第2無線装置10bと第4無線装置10dの順番が入れかわる。管理装置16は、第2無線装置10bの位置情報と第4無線装置10dの位置情報とを受信し続けているので、第2無線装置10bと第4無線装置10dの順番の入れかわりを認識する。これを認識すると、管理装置16は、第4無線装置10dに通知指示220を送信し、第2無線装置10bに停止指示222を送信する。
【0030】
図7は、無線装置10の構成を示す。無線装置10は、通信部20、通話部22、測位部24、操作部26、入力部28、報告部30、要求部32、受付部34、通知部36を含む。通信部20は、前述の無線通信システムに対応し、図示しない基地局装置12と通信する。また、通信部20は、基地局装置12、ネットワーク14を介して管理装置16と通信する。通話部22は、通信部20を使用しながら、他の無線装置10との間で通話処理を実行する。通話処理については公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0031】
測位部24は、GPS(Global Positioning System)の測位機能を有し、無線装置10の位置を測位する。測位した結果である位置情報は、緯度と経度によって示される。測位部24は、位置情報を報告部30に出力する。報告部30は、測位部24から位置情報を入力する。報告部30は、通信部20を介して管理装置16に位置情報を報告する。
【0032】
操作部26は、ユーザによる操作を受けつけるためのインターフェイスであり、例えば、ボタンによって構成される。操作部26は、ユーザによる手動入力によってステータス情報を受けつける。
図8は、操作部26において入力されるステータス情報のテーブルを示す。図示のごとく、ステータス情報欄300、識別情報欄302が含まれる。ステータス情報欄300には、前述した5種類の情報が示される。識別情報欄302には、各ステータス情報に対応した識別情報が示される。操作部26は、いずれかの識別情報を受けつける。操作部26は、識別情報を入力部28に出力する。
【0033】
入力部28は、操作部26からの識別情報を受けつける。これは、ユーザによる手動入力によってステータス情報を受けつけることに相当する。なお、ステータス情報は、ユーザによる手動入力によって受けつけられるのではなく、センサによる自動入力によって受けつけられてもよい。入力部28は、ステータス情報を報告部30に出力する。報告部30は、入力部28からステータス情報を入力する。報告部30は、通信部20を介して管理装置16にステータス情報を報告する。ここで、位置情報とステータス情報とが同時に報告されてもよい。
【0034】
無線装置10が要求側無線装置である場合、操作部26は、ユーザからの要求であって、管理装置16に避難経路を誘導させるための要求を受けつける。操作部26は、要求を要求部32に出力する。要求部32は、操作部26からの要求を入力する。要求部32は、通信部20を介して管理装置16に要求信号を送信することによって、管理装置16に避難経路の誘導を要求する。
【0035】
無線装置10が誘導側無線装置である場合、つまり要求部32が誘導を非要求である場合に、受付部34は、通信部20を介して管理装置16からの通知指示を受けつける。これは、避難経路の誘導の指示を受けつけることに相当する。通知部36は、受付部34が通知指示を受けつけた場合に、避難経路の通知を実行する。具体的に説明すると、通知部36は、前述のごとく、ビープ音を出力したり、LEDを点灯させたりする。また、受付部34は、通信部20を介して管理装置16からの停止指示を受けつける。通知部36は、受付部34が停止指示を受けつけた場合に、通知を停止させる。
【0036】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0037】
図9は、管理装置16の構成を示す。管理装置16は、第1受付部50、記憶部52、第2受付部54、導出部56、第3受付部58、指示部60を含み、導出部56は、生成部62、選択部64を含む。
【0038】
第1受付部50は、図示しないネットワーク14を介して、複数の無線装置10のそれぞれから、ステータス情報と位置情報とを受けつける。ここで、ステータス情報と位置情報は、同時に受けつけてもよいし、別々に受けつけてもよい。また、これらの情報には、送信元になる無線装置10を識別するための装置情報が添付される。第1受付部50は、受けつけたステータス情報と位置情報とを記憶部52に出力する。記憶部52は、第1受付部50からステータス情報と位置情報とを受けつける。記憶部52は、装置情報をもとに、無線装置10ごとにステータス情報と位置情報とを記憶する。
【0039】
第2受付部54は、ネットワーク14を介して、複数の無線装置10のうちの少なくとも1つからの要求信号を受けつける。これは、要求側無線装置から、避難経路の誘導の要求を受けつけることに相当する。要求信号にも、要求側無線装置を識別するための装置情報が添付される。以下では、説明を明瞭にするために、複数の無線装置10のうちの1つから要求信号が発生する場合を説明するが、複数の要求信号を受けてつけてもよい。複数の要求信号を受けつけた場合、可能であれば、それらを同時並行的に処理する。すなわち、複数の要求信号それぞれに対して、経路の候補を作成し、経路選択し、通知指示する。また、同時並行的に処理できない場合は、所定の方法により、要求信号の優先度を算出し、優先度の最も高い要求信号に対して、避難誘導処理を実行する。例えば、複数の無線装置10それぞれに対して、あらかじめ優先度を設定しておいてもよいし、出口からの距離に応じて優先度を算出し、出口から最も遠い位置にある無線装置10の要求信号を処理するようにしてもよい。第2受付部54は、要求信号、装置情報を生成部62に出力する。
【0040】
生成部62は、第2受付部54から要求信号、装置情報を入力すると、記憶部52から当該装置情報に対応した位置情報を取得する。また、生成部62は、建物内の部屋、廊下の配置を認識しており、取得した位置情報から出口に至る避難経路の候補を複数生成する。以下では、説明を明瞭にするために、複数の候補のうちの1つの候補に対する処理を説明するが、他の候補に対しても同様の処理が実行されればよい。選択部64は、経路の候補に含まれる位置情報を有した無線装置10を記憶部52から抽出するとともに、抽出した無線装置10に対するステータス情報を記憶部52から取得する。
【0041】
図10は、生成部62において保持されるテーブルを示す。図示のごとく、識別情報欄310、スコア欄312が含まれる。識別情報欄310は、
図8と同様であり、これは、ステータス情報のいずれかに相当する。スコア欄312は、各識別情報に対応したスコアの値を示す。
図9に戻る。生成部62は、
図8のテーブルを参照することによって、経路の候補に含まれる無線装置10に対するステータス情報のそれぞれをスコアに変換し、変換したスコアを積算する。また、生成部62は、経路の候補に含まれる無線装置10の数によって、積算値を除算することによって、候補に対するスコアの平均値を導出する。
【0042】
図8、
図10のテーブルによると、ステータス情報として「火災が広がっている」、「天井や壁が崩落している」が含まれていると、スコアの平均値が大きくなる。また、ステータス情報として「安全」が多く含まれていると、スコアの平均値が小さくなる。つまり、ユーザが通過しやすい候補ほど、スコアの平均値が小さくなり、ユーザが通過しにくい候補ほど、スコアの平均値が大きくなる。生成部62は、生成した複数の候補に対する情報と、各候補に対するスコアの平均値を選択部64に出力する。なお、候補に対する情報には、経路に関する情報と、経路上の無線装置10についての情報が含まれる。また、各候補のスコアを算出する際に、出口までの距離、通路の幅、天井の高さといった静的な経路情報を考慮してスコアを算出してもよい。例えば、ステータス情報によるスコアが同じ経路が2つある場合、出口までの距離が短い経路のスコアがより小さな値となるように算出したり、通路幅が広い経路のスコアがより小さな値となるように算出したり、天井の高さが高い経路のスコアがより小さくなるように算出する。このようにスコアを算出することで、より安全な避難誘導が可能になる。
【0043】
選択部64は、生成部62から、複数の候補に対する情報と、各候補に対するスコアの平均値を入力する。選択部64は、各候補に対するスコアの平均値を比較し、スコアの平均値が最小である候補を避難経路として選択する。これは、生成部62において生成した複数の避難経路の候補のそれぞれに対して、ステータス情報を反映させることによって、複数の避難経路の候補から1つを避難経路として選択することに相当する。その結果、選択した避難経路に含まれた無線装置10が前述の誘導側無線装置に相当する。例えば、複数の無線装置10が避難経路に含まれる。このように生成部62、選択部64を含んだ導出部56は、第2受付部54が要求信号を受けつけると、第1受付部50において受けつけたステータス情報と位置情報とをもとに、避難経路を導出する。選択部64は、選択した避難経路に関する情報を選択部64に出力する。
【0044】
指示部60は、選択部64から、避難経路に関する情報を入力する。指示部60は、避難経路に関する情報に含まれた複数の無線装置10を抽出し、要求側無線装置が存在する位置から出口に向かって、避難経路に含まれた複数の無線装置10を並べる。指示部60は、複数の無線装置10から、要求側無線装置に最も近い無線装置10を選択する。指示部60は、選択した無線装置10にネットワーク14経由で通知指示を送信する。
【0045】
第3受付部58は、通知指示を送信した後、ネットワーク14を介して要求側無線装置からの位置情報を周期的に受けつける。第3受付部58は、位置情報を指示部60に出力する。指示部60は、第3受付部58からの位置情報を入力する。指示部60は、第3受付部58からの位置情報と、選択した無線装置10の位置情報とを比較する。選択した無線装置10の位置から所定の範囲に要求側無線装置に入った場合に、指示部60は、選択した無線装置10にネットワーク14経由で停止指示を送信する。ここで、所定の範囲は、例えば、1mに設定される。指示部60は、停止指示を送信した後、避難経路に沿った次の無線装置10を選択する。避難経路に沿った次の無線装置10とは、これまで選択していた無線装置10に隣接しながら出口側に配置された無線装置10である。指示部60は、選択した次の無線装置10にネットワーク14経由で通知指示を送信する。
【0046】
第3受付部58、指示部60は、以上の処理を繰り返すことによって、避難経路に沿って配置された残りの無線装置10に対して、順に通知指示を送信する。このように、指示部60は、導出部56において導出した避難経路に沿って配置される無線装置10に、避難経路の誘導を指示する。
【0047】
以上の構成による誘導システム100の動作を説明する。
図11は、誘導システム100による報告手順を示すシーケンス図である。第1無線装置10aは、ステータス情報、位置情報を管理装置16に送信する(S10)。第2無線装置10bは、ステータス情報、位置情報を管理装置16に送信する(S12)。第3無線装置10cは、ステータス情報、位置情報を管理装置16に送信する(S14)。第4無線装置10dは、ステータス情報、位置情報を管理装置16に送信する(S16)。
【0048】
図12は、誘導システム100による通知手順を示すシーケンス図である。第1無線装置10aは、管理装置16に要求信号を送信する(S30)。管理装置16は、避難経路を導出する(S32)。管理装置16は、第2無線装置10bに通知指示を送信する(S34)。第2無線装置10bは、通知を実行する(S36)。第1無線装置10aは、管理装置16に位置情報を送信する(S38)。管理装置16は、第2無線装置10bに停止指示を送信し(S40)、第4無線装置10dに通知指示に送信する(S42)。第4無線装置10dは、通知を実行する(S44)。
【0049】
図13は、管理装置16による避難経路の導出手順を示すフローチャートである。生成部62は、複数の候補を生成する(S60)。生成部62は、各候補に対するスコアの平均値を導出する(S62)。選択部64は、平均値をもとに1つの候補を避難経路として選択する(S64)。
【0050】
本実施例によれば、ステータス情報と位置情報とを報告しながら、(1)避難経路の誘導を要求するか、あるいは(2)避難経路の誘導の指示を受けつけるので、ユーザに所持される無線装置を要求側にも誘導側にも使用できる。また、ユーザに所持される無線装置が要求側にも誘導側にも使用されるので、設備の増加を抑制できる。また、ユーザに所持される無線装置が要求側にも誘導側にも使用されるので、避難経路を誘導できる。また、本来は通話等に使用する無線装置を避難経路の誘導に使用するので、設備の増加を抑制しながら、避難経路を誘導できる。
【0051】
また、ユーザによる手動入力によって、ステータス情報を受けつけるので、ユーザの判断に応じたステータス情報を使用できる。また、センサによる自動入力によって、ステータス情報を受けつけるので、ユーザの利便性を向上できる。また、管理装置からの指示を受けつけた場合に、避難経路の通知を実行するので、避難経路を誘導できる。また、ステータス情報と位置情報を使用するので、無線装置の周囲の環境を反映した避難経路を導出できる。また、複数の避難経路の候補のそれぞれに対して、ステータス情報を反映させることによって、複数の避難経路の候補から1つを避難経路として選択するので、避難経路を容易に導出できる。
【0052】
また、自由に移動可能な複数の無線装置が連携して経路誘導するので、事前設置すべき機器を不要にできる。また、事前設置すべき機器が不要になるので、緊急の現場でも使用できる。また、複数の無線装置の位置情報やステータス情報を把握しながら避難経路を誘導するので、危険な経路を回避できる。また、音や光で直感的に誘導するので、様々な状況で使用できる。
【0053】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に、無線装置を所持するユーザに対して、避難経路を誘導する誘導システムに関する。実施例1における管理装置は、避難経路を導出するとともに、避難経路上に配置された複数の誘導側無線装置に対して、順番に通知を指示している。実施例2における管理装置は、避難経路を導出し、避難経路上に配置された最初の誘導側無線装置に対して、通知を指示するが、残りの誘導側無線装置に対して、通知を指示しない。実施例2において最初の誘導側無線装置は、次の誘導側無線装置に信号を送信し、次の誘導側無線装置は、信号を受信すると通知を実行する。さらに、次の誘導側無線装置は、その次の誘導側無線装置に信号を送信し、その次の誘導側無線装置は、信号を受信すると通知を実行する。つまり、避難経路上に配置された複数の誘導側無線装置は、信号を順次転送していく。実施例2に係る誘導システム100は、
図1と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0054】
以下では、無線装置10、管理装置16の構成を説明する前に、
図14から
図16を使用しながら、誘導システム100における避難経路の誘導処理を具体的に説明する。なお、管理装置16が避難経路を導出するまでの処理は、実施例1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図14は、本発明の実施例2に係る誘導システム100における複数の無線装置10の配置を示す。第1無線装置10aが前述の要求側無線装置に相当し、管理装置16に要求信号を送信する。管理装置16は、第1無線装置10aからの要求信号を受信すると、第1無線装置10aが存在する位置から出口までの避難経路を導出する。ここでは、第2無線装置10b、第4無線装置10dを含む避難経路が導出される。管理装置16は、第2無線装置10b、第4無線装置10dが順に避難経路に含まれていることを示した通知指示230を第2無線装置10b、第4無線装置10dに送信する。第2無線装置10b、第4無線装置10dは、通知指示230を受信する。
【0055】
図15は、本発明の実施例2に係る誘導システム100における複数の無線装置10の別の配置を示す。第2無線装置10b、第4無線装置10dは、通知指示230を受信することによって、避難経路上において第2無線装置10b、第4無線装置10dの順に配置されていることを認識する。第2無線装置10bは、避難経路上において最初に配置されるので、第2無線装置10bは、ビープ音を出力したり、LEDを点灯させたりすることによって、自身の位置を視覚的・聴覚的に周囲に報知する。第1無線装置10aを所持したユーザは、第2無線装置10bの発する音や光によって目指すべき方向を認識する。当該ユーザは、方向を認識すると、第2無線装置10bの方向に進行する。この間も、第1無線装置10aは、位置情報を定期的に送信し続ける。第2無線装置10bは、第1無線装置10aからの位置情報を受信する。
【0056】
図16は、本発明の実施例2に係る誘導システム100における複数の無線装置10のさらに別の配置を示す。第2無線装置10bは、第1無線装置10aの位置情報と第2無線装置10bの位置情報とをもとに、第1無線装置10aが第2無線装置10bに近づいたこと、例えば、第1無線装置10aが第2無線装置10bの1m以内の範囲に入ったことを認識する。認識した場合、第2無線装置10bは、避難経路上の次の無線装置10である第4無線装置10dに対して、信号232を送信するとともに、通知を停止する。第4無線装置10dは、信号232を受信すると、ビープ音を出力したり、LEDを点灯させたりすることによって、自身の位置を視覚的・聴覚的に周囲に報知する。第1無線装置10aを所持したユーザは、第4無線装置10dの発する音や光によって目指すべき方向を認識する。ここでの避難経路には、第4無線装置10dに続く無線装置10が含まれないが、含まれる場合、以上の処理が繰り返されることによって、第1無線装置10aを所持したユーザが出口まで誘導される。
【0057】
図17は、本発明の実施例2に係る無線装置10の構成を示す。無線装置10は、通信部20、通話部22、測位部24、操作部26、入力部28、報告部30、要求部32、受付部34、通知部36、受信部38、処理部40、送信部42を含む。
【0058】
無線装置10が誘導側無線装置である場合、つまり要求部32が誘導を非要求である場合に、受付部34は、通信部20を介して管理装置16からの通知指示を受けつける。通知指示は、実施例1での通知指示とは異なり、避難経路上に含まれた無線装置10の順番を示す。これは、避難経路に沿って順に配置される複数の無線装置10に関する情報ともいえる。受付部34は、避難経路上に含まれた無線装置10の順番に関する情報を処理部40に出力する。
【0059】
処理部40は、避難経路上に含まれた無線装置10の順番に関する情報を受付部34から受けつける。処理部40は、当該情報をもとに、本無線装置10の前段に配置される別の無線装置10を認識するとともに、本無線装置10の後段に配置されるさらに別の無線装置10を認識する。
【0060】
受信部38は、通信部20を介して、本無線装置10の前段に配置される別の無線装置10からの信号を受信する。受信部38は、信号を受信したことを処理部40に通知する。処理部40は、受信部38において信号を受信した場合に、通知部36に通知を実行させる。通知部36は、処理部40からの指示に応じて、避難経路の通知を実行する。通知は、前述のごとく、ビープ音を出力したり、LEDを点灯させたりすることによってなされる。なお、受付部34に受けつけた情報において、本無線装置10が、避難経路上に含まれた複数の無線装置10における先頭に配置される場合、処理部40は、通知部36に通知を実行させる。その際、受信部38における信号の受信は不要である。
【0061】
受信部38は、通信部20を介して、要求側無線装置からの位置情報を受信する。受信部38は、要求側無線装置からの位置情報を処理部40に出力する。処理部40は、受信部38から、要求側無線装置の位置情報を入力するとともに、測位部24から、本無線装置10の位置情報を入力する。処理部40は、要求側無線装置の位置情報と、本無線装置10の位置情報とを比較する。本無線装置10の位置から所定の範囲に要求側無線装置に入った場合に、処理部40は、通知部36の通知を停止させる。ここで、所定の範囲は、例えば、1mに設定される。さらに、この場合に、処理部40は、送信部42に信号の送信を指示する。信号の送信先は、本無線装置10の後段に配置されるさらに別の無線装置10である。
【0062】
送信部42は、通信部20を介して、処理部40からの指示を受けつけると、本無線装置10の後段に配置されるさらに別の無線装置10に信号を送信する。つまり、送信部42は、通知部36による通知とともに、信号を送信する。なお、受付部34に受けつけた情報において、本無線装置10が、避難経路上に含まれた複数の無線装置10における最後に配置される場合、処理部40は、送信部42に信号を送信させない。
【0063】
図18は、本発明の実施例2に係る管理装置16の構成を示す。管理装置16は、第1受付部50、記憶部52、第2受付部54、導出部56、指示部60を含み、導出部56は、生成部62、選択部64を含む。
【0064】
指示部60は、選択部64から、避難経路に関する情報を入力する。指示部60は、避難経路に関する情報に含まれた複数の無線装置10のそれぞれに対して、避難経路に関する情報をネットワーク14経由で送信する。
【0065】
図19は、本発明の実施例2に係る誘導システム100による通知手順を示すシーケンス図である。第1無線装置10aは、管理装置16に要求信号を送信する(S80)。管理装置16は、避難経路を導出する(S82)。管理装置16は、第2無線装置10bに通知指示を送信する(S84)とともに、第4無線装置10dに通知指示を送信する(S86)。第2無線装置10bは、通知を実行する(S88)。第1無線装置10aは、第2無線装置10bに位置情報を送信する(S90)。第2無線装置10bは、第4無線装置10dに信号を送信する(S92)。第4無線装置10dは、通知を実行する(S94)。
【0066】
本実施例によれば、誘導側無線装置間で信号が転送されるので、管理装置との通信が不可能になっても避難経路を誘導できる。また、誘導経路を最初に指示するだけなので、管理装置の処理量を低減できる。
【0067】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0068】
本発明の実施例1、2によれば、通知部36は、ビープ音を出力したり、LEDを点灯させたりしている。しかしながらこれに限らず例えば、通知部36は、避難経路の目的地からの距離に応じて、音声出力の音、発光の色の少なくとも1つを変更してもよい。ここでは、この変形例について説明する。
【0069】
(1)出口との距離に応じて、各無線装置10は、異なった音を出力してもよい。例えば、第2無線装置10bが「ド」、第4無線装置10dが「ミ」など、出口に近い方の無線装置10から出力される音ほど高い音程にされる。なお、複数の無線装置10のそれぞれから出力される音が混ざっても聞き取りやすいように、音程が設定される。
【0070】
(2)出口との距離に応じて、各無線装置10は、異なった色の光を出力してもよい。例えば、第2無線装置10bが「黄」色、第4無線装置10dが「青」色など、出口に近い方の無線装置10ほど、安全のイメージの色である「青」に近い色で発光させる。
【0071】
(3)要求側無線装置が誘導側無線装置に近づいてから次の誘導側無線装置を発音・発光させるのではなく、避難誘導開始時に、出口から最も遠い無線装置10、2番目に遠い無線装置10、3番目に遠い無線装置10、…、出口に最も近い無線装置10の順番で、発音・発光させてもよい。あるいは、これとは逆順に、出口に最も近い無線装置10、2番目に近い無線装置10、…、出口に最も遠い無線装置10の順番で、発音・発光させてもよい。すなわち、出口からの距離に応じて、報知(発音・発光)の順番(タイミング)を設定してもよい。このようにすると、出口に至る方向感覚が予め把握しやすい。また、現場にいるユーザ同士が、お互いの位置や人数を把握することができる。本変形例によれば、音声出力の音、発光の色の少なくとも1つが変更されるので、避難経路の把握を容易にできる。