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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558100
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】動力作業機
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/24 20060101AFI20190805BHJP
   B25D 17/04 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B25D17/24
   B25D17/04
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-131671(P2015-131671)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-13173(P2017-13173A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 剛也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】田辺 大治郎
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−185378(JP,A)
【文献】 特開2007−331072(JP,A)
【文献】 実開昭48−089069(JP,U)
【文献】 実開昭48−089070(JP,U)
【文献】 特開平08−126975(JP,A)
【文献】 実開平06−024246(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/24
B25D 17/04
B23Q 11/00
F16F 15/02
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを支持する本体と、
前記本体に連結され、かつ、前記本体に対して接近及び離間可能なハンドルと、
前記本体と前記ハンドルとの間に介在し、前記本体から前記ハンドルに伝わる振動を吸収する第1弾性体と、
を有する動力作業機であって、
前記ハンドルが前記本体へ接近を開始した位置から所定位置に達するまでの間における前記ハンドルの移動量に対する前記第1弾性体の変形量が、前記所定位置を越えた後の前記ハンドルの移動量に対する前記第1弾性体の変形量よりも大きく、
前記第1弾性体は、前記本体に設けられた第1保持面と、前記ハンドルに設けられた第2保持面とによって挟持され、
前記第1保持面は、
前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した第1傾斜面と、
前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した第2傾斜面と、
を備え、
前記第1傾斜面が、前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した第1角度は、前記第2傾斜面が前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した第2角度よりも大きく、
前記第1弾性体は、前記ハンドルが前記所定位置に達するまでの間、前記第1傾斜面と前記第2保持面とによって挟持され、
前記第1弾性体は、前記ハンドルの位置が前記所定位置を越えた後は、前記第2傾斜面と前記第2保持面とによって挟持され、
前記ハンドルが前記本体に接近する移動中に、前記ハンドルの移動量に対する前記第1弾性体の変形量が減少する、動力作業機。
【請求項2】
前記モータの動力で往復動するピストンが設けられ、
前記ピストンが往復動する方向と、前記ハンドルが前記本体に接近する方向とが、互いに平行である、請求項1記載の動力作業機。
【請求項3】
前記第2保持面は、
前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した第3傾斜面と、
前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した第4傾斜面と、
を備え、
前記第3傾斜面が、前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した鋭角側の第3角度は、前記第4傾斜面が、前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した鋭角側の第4角度よりも大きく、
前記第1弾性体は、前記ハンドルの位置が前記所定位置に達するまでの間、前記第1傾斜面と前記第3傾斜面とによって挟持され、
前記第1弾性体は、前記ハンドルの位置が前記所定位置を越えた後に、前記第2傾斜面と前記第4傾斜面とによって挟持される、請求項2記載の動力作業機。
【請求項4】
前記第1傾斜面、前記第2傾斜面、前記第3傾斜面及び前記第4傾斜面は、前記ピストンが往復動する方向に対してそれぞれ傾斜している、請求項3記載の動力作業機。
【請求項5】
モータを支持する本体と、
前記本体に連結され、かつ、前記本体に対して接近及び離間可能なハンドルと、
を有する動力作業機であって、
前記本体または前記ハンドルのいずれか一方に設けた接触子と、
前記本体または前記ハンドルのいずれか他方に設けられ、かつ、前記本体から前記ハンドルに伝わる振動を吸収する弾性体と、
を備え、
前記弾性体は、前記ハンドルが前記本体に接近する方向に対して交差する方向に弾性変形可能であり、
前記接触子は、
前記ハンドルが前記本体に接近を開始した位置から、所定位置に達するまでの間に前記弾性体に接触する第1接触面と、
前記所定位置を越えた後に前記弾性体に接触する第2接触面と、
を有し、
前記第1接触面及び前記第2接触面は、前記ハンドルが前記本体に接近する方向に対して傾斜しており、
前記第1接触面が傾斜した第5角度は、前記第2接触面が傾斜した第6角度よりも大きく、
前記ハンドルが前記本体に接近する移動中に、前記ハンドルの移動量に対する前記弾性体の変形量が減少する、動力作業機。
【請求項6】
前記モータの動力で所定方向に往復動するピストンが設けられ、
前記本体と前記ハンドルとを回動可能に連結する支持軸が設けられ、
前記ハンドルは、前記支持軸を中心として回動して前記本体に接近及び離間する、請求項1記載の動力作業機。
【請求項7】
前記本体に設けられた第3保持面と、
前記ハンドルに設けられて前記支持軸を中心とする径方向で前記第3保持面よりも内側に配置され、かつ、前記第3保持面と対向する第4保持面と、
前記第3保持面と前記第4保持面とによって挟持された第2弾性体と、
を更に備え、
前記第4保持面は、前記ハンドルの回動方向に沿って並ぶ基準面及び第5傾斜面及び第6傾斜面を備え、
前記基準面と前記第5傾斜面との間に形成される鋭角側の第1傾斜角度は、前記基準面と前記第6傾斜面との間に形成される鋭角側の第2傾斜角度よりも大きく、
前記ハンドルの位置が前記所定位置に達するまでの間、前記第2弾性体は、前記第5傾斜面と前記第3保持面とによって挟持され、
前記ハンドルの位置が前記所定位置を越えた後は、前記第2弾性体は、前記第6傾斜面と前記第3保持面とによって挟持される、請求項6記載の動力作業機。
【請求項8】
前記本体に設けた第1支持部と、
前記ハンドルに設けられ、かつ、前記支持軸を中心とする径方向で前記第1支持部よりも外側に配置された第2支持部と、
前記第1支持部と前記第2支持部との間に伸縮自在に配置された第3弾性体と、
を更に有し、
前記ハンドルの位置が移動を開始した位置から前記所定位置に達するまでの間、前記第3弾性体が収縮する方向と前記所定方向との間に形成される鋭角側の第3傾斜角度は、前記ハンドルの位置が前記所定位置を越えた後に前記第3弾性体が収縮する方向と前記所定方向との間に形成される鋭角側の第4傾斜角度よりも小さい、請求項6記載の動力作業機。
【請求項9】
前記モータの出力軸は、前記ピストンが往復動する方向と交差する方向に配置されている、請求項2記載の動力作業機。
【請求項10】
前記モータから出力される回転力を前記ピストンの往復動力に変換する運動変換機構と、
前記ピストンの動作によって打撃される先端工具と、
が設けられ、
前記ハンドルが前記本体に接近する方向は、前記先端工具に加わる打撃力の方向と平行である、請求項2または3記載の動力作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動低減機構を有する動力作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
振動低減機構を有する動力作業機が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された動力作業機は、本体と、本体に連結されたハンドルと、本体とハンドルとの連結箇所に設けた振動低減機構と、を備えている。振動低減機構は、本体に設けた第1支持部材と、ハンドルに設けた第2支持部材と、第1支持部材と第2支持部材との間に介在された弾性体と、を備えている。第1支持部材は第1支持面を備え、第2支持部材は第2支持面を備えている。動力作業機は、本体に取り付けた先端工具と、本体内に設けたモータと、モータの回転力を打撃力に変換する運動変換機構と、を有する。モータの回転力は打撃力に変換され、打撃力は先端工具に加えられる。
【0003】
特許文献1に記載された動力作業機は、作業者がハンドルを握った状態で先端工具を対象物へ押し付け、先端工具を打撃する作業を行う。先端工具が打撃されて本体が振動すると、弾性体は第1支持面及び第2支持面に接触した状態で転がり、かつ、弾性体が弾性変形することで、本体からハンドルに伝達される振動を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−80574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された動力作業機は、本体の振動方向で、本体に対するハンドルの移動量に対する弾性体の変形量が一定である。このため、振動低減機構が持つバネ定数を小さくすることで振動吸収性能の向上を図る場合には、本体に対するハンドルの移動量をなるべく大きくする必要があり、動力作業機が大型化する問題があった。
【0006】
本発明の目的は、大型化を抑制できる振動低減機構を設けた動力作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の動力作業機は、モータを支持する本体と、前記本体に連結され、かつ、前記本体に対して接近及び離間可能なハンドルと、前記本体と前記ハンドルとの間に介在し、前記本体から前記ハンドルに伝わる振動を吸収する第1弾性体と、を有する動力作業機であって、前記ハンドルが前記本体へ接近を開始した位置から所定位置に達するまでの間における前記ハンドルの移動量に対する前記第1弾性体の変形量が、前記所定位置を越えた後の前記ハンドルの移動量に対する前記第1弾性体の変形量よりも大きく、前記第1弾性体は、前記本体に設けられた第1保持面と、前記ハンドルに設けられた第2保持面とによって挟持され、前記第1保持面は、前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した第1傾斜面と、前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した第2傾斜面と、を備え、前記第1傾斜面が、前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した第1角度は、前記第2傾斜面が前記ハンドルが前記本体に対して接近及び離間する方向に対して傾斜した第2角度よりも大きく、前記第1弾性体は、前記ハンドルが前記所定位置に達するまでの間、前記第1傾斜面と前記第2保持面とによって挟持され、前記第1弾性体は、前記ハンドルの位置が前記所定位置を越えた後は、前記第2傾斜面と前記第2保持面とによって挟持され、前記ハンドルが前記本体に接近する移動中に、前記ハンドルの移動量に対する前記第1弾性体の変形量が減少する。
【0008】
他の実施形態の動力作業機は、モータを支持する本体と、前記本体に連結され、かつ、前記本体に対して接近及び離間可能なハンドルと、を有する動力作業機であって、前記本体または前記ハンドルのいずれか一方に設けた接触子と、前記本体または前記ハンドルのいずれか他方に設けられ、かつ、前記本体から前記ハンドルに伝わる振動を吸収する弾性体と、を備え、前記弾性体は、前記ハンドルが前記本体に接近する方向に対して交差する方向に弾性変形可能であり、前記接触子は、前記ハンドルが前記本体に接近を開始した位置から、所定位置に達するまでの間に前記弾性体に接触する第1接触面と、前記所定位置を越えた後に前記弾性体に接触する第2接触面と、を有し、前記第1接触面及び前記第2接触面は、前記ハンドルが前記本体に接近する方向に対して傾斜しており、前記第1接触面が傾斜した第5角度は、前記第2接触面が傾斜した第6角度よりも大きく、前記ハンドルが前記本体に接近する移動中に、前記ハンドルの移動量に対する前記弾性体の変形量が減少する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハンドルが本体に接近する移動中に、ハンドルの移動量に対する弾性体の変形量が減少する。したがって、ハンドルに荷重が加わっていない状態から、ハンドルに所定の荷重をかけて実作業領域に到達するまでの間におけるハンドル移動量が少なくなり、動力作業機の大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に相当する動力作業機の部分的な正面断面図である。
図2図1の動力作業機の部分的な正面断面図である。
図3図1の動力作業機の部分的な平面断面図である。
図4】動力作業機に設けた振動低減機構の実施の形態1を示す平面図である。
図5】振動低減機構の実施の形態1を示す平面図である。
図6図4の振動低減機構の分解斜視図である。
図7】振動低減機構の実施の形態1を示す平面図である。
図8】振動低減機構の実施の形態1を示す平面図である。
図9】振動低減機構の特性を示す線図である。
図10図4及び図5に示す振動低減機構の変更例1を示す平面図である。
図11図4及び図5に示す振動低減機構の変更例2を示す平面図である。
図12】振動低減機構の実施の形態1及び2を有する動力作業機の正面断面図である。
図13】(A),(B)は、振動低減機構の実施の形態2を示す正面図である。
図14】(A),(B)は、振動低減機構の実施の形態2を示す正面図である。
図15】振動低減機構の実施の形態2の特性を示す線図である。
図16】振動低減機構の実施の形態3を示す正面図である。
図17】振動低減機構の実施の形態3を示す正面図である。
図18】振動低減機構の実施の形態3を示す正面図である。
図19】振動低減機構の実施の形態3の特性を示す線図である。
図20】(A),(B)は、振動低減機構の実施の形態4を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に相当する動力作業機を、図1図3に基づいて説明する。動力作業機10はハンマであり、動力作業機10は、対象物の斫作業、対象物の破砕作業、対象物の突き固め作業を行うことができる。対象物は、コンクリート、石材、レンガ、土を含む。
【0013】
動力作業機10は、ハウジング11及びハンドル12を備えている。ハウジング11は、ハンマケース13とモータケース14とを有し、ハンマケース13とモータケース14とは、固定要素で互いに固定されている。また、ハンドル12はモータケース14に取り付けられている。ハンマケース13は筒形状であり、ハンマケース13内にハンマ15が移動可能に配置されている。ハンマ15は、ハンマケース13の中心線A1方向に往復動可能である。中心線A1方向とは、中心線A1に沿った方向、中心線A1と平行な方向を含む。ハンマケース13と同心状に、円筒形状の工具保持具16が設けられている。工具保持具16は、ハンマケース13の外に設けられ、工具保持具16はハンマケース13に固定されている。
【0014】
工具保持具16は先端工具17を支持し、先端工具17は工具保持具16に対して中心線A1方向に予め定められた範囲内で移動可能である。ハンマケース13内から工具保持具16内に亘って中間ハンマ18が設けられている。中間ハンマ18は、中心線A1方向に移動可能である。中間ハンマ18は、中心線A1方向で、ハンマ15と先端工具17との間に配置されている。また、ハンマケース13内にストッパ19が設けられている。
【0015】
ハンマ15は、円筒部20と、円筒部20の中心線A1方向の端部に設けた壁部21と、を備えている。円筒部20内にピストン22が収容されている。ピストン22は、ハンマ15に対して中心線A1方向に移動可能であり、ハンマ15内でピストン22と壁部21との間に空気室B1が形成されている。ピストン22の外周面にシール部材23が取り付けられており、シール部材23は空気室B1を気密にシールする。
【0016】
モータケース14は、金属製または合成樹脂製である。モータケース14内に、電動モータ24が収容されている。この電動モータ24は、モータケース14内に固定されたステータ25と、モータケース14内で回転可能なロータ26と、を有する。ロータ26は、出力軸27を有する。ステータ25は、通電用のコイルを有する。
【0017】
動力作業機10の正面視で、出力軸27の回転中心である中心線A2は、中心線A1に対して直角である。モータケース14内に2個の軸受28が設けられており、出力軸27は、2個の軸受28により回転可能に支持されている。出力軸27の外周面に駆動ギヤ29が設けられている。出力軸27の回転力を、ピストン22の往復動力に変換する運動変換機構30を説明する。まず、モータケース14内にクランク軸31が回転自在に設けられている。クランク軸31は出力軸27と平行であり、クランク軸31は2個の軸受32により回転可能に支持されている。クランク軸31に設けられた従動ギヤ33が取り付けられている。また、モータケース14内に中間ギヤ34が設けられており、中間ギヤ34は、2個の軸受35により回転可能に支持されている。中間ギヤ34は、駆動ギヤ29及び従動ギヤ33に噛み合っている。クランク軸31は、クランク軸31の回転中心から偏心したクランクピン36を有する。
【0018】
また、クランクピン36とピストン22とを動力伝達可能に連結するコネクティングロッド37が設けられている。そして、出力軸27の回転力が、中間ギヤ34及び従動ギヤ33を経由してクランク軸31に伝達されて、クランクピン36が公転すると、ピストン22は中心線A1方向に往復動作する。また、ハンマ15はピストン22と共に中心線A1方向に往復動作する。運動変換機構30は、クランク軸31、コネクティングロッド37により構成されている。
【0019】
モータケース14に第1接続部76及び第2接続部77が設けられている。第1接続部76と第2接続部77とは、中心線A2方向に間隔をおいて配置されている。第1接続部76及び第2接続部77は、共に筒形状である。さらに、ハンドル12は、出力軸27と平行に延ばされた本体部38と、本体部38の第1端部に設けられた第1接続部39と、本体部38の第2端部に設けられた第2接続部40と、を備えている。
【0020】
第1接続部39の先端は第1接続部76内に配置され、第2接続部40の先端は第2接続部77内に配置されている。本体部38にトリガ41が設けられており、本体部38内にトリガスイッチ42が設けられている。ハンドル12に電力ケーブル43が接続されている。電力ケーブル43は電源に接続される。電源は、交流電源または直流電源のいずれでもよい。ハンドル12内からモータケース14内に亘ってリード線44が配置されており、リード線44は、電力ケーブル43及びトリガスイッチ42を制御基板に接続する。また、制御基板は、電力ケーブル43とステータ25のコイルとを接続する制御回路を有する。なお、ハンマケース13に補助ハンドル45が固定されている。補助ハンドル45は、ハンマケース13の外に設けられている。
【0021】
上記動力作業機10の使用例を説明する。作業者は補助ハンドル45を第1の手で握り、ハンドル12を第2の手で握る。作業者が先端工具17を対象物に押し付けると、その反力で先端工具17及び中間ハンマ18がハンマ15に近づく向きで移動する。そして、中間ハンマ18がストッパ19に接触すると、先端工具17及び中間ハンマ18が停止する。作業者がトリガ41に操作力を加えると、電源の電力が電動モータ24に供給されて、ロータ26が回転する。出力軸27の回転力は、中間ギヤ34及び従動ギヤ33を経由してクランク軸31に伝達される。クランク軸31の回転力は、コネクティングロッド37によりピストン22の往復動作力に変換される。ハンマ15は、ピストン22と共に中心線A1方向に往復動作し、ハンマ15が中間ハンマ18を打撃する。中間ハンマ18が受けた打撃力は、先端工具17を介して対象物に伝達されると同時に、ハンマ15が中間ハンマ18を打撃したときの反動または反力が、ハウジング11を介して作業者に伝達される。トリガ41の操作力が解除されると、電源の電力は電動モータ24に供給されず、ロータ26が停止する。
【0022】
ハンマ15で中間ハンマ18を介して先端工具17を打撃した場合に発生する反力は、中心線A1方向に沿って発生する。この反力は、クランク軸31を支持する軸受32を経由してハウジング11に伝達され、ハウジング11は中心線A1方向に振動する。動力作業機10は、ハウジング11からハンドル12に伝達される振動を低減及び吸収する振動低減機構46を2組備えている。1組の振動低減機構46は、第1接続部39内から第1接続部76内に亘って配置され、1組の振動低減機構46は、第2接続部40内から第2接続部77内に亘って配置されている。2組の振動低減機構46は、共に同じ構成である。
【0023】
振動低減機構46は、図4図8に示す構成を有する。振動低減機構46は、モータケース14に設けた第1支持部47と、第1接続部39に設けられた第2支持部48と、を備えている。第1支持部47は鋼材製であり、第1支持部47は、モータケース14に固定されている。
【0024】
第1支持部47は、ベース部47Aと、ベース部47Aから中心線A1方向でハンドル12に向けて突出された突出部49,50を備えている。ベース部47Aは、モータケース14に固定される。突出部49は、保持面51を備え、突出部50は、保持面52を備えている。
【0025】
保持面51は、2つの直線部53,54と、2つの円弧部55,56と、を備えている。動力作業機10の平面視で、直線部53,54は直線状であり、円弧部55,56は円弧状である。直線部53と直線部54とは互いに平行である。中心線A1方向で、円弧部56とベース部47Aとの間に、直線部53,54及び円弧部55が位置している。中心線A1方向で、円弧部55及び直線部54は、直線部53と円弧部56との間に位置している。中心線A1方向で、直線部54は、円弧部55と円弧部56との間に位置している。直線部53は円弧部55へ滑らかに接続され、直線部54は、円弧部55及び円弧部56に滑らかに接続されている。動力作業機10の平面視で、直線部54,55は、ベース部47Aに近づくことに伴い、中心線A1から離れる向きで、中心線A1に対して傾斜している。
【0026】
動力作業機10の平面視で、直線部53と中心線A1との間に形成される鋭角側の角度θ1は、直線部54と中心線A1との間に形成される鋭角側の角度θ1と同一である。また、2つの円弧部55,56の半径は同一である。さらに、円弧部55に対応する接線C1と、中心線A1との間に角度θ2が形成されている。また、円弧部56に対応する接線C1と、中心線A1との間に角度θ2が形成されている。2つの角度θ2は同一である。
【0027】
ここで、円弧部55に対応する接線C1は、円弧部55に対応する接線のうち、直線部53に最も近い位置で円弧部55に接触する。円弧部56に対応する接線C1は、円弧部56に対応する接線のうち、直線部54に最も近い位置で円弧部56に接触する。
【0028】
保持面52は、2つの直線部57,58と、2つの円弧部59,60と、を備えている。動力作業機10の平面視で、直線部57,58は直線状であり、円弧部59,60は円弧状である。直線部57と直線部58とは互いに平行である。中心線A1方向で、円弧部60とベース部47Aとの間に、直線部57,58及び円弧部59が位置している。中心線A1方向で、円弧部59及び直線部58は、直線部57と円弧部60との間に位置している。中心線A1方向で、直線部58は、円弧部59と円弧部60との間に位置している。直線部57は円弧部59へ滑らかに接続され、直線部58は、円弧部59及び円弧部60へ滑らかに接続されている。動力作業機10の平面視で、直線部57,58は、ベース部47Aに近づくことに伴い、中心線A1から離れる向きで、中心線A1に対して傾斜している。
【0029】
動力作業機10の平面視で、直線部57と中心線A1との間に形成される鋭角側の角度θ1は、直線部58と中心線A1との間に形成される鋭角側の角度θ1と同一である。また、2つの円弧部59,60の半径は同一である。さらに、円弧部59に対応する接線C1と、中心線A1との間に角度θ2が形成されている。また、円弧部60に対応する接線C1と、中心線A1との間に角度θ2が形成されている。2つの角度θ2は同一である。
【0030】
ここで、円弧部59に対応する接線C1は、円弧部59に対応する接線のうち、直線部57に最も近い位置で円弧部59に接触する。円弧部60に対応する接線C1は、円弧部60に対応する接線のうち、直線部58に最も近い位置で円弧部60に接触する。
【0031】
動力作業機10の平面視で、上記の保持面51と保持面52とは、中心線A1を隔てて線対称の形状を備えている。第2支持部48は鋼材製であり、第2支持部48は、第1接続部39に固定されている。第2支持部48は、ベース部48A及び突出部61,62を有する。突出部61,62は、ベース部48Aから中心線A1方向でベース部47Aに向けて突出している。動力作業機10の平面視で、突出部61と突出部62は、中心線A1に対して直角な方向に間隔をおいて配置されている。突出部49,50は、突出部61と突出部62との間に配置されている。突出部61に保持面109が形成され、突出部62に保持面63が形成されている。保持面109は、保持面51と対向し、保持面63は、保持面52と対向している。
【0032】
保持面109は、2つの直線部64,65と、2つの円弧部66,67と、を備えている。動力作業機10の平面視で、直線部64,65は直線状であり、円弧部66,67は円弧状である。直線部64と直線部65とは互いに平行である。中心線A1方向で、円弧部66とベース部48Aとの間に、直線部64,65及び円弧部67が位置している。中心線A1方向で、円弧部67及び直線部64は、直線部65と円弧部66との間に位置している。中心線A1方向で、直線部64は、円弧部66と円弧部67との間に位置している。直線部65は円弧部67へ滑らかに接続され、直線部64は、円弧部66及び円弧部67に滑らかに接続されている。動力作業機10の平面視で、直線部64,65は、ベース部48Aに近づくことに伴い、中心線A1に近づく向きで、中心線A1に対して傾斜している。
【0033】
動力作業機10の平面視で、直線部64と中心線A1との間に形成される鋭角側の角度θ1は、直線部65と中心線A1との間に形成される鋭角側の角度θ1と同一である。また、2つの円弧部66,67の半径は同一である。さらに、円弧部66に対応する接線C2と、中心線A1との間に形成される角度θ2と、円弧部67に対応する接線C2と、中心線A1との間に形成される角度θ2とが、同一である。
【0034】
ここで、円弧部66に対応する接線C2は、円弧部66に対応する接線のうち、直線部64に最も近い位置で円弧部66に接触する。円弧部67に対応する接線C2は、円弧部67に対応する接線のうち、直線部65に最も近い位置で円弧部67に接触する。
【0035】
保持面63は、2つの直線部68,69と、2つの円弧部70,71と、を備えている。動力作業機10の平面視で、直線部68,69は直線状であり、円弧部70,71は円弧状である。直線部68と直線部69とは互いに平行である。中心線A1方向で、円弧部70とベース部48Aとの間に、直線部68,69及び円弧部71が位置している。中心線A1方向で、円弧部71及び直線部68は、直線部69と円弧部70との間に位置している。中心線A1方向で、直線部68は、円弧部70と円弧部71との間に位置している。直線部69は円弧部71へ滑らかに接続され、直線部68は、円弧部70及び円弧部71へ滑らかに接続されている。動力作業機10の平面視で、直線部68,69は、ベース部48Aに近づくことに伴い、中心線A1に近づく向きで、中心線A1に対して傾斜している。
【0036】
動力作業機10の平面視で、直線部68と中心線A1との間に形成される鋭角側の角度θ1は、直線部69と中心線A1との間に形成される鋭角側の角度θ1と同一である。また、2つの円弧部70,71の半径は同一である。さらに、円弧部70に対応する接線C2と、中心線A1との間に角度θ2が形成されている。また、円弧部71に対応する接線C2と、中心線A1との間に角度θ2が形成されている。2つの角度θ2は同一である。
【0037】
ここで、円弧部70に対応する接線C2は、円弧部70に対応する接線のうち、直線部68に最も近い位置で円弧部70に接触する。円弧部71に対応する接線C2は、円弧部71に対応する接線のうち、直線部69に最も近い位置で円弧部71に接触する。
【0038】
突出部49と突出部50との間に空間72が形成されている。ベース部48Aから中心線A1方向に突出された軸部73が設けられ、軸部73の先端に球状部74が設けられている。球状部74は空間72に配置され、第1支持部47と第2支持部48とは、中心線A1方向で相対的に移動可能である。また、空間72を形成する突出部49の内側に円弧面49Aが形成され、突出部50の内側に円弧面50Aが形成されている。
【0039】
そして、保持面51と突出部62との間に弾性体75が介在され、保持面52と保持面63との間に弾性体75が介在されている。弾性体75は、合成ゴムまたはエラストマーで一体成形された緩衝材である。弾性体75は、荷重を受けると弾性変形可能である。弾性体75は、図6のように円柱形状である。なお、図6では、各要素の表面形状を分かり易く表現するために、軸部73及び球状部74を省略し、突出部49,50を省略してある。弾性体75は、保持面51と突出部62との間に2個配置され、保持面52と保持面63との間に2個配置されている。
【0040】
振動低減機構46は、図4図7図8のように作用する。図4は、先端工具17が対象物、つまり、被削材に押し付けられていない状態を示す。先端工具17が対象物に押し付けられていない場合、球状部74の外面が円弧面49A,50Aに接触する。また、1個の弾性体75は、円弧部55と円弧部66とにより保持され、1個の弾性体75は、円弧部56と円弧部67とにより保持される。
【0041】
さらに、1個の弾性体75は、円弧部59と円弧部70とにより保持され、1個の弾性体75は、円弧部60と円弧部71とにより保持される。先端工具17が対象物に押し付けられていない場合、弾性体75が受ける圧縮荷重は最低値であり、振動低減機構46の平面視で、弾性体75の外周面形状は円形である。
【0042】
なお、先端工具17を対象物に押し付けていない場合において、モータケース14に対するハンドル12の位置を、初期位置と呼ぶ。モータケース14に対するハンドル12の位置は、中心線A1方向におけるハンドル12の位置である。
【0043】
先端工具17を対象物に押し付けて、ハンドル12がモータケース14に対して移動すると、第2支持部48は中心線A1方向に移動し、かつ、第1支持部47に接近する。第2支持部48が第1支持部47に接近する過程で、2個の弾性体75は、保持面51及び突出部62に接触した状態で転がり、2個の弾性体75は、保持面52及び保持面63に接触した状態で転がる。
【0044】
保持面51及び突出部62に保持された2個の弾性体75は、図4で反時計回りに回動する。弾性体75が受ける圧縮荷重は増加し、弾性体75は弾性変形する。また、保持面52及び保持面63に保持された2個の弾性体75は、図4で時計回りに回動し、かつ、受ける圧縮荷重が増加して弾性変形する。
【0045】
図7に示す振動低減機構46は、所定の押し付け荷重をハンドル12にかけながら先端工具17を対象物に押し付けることでハンドル12をモータケース14へ近づけ、ハンドル12が、初期位置から第1所定位置へ移動した状態を示す。この時の押し付け荷重は、実際に作業するときにかける荷重と同程度にすると良い。ハンドル12が初期位置から第1所定位置へ移動することを、ハンドル12の第1移動段階と呼ぶ。図7の振動低減機構46において、1個の弾性体75は、直線部53と円弧部66とに挟持され、かつ、円弧部55と直線部64とにより挟持されている。
【0046】
また、1個の弾性体75は、直線部54と円弧部67とに挟持され、かつ、円弧部56と直線部65とにより挟持されている。また、1個の弾性体75は、直線部57と円弧部70とにより挟持され、かつ、円弧部59と直線部68とにより挟持されている。さらに、1個の弾性体75は、直線部58と円弧部71とにより挟持され、かつ、円弧部60と直線部69とにより挟持されている。
【0047】
一方、先端工具17が対象物に押し付けられた状態で打撃動作が行われると、モータケース14が中心線A1方向に振動する。すると、ハンドル12が第1所定位置からさらにモータケース14に接近して第2所定位置へ到達する。また、所定の押し付け荷重以上の荷重をハンドル12にかけることでも同様に第2所定位置へ到達する。
【0048】
ハンドル12が、第1所定位置から更にモータケース14へ接近して第2所定位置へ到達すると、振動低減機構46は、図8に示す状態となる。ハンドル12が第1所定位置から第2所定位置へ移動することを、ハンドル12の第2移動段階と呼ぶ。図7の振動低減機構46において、1個の弾性体75は、直線部53と直線部64とに挟持され、1個の弾性体75は、直線部54と直線部65とにより挟持されている。また、1個の弾性体75は、直線部57と直線部68とにより挟持され、かつ、1個の弾性体75は、直線部58と直線部69とにより挟持されている。
【0049】
ハンドル12が移動中、ハンドル12の第1移動段階では、ハンドル12がモータケース14へ接近することに伴い、弾性体75が受ける圧縮荷重は増加する。このため、ハンドル12の移動量が増加することに伴い、弾性体75の変形量は増加する。弾性体75の変形量は、外径の最大値の変化量で表すことができる。
【0050】
例えば、ハンドル12の第1移動段階における弾性体75の変形量は、図4に示す弾性体75の外径の最大値と、図7に示す弾性体75の外径の最大値との差で表すことができる。また、ハンドル12の第2移動段階における弾性体75の変形量は、図7に示す弾性体75の外径の最大値と、図8に示す弾性体75の外径の最大値との差で表すことができる。そして、ハンドル12の第1移動段階、または、第2移動段階の何れにおいても、ハンドル12の移動量が増加すると、弾性体75の変形量も増加する。
【0051】
なお、先端工具17を対象物から離すために、ハンドル12に加える押し付け力を低下させると、弾性体75の弾性復元力により、ハンドル12はモータケース14から離間し、弾性体75が受ける圧縮荷重は減少する。そして、ハンドル12の位置が初期位置へ近づくことに伴い、弾性体75の変形量が減少する。
【0052】
さらに、ハンドル12に加える押し付け力が解除されると、弾性体75の弾性力でハンドル12がモータケース14から離れ、図4のように、球状部74が円弧面49A,50Aと接触した時点で、ハンドル12はモータケース14に対して停止する。つまり、ハンドル12は初期位置で停止する。
【0053】
振動低減機構46の特性は、図9に示されている。図9の線図は、縦軸に先端工具17の押し付け荷重が示され、横軸にハンドル12の移動量がストローク量として示されている。実施の形態1における振動低減機構46の特性は実線で示され、比較例1の振動低減機構の特性は破線で示されている。実施の形態1の振動低減機構46は、ハンドル12が初期位置から第1所定位置まで移動すると、押し付け荷重は第1荷重F1となる。また、ハンドル12が第2所定位置に到達すると、押し付け荷重は第2荷重F2となる。第2荷重F2は第1荷重F1よりも大きい。これは、モータケース14が振動することに加え、打撃動作の反力に打ち勝つために、より大きな力を必要とするからである。
【0054】
動力作業機10は、押し付け荷重が第1荷重F1から第2荷重F2の範囲で使用される。第1荷重F1は、打撃動作を行った際の反力で、先端工具17が対象物から浮き上がる量を、所定量以下に抑制できる値である。
【0055】
図9の線図は、ハンドル12の第1移動段階でハンドル12の移動量に対する押し付け荷重の変化割合いは、ハンドル12の第2移動段階でハンドル12の移動量に対する押し付け荷重の変化割合いよりも大きいことを示す。換言すれば、ハンドル12の第1移動段階での、押し付け荷重の変化に対するハンドル12移動量は、ハンドル12の第2移動段階での、押し付け荷重の変化に対するハンドル12の移動量よりも大きいことを示す。これは、ハンドル12の第1移動段階でハンドル12の移動量に対する弾性体75の変形量が、ハンドル12の第2移動段階でハンドル12の移動量に対する弾性体75の変形量よりも小さいからである。
【0056】
換言すれば、ハンドル12への荷重に対する、ハンドル12のハウジング11へ移動量が、第1移動段階よりも第2移動段階の方が大きい。つまり、第1移動段階における振動低減機構46のバネ定数は、第2移動段階における振動低減機構46のバネ定数よりも大きい。換言すれば、ハンドル12がハウジング11に対して持つ見かけのバネ定数が、第1移動段階よりも第2移動段階の方が小さい。すなわち、第2移動段階における振動低減機構46の振動低減効果は、第1移動段階における振動低減機構46の振動低減効果よりも大きい。
【0057】
これに対して、図9に破線で示す比較例1の特性は、ハンドルの位置が第1所定位置と第2所定位置との間に到達すると、押し付け荷重が第1荷重F1になる。また、ハンドルが第2所定位置からさらに移動して第3所定位置へ到達すると、押し付け荷重が第2荷重F2になる。比較例1の特性は、ハンドルの位置が初期位置から離れることに伴い、押し付け荷重が増加する。また、比較例1の特性は、ハンドルのストローク量の変化量に対する押し付け荷重の変化割合いが、ハンドルの位置に関わりなく、略一定である。
【0058】
特に、押し付け荷重が第1荷重F1以下の範囲では、実施の形態1のハンドルのストローク量の変化量に対する押し付け荷重の変化割合いが、比較例1のハンドルのストローク量の変化量に対する押し付け荷重の変化割合いよりも大きい。この特性は、押し付け荷重が第1荷重F1以下の場合、実施の形態1でハンドル12のストローク量の変化量に対する弾性体の変形量が、比較例1におけるハンドルのストローク量の変化量に対する弾性体の変形量よりも大きいことを意味する。
【0059】
図9における実施の形態1の特性を見ると、初期位置から第1所定位置までの特性と、第1所定位置から第2所定位置までの特性が異なっている。換言すれば、第1所定位置を境界線として振動低減機構の特性が異なっている。
【0060】
なお、初期位置から第1所定位置までのストローク量は、初期位置から第2所定位置までのストローク量よりも小さく、初期位置から第2所定位置までのストローク量は、初期位置から第3所定位置までのストローク量よりも小さい。つまり、先端工具17の押し付け荷重を第2荷重F2に設定する場合、初期位置から第3所定位置までのストローク量と、初期位置から第2所定位置までのストローク量との差LAの分、実施の形態1のハンドル12の方が、比較例1のハンドルよりも、ストローク量を小さくできる。したがって、動力作業機10は、中心線A1方向に大型化することを抑制できる。
【0061】
振動低減機構46の変更例1が、図10に示されている。図10に示す突出部61,62は、図4図5図7図8に示す突出部61,62と異なる。円弧部66に対応する接線は、直線部64と平行であるため示されていない。また、円弧部67に対応する接線は、直線部65と平行であるため示されていない。さらに、円弧部70に対応する接線は、直線部68と平行であるため示されていない。また、円弧部71に対応する接線は、直線部69と平行であるため示されていない。なお、図10に示す保持面51,52は、図4図5図7図8に示す保持面51,52と同じである。また、図10では、弾性体が省略されている。
【0062】
図10に示す振動低減機構46を、図1及び図3の動力作業機10に用いると、図4図5図7図8に示す振動低減機構46と同様に、ハンドル12が第1移動段階にある場合にハンドル12の移動量に対する弾性体の変形量は、ハンドル12が第2移動段階にある場合にハンドル12の移動量に対する弾性体の変形量よりも小さい。
【0063】
振動低減機構46の変更例2が、図11に示されている。図11に示す保持面51,52は、図4図5図7図8に示す保持面51,52と異なる。円弧部55に対応する接線は、直線部53と平行であるため示されていない。また、円弧部56に対応する接線は、直線部54と平行であるため示されていない。さらに、円弧部59に対応する接線は、直線部57と平行であるため示されていない。また、円弧部60に対応する接線は、直線部58と平行であるため示されていない。なお、図11に示す突出部61,62は、図4図5図7図8に示す突出部61,62と同じである。また、図11では、弾性体が省略されている。
【0064】
図11に示す振動低減機構46を、図1及び図3の動力作業機10に用いると、図4図5図7図8に示す振動低減機構46と同様に、ハンドル12が第1移動段階にある場合にハンドル12の移動量に対する弾性体の変形量は、ハンドル12が第2移動段階にある場合にハンドル12の移動量に対する弾性体の変形量よりも小さい。
【0065】
実施の形態1における振動低減機構46を動力作業機10に設ける場合、第1支持部47をハンドル12に設け、第2支持部48をモータケース14に設けることも可能である。このように構成した動力作業機10は、先端工具17を対象物に押し付けて、ハンドル12がモータケース14へ接近すると、第1支持部47が中心線A1方向に移動して、第2支持部48へ接近する。これに対して、ハンドル12がモータケース14から離間すると、第1支持部47が中心線A1方向に移動して、第2支持部48から離間する。したがって、前述と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0066】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に相当する動力作業機が、図12に示されている。図12に示す動力作業機10のうち、図1図3に示す動力作業機10と同じ構成は、図1図3と同じ符号を付してある。図12に示す動力作業機10は、第1接続部76内から第1接続部39内に亘って振動低減機構46が設けられ、かつ、第2接続部77内から第2接続部40内に亘って振動低減機構78が設けられている。振動低減機構78の構造は、振動低減機構46とは異なる。
【0067】
振動低減機構78の構造は、図13及び図14に示されている。振動低減機構78は、金属製のフレーム79と、フレーム79内に配置された複数の弾性体80と、ハンドル12に接続された支持軸81と、支持軸81に固定した回動部材82と、を有する。モータケース14に固定要素83が設けられ、フレーム79は固定要素83に取り付けられている。固定要素83は第2接続部77内から第2接続部40内に亘って配置され、フレーム79は第2接続部40内に配置されている。ハンドル12及び支持軸81は一体であり、固定要素83に対して回動可能である。
【0068】
支持軸81は第2接続部40に固定され、フレーム79内に配置されている。ハンドル12は、支持軸81を中心として所定角度の範囲内で回動可能である。つまり、ハンドル12は、モータケース14に対して中心線A1方向に沿うように、円弧状に移動可能である。動力作業機10の側面視で、金属製のフレーム79は非円形である。フレーム79は、支持軸81の径方向で、支持軸81の外側に配置されている。本実施形態では、フレーム79は略正方形に屈曲されている。フレーム79は、4つの直線部90と、4つの直線部90同士を接続する円弧状の隅部84と、を有する。弾性体80は、支持軸81の回転方向に4個配置されている。4個の弾性体80は、回動部材82の外側であり、かつ、フレーム79の4つの隅部84の内側に別々に配置されている。4個の弾性体80は、合成ゴムまたはエラストマーで一体成形された緩衝材である。4個の弾性体80及びフレーム79は、支持軸81の回転方向の力を受ける要素である。
【0069】
回動部材82は断面形状が略四角形であり、かつ、4つの角部85を有する。4つの角部85は、弾性体80同士の間に別々に配置されている。回動部材82の4辺は、それぞれ保持面89を形成する。各保持面89は、基準面86及び第1傾斜面87及び第2傾斜面88を、それぞれ有する。基準面86及び第1傾斜面87及び第2傾斜面88は、回動部材82の回動方向に並べて配置されている。基準面86及び第1傾斜面87及び第2傾斜面88はそれぞれ平坦であり、基準面86と第1傾斜面87との間に鋭角側の角度θ3が形成され、基準面86と第2傾斜面88との間に鋭角側の角度θ4が形成される。角度θ3は角度θ4よりも大きい。そして、弾性体80は、フレーム79の内面である保持面91と、保持面89とにより挟持されている。
【0070】
図12の動力作業機10において、作業者がハンドル12を掴んで先端工具を対象物に押し付けると、ハンドル12は、初期位置から支持軸81を中心として、中心線A1に沿うように反時計回りに回動する。すると、振動低減機構46の弾性体75が弾性変形し、かつ、振動低減機構78の弾性体80は、保持面89と保持面91とにより挟まれ、弾性体80は圧縮荷重を受ける。これに対して、ハンドル12を押し付ける力が減少すると、弾性体75,80の弾性復元力で、ハンドル12は支持軸81を中心として時計回りに回動し、初期位置へ戻る。
【0071】
振動低減機構78の作用を、図13及び図14を参照して説明する。図13(A)に示す振動低減機構78は、先端工具17が対象物に押し付けられていない状態に相当する。つまり、図13(A)に示す振動低減機構78は、ハンドル12が初期位置にある場合に相当する。
【0072】
図13(B)は、ハンドル12が図12で初期位置から反時計回りに5度回転した時点における振動低減機構78を示す。図14(A)は、ハンドル12が図12で初期位置から反時計回りに10度回転した時点における振動低減機構78を示す。図14(B)は、ハンドル12が図12で初期位置から反時計回りに15度回転した時点における振動低減機構78を示す。振動低減機構78は、ハンドル12が初期位置から回動する角度が増加するほど、弾性体80の変形量が増加する。つまり、中心線A1方向で、ハンドル12の第1接続部39とモータケース14との距離が短くなる程、弾性体80の変形量が増加する。このため、ハンドル12の回動角度が増加するほど、ハンドル12を図12で反時計回りに回動させるために必要な操作力、つまり、トルクが増加する。
【0073】
また、ハンドル12が初期位置から回動する角度が増加する程、弾性体80が第1傾斜面87に接触する面積が減少し、かつ、第2傾斜面88に接触する面積が拡大する。そして、角度θ4は角度θ3よりも小さい。つまり、ハンドル12が初期位置から回動する角度が増加する過程で、ハンドル12の回動角度の変化量に応じた弾性体80の変形量が変化する。このため、ハンドル12を回動するために必要なトルクの増加割合いは、ハンドル12の回動角度に応じて変化する。換言すれば、ハンドル12に加わる荷重の変化量に対応するハンドル12の移動量が変化する。
【0074】
ハンドル12の回動角度と、ハンドル12を回動するために必要なトルクとの関係の例が、図15に示されている。実施の形態2の振動低減機構78の特性が実線で示され、比較例2の特性が破線で示されている。実施の形態2の振動低減機構78において、ハンドル12の回動角度が、初期位置から角度α1の範囲における必要トルクの変化割合いは、ハンドル12の回動角度が、角度α1を超えた時点から回動角度15度に至る範囲における必要トルクの変化割合いよりも大きい。角度α1は、回動角度5度未満の値である。ハンドル12の回動角度が初期位置から角度α1までの範囲が、ハンドル12の第1移動段階であり、ハンドル12の回動角度が、角度α1を超えた時点から回動角度15度に至る範囲が、ハンドル12の第2移動段階である。
【0075】
図15の線図において、実施の形態2における振動低減機構78は、ハンドル12の第1移動段階でハンドル12の回動角度に対する弾性体80の変形量が、ハンドル12の第2移動段階でハンドル12の移動量に対する弾性体75の変形量よりも小さい。つまり、第1移動段階における振動低減機構78のバネ定数は、第2移動段階における振動低減機構78のバネ定数よりも大きい。換言すれば、ハンドル12のハウジング11に対する見かけのバネ定数が、第1移動段階よりも第2移動段階の方が小さい。すなわち、第2移動段階における振動低減機構78の振動低減効果は、第1移動段階における振動低減機構78の振動低減効果よりも大きい。
【0076】
これに対して、図15に破線で示す比較例2の特性は、ハンドルが第1移動段階または第2移動段階の何れを移動する場合でも、ハンドルの回動に必要なトルクの変化割合いは略一定である。
【0077】
特に、ハンドルの回動角度が角度α1以下の範囲では、実施の形態2のハンドルの回動角度の変化量に対する必要トルクの変化割合いが、比較例2ハンドルの回動角度の変化量に対する必要トルクの変化割合いよりも大きい。この特性は、ハンドルの回動角度が角度α1以下の場合、実施の形態2の弾性体80は、ハンドルのストローク量の変化量に対する弾性体の変形量が、比較例2におけるハンドルのストローク量の変化量に対する弾性体の変形量よりも小さいことを意味する。また、角度α1以下における実施の形態2の振動低減機構78のバネ定数は、比較例2の振動低減機構78のバネ定数よりも大きい。
【0078】
そして、実施の形態2の振動低減機構78の場合は、ハンドル12の回動角度が15度であると、トルクN2である。これに対して、比較例2の場合は、ハンドルの回動角度が15度ではトルクN1である。トルクN2はトルクN1よりも大きい。つまり、トルクが同じであれば、実施の形態2におけるハンドル12の回動角度は、比較例2におけるハンドルの回動角度よりも小さくて済む。したがって、動力作業機10は、中心線A1方向に大型化することを抑制できる。
【0079】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に相当する動力作業機が、図16に示されている。図16に示す動力作業機10のうち、図1図3に示す動力作業機10と同じ構成は、図1図3と同じ符号を付してある。図16に示す動力作業機10は、第1接続部39内からモータケース14内に亘って振動低減機構92が設けられている。また、ハンドル12をモータケース14に対して回動可能に接続する支持軸93が設けられている。つまり、ハンドル12は、支持軸93を中心として図16で時計回り及び反時計回りに回動可能である。
【0080】
振動低減機構92は、モータケース14に設けた支持軸94と、ハンドル12の第1接続部39に設けた支持軸95と、支持軸95を中心として揺動可能に取り付けた揺動支持部96と、支持軸94を中心として揺動可能に取り付けた支持部97と、揺動支持部96及び支持部97に支持されたスプリング98と、を有する。スプリング98は、金属製の圧縮コイルスプリングである。支持軸93の中心と支持軸94の中心との距離は、支持軸93の中心と支持軸95の中心との距離よりも短い。つまり、支持軸93を中心とする径方向で、支持軸95は支持軸94よりも外側に配置されている。
【0081】
支持軸94はモータケース14に対して回動可能である。揺動支持部96は、支持軸95を中心としてハンドル12に対して回動可能である。揺動支持部96は軸部99を有し、軸部99は支持部97及び支持軸94の内部を摺動可能に貫通している。軸部99は、支持部97に対して中心線D1方向に移動可能である。中心線D1は軸部99の中心であり、スプリング98は中心線D1方向に伸縮自在であり、かつ、中心線D1方向の弾発力を有する。
【0082】
振動低減機構92は、モータケース14内から第1接続部39内に亘って配置され、振動低減機構92の一部は、モータケース14及び第1接続部39の外に配置されている。また、カバー100が設けられている。カバー100は、振動低減機構92のうち、モータケース14及び第1接続部39の外に配置されている箇所を覆う。カバー100は、合成ゴムを蛇腹形状に一体成形したものであり、カバー100の第1端部は第1接続部39に取り付けられ、カバー100の第2端部はモータケース14に取り付けられている。
【0083】
振動低減機構92の作用を、図16図18を参照して説明する。なお、中心線A1は、図16図18において、便宜上、支持軸94の中心を通る位置に示してある。まず、図16に示す振動低減機構92は、先端工具17が対象物に押し付けられていない状態である。つまり、図16に示す振動低減機構92は、ハンドル12が初期位置にある場合に相当する。図16において、ハンドル12はスプリング98の弾発力で時計回りに付勢されており、ハンドル12は、第1ストッパにより初期位置で停止している。ハンドル12が初期位置で停止している場合、中心線A1と中心線D1との間に鋭角側の角度α1が設定されている。
【0084】
作業者がハンドル12を手で掴み、かつ、先端工具を対象物に押し付けると、スプリング98が収縮するとともに、ハンドル12は、モータケース14に対して、支持軸93を中心として反時計回りに回動する。つまり、ハンドル12は、スプリング98の弾発力に抗して回動する。このため、図17のように中心線A1と中心線D1との間に形成されるに鋭角側の角度α2は、角度α1よりも大きい。図17の位置からハンドル12を更に反時計回りに回動すると、ハンドル12は第2ストッパにより、図18に示す第3所定位置で停止する。
【0085】
図18において、中心線A1と中心線D1との間に形成される鋭角側の角度α3は、角度α2よりも大きい。なお、ハンドル12に加えた押し付け力を解除すると、ハンドル12はスプリング98の弾発力で時計回りに回動し、ハンドル12は第1ストッパにより初期位置で停止する。
【0086】
図19は、ハンドル12のストローク量と、ハンドル12の押し付け荷重との関係を示す線図である。ハンドル12のストローク量は、中心線A1方向におけるハンドル12の移動量である。ハンドル12の押し付け荷重は、スプリング98の中心線D1方向の弾発力に応じた分力により定まる。分力は、中心線A1方向の力である。
【0087】
ハンドル12に設けた揺動支持部96と、モータケース14に設けた支持部97とが、ハンドル12の移動方向である中心線A1に対して、直交する方向に離間した位置に配置されている。ハンドル12の移動方向は、ストローク方向である。ここで、ハンドル12に荷重をかけて、ハンドル12をハウジング11に近づく方向にストロークさせたとき、スプリング98の中心線D1と、ハンドル12の動作方向である中心線A1とのなす角度が変化する。そして、中心線A1方向にかかるスプリング98の復元力、つまり、分力が減少するためである。なお、ここでは、中心線D1と、中心線A1とのなす角度は増加する。
【0088】
ハンドル12のストローク量がL1である場合は、押し付け荷重が第1荷重F1である。また、ハンドル12のストローク量がL2である場合は、押し付け荷重が第2荷重F2である。ハンドル12のストローク量がL3である場合は、押し付け荷重が第3荷重F3である。さらに、ハンドル12のストローク量がL4である場合は、押し付け荷重が第4荷重F4である。ストローク量L2はストローク量L1よりも大きく、ストローク量L3はストローク量L2よりも大きく、ストローク量L4はストローク量L3よりも大きい。第2荷重F2は第1荷重F1よりも大きく、第3荷重F3は第2荷重F2よりも大きく、第4荷重F4は第3荷重F3よりも大きい。
【0089】
ストローク量L2は、図17の角度α2である場合に相当し、ストローク量L4は、図18の角度α3である場合に相当する。ストローク量L1は、図16の角度α1と、図17の角度α2との間の角度に相当する。ストローク量L3は、図17の角度α2と、図18の角度α3との間の角度に相当する。そして、ハンドル12のストローク量が大きい程、ハンドル12の押し付け荷重が大きい。言い換えれば、ハンドル12のストローク量が大きい程、スプリング98の変形量は大きい。
【0090】
また、ハンドル12が初期位置からストローク量L3に移動するまでの間における、ストローク量の変化に対する押し付け荷重の変化割合いと、ハンドル12がストローク量L3からストローク量L4に移動するまでの間における、ストローク量の変化に対する押し付け荷重の変化割合いと、が異なる。具体的には、ハンドル12が初期位置からストローク量L3に移動するまでの間における、ストローク量の変化に対する押し付け荷重の変化割合いは、ハンドル12がストローク量L3からストローク量L4に移動するまでの間における、ストローク量の変化に対する押し付け荷重の変化割合いよりも大きい。
【0091】
つまり、ハンドル12が初期位置からストローク量L3に移動するまでの間における振動低減機構92のバネ定数は、ハンドル12がストローク量L3からストローク量L4に移動するまでの間における振動低減機構92のバネ定数よりも大きい。換言すれば、ハンドル12に対する所定荷重当たりのハンドル12のハウジング11に対する移動量が、初期位置からストローク量L3に移動するまで間よりも、ストローク量L3からストローク量L4に移動する間の方が大きい。このため、実施の形態3におけるハンドル12のストローク量をなるべく短くすることができる。したがって、動力作業機10は、中心線A1方向に大型化することを抑制できる。また、スプリング98を支持する揺動支持部96と支持部97を、ハンドル12及びハウジング11のそれぞれに対して回動する支持軸94,95によって揺動可能に支持している。したがって、揺動支持部96が支持軸94から脱落すること、及び支持部97が支持軸95から脱落すること、を抑制できる。また、ハンドル12のストロークの変化に対して、角度を変化させながら伸縮動作するスプリング98を、スムーズに伸縮動作させることができる。
【0092】
また、実施の形態3においては、支持軸93を中心にハンドル12が回動可能である構成としたが、第2接続部40に振動低減機構92を更に設け、ハンドル12が中心線A1方向と平行に移動するような構成としても良い。
【0093】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に相当する振動低減機構が、図20に示されている。図20に示す振動低減機構101は、図1の振動低減機構46の少なくとも一方に替えて用いることが可能である。図20に示す振動低減機構101は、弾性体102と、接触子103と、を有する。弾性体102は2個設けられており、2個の弾性体102はモータケース14に取り付けられている。2個の弾性体102は金属製の板バネである。
【0094】
弾性体102は、互いに平行な一対のプレート部104と、プレート部104同士を接続する湾曲部105と、を有する。2個の弾性体102は、中心線A1を隔てて線対称に配置されている。接触子103はハンドル12に取り付けられている。接触子103は、2個の弾性体102の間に配置されている。
【0095】
接触子103は、1組の第1接触面106及び1組の第2接触面107を有する。第1接触面106は、接触子103の先端108と、第2接触面107との間に配置されている。中心線A1は先端108を通る。1組の第1接触面106は、中心線A1を隔てて線対称に配置され、1組の第2接触面107は、中心線A1を隔てて線対称に配置されている。第1接触面106と中心線A1との間にそれぞれ形成される狭い方の角度β1は、第2接触面107と中心線A1との間にそれぞれ形成される狭い方の角度β2よりも大きい。
【0096】
ハンドル12が支持軸93を中心として回動すると、接触子103は、2個の弾性体102に対して中心線A1方向に移動し、接触子103は、中心線A1方向の力で2個の弾性体102へ押し付けられる。まず、ハンドル12が初期位置から第1所定位置の間で移動する場合、図20(A)のように、1組の第1接触面106が湾曲部105に押し付けられ、2個の弾性体102がそれぞれ弾性変形する。また、ハンドル12が第1所定位置を越えた位置から、第2所定位置の間で移動する場合、図20(B)のように、1組の第2接触面107が湾曲部105に押し付けられ、2個の弾性体102がそれぞれ弾性変形する。このように、接触子103は、2つの湾曲部105の間へ食い込む。
【0097】
接触子103の第1接触面106が湾曲部105に押し付けられた場合、第1接触面106に対して直角な方向に反力F5が発生する。その反力F5により中心線A1方向の分力F6が発生する。接触子103の第2接触面107が湾曲部105に押し付けられた場合、第2接触面107に対して直角な方向に反力F7が発生する。その反力F7により中心線A1方向の分力F8が発生する。
【0098】
中心線A1と反力F5との間に形成される鋭角側の角度θ5は、中心線A1と反力F7との間に形成される鋭角側の角度θ6よりも小さい。このため、分力F6は分力8よりも大きい。つまり、第1移動段階におけるハンドル12のストローク量の変化に対する押し付け荷重の変化割合いは、第2移動段階におけるハンドル12のストローク量の変化に対する押し付け荷重の変化割合いよりも大きい。言い換えれば、第1移動段階におけるハンドル12のストローク量の変化に対する弾性体102の変形量は、第2移動段階におけるハンドル12のストローク量の変化に対する弾性体102の変形量よりも小さい。振動低減機構101のバネ定数は、第1移動段階における値の方が、第2移動段階における値よりも大きい。
【0099】
このように、振動低減機構101を有する動力作業機10は、ハンドル12の押し付け荷重と、ハンドル12のストローク量との関係が、図9に示す実施の形態1の特性とほぼ同じになる。したがって、振動低減機構101を有する動力作業機10は、振動低減機構46を有する作業機と同等の効果を得ることができる。
【0100】
なお、実施の形態4の振動低減機構101を動力作業機10に用いる場合、2個の弾性体102をハンドル12に設け、接触子103をモータケース14に設けることも可能である。この場合、ハンドル12を回動すると、2個の弾性体102が接触子103に対して中心線A1方向に押し付けられ、前述と同様の作用及び効果を得ることができる。さらに、実施の形態4の振動低減機構101は、図12の振動低減機構46に代えて用いることも可能である。
【0101】
実施の形態1〜実施の形態4では、ハンドルの移動段階、または、ハンドルの回動段階が異なると、ハンドルのハウジングに対して持っているバネ定数に大小関係が生じる、または変化すること、を説明している。バネ定数は、振動低減機構のバネ定数である。各実施の形態で説明した振動低減機構のバネ定数の大小関係及びバネ定数の変化は、共に見掛け上のバネ定数を意味する。つまり、振動低減機構を構成する弾性体のバネ定数は一定、かつ変化しない。
【0102】
また、実施の形態1〜実施の形態4はそれぞれハンドルとハウジングの接続部に振動低減機構を設ける構成であるため、ハンドルがピストンの動作方向(打撃方向)にストロークするような構成であれば各々を組み合わせてもよい。
【0103】
ここで、実施の形態で説明した事項と、本発明の構成との対応関係を説明する。動力作業機10が、本発明の動力作業機に相当し、電動モータ24が、本発明のモータに相当し、ハウジング11が、本発明の本体に相当し、ハンドル12が、本発明のハンドルに相当し、弾性体75が本発明の第1弾性体に相当し、弾性体80が、本発明の第2弾性体に相当する。また、ピストン22が、本発明のピストンに相当し、中心線A1方向が、本発明で「ピストンが往復動する方向」、「ハンドルが本体に対して接近及び離間する方向」及び「ハンドルが本体に接近する方向」に相当する。また、ハンドル12が支持軸81または支持軸93を中心として円弧状に回動する場合、ハンドル12の円弧状の動作方向が、本発明の「ハンドルが本体に接近する方向」に相当する。
【0104】
さらに、保持面51,52が、本発明の第1保持面に相当し、保持面63,109が、本発明の第2保持面に相当する。また、円弧部55,56,59,60が、本発明の第1傾斜面に相当し、直線部53,54,57,58が、本発明の第2傾斜面に相当する。また、円弧部66,67,70,71が、本発明の第3傾斜面に相当し、直線部64,65,68,69が、本発明の第4傾斜面に相当する。さらに、角度θ2は、本発明の第1角度及び第3角度に相当し、角度θ1は、本発明の第2角度及び第4角度に相当する。
【0105】
また、ハンドル12が、初期位置から第1所定位置に達するまでの間が、本発明の「ハンドルが本体へ接近を開始した位置」に相当し、ハンドル12が第1所定位置を越えて第2所定位置に到達するまでの間が、本発明の「ハンドルの位置が所定位置を越えた後」に相当する。
【0106】
さらに、接触子103が、本発明の接触子に相当し、弾性体102が、本発明の弾性体に相当し、第1接触面106が、本発明の第1接触面に相当し、第2接触面107が、本発明の第2接触面に相当し、角度β1が、本発明の第5角度に相当し、角度β2が、本発明の第6角度に相当する。
【0107】
さらに、支持軸81が、本発明の支持軸に相当し、保持面91が、本発明の第保持面に相当し、保持面89が、本発明の第保持面に相当し、基準面86が、本発明の基準面に相当し、第1傾斜面87が、本発明の第傾斜面に相当し、第2傾斜面88が、本発明の第傾斜面に相当し、角度θ3が、本発明の第1傾斜角度に相当し、角度θ4が、本発明の第2傾斜角度に相当する。
【0108】
さらに、支持軸94が、本発明の第1支持部に相当し、支持軸95が、本発明の第2支持部に相当し、スプリング98が、本発明の第3弾性体に相当し、中心線D1が、本発明の「第3弾性体が収縮する方向」に相当し、中心線A1と中心線D1との間に形成される角度α1〜角度α3が、本発明の「第3弾性体が収縮する方向と所定方向との間に形成される鋭角側の傾斜角度」に相当する。
【0109】
さらに、出力軸27が、本発明の出力軸に相当し、運動変換機構30が、本発明の運動変換機構に相当し、先端工具17が、本発明の先端工具に相当し、中心線A1方向が、本発明における「打撃力の方向」に相当する。
【0110】
実施の形態3と本発明との関係を説明すると、ハンドル12が、初期位置からストローク量L3となるまで回動した時点で、中心線A1と中心線D1との間に形成される鋭角側の角度が、本発明の第3傾斜角度である。また、第3傾斜角度に相当するハンドル12の位置が、本発明の第1所定位置である。さらに、初期位置からストローク量L3となるまで回動した時点で、中心線A1と中心線D1との間に形成される鋭角側の角度が、本発明の第4傾斜角度である。また、第4傾斜角度に対応するハンドル12の位置が、本発明の第2所定位置である。
【0111】
本発明の動力作業機は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明の動力作業機は、先端工具に軸線方向の打撃力を加えるハンマと、先端工具に軸線方向の打撃力及び回転力を加えるハンマドライバ及びハンマドリルと、を含む。本発明において、モータの回転力をピストンの往復動作力に変換する運動変換機構は、クランク機構の他、カム機構を含む。本発明のモータは、電動モータの他、油圧モータ、空気圧モータ、内燃機関を含む。電動モータに電力を供給する電源は、直流電源または交流電源の何れでもよい。また、電動モータは、ブラシ付きモータまたはブラシレスモータの何れでもよい。
【0112】
本発明の動力作業機は、モータの中心線とピストンの動作方向とが平行である構造と、モータの中心線とピストンの動作方向とが交差する構造と、を含む。本発明における弾性体は、金属製のスプリングと、合成ゴムまたはエラストマーで一体成形された緩衝材と、を含む。本発明において、ハンドルが本体に対して離間及び離間可能とは、ハンドルが本体に対して直線状に移動すること、ハンドルが本体に対して円弧状に移動すること、を含む。実施形態のハウジングが、本発明における一方の部材であると、ハンドルが、本発明における他方の部材である。実施形態のハンドルが、本発明における一方の部材であると、ハウジングが、本発明における他方の部材である。
【符号の説明】
【0113】
10…動力作業機、11…ハウジング、12…ハンドル、17…先端工具、22…ピストン、24…電動モータ、27…出力軸、30…運動変換機構、52,89,91,109…保持面、53,54,57,58,64,65,68,69…直線部、55,56,59,60,66,67,70,71…円弧部、75,80,102…弾性体、81,93,94,95…支持軸、86…基準面、87…第1傾斜面、88…第2傾斜面、98…スプリング、103…接触子、106…第1接触面、107…第2接触面、A1,D1…中心線、θ1,θ2,θ3,θ4,β1,β2…角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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