(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一例である実施形態について説明する。なお、図面中、同様の機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
<画像形成装置/プロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により、電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、電子写真感光体の表面に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、クリーニングブレードにより除去したトナーを前記現像手段へ供給するトナー供給手段と、を備える。
一方、電子写真感光体(以下「感光体」、又は「本実施形態に係る電子写真感光体」とも称する)は、導電性基体と、導電性基体上に配置された感光層と、を有する。そして、感光層は、電荷発生材料と、一般式(CT1)で示される電荷輸送材料(以下「ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)」とも称する)と、一般式(CT2)で示される電荷輸送材料(以下「ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)」とも称する)と、ビフェニル骨格を有する構造単位を含むビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂(以下「BPポリカーボネート樹脂」とも称する)と、フッ素含有樹脂粒子と、分子量300以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤(以下単に「ヒンダードフェノール系酸化防止剤」とも称する)と、を含む。
【0035】
なお、感光層は、電荷発生層と電荷輸送層とを有する機能分離型の感光層であってもよいし、単層型の感光層であってもよい。機能分離型の感光層の場合、電荷発生層に電荷発生剤を含み、電荷輸送層に、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)と、ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)と、BPポリカーボネート樹脂と、フッ素含有樹脂粒子と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、を含む。
【0036】
本実施形態に係る画像形成装置は、上記構成により、トナーリクレーム方式の画像形成装置(トナー供給手段を備える画像形成装置)において、高速で画像を連続して出力したときに生じる「つらら状の画像欠陥」の発生を抑制する。その理由は、以下に示すように推察される。
【0037】
近年、資源の有効活用の点から、除去されたトナーについても再利用することが要求されており、クリーニング手段によって除去されたトナー(以下「回収トナー」とも称する)を現像手段に供給するトナー供給手段(トナーリクレーム方式)を採用する画像形成装置が増えている。一方で、トナーを再利用すると、回収トナーに混在する紙粉(炭酸カルシウム等)及び逆極性トナーにより、白抜け又は黒点等の画像欠陥が生じることがある。
【0038】
このため、回収トナーに混在する紙粉(炭酸カルシウム等)及び逆極性トナーを除去する方法として、ファーブラシに紙粉と逆極性のバイアスを印加して感光体上のトナー像に含まれる紙粉を除去する方法、回収トナーを現像手段に戻して再利用するトナーと廃トナーとに分別するフィルタに通す方法が提案されている。しかし、これら方法を採用しても、現像手段内には、紙粉(炭酸カルシウム等)及び逆極性トナーが蓄積してゆく。
【0039】
ここで、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)は、電荷移動度が高く、電荷輸送能の高い感光層(又は電荷輸送層)を得る上で適している。一方で、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)は、溶剤に対する溶解性が低い性質がある。このため、高い電荷輸送能を有する感光層を得るためには、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)と共に、電荷移動度が比較的高く、溶剤に対する溶解性が高いベンジジン系電荷輸送材料(CT2)を併用することがよい。
【0040】
そして、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)及びベンジジン系電荷輸送材料(CT2)を共に含む感光層を有する感光体は、電荷移動度が高いため、高速応答性が高く、高速での画像形成(例えばプロセス速度(記録媒体の搬送速度)100mm/sec以上での画像形成)に適している。
【0041】
しかし、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)及びベンジジン系電荷輸送材料(CT2)を共に含む感光層を有する感光体を、トナーリクレーム方式の画像形成装置に採用し、高速で画像を連続して出力(例えば1000000枚出力)すると、「つらら状のディフェクト」が発生してしまうことがある。
【0042】
「つらら状の画像欠陥」と称される画像欠陥が生じる原因は、高速での画像の連続出力により、現像手段内に紙粉(炭酸カルシウム等)及び逆極性トナーが徐々に蓄積されてゆくと、紙粉(炭酸カルシウム等)及び逆極性トナーが感光体とクリーニングブレードとの接触部(以下「クリーニング部」とも称する)に到達し、クリーニング部のトナー溜まりを起点に、クリーニング部から紙粉(炭酸カルシウム等)及び逆極性トナーがすり抜けて、クリーニング部の感光体回転方法下流側で「つらら状」に成長するためと考えられる。つまり、「つらら状の画像欠陥」は、クリーニング部の感光体回転方法下流側で「つらら状」に成長した紙粉(炭酸カルシウム等)及び逆極性トナーがクリーニング部から離脱するために生じると考えられる。
【0043】
特に、結着樹脂として、BPポリカーボネート樹脂を含む感光層を有する感光体は、耐摩耗性が高くなると共に、クリーニングブレートとの摩擦力が低減される。加えて、フッ素含有樹脂粒子を含む感光層を有する感光体は、更に、クリーニングブレートとの摩擦力が低減される。BPポリカーボネート樹脂及びフッ素含有樹脂粒子を含む感光層を有する感光体は、クリーニングブレードとの摩擦力が低いが故に、例えば、偏在して残留トナーがクリーニング部へ到達し、感光体とクリーニングブレードとの摩擦力が部分的に変化すると、ブレードの挙動が変化し易くなる。ブレードの挙動が変化すると、クリーニング部から紙粉(炭酸カルシウム等)及び逆極性トナーが部分的にすり抜けて、クリーニング部の感光体回転方法下流側で「つらら状」に成長し易くなる。このため、「つらら状の画像欠陥」が顕著に発生することがある。
【0044】
これに対して、電荷発生材料と、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)と、ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)と、BPポリカーボネート樹脂と、フッ素含有樹脂粒子とを含む感光層に、更に、酸化防止剤として、分子量300以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤を含ませると、偏在して残留トナーがクリーニング部へ到達し、感光体とクリーニングブレードとの摩擦力が部分的に変化しても、ブレードの挙動が変化し難くなる。これは、嵩高いヒンダードフェノール系酸化防止剤が、各電荷輸送材料、BPポリカーボネート樹脂と分子内又は分子間で相互作用し、感光層に粘性及び弾性が付与され、クリーニングブレードとの密着性が高まるためと考えられる。そして、ブレードの挙動変化が抑制されるため、クリーニング部の感光体回転方向下流側で生じる、紙粉(炭酸カルシウム等)及び逆極性トナーの「つらら状」の成長が抑制される。
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の分子量を300以上とすると、感光層を形成するときの乾燥工程において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が揮発することが抑制される。つまり、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の分子量を300以上とすると、感光層中に上記作用を発現する量でヒンダードフェノール系酸化防止剤が残留すると考えられる。
【0045】
以上から、本実施形態に係る画像形成装置は、トナーリクレーム方式の画像形成装置(トナー供給手段を備える画像形成装置)において、高速で画像を連続して出力したときに生じる「つらら状の画像欠陥」の発生を抑制すると推測される。
【0046】
なお、本実施形態に係る画像形成装置では、感光体の感光層に、BPポリカーボネート樹脂及びフッ素含有樹脂粒子を含むため、感光層の耐摩耗性が向上し、長寿命化が実現される。
【0047】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0048】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0049】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0050】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体と、現像手段と、クリーニング手段と、トナー供給手段とを備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体、現像手段、クリーニング手段、及びトナー供給手段以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、及び転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0051】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0052】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
【0053】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、クリーニング装置13(クリーニング手段の一例)、及びトナー供給搬送路15(トナー供給手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0054】
なお、
図2には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0055】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0056】
<電子写真感光体>
以下、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電子写真感光体7Aの層構成の一例を示す概略部分断面図である。
図1に示す電子写真感光体7Aは、導電性基体4上に、下引層1、電荷発生層2及び電荷輸送層3がこの順序で積層された構造を有する。そして、電荷発生層2及び電荷輸送層3が感光層5を構成している。電子写真感光体7Aの場合、電荷輸送層3が最表面層を構成している。
【0057】
なお、電子写真感光体7Aは、下引層1が設けられていない層構成であってもよい。また、各電子写真感光体7Aは、電荷発生層2と電荷輸送層3との機能が一体化した単層型感光層を有する感光体であってもよい。単層型感光層を有する感光体の場合、単層型感光層が最表面層を構成する。
【0058】
以下、電子写真感光体の各要素について説明する。なお、電子写真感光体の各要素の符号は、符号は省略して説明する。
【0059】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が10
13Ωcm未満であることをいう。
【0060】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0061】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0062】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。粗面化のための層としては、後述の下引層を用いることも可能である。
【0063】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0064】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0065】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0066】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0067】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0068】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10
2Ωcm以上10
11Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0069】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m
2/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0070】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0071】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0072】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0073】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0076】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0077】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0078】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0079】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0080】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0081】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0082】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0083】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0084】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0085】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0086】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0087】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0088】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0089】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0090】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0091】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0092】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0093】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0094】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0095】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0096】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0097】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0098】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは18μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0099】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0100】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0101】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0102】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0103】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro−Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0104】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0105】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4−189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0106】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;特開2004−78147号公報、特開2005−181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等が好ましい。
【0107】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp−型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0108】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn−型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n−型の電荷発生材料としては、例えば、特開2012−155282号公報の段落[0288]〜[0291]に記載された化合物(CG−1)〜(CG−27)が挙げられるがこれに限られるものではない。
なお、n−型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn−型とする。
【0109】
これらの中でも、電荷発生材料としては、電荷発生効率の点で、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料であることが好ましく、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がより好ましい。
特に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、例えば、600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がより優れた分散性が得られる観点から好ましい。
【0110】
また、上記の810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが好ましい。具体的には、平均粒径が0.20μm以下であることが好ましく、0.01μm以上0.15μm以下であることがより好ましい。一方、BET比表面積が45m
2/g以上であることが好ましく、50m
2/g以上であることがより好ましく、55m
2/g以上120m
2/g以下であることが特に好ましい。平均粒径は、体積平均粒径(d50平均粒径)でレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)にて測定した値である。また、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
【0111】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の最大粒径(一次粒子径の最大値)は、1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、更に好ましくは0.3μm以下である。
【0112】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が0.2μm以下、最大粒径が1.2μm以下であり、且つ、比表面積値が45m
2/g以上であることが好ましい。
【0113】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜に回折ピークを有するV型であることが好ましい。
【0114】
電荷発生材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0115】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が10
13Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0116】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0117】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0118】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0119】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0120】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0121】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0122】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0123】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とフッ素含有樹脂粒子とを含む層である。
電荷輸送材料としては、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)及びベンジジン系電荷輸送材料(CT2)が適用される。また、結着樹脂としては、BPポリカーボネート樹脂が適用される。そして、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)、ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)、BPポリカーボネート樹脂、及びフッ素含有樹脂粒子を含む電荷輸送層には、更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む。
【0124】
−電荷輸送材料−
ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)について説明する。
ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)は、下記一般式(CT1)で示される電荷輸送材料である。
【0126】
一般式(CT1)中、R
C11、R
C12、R
C13、R
C14、R
C15、及びR
C16は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、又は、炭素数6以上30以下のアリール基を表し、隣接する2つの置換基同士が結合して炭化水素環構造を形成してもよい。
n及びmは、各々独立に、0、1又は2を表す。
【0127】
一般式(CT1)において、R
C11、R
C12、R
C13、R
C14、R
C15、及びR
C16が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0128】
一般式(CT1)において、R
C11、R
C12、R
C13、R
C14、R
C15、及びR
C16が表すアルキル基としては、炭素数1以上20以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下)の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
直鎖状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等が挙げられる。
分岐状のアルキル基として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、イソウンデシル基、sec−ウンデシル基、tert−ウンデシル基、ネオウンデシル基、イソドデシル基、sec−ドデシル基、tert−ドデシル基、ネオドデシル基、イソトリデシル基、sec−トリデシル基、tert−トリデシル基、ネオトリデシル基、イソテトラデシル基、sec−テトラデシル基、tert−テトラデシル基、ネオテトラデシル基、1−イソブチル−4−エチルオクチル基、イソペンタデシル基、sec−ペンタデシル基、tert−ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、イソヘキサデシル基、sec−ヘキサデシル基、tert−ヘキサデシル基、ネオヘキサデシル基、1−メチルペンタデシル基、イソヘプタデシル基、sec−ヘプタデシル基、tert−ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、イソオクタデシル基、sec−オクタデシル基、tert−オクタデシル基、ネオオクタデシル基、イソノナデシル基、sec−ノナデシル基、tert−ノナデシル基、ネオノナデシル基、1−メチルオクチル基、イソイコシル基、sec−イコシル基、tert−イコシル基、ネオイコシル基等が挙げられる。
これらの中でも、アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基等の低級アルキル基が好ましい。
【0129】
一般式(CT1)において、R
C11、R
C12、R
C13、R
C14、R
C15、及びR
C16が表すアルコキシ基としては、炭素数1以上20以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下)の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
直鎖状のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基等が挙げられる。
分岐状のアルコキシ基として具体的には、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec−ヘキシルオキシ基、tert−ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec−ヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec−ノニルオキシ基、tert−ノニルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec−デシルオキシ基、tert−デシルオキシ基、イソウンデシルオキシ基、sec−ウンデシルオキシ基、tert−ウンデシルオキシ基、ネオウンデシルオキシ基、イソドデシルオキシ基、sec−ドデシルオキシ基、tert−ドデシルオキシ基、ネオドデシルオキシ基、イソトリデシルオキシ基、sec−トリデシルオキシ基、tert−トリデシルオキシ基、ネオトリデシルオキシ基、イソテトラデシルオキシ基、sec−テトラデシルオキシ基、tert−テトラデシルオキシ基、ネオテトラデシルオキシ基、1−イソブチル−4−エチルオクチルオキシ基、イソペンタデシルオキシ基、sec−ペンタデシルオキシ基、tert−ペンタデシルオキシ基、ネオペンタデシルオキシ基、イソヘキサデシルオキシ基、sec−ヘキサデシルオキシ基、tert−ヘキサデシルオキシ基、ネオヘキサデシルオキシ基、1−メチルペンタデシルオキシ基、イソヘプタデシルオキシ基、sec−ヘプタデシルオキシ基、tert−ヘプタデシルオキシ基、ネオヘプタデシルオキシ基、イソオクタデシルオキシ基、sec−オクタデシルオキシ基、tert−オクタデシルオキシ基、ネオオクタデシルオキシ基、イソノナデシルオキシ基、sec−ノナデシルオキシ基、tert−ノナデシルオキシ基、ネオノナデシルオキシ基、1−メチルオクチルオキシ基、イソイコシルオキシ基、sec−イコシルオキシ基、tert−イコシルオキシ基、ネオイコシルオキシ基等が挙げられる。
これらの中でも、アルコキシ基としては、メトキシ基が好ましい。
【0130】
一般式(CT1)において、R
C11、R
C12、R
C13、R
C14、R
C15、及びR
C16が表すアリール基としては、炭素数6以上30以下(好ましくは6以上20以下、より好ましくは6以上16以下)のアリール基が挙げられる。
アリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニリル基などが挙げられる。
これらの中でも、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0131】
なお、一般式(CT1)において、R
C11、R
C12、R
C13、R
C14、R
C15、及びR
C16が表す上記各置換基は、さらに置換基を有する基も含む。この置換基としては、上記例示した原子および基(例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基など)が挙げられる。
【0132】
一般式(CT1)において、R
C11、R
C12、R
C13、R
C14、R
C15、及びR
C16の隣接する二つの置換基同士(例えばR
C11及びR
C12同士、R
C13及びR
C14同士、R
C15及びR
C16同士)が連結した炭化水素環構造における、当該置換基同士を連結する基としては、単結合、2,2’−メチレン基、2,2’−エチレン基、2,2’−ビニレン基などが挙げられ、これらの中でも単結合、2,2’−メチレン基が好ましい。
ここで、炭化水素環構造として具体的には、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造、シクロアルカンポリエン構造等が挙げられる。
【0133】
一般式(CT1)において、n及びmは、1であることが好ましい。
【0134】
一般式(CT1)において、電荷輸送能の高い感光層(電荷輸送層)形成の点から、R
C11、R
C12、R
C13、R
C14、R
C15、及びR
C16が水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、又は炭素数1以上20以下のアルコキシ基を表し、m及びnが1又は2を表することが好ましく、R
C11、R
C12、R
C13、R
C14、R
C15、及びR
C16が水素原子を表し、m及びnが1を表すことがより好ましい。
つまり、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)は、下記構造式(CT1A)で示される電荷輸送材料(例示化合物(CT1−3))であることがより好ましい。
【0136】
以下に、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)の具体例を示すが、これに限定されるわけではない。
【0138】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。また、置換基の前に付す番号は、ベンゼン環に対する置換位置を示している。
・−CH
3:メチル基
・−OCH
3:メトキシ基
【0139】
ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0140】
ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)について説明する。
ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)は、下記一般式(CT2)で示される電荷輸送材料である。
【0142】
一般式(CT2)中、R
C21、R
C22、及びR
C23は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルコキシ基、又は、炭素数6以上10以下のアリール基を表す。
【0143】
一般式(CT2)において、R
C21、R
C22、及びR
C23が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0144】
一般式(CT2)において、R
C21、R
C22、及びR
C23が表すアルキル基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下)の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
直鎖状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
分岐状のアルキル基として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基等が挙げられる。
これらの中でも、アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基等の低級アルキル基が好ましい。
【0145】
一般式(CT2)において、R
C21、R
C22、及びR
C23が表すアルコキシ基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下)の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
直鎖状のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。
分岐状のアルコキシ基として具体的には、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec−ヘキシルオキシ基、tert−ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec−ヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec−ノニルオキシ基、tert−ノニルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec−デシルオキシ基、tert−デシルオキシ基等が挙げられる。
これらの中でも、アルコキシ基としては、メトキシ基が好ましい。
【0146】
一般式(CT2)において、R
C21、R
C22、及びR
C23が表すアリール基としては、炭素数6以上10以下(好ましくは6以上9以下、より好ましくは6以上8以下)のアリール基が挙げられる。
アリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
これらの中でも、アリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0147】
なお、一般式(CT2)において、R
C21、R
C22、及びR
C23が表す上記各置換基は、さらに置換基を有する基も含む。この置換基としては、上記例示した原子および基(例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基など)が挙げられる。
【0148】
一般式(CT2)において、特に、電荷輸送能の高い感光層(電荷輸送層)形成の点から、R
C21、R
C22、及びR
C23が、各々独立に、水素原子、又は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表すことが好ましく、R
C21、及びR
C23が水素原子を表し、R
C22が炭素数1以上10以下のアルキル基(特に、メチル基)を表すことがより好ましい。
具体的には、ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)は、下記構造式(CT2A)で示される電荷輸送材料(例示化合物(CT2−2))であることが特に好ましい。
【0150】
以下に、ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)の具体例を示すが、これに限定されるわけではない。
【0152】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。また、置換基の前に付す番号は、ベンゼン環に対する置換位置を示している。
・−CH
3:メチル基
・−C
2H
5:エチル基
・−OCH
3:メトキシ基
・−OC
2H
5:エトキシ基
【0153】
ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0154】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤について説明する。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール環を有し、且つ分子量が300以上の化合物である。
【0155】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール環は、例えば、炭素数4以上8以下のアルキル基(例えば炭素数4以上8以下の分岐状のアルキル基)が少なくとも一つ置換されたフェノール環である。より具体的には、ヒンダードフェノール環は、例えば、フェノール性水酸基に対してオルトの位置が三級アルキル基(例えばtert−ブチル基)で置換されたフェノール環である。
【0156】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、
1)ヒンダードフェノール環を1つ有する酸化防止剤、
2)ヒンダードフェノール環を2つ以上4つ以下有し、且つ直鎖又は分岐状の2価以上4価以下の脂肪族炭化水素基からなる連結基、又は2価以上4価以下の脂肪族炭化水素基の炭素−炭素の結合間に、エステル結合(−C(=O)O−)及びエーテル結合(−O−)の少なくとも一方が介在した連結基で、2つ以上4つ以下のヒンダードフェノール環が連結された酸化防止剤
3)2つ以上4つ以下のヒンダードフェノール環と、一つのベンゼン環(未置換、又はアルキル基等で置換された置換ベンゼン環)又はイソシアヌレート環とを有し、2つ以上4つ以下のヒンダードフェノール環が、各々、ベンゼン環又はイソシアヌレート環とアルキレン基を介して連結された酸化防止剤
等が挙げられる。
【0157】
具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、つらら状の画像欠陥を抑制する点から、下記一般式(HP)で示される酸化防止剤が好ましい。
【0159】
一般式(HP)中、R
H1、及びR
H2は、各々独立に、炭素数4以上8以下の分岐状のアルキル基を表す。
R
H3、及びR
H4は、各々独立に、水素原子、又は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。
R
H5は、炭素数1以上10以下のアルキレン基を表す。
【0160】
一般式(HP)中、R
H1、及びR
H2が表すアルキル基としては、炭素数4以上8以下(好ましくは炭素数4以上6以下)の分岐状のアルキル基が挙げられる。
分岐状のアルキル基として具体的には、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基が挙げられる。
これらの中でも、アルキル基としては、tert−ブチル基、tert−ペンチル基が好ましく、tert−ブチル基がより好ましい。
【0161】
一般式(HP)中、R
H3、及びR
H4としては、炭素数1以上10以下(好ましくは炭素数1以上4以下)の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
直鎖状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
分岐状のアルキル基として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基等が挙げられる。
これらの中でも、アルキル基としては、メチル基、エチル基等の低級アルキル基が好ましい。
【0162】
一般式(HP)中、R
H5は、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上4以下)の直鎖状又は分岐状アルキレン基を表す。
直鎖状のアルキレン基として具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基等が挙げられる。
分岐状のアルキレン基として具体的には、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基、イソヘキシレン基、sec−ヘキシレン基、tert−ヘキシレン基、イソヘプチレン基、sec−ヘプチレン基、tert−ヘプチレン基、イソオクチレン基、sec−オクチレン基、tert−オクチレン基、イソノニレン基、sec−ノニレン基、tert−ノニレン基、イソデシレン基、sec−デシレン基、tert−デシレン基等が挙げられる。
これらの中でも、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ブチレン基等の低級アルキレン基が好ましい。
【0163】
なお、一般式(HP)中、R
H1、R
H2、R
H3、R
H4、及びR
H5が表す上記各置換基は、さらに置換基を有する基も含む。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子)、アルコキシ基(例えば炭素数1以上4以下のアルコキシ基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。
【0164】
一般式(HP)において、特に、つらら状の画像欠陥を抑制する点から、R
H1、及びR
H2がtert−ブチル基を表すことが好ましく、R
H1、及びR
H2がtert−ブチル基を表し、R
H3、及びR
H4が炭素数1以上3以下のアルキル基(特にメチル基)を示し、R
H5が炭素数1以上4以下のアルキレン基(特にメチレン基)を表すことが好ましい。
具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、例示化合物(HP−3)で示されるヒンダードフェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0165】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の分子量は、つらら状の画像欠陥を抑制する抑制の点から、300以上1000以下が好ましく、300以上900以下がより好ましく、300以上800以下が更に好ましい。
【0166】
以下に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例を示すが、これに限定されるわけではない。
【0169】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0170】
次に、電荷輸送材料、酸化防止剤の含有量について説明する。
ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)の含有量は、電荷輸送能の高い感光層(電荷輸送層)形成の点から、CT1と結着樹脂との配合比(質量比 CT1:結着樹脂)で0.1:9.9から4.0:6.0までの範囲内であることが好ましく、0.4:9.6から3.5:6.5までの範囲内であることがより好ましく、0.6:9.4から3.0:7.0の範囲内であることが更に好ましい。
【0171】
ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)の含有量は、電荷輸送能の高い感光層(電荷輸送層)形成の点から、CT2と結着樹脂との配合比(質量比 CT2:結着樹脂)で、:9から7:3までの範囲内であることが好ましく、2:8から6:4までの範囲内であることがより好ましく、2:8から4:6の範囲内であることが更に好ましい。
【0172】
ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)の含有量とベンジジン系電荷輸送材料(CT2)の含有量との質量比(ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)の含有量/ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)の含有量)は、電荷輸送能の高い感光層(電荷輸送層)形成の点から、1/9以上5/5以下が好ましく、1/9以上4/6以下がより好ましく、1/9以上3/7以下が更に好ましい。
特に、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)の含有量とベンジジン系電荷輸送材料(CT2)の含有量との質量比が上記範囲であると、つらら状の画像欠陥が生じ易いが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤により、つらら状の画像欠陥の発生が抑制される。
【0173】
なお、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)およびベンジジン系電荷輸送材料(CT2)以外の他の電荷輸送材料を併用してもよい。但し、その場合、全電荷輸送材料に占める他の電荷輸送材料の含有量は、10質量%以下(好ましくは5質量%以下)であることがよい。
【0174】
ヒンダーフェノール系酸化防止剤の含有量は、つらら状の画像欠陥を抑制する抑制の点から、全電荷輸送材料量100質量%に対して、0.5質量%以上30.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上9.0質量%以下が更に好ましい。なお、このヒンダーフェノール系酸化防止剤の含有量は、全電荷輸送材料の含有量を100質量部としたときの部数(質量部)を示している。
【0175】
なお、ヒンダーフェノール系酸化防止剤の含有量は、30.0質量%以下とすることで、酸化防止剤による電荷輸送材料の電荷輸送能力の阻害が抑制される。つまり、光照射による感光体表面への静電潜像形成の阻害が抑制され、目的とする濃度の画像が得られ易くなる。
【0176】
次に結着樹脂について説明する。
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、BPポリカーボネート樹脂が適用される。BPポリカーボネート樹脂は、ビフェニル骨格を有する構造単位を含むビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂である。
【0177】
BPポリカーボネート樹脂としては、例えば、ビフェニル骨格を有する構造単位として、下記一般式(PCA)で示される構造単位と、他の構造単位とを有するビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
他の構造単位としては、ビスフェノール骨格(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールZ等)を有する構造単位等が挙げられる。
【0178】
BPポリカーボネート樹脂として具体的には、例えば、ジヒドロキシビフェニル化合物と、ジヒドロキシビスフェノール化合物との共重合体が挙げられる。なお、この共重合体は、例えば、ジヒドロキシビフェニル化合物およびジヒドロキシビスフェノール化合物を原料として用い、ホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物との重縮合又はビスアリールカーボネートとのエステル交換反応等の方法によって得られる。
【0179】
ジヒドロキシビフェニル化合物は、ビフェニル骨格を有し、ビフェニル骨格の2つのベンゼン環に、各々、一つのヒドロキシル基を有するビフェニル化合物である。ジヒドロキシビフェニル化合物としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジシクロヘキシルビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルビフェニル等が挙げられる。
これらジヒドロキシビフェニル化合物は、1種単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
【0180】
ジヒドロキシビスフェノール化合物は、ビスフェノール骨格を有し、ビスフェノール骨格の2つのベンゼン環に、各々、一つのヒドロキシル基を有するビスフェノール化合物である。ジヒドロキシビスフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)イソブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(2−tert−アミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
これらビスフェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
【0181】
これらの中でも、BPポリカーボネート樹脂は、感光層(電荷輸送層)の耐摩耗性の点から、下記一般式(PCA)で示される構造単位と、下記一般式(PCB)で示される構造単位と、を含むポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【0183】
一般式(PCA)及び(PCB)中、R
P1、R
P2、R
P3、及びR
P4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は、炭素数6以上12以下のアリール基を表す。X
P1は、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
一般式(PCA)及び(PCB)中、R
P1、R
P2、R
P3、及びR
P4が表すアルキル基としては、炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数1以上3以下)の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
直鎖状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
分岐状のアルキル基として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基等が挙げられる。
これらの中でも、アルキル基としては、メチル基、エチル基等の低級アルキル基が好ましい。
【0184】
一般式(PCA)及び(PCB)中、R
P1、R
P2、R
P3、及びR
P4が表すシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルが挙げられる。
【0185】
一般式(PCA)及び(PCB)中、R
P1、R
P2、R
P3、及びR
P4が表すアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
【0186】
一般式(PCA)及び(PCB)中、X
P1が表すアルキレン基としては、炭素数1以上12以下(好ましくは炭素数1以上6以下、より好ましくは炭素数1以上3以下)の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。
直鎖状のアルキレン基として具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基、n−ドデシレン基等が挙げられる。
分岐状のアルキレン基として具体的には、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基、イソヘキシレン基、sec−ヘキシレン基、tert−ヘキシレン基、イソヘプチレン基、sec−ヘプチレン基、tert−ヘプチレン基、イソオクチレン基、sec−オクチレン基、tert−オクチレン基、イソノニレン基、sec−ノニレン基、tert−ノニレン基、イソデシレン基、sec−デシレン基、tert−デシレン基、イソウンデシレン基、sec−ウンデシレン基、tert−ウンデシレン基、ネオウンデシレン基、イソドデシレン基、sec−ドデシレン基、tert−ドデシレン基、ネオドデシレン基等が挙げられる。
これらの中でも、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ブチレン基等の低級アルキル基が好ましい。
【0187】
一般式(PCA)及び(PCB)中、X
P1が表すシクロアルキレン基としては、炭素数3以上12以下(好ましくは炭素数3以上10以下、より好ましくは炭素数5以上8以下)のシクロアルキレン基が挙げられる。
シクロアルキル基として具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデカニル基等が挙げられる。
これらの中でも、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が好ましい。
【0188】
なお、一般式(PCA)及び(PCB)中、R
P1、R
P2、R
P3、R
P4、及びX
P1が表す上記各置換基は、さらに置換基を有する基も含む。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子)、アルキル基(例えば炭素数1以上6以下のアルキル基)、シクロアルキル基(例えば炭素数5以上7以下のシクロアルキル基)、アルコキシ基(例えば炭素数1以上4以下のアルコキシ基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基等)等が挙げられる。
【0189】
一般式(PCA)において、R
P1、及びR
P2は、各々独立に、水素原子、又は炭素数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、R
P1、及びR
P2は、水素原子を表すことがより好ましい。
一般式(PCB)において、R
P3、及びR
P4は、各々独立に、水素原子、又は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、X
P1がアルキレン基、又はシクロアルキレン基を表すことが好ましい。
【0190】
BPポリカーボネート樹脂の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、例示化合物中、pm、pnは共重合比を示す。
【0192】
ここで、BPポリカーボネート樹脂において、一般式(PCA)で示される構造単位の含有率(共重合比)は、BPポリカーボネート樹脂を構成する全構造単位に対して5モル%以上95モル%以下の範囲がよく、感光層(電荷輸送層)の耐磨耗性を高める観点から、好ましくは5モル%以上50モル%以下の範囲、さらに好ましくは15モル%以上30モル%以下の範囲である。
具体的には、BPポリカーボネート樹脂の上記例示化合物中、pm、pnは共重合比(モル比)を示すが、pm:pn=95:5から5:95の範囲、50:50から5:95の範囲、更に好ましくは、15:85から30:70の範囲が挙げられる。
【0193】
BPポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量としては、例えば20,000以上80,000以下が好ましい。
なお、BPポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定方法としては、次の方法により測定される値である。樹脂1gをメチレンクロライド100cm
3に均一溶解し、25℃の測定環境下でウベローデ粘度計により、その比粘度ηspを測定し、ηsp/c=〔η〕+0.45〔η〕2cの関係式(ただしcは濃度(g/cm
3)より極限粘度〔η〕(cm
3/g)をもとめ、H.Schnellによって与えられている式、〔η〕=1.23×10−4Mv0.83の関係式より粘度平均分子量Mvを求める。
【0194】
BPポリカーボネート樹脂は、他の結着樹脂と併用してもよい。ただし、他の結着樹脂は、全結着樹脂に対して10質量%(好ましくは5質量%以下)で併用することがよい。
【0195】
ここで、BPポリカーボネート樹脂の含有量は、例えば、感光層(電荷輸送層)の全固形分に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましく、50質量%以上90質量%以下が更に好ましい。
なお、全結着樹脂と電荷輸送材料との配合比(質量比=結着樹脂:電荷輸送材料)は10:1から1:5までが望ましい。
【0196】
次に、フッ素含有樹脂粒子について説明する。
フッ素含有樹脂粒子としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びそれらの共重合体の粒子の中から1種又は2種以上を選択するのが望ましい。これらの中でも、フッ素含有樹脂粒子としては、特に、4フッ化エチレン樹脂粒子、フッ化ビニリデン樹脂粒子が望ましい。
【0197】
フッ素含有樹脂粒子の一次粒径は、0.05μm以上1μm以下であることがよく、望ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。
なお、この一次粒子は、感光層(電荷輸送層)から試料片を得て、これをSEM(走査型電子顕微鏡)により例えば倍率5000倍以上で観察し、一次粒子状態のフッ素樹脂粒子の最大径を測定し、これを50個の粒子について行った平均値とする。なお、SEMとして日本電子製JSM−6700Fを使用し、加速電圧5kVの二次電子画像を観察する。
【0198】
フッ素樹脂粒子の市販品としては、例えば、ルブロン(登録商標)シリーズ(ダイキン工業株式会社製)、テフロン(登録商標)シリーズ(デュポン製)、ダイニオン(登録商標)シリーズ(住友3M製)等が挙げられる。
【0199】
フッ素含有樹脂粒子の含有量は、感光層(電荷輸送層)の全固形分に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下が更に好ましい。
【0200】
次に、フッ素含有分散剤について説明する。
フッ素含有樹脂粒子と共に、フッ素含有分散剤を併用することがよい。
フッ素含有分散剤としては、フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体(以下「フッ化アルキル基含有重合体」とも称する)が挙げられる。
【0201】
フッ素含有分散剤として具体的には、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとフッ素原子を有さないモノマーとのランダム又はブロック共重合体等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの双方を意味する。
フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アククリレートが挙げられる。
フッ素原子を有さないモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アククリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0202】
その他、フッ素含有分散剤として具体的には、米国特許5637142号明細書、特許第4251662号公報などに開示されたブロック又はブランチポリマーも挙げられる。更に、フッ素含有分散剤として具体的には、フッ素系界面活性剤も挙げられる。
【0203】
これらの中でも、フッ素含有分散剤としては、下記一般式(FA)で示される構造単位を有するフッ化アルキル基含有重合体が好ましく、下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体がより好ましい。
【0204】
以下、下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体について説明する。
【0206】
一般式(FA)及び(FB)中、R
F1、R
F2、R
F3及びR
F4は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。
X
F1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、−S−、−O−、−NH−、又は単結合を表す。
Y
F1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、−(C
fxH
2fx−1(OH))−又は単結合を表す。
Q
F1は、−O−、又は−NH−を表す。
fl、fm及びfnは、各々独立に、1以上の整数を表す。
fp、fq、fr及びfsは、各々独立に、0または1以上の整数を表す。
ftは、1以上7以下の整数を表す。
fxは1以上の整数を表す。
【0207】
一般式(FA)及び(FB)中、R
F1、R
F2、R
F3及びR
F4を表す基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0208】
一般式(FA)及び(FB)中、X
F1及びY
F1を表すアルキレン鎖(未置換アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖)としては、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖が好ましい。
Y
F1を表す−(C
fxH
2fx−1(OH))−中のfxは、1以上10以下の整数を表すことが好ましい。
fp、fq、fr及びfsは、それぞれ独立に0または1以上10以下の整数を表すことが好ましい。
fnは、例えば、1以上60以下が好ましい。
【0209】
ここで、フッ素含有分散剤において、一般式(FA)で示される構造単位と一般式(FB)で示される構造単位との比、つまり、fl:fmは、1:9から9:1までの範囲が好ましく、3:7から7:3までの範囲がより好ましい。
【0210】
また、フッ素含有分散剤、一般式(FA)で示される構造単位と一般式(FB)で示される構造単位とに加え、一般式(FC)で示される構造単位を更に有していてもよい。一般式(FC)で示される構造単位の含有比は、一般式(FA)及び(FB)で示される構造単位の合計、即ちfl+fmとの比(fl+fm:fz)で、10:0から7:3までの範囲が好ましく、9:1から7:3までの範囲がより好ましい。
【0212】
一般式(FC)中、R
F5、及びR
F6は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。fzは、1以上の整数を表す。
【0213】
一般式(FC)中、R
F5、及びR
F6を表す基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0214】
フッ素含有分散剤の市販品としては、例えば、GF300、GF400(東亞合成社製)、サーフロンシリーズ(AGCセイミケキカル社製)、フタージェントシリーズ(ネオス社製)、PFシリーズ(北村化学社製)、メガファックシリーズ(DIC製)、FCシリーズ(3M製)等が挙げられる。
【0215】
フッ素含有分散剤の重量平均分子量は、例えば、2000以上250000以下が好ましく、3000以上150000以下がより好ましく、50000以上100000以下が更に好ましい。
フッ素含有分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される値である。GPCによる分子量測定は、例えば、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel GMHHR−M+TSKgel GMHHR−M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行い、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0216】
フッ化アルキル基含有共重合体の含有量は、例えば、フッ素含有樹脂粒子の質量に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上7質量%以下がより好ましい。
なお、フッ化アルキル基含有共重合体は、1種を単独でまたは2種以上を併用してもよい。
【0217】
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0218】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0219】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0220】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0221】
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
【0222】
(単層型感光層)
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料と結着樹脂と、必要に応じて、その他周知の添加剤と、を含む層である。なお、これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して10質量%以上85質量%以下がよく、好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
一方、単層型感光層中、電荷輸送材料、結着樹脂(BPポリカーボネート樹脂)、酸化防止剤の含有量は電荷輸送層中での含有量と同様である。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0223】
<帯電装置>
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0224】
<露光装置>
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0225】
<現像装置>
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0226】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0227】
<クリーニング装置>
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
ここで、クリーニングブレード72の材質としては公知の材質を用いてもよく、例えばウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等を用いてもよい。その中で特に、耐摩耗性に優れていることからポリウレタンを用いる事が好ましい。
【0228】
<トナー供給搬送路>
トナー供給搬送路15は、一端がクリーニング装置13と連結し、他端が現像装置11と連結して設けられている。トナー供給搬送路15内部には、搬送部材(例えばスクリューオーガ等)が配置されている。そして、トナー供給搬送路15では、撹拌部材により、クリーニングブレード131で除去されたトナーを現像装置11へ供給する。現像装置11に供給されたトナーは、装置内に収容されたトナー(現像剤)と混合され、再利用されて、現像に寄与する。
なお、トナー供給搬送路15は、トナー補給装置(不図示:例えばトナーカートリッジ)に連結し、クリーニング装置13からトナー補給装置を経由して現像装置11に、クリーニングブレード131で除去されたトナーを供給する形態であってもよい。
【0229】
<転写装置>
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0230】
<中間転写体>
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0231】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例】
【0232】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0233】
<感光体の作製>
[感光体1]
酸化亜鉛(商品名:MZ 300、テイカ株式会社製)100質量部、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランの10質量%のトルエン溶液を10質量部、トルエン200質量部を混合して攪拌を行い、2時間還流を行った。その後10mmHgにてトルエンを減圧留去し、135℃で2時間焼き付けて、シランカップリング剤による酸化亜鉛の表面処理を行った。
表面処理した酸化亜鉛:33質量部、ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):6質量部、下記構造式(AK−1)で示される化合物:1質量部、メチルエチルケトン:25質量部を30分間混合し、その後ブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−1、積水化学工業社製):5質量部、シリコーンボール(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製):3質量部、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:SH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製):0.01質量部を添加し、サンドミルにて3時間の分散を行い、下引層形成用塗布液を得た。
さらに、浸漬塗布法にて、下引層形成用塗布液を、直径47mm、長さ357mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、30分の乾燥硬化を行い、膜厚25μmの下引層を得た。
【0234】
【化20】
【0235】
次に、電荷発生材料としてのヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料「Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長=820nm、平均粒径=0.12μm、最大粒径=0.2μm、比表面積値=60m
2/g)」、結着樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)、およびn−酢酸ブチルからなる混合物を、容量100mLガラス瓶中に、充填率50%で1.0mmφガラスビーズと共に入れて、ペイントシェーカーを用いて2.5時間分散処理し、電荷発生層用塗布液を得た。ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂の混合物に対して、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の含有率を55.0体積%とし、分散液の固形分は6.0質量%とした。含有率は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の比重を1.606g/cm
3、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂の比重1.35g/cm
3をとして計算した。
得られた電荷発生層形成用塗布液を、下引層上に浸漬塗布し、100℃で5分間乾燥して、膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0236】
次に、電荷輸送材料として、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)「例示化合物(CT1−1)」8.0質量部およびベンジジン系電荷輸送材料(CT2)「例示化合物(CT2−1)」32.0質量部と、結着樹脂として、BPポリカーボネート樹脂「例示化合物(PC−1)、pm:pn=25:75、粘度平均分子量=5万」60.0質量部と、フッ素含有樹脂粒子として、4フッ化エチレン樹脂粒子(体積平均粒子径200nm):8質量部と、フッ素含有分散剤として、GF400(東亜合成社製:フッ化アルキル基を持つメタクリレートを少なくとも重合成分とした界面活性剤):0.3質量部と、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤「例示化合物(HP−1)、分子量775」3.2質量部(全電荷輸送材料合計量100質量%に対して8.0質量%)とを、テトラヒドロフラン340.0質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。
得られた電荷輸送層形成用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、150℃、40分の乾燥を行うことにより、膜厚34μmの電荷輸送層を形成した。
【0237】
以上の工程を経て、感光体1を得た。
【0238】
[感光体2〜11]
表1に従って、電荷輸送材料の種類及び配合量と、酸化防止剤の種類及び配合量とを変更した以外は、感光体1と同様にして、感光体2〜11を作製した。
【0239】
[感光体C1〜C6]
表1に従って、酸化防止剤の種類及び配合量と、結着樹脂の種類及び配合量、フッ素含有樹脂粒子の配合の有無を変更した以外は、感光体1と同様にして、感光体C1〜C6を作製した。
【0240】
<実施例1>
得られた電子写真感光体(感光体1)を電子写真方式の画像形成装置(富士ゼロックス社製:DocuCentre−IV C5570改造機)に搭載し、この改造機を実施例1の画像形成装置とした。なお、改造機には、感光体からトナー像を転写した後、クリーニングブレードにより感光体に残留したトナーを除去し、除去したトナーをクリーニング装置から現像装置へ供給(搬送)するトナー供給搬送路(トナー回収経路)を搭載した。
【0241】
<実施例2〜11および比較例1〜6>
表1に従って、感光体の種類を変更した以外は実施例1と同様の画像形成装置(実施例2〜11および比較例1〜6)とした。
【0242】
<評価>
各例の画像形成装置を用い、下記要領で、「つらら状の画像欠陥」、「ハーフトーン画像濃度」および「耐摩耗性」の評価を行った。
【0243】
(つらら状の画像欠陥の評価)
各例の画像形成装置を用い、プロセス速度(用紙搬送速度126mm/sec)で、A3サイズの用紙に格子模様チャートを100000枚連続出力した後、つらら状の画像欠陥の発生有無を確認した。
【0244】
(ハーフトーン画像濃度の評価)
各例の画像形成装置を用い、プロセス速度(用紙搬送速度126mm/sec)で、A3サイズの用紙に、画像濃度50%の全面ハーフトーン画像(Cyan)を1枚出力した。
そして、出力した全面ハーフトーン画像を観察し、目的とする画像濃度が出力されているかを調べた。なお、画像出力は全て28℃、85%RHの環境下で実施した。
【0245】
(耐摩耗性評価)
各例の画像形成装置を用い、プロセス速度(用紙搬送速度126mm/sec)で、A3サイズの用紙に、画像濃度5%のチャートを20000枚連続出力した後、感光体の感光層の膜厚を測定した。感光層の膜厚は、渦電流式膜厚測定装置(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定した。そして、20000枚連続出力前後の感光層の膜厚の差(μm)を求めた。
【0246】
各実施例および各比較例で用いた電子写真感光体の構成および各例の評価結果を表1に示す。なお、表1中、酸化防止剤の「量(質量%)」の欄は、全電荷輸送材料合計量100質量%に対する割合を示している。
【0247】
【表1】
【0248】
上記結果から、本実施例では、比較例2〜5に比べ、「つらら状の画像欠陥」が抑制されていることがわかる。また、本実施例では、高速での画像形成、感光体の耐摩耗性に優れていることがわかる。
なお、比較例1から、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)とベンジジン系電荷輸送材料(CT2)とを含まない感光層を有する感光体を適用した場合、「つらら状の画像欠陥」が発生していないことがわかる。一方で、画像の濃度不良が生じていることがわかる。
比較例6から、結着樹脂として、BPポリカーボネート樹脂を含まない感光層を有する感光体を適用した場合、「つらら状の画像欠陥」が発生していないことがわかる。一方で、感光層の摩耗量が大きいことがわかる。
【0249】
なお、表1の略称等の詳細は以下の通りである。
【0250】
・CT1−1:ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)の例示化合物(CT1−1)
・CT1−3:ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)の例示化合物(CT1−3)
・CT2−1:ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)の例示化合物(CT2−1)
・CT2−2:ベンジジン系電荷輸送材料(CT2)の例示化合物(CT2−2)
【0251】
・PC−1:BPポリカーボネート樹脂の例示化合物(PC−1)
・PCZ500:ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールZの単独重合型ポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量5万)
【0252】
・HP−1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例示化合物(HP−1)
・HP−2:ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例示化合物(HP−2)
・HP−3:ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例示化合物(HP−3)
・CAO−1:酸化防止剤の比較化合物(下記構造式(CAO−1)で示されるヒンダードフェノール系酸化防止剤参照)
・CAO−2:酸化防止剤の比較化合物(下記構造式(CAO−2)で示されるヒンダードアミン系酸化防止剤参照)
【化21】