(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の流体袋を備えたカフでは、流体袋に流体(例えば空気)が供給されて加圧されたとき、単に1つの袋体からなる場合に比して、積層された方向(厚さ方向)のストローク量(膨張する距離)を増やして、被測定部位を圧迫できると思われる。
【0008】
しかしながら、上述の流体袋を備えたカフでは、幅方向に関して、上記流体袋の「8」の字の中央に相当する中央領域の厚さがそれ以外の領域の厚さに比して厚くなっている。このため、上記流体袋を備えたカフでは、カフ全幅のうち、流体袋の「8」の字の中央に相当する中央領域の圧力が高く、この中央領域から離れるにつれて徐々に圧力が低下する、という圧力分布になる。このように幅方向に関して圧力が徐々に変化している場合、例えばカフ全幅のうち途中までは血流が浸入して、中央領域の直前で止まる、という現象が起きる。このため、例えばオシロメトリック法による測定ではカフ圧信号にノイズが生じ、また、コロトコフ法による測定ではコロトコフ音信号にノイズが生じて、血圧値の測定精度が低下するという問題が生ずる。例えばカフの小型化を目指して幅方向寸法を小さく設定しようとする場合、この問題は深刻になる。
【0009】
そこで、この発明の課題は、被測定部位を圧迫するために血圧測定用カフに設けられる流体袋であって、被測定部位を通る動脈に沿った幅方向に関して圧力分布を平坦化できるものを提供することにある。
【0010】
また、この発明の課題は、そのような流体袋を製造する流体袋製造方法を提供することにある。
【0011】
また、この発明の課題は、そのような流体袋を備えた血圧測定用カフを提供することにある。
【0012】
また、この発明は、そのような血圧測定用カフを備えた血圧計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明の流体袋は、
被測定部位を圧迫するために血圧測定用カフに設けられる流体袋であって、
複数のセグメント袋を含み、各セグメント袋は、上記被測定部位を通る動脈に沿った幅方向に関して、1枚のシートを2つ折りにし、この2つ折りの折り曲げ箇所と反対の側の縁部同士を溶着または接着するとともに、上記幅方向に対して垂直な長手方向の縁部同士を溶着または接着して構成されており、
上記複数のセグメント袋は、上記被測定部位に対して垂直な厚さ方向に積み重ねられ一体化されるとともに、上記折り曲げ箇所が交互に上記幅方向に関して反対の側に配置されていることを特徴とする。
【0014】
本明細書で、「縁部」とは、縁を含む或る範囲の領域を指す。「縁部同士」を「溶着または接着」するとは、その領域の少なくとも一部を溶着または接着することを意味する。
【0015】
「一体化され」ているとは、互いに分離不能にされていること、例えば互いに隣接したセグメント袋の互いに隣接した半シート同士が溶着または接着されていることを意味する。なお、「半シート」とは、1枚のシートのうち折り曲げ箇所で区画された(または区画されるべき)実質的に半分のシートを指す。
【0016】
この発明の流体袋では、各セグメント袋は、被測定部位を通る動脈に沿った幅方向に関して、1枚のシートを2つ折りにし、この2つ折りの折り曲げ箇所と反対の側の縁部同士を溶着または接着するとともに、上記幅方向に対して垂直な長手方向の縁部同士を溶着または接着して構成されている。したがって、各セグメント袋は、流体が供給されて加圧されたとき、いわゆる涙滴形状の断面をもつ。ここで、この流体袋では、複数のセグメント袋は、被測定部位に対して垂直な厚さ方向に積み重ねられるとともに、2つ折りの折り曲げ箇所が交互に幅方向に関して反対の側に配置されている。したがって、例えば、この流体袋の幅方向に関して一端側の領域では、厚さ方向に関して、奇数番目のセグメント袋の比較的厚くなる部分と、それに隣接する偶数番目のセグメント袋の比較的薄くなる部分とが、交互に積み重ねられている。この結果、この一端側の領域で、複数のセグメント袋全体としての厚さが均される。この流体袋の幅方向に関して中央領域では、複数のセグメント袋の中程度の厚さの部分が、積み重ねられている。この結果、この中央領域で、複数のセグメント袋全体としての厚さが均される。また、この流体袋の幅方向に関して他端側の領域では、厚さ方向に関して、奇数番目のセグメント袋の比較的薄くなる部分と、それに隣接する偶数番目のセグメント袋の比較的厚くなる部分とが、交互に積み重ねられている。この結果、この他端側の領域で、複数のセグメント袋全体としての厚さが均される。これにより、この流体袋(したがってこの流体袋を備えたカフ)では、上記幅方向に関して、上記被測定部位に対する圧力分布が平坦化される。また、上記複数のセグメント袋は一体化されているので、上記複数のセグメント袋が例えば上記幅方向に関して互いに位置ずれすることがない。この結果、この流体袋(したがってこの流体袋を備えたカフ)が繰り返し加圧、減圧されたとしても、幅方向に関して、平坦な圧力分布が維持される。
【0017】
なお、この流体袋では、複数のセグメント袋が厚さ方向に積み重ねられているので、従来例の流体袋と同様に、単に1つの袋体からなる場合に比して、厚さ方向のストローク量(膨張する距離)を増やして、被測定部位を圧迫できる。
【0018】
一実施形態の流体袋では、
互いに隣接したセグメント袋の互いに隣接した半シートの内部領域に、上記互いに隣接したセグメント袋間の流体の流通を可能にする貫通穴が設けられ、
上記互いに隣接した半シートは、上記貫通穴を取り囲む態様で溶着または接着されて一体化されていることを特徴とする。
【0019】
ここで、半シートの「内部領域」とは、上記折り曲げ箇所、上記幅方向の縁部、上記幅方向に対して垂直な長手方向の縁部を除く内部の領域を指す。
【0020】
この一実施形態の流体袋では、互いに隣接したセグメント袋間で上記貫通穴を通して流体の流通が可能になる。したがって、例えば外部の供給源から1つのセグメント袋に流体を供給すれば、上記複数のセグメント袋全体に流体を供給できる。上記互いに隣接した半シートは、上記貫通穴を取り囲む態様で溶着または接着されているので、上記貫通穴から上記互いに隣接する半シートの間を通した流体の漏れは、防止される。
【0021】
一実施形態の流体袋では、上記複数のセグメント袋のうち上記被測定部位から最も遠い側に配置されるべき半シートに、上記被測定部位を圧迫するための流体を導入および/または排出するためのニップルが取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の流体袋では、上記ニップルを通して上記最も遠い側のセグメント袋に流体を導入すれば、上述のようにセグメント袋間で上記貫通穴を通して流体の流通が可能になっていることから、上記複数のセグメント袋全体に流体を供給できる。逆に、上記複数のセグメント袋全体から上記ニップルを通して流体を排出できる。
【0023】
一実施形態の流体袋では、上記厚さ方向に積み重ねられたセグメント袋の数は偶数であることを特徴とする。
【0024】
被測定部位は、実質的に丸棒状で、動脈が通る基端側(被験者の心臓に近い側)から末端側(被験者の心臓から遠い側)へ向かって、外径が実質的に一定である場合がある。ここで、この一実施形態の流体袋では、上記厚さ方向に積み重ねられたセグメント袋の数は偶数であるから、上記幅方向(動脈が通る方向に沿っている)に関して、複数のセグメント袋全体としての厚さが実質的に一定になる。したがって、この流体袋(したがってこの流体袋を備えたカフ)は、上述のような被測定部位(外径が実質的に一定である)の外周にフィットし易くなる。したがって、上記幅方向に関して、上記被測定部位に対する圧力分布が好ましく平坦化される。
【0025】
一実施形態の流体袋では、上記厚さ方向に積み重ねられたセグメント袋の数は奇数であることを特徴とする。
【0026】
被測定部位は、例えば手首のように、実質的に丸棒状で、動脈が通る基端側(被験者の心臓に近い側)から末端側(被験者の心臓から遠い側)へ向かって、外径が徐々に小さくなっている場合がある。ここで、この一実施形態の流体袋では、上記厚さ方向に積み重ねられたセグメント袋の数は奇数であるから、この流体袋に流体が供給さて加圧された状態で、上記幅方向(動脈が通る方向に沿っている)に関して、複数のセグメント袋全体としての厚さが傾斜して変化している。例えば、この流体袋の幅方向に関して一端側では、複数のセグメント袋全体としての厚さが比較的厚くなっている。この流体袋の幅方向に関して中央領域では、複数のセグメント袋全体としての厚さが中程度になっている。また、この流体袋の幅方向に関して他端側では、複数のセグメント袋全体としての厚さが比較的薄くなっている。その場合、この流体袋を備えたカフは、上記被測定部位の末端側に対して上記流体袋の幅方向に関して一端側(比較的厚くなる側)、上記被測定部位の基端側に対して上記流体袋の幅方向に関して他端側(比較的薄くなる側)がそれぞれ対応する状態で、上記被測定部位に装着される。この結果、この流体袋(したがってこの流体袋を備えたカフ)は、上述のような被測定部位(基端側から末端側へ向かって外径が徐々に小さくなっている)の外周にフィットし易くなる。したがって、上記幅方向に関して、上記被測定部位に対する圧力分布が好ましく平坦化される。
【0027】
別の局面では、この発明の流体袋製造方法は、上述の流体袋を製造する流体袋製造方法であって、
実質的に矩形で同一寸法のシートを複数用意し、
奇数番目のシートを一方向に沿って配置するととともに、偶数番目のシートを上記一方向に沿って上記奇数番目のシートに対して実質的に1/2ピッチだけずらして厚さ方向に関して重ねて配置し、
上記奇数番目のシートと上記偶数番目のシートの互いに重なった半シートの一部を溶着または接着して一体化し、
上記奇数番目のシートを上記偶数番目のシートとは反対の側に向かって2つ折りにし、この2つ折りの折り曲げ箇所と反対の側の縁部同士を溶着または接着するとともに、上記偶数番目のシートを上記奇数番目のシートとは反対の側に向かって2つ折りにし、この2つ折りの折り曲げ箇所とは反対の側の縁部同士を溶着または接着し、
上記奇数番目のシートをなす2つの半シートの上記一方向に対して垂直な長手方向の縁部同士を溶着または接着するともに、上記偶数番目のシートをなす2つの半シートの上記長手方向の縁部同士を溶着または接着することを特徴とする。
【0028】
ここで、「一方向」は、製造された流体袋の幅方向に相当する。
【0029】
この発明の流体袋製造方法によれば、上述の流体袋を簡単に製造できる。
【0030】
別の局面では、この発明の血圧測定用カフは、上述の流体袋を備えた血圧測定用カフである。
【0031】
この局面の血圧測定用カフでは、上述の流体袋を備えているので、被測定部位を通る動脈に沿った幅方向に関して、圧力分布が平坦化される。また、厚さ方向のストローク量(膨張する距離)を増やして、被測定部位を圧迫できる。
【0032】
別の局面では、この発明の血圧測定用カフは、
上記厚さ方向に積み重ねられたセグメント袋の数は奇数である流体袋を備えた帯状体と、
上記長手方向に関して曲げられて環状にされた上記帯状体に対して、上記被測定部位を挿入すべき向きを示す標識とを備え、
上記標識は、上記幅方向に関して、上記流体袋に流体が供給されて加圧されたときに上記複数のセグメント袋全体としての厚さが比較的薄くなる側から上記複数のセグメント袋全体としての厚さが比較的厚くなる側への向きを示していることを特徴とする。
【0033】
既述のように、被測定部位の外径は、例えば基端側から末端側へ向かって徐々に小さくなっている場合がある。その場合、この局面の血圧測定用カフでは、帯状体は、上記被測定部位の末端側に対して上記流体袋の幅方向に関して一端側(比較的厚くなる側)、上記被測定部位の基端側に対して上記流体袋の幅方向に関して他端側(比較的薄くなる側)がそれぞれ対応する状態で、上記被測定部位に装着されるのが望ましい。ここで、このカフでは、上記長手方向に関して曲げられて環状にされた上記帯状体に対して、上記被測定部位を挿入すべき向きを示す標識を備えている。上記標識は、上記幅方向に関して、上記流体袋に流体が供給されて加圧されたときに上記複数のセグメント袋全体としての厚さが比較的薄くなる側(他端側)から上記複数のセグメント袋全体としての厚さが比較的厚くなる側(一端側)への向きを示している。したがって、被験者は、このカフを被測定部位に装着する際に、上記長手方向に関して曲げられて環状にされた上記帯状体に対して、上記幅方向に関して、上記他端側(比較的薄くなる側)から上記一端側(比較的厚くなる側)へ向かって上記被測定部位を挿入するように促される。したがって、被験者は、このカフの装着の向きを間違えることがない。
【0034】
別の局面では、この発明の血圧計は、上述の血圧測定用カフと、血圧測定のための要素を含む本体とを備える。
【0035】
この発明の血圧計では、上記カフのおかげで上記幅方向に関して圧力分布を平坦化でき、血圧値の測定精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0036】
以上より明らかなように、この発明の流体袋および血圧測定用カフによれば、被測定部位を通る動脈に沿った幅方向に関して圧力分布を平坦化できる。
【0037】
また、この発明の流体袋製造方法によれば、そのような流体袋を簡単に製造できる。
【0038】
また、この発明の血圧計によれば、上記カフのおかげで上記幅方向に関して圧力分布を平坦化でき、血圧値の測定精度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0041】
図1は、この発明の一実施形態の血圧計(全体を符号1で示す。)の外観を示している。この血圧計1は、大別して、被測定部位としての手首90(例えば
図5参照)に巻き付けられる血圧測定用カフ20と、このカフ20の外周面に沿って一体に取り付けられ、血圧測定のための要素を内蔵した本体10とを有している。本体10のカフ20と反対側の外面には、後述の表示器50と操作部52が配置されている。
【0042】
図5は、血圧計1を、カフ20を展開した状態で本体10が設けられた側(
図1における外周側に相当)から見たときの平面レイアウトを模式的に示している。また、
図6は、血圧計1を、カフ20を展開した状態で
図5とは反対の側(
図1における内周側に相当)から見たときの平面レイアウトを模式的に示している。
【0043】
これらの
図5、
図6によって良く分かるように、カフ20は、外布20Aと内布20Bとをそれらの周縁に沿って沿って縫製して袋状の帯状体11として形成されている。被測定部位を圧迫し易いように、内布20Bは伸縮性が大きく、外布20Aは実質的に非伸縮性(または内布20Bに比して伸縮性が小さく)に設定されている。
【0044】
カフ20は、このカフ20の長手方向(
図1における周方向に相当)に沿って、本体10に沿った第2部分20Cと、この第2部分20Cから一方の側(
図5における右側)へ延在する第1部分20Eと、第2部分20Cから他方の側(
図5における左側)へ延在する第3部分20Fとを有している。例えば、カフ20の長手方向の寸法は約300mm〜400mmの範囲内、幅方向の寸法Wは30mm〜60mmの範囲内に設定される。
【0045】
第3部分20Fは、
図5、
図6において下に凸に湾曲している。この湾曲の向きは、このカフ20が、
図5、
図6において手首90の末端側である手側(細い側)90fが上に来て、手首90の基端側である肘側(太い側)90eが下に来る態様で、手首90を取り巻いて装着されることを想定したものである。
【0046】
第1部分20Eの外周面に、実質的に長円形状をもつリング80が取り付けられている。このリング80の長手方向は、カフ20の長手方向に対して交差している。このリング80の長手方向の寸法は、カフ20(特に第3部分20F)を容易に通せるように、カフ20の幅方向寸法Wよりも若干大きく設定されている。
【0047】
カフ20の第3部分20Fのうち本体10寄りの直近部分の表面に面状ファスナ70が取り付けられている。この例では、面状ファスナ70は、その表面に図示しない多数の微細なフックを有している。第3部分20Fのうち直近部分(面状ファスナ70)以外の部分の外周面は、上記フックと係合する図示しない多数の微細なループを有している。
【0048】
カフ20には、第1部分20Eから第3部分20Fにまたがって、手首90を圧迫するための流体袋としての空気袋22が内包されている。
【0049】
図7は、空気袋22の外観を斜めから見たところを示している。この空気袋22の幅方向(X方向)は、カフ20の幅方向、すなわち手首90を通る動脈に沿った方向に相当する。空気袋22の長手方向(Y方向)、厚さ方向(Z方向)は、それぞれカフ20の長手方向、厚さ方向に相当する。なお、理解の容易のために、
図7中に直交座標系XYZを併せて示している(後述の
図8(A)、
図8(B)、
図9A、
図9B、
図9C、
図10〜
図12において同様。)。
【0050】
この空気袋22は、被測定部位としての手首90に対して垂直な厚さ方向Zに順に積み重ねられ一体化された同じ寸法の複数(この例では、3つ)のセグメント袋41,42,43を備えている。セグメント袋41は手首90から遠い側(
図1における外周側に相当)に配置される一方、セグメント袋43は手首90に近い側(
図1における内周側に相当)に配置されている。各セグメント袋41,42,43は、幅方向Xに関して1枚のシートを2つ折りにし、この2つ折りの折り曲げ箇所41b,42b,43bと反対の側の縁部同士を溶着するとともに、長手方向Yの縁部同士を溶着した状態にある。特に、この例では、セグメント袋41,42,43の長手方向Yの縁部は、厚さ方向Zに関して一括して溶着されている(−Y側の縁部の溶着箇所、+Y側の縁部の溶着箇所を、それぞれ符号22m,22nで示している。)。これらのセグメント袋41,42,43の折り曲げ箇所41b,42b,43bは、交互に幅方向Xに関して反対の側に配置されている。この例では、奇数番目のセグメント袋41,43の折り曲げ箇所41b,43bは、一端側(−X側)22cに配置されている。偶数番目のセグメント袋42の折り曲げ箇所42bは、他端側(+X側)22dに配置されている。
【0051】
互いに隣接したセグメント袋41,42間、互いに隣接したセグメント袋42,43間には、それぞれ、それらのセグメント袋41,42間、セグメント袋42,43間の空気の流通を可能にする貫通穴49,49′(
図8(A)参照)が設けられている。
【0052】
また、セグメント袋41の上側の半シート41Aには、外部の供給源(後述のポンプ32)から空気を供給し又は空気袋22内から空気を排出するための略円筒状のニップル45が取り付けられている(半シート41Aのニップル45の内径に対応する部分は貫通されている。適宜、これを単に「ニップル45が取り付けられた」という。)。なお、「半シート」とは、1枚のシート(簡単のため、セグメント袋と同じ符号で表す。)41,42,43のうち折り曲げ箇所41b,42b,43bで区画された(または区画されるべき)実質的に半分のシート41A,41B,42A,42B,43A,43Bを指す。
【0053】
例えば、セグメント袋41,42,43を含む空気袋22全体としての長手方向Yの寸法は、カフ20の長手方向Yの寸法の約半分に設定される。また、空気袋22の幅方向Xの寸法W1は、カフ20の幅方向の寸法Wよりも約5mm程度小さく設定される。セグメント袋(シート)41,42,43の材料は、この例ではポリウレタン樹脂である。
【0054】
この空気袋22は、例えば次のようにして作製される。
【0055】
i) まず、
図9Aに示すように、実質的に矩形で同一寸法のシート41,42,43を複数(この例では、3枚)用意する(なお、理解の容易のため、セグメント袋とそれを形成するためのシートとに同じ符号を用いる。)。予め、シート41の−X側の半シート41Aの略中央(
図9Aにおいて下面)には、略円筒状のニップル45が溶着によって取り付けられている(ニップル45の周りの溶着箇所を符号45mで示している。)。
【0056】
ii) 次に、奇数番目のシート41,43を一方向に沿って、シート41,43同士の間に殆ど隙間を設けることなく並べて配置する(この一方向は、作製段階では任意であるが、この例では簡単のため、X方向に一致しているものとして説明する。)。これととともに、偶数番目のシート42を、X方向に沿って奇数番目のシート41,43に対して実質的に1/2ピッチだけ+X側にずらして、厚さ方向Zに関して重ねて(隣接して)配置する。この例では、シート41,43にまたがって、シート42を下側(−Z側)に重ねて配置している。
【0057】
iii) 次に、奇数番目のシート41,43と偶数番目のシート42の厚さ方向Zに関して互いに重なった半シートの一部を溶着して一体化する。この例では、シート41の+X側の半シート41Bとシート42の−X側の半シート42Aのうち、X方向に関して略中央の、Y方向に沿って2列のストライプ状に延びる部分49m,49nを溶着して一体化する。これとともに、シート42の+X側の半シート42Bとシート43の−X側の半シート43Aのうち、X方向に関して略中央の、Y方向に沿って2列のストライプ状に延びる部分49m′,49n′を溶着して一体化する。
【0058】
iv) 次に、この例では、シート42の+X側の半シート42Bとシート43の−X側の半シート43Aのうち、ストライプ状に延びる部分49m,49nの間の内部領域(−Y側の縁部、+Y側の縁部を除く。)412に、Y方向に沿って等間隔で5つの貫通穴49,49,…を形成する。これとともに、シート42の+X側の半シート42Bとシート43の−X側の半シート43Aのうち、ストライプ状に延びる部分49m′,49n′の間の内部領域(−Y側の縁部、+Y側の縁部を除く。)423に、Y方向に沿って等間隔で5つの貫通穴49′,49′,……を形成する。
【0059】
v) 次に、
図9A中に矢印D1,D3で示すように、奇数番目のシート41,43を偶数番目のシート42とは反対の側に向かって2つ折りにする。そして、
図9Bに示すように、シート41の2つ折りの折り曲げ箇所41bと反対の側の縁部41c,41d同士を溶着するとともに、シート43の2つ折りの折り曲げ箇所43bと反対の側の縁部43c,43d同士を溶着する(それらの溶着箇所を符号41m,43mで示している。)。
【0060】
vi) また、
図9B中に矢印D2で示すように、偶数番目のシート42を奇数番目のシート41,43とは反対の側に向かって2つ折りにする。そして、
図9Cに示すように、シート42の2つ折りの折り曲げ箇所42bと反対の側の縁部42c,42d同士を溶着する(その溶着箇所を符号42mで示している。)。
【0061】
なお、上記v)の工程の前に上記vi)の工程を行ってもよい。また、上記v)の工程と上記vi)の工程とを並行して行ってもよい。
【0062】
vii) 次に、
図9C中に矢印E1,E2で示すように、シート41をなす半シート41A,41Bの−Y側の縁部41Ae,41Be、シート42をなす半シート42A,42Bの−Y側の縁部42Ae,42Be、シート43をなす半シート43A,43Bの−Y側の縁部43Ae,43Beを、厚さ方向Zに関して一括して溶着する。これとともに、矢印F1,F2で示すように、シート41をなす半シート41A,41Bの+Y側の縁部41Af,41Bf、シート42をなす半シート42A,42Bの+Y側の縁部42Af,42Bf、シート43をなす半シート43A,43Bの+Y側の縁部43Af,43Bfを、厚さ方向Zに関して一括して溶着する。
【0063】
これにより、
図7に示した空気袋22が得られる(既述のように、
図7では、−Y側の縁部の溶着箇所、+Y側の縁部の溶着箇所を、それぞれ符号22m,22nで示している。)。
【0064】
得られた空気袋22では、互いに隣接した半シート41B,42Aは、溶着されたストライプ状の部分49m,49n(
図9A参照)および溶着箇所22m,22nによって、5つの貫通穴49を全体として取り囲む態様で溶着されている。また、互いに隣接した半シート42B,43Aは、溶着されたストライプ状の部分49m′,49n′および溶着箇所22m,22nによって、5つの貫通穴49′を全体として取り囲む態様で溶着されている。したがって、貫通穴49から互いに隣接した半シート41B,42Aの間の隙間を通した空気の漏れは、防止される。また、貫通穴49′から互いに隣接した半シート42B,43Aの間の隙間を通した空気の漏れは、防止される。
【0065】
図8(A)は、外部からニップル45を通して空気袋22に流体としての空気が若干量供給(導入)されて加圧された状態で、その空気袋22を幅方向Xに沿って切断したときの断面を示している。また、
図8(B)は、
図8(A)におけるのと同じ状態で、空気袋22を長手方向Yに沿って切断したときの−Y側の縁部近傍の断面を示している。図示のように、互いに隣接したセグメント袋41,42間、互いに隣接したセグメント袋42,43間は、それぞれ貫通穴49,49′を通して連通して空気の流通が可能になっているので、3つのセグメント袋41,42,43は、同一圧力に加圧されて、膨張している。なお、逆に、複数のセグメント袋41,42,43全体からニップル45を通して空気を排出できる。
【0066】
この空気袋22では、3つのセグメント袋41,42,43が厚さ方向Zに積み重ねられているので、従来例の空気袋と同様に、単に1つの袋体からなる場合に比して、厚さ方向Zのストローク量(膨張する距離)を増やして、手首90を圧迫できる。
【0067】
また、
図8(A)に示すように、各セグメント袋41,42,43は、空気が供給されて加圧されたとき、既述の構成に応じて、いわゆる涙滴形状の断面をもつ。この例では、セグメント袋41,43は、+X側が先細に尖り、−X側が円弧状に湾曲した涙滴形状の断面をもつ。セグメント袋42は、−X側が先細に尖り、+X側が円弧状に湾曲した涙滴形状の断面をもつ。つまり、この空気袋22では、幅方向Xに関して一端側(−X側)22cの領域では、厚さ方向Zに関して、セグメント袋41,43の比較的厚い部分と、それに隣接するセグメント袋42の比較的薄い部分とが、交互に積み重ねられている。この結果、この一端側22cの領域で、セグメント袋41,42,43全体としての厚さZ1が均される。この空気袋22の幅方向Xに関して中央22iの領域では、セグメント袋41,42,43の中程度の厚さの部分が積み重ねられている。この結果、この中央22iの領域で、セグメント袋41,42,43全体としての厚さZ2が均される。また、この空気袋22の幅方向Xに関して他端側(+X側)22dの領域では、厚さ方向Zに関して、セグメント袋41,43の比較的厚い部分と、それに隣接するセグメント袋42の比較的薄い部分とが、交互に積み重ねられている。この結果、この空気袋22では、他端側22dの領域で、セグメント袋41,42,43全体としての厚さZ3が均される。
【0068】
また、この例では、厚さ方向Zに積み重ねられたセグメント袋41,42,43の数は奇数(3つ)であるから、幅方向Xに関して、セグメント袋41,42,43全体としての厚さZ1,Z2,Z3が傾斜して変化している。この例では、この空気袋22の幅方向Xに関して一端側(−X側)22cの領域では、セグメント袋41,42,43全体としての厚さZ1が比較的厚くなっている。この空気袋22の幅方向Xに関して中央22iの領域では、セグメント袋41,42,43全体としての厚さZ2が中程度になっている。また、この空気袋22の幅方向Xに関して他端側(+X側)22dの領域では、セグメント袋41,42,43全体としての厚さZ3が比較的薄くなっている。
【0069】
なお、
図8(B)に示すように、空気袋22の長手方向Yに関して−Y側の縁部(+側の縁部も同様。)は、一括して溶着されていることから、その厚さZeは比較的薄くなっている。
【0070】
上記空気袋22は、シート41に取り付けられたニップル45が外布20Aを貫通して突出する態様で、カフ20に内包される。また、この例では、
図5、
図6中に示すように、空気袋22は、加圧時に比較的厚くなる一端側22cが上に来て、比較的薄くなる他端側22dが下に来る向きに、カフ20に内包される。この空気袋22の向きは、手首90の手側(細い側)90fが上に来て、手首90の肘側(太い側)90eが下に来る態様で、手首90を取り巻いて装着されることに対応したものである(詳しくは、後述する。)。
【0071】
本体10とカフ20とを連結する際には、
図3中に示すように、本体10のエア配管10Aが空気袋22のニップル45に気密に嵌合される。本体10とカフ20とは、図示しない連結手段(係合突起とその係合突起が係合する窪み、接着剤など)によって互いに連結される。このようにして、本体10とカフ20とが一体化される。
【0072】
図3は、血圧計1のカフ20と本体10の概略的なブロック構成を示している。この血圧計1は、本体10に搭載された、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)100、表示器50、記憶部としてのメモリ51、操作部52、電源部53、ポンプ32、弁33、および圧力センサ31を含む。また、本体10は、この本体10に搭載された、圧力センサ31からの出力を周波数に変換する発振回路310、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320、弁33を駆動する弁駆動回路330を有する。
【0073】
表示器50は、ディスプレイおよびインジケータ等を含み、CPU100からの制御信号に従って、血圧測定結果などの所定の情報を表示する。
【0074】
操作部52は、血圧の測定開始の指示を受け付けるための測定開始スイッチ52Aと、メモリに記憶されている血圧測定結果を呼び出すための記録呼出スイッチ52Bとを有する。これらのスイッチ52A,52Bは、ユーザによる指示に応じた操作信号をCPU100に入力する。
【0075】
メモリ51は、血圧計1を制御するためのプログラムのデータ、血圧計1を制御するために用いられるデータ、血圧計1の各種機能を設定するための設定データ、および血圧値の測定結果のデータなどを記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0076】
CPU100は、メモリ51に記憶された血圧計1を制御するためのプログラムに従って、操作部52からの操作信号に応じて、ポンプ32や弁33を駆動する制御を行う。また、CPU100は、圧力センサ31からの信号に基づいて、血圧値を算出し、表示器50およびメモリ51を制御する。
【0077】
電源部53は、CPU100、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、表示器50、メモリ51、発振回路310、ポンプ駆動回路320、および弁駆動回路330の各部に電力を供給する。
【0078】
ポンプ32、弁33および圧力センサ31は、共通のエア配管10Aを介して、カフ20に内包された空気袋22に接続されている。ポンプ32は、カフ20に内包された空気袋22内の圧力(カフ圧)を加圧するために、エア配管10Aを通して空気袋22に空気を供給する。弁33は、通電によって開閉が制御される電磁弁であり、空気袋22の空気をエア配管10Aを通して排出し、または封入してカフ圧を制御するために用いられる。ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU100から与えられる制御信号に基づいて駆動する。弁駆動回路330は、弁33をCPU100から与えられる制御信号に基づいて開閉する。
【0079】
圧力センサ31は、この例ではピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管10Aを通してカフ20(空気袋22)の圧力を検出して時系列のカフ圧信号(符号Pcで表す。)として出力する。発振回路310は、圧力センサ31からのピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化に基づく電気信号値に基づき発振して、圧力センサ31の電気信号値に応じた周波数を有する周波数信号をCPU100に出力する。
【0080】
血圧計1(カフ20)を被測定部位としての手首90に装着する際には、
図1に示すように、カフ20(帯状体11)が長手方向に関して曲げられ、カフ20の第3部分20Fがリング80に通されて環状にされる。手のひらを上へ向けた状態で手首90が
図1中に矢印Aで示すようにカフ20の中に挿入される。これにより、手首90に、カフ20の第2部分20Cが本体10とともに載せられる。続いて、カフ20の第3部分20Fのうち本体10から遠い部分がリング80を通して、矢印Bで示すように
図1において斜め右下へ引っ張られるとともに、
図2中に矢印Cで示すように折り返される。そして、その折り返された部分が面状ファスナ70に押し付けられて固定される。
【0081】
図13は、血圧計1(カフ20)が手首90に装着された状態で、被験者が自然な姿勢で血圧計本体10の表示器50を見たところを示している。本体10の外面には、表示器50の左辺に沿って上から順に「最高血圧 mmHg」、「最低血圧 mmHg」、「脈拍 拍/分」との印刷表示50Aが設けられている。表示器50は、血圧測定が行われて測定値が得られると、それらの印刷表示50Aの右横に、それぞれ最高血圧(収縮期血圧)の測定値(この例では135mmHg)、最低血圧(拡張期血圧)の測定値(この例では85mmHg)、脈拍の測定値(この例では70拍/分)を表示するようになっている。それらの測定値(表示の内容)は、被験者から見て、正立して表示される。したがって、被験者は、測定値を容易に認識できる。逆に言えば、印刷表示50Aは、カフ20に対して、手首90を挿入すべき向きを示す標識として働く。被験者は、印刷表示50Aのおかげで、表示器50の表示が正立して見える向きに、このカフ20に手首90を挿入するように促される。したがって、被験者は、このカフ20の装着の向きを間違えることがない。
【0082】
図14は、カフ20が手首90に装着された状態の、手首90を通る動脈90uに沿った幅方向Xの断面を示している。上述のように印刷表示50Aが示す向きに従ってカフ20が手首90に装着された状態(
図13)では、この
図14に示すように、手首90の手側90fに対して空気袋22の加圧時に比較的厚くなる一端側22c、手首90の肘側90eに対して空気袋22の加圧時に比較的薄くなる他端側22dがそれぞれ対応している。この結果、この空気袋22を内包したカフ20は、上述のような手首90(肘側90eから手側90fへ向かって外径が徐々に小さくなっている)の外周にフィットし易くなる。したがって、幅方向Xに関して、手首90に対する圧力分布を好ましく平坦化できる。例えば、この空気袋22の幅方向Xに関して一端側(−X側)22cの領域での圧力P1、幅方向Xに関して中央22iの領域での圧力P2、幅方向Xに関して他端側(+X側)22dの領域での圧力P3を略等しくでき、圧力分布を平坦化できる。この結果、カフ圧信号にノイズが生じるのを防止でき、血圧値の測定精度を高めることができる。
【0083】
なお、カフ20に対して手首90を挿入すべき向きを示す標識は、上述の印刷表示50Aに限られるものではない。それに代えて、または、それに加えて、例えば
図17中に示すようなタブ59を設けてもよい。このタブ59は、カフ20に対して幅方向外向きに突出して取り付けられている。このタブ59には、カフ20に対して手首90を挿入すべき向き(
図17において下から上への向き)を示す矢印59Aが表されている。被験者が、この矢印59Aが示す向きに従ってカフ20に手首90を挿入すると、
図14に示したように、手首90の手側90fに対して空気袋22の加圧時に比較的厚くなる一端側22c、手首90の肘側90eに対して空気袋22の加圧時に比較的薄くなる他端側22dがそれぞれ対応する状態になる。したがって、被験者は、このカフ20の装着の向きを間違えることがない。
【0084】
この血圧計1では、CPU100によって、
図4のフローに従ってオシロメトリック法により被験者の血圧値が測定される。
【0085】
具体的には、測定開始スイッチ52Aが押される(オンされる)と、
図4に示すように、血圧計1は血圧測定を開始する。血圧測定開始に際して、CPU100は、処理用メモリ領域を初期化し、弁駆動回路330に制御信号を出力する。弁駆動回路330は、制御信号に基づいて、弁33を開放してカフ20の空気袋22内の空気を排気する。続いて、圧力センサ31の0mmHgの調整を行う制御を行う。
【0086】
血圧測定を開始すると、まず、CPU100は、弁駆動回路330を介して弁33を閉鎖し、その後、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して、空気袋22に空気を送る制御を行う。これにより、空気袋22を膨張させるとともにカフ圧を徐々に加圧していく(ステップST101)。このとき、空気袋22をなすセグメント袋41,42,43は、同一圧力に加圧されて、膨張する。
【0087】
カフ圧が加圧されて所定の圧力に達すると(ステップST102でYES)、CPU100は、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を停止し、その後、弁駆動回路330を介して弁33を徐々に開放する制御を行う。これにより、空気袋22を収縮させるとともにカフ圧を徐々に減圧していく(ステップST103)。
【0088】
ここで、所定の圧力とは、被験者の収縮期血圧よりも十分高い圧力(例えば、収縮期血圧+30mmHg)であり、予めメモリ51に記憶されているか、カフ圧の加圧中にCPU100が収縮期血圧を所定の算出式により推定して決定する(例えば特開2001−70263号公報参照)。
【0089】
また、減圧速度については、カフの加圧中に目標となる目標減圧速度を設定し、その目標減圧速度になるようにCPU100が弁33の開口度を制御する(同公報参照)。
【0090】
上記減圧過程において、圧力センサ31がカフ20の圧力を検出してカフ圧信号Pcを出力する。CPU100は、このカフ圧信号Pcに基づいて、オシロメトリック法により後述のアルゴリズムを適用して血圧値(収縮期血圧と拡張期血圧)を算出する(ステップST104)。なお、血圧値の算出は、減圧過程に限らず、加圧過程において行われてもよい。
【0091】
血圧値を算出して決定すると(ステップST105でYES)、CPU100は、算出した血圧値を表示器50へ表示し(ステップST106)、血圧値をメモリ51へ保存する制御を行う(ステップST107)。
【0092】
測定が終了すると、CPU100は、弁駆動回路330を介して弁33を開放し、カフ20の空気袋22内の空気を排気する制御を行う(ステップST108)。
【0093】
このような測定は、定期的に又は必要に応じて、繰り返し行われる。ここで、既述のように、カフ20に内包された空気袋22の3つのセグメント袋41,42,43は一体化されている。したがって、セグメント袋41,42,43が例えば幅方向Xに関して互いに位置ずれすることがない。この結果、空気袋22を内包したカフ20が繰り返し加圧、減圧されたとしても、幅方向Xに関して、平坦な圧力分布を維持することができる。
【0094】
(変形例1)
上述の例では、カフ20に内包された空気袋22において、厚さ方向Zに積み重ねられたセグメント袋の数は奇数(3つ)であるとしたが、これに限られるものではない。例えば、
図11に示す空気袋22′のように、厚さ方向Zに積み重ねられたセグメント袋の数は偶数(この例では、2つ)としてもよい。この
図11に示す空気袋22′は、
図7中の空気袋22においてセグメント袋43を省略するとともに、セグメント袋42,43間の貫通穴49′を省略したものに相当する。この空気袋22′は、シート43、貫通穴49′を省略する点を除いて、空気袋22を作製するのと同じ手順で作製される。
図11において、
図7中の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0095】
図12に示すように、外部からニップル45を通して空気袋22′に空気が若干量供給されて加圧された場合、互いに隣接したセグメント袋41,42間は貫通穴49を通して空気の流通が可能になっているので、2つのセグメント袋41,42は、同一圧力に加圧されて、膨張する。なお、逆に、複数のセグメント袋41,42全体からニップル45を通して空気を排出できる。
【0096】
この空気袋22′では、幅方向Xに関して一端側(−X側)22c′の領域では、厚さ方向Zに関して、セグメント袋41の比較的厚い部分と、それに隣接するセグメント袋42の比較的薄い部分とが、交互に積み重ねられている。この結果、この一端側22c′の領域で、セグメント袋41,42全体としての厚さZ1′が均される。この空気袋22′の幅方向Xに関して中央22i′の領域では、セグメント袋41,42の中程度の厚さの部分が積み重ねられている。この結果、この中央22i′の領域で、セグメント袋41,42全体としての厚さZ2′が均される。また、この空気袋22′の幅方向Xに関して他端側(+X側)22d′の領域では、厚さ方向Zに関して、セグメント袋41の比較的薄い部分と、それに隣接するセグメント袋42の比較的厚い部分とが、交互に積み重ねられている。この結果、この空気袋22′では、他端側22d′の領域で、セグメント袋41,42全体としての厚さZ3′が均される。
【0097】
また、この例では、厚さ方向Zに積み重ねられたセグメント袋41,42の数は偶数(2つ)であるから、幅方向Xに関して、セグメント袋41,42全体としての厚さZ1′,Z2′,Z3′が実質的に一定になる。
【0098】
したがって、
図15に示すように、この空気袋22′を内包したカフ(符号20′で表す。)は、幅方向Xに関して外径が実質的に一定である被測定部位90′の外周にフィットし易くなる。したがって、幅方向Xに関して、被測定部位90′に対する圧力分布を好ましく平坦化できる。例えば、この空気袋22′の幅方向Xに関して一端側(−X側)22c′の領域での圧力P1′、幅方向Xに関して中央22i′の領域での圧力P2′、幅方向Xに関して他端側(+X側)22d′の領域での圧力P3′を略等しくでき、圧力分布を平坦化できる。この結果、カフ圧信号にノイズが生じるのを防止でき、血圧値の測定精度を高めることができる。
【0099】
また、カフ20′に内包された空気袋22′の2つのセグメント袋41,42は一体化されているので、セグメント袋41,42が例えば幅方向Xに関して互いに位置ずれすることがない。この結果、この空気袋22′を内包したカフ20′が繰り返し加圧、減圧されたとしても、幅方向Xに関して、平坦な圧力分布を維持することができる。
【0100】
なお、厚さ方向Zに積み重ねられたセグメント袋の数は、4つ以上であってもよい。
【0101】
例えば、厚さ方向Zに積み重ねられたセグメント袋の数を4つとする場合、次のようにして空気袋を作製する。既述の
図9Aにおいて、シート42の+X側に、追加の4枚目のシート(これを符号44とする。)を並べて配置する。次に、ストライプ状に延びる部分49m,49n,49m′,49n′と同様に、シート43の+X側の半シート43Bとシート44の−X側の半シート(これを符号44Aとする。)のうち、X方向に関して略中央の、Y方向に沿って2列のストライプ状に延びる部分(これを符号49m″,49n″とする。)を溶着して一体化する。次に、シート43の+X側の半シート43Bとシート44の−X側の半シート44Aのうち、ストライプ状に延びる部分49m″,49n″の間の内部領域(−Y側の縁部、+Y側の縁部を除く。)に、Y方向に沿って等間隔で5つの貫通穴(これを符号49″,49″,……とする。)を形成する。この後、
図9Bに示したように偶数番目のシート42を奇数番目のシート41,43とは反対の側に向かって2つ折りにする際に、シート44も、奇数番目のシート41,43とは反対の側に向かって2つ折りにする。そして、
図9Cに示したように、シート42の2つ折りの折り曲げ箇所42bと反対の側の縁部42c,42d同士を溶着する(その溶着箇所を符号42mで示している。)とともに、シート44の2つ折りの折り曲げ箇所と反対の側の縁部同士を溶着する。この後、シート41,42,43をなす半シートの−Y側、+Y側の縁部を厚さ方向Zに関して一括して溶着する際に、シート44をなす半シートの−Y側、+Y側の縁部も併せて溶着する。このようにして、厚さ方向Zに積み重ねられた4つのセグメント袋を含む空気袋を作製する。
【0102】
厚さ方向Zに積み重ねられたセグメント袋の数を5つとする場合、既述の
図9Aにおいて、シート43の+X側に、さらに追加の5枚目のシートを並べて配置する。そして、上述のように、互いに重なった半シートの一体化、互いに重なった半シートの内部領域における貫通穴の形成、シートの2つ折り、2つ折りの折り曲げ箇所と反対の側の縁部同士の溶着、および、−Y側、+Y側の縁部の一括溶着を行う。このようにして、厚さ方向Zに積み重ねられたセグメント袋の数を増やしてゆくことができる。
【0103】
(変形例2)
上述の例では、
図8(B)に示したように、空気袋22の長手方向Yに関して−Y側の縁部(+側の縁部も同様。)は、一括して溶着されているが、これに限られるものではない。例えば、
図10に示すように、セグメント袋41をなす半シート41A,41Bの−Y側の縁部41Ae,41Be同士、セグメント袋42をなす半シート42A,42Bの−Y側の縁部42Ae,42Be同士、セグメント袋43をなす半シート43A,43Bの−Y側の縁部43Ae,43Be同士を、それぞれ別々に溶着してもよい。
【0104】
このようにした場合、空気袋22の長手方向Yに関して−Y側の縁部(+側の縁部も同様。)で、厚さ方向Zのストローク量(膨張する距離)Ze′を増やして、手首90を圧迫できる。
【0105】
なお、この構成をとる場合、貫通穴49から互いに隣接した半シート41B,42Aの間の隙間を通した空気の漏れを防止するように、予め、例えば半シート41B,42Aのうち貫通穴49の周りの環状の部分同士を溶着しておく(この溶着箇所を符号49rで表している。)。また、貫通穴49′から互いに隣接した半シート42B,43Aの間の隙間を通した空気の漏れを防止するように、例えば半シート42B,43Aのうち貫通穴49の周りの環状の部分同士を溶着しておく(この溶着箇所を符号49r′で表している。)。
【0106】
(検証実験)
図16は、検証実験を行ったときの、
図11の空気袋の幅方向に関する圧力分布(図中に「実施例」として実線で示す。)と、1つの袋からなる空気袋の幅方向に関する圧力分布(図中に「比較例」として破線で示す。)とを、対比して示している。
【0107】
ここで、「比較例」の空気袋は、2枚の半シートを対向させ、幅方向の縁部同士を溶着するとともに、その幅方向に対して垂直な長手方向の縁部同士を溶着して構成された。一方の半シートには、流体を導入および/または排出するためのニップルが取り付けられた。
【0108】
上述の「実施例」の空気袋、「比較例」の空気袋は、ともに、幅方向の全寸法が36mmに設定された。また、両側の溶着箇所(溶着マチ)の幅方向寸法は、それぞれ3mmに設定された。つまり、「実施例」の空気袋、「比較例」の空気袋は、いずれも、幅方向に関して30mmの寸法分が、厚さ方向Zに関して膨張し得る領域として設定された。
【0109】
図16の横軸は、上述の「実施例」の空気袋、「比較例」の空気袋における、幅方向に関する測定位置を示している。この例では、空気袋の膨張し得る領域(その両端の座標を0mm、30mmとする。)における座標6mm、12mm、18mm、24mmの箇所が測定位置になっている。
図16の縦軸は、「実施例」の空気袋、「比較例」の空気袋において、上述の測定位置にそれぞれ配置された圧力センサの出力を示している。各圧力センサの出力(単位はボルト[V])は、空気袋上でその圧力センサが配置された箇所の圧力に比例している。
【0110】
この検証実験では、「実施例」の空気袋、「比較例」の空気袋は、同じ加圧源によって、同時に並行して、約300mmHgまで加圧された。
図16から分かるように、上述の「実施例」の空気袋は、「比較例」の空気袋に比して、幅方向に関して圧力分布が平坦化されている。このように、検証実験によって、この発明の効果を検証することができた。
【0111】
上述の実施形態では、被測定部位は主に手首90であるとしたが、これに限られるものではない。被測定部位は上腕などの他の部位であってもよい。
【0112】
また、上述の実施形態では、血圧測定用カフは、被測定部位の周りに、リングによって折り返して装着されるタイプとしたが、これに限られるものではない。血圧測定用カフは、被測定部位の周りに、一方向に渦巻き状に巻いて装着されるタイプであってもよい。
【0113】
また、上述の実施形態では、流体袋としての空気袋が帯状体に内包されて血圧測定用カフを構成しているとした。しかしながら、これに限られるものではない。流体袋が例えばエラストマからなり、流体袋自体が血圧測定用カフを構成してもよい。
【0114】
また、流体は空気であるとしたが、これに限られるものではない。流体は、窒素など、流体袋を加圧しまたは減圧できるものであればよい。
【0115】
また、シートとニップル、および、シートの各部同士を溶着するのに代えて、それぞれ例えば接着剤を用いた接着を行ってもよい。
【0116】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。