特許第6558133号(P6558133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558133化粧料汚れ付着防止剤および口腔用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558133
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】化粧料汚れ付着防止剤および口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20190805BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61Q11/00
【請求項の数】1
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-155399(P2015-155399)
(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-31124(P2017-31124A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸治
(72)【発明者】
【氏名】島村 佳久
(72)【発明者】
【氏名】山本 宣之
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−153101(JP,A)
【文献】 特開2006−273767(JP,A)
【文献】 特開2004−194874(JP,A)
【文献】 特開2015−084848(JP,A)
【文献】 特開2010−005161(JP,A)
【文献】 特開平07−166154(JP,A)
【文献】 国際公開第99/063956(WO,A1)
【文献】 特開2010−116488(JP,A)
【文献】 特開2005−336056(JP,A)
【文献】 特開2003−180801(JP,A)
【文献】 特開平04−005221(JP,A)
【文献】 特開平09−012438(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/183748(WO,A1)
【文献】 特開2016−037455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量10,000〜5,000,000であり、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)10〜90モル%と、
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B1)、4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B2)、および(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(B3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位90〜10モル%と
を含有する共重合体からなる化粧料汚れ付着防止剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。式(B1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数4〜18のアルキル基を示す。式(B2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Xはハロゲンイオンもしくは酸残基を示す。式(B3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子成分を含有する化粧料汚れ付着防止剤に関し、より詳しくは該防止剤を含有する口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
昔から、女性はいつまでも若々しく、そしていつまでも美しくありたいと願うものである。このような願いから、一般的に、女性は目元、肌や口元に対してアイライナー、アイシャドー、ファウンデーションや口紅などのメイクアップ用の化粧料 を用いて化粧を行う。口元のなかでも特に歯については、汚れが付着していない真っ白な歯が求められているものの、多くの女性はハミガキ以外の手入れをしていないのが現状である。また、女性同士による会話中など口を開くことで歯面が乾燥する場面では、口紅などの汚れが歯面に付着しやすくなる。このため歯面の美観が損なわれたり、一度付着した口紅を洗い落とすことが困難になったりすることもある。
【0003】
歯の汚れを落とし、色を白くすることは、医学的には歯科審美領域に属し、近年、急速に発達している分野でもある。しかし、歯科医院での歯科審美の主目的は、歯列矯正による美観向上(形態美)、食品による汚れや、飲料(コーヒー、お茶、ワインなど)やタバコのヤニなどの色素汚れを洗い落とし、歯面を白くすることなどによる美観向上(色彩美)や各器官が連携し健康な状態を維持すること(機能美)を目的としており(非特許文献1、非特許文献2)、女性特有であるメイクアップ用化粧料による汚れについて、歯面への付着を防ぐことは必ずしも目的とはしていない。
【0004】
さらに、食品に由来する汚れの多くはタンパク質汚れであり、飲料やタバコによるものの多くは色素によるものである(非特許文献2)。化粧料による汚れは油性成分が多く、食品、飲料やタバコのヤニなどを由来とするタンパク汚れや色素汚れが歯面へと付着する際の作用機序は、化粧料汚れに由来するものとは異なることが容易に推察される。
【0005】
これまでの研究開発については、食品や飲料に着目した検討がなされ、例えば、ピロリン酸を用いる方法や(特許文献1)やピロリン酸とN−アシルアミノ酸とを組み合わせた方法(特許文献2)等が開示されている。しかしこれまで、化粧料中の油性成分による汚れの歯面への付着防止や付着抑制に関する口腔用組成物は一切知られていないのが現状である。
【0006】
一方、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、「MPC」と称する場合がある)は高い生体適合性、抗タンパク質吸着能および高い親水性を有する化合物として知られている(非特許文献3、非特許文献4)。MPCを用いたオーラルケア剤として、口腔内の乾燥防止や刺激緩和に関する方法(特許文献3)、口腔内の微生物付着防止に関する方法(特許文献4)が開示されている。特許文献3に記載されている口腔内の乾燥防止は、歯面のみに関するものではなく、口腔内全体のものである。特許文献3の方法は、ドライマウス症状などに有効とされる方法であって、歯面の化粧料汚れ付着防止効果や付着抑制効果に関する示唆もなされていない。このため、MPCを用いた研究や開発によって、化粧料汚れが歯面へと付着することを防止・抑制する方法については知られておらず、さらにその効果についても一切知られていないのが現状であった。
【0007】
このように、化粧料汚れの歯面への付着防止や付着抑制に関するものは十分ではなく、化粧料に由来する油性成分汚れを歯面へと付着することを防止することが出来る口腔用組成物については、いまだ満足のいくものが得られていないのが現状であり、歯面への化粧料汚れの付着を防止・抑制が可能な口腔用組成物が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−12438号公報
【特許文献2】WO2013/183748号公報
【特許文献3】特開2006−273767号公報
【特許文献4】特開2011−153101号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】一般社団法人 日本歯科審美学会ホームページ、<URL:http://www.jdshinbi.net/general/esthetic-dentistry.html>
【非特許文献2】山本高司,2002,Journal of the Society of Inorganic Materials,Japan,9,333−340.
【非特許文献3】K.Ishihara et al.,1990,J.Biomed.Mater.Res.,24,1069−1077.
【非特許文献4】K.Ishihara et al.,1992,J.Biomed.Mater.Res.,26,1543−1552.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の通り、本発明の課題は、化粧料、特に、メイクアップ用化粧料汚れの歯面への付着を防止ないし抑制することが可能な化粧料汚れ付着防止剤および口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、MPCに基づく構成単位と、これとは異なる特定の構成単位を特定割合で有し、特定の構造を有する共重合体を、化粧料汚れ付着防止剤として用いることで、上記の課題を解決できるとの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の[1]〜[3]である。
【0012】
[1]重量平均分子量10,000〜5,000,000であり、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)10〜90モル%と、
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B1)、4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B2)、および(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(B3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位90〜10モル%と
を含有する共重合体からなる化粧料汚れ付着防止剤。
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
(式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。式(B1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数4〜18のアルキル基を示す。式(B2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Xはハロゲンイオンもしくは酸残基を示す。式(B3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0017】
[2]前記の[1]に記載の化粧料汚れ付着防止剤を0.001〜5.0w/v%と、水3.0〜99.9w/v%とを含有する口腔用組成物。
【0018】
[3]前記の[2]に記載の口腔用組成物に、さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(C)を0.001〜10.0w/v%含有する口腔用組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明の化粧料汚れ付着防止剤は、歯面への化粧料、特に、メイクアップ用化粧料汚れを付着防止・付着抑制することができるため、歯面への化粧料汚れの付着防止や付着抑制に有用で、さらに歯面の美観維持向上にも有用である。
加えて、本発明の口腔用組成物は、良好な使用感を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の化粧料汚れ付着防止剤は、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)と、
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B1)、4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B2)、および(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(B3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位と
を含有する共重合体からなる。
【0021】
<2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)>
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(A)は、より具体的には下記の式(A)で表され、式(A')で表される単量体の重合によって得られる。
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
式(A)および式(A')において、Rは水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくはメチル基である。
本発明に用いる共重合体は、分子鎖中に構成単位(A)を有することによって、化粧料汚れ付着防止効果を発現することが出来る。
【0025】
本発明に用いる共重合体中の構成単位(A)の含有量は、10〜90モル%である。含有量が10モル%未満であると化粧料汚れ付着防止効果が期待出来ず、含有量が90モル%より多いと、MPCセグメントの有する超親水性のために歯面への吸着性に乏しくなり効果が望めなくなる。
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの好適な例として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタアクリル(メタクリル)を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタアクリロイル(メタクリロイル)を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレート(メタクリレート)を意味する。
【0026】
<アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B1)>
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B1)は、より具体的には下記式(B1)で表され、式(B1')で表される単量体の重合によって得られる。本発明に用いる共重合体は、分子鎖中に構成単位(B1)を有することによって、共重合体の歯面への吸着性をより高める事が出来る。
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
式(B1)および式(B1')において、Rは水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくはメチル基である。Rは炭素数4〜18の直鎖状または分岐状のアルキル基のいずれでも良い。
【0030】
具体的には、炭素数4〜18の直鎖状のアルキル基としては、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンダデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基が挙げられる。炭素数4〜18の分岐状のアルキル基としては、t−ブチル基、イソブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基が挙げられる。
共重合体の歯面への吸着性の観点から、直鎖状のアルキル基が好ましく、n−ブチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基がより好ましい。
【0031】
構成単位(B1)を満たす構造を有していれば共重合体の歯面への吸着性を損なうことが無いため、いずれでも用いることができるが、共重合体の歯面への吸着性をより高める観点から、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体の好適な例として、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
<4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B2)>
4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(B2)は、より具体的には下記の式(B2)で表され、式(B2')で表される単量体の重合によって得られる。本発明に用いる共重合体は、分子鎖中に構成単位(B2)を有することによって、共重合体の歯面への吸着性をより高めることが出来る。
【0033】
【化9】
【0034】
【化10】
【0035】
式(B2)および式(B2')において、Rは水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくはメチル基である。R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示し、アルキル基は直鎖状、分岐状および環状のいずれであっても良い。
【0036】
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
、RおよびRとして好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0037】
としては、例えば、クロライドイオンなどのハロゲンイオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオンなどの酸残基が挙げられる。好ましくは、ハロゲンイオンである。
【0038】
共重合体の歯面への吸着性をより高める観点から、4級アンモニウム基含有(メタ)アクリル系単量体の好適な例として、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
【0039】
<(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(B3)>
(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(B3)は、より具体的には下記の式(B3)で表され、式(B3')で表される単量体の重合によって得られる。本発明に用いる共重合体は、分子鎖中に構成単位(B3)を有することによって、共重合体を高分子量化し、共重合体の歯面への密着性をより高めることが出来る。
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
式(B3)および式(B3')において、Rは水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくは水素原子である。RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、アルキル基は直鎖状、分岐状および環状のいずれであっても良い。
【0043】
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
およびR10として好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基もしくはイソプロピル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0044】
共重合体を高分子量化し、共重合体の歯面への密着性をより高める観点から、(メタ)アクリルアミド系単量体の好適な例として、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0045】
本発明に用いる共重合体は、分子鎖中に(B1)、(B2)および(B3)からなる群から選択される少なくとも1つの構成単位を有する。本発明に用いる共重合体は、分子鎖中に(B1)、(B2)および(B3)からなる群から選択されるいずれか1つの構成単位のみを有していてもよく、(B1)、(B2)および(B3)からなる群から選択される2つの構成単位{例えば、(B1)および(B2)の組み合わせ、(B2)および(B3)の組み合わせ、(B3)および(B1)の組み合わせ}を有していてもよく、(B1)、(B2)および(B3)の全ての構成単位を有していても良い。
【0046】
本発明に用いる共重合体は、分子鎖中に構成単位(B1)〜(B3)を有することによって、共重合体の歯面への吸着性、密着性が高くなる。さらに、本発明に用いる共重合体は、(B1)〜(B3)だけでなく、構成単位(A)を同一高分子鎖中に有することによって、歯面への吸着性を有する化粧料汚れ付着防止剤となる。本発明に用いる共重合体中の構成単位(B1)〜(B3)の含有量{(B1)〜(B3)のうち1つの構成単位のみを含有する場合は当該構成単位の含有量、(B1)〜(B3)のうち2つまたは3つの構成単位を含有する場合はそれらの構成単位の含有量の合計}は10〜90モル%であり、好ましくは10〜80モル%であり、より好ましくは10〜65モル% である。含有量が10モル%未満であると共重合体の歯面への吸着性が乏しくなり化粧料汚れ付着防止効果が望めなくなる恐れがあり、含有量が90モル%より多いと水への溶解性が低下し口腔用組成物を製する事が困難となる恐れがある。
【0047】
本発明に用いる共重合体の分子鎖中に含まれる、構成単位(A)と構成単位(B1)〜(B3)の組み合わせの好適な例は、化粧料汚れ付着防止効果と共重合体の歯面への吸着性・密着性の観点から、以下の組み合わせが挙げられる。
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびブチル(メタ)アクリレート;
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびステアリル(メタ)アクリレート;
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよび2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド;
ならびに、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびステアリル(メタ)アクリレート。
【0048】
本発明に用いる共重合体は、構成単位(A)および構成単位(B1)〜(B3)以外の構成単位を含んでいても良いが、好ましくは、構成単位(A)および、構成単位(B1)、(B2)並びに(B3)からなる群より選択される1つ、2つまたは3つの構成単位のみからなる。
【0049】
本発明に用いられる共重合体は、特開平11−035605の方法に従って重合を行い得たMPCポリマー(1)、特開2004−196868の方法に従って重合を行い得たMPCポリマー(2)、特開2004−196868の方法に従って重合を行い得たMPCポリマー(3)、特開2004−189678の方法に従って重合を行い得たMPCポリマー(4)および特開2013−018749の方法に従って重合を行い得たMPCポリマー(5)を用いることが出来る。
【0050】
本発明に用いる共重合体の重量平均分子量は10,000〜5,000,000であり、好ましくは、20,000〜1,000,000である。重量平均分子量が10,000未満であると歯面への吸着性が低下し、化粧料汚れ付着防止効果が望めなくなり、重量平均分子量が5,000,000より大きいと粘度が急激に上昇し、口腔用組成物を製することが困難となる恐れがある。
【0051】
また、前記共重合体を化粧料汚れ付着防止剤として使用する場合の配合量は、当該共重合体を組成物全体に対して、0.001〜5.0w/v%である。配合量が0.001w/v%未満であると、化粧料汚れ付着防止効果が得られない恐れがあり、配合量が5.0w/v%以上であっても、添加量に見合った効果が得られない。
【0052】
本発明に用いる(C)群としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである。
【0053】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(25E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)である。
【0054】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、具体的には、モノイソステアリン酸ポリグリセリル−2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2、イソステアリン酸ポリグリセリル−4、イソステアリン酸ポリグリセリル−6、イソステアリン酸ポリグリセリル−10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10、ラウリン酸ポリグリセリル−4、ラウリン酸ポリグリセリル−6、ラウリン酸ポリグリセリル−10、ミリスチン酸ポリグリセリル−10、オレイン酸ポリグリセリル−2、オレイン酸ポリグリセリル−4、オレイン酸ポリグリセリル−6、オレイン酸ポリグリセリル−10、ステアリン酸ポリグリセリル−10、ジステアリン酸ポリグリセリル−10、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−6である。
【0055】
ソルビタン脂肪酸エステルは、具体的には、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ソルビタンジステアレート、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンである。
【0056】
ポリエチレングリコールは、具体的には、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール1540、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、ポリエチレングリコール35000である。
【0057】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、具体的には、ポリオキシエチレン(3)ポリオキシプロピレン(17)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコールである。なお、( )は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの平均重合度を表す。
【0058】
これら(C)群の成分を含有することで歯面の親水性がより向上し、化粧料汚れがより付着しにくくなるとともに、さらに、一度、歯面へ付着した化粧料汚れが落ち易くなる。(C)群の成分の中でも歯面の親水性向上の観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコールおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いることがより好ましい。
本発明の(C)群の含有量は、通常、0.001〜10.0w/v%であれば良い。より化粧料汚れ付着防止効果を高める観点から、0.002〜9.5w/v%が好ましく、さらに好ましくは、0.003 〜9.0w/v%である。
【0059】
さらに、本発明の化粧料汚れ付着防止剤は、共重合体や(C)群成分以外にも必要に応じて一般に口腔用組成物に使用できる緩衝剤、甘味剤、薬剤、湿潤剤、防腐殺菌剤、粘結剤、香料、有機酸、酸化防止剤、安定剤、金属封鎖剤、溶剤等を配合することができる。
【0060】
緩衝剤は、特に限定されないが、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸およびこれらの塩が挙げられ、0.001w/v%〜10.0w/v%で使用されることが望ましい。
【0061】
甘味剤は、特に限定されないが、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、キシリトール、マルチトール、ステビオサイド、アスパルテームなどが挙げられ、0.001w/v%〜10.0w/v%で使用されることが望ましい。
【0062】
薬剤は、特に限定されないが、アズレンスルホン酸ナトリウム、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインヒドロキシアルミニウム、エピジヒドロキシコレステリン、ジヒドロコレステロール、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化亜鉛、グリチルリチン酸およびその塩、β−グリチルリチン酸、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、1、8−シネオール、アスコルビン酸およびその塩、塩酸ピリドキシン、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ゼオライト、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドンヨード、塩化リゾチーム、銅クロロフィリンナトリウム、ヒノキチオール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(8〜10E.O.)、ラウロイルサルコシンナトリウム、トラネキサム酸、サリチル酸メチル、l−メントールなどが挙げられる。
【0063】
湿潤剤は、特に限定はされないが、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、エリスリトールなどの多価アルコールが挙げられ、0.01w/v%〜50.0w/v%で使用されるのが好ましい。
【0064】
防腐殺菌剤は、特に限定はされないが、塩酸ポリヘキサニド、ヒノキチオール、安息香酸およびこの塩、パラベン類などが挙げられ、通常配合量は0.01w/v〜1.0w/v%である。
【0065】
粘結剤は、特に限定はされないが、プルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系粘稠化剤、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、ジュランガム、キサンタンガムなどのような多糖類などが挙げられる。
【0066】
香料は、特に限定はされないが、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、およびこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、および、l−メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1、2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、さらに、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料などが挙げられる。香料は、0.001w/v%〜1.0 w/v%で含むことが望ましい。
【0067】
有機酸は、特に限定はされないが、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
酸化防止剤は、特に限定はされないが、ビタミンE、ビタミンC、茶抽出物、ローズマリー抽出物などが挙げられる。
安定剤は、特に限定はされないが、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアリール等が挙げられる。
【0068】
金属封鎖剤は、特に限定はされないが、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等を挙げることが出来る。
溶剤は、特に限定はされないが、水、エタノールを挙げることができる。
【0069】
本発明の化粧料汚れ付着防止剤の具体的な製品形態としては、口腔用組成物として使用することが好ましく、次のようなものを例示することが出来る。すなわち、練り歯磨き、液体ハミガキ、洗口液、含そう薬、口腔清涼化剤などが挙げられる。口腔用組成物としては、特に、練り歯磨き、液体ハミガキ、洗口液、含そう薬とすることが好ましい。
【0070】
本発明の化粧料汚れ付着防止剤は、練り歯磨き、液体ハミガキ、洗口液や含そう薬等として、ヒトの歯へ適用してその効果を発現させることが好ましいが、義歯や歯科材料へも適用することが出来る。
【実施例】
【0071】
以下の実施例および比較例により、本発明およびその効果を具体的に説明する。
【0072】
本実施例および比較例に用いた共重合体や重合体は、次の通りである。
MPCポリマー(1): 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比)80/20、重量平均分子量:600,000〕であり、特開平11−035605の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
MPCポリマー(2): 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比)30/70、重量平均分子量:142,000〕であり、特開2004−196868の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
MPCポリマー(3): 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ステアリルメタクリレート共重合体〔共重合組成(モル比)33/67、重量平均分子量:164,000〕であり、特開2004−196868の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
MPCポリマー(4): 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド共重合体〔共重合組成(モル比)70/30、重量平均分子量:450,000〕であり、特開2004−189678の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
MPCポリマー(5): 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド・ステアリルメタクリレート共重合体〔共重合組成(モル比)90/2/8、重量平均分子量:820,000〕であり、特開2013−018749の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
【0073】
ホモポリマー(A):2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの重合体〔重量平均分子量:200,000〕であり、特開平8−333421の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
ホモポリマー(B1):ブチルメタクリレートの重合体〔重量平均分子量:180,000〕であり、和光純薬工業(株)(製品名:ポリ(メタクリル酸n−ブチル))より購入して試験に用いた。
ホモポリマー(B2):2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体〔重量平均分子量:300,000〕であり、特開平8−258403の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
ホモポリマー:N,N−ジメチルアクリルアミドの重合体〔数平均分子量:10,000〕であり、シグマアルドリッチジャパン(製品名:Poly(N,N−dimethylacrylamide)、DDMAT terminated)より購入して試験に用いた。
【0074】
[実施例1]
精製水約80gにMPCポリマー(1)0.001gを加え、攪拌した。この後、これに全量100mLとなるように精製水を加えて製造した。
[実施例2〜実施例11]
表1に示す種類および量の成分を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って製造した。
【0075】
[比較例1〜比較例9および対照]
表2に示す種類および量の成分を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って製造した。
【0076】
<ハイドロキシアパタイトプレートへの濡れ性評価>
以下の手順に従ってハイドロキシアパタイトプレートへの濡れ性評価を行った。
(1)15mL遠心管へ実施例1の検体1mLおよび、ハイドロキシアパタイトプレート(セルヤードペレットD5−T2、Pentax製)を入れ、10分間浸漬した。
(2)ハイドロキシアパタイトプレートを取り出し、取り出したハイドロキシアパタイトプレートと精製水1mLを新しい15mL遠心管に入れ、ハイドロキシアパタイトプレートを洗浄した。
(3)(2)の洗浄操作を更に2回繰返した。
(4)15mL遠心管からハイドロキシアパタイトプレートを取り出し、水気を拭取り接触角計を用いて以下の条件で接触角を測定した。
【0077】
(測定条件)
測定法:液滴法
解析法:θ/2法
測定値:滴下から5秒後の接触角
接触角の数値は、より小さい方がハイドロキシアパタイトに対して良好な濡れ性を示す。
【0078】
実施例2〜実施例11、比較例1〜比較例9および対照についても同様に接触角を測定することでハイドロキシアパタイトプレートへの濡れ性評価を行った。
濡れ性評価の結果を表1および表2に示す。
【0079】
<化粧料汚れ付着抑制評価>
以下の手順に従って化粧料汚れ付着抑制評価を行った。
(1)15mL遠心管へ実施例1の検体1mLおよび、ハイドロキシアパタイトプレート(セルヤードペレットD5−T2、Pentax製)を入れ、10分間浸漬した。
(2)ハイドロキシアパタイトプレートを取り出し、取り出したハイドロキシアパタイトプレートと精製水1mLを新しい15mL遠心管に入れ、ハイドロキシアパタイトプレートを洗浄した。
(3)(2)の洗浄操作を更に2回繰返した。
(4)15mL遠心管からハイドロキシアパタイトプレートを取り出し、化粧料(口紅、メイベリン製、製品名:ウォーターシャイニーボリューミー ナチュラルベージュ)で汚れをハイドロキシアパタイトプレートへと付着させ、ペーパータオルで拭取った。
(5)拭取り後、ハイドロキシアパタイトプレートに残っている化粧料の程度を以下の分類に従って評価し、化粧料汚れ付着抑制評価とした。
【0080】
評価分類:
A:ハイドロキシアパタイトプレートに汚れが残っていなかった
B:ハイドロキシアパタイトプレートに汚れが約1/4程度残っていた
C:ハイドロキシアパタイトプレートに汚れが約1/2程度残っていた
D:ハイドロキシアパタイトプレートに汚れが約3/4程度残っていた
E:ハイドロキシアパタイトプレートの汚れが落ちなかった
実施例2〜実施例11、比較例1〜比較例9および対照についても同様に化粧料汚れ付着抑制評価を行った。
化粧料汚れ付着抑制評価の結果を表1および表2に示す。
【0081】
ハイドロキシアパタイトプレートへの濡れ性評価に関し、実施例1ではハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)は66.0°であり、MPCポリマー(1)の配合濃度が上昇するに従って、ハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)が低下する傾向を示し、実施例7で最も低い値60.2°となった。このMPCポリマー配合濃度上昇によるハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性(接触角)の低下はMPCポリマー(2)、MPCポリマー(3)、MPCポリマー(4)およびMPCポリマー(5)についても見られ、そのハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)は63.0〜63.4°であった。一方、比較例のハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)は79.0〜85.0°と高値であった。比較例7および比較例9については、組成物に対して不溶であったため試験実施不可能であった。また、対照のハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)は85.2°と高値であった。
【0082】
化粧料汚れ付着抑制評価に関し、実施例では全てA評価となったが、比較例での評価は、比較例1〜比較例6および比較例8についてD評価であり、対照についてはE評価であった。比較例7および比較例9については、組成物に対して不溶であったため試験実施不可能であった。
【0083】
[実施例12]
精製水約80gにMPCポリマー(1)0.001gを加え、攪拌した。この後、順次、ミリスチン酸ポリグリセリル−10 0.25g、サッカリンナトリウム0.006g、グリセリン3.0g、ソルビトール液(70%)1.0g、エタノール4.0g、クエン酸0.01g、クエン酸三ナトリウム0.05g、パラオキシ安息香酸エチル0.05gおよび香料0.5gを加え攪拌し、全量100mlとなるように精製水を加えて液体ハミガキを製造した。
[実施例13〜実施例20]
表3に示す種類および量の成分を使用した以外は、実施例12と同様の手順に従って製造した。
[比較例10〜比較例18および対照]
表4に示す種類および量の成分を使用した以外は、実施例12と同様の手順に従って製造した。
【0084】
実施例12〜実施例20、比較例10〜比較例18および対照について、上記記載と同様に、ハイドロキシアパタイトプレートへの濡れ性評価(接触角)および化粧料汚れ付着抑制評価を行い、その結果を表3および表4に示す。
【0085】
<使用後の歯面の感触>
口腔用組成物(液体ハミガキ)である実施例12の組成物10mLで口腔内を20秒間含そうし、吐き出した直後の歯面を舌で触ったときの感触を下記基準(A〜D)に従って評価した。評価は専門パネラーが行い、その評価結果を表3および表4に示す。
A:歯面がなめらかな感触であり、清掃実効感が高い
B:歯面がややきしむが、清掃実効感はある
C:歯面がなめらかでなく、清掃実効感に乏しい
D:歯面がギシギシする
実施例13〜実施例20、比較例10〜比較例18および対照についても使用後の歯面の感触について評価を行い、その結果を表3および表4に示す。
【0086】
使用後の歯面の感触の評価結果に関し、実施例12ではハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)は64.3°であり、MPCポリマー(1)の配合濃度が上昇するに従って、ハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)も低下する傾向を示し、実施例16で最も低い値60.1°となった。このMPCポリマー配合濃度上昇によるハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)の低下はMPCポリマー(2)、MPCポリマー(3)、MPCポリマー(4)およびMPCポリマー(5)についても見られ、そのハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)は61.4〜64.5°であった。一方、比較例のハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)は77.8〜79.5°となった。比較例16および比較例18については、組成物に対して不溶であったため試験実施不可能であった。また、対照のハイドロキシアパタイトプレートの濡れ性評価(接触角)は80.1°であった。
【0087】
化粧料汚れ付着抑制評価および使用後の歯面の感触に関し、実施例では全てA評価となった。比較例での評価に関し、比較例10〜比較例15についてC評価であり、比較例17および対照についてはD評価であった。比較例16および比較例18に関し、組成物に対して不溶であったため試験実施不可能であった。
【0088】
[実施例21〜実施例26]
液体ハミガキ以外にも、表5に示す練り歯磨き剤を製造し、ハイドロキシアパタイトプレートへの濡れ性評価(接触角)、化粧料汚れ付着抑制評価および使用後の歯面の感触に関する評価を実施した。
【0089】
ハイドロキシアパタイトプレートへの濡れ性評価に関し、練り歯磨き剤は、液体ハミガキと同様に、ハイドロキシアパタイトプレートへの濡れ性評価(接触角)は64.3〜64.5°と良好な結果を示した。さらに、化粧料汚れの付着抑制評価および使用後の歯面の感触に関し、すべての実施例でA評価であった。
【0090】
以上より、本発明の化粧料汚れ付着防止剤は、化粧料に由来する汚れの付着防止効果および付着抑制効果を示した。また、これらの効果は液体ハミガキや練り歯磨きといった口腔用組成物とした際にも有効で、良好な使用感を示した。
【0091】
本発明の化粧料汚れ付着防止剤の化粧料に由来する油性成分の歯面への付着防止効果についての作用機序は、本発明の共重合体が、歯面自体へと吸着することで、歯面が親水性を獲得し、化粧料汚れの吸着を阻害することで効果を奏したものと考えられる。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
*水に不溶のため試験不可能。
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
*水に不溶のため試験不可能。
【0096】
【表5】
**ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール。
【産業上の利用可能性】
【0097】
化粧料汚れの歯面への付着を防止ないし抑制することが可能な化粧料汚れ付着防止剤および口腔用組成物を提供することができる。