(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記導出手段により導出された前記範囲に応じて定まる範囲内の画像形成速度における最高速度で前記記録媒体に画像を形成する制御を、前記搬送手段及び前記吐出手段に対して行う
請求項1から請求項3までの何れか1項記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0021】
まず、
図1を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置の一例としての液滴吐出型記録装置10の構成について説明する。なお、以下では、シアン色をC、マゼンタ色をM、黄色をY、黒色をKで表すと共に、各構成部品及びトナー画像(画像)を色毎に区別する必要がある場合には、符号の末尾に各色に対応する色の符号(C、M、Y、K)を付して説明する。また、以下では、各構成部品及びトナー画像を色毎に区別せずに総称する場合には、符号の末尾の色の符号を省略して説明する。
【0022】
液滴吐出型記録装置10は、例えば、1回の搬送で用紙Pの両面に画像を形成する2組の画像形成部12A、12B、制御部14、給紙ロール16、排出ロール18、及び複数の搬送ローラ20を備えている。
【0023】
また、画像形成部12Aは、ヘッド駆動部22A、ヘッド24A、及び乾燥装置26Aを備えている。同様に、画像形成部12Bは、ヘッド駆動部22B、ヘッド24B、及び乾燥装置26Bを備えている。なお、以下では画像形成部12A及び画像形成部12B、並びに、画像形成部12A及び画像形成部12Bに含まれる共通の部材を、それぞれ区別する必要がない場合には、符号の末尾の符号“A”及び符号“B”を省略して表す場合がある。
【0024】
制御部14は、搬送モータ62(
図3参照。)を駆動することで、例えば搬送モータ62とギヤ等の機構を介して接続された搬送ローラ20の回転を制御する。給紙ロール16には、記録媒体の一例として長尺状の用紙Pが巻き付けられており、搬送ローラ20の回転に伴って用紙Pが
図1の矢印Aの方向に搬送される。なお、以下では、用紙Pの搬送方向を単に「搬送方向」という。また、搬送ローラ20が本発明の搬送手段の一例である。
【0025】
制御部14は、画像情報を受け付け、画像情報に含まれる画像の画素毎の色情報に基づいて画像形成部12Aを制御することで、用紙Pの一方の画像形成面に、画像情報に対応する画像を形成する。
【0026】
具体的には、制御部14は、ヘッド駆動部22Aに液滴の吐出タイミングを指示してヘッド駆動部22Aを制御する。そして、ヘッド駆動部22Aは、制御部14から指示された液滴の吐出タイミングに従って、ヘッド駆動部22Aに接続されたヘッド24Aを駆動して、ヘッド24Aから液滴を吐出させ、制御部14の制御に応じて搬送される用紙Pの一方の画像形成面上に画像情報に対応した画像を形成する。
【0027】
なお、画像情報に含まれる画像の画素毎の色情報は、画素の色を一意に示す情報を含む。本実施の形態では、一例として、画像の画素毎の色情報がC、M、Y、Kの各々の濃度によって表されているものとするが、画素の色を一意に示す他の表現方法を用いてもよい。
【0028】
ヘッド24Aは、C、M、Y、Kの4色それぞれに対応した4つのヘッド24AC、24AM、24AY、24AKを含み、各ヘッド24Aから対応する色の液滴を吐出する。なお、ヘッド駆動部22及びヘッド24は本発明の吐出手段の一例である。
【0029】
制御部14は乾燥装置26Aにより、用紙Pに形成された画像を乾燥させて、用紙Pへの画像の定着を図る。
【0030】
その後、用紙Pは、搬送ローラ20の回転に伴って、画像形成部12Bと対向する位置に搬送される。この際、用紙Pは、画像形成部12Aによって画像が形成された画像形成面とは異なる他方の画像形成面が画像形成部12Bと向き合うように、表裏が反転されて搬送される。
【0031】
制御部14は、前述した画像形成部12Aに対する制御と同様の制御を画像形成部12Bに対しても実行することで、用紙Pの上記他方の画像形成面に画像情報に対応する画像を形成する。
【0032】
ヘッド24Bは、C、M、Y、Kの4色それぞれに対応した4つのヘッド24BC、24BM、24BY、24BKを含み、各ヘッド24Bから対応する色の液滴を吐出する。
【0033】
制御部14は乾燥装置26Bにより、用紙Pに形成された画像を乾燥させて、用紙Pへの画像の定着を図る。
【0034】
その後、用紙Pは、搬送ローラ20の回転に伴って排出ロール18の位置まで搬送され、排出ロール18に巻き取られる。
【0035】
なお、本実施の形態に係る液滴吐出型記録装置10では、給紙ロール16から排出ロール18までの1回の搬送で、用紙Pの両面に画像を形成する装置構成を説明したが、用紙Pの片面に画像を形成する装置構成であってもよい。
【0036】
また、本実施の形態に係る液滴吐出型記録装置10では、液滴として水性インクを適用しているが、これに限定されず、液滴として、例えば、溶媒が蒸発するインクである油性インク、紫外線硬化型インク等を適用してもよい。
【0037】
次に、
図2を参照して、本実施の形態に係るヘッド24の構成について説明する。
図2(A)に示すように、ヘッド24は、複数の液滴吐出部材30がヘッドの長手方向に沿って配置されている。なお、ヘッドの長手方向は、搬送方向(
図2(A)の矢印A方向)と交差する方向であり、以下では主走査方向という場合がある。また、搬送方向は、以下では副走査方向という場合がある。
【0038】
液滴吐出部材30の配列は主走査方向において、単一の配列ラインに限定されず、ドットピッチ(解像度)によっては副走査方向に複数の配列ラインを設け、予め定められた法則に従い二次元的に配列し、配列ラインピッチ寸法及び用紙Pの搬送速度に応じてそれぞれの配列ライン間で吐出タイミングを制御してもよい。
【0039】
図2(B)に示すように、液滴吐出部材30は、ノズル32とノズル32に対応する圧力室34とを備えている。圧力室34には供給口36が設けられており、圧力室34は供給口36を介して共通の流路(共通流路38)と繋がっている。
【0040】
共通流路38は、インク液の供給源であるインク供給タンク(図示省略)からインク液の供給を受け、各圧力室34へ分配する役目を有している。
【0041】
液滴吐出部材30における圧力室34の天井部上面には、振動板40が取り付けられている。また、振動板40の上面側には、圧電素子42が取り付けられている。振動板40は共通電極40Aを備え、圧電素子42は個別電極42Aを備えており、圧電素子42の個別電極42Aと共通電極40Aとの間に選択的に電圧が印加されると、選択された圧電素子42が変形し、対応するノズル32から液滴が吐出され、かつ共通流路38から圧力室34へ新しいインク液が供給される。
【0042】
制御部14は、画像情報に基づいてヘッド駆動部22(22A、22B)を制御し、圧電素子42の個別電極42Aのそれぞれに対して独立して電圧を印加するための駆動信号を生成する。
【0043】
次に、
図3を参照して、本実施の形態に係る液滴吐出型記録装置10の電気系の要部構成について説明する。
【0044】
図3に示すように、本実施の形態に係る制御部14は、液滴吐出型記録装置10の全体的な動作を司るCPU(Central Processing Unit)50、及び各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)52を備えている。また、制御部14は、CPU50による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)54を備えている。
【0045】
また、液滴吐出型記録装置10は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶部56、及び外部装置と通信データの送受信を行う通信回線I/F(Interface)部58を備えている。また、液滴吐出型記録装置10は、液滴吐出型記録装置10に対するユーザからの指示を受け付ける一方、ユーザに対して液滴吐出型記録装置10の動作状況等に関する各種情報を表示する操作表示部60を備えている。なお、操作表示部60は、例えば、プログラムの実行により操作指示の受け付けを実現する表示ボタンや各種情報が表示される表示面にタッチパネルが設けられたディスプレイ、及びテンキーやスタートボタン等のハードウェアキーを含む。なお、操作表示部60は、本発明の表示手段の一例である。
【0046】
そして、CPU50、ROM52、RAM54、記憶部56、通信回線I/F部58、操作表示部60、搬送モータ62、ヘッド駆動部22、及び乾燥装置26の各部がアドレスバス、データバス、及び制御バス等のバス64を介して互いに接続されている。
【0047】
以上の構成により、本実施の形態に係る液滴吐出型記録装置10は、CPU50により、ROM52、RAM54、及び記憶部56に対するアクセス、並びに通信回線I/F部58を介した外部装置との間での通信データの送受信を各々行う。また、液滴吐出型記録装置10は、CPU50により、操作表示部60を介した各種指示情報の取得、及び操作表示部60に対する各種情報の表示を各々行う。また、液滴吐出型記録装置10は、CPU50により、搬送モータ62の制御、ヘッド駆動部22の制御、及び乾燥装置26の制御を各々行う。
【0048】
ところで、通常、液滴吐出型記録装置10では、予め定められた画質を保証可能な範囲(以下、「画質保証範囲」という。)内で、かつユーザにより予め設定された画像形成速度で画像の形成が行われる。しかしながら、装置の設計仕様上、液滴吐出型記録装置10は画質保証範囲の上限を超えた画像形成速度でも画像形成が可能とされており、ユーザや用途等によっては該画像形成速度で画像を形成したい場合もある。
【0049】
そこで、本実施の形態に係る液滴吐出型記録装置10では、装置の動作モードとして、通常モードとは別に、通常モードより高い(速い)画像形成速度での画像形成を行う特別モードが設定可能とされている。
図4を参照して、本実施の形態に係る液滴吐出型記録装置10の動作モードについて説明する。
【0050】
図4に示すように、本実施の形態に係る液滴吐出型記録装置10では、画像形成速度の範囲が、通常モードでの画像形成速度の範囲(画質保証範囲)、特別モードでの画像形成速度の範囲、及び画像形成が不可能な範囲の3つの範囲に分かれている。
【0051】
本実施の形態に係る通常モードとは、画質保証範囲内で画像形成を行う動作モードである。また、本実施の形態に係る特別モードとは、通常モードの画像形成速度の範囲として予め定められた画像形成速度の範囲の上限値を超え、かつ限界画像形成速度未満の範囲内で、画像形成を行う動作モードである。ここで、限界画像形成速度は、用紙Pの搬送速度の上限値やヘッド24の駆動間隔の下限値等の液滴吐出型記録装置10の構成部品等の駆動限界値から定まる画像形成速度の限界値である。従って、
図4に示すように、液滴吐出型記録装置10は、限界画像形成速度以上の画像形成速度での画像形成は行えない。
【0052】
ところで、特別モードでの画像形成では、通常モードでの画像形成と比較して、多くの場合で画質が低下する。この画質の低下の主な原因は、用紙P上の搬送方向に沿って連続し、かつ異なる画素位置に連続して液滴を吐出(以下、「連続打滴」という。)した場合における1滴目の液滴の滴速度に対する2滴目以降の液滴の滴速度の変動による液滴の着弾位置のずれ(以下、「着弾ずれ」という。)によるものである。なお、ここでいう滴速度とは、単位時間当たりにおける液滴の吐出方向の移動量により表されるものである。また、上記滴速度の変動は、ヘッド24における液滴の吐出後のリフィル(液滴の再充填)や残響圧力波の影響により生じるものである。
【0053】
以下、
図5及び
図6を参照して、着弾ずれによる画質の低下について説明する。なお、
図5の上段は、ヘッド24に印加される駆動電圧の波形図を示している。また、
図5の中段はヘッド24の対応する上段の駆動電圧が印加された場合の駆動状態を示し、
図5の下段は上段の駆動電圧が印加された場合にヘッド24から吐出される液滴の滴速度を示している。また、
図5の中段では、液滴を吐出する状態をオン(ON)と表し、液滴を吐出しない状態をオフ(OFF)と表す。また、
図5の下段では、滴速度が高いほど、上下方向に長い直線で表す。また、
図6(A)は、着弾ずれが発生しなかった場合(液滴が用紙P上の理想的な位置に着弾した場合)における用紙P上に形成された画像を示し、
図6(B)は、
図5に示した状態で液滴がヘッド24から吐出された場合における用紙P上に形成された画像を示している。なお、
図6(A)、(B)の破線は、画素を示している。
【0054】
図5に示すように、本実施の形態では、ヘッド24の駆動電圧として、電圧V[V]がヘッド24に印加された場合に、液滴がヘッド24から吐出されるものとする。また、ここでは、一例として、1滴目の滴速度をv
1、2連続打滴の2滴目の滴速度をv
2、3連続打滴の3滴目の滴速度をv
3と表し、各滴速度の大小関係は、v
2>v
1>v
3であるものとして説明する。
【0055】
図6(B)に示すように、
図5に示した状態でヘッド24から液滴が吐出された場合、
図6(A)に示した状態とは異なり、着弾ずれが発生し、画質の低下が生じる。具体的には、2連続打滴の場合は、2滴目の液滴が1滴目の液滴に追いつき、1滴目の液滴に2滴目の液滴が吸収されることによって、1滴のみの吐出と比較して液滴の滴速度が上昇する結果、
図6(A)と比較して用紙P上における搬送方向の前方の位置に1滴分の液滴より大きい液滴が着弾する。一方、3連続打滴の場合、1滴目及び2滴目は2連続打滴の場合と同様になり、3滴目は、
図6(A)に示した状態と比較して用紙P上における搬送方向の後方の位置に着弾する。
【0056】
このように連続打滴の場合、一例として
図6(B)に示すように、1滴目の滴速度に対する2滴目以降の液滴の滴速度の変動により、画像のつぶれ、段差、すじ、及び着弾ずれ等に起因する画質の低下が発生する。また、この画質の低下の度合は、画像形成速度により定まるヘッド24の駆動周波数(駆動間隔)により異なる。
【0057】
図7及び
図8を参照して、連続打滴における1滴目の滴速度に対する2滴目以降の液滴の滴速度の変動割合について説明する。
図7は、8連続打滴における1滴目の液滴の滴速度に対する2滴目以降の液滴の滴速度の変動割合を、8種類の異なる画像形成速度について示している。また、
図7の縦軸は上記変動割合を示し、
図7の横軸は8連続打滴における何滴目の打滴かを示している。また、
図7の8本の各線は、
図7の上方に行くほど画像形成速度が速いものに対応する。また、
図8は、
図7に示した8連続打滴における2滴目以降の打滴の上記変動割合を、縦軸を
図7と同様に変動割合とし、横軸をヘッド24の駆動周波数として示している。また、本実施の形態では、1滴目の液滴の滴速度に対する2滴目以降の液滴の滴速度の変動割合が±5%の範囲内である場合を、画質保証範囲とした場合について説明する。なお、画質保証範囲は該変動割合が±5%の範囲に限定されず、要求される画質に応じて設定すればよいことは言うまでもない。
【0058】
図7及び
図8に示すように、連続打滴における1滴目の滴速度に対する2滴目の滴速度の変動割合は比較的大きいが、2滴目の滴速度に対する3滴目以降の滴速度の変動割合は、該2滴目の滴速度の変動割合に比較的して格段に小さい。
【0059】
また、
図8に示すように、最大画像形成速度を超えて、かつ限界画像形成速度未満の範囲内の画像形成速度に対応する範囲内の駆動周波数でヘッド24を駆動させて画像を形成した場合は、1滴目の滴速度に対する2滴目の滴速度の変動割合は±5%をも超えて変動する。この結果、一例として
図6(B)に示したように、用紙Pに形成される画像の画質も低下する。従って、従来、ユーザは、特別モードでの画像形成では、画像形成速度を変更しながら画像形成を繰り返すことにより、画質の低下の度合が所望の範囲内となる画像形成速度を決定しており、この結果、該画像形成速度の決定に多大な手間が費やされていた。
【0060】
そこで、本実施の形態に係る液滴吐出型記録装置10は、動作モードが特別モードである場合、画質の低下の度合がユーザの所望の範囲内となる画像形成速度の範囲内で画像を形成する特別画像形成機能が搭載されている。次に、
図9を参照して、本実施の形態に係る特別画像形成機能について説明する。なお、
図9には、本実施の形態に係る特別画像形成機能を実行するための制御部14の機能ブロック図が示されている。制御部14のCPU50が後述する特別モード処理プログラムを実行することにより、
図9に示す各機能部が実現される。また、本実施の形態では、特別画像形成機能を実現するために、一例として
図8に示した1滴目の液滴の滴速度に対する2滴目以降の液滴の滴速度の変動割合を示す情報(以下、「変動割合情報」という。)が記憶部56に予め記憶されている。なお、変動割合情報の記憶媒体は記憶部56に限定されず、例えば液滴吐出型記録装置10が読み出し可能な外部の記憶媒体等でもよいことは言うまでもない。
【0061】
図9に示すように、本実施の形態に係る液滴吐出型記録装置10の制御部14は、表示制御部70、受付部72、導出部74、及び画像形成制御部76を備えている。
【0062】
本実施の形態に係る表示制御部70は、ユーザが液滴吐出型記録装置10により形成される画像における画質の低下の度合の許容レベルを指定する許容レベル指定画面を操作表示部60のディスプレイに表示する。
図10には許容レベル指定画面の一例が示されている。
図10に示すように、ユーザは、許容レベル指定画面で、面画像、線、及び文字等の画像の種別毎に許容レベルを指定して、許容レベル指定画面の下部に表示されている終了ボタンを指定する。なお、
図10では、ユーザにより、許容レベルとして、面画像についてはレベル3が指定され、線及び文字についてはレベル1が指定された場合について示している。ここで、本実施の形態では、レベルの数字が大きいほど画質の低下を許容する度合が大きいものとされている。
【0063】
一方、本実施の形態に係る受付部72は、許容レベル指定画面で指定された画像の種別毎の許容レベルを各々受け付け、導出部74に出力する。
【0064】
また、表示制御部70は、受付部72により許容レベルが受け付けられると、ユーザが、形成対象とする画像における特別モードでの画像形成を適用する範囲(以下、「適用範囲」という。)を指定する適用範囲指定画面を操作表示部60のディスプレイに表示する。
図11には適用範囲指定画面の一例が示されている。
図11に示すように、ユーザは、適用範囲(一例として
図11の破線の矩形の範囲)を指定して、適用範囲指定画面の下部に表示されている終了ボタンを指定する。
【0065】
受付部72は、適用範囲指定画面で指定された適用範囲を受け付け、画像形成制御部76に出力する。
【0066】
導出部74は、受付部72から入力された許容レベルに応じて設定された画質を満たす範囲として、1滴目の液滴の滴速度に対する2滴目以降の滴速度の変動割合の範囲を導出する。以下、
図12〜
図14を参照して、導出部74による上記変動割合の範囲の導出処理について説明する。
【0067】
以下では、
図12に示すように、x連続打滴におけるy滴目の液滴の滴速度をv
xyと表す。なお、ここでは、便宜上、単発の打滴を1連続打滴と表現する。また、
図13に示すように、液滴の理想的な着弾位置に対する搬送方向の着弾位置のずれ量をΔlと表す。また、滴速度v
11は、ユーザにより設定された画像形成速度、及び形成対象とする画像の搬送方向の解像度により定まるものである。また、本実施の形態では、錯綜を回避するために、滴速度v
21、v
31・・・等の1滴目の滴速度は滴速度v
11と等しいものとする。
【0068】
1滴目の液滴の滴速度v
11に対する2滴目以降の液滴の滴速度v
xyの変動割合をa
xyと表すと、連続打滴における2滴目以降の滴速度v
xyは次の(1)式で求められる。
【0070】
また、ユーザにより設定された画像形成速度をv
p、ヘッド24と用紙Pとの間の距離をTDで表すと、ずれ量Δlは次の(2)式で求められる。
【0072】
上記(2)式を変動割合a
xyについて解くと次の(3)式が得られる。
【0074】
導出部74は、上記(3)式を用いて変動割合a
xyを導出する。ここで、具体的な数値例を挙げて導出部74による変動割合a
xyの導出処理について説明する。
【0075】
まず、一例として、画像形成速度v
p=1.67[m/s」、滴速度v
11=7.0[m/s」、距離TD=1[mm]とする。また、一例として、許容レベルとして、レベル1が指定された場合のずれ量Δlの下限値及び上限値を±10.5[μm]とし、レベル2が指定された場合のずれ量Δlの下限値及び上限値を±15.25[μm]とし、レベル3が指定された場合のずれ量Δlの下限値及び上限値を±21[μm]とする。
【0076】
導出部74は、各許容レベルについて、以上の数値例の各値と上記(3)式を用いて変動割合a
xyの下限値及び上限値を導出する。以上の数値例の場合、レベル1では変動割合a
xyの下限値として96%が、上限値として104%が各々導出され、レベル2では変動割合a
xyの下限値として94%が、上限値として106%が各々導出される。また、レベル3では変動割合a
xyの下限値として92%が、上限値として108%が導出される。このように、通常モードにおける変動割合の範囲である95%〜105%より狭い範囲が導出される場合もあるが、これは画像形成速度が高くなるほど、変動割合の影響による着弾ずれが発生しやすいためである。
【0077】
そして、導出部74は、導出した変動割合a
xyの下限値及び上限値と記憶部56に予め記憶された変動割合情報(
図8参照。)とに基づいて、変動割合情報により示される変動割合が導出した変動割合a
xyの範囲内となるヘッド24の駆動周波数の範囲を導出する。
【0078】
導出部74は、例えば、変動割合a
xyの下限値及び上限値として、92%及び108%が各々導出された場合、
図14に示すように、1滴目の液滴の滴速度に対する2滴目以降の滴速度の変動割合が92%以上108%以下の範囲内となるヘッド24の駆動周波数の範囲(
図14の最下部の両矢印で示す範囲)を導出する。
【0079】
さらに、導出部74は、導出したヘッド24の駆動周波数の範囲を表示制御部70に出力する。なお、導出部74は、ユーザによって異なる許容レベルが複数指定された場合、一番高いレベルに対応するヘッド24の駆動周波数の範囲を導出してもよいし、一番低いレベルに対応するヘッド24の駆動周波数の範囲を導出してもよい。また、導出部74は、ユーザによって異なる許容レベルが複数指定された場合、最も多く指定されたレベルに対応するヘッド24の駆動周波数の範囲を導出してもよい。
【0080】
表示制御部70は、導出部74から入力されたヘッド24の駆動周波数の範囲に対応する画像形成速度の範囲内で画像形成速度をユーザが指定する速度指定画面を操作表示部60のディスプレイに表示する。
図15には速度指定画面の一例が示されている。なお、
図15に示す例では、「遅」と「速」との間における左右方向の直線の範囲がユーザにより指定可能な速度の範囲とされている。
図15に示すように、ユーザは、表示された範囲内でスライドバーSBを左右方向に移動させて所望の画像形成速度を指定して、速度指定画面の下部に表示されている終了ボタンを指定する。
【0081】
このように、本実施の形態に係る表示制御部70は、速度指定画面として、導出部74によって導出されたヘッド24の駆動周波数の範囲に対応する画像形成速度の全範囲を指定可能な画面を表示しているが、これに限定されない。例えば、表示制御部70は、速度指定画面として、一例として、
図16に示すように、最大画像形成速度以下の範囲は指定不可能となる画面を表示してもよい。また、例えば、表示制御部70は、速度指定画面として、最大画像形成速度を超えた範囲のみを表示してもよい。
【0082】
受付部72は、速度指定画面で指定された画像形成速度を受け付け、画像形成制御部76に出力する。なお、受付部72は、本発明の第1受付手段及び第2受付手段の一例である。
【0083】
画像形成制御部76は、ヘッド駆動部22及び搬送モータ62等を制御して、形成対象とする画像における受付部72により出力された適用範囲外の部分については、予め設定された画像形成速度で画像を用紙Pに形成する。
【0084】
一方、画像形成制御部76は、ヘッド駆動部22及び搬送モータ62等を制御して、形成対象とする画像における受付部72により出力された適用範囲内の部分については、受付部72によって受け付けられた画像形成速度で用紙Pに画像を形成する。なお、画像形成制御部76は、本発明の制御手段の一例である。
【0085】
次に、
図17を参照して、特別画像形成機能の実行時における本実施の形態に係る液滴吐出型記録装置10の作用を説明する。なお、
図17は、動作モードとして特別モードが設定された状態で、用紙Pに対する画像形成指示が入力される毎にCPU50によって実行される特別モード処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。また、本特別モード処理プログラムはROM52に予めインストールされている。また、ここでは、錯綜を回避するために、ユーザにより、画像形成速度v
pが予め設定されているものとして説明する。
【0086】
図17のステップ100において、CPU50は、許容レベル指定画面(
図10参照。)を操作表示部60のディスプレイに表示する。次のステップ102において、CPU50は、許容レベル指定画面における許容レベルの指定が行われるまで待機する。
【0087】
許容レベル指定画面が操作表示部60のディスプレイに表示されると、ユーザは、操作表示部60のタッチパネルを介して、画像の種類毎に許容レベルを指定した後、終了ボタンを指定する。これに応じて、ステップ102が肯定判定となってステップ104に移行する。
【0088】
ステップ104において、CPU50は、適用範囲指定画面(
図11参照。)を操作表示部60のディスプレイに表示する。次のステップ106において、CPU50は、適用範囲指定画面における適用範囲の指定が行われるまで待機する。
【0089】
適用範囲指定画面が操作表示部60のディスプレイに表示されると、ユーザは、操作表示部60のタッチパネルを介して、適用範囲を指定した後、終了ボタンを指定する。これに応じて、ステップ106が肯定判定となってステップ108に移行する。
【0090】
ステップ108において、CPU50は、前述したように、画像形成速度v
p、許容レベル指定画面において受け付けた許容レベルに応じたずれ量Δl、画像形成速度v
pと画像の解像度とに応じた滴速度v
11、及び距離TDから、上記(3)式を用いて、変動割合a
xyの下限値及び上限値を導出する。
【0091】
次のステップ110において、CPU50は、前述したように、上記ステップ108で導出された変動割合a
xyの下限値及び上限値、及び記憶部56に予め記憶された変動割合情報(
図8参照。)に基づいて、変動割合情報により示される変動割合が導出した変動割合a
xyの範囲内となるヘッド24の駆動周波数の範囲を導出する。
【0092】
次のステップ112において、CPU50は、上記ステップ110で導出された駆動周波数の範囲に対応する画像形成速度の範囲を、速度指定画面(
図15参照。)として操作表示部60のディスプレイに表示する。次のステップ114において、CPU50は、速度指定画面における画像形成速度の指定が行われるまで待機する。
【0093】
速度指定画面が操作表示部60のディスプレイに表示されると、ユーザは、操作表示部60のタッチパネルを介して、画像形成速度を指定した後、終了ボタンを指定する。これに応じて、ステップ114が肯定判定となってステップ116に移行する。
【0094】
ステップ116において、CPU50は、画像情報により示される画像における上記ステップ104で選択された範囲については、速度指定画面において受け付けた画像形成速度で画像を形成するように、ヘッド駆動部22及び搬送モータ62等を制御する。また、CPU50は、画像情報により示される画像における上記ステップ104で選択された範囲以外の範囲については、画像形成速度v
pで画像を形成するように、ヘッド駆動部22及び搬送モータ62等を制御する。CPU50は、本ステップ116の処理を実行した後、本特別モード処理プログラムを終了する。
【0095】
以上説明した特別モードでの画像形成処理により、一例として
図18に示すように、最大画像形成速度を超え、かつ限界画像形成速度未満の範囲内の画像形成速度で用紙Pに画像が形成される。なお、
図18の上段は画像形成速度を示し、中段はヘッド24の駆動電圧及びヘッド24の駆動状態を示し、下段は形成対象とする画像を示す画像情報を示している。また、
図18の下段の画像情報の網掛け部分は、ヘッド24を駆動する必要がある画素を示している。
【0096】
以上、実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0097】
また、上記実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の組み合わせにより種々の発明が抽出される。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0098】
例えば、上記実施の形態では、速度指定画面を表示してユーザにより画像形成速度を指定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ユーザにより画像形成速度を指定しない形態としてもよい。この場合の形態例としては、導出部74により導出された画像形成速度の範囲内における最高速度で画像を形成する形態が例示される。また、この場合の形態例として、導出部74により導出された画像形成速度の範囲内における1滴目の液滴の滴速度に対する2滴目以降の滴速度の変動量が最も小さい(すなわち、上記変動割合が最も100%に近い)画像形成速度で画像を形成する形態も例示される。
【0099】
また、上記実施の形態では、適用範囲指定画面を表示してユーザにより形成対象とする画像における適用範囲を指定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、形成対象とする画像の全範囲を形成対象とする画像における適用範囲とする形態としてもよい。
【0100】
また、上記実施の形態では、許容レベルの段階数として、3段階を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。許容レベルの段階数として、2段階を適用する形態としてもよいし、4段階以上を適用する形態としてもよい。また、許容レベルを何れか1つのレベルに予め定めておいてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態では、特別モード処理プログラムがROM52に予めインストールされている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、特別モード処理プログラムが、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)等の記憶媒体に格納されて提供される形態、又はネットワークを介して提供される形態としてもよい。
【0102】
さらに、上記実施の形態では、特別モード処理を、プログラムを実行することにより、コンピュータを利用してソフトウェア構成により実現する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、特別モード処理を、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成の組み合わせによって実現する形態としてもよい。
【0103】
その他、上記実施の形態で説明した液滴吐出型記録装置10の構成(
図1〜
図3、
図9参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0104】
また、上記実施の形態で説明した特別モード処理プログラムの処理の流れ(
図17参照)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0105】
さらに、上記実施の形態で示した各種画面の構成(
図10、
図11、
図15、
図16参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、一部の情報を削除したり、新たな情報を追加したり、表示位置を変えたりすることができることは言うまでもない。