(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニュートラル形成部は、前記自動変速を前記ニュートラルにする際に、前記エンジンが出力するエンジントルクを徐々に低下させるとともに、前記モータジェネレータが出力するモータトルクを徐々に増加させる請求項1又は請求項2に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ハイブリッド車両の説明)
図1に基づき、本発明の実施形態によるハイブリッド車両用駆動装置1が搭載されたハイブリッド車両V(以下、車両Vと略す)について説明する。
図1に示すように、車両Vは、ハイブリッド車両用駆動装置1、デファレンシャル17、駆動輪18L、18R、アクセルペダル31、アクセルセンサ32を有している。ハイブリッド車両用駆動装置1は、エンジン2、クラッチ5、自動変速機8、モータジェネレータ9、制御部10、インバータ装置15、及びバッテリ16とから構成されている。エンジン2、クラッチ5、自動変速機8、及びデファレンシャル17が、この並び順に、直列に設けられている。デファレンシャル17には、車両Vの駆動輪18L、18Rが接続されている。
【0012】
エンジン2は、ガソリンや軽油等の炭化水素系燃料を使用するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であり、駆動輪18L、18Rに駆動力を出力するものである。エンジン2は、駆動軸21、燃料供給装置23、エンジン回転速度センサ25を有する。エンジン2がガソリンエンジンである場合には、エンジン2はスロットルバルブ22を有する。駆動軸21は、ピストンにより回転駆動されるクランク軸と一体的に回転して駆動力を出力する。
【0013】
スロットルバルブ22は、エンジン2の内部に空気を取り込む経路の途中に配設されている。燃料供給装置23は、エンジン2の内部に空気を取り込む経路及び燃焼室の少なくとも一方に燃料を供給するものである。エンジン回転速度センサ25は、駆動軸21の回転速度、つまり、エンジン2の回転速度(以下、エンジン回転速度Neと略す)を検出し、その検出結果を制御部10に出力するセンサである。
【0014】
クラッチ5は、エンジン2と自動変速機8との間に設けられている。クラッチ5は、入力部材51と、出力部材52、及びクラッチアクチュエータ53を備えている。入力部材51は、エンジン2の駆動軸21に接続されている。出力部材52は、後述する自動変速機8の入力軸81に接続されている。クラッチアクチュエータ53は、入力部材51と出力部材52との間を断接する。入力部材51と出力部材52との間が断接されると、エンジン2の駆動軸21と自動変速機8の入力軸81との間が断接される。クラッチアクチュエータ53は、そのストロークを可変にすることにより、クラッチ5が伝達可能なクラッチトルクTcを可変にする。クラッチアクチュエータ53には、クラッチアクチュエータ53のストロークを検出するストロークセンサ53aが設けられていて、クラッチアクチュエータ53のストロークは、制御部10に出力される。
【0015】
自動変速機8は、クラッチ5とデファレンシャル17との間に設けられている。
図2に示すように、自動変速機8は、入力軸81、出力軸82、入力軸回転速度センサ83、出力軸回転速度センサ84、第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142、第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145、第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152、第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155、第一接続機構161、第二接続機構162、及び第三接続機構163を有する。
【0016】
自動変速機8は、変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を選択的に切り替える有段変速機であり、本実施形態では、オートメイテッド・マニュアルトランスミッション(AMT)である。なお、変速比とは、入力軸81の回転速度を出力軸82の回転速度で除すことにより得られ比である。出力軸82は、入力軸81と並列に設けられ、デファレンシャル17に回転連結されている(
図3示)。このような構成によって、出力軸82は、駆動輪18L、18Rに回転連結されている。
【0017】
第一ドライブギヤ141及び第二ドライブギヤ142は、入力軸81に相対回転不能に固定された固定ギヤである。第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、及び第五ドライブギヤ145は、入力軸81に相対回転可能(遊転可能)に設けられた遊転ギヤである。
【0018】
第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152は、出力軸82に相対回転可能(遊転可能)に取り付けられた遊転ギヤである。第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、及び第五ドリブンギヤ155は、出力軸82に相対回転不能に固定された固定ギヤである。
【0019】
第一ドライブギヤ141と第一ドリブンギヤ151は、互いに噛み合い、1速を構成するギヤである。第二ドライブギヤ142と第二ドリブンギヤ152は、互いに噛み合い、2速を構成するギヤである。第三ドライブギヤ143と第三ドリブンギヤ153は、互いに噛み合い、3速を構成するギヤである。第四ドライブギヤ144と第四ドリブンギヤ154は、互いに噛み合い、4速を構成するギヤである。第五ドライブギヤ145と第五ドリブンギヤ155は、互いに噛み合い、5速を構成するギヤである。
【0020】
第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142、第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145の順にギヤ径が大きくなっている。第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152、第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155の順にギヤ径が小さくなっている。
【0021】
接続機構161〜163は、ドグクラッチである。第一接続機構161は、第一ドリブンギヤ151又は第二ドリブンギヤ152を選択して、出力軸82に相対回転不能に接続するものである。第一接続機構161は、第一ハブ161a、第一係合部材161b、第二係合部材161c、第一スリーブ161d、及び第一シフトアクチュエータ161eを有している。第一ハブ161aは、第一ドリブンギヤ151と第二ドリブンギヤ152との間において、出力軸82に固定されている。第一係合部材161bは、第一ハブ161aに隣接して、第一ドリブンギヤ151に固定されている。第二係合部材161cは、第一ハブ161aに隣接して、第二ドリブンギヤ152に固定されている。第一スリーブ161dは、第一ハブ161aとスプライン嵌合していて、第一係合部材161b及び第二係合部材161cのいずれかと選択的に係合し、第一係合部材161b及び第二係合部材161cの両方と係合しない。
【0022】
第一シフトアクチュエータ161eは、制御部10の指令に基づいて、第一スリーブ161dを、第一ニュートラルN1、第一シフトポジションSP1、及び第二シフトポジションSP2のいずれかの位置に移動させる。第一スリーブ161dが第一ニュートラルN1に位置している状態では、第一ハブ161aは、第一係合部材161b及び第二係合部材161cのいずれにも係合しておらず、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152は、出力軸82から切断されている。第一スリーブ161dが第一シフトポジションSP1に位置している状態では、第一ハブ161aは第一係合部材161bに係合し、第一ドリブンギヤ151が出力軸82に接続され、自動変速機8において1速が形成される。第一スリーブ161dが第二シフトポジションSP2に位置している状態では、第一ハブ161aは第二係合部材161cに係合し、第二ドリブンギヤ152が出力軸82に接続され、自動変速機8において2速が形成される。
【0023】
第二接続機構162は、第三ドライブギヤ143又は第四ドライブギヤ144を選択して、入力軸81に相対回転不能に接続するものである。第二接続機構162は、第二ハブ162a、第三係合部材162b、第四係合部材162c、第二スリーブ162d、及び第二シフトアクチュエータ162eを有している。第二ハブ162aは、第三ドライブギヤ143と第四ドライブギヤ144との間において、入力軸81に固定されている。第三係合部材162bは、第二ハブ162aに隣接して、第三ドライブギヤ143に固定されている。第四係合部材162cは、第二ハブ162aに隣接して、第四ドライブギヤ144に固定されている。第二スリーブ162dは、第二ハブ162aとスプライン嵌合していて、第三係合部材162b及び第四係合部材162cのいずれかと選択的に係合し、第三係合部材162b及び第四係合部材162cの両方と係合しない。
【0024】
第二シフトアクチュエータ162eは、制御部10の指令に基づいて、第二スリーブ162dを、第二ニュートラルN2、第三シフトポジションSP3、及び第四シフトポジションSP4のいずれかの位置に移動させる。第二スリーブ162dが第二ニュートラルN2に位置している状態では、第二ハブ162aは、第三係合部材162b及び第四係合部材162cのいずれにも係合しておらず、第三ドライブギヤ143及び第四ドライブギヤ144は、入力軸81から切断されている。第二スリーブ162dが第三シフトポジションSP3に位置している状態では、第二ハブ162aは第三係合部材162bに係合し、第三ドライブギヤ143が入力軸81に接続され、自動変速機8において3速が形成される。第二スリーブ162dが第四シフトポジションSP4に位置している状態では、第二ハブ162aは第四係合部材162cに係合し、第四ドライブギヤ144が入力軸81に接続され、自動変速機8において4速が形成される。
【0025】
第三接続機構163は、第五ドライブギヤ145を入力軸81に相対回転不能に接続し、或いは、第五ドライブギヤ145を入力軸81から切断するものである。第三接続機構163は、第三ハブ163a、第五係合部材163b、第三スリーブ163d、及び第三シフトアクチュエータ163eを有している。第三ハブ163aは、第五ドライブギヤ145に隣接して、入力軸81に固定されている。第五係合部材163bは、第三ハブ163aに隣接して、第五ドライブギヤ145に固定されている。第三スリーブ163dは、第三ハブ163aとスプライン嵌合していて、第五係合部材163bと係合し、又は第五係合部材163bと係合ししない。
【0026】
第三シフトアクチュエータ163eは、制御部10の指令に基づいて、第三スリーブ163dを、第三ニュートラルN3及び第五シフトポジションSP5のいずれかの位置に移動させる。第三スリーブ163dが第三ニュートラルN3に位置している状態では、第三ハブ163aは、第五係合部材163bと係合しておらず、第五ドライブギヤ145は、入力軸81から切断されている。第三スリーブ163dが第五シフトポジションSP5に位置している状態では、第三ハブ163aは第五係合部材163bに係合し、第五ドライブギヤ145が入力軸81接続され、自動変速機8において5速が形成される。
【0027】
各シフトアクチュエータ161e〜163eには、各シフトアクチュエータ161e〜163eのストロークを検出するストロークセンサ(不図示)が設けられている。そして、ストロークセンサによって検出された各シフトアクチュエータ161e〜163eのストロークは、制御部10に出力される。
【0028】
入力軸81に隣接する位置には、入力軸81の回転速度(以下、入力軸回転速度Ni(入力側回転速度)と略す)を検出する入力軸回転速度センサ83が設けられている。入力軸回転速度センサ83によって検出された入力軸回転速度Niは、制御部10に出力される。出力軸82に隣接する位置には、出力軸82の回転速度(以下、出力軸回転速度No(出力側回転速度)と略す)を検出する出力軸回転速度センサ84が設けられている。出力軸回転速度センサ84によって検出された出力軸回転速度Noは、制御部10に出力される。
【0029】
モータジェネレータ9は、出力軸82と並列に設けられている。モータジェネレータ9は、回転可能に設けられたロータと、ロータの外周側に設けられたステータを有している。モータジェネレータ9は、駆動輪18L、18Rに駆動力を出力するとともに、車両Vの減速時に発電して車両Vに回生制動力を付与する。モータジェネレータ9のロータは、出力軸82に回転連結されている。このような構成によって、モータジェネレータ9のロータは、駆動輪18L、18Rに回転連結されている。ロータの回転速度、つまり、モータジェネレータ9の回転速度(以下、モータ回転速度Nmと略す)を検出し、その検出結果を制御部10に出力するモータジェネレータ回転速度センサ91が設けられている。
【0030】
バッテリ16は、電力を蓄電する二次電池であり、インバータ装置15を介して、モータジェネレータ9に電力を供給する。インバータ装置15は、制御部10からの指令に基づいて、バッテリ16から供給された電力の電圧を昇圧してモータジェネレータ9に供給する。また、インバータ装置15は、制御部10からの指令に基づいて、モータジェネレータ9において発電された電力の電圧を降圧して、バッテリ16に充電する。
【0031】
アクセルペダル31は、車両Vの運転室に設けられている。アクセルセンサ32は、アクセルペダル31の操作量であるアクセル開度Acを検出し、その検出結果を制御部10に出力するセンサである。
【0032】
制御部10は、ハイブリッド車両用駆動装置1を制御するものである。制御部10は、出力軸回転速度センサ84からの検出結果に基づいて車速vを演算する。制御部10は、演算した車速v及びアクセルセンサ32によって検出されたアクセル開度Acに基づいて、自動変速機8の要求変速段を演算する。そして、制御部10は、接続機構161〜163に指令を出力して、自動変速機8の変速段を要求変速段に変更する変速を実行する。
【0033】
制御部10は、アクセル開度Acに基づいて、「要求駆動力」を演算する。制御部10は、バッテリ16の残量、車速v、及び自動変速機8の変速段の情報等に基づいて、「要求モータトルク」を演算する。
【0034】
制御部10は、「要求駆動力」、「要求モータトルク」、及び自動変速機8の変速段等の情報に基づいて「要求エンジントルク」を演算する。制御部10は「要求エンジントルク」に基づいて、スロットルバルブ22の開度及び燃料供給装置23の燃料供給量を制御し(以下、単にエンジン2を制御すると略す)、エンジン2が出力するエンジントルクTeが「要求エンジントルク」となるように制御する。制御部10は、インバータ装置15を制御することで、モータジェネレータ9が出力するモータトルクTmが「要求モータトルク」となるように制御する。
【0035】
(変速制御の概要)
以下に、
図3に示すタイムチャートを用いて、自動変速機8の変速時に実行される「変速制御」の概要について説明する。「変速制御」の実行が開始されると、自動変速機8がいずれの変速段が形成されていないニュートラルにされる(
図3のT2)。次に、エンジン2によって、入力軸回転速度Niが同期回転速度Nsにされる(
図3のT2〜T3)。同期回転速度Nsとは、自動変速機8において次の変速段(要求変速段)が形成された場合に、次の変速段を形成するための接続機構161〜163のスリーブ161d〜163dと係合部材161b〜163b、161c、162cの回転速度が同期するような入力軸81の回転速度である。言い換えると、同期回転速度Nsは、要求変速段を形成するための接続機構161〜163が接続させるギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)とこのギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)が設けられている入力軸81又は出力軸82とが同期するような入力軸81の回転速度である。
【0036】
次に、クラッチ5が切断される(
図3のT4)。そして、モータジェネレータ9によって、出力軸82の回転加速度(以下、出力軸回転加速度αoと略す)が、入力軸81の回転加速度(以下、入力軸回転加速度αiと略す)と一致するように制御される(
図3のT4〜T5)。これにより、入力軸回転速度Niの同期回転速度Nsからの乖離が防止される。そして、接続機構161〜163によって、自動変速機8の変速段が要求変速段に変速される(
図3のT5)。
【0037】
このように、入力軸回転速度Niの同期回転速度Nsからの乖離が防止されている状態で、接続機構161〜163によって、自動変速機8の変速段を要求変速段に変速されるので、接続機構161〜163によってギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)と、このギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)が設けられている入力軸81又は出力軸82とを確実に接続させることができる。
【0038】
(変速制御)
以下に、
図4に示すフローチャートを用いて、「変速制御」について説明する。
車両VのイグニッションがONにされると、プログラムはステップS11に進む。
【0039】
ステップS11において、制御部10は、要求変速段が変更されたと判断した場合には(ステップS11:YES、
図3のT1)、プログラムをステップS12に進める。一方で、制御部10は、要求変速段が変更されていないと判断した場合には(ステップS11:NO)、ステップS11の処理を繰り返す。
【0040】
ステップS12において、制御部10は、エンジン2に指令を出力して、エンジン2が出力するエンジントルクTeを、現在のエンジントルクTeよりも低い目標エンジントルクTetに徐々に低下させる制御を開始する(
図3のT1〜T2)。これと同時に、制御部10は、インバータ装置15に指令を出力して、モータジェネレータ9が出力するモータトルクTmを徐々に増加させる制御を開始する(
図3のT1〜T2)。この際に、モータトルクTmの増加量は、エンジントルクTeの低下に伴い、車両Vが減速しない値である。つまり、モータトルクTmの増加量は、エンジントルクTeの低下量にエンジン2から駆動輪18L、18Rまでの変速比を乗算した値に、モータジェネレータ12から駆動輪18L、18Rまでの変速比を除算した値である。ステップS12の処理によって、エンジントルクTeの低下に伴う駆動輪18L、18Rに伝達される駆動力の低下量が、モータトルクTmの増加によって補完されるので、車両Vの減速が防止される。
【0041】
ステップS13において、制御部10(ニュートラル形成部)は、シフトポジションSP1〜SP5のいずれかが形成されている(変速段を形成している)接続機構161〜163のシフトアクチュエータ161e〜163eに指令を出力して、シフトポジションSP1〜SP5のいずれかが形成されている接続機構161〜163をニュートラルN1〜N3にして、自動変速機8をニュートラルにする制御を開始する。
【0042】
ステップS14において、制御部10が、自動変速機8がニュートラルであると判断した場合には(ステップS14:YES)、プログラムをステップS15に進める。一方で、制御部10が、自動変速機8がニュートラルでないと判断した場合には(ステップS14:NO)、プログラムをステップS12に戻す。
【0043】
ステップS12において、エンジントルクTeが低下されつつ、モータトルクTmが増加されるので、シフトポジションSP1〜SP5のいずれかが形成されている接続機構161〜163において、係合部材161b〜163b、161c、162c及びハブ161a〜163aからスリーブ161d〜163dに付与される回転方向の力が低下するので、スリーブ161d〜163dが摺動可能となる。このため、クラッチ5が接続されたままの状態で、シフトポジションSP1〜SP5のいずれかが形成されている接続機構161〜163をニュートラルN1〜N3にすることができる。
【0044】
ステップS15において、制御部10(同期制御部)は、入力軸回転速度センサ83によって検出された入力軸回転速度Ni、出力軸回転速度センサ84によって検出された出力軸回転速度No、及びエンジン回転速度センサ25によって検出されたエンジン回転速度Neに基づいて、入力軸回転速度Niが同期回転速度Nsとなるように、エンジン2を制御する同期制御を実行する。要求変速段が変速される前の変速段よりも高く、アップシフトが実行される場合には、同期回転速度Nsは現在の入力軸回転速度Niよりも遅いので、エンジン回転速度Neが低下されて、入力軸回転速度Niが低下される。一方で、要求変速段が変速される前の変速段よりも低く、ダウンシフトが実行される場合には、同期回転速度Nsは現在の入力軸回転速度Niよりも速いので、エンジン回転速度Neが上昇されて、入力軸回転速度Niが上昇される。
【0045】
ステップS16において、制御部10は、クラッチアクチュエータ53に指令を出力して、クラッチ5が伝達するクラッチトルクTcを目標クラッチトルクTctに低下させる。目標クラッチトルクTctは、クラッチ5が伝達可能な最大のクラッチトルクTcに比べて小さいトルクであり、自動変速機8がニュートラルである状態において、エンジン2によって、入力軸回転速度Niを変更可能な程度に小さいトルクである。
【0046】
ステップS17において、制御部10は、入力軸回転速度センサ83によって検出された入力軸回転速度Ni、及び出力軸回転速度センサ84によって検出された出力軸回転速度Noに基づいて、入力軸回転速度Niと同期回転速度Nsとの回転速度差が規定回転速度Np(例えば数10〜数100r.p.m.)の範囲内になった判断した場合には(ステップS17:YES)、プログラムをステップS21に進める。一方で、制御部10は、入力軸回転速度Niと同期回転速度Nsとの回転速度差が規定回転速度Npよりも大きいと判断した場合には(ステップS17:NO)、プログラムをステップS15に戻す。
【0047】
ステップS17において、YESと判断された時には、入力軸回転速度Niは、同期回転速度Nsと完全に一致しておらず、入力軸回転速度Niは、概ね同期回転速度Nsに規定回転速度Npを加算又は減算した回転速度となっている。規定回転速度Npは、次の変速段を形成される際に、遊転ギヤである第一ドリブンギヤ151、152、第三ドライブギヤ143〜第五ドライブギヤ145のいずれかが、これらのギヤが設けられている入力軸81又は出力軸82に接続可能な回転速度である。
【0048】
ステップS21において、制御部10は、クラッチアクチュエータ53に指令を出力して、クラッチ5を切断する。
【0049】
ステップS22において、制御部10は、クラッチ5が切断したと判断した場合には(ステップS22:YES、
図3のT4)、プログラムをステップS31に進める。一方で、制御部10は、クラッチ5が切断していないと判断した場合には(ステップS22:NO)、プログラムをステップS21に戻す。
【0050】
なお、クラッチ5が切断されると、入力軸81及び入力軸81に回転連結している部材の回転抵抗によって、入力軸回転速度Niは低下する。しかし、入力軸81が回転連結している出力部材52等の慣性モーメントによって、入力軸回転速度Niは急激に低下せず、徐々に低下する。
【0051】
ステップS31において、制御部10(回転加速度制御部)は、入力軸回転速度センサ83によって検出された入力軸回転速度Ni、出力軸回転速度センサ84によって検出された出力軸回転速度No、及びモータジェネレータ回転速度センサ91によって検出されたモータ回転速度Nmに基づいて、インバータ装置15に指令を出力して、出力軸回転加速度αoが入力軸回転加速度αiに一致するように、モータジェネレータ9を制御する回転加速度制御を実行する。このステップS31の処理によって、入力軸回転速度Niと同期回転速度Nsとの回転速度差が概ね規定回転速度Npに維持される。
【0052】
ステップS32において、制御部10(変速段形成部)は、複数の接続機構161〜163のうち要求変速段を形成するための接続機構161〜163を作動させて、要求変速段を形成するためのギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)をギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)が設けられている入力軸81又は出力軸82に接続させて、自動変速機8の変速段が要求変速段となるように変速段を形成する。
【0053】
ステップS34において、制御部10は、自動変速機8において、変速段が形成されたと判断した場合には(ステップS34:YES、
図3のT5)、プログラムをステップS35に進める。一方で、制御部10は、自動変速機8において、変速段が形成されていないと判断した場合には(ステップS34:NO)、プログラムをステップS31に戻す。
【0054】
ステップS35において、制御部10は、ステップS31において開始させた、出力軸回転加速度αoを入力軸回転加速度αiに一致させる制御を終了させる。そして、制御部10は、インバータ装置15に指令を出力して、モータジェネレータ9が出力するモータトルクTmが「要求モータトルク」となるように、モータジェネレータ9を制御する。
【0055】
ステップS36において、制御部10は、クラッチアクチュエータ53に指令を出力して、クラッチ5を接続させる。そして、制御部10は、エンジン2が出力するエンジントルクTeが「要求エンジントルク」となるように、エンジン2を制御する。ステップS36が終了すると、プログラムはステップS11に戻る。
【0056】
(本実施形態の効果)
以上の説明から明らかなように、制御部10(同期制御部)は、エンジン2によって、入力軸回転速度Niを、要求変速段を形成するための接続機構161〜163が接続させるギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)と、このギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)が設けられている入力軸81又は出力軸82とが同期するような入力軸81の回転速度である同期回転速度Nsに制御する(
図3のT2〜T3、
図4のステップS15)。そして、制御部10(回転加速度制御部)は、モータジェネレータ9によって、出力軸回転加速度αoを入力軸回転加速度αiに一致させる(
図3のT4〜T5、
図4のステップS31)。これにより、入力軸回転速度Niの同期回転速度Nsからの乖離が防止される(
図3のT4〜T5)。そして、制御部10(変速段形成部)は、複数の接続機構161〜163のうち要求変速段を形成するための接続機構161〜163を作動させて、要求変速段を形成するためのギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)をギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)が設けられている入力軸81又は出力軸82に接続させて、自動変速機8において変速段を要求変速段にする(
図3のT5、
図4のステップS32)。これにより、入力軸回転速度Niの同期回転速度Nsからの乖離が防止されている状態(
図3のT4〜T5)で、接続機構161〜163によって、ギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)とこのギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)が設けられている入力軸81又は出力軸82とが接続される。このため、接続機構161〜163によってギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)とこのギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)が設けられている入力軸81又は出力軸82とを確実に接続させることができる。
【0057】
また、入力軸回転速度Niを同期回転速度Nsに一致させて、自動変速機8において要求変速段が形成されるのでは無く、入力軸回転速度Niと同期回転速度Nsとの回転速度差が規定回転速度Np(例えば数10〜数100r.p.m.)の範囲内になった後に、出力軸回転加速度αoを入力軸回転加速度αiに一致させて、自動変速機8において要求変速段が形成される。これにより、入力軸回転速度Niと同期回転速度Nsとの回転速度差が概ね規定回転速度Npに維持された状態で、接続機構161〜163によって、ギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)とこのギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)が設けられている入力軸81又は出力軸82とが接続される。これにより、入力軸回転速度Niと同期回転速度Nsが一致して、接続機構161〜163のスリーブ161d〜163dと係合部材161b〜163b、161c、162とが係合しない回転位置に位置され続けることが防止される。このため、接続機構161〜163によって、ギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)とこのギヤ143〜145、151、152(遊転ギヤ)が設けられている入力軸81又は出力軸82とを確実に接続させることができる。
【0058】
同期制御の実行中においては(
図3のT2〜T3、
図4のS15)、ステップS14において、自動変速機8はニュートラルにされている。このため、エンジン2によって入力軸回転速度Niを変化させるためのクラッチトルクTcは小さくてよい。そこで、制御部10(同期制御部)は、同期制御の実行中において(
図3のT2〜T3、
図4のS15)、クラッチ5が伝達するクラッチトルクTcを低下させる。これにより、同期制御が終了(
図3のT3、
図4のステップS17でYESと判断)した後に、クラッチ5を切断する時間を短縮することができる。このため、自動変速機8における変速時間を短縮することができる。
【0059】
自動変速機8がニュートラルにされた後の同期制御では、クラッチ5においてクラッチトルクTcが発生していなければ、エンジン2によって入力軸回転速度Niを変化させることができない。もし仮に、自動変速機8をニュートラルにするために、クラッチ5を切断すると、同期制御において、クラッチ5においてクラッチトルクTcを発生させるために、切断されているクラッチ5を接続させる必要がある。本実施形態では、制御部10(ニュートラル形成部)は、自動変速機8をニュートラルにする際に、エンジン2が出力するエンジントルクTeを徐々に低下させるとともに、モータジェネレータ9が出力するモータトルクTmを徐々に増加させる(
図3のT1〜T2、
図4のステップS12)。これにより、シフトポジションSP1〜SP5のいずれかが形成されている接続機構161〜163において、係合部材161b〜163b、161c、162c及びハブ161a〜163aからスリーブ161d〜163dに付与される回転方向の力が低下するので、スリーブ161d〜163dが摺動可能となる。このため、クラッチ5が接続したままの状態で、シフトポジションSP1〜SP5のいずれかが形成されている接続機構161〜163をニュートラルN1〜N3にすることができる。よって、自動変速機8をニュートラルにするために、クラッチ5を切断する必要が無く、また、同期制御においてクラッチ5を接続する必要が無いので、自動変速機8における変速時間を短縮することができる。また、エンジントルクTeの低下に伴う駆動輪18L、18Rに伝達される駆動力の低下量が、モータトルクTmの増加によって補完されるので、車両Vの減速が防止される。
【0060】
(別の実施形態)
以上の説明では、第一接続機構161〜第三接続機構163は、ドグクラッチである。しかし、第一接続機構161〜第三接続機構163は、シンクロナイザー機構であっても差し支え無い。この実施形態の場合に、「変速制御」が実行されると、シンクロナイザー機構によって連結する部材の回転数差が小さい状態で、上記部材が連結されるので、シンクロナイザー機構の摩擦材が保護される。
【0061】
以上説明した実施形態では、入力軸回転速度センサ83は、入力軸81の回転速度を検出している。しかし、入力軸回転速度センサ83が、入力軸81と回転連結されている部材の回転速度である入力側回転速度を検出し、制御部10がこの入力側回転速度に基づいて、入力軸回転速度Niを演算する実施形態であっても差し支え無い。
【0062】
以上説明した実施形態では、出力軸回転速度センサ84は、出力軸82の回転速度を検出している。しかし、出力軸回転速度センサ84が、出力軸82と回転連結されている部材の回転速度である出力側回転速度を検出し、制御部10がこの出力側回転速度に基づいて、出力軸回転速度Noを演算する実施形態であっても差し支え無い。
【0063】
モータジェネレータ9が、入力軸81に係脱可能に連結される実施形態であっても差し支え無い。また、第二モータジェネレータが、入力軸81に係脱可能に連結される実施形態であっても差し支え無い。