特許第6558154号(P6558154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558154接合方法、接合状態判定方法、接合装置及び接合状態判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558154
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】接合方法、接合状態判定方法、接合装置及び接合状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20190805BHJP
   B21D 11/20 20060101ALI20190805BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20190805BHJP
【FI】
   B23K26/21 G
   B21D11/20 B
   B23K26/21 W
   B23K26/00 M
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-173193(P2015-173193)
(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公開番号】特開2017-47457(P2017-47457A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】星野 広行
(72)【発明者】
【氏名】長濱 貴也
(72)【発明者】
【氏名】井本 吉紀
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 好一
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−97436(JP,A)
【文献】 特開2003−25082(JP,A)
【文献】 特開2011−104605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B21D 11/20
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合部材と被接合部材とをレーザ光の照射によって接合する接合方法であって、
前記接合部材の先端側を前記被接合部材に当接させ、前記接合部材の基端側を前記被接合部材に対して隙間を有した状態とし、且つ、前記被接合部材により前記接合部材の先端側が押圧されることで前記接合部材を撓み変形させた状態とする押圧工程と、
前記接合部材の屈曲対象部位に第一レーザ光を照射することにより、前記屈曲対象部位を屈曲させる屈曲工程と、
前記接合部材の先端と前記屈曲対象部位の間のうち所定の接合部位に第二レーザ光を照射することにより、前記被接合部材と前記接合部材とを接合する接合工程と、
を備える、接合方法。
【請求項2】
前記接合工程において、
前記第二レーザ光が照射される前記接合部位は、前記屈曲対象部位より前記接合部材の先端側に位置する、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記接合工程において、
前記第二レーザ光が照射される前記接合部位は、前記屈曲対象部位と同一位置である、請求項1に記載の接合方法。
【請求項4】
前記接合方法は、前記屈曲工程にて前記接合部材の前記屈曲対象部位が前記第一レーザ光の前記照射により屈曲されたのち、前記接合部材が、前記接合部材の先端側から前記屈曲対象部位までの間において所定量を超える面積で前記被接合部材に接触したか否かを判定する接触状態判定工程を備え、
前記接合工程は、前記接触状態判定工程によって前記接合部材が前記所定量を超える面積で前記被接合部材に接触したと判定されると、前記被接合部材と前記接合部材とを接合する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項5】
前記接触状態判定工程は、
前記接合部材の前記先端側から前記屈曲対象部位までの間における、前記所定量を超える面積での前記被接合部材との接触の有無を、前記被接合部材の温度変化量によって検出する、請求項4に記載の接合方法。
【請求項6】
前記接触状態判定工程は、
前記接合部材の前記先端側から前記屈曲対象部位までの間における、前記所定量を超える面積での前記被接合部材との接触の有無を、前記屈曲工程における前記屈曲の前後における前記接合部材の前記被接合部材に接近する変位量によって検出する、請求項4に記載の接合方法。
【請求項7】
接合部材と被接合部材とをレーザ光の照射によって接合する接合方法における前記接合部材と被接合部材との接触状態を判定する接触状態判定方法であって、
前記接合部材の先端側を前記被接合部材に当接させ、前記接合部材の基端側を前記被接合部材に対して隙間を有した状態とし、且つ、前記被接合部材により前記接合部材の先端側が押圧されることで前記接合部材を撓み変形させた状態とする押圧工程と、
前記接合部材の屈曲対象部位に第一レーザ光を照射することにより、前記屈曲対象部位を屈曲させる屈曲工程と、
前記接合部材の先端側から前記屈曲対象部位までの間において、所定量を超える面積で前記被接合部材に接触したか否かを判定する接触状態判定工程と、
を備える、接合方法における接触状態判定方法。
【請求項8】
接合部材と被接合部材とをレーザ光の照射によって接合する接合装置であって、
前記接合部材の先端側を前記被接合部材に当接させ、前記接合部材の基端側を前記被接合部材に対して隙間を有した状態とし、且つ、前記被接合部材により前記接合部材の先端側が押圧されることで前記接合部材を撓み変形させた状態とした前記接合部材の屈曲対象部位に第一レーザ光を照射することにより、前記屈曲対象部位を屈曲させる第一レーザ光源と、
前記接合部材の先端と前記屈曲対象部位の間のうち所定の接合部位に第二レーザ光を照射することにより、前記被接合部材と前記接合部材とを接合する第二レーザ光源と、
前記第一レーザ光源から照射される前記第一レーザ光の照射を制御するとともに、前記第二レーザ光源から照射される前記第二レーザ光の照射を制御する制御装置と、
を備える、接合装置。
【請求項9】
前記接合装置は、
前記接合部材の前記屈曲対象部位が前記制御装置によって制御された前記第一レーザ光の前記照射により屈曲されたのち、前記接合部材が前記接合部材の先端側から前記屈曲対象部位までの間において、所定量を超える面積で前記被接合部材に接触したか否かを判定する接触状態判定部を備え、
前記接触状態判定部によって、前記接合部材が前記所定量を超える面積で前記被接合部材に接触したと判定されると、前記制御装置が前記第二レーザ光の照射を制御し前記被接合部材と前記接合部材とを接合する、請求項8に記載の接合装置。
【請求項10】
接合部材と被接合部材とをレーザ光の照射によって接合する接合装置が備える前記接合部材と被接合部材との接触状態を判定する接触状態判定装置であって、
前記接合部材の先端側を前記被接合部材に当接させ、前記接合部材の基端側を前記被接合部材に対して隙間を有した状態とし、且つ、前記被接合部材により前記接合部材の先端側が押圧されることで前記接合部材を撓み変形させた状態とした前記接合部材の屈曲対象部位に第一レーザ光を照射することにより、前記屈曲対象部位を屈曲させる第一レーザ光源と、
前記接合部材の前記屈曲対象部位が前記制御装置によって制御された前記第一レーザ光の前記照射により屈曲されたのち、前記接合部材が前記接合部材の先端側から前記屈曲対象部位までの間において、所定量を超える面積で前記被接合部材に接触したか否かを判定する接触状態判定部と、を備える接合装置の接触状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、接合状態判定方法、接合装置及び接合状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接合部材と被接合部材とをレーザ光の照射によって接合する技術がある。このとき、接合部材と被接合部材との接合面がともに平面形状であり、且つ接合部材と被接合部材とが、ともに固定部材の上に載置されておらず不安定な状態である場合には、通常、接合面同士の当接を維持させるためクリップ等の固定手段によって接合部材と被接合部材とを圧着し固定する方法が用いられている。そして、クリップにより接合面同士の当接が維持された状態で、接合部材と被接合部材とをレーザ光の照射により接合する。また、その他にもレーザ光を照射することにより二部材(接合部材と被接合部材)の接合を行なう技術としては、特許文献1、2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−328862号公報
【特許文献2】特開2004−209549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、行なわれるクリップ等の固定手段を用いた接合部材と被接合部材との接合では、クリップ等の取り付け、取り外し工程が増え、コストが増加する。また、接合時のみに使用されるクリップを取付けるためのスペースが接合部材及び被接合部材の周辺に必要となり、最終製品が大型化する虞もある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、レーザ光による接合部材と被接合部材との接合において、クリップ等の固定手段を用いず、容易に接合できる接合方法、接合状態判定方法、接合装置及び接合状態判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る請求項1の接合方法は、接合部材と被接合部材とをレーザ光の照射によって接合する接合方法であって、前記接合部材の先端側を前記被接合部材に当接させ、前記接合部材の基端側を前記被接合部材に対して隙間を有した状態とし、且つ、前記被接合部材からの反力により前記接合部材の先端側が押圧されることで前記接合部材を撓み変形させた状態とする押圧工程と、前記接合部材の屈曲対象部位に第一レーザ光を照射することにより、前記屈曲対象部位を屈曲させる屈曲工程と、前記接合部材の先端と前記屈曲対象部位の間のうち所定の接合部位に第二レーザ光を照射することにより、前記被接合部材と前記接合部材とを接合する接合工程と、を備える。
【0007】
上記接合方法により、接合前に撓み変形されて固定された接合部材は、屈曲工程で第一レーザ光が屈曲対象部位に照射され、屈曲対象部位が屈曲されると撓み変形が解消される。これにより、接合部材の屈曲対象部位が被接合部材に接近し、延いては、接合部材の先端と屈曲対象部位の間の何れかの部位が、被接合部材に接触し、この接触状態を維持する。このため、接合部材と被接合部材とは、クリップ等の固定手段を用いずに接合可能となる。従って、クリップ等の固定手段の取り付け、取り外し工程は不要となり、製造コストが抑制される。また、接合時のみに使用されるクリップ等の固定手段を取付けるためのスペースも不要となるため、接合部材及び被接合部材の周辺のスペースを小さくすることができ、最終製品の小型化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る接合装置であり、第一端子(接合部材)及び第二端子(被接合部材)が接合前で、且つ端子がハウジングに取り付けられた後の図である。
図2】ハウジングへの第一端子の取り付け方法を説明する図である。
図3図1における第一端子及び第二端子の拡大図であり、第一端子の屈曲対象部位への第一レーザ光の照射を説明する図である。
図4】第一レーザ光による屈曲対象部位への照射により屈曲した第一端子の状態を説明する図である。
図5】第2レーザ光による第一端子の接合部位への照射を説明する図である。
図6】接合方法のフローチャートである。
図7】変形例1を説明する接合装置の図である。
図8】所定量を超える面積での第二端子との接触の有無を、別の指標(第一端子の変位量)で判定する場合について説明する図である。
図9】変形例2を説明する接合装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る接合装置について、図面に基づき説明する。図1は、接合装置10の概要図である。図1において、接合装置10は、第一端子50にレーザ光を照射することによって第一端子50と、第二端子60とを溶接により接合する装置である。なお、第一端子50は、接合部材に相当し、接合における第一端子50の相手部材となる第二端子60は、被接合部材に相当する。
【0010】
接合装置10の説明の都合上、まず、接合対象となる第一端子50及び第二端子60について説明する。なお、以降の説明においては、図1の上側を上方、下側を下方として説明する。本実施形態においては、第一端子50及び第二端子60の材質は、ともに銅である。ただし、銅はあくまで一例を例示しただけであって、銅には限らない。第一端子50及び第二端子60の材質は、レーザ光の照射による接合が可能な部材であればどのようなものでもよい。
【0011】
図1に示すように、本実施形態において、第一端子50は、例えば、半導体素子Tから延びるリード線である。第一端子50(接合部材)は、長尺状の部材であり、好ましくは自由端を備える。半導体素子Tは、一例としてMOS(Metal Oxide Semiconductor)と呼称される半導体素子を適用する。また、第二端子60は、例えば、所定の伝導率を有するバスバーである。これらは何れも公知であるため、詳細な説明は省略する。また、本実施形態において第一端子50は、第二端子60に対して、比較的、弾性変形が容易な形状で形成される。なお、以降、接合部材を第一端子50とし、被接合部材を第二端子60として説明していくが、適宜、第一端子50と第二端子60の関係を逆にして読み替えてもよい。
【0012】
図1に示すように、半導体素子Tは、ボルトBによってハウジング5の取り付け面5aに固定される。また、第二端子60は、図1に示すように配置される。第二端子60は、ハウジング5とは異なる例えば図略のモータ等に固定され、ハウジング5との相対位置関係が保持される。なお、図1に示す状態は、これから接合される第一端子50及び第二端子60の接合準備が整った状態である。第二端子60の形状は、レーザ光の照射による接合の前後においてあまり変化はないものとする。
【0013】
半導体素子Tがハウジング5に固定される前の状態において、第一端子50は、図2に示す実線の形状を有している。このため、第一端子50のハウジング5への固定後に、第一端子50を図1に示す状態とするよう、まず、第一端子50の先端51を第二端子60の図2における上端に当接させる。また、半導体素子Tにおいて、第一端子50の基端52が固定される面Taの反対側の面Tbのうちハウジング5側の角部が支点Qとなるようハウジング5上に当接させる。このような状態から、支点Qを中心に半導体素子T、及び第一端子50が、図2中の矢印Ar1、Ar2方向に回転するよう半導体素子Tに回転力を付与する。これにより、第一端子50では、図1に示す状態である第一端子50の自由端である先端51側を第二端子60に当接させ、第一端子50の基端52側を第二端子60に対して隙間Cを有した状態とする。また、第二端子60により第一端子50の先端51側が矢印Ar1の反力Ar3で押圧されることで第一端子50を撓み変形させた状態とする(図1の実線、及び図2の二点鎖線参照)。このように、第一端子50の状態を、図1に示す状態となるようにセットすることで、レーザ接合を行なう事前の準備が完了する。
【0014】
なお、上記において、ハウジング5は、半導体素子Tで発生する熱を放熱するヒートスプレッダとして機能する。また、本実施形態においては、第二端子60は、第一端子50に対し変形しにくい形状を有しているため、図1に示す状態においては、第一端子50側が変形し第二端子60には大きな変形はないものとする。
【0015】
(1.接合装置10の構成)
次に、接合装置10について説明する。図1に示すように、接合装置10は、第一レーザ光源So1と、第二レーザ光源So2、制御装置20と、を備える。
図1図3に示すように、第一レーザ光源So1は、レーザ発振器、レーザヘッド等によって生成される第一レーザ光L1を所定の位置である屈曲対象部位53に向かって照射する。レーザ発振器等のレーザ生成に係る装置については、公知であるので、図及び詳細な説明については省略する。第一レーザ光源So1が照射する第一レーザ光L1は、照射された第一端子50の屈曲対象部位53を昇温させて、屈曲対象部位53を軟化させるレーザである。
【0016】
屈曲対象部位53は、第二端子60と対向する第一端子50の接合面50aに背向する背向面50b内に設定される部位である。屈曲対象部位53の位置は、例えば、撓み変形された第一端子50の屈曲対象部位53に第一レーザ光L1が照射されたときに第一端子50が所望の形状に変形するよう設定される。つまり、屈曲対象部位53で屈曲された場合に、第一端子50の接合面50aにおいて、先端51から屈曲対象部位53までの間のうち少なくとも所定の面積を有する面を、第二端子60に接近させ、且つ第二端子60の接合面60aに接触可能とする位置に設定される。その位置は事前に実験等に基づき任意に設定される。
【0017】
図1図5に示すように、第二レーザ光源So2は、第一端子50の先端51と屈曲対象部位53の間のうち所定の接合部位54に第二レーザ光L2を照射することにより、第二端子60と第一端子50とを接合する。図5に示すように、本実施形態において、所定の接合部位54は、屈曲対象部位53より第一端子50の先端51側に位置する。第二レーザ光源So2が照射する第二レーザ光L2は、照射された第一端子50の接合部位54を昇温し溶融させて第一端子50と第二端子60とを接合させるレーザである。
【0018】
なお、第一レーザ光源So1と第二レーザ光源So2とは同じものでもよいし、別のものでもよい。本実施形態では、第一レーザ光源So1と第二レーザ光源So2とは同じものである。第一レーザ光源So1による第一レーザ光L1の屈曲対象部位53への照射が終了すると、制御装置20は、第一レーザ光源So1に設けられた図略のアクチュエータを作動させ、第一レーザ光源So1を第二レーザ光源So2が配置される位置まで移動させ、第二レーザ光源So2として使用する。第二レーザ光源So2として使用する際には、第一レーザ光源So1が照射する第一レーザ光L1の出力を、第二レーザ光源So2が照射する第二レーザ光L2用の出力に切り替える。なお、この態様に限らず、第一レーザ光源So1及び第二レーザ光源So2が、別体であり、それぞれレーザ発振器、レーザヘッド等を備えていてもよい。
【0019】
制御装置20は、第一レーザ光照射制御部21と、第二レーザ光照射制御部22と、接触状態判定部23とを備える。接触状態判定部23は、第二端子60の温度を測定する赤外線温度センサ23aと接続される。そして、接触状態判定部23は、赤外線温度センサ23aによって検出される第二端子60の温度を適宜、取得する。
【0020】
第一レーザ光照射制御部21は、第一レーザ光源So1から照射される第一レーザ光L1の照射を制御する。詳細には、第一レーザ光源So1から照射される第一レーザ光L1の照射のON−OFF、及び照射時間t1等を制御する。照射時間t1は、第一レーザ光L1を第一端子50の屈曲対象部位53に照射したときに、屈曲対象部位53において第一端子50が良好に屈曲する時間が予め実験により導出されて設定される。
【0021】
第二レーザ光照射制御部22は、第二レーザ光源So2から照射される第二レーザ光L2の照射を制御する。詳細には、第二レーザ光源So2から照射される第二レーザ光L2の照射のON−OFF、及び照射時間t2を制御する。照射時間t2は、第二レーザ光L2を第一端子50の先端51と屈曲対象部位53の間のうち所定の接合部位54に照射したときに、接合部位54を加熱し、その熱を第二端子60まで伝達させることで第二端子60と第一端子50との接合が可能となる時間が予め実験により導出されて設定される。
【0022】
接触状態判定部23は、第一端子50の屈曲対象部位53が第一レーザ光照射制御部21によって制御された第一レーザ光L1の照射によって屈曲されたのち、第一端子50の先端51側から屈曲対象部位53までの間において、所定量を超える面積での第二端子60への接触があったか否かを判定する。このとき、判定の指標は、第二端子60の温度変化量である。第二端子60の温度変化量とは、屈曲対象部位53に対して第一レーザ光L1の照射が行なわれる前の第二端子60の温度Temp1と、所定時間、屈曲対象部位53に対する第一レーザ光L1の照射がされ第一端子50が屈曲された後における第二端子60の温度Temp2との間の差(Temp2−Temp1)をいう。
【0023】
なお、第一端子50と第二端子60との接触面積の大小は、第一レーザ光L1の照射によって温度上昇した第一端子50が有する熱量が接触面を介して第二端子60に伝達される熱量の大小に比例する。これにより、第二端子60の温度変化量を検出することによって、第一端子50と第二端子60との接触面積の大きさが判定できる。従って、第二端子60が所定以上温度変化したときには、第一端子50と第二端子60とが、所定量を超える面積で接触しているといえる。なお、上記のような判定を行なうため、接触状態判定部23は、第一端子50の温度、第一端子50と第二端子60との接触面積、及び第二端子60の温度の関係を事前に取得して、図略の記憶部に有している。
【0024】
接触状態判定部23において、第一端子50が所定量を超える面積で第二端子60に接触したと判定されると、制御装置20の第二レーザ光照射制御部22が、高出力である第二レーザ光源So2による第二レーザ光L2の照射を制御する。これにより、第二レーザ光L2を第一端子50の先端51と屈曲対象部位53との間の任意の位置に設けられる所定の接合部位54に照射し、第二端子60と第一端子50とを接合する。なお、前述したように、第二レーザ光源So2の位置及び第二レーザ光L2の出力は、第一レーザ光源So1の位置及び第一レーザ光L1の出力とは異なる。よって、制御装置20は、接触状態判定部23において、第一端子50が所定量を超える面積で第二端子60に接触したと判定すると、図略のアクチュエータを制御して、第一レーザ光源So1を第二レーザ光源So2の位置に移動させ、第二レーザ光源So2とする。また、出力も切り替えて第二レーザ光L2とする。
【0025】
(2.接合方法)
次に、接合方法について図3〜5、図6のフローチャートに基づき説明する。本実施形態に係る接合方法は、押圧工程S1と、屈曲工程S2と、接触状態判定工程S3と、接合工程S4と、を備える。
押圧工程S1は、図1図2に示すように、第一端子50の先端51側を第二端子60の上端に当接させる。そして、第一端子50の基端52側を第二端子60に対して隙間Cを有した状態とし、且つ、第二端子60により第一端子50の先端51側が押圧されることで第一端子50を撓み変形させる。そして、このような状態が維持可能なように、第一端子50の基端52が固定される半導体素子Tをハウジング5の取付け面5aに固定する。これによって、本発明に係るレーザ接合の準備が完了する(図1図3参照)。
【0026】
屈曲工程S2では、制御装置20の第一レーザ光照射制御部21が、図3に示すように、第一レーザ光源So1から照射される第一レーザ光L1の照射を制御する。そして、第一端子50の背向面50bに設けられた屈曲対象部位53に第一レーザ光L1を照射する。これにより、図4に示すように、屈曲対象部位53を所定量屈曲させる。詳細には、屈曲対象部位53に対する第一レーザ光L1の照射によって、屈曲対象部位53は昇温され軟化される。このため、第一端子50の撓み変形が解消される。そして、屈曲対象部位53を境界として、先端51側の部位M及び基端52側の部位Nがそれぞれ直線状となり、屈曲対象部位53及び先端51側の部位Mが第二端子60に接近し接触する(図4参照)。このように、第一端子50及び第二端子60を、冶具を用いて圧着しなくても、第一端子50と第二端子60との圧着状態(当接状態)を創出することができる。
【0027】
接触状態判定工程S3では、接触状態判定部23によって第一端子50が、第一端子50の先端51側から屈曲対象部位53までの間において所定量を超える面積で第二端子60に接触したか否かを判定する。接触状態判定工程S3は、屈曲工程S2にて第一端子50の屈曲対象部位53が、第一レーザ光L1の照射によって屈曲されたのち上記判定を行なう。このとき、判定の指標は、前述したとおり第二端子60の温度変化量であり、詳細については上記で説明した通りである。そして、接触状態判定工程S3によって、第一端子50が所定量を超える面積で第二端子60に接触したと判定されると、接合工程S4で第二端子60と第一端子50とを接合する。
【0028】
図5に示すように、接合工程S4では、制御装置20が備える第二レーザ光照射制御部22が、第二レーザ光源So2から照射される第二レーザ光L2の照射を制御する。第二レーザ光照射制御部22は、第一端子50の先端51と屈曲対象部位53の間のうち所定の接合部位54に、第二レーザ光L2を照射することにより、接合部位54を加熱し、第二端子60と第一端子50とを接合する。本実施形態では、第二レーザ光L2が照射される所定の接合部位54は、屈曲対象部位53の位置とは異なり、屈曲対象部位53より第一端子50の先端51側に位置する。このため、接合部位54では、第一端子50と第二端子60とが接触している可能性が高く、これによって良好な接合ができる。
【0029】
<変形例1>
なお、上記第一実施形態では、接合装置10は、第一レーザ光源So1と、第二レーザ光源So2と、制御装置20と、を備える。また、制御装置20は、第一レーザ光照射制御部21と、第二レーザ光照射制御部22と、接触状態判定部23とを備える。これにより、接触状態判定部23によって、第一端子50が所定量を超える面積で第二端子60に接触したと判定されると、接合工程S4において、第二レーザ光照射制御部22が第二端子60と第一端子50とを接合する。しかし、この態様には限らない。図7に示すように、変形例1として、接合装置101は、第一レーザ光源So1と、第二レーザ光源So2と、制御装置20と、を備え、制御装置20は、第一レーザ光照射制御部21と、第二レーザ光照射制御部22と、を備えるだけでもよい。つまり、接合装置10は、制御装置20に接触状態判定部23を備えず、赤外線温度センサ23aも備えない。この態様によって、第一端子50が所定量を超える面積で第二端子60に良好に接触していない場合においても、第一端子50に対し、第二レーザ光L2の照射が行なわれるが、相応の効果は得られる。なお、接合方法については、押圧工程S1と、屈曲工程S2と、接合工程S4と、を備える接合方法によって、上記の接合装置101と同様の効果を得ることができる。
【0030】
(3.実施形態による効果)
上記第一実施形態の変形例1に係る接合方法によれば、第一端子50の先端51側を第二端子60に当接させ、第一端子50の基端52側を第二端子60に対して隙間を有した状態とする。また、同時に第二端子60により第一端子50の先端51側が押圧されることで第一端子50を撓み変形させた状態とする押圧工程S1と、第一端子50の屈曲対象部位53に第一レーザ光L1を照射することにより、屈曲対象部位53を屈曲させる屈曲工程S2と、第一端子50の先端51と屈曲対象部位53の間のうち所定の接合部位54に第二レーザ光L2を照射することにより、第二端子60と第一端子50と、を接合する接合工程S4と、を備える。
【0031】
これにより、接合前の押圧工程S1で撓み変形されて固定された第一端子50は、屈曲工程S2で屈曲対象部位53が屈曲されると、撓み変形が解消される。そして、第一端子50の屈曲対象部位53が第二端子60に接近し、延いては、第一端子50の先端51と屈曲対象部位53の間のうちの何れかの部位が、第二端子60に接触し、この接触状態を維持する。このため、第一端子50と第二端子60とは、クリップ等の固定手段を用いずに接合可能となる。従って、クリップ等の固定手段の取り付け、取り外し工程は不要となり、製造コストが抑制される。また、接合時のみに使用されるクリップ等の固定手段を取付けるためのスペースも不要となるため、端子及び相手部材の周辺のスペースを小さくすることができ、最終製品の小型化に寄与できる。
【0032】
また、上記第一実施形態及び変形例1の接合方法によれば、接合工程S4において、第二レーザ光L2が照射される接合部位54は、屈曲対象部位53より第一端子50の先端51側に位置する。これにより、第一端子50と第二端子60とが接触している位置で接合しやすく接合の信頼性が向上する。
【0033】
また、上記第一実施形態の接合方法によれば、屈曲工程S2にて第一端子50の屈曲対象部位53が、第一レーザ光L1の照射により屈曲されたのち、第一端子50が、第一端子50の先端51側から屈曲対象部位53までの間において所定量を超える面積で第二端子60に接触したか否かを判定する接触状態判定工程S3を備える。そして、接触状態判定工程S3によって、第一端子50が所定量を超える面積で第二端子60に接触したと判定されると、接合工程S4で第二端子60と第一端子50とを接合する。
【0034】
これにより、第一端子50の先端51側から屈曲対象部位53までの間における第一端子50と第二端子60とが所定量を超える面積で接触していない場合に、接合工程S4において第二レーザ光L2を照射するという無駄な作業の発生を回避することができ効率的である。
【0035】
また、上記第一実施形態の接合方法によれば、接触状態判定工程S3は、第一端子50の先端51側から屈曲対象部位53までの間における、所定量を超える面積での第二端子60との接触の有無を、第二端子60の温度変化量によって検出する。
このような、第二端子60の温度変化量の検出という簡易で低コストな方法によって、第一端子50の所定量を超える面積での第二端子60との接触の有無が判定できるため、効率的である。
【0036】
また、上記第一実施形態の変形例1に係る接合装置101によれば、第一端子50の先端51側を第二端子60に当接させる。そして、第一端子50の基端52側を第二端子60に対して隙間Cを有した状態とし、且つ、第二端子60により第一端子50の先端51側が押圧されることで第一端子50を撓み変形させた状態とする。このような状態とした第一端子50の屈曲対象部位53に第一レーザ光L1を照射する。これにより、屈曲対象部位53を屈曲させ、第二端子60に接近させる第一レーザ光源So1と、第一端子50の先端51と屈曲対象部位53の間のうち所定の接合部位54に第二レーザ光L2を照射することにより、第二端子60と第一端子50とを接合する第二レーザ光源So2と、第一レーザ光源So1から照射される第一レーザ光L1の照射を制御するとともに、第二レーザ光源So2から照射される第二レーザ光L2の照射を制御する制御装置20と、を備える。この接合装置10によれば、上記における押圧工程S1と、屈曲工程S2と、接合工程S4と、を備える接合方法と同様の効果を得られる。
【0037】
また、上記第一実施形態の接合装置10によれば、第一端子50の屈曲対象部位53が制御装置20の第一レーザ光照射制御部21によって制御された第一レーザ光L1の照射により屈曲されたのち、第一端子50が第一端子50の先端51側から屈曲対象部位53までの間において、所定量を超える面積で第二端子60に接触したか否かを判定する接触状態判定部23を備える。そして、接触状態判定部23によって、第一端子50が所定量を超える面積で第二端子60に接触したと判定されると、制御装置20の第二レーザ光照射制御部22が第二レーザ光L2の照射を制御し第二端子60と第一端子50とを接合する。
これにより、第一端子50の先端51側から屈曲対象部位53までの間における第一端子50と第二端子60とが所定量を超える面積で接触していない場合に、制御装置20(第二レーザ光照射制御部22)の制御によって第二レーザ光L2を照射するという無駄な作業の発生を回避することができ効率的である。
【0038】
また、上記実施形態においては、接合工程S4において、第二レーザ光L2が照射される接合部位54は、屈曲対象部位53と異なる位置であった。しかし、この態様には限らない。第二レーザ光L2が照射される接合部位54は、屈曲対象部位53と同一位置であってもよい。これにより、第一レーザ光源So1を移動させる必要がなく、効率的である。
【0039】
また、上記第一実施形態においては、接合装置10は、接触状態判定工程S3(接触状態判定部23)において、第一端子50の先端51側から屈曲対象部位53までの間における、所定量を超える面積での相手部材との接触の有無を、第二端子60の温度変化量によって検出した。しかし、この態様には限らない。第一端子50の先端51側から屈曲対象部位53までの間における、所定量を超える面積での第二端子60との接触の有無は、屈曲対象部位53の屈曲の前後における第一端子50の第二端子60に接近する変位量α(図8参照)によって検出してもよい。このように、第一端子50の実際の変位量αを検出して、第一端子50の所定量を超える面積での第二端子60との接触の有無を判定するため、精度の高い判定結果を得ることができる。また、図1における第一端子50と、第二端子60との間の隙間Cがなくなったことを、カメラなどの撮像結果から直接検出してもよい。
【0040】
<変形例2>
なお、上記第一実施形態においては、接合装置10は、第一レーザ光源So1と、第二レーザ光源So2と、制御装置20と、を備える。また、制御装置20は、第一レーザ光照射制御部21と、第二レーザ光照射制御部22と、接触状態判定部23とを備える。そして、接触状態判定部23によって、第一端子50が所定量を超える面積で第二端子60に接触したと判定されると、接合工程S4において、第二レーザ光照射制御部22が第二端子60と第一端子50とを接合した。しかし、この態様には限らない。
変形例2として、接合装置102は、第一レーザ光源So1と、制御装置20と、を備え、制御装置20は、第一レーザ光照射制御部21と、接触状態判定部23と、を備えるだけでもよい(図9参照)。つまり、接合装置は、第一端子50と第二端子60との接合は行なわず、接触状態判定部23によって、第一端子50が所定量を超える面積で第二端子60に接触したか否かを判定するだけの装置(本発明の接触状態判定装置に相当)としてもよい。これにより、第一端子50が所定量を超える面積で第二端子60に接触したか否かを良好に把握できる。
【0041】
また、上記と同様、変形例2における接触状態判定方法は、第一端子50の先端51側を第二端子60に当接させ、第一端子50の基端52側を第二端子60に対して隙間を有した状態とし、且つ、第二端子60により第一端子50の先端51側が押圧されることで第一端子50を撓み変形させた状態とする押圧工程S1と、第一端子50の屈曲対象部位53に第一レーザ光L1を照射することにより、屈曲対象部位53を屈曲させる屈曲工程S2と、第一端子50の先端51側から屈曲対象部位53までの間において、所定量を超える面積で第二端子60に接触したか否かを判定する接触状態判定工程S3と、を備える。この接合方法における接触状態判定工程S3によって、屈曲工程S2において屈曲対象部位53が屈曲された第一端子50と第二端子60との接触状態を把握できる。
【0042】
<変形例3>
また、上記実施形態においては、第一端子と第二端子との接合の例示として、第一端子を電子部品の端子とし、第二端子をバスバーとして説明した。しかし、この態様には限らず、変形例3として、第一端子と第二端子との接合は、平面形状のモータコイル線と、バスバーとの接合としてもよい。さらに、本発明に係る接合は、自動車のボデー等の板金同士の接合に適用してもよい。また、リチウムイオン電池などにおける電池ケースの接合や端子の接合に適用してもよい。
【0043】
なお、上記実施形態においては、接合部材、及び被接合部材を端子(第一端子50、第二端子60)として説明してきた。しかし、この態様には限らない。接合部材、及び被接合部材は、金属片や樹脂を含む弾性部材であってもよく、これらの接合についても適用できる。
【符号の説明】
【0044】
5・・・ハウジング、 10・・・接合装置、 20・・・制御装置、 21・・・第一レーザ光照射制御部、 22・・・第二レーザ光照射制御部、 23・・・接触状態判定部、 23a・・・赤外線温度センサ、 50・・・第一端子(接合部材)、 50a・・・接合面、 50b・・・背向面、 51・・・先端、 52・・・基端、 53・・・屈曲対象部位、 54・・・接合部位、 60・・・第二端子(被接合部材)、 60a・・・接合面、 101・・・接合装置、 Ar1,Ar2,Ar3・・・矢印、 L1・・・第一レーザ光、 L2・・・第二レーザ光、 S1・・・押圧工程、 So1・・・第一レーザ光源、 So2・・・第二レーザ光源、 S2・・・屈曲工程、 S3・・・接触状態判定工程、 S4・・・接合工程、 Temp1,Temp2・・・温度、 α・・・変位量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9