特許第6558161号(P6558161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニデックの特許一覧

<>
  • 特許6558161-眼科装置、および画像処理プログラム 図000002
  • 特許6558161-眼科装置、および画像処理プログラム 図000003
  • 特許6558161-眼科装置、および画像処理プログラム 図000004
  • 特許6558161-眼科装置、および画像処理プログラム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558161
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】眼科装置、および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/107 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   A61B3/107
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-175196(P2015-175196)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-47129(P2017-47129A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】坂下 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦生
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−010798(JP,A)
【文献】 特開平07−079917(JP,A)
【文献】 特開2011−206368(JP,A)
【文献】 特開平05−168598(JP,A)
【文献】 特開2007−061313(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0286351(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104665762(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を測定する眼科装置であって、
前記被検眼の角膜に第1指標像を形成させる第1投影光学系と、
前記角膜の第1指標像とは異なる位置に第2指標像を形成させる第2投影光学系と、
前記被検眼を撮影するための観察光学系と、
前記観察光学系によって撮影された前眼部画像を処理する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1投影光学系の投影光による第1前眼部画像と、前記第2投影光学系の投影光による第2前眼部画像と、に基づいて前記第1指標像と前記第2指標像の両方が写る合成画像を生成することを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1前眼部画像と前記第2前眼部画像の対応する画素ごとに輝度情報を比較し、輝度の高い方の輝度値を選択することで前記合成画像の各画素の輝度値を決定することを特徴とする請求項1の眼科装置。
【請求項3】
前記第1投影光学系は、前記第1指標像を前記角膜の複数領域に形成させ、
前記第2投影光学系は、前記第2指標像を前記角膜の複数領域に形成させ、
前記制御手段は、前記第1前眼部画像に基づいて角膜形状の第1マップ画像を作成し、前記第2前眼部画像に基づいて角膜形状の第2マップ画像を作成し、前記第1マップ画像と前記第2マップ画像とを合成した合成マップ画像を生成することを特徴とする請求項1または2の眼科装置。
【請求項4】
被検眼を測定する眼科装置において実行させる画像処理プログラムであって、前記眼科装置のプロセッサによって実行されることで、
前記被検眼の角膜に第1指標像を形成させる第1投影ステップと、
前記角膜の第1指標像とは異なる位置に第2指標像を形成させる第2投影ステップと、
前記第1投影ステップにおいて、前記第1指標像が形成された第1前眼部画像を撮影する第1撮影ステップと、 前記第2投影ステップにおいて、前記第2指標像が形成された第2前眼部画像を撮影する第2撮影ステップと、
前記第1前眼部画像と前記第2前眼部画像とに基づいて、前記第1指標像と前記第2指標像の両方が写る合成画像を生成する生成ステップと、
を前記眼科装置に実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の角膜形状等を測定する眼科装置、および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オートケラトメータやトノメータなどの眼科装置には、前眼部照明光源と、アライメント/観察/測定(例えば、ケラト測定、瞳孔径計測)のための前眼部撮像光学系と、が配置されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−125260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、角膜上の複数領域を測定する場合、測定用の画像を複数枚取得する場合がある。このような場合、各画像を個別に確認することは、検者にとって手間であった。
【0005】
本開示は、従来の問題点に鑑み、測定用の画像を容易に確認できる眼科装置、および画像処理プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 被検眼を測定する眼科装置であって、前記被検眼の角膜に第1指標像を形成させる第1投影光学系と、前記角膜の第1指標像とは異なる位置に第2指標像を形成させる第2投影光学系と、前記被検眼を撮影するための観察光学系と、前記観察光学系によって撮影された前眼部画像を処理する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1投影光学系の投影光による第1前眼部画像と、前記第2投影光学系の投影光による第2前眼部画像と、に基づいて前記第1指標像と前記第2指標像の両方が写る合成画像を生成することを特徴とする。
(2) 被検眼を測定する眼科装置において実行させる画像処理プログラムであって、前記眼科装置のプロセッサによって実行されることで、前記被検眼の角膜に第1指標像を形成させる第1投影ステップと、前記角膜の第1指標像とは異なる位置に第2指標像を形成させる第2投影ステップと、前記第1投影ステップにおいて、前記第1指標像が形成された第1前眼部画像を撮影する第1撮影ステップと、前記第2投影ステップにおいて、前記第2指標像が形成された第2前眼部画像を撮影する第2撮影ステップと、前記第1前眼部画像と前記第2前眼部画像とに基づいて、前記第1指標像と前記第2指標像の両方が写る合成画像を生成する生成ステップと、を前記眼科装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る眼科装置の光学系について示す概略構成図である。
図2】撮像された前眼部像が表示された前眼部観察画面を示す図である。
図3】指標像が除去された前眼部画像を取得する手法を示すフローチャートである。
図4】前眼部を異なる照明光にて撮影した際の前眼部画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の眼科装置を簡単に説明する。本実施形態の眼科装置(例えば、眼科装置1)は、例えば、被検眼を測定する。眼科装置は、例えば、被検眼の前眼部を撮影してもよい。眼科装置は、例えば、第1投影光学系(例えば、第1光源51)と、第2投影光学系(例えば、第2光源52)と、観察光学系(例えば、観察光学系30)と、制御部(例えば、制御部70)を主に備えてもよい。第1投影光学系は、例えば、被検眼の角膜に第1指標像(例えば、リング指標R1)を形成させる。第2投影光学系は、例えば、角膜の第1指標像とは異なる位置に第2指標像(例えば、リング指標R2)を形成させる。観察光学系は、例えば、被検眼を撮影する。制御部は、例えば、観察光学系によって撮影された前眼部画像を処理する。制御部は、第1投影光学系の投影光による第1前眼部画像と、第2投影光学系の投影光による第2前眼部画像と、に基づいて第1指標像と第2指標像の両方が写る合成画像を生成してもよい。なお、観察光学系によって撮影される第1前眼部画像と第2前眼部画像とは、異なるタイミングで撮影されてもよいし、同時に撮影されてもよい。
【0010】
なお、制御部は、第1前眼部画像と第2前眼部画像の対応する画素ごとに輝度情報を比較してもよい。この場合、制御部は、例えば、輝度の高い方の輝度値を選択することで合成画像の各画素の輝度値を決定してもよい。
【0011】
なお、制御部は、第1前眼部画像または第2前眼部画像において、画像解析時に測定エラーが生じた場合、測定エラーが生じた第1前眼部画像または第2前眼部画像に基づく合成画像を優先的に記憶部(例えば、メモリ85)に記憶させてもよい。これによって、検者は、合成画像を確認することによって測定エラーの原因を推測しやすい。
【0012】
なお、第1投影光学系は、第1指標像を角膜の複数領域に形成させてもよい。例えば、第1指標像は、角膜上の経線方向に異なる位置に形成される多重のリング指標であってもよい。この場合、第1指標像は、例えば、角膜形状分布等の解析に用いられてもよい。また、第2投影光学系も、第2指標像を角膜の複数領域に形成させてもよい。例えば、第2指標像は、第1指標とは異なる位置であって経線方向に異なる位置に形成される多重のリング指標であってもよい。この場合、第2指標像も、例えば、角膜形状分布等の解析に用いられてもよい。
【0013】
制御部は、例えば、多重のリング指標が写り込んだ第1前眼部画像に基づいて角膜形状の第1マップ画像を作成してもよい。また、制御部は、例えば、多重のリング指標が写り込んだ第2前眼部画像に基づいて角膜形状の第2マップ画像を作成してもよい。制御部は、第1マップ画像と第2マップ画像とを合成した合成マップ画像を生成してもよい。なお、マップ画像は、例えば、角膜形状分布を示す画像であってもよい。例えば、角膜形状分布は、角膜曲率分布等であってもよい。
【0014】
なお、制御部は、第1マップ画像と第2マップ画像を合成する際に、被検眼の眼情報に基づいて、両マップ画像の位置合わせをしてもよい。被検眼の眼情報は、例えば、被検眼の虹彩の模様、強膜の血管形状等であってもよい。
【0015】
なお、制御部は、第1マップ画像と第2マップ画像を合成する際に、第1指標像と第2指標像の位置関係に基づいて、両マップ画像の位置合わせをしてもよい。
【0016】
なお、本装置は、例えば、第3投影光学系(例えば、アライメント投影光学系40)をさらに備えてもよい。例えば、第3投影光学系は、例えば、被検眼の角膜に第3指標像を形成させ。この場合、制御部は、第3投影光学系の投影光がともに投影された第1前眼部画像および第2前眼部画像から、複数の第3指標像が写る合成画像を生成してもよい。
【0017】
なお、制御部は、合成画像に写る複数の第3指標像のずれ量に基づいて、第1前眼部画像の撮影時と第2前眼部画像の撮影時との間に生じた被検眼のブレを検出してもよい。なお、制御部は、例えば、ブレ量を検出することによって、被検眼の異常を判定してもよい。
【0018】
なお、本装置は、プロセッサ(例えば、制御部80)によって記憶部(例えば、メモリ85)に記憶された画像処理プログラムを実行してもよい。画像処理プログラムは、例えば、第1投影ステップと、第2投影ステップと、第1撮影ステップと、第2撮影ステップと、生成ステップとを含んでもよい。第1投影ステップは、例えば、被検眼の角膜に第1指標像を形成させるステップである。第2投影ステップは、例えば、角膜の第1指標像とは異なる位置に第2指標像を形成させるステップである。第1撮影ステップは、例えば、第1投影ステップにおいて、第1指標像が形成された第1前眼部画像を撮影するステップである。第2撮影ステップは、例えば、第2投影ステップにおいて、第2指標像が形成された第2前眼部画像を撮影するステップである。生成ステップは、例えば、第1前眼部画像と第2前眼部画像とに基づいて、第1指標像と第2指標像の両方が写る合成画像を生成するステップである。
【0019】
<実施例>
以下、本実施例の眼科装置について図面に基づいて説明する。本実施例の眼科装置は、例えば、眼屈折力測定光学系10、角膜形状測定用の指標を被検眼の角膜に投影するケラト投影光学系50、アライメント投影光学系40、前眼部正面像を撮像する前眼部正面撮像光学系30等を主に備える。なお、これらの光学系は、例えば、図示無き筐体に収納されている。また、その筐体は、周知のアライメント移動機構の駆動により、操作部材(例えば、ジョイスティック)を介して被検眼に対して3次元的に移動される。
【0020】
投影光学系50は、例えば、被検眼角膜にリング指標を投影して角膜形状(曲率、乱視軸角度、等)を測定するために用いられる。投影光学系50は、例えば、測定光軸L1を中心に同心円状に配置された2つのリング状の第1光源51および第2光源52を有し、角膜に対して大小2つのリング指標を投影する。例えば、第2光源52は、第1光源51よりも大きな円周上に配置される。なお、第1光源51および第2光源52には、例えば、赤外光または可視光を発するLEDが使用される。なお、投影光学系50について、光軸L1を中心とする同一円周上に少なくとも2つ以上の点光源が配置されていればよく、間欠的なリング光源であってもよい。さらに、複数のリング指標を投影するプラチド指標投影光学系であってもよい。また、投影光学系50は、前眼部を斜め方向から赤外光にて照明する前眼部照明を兼用してもよい。また、投影光学系50によって投影されたリング指標は、例えば、装置の上下左右方向のアライメントに利用される。
【0021】
アライメント投影光学系40は、例えば、被検者の角膜にアライメント指標を投影するために用いられる。角膜に投影されたアライメント指標は、被検眼に対する位置合わせ(例えば、自動アライメント、アライメント検出、手動アライメント、等)に用いられる。投影光学系40は、例えば、2つの第3光源41a,41b、2つの第4光源42a,42b、コリメータレンズ43a,43bを備える。第3光源41a,41b、第4光源42a,42bは、例えば、光軸L1を中心とする円周上に配置される。なお、第3光源41,41b、および第4光源42a,42bには、例えば、赤外光または可視光を発するLEDが使用される。本実施例の投影光学系40において、第3光源41a,41bから出射されてコリメータレンズ43a,43bを通過した平行光と、第4光源42a,42bによる有限光との組み合わせにより前後のアライメントを行う。
【0022】
前眼部正面撮像光学系30は、ダイクロイックミラー33、対物レンズ47、全反射ミラー62、フィルタ34、撮像レンズ37、二次元撮像素子35、を含み、被検眼の前眼部正面像を撮像するために用いられる。
【0023】
前述の投影光学系50、投影光学系40による前眼部反射光は、ダイクロイックミラー33、対物レンズ47、全反射ミラー62、フィルタ34、及び撮像レンズ37を介して二次元撮像素子35に結像される。
【0024】
眼屈折力測定光学系10では、被検眼に測定光を出射し、眼底によって反射された反射光を受光素子に入射させる。そして、受光素子から出力される受光信号に基づいて、受光素子によって眼屈折力等が算出される。
【0025】
次に、制御系について説明する。制御部80は、装置全体の制御及び測定結果の算出を行う。制御部80は、眼屈折力測定光学系10の各部材、第3光源41、第1光源51、第2光源52、撮像素子35、モニタ70、メモリ85等と接続されている。また、制御部80には、各種入力操作を行うための操作部84が接続されている。
【0026】
なお、メモリ85には、各種制御プログラムの他、制御部80が眼屈折力または角膜形状等を算出するためのソフトウェアプログラムが記憶されており、算出手段として用いられる。例えば、制御部80は、撮像素子35により撮像された角膜指標像を検出して、角膜形状を測定する。
【0027】
以上のような構成を備える装置において、その動作について説明する。検者は、モニタ70に表示される被検眼のアライメント状態を見ながら、図示なきジョイスティック等の操作手段を用いて、装置を上下左右及び前後方向に移動させ、装置を被検眼Eに対して所定の位置関係に置く。この場合、検者は、被検者に固視標を固視させてもよい。
【0028】
アライメントの際には、例えば、投影光学系40および投影光学系50の光源が点灯される。例えば、モニタ70には、図2に示すように、撮影光学系30によって撮影された被検眼の前眼部画像が表示される。前眼部画像には、例えば、第1光源51によるリング指標R1、リング指標R2の外側に、第2光源52によるリング指標R2が表示される。また、前眼部画像には、例えば、第3光源41,41bによる指標M1,M2、第4光源42a,42bによる指標P1,P2が表示される。この場合、例えば、図2に示すように、電子的に表示されたレチクルLTと、第1光源51によるリング指標R1と、が同心円状になるように上下左右方向のアライメントが行われる。また、例えば、指標M1、M2の間隔と、指標P1、P2の間隔が等しくなるように前後方向のアライメントが行われる。
【0029】
アライメント完了後、所定のトリガ信号が発せられると、制御部80は、第1光源51と第2光源52を異なるタイミングで点灯し、撮像素子35から出力される撮像信号に基づいて、第1光源51による第1前眼部画像A1と、第2光源52による第2前眼部画像A2とを取得する(図4(a)、(b)参照)。例えば、第1前眼部画像A1および第2前眼部画像A2は、それぞれ、直径2.4mm、直径3.3mmの円周状の領域における角膜曲率の測定に用いられる。このように、領域ごとに測定用の画像を分けて撮影することによって、各リング指標の識別が容易となる。また、制御部80は、第1前眼部画像A1と第2前眼部画像A2に基づいて、前眼部画像の確認用の画像を生成する。例えば、制御部80は、第1前眼部画像A1と第2前眼部画像A2の輝度情報を比較して輝度の高い方を選択する画像処理により、2つの指標像が写り込んだ前眼部画像A3を作成する(図4(c)参照)。
【0030】
以下に、図3に示されるフローチャートを用いてより具体的に説明する。所定のトリガ信号が発せられると、制御部80は、第2光源52を消灯させる。そして、第1光源51を点灯させた状態で前眼部画像のキャプチャを行い、前眼部画像A1を取得する(図4(a)参照)。取得された前眼部画像A1は、メモリ85に記憶される。
【0031】
次いで、制御部80は、第2光源52を点灯させ、第1光源51を消灯させる。そして、第2光源52を点灯させた状態で前眼部画像のキャプチャを行い、第2光源52を照明光とした前眼部画像A2を取得する(図4(b)参照)。撮影された前眼部画像A2は、メモリ85に記憶される。
【0032】
上記のように、第1光源51及び第2光源52を用いた前眼部画像の撮影が完了すると、制御部80は、前眼部画像A1及び前眼部画像A2の各画像において、画素毎に輝度情報(輝度分布)を検出する。
【0033】
次に、制御部80は、前眼部画像A1及び前眼部画像A2との間で、同じ画素位置毎に輝度値を比較する。そして、前眼部画像A1及び前眼部画像A2の各画素間で高い方の輝度値を、合成画像に用いる輝度データとして、その位置情報とともにメモリ85に記憶させる。
【0034】
全ての画素の比較が完了すると、制御部80は、メモリ85に記憶されている画素データを呼び出す。そして、画素位置毎に対応する輝度データを並べていき、各指標像が合成された前眼部画像A3(図4(c)参照)を取得する。以上のように、本実施例では、少なくとも二つ以上の前眼部画像より、輝度の最大値を選択する演算処理を行い、1つの前眼部画像を取得する。
【0035】
ここで、前眼部画像A3の取得において、図4(a)に表示されたリング指標R1の位置には、そのリング指標R1の輝度値と図4(b)の画像のこの位置に対応した部位の輝度値と比較され、より高い輝度値をもつ図4(a)の輝度値が選択される。結果、リング指標R1が画像化される(図4(c))。また、リング指標R2についても同様であって、リング指標R2の位置には、前眼部画像A1より高い輝度値をもつ前眼部画像A2の輝度値が選択される。これにより、前眼部画像A3は、各画像の指標が写り込んだ画像となる。このように、上記の方法では、輝度値を比較するだけであるため、処理が複雑にならずに済む。取得された前眼部画像A3は、例えば、モニタ70またはプリンタ等に出力され、前眼部画像の確認等に用いられる。
【0036】
以上のように、互いに異なる指標が写り込んだ前眼部画像A1と前眼部画像A2を合成し、各画像の指標を一つの画像に合成することによって、各画像を個別に表示させて確認する必要がなく、一つの画像でまとめて測定時の画像を確認できる。
【0037】
なお、前眼部画像A3のような画像を得る場合、1つの前眼部画像を基準にして合成画像を得る処理でもよい。例えば、最初に前眼部画像A3を前眼部画像A1からコピーする。次に、前眼部画像A1を基準とし、前眼部画像A1と前眼部画像A2の輝度値の差を求める。この輝度値の差がある一定以上あれば前眼部画像A3に前眼部画像A2の輝度値を採用する。このような処理であれば、前眼部画像A1を基準とした前眼部画像A3を求めることができる。
【0038】
なお、前眼部画像A1と前眼部画像A2との間で輝度情報を比較する場合、制御部80は、第1前眼部画像A1と前記第2前眼部画像A2との間の位置ずれを検出し、画像間の位置ずれを画像処理により補正してから、画素位置毎に輝度値を比較してもよい。なお、位置ずれ検出には、例えば、虹彩の模様、強膜の血管形状などを利用したパターンマッチングが用いられる。また、例えば、エッジ検出等によってリング指標R1およびリング指標R2の位置を検出し、これらのリング指標の中心位置のずれを検出してもよい。
【0039】
例えば、制御部80は、前眼部画像A1及び前眼部画像A2からリング指標R1の中心座標とR2中心座標をそれぞれ検出する。そして、R1の中心座標(X、Y)に対するR2中心座標(X、Y)のずれ量を算出し、前眼部画像A1に対して前眼部画像A2をずれ量分移動させる。これにより、各画像間の位置ずれが補正され、上記比較処理が精度良く行われる。
【0040】
なお、指標の合成方法は、上記の方法に限らない。例えば、一方の画像のエッジ検出等によって指標を抽出し、他方の画像に合成してもよい。この場合、前述のような虹彩の模様または強膜の血管形状のパターンマッチングを利用して、抽出した指標像を合成してもよい。
【0041】
なお、上記説明においては、制御部80により、2枚の画像の取得を連続的に行う構成としたが、2枚の画像は時間を空けて取得されてもよい。また、画像取得は、所定のトリガ信号が発せられた場合に、1画像ずつ取得される構成としてもよい。この場合、画像取得ごとにアライメントが行われる構成とすると、位置ずれを補正できる。
【0042】
なお、本実施例においては、2つのリング指標を例として説明したがこれに限るものではない。例えば、複数のリングパターン指標を角膜に投影する投影光学系であってもよい。より具体的には、3つ以上のリング指標を用いてよい。この場合、指標の合成には、それぞれのリング指標を順に点灯させて撮影を行い、3つ以上の画像との間で輝度の比較が行われる。
【0043】
なお、第1前眼部画像A1および第2前眼部画像A2に基づいて被検眼の角膜形状を測定する際に、エラーが発生して測定が正常に行われなかった場合、エラーが発生した画像(例えば、第1前眼部画像A1、第2前眼部画像A2)に基づいて合成された前眼部画像A3を優先的にモニタ70に表示できるようにしてもよい。例えば、制御部は、リング指標の像高から被検眼の角膜曲率を求める際、リング指標R1が上手く検出できず、角膜曲率が測定できなかったとする。このとき、制御部80は、検出できなかったリング指標R1が合成された前眼部画像A3をエラー画像としてメモリ85に記憶させる。そして、制御部80は、モニタ70に記憶させたエラー画像を表示させてもよい。これによって、検者は、モニタ70に表示されたエラー画像を確認し、測定エラーの原因を推測することができる。
【0044】
また、リング指標だけでなく、前眼部画像上に形成される指標を合成してもよい。例えば、アライメント指標として用いられる点状の指標(例えば、指標M1,M2、指標P1,P2など)に対しても適用可能である。
【0045】
なお、第1前眼部画像A1と第2前眼部画像A2は、異なるタイミングで撮影されるため、被検眼に眼振等が生じると、例えば、両画像に写り込んでいる指標(例えば、指標M1,M2、指標P1,P2など)の位置がずれる場合がある。この場合、例えば、合成後の前眼部画像A3では、指標M1,M2、指標P1,P2が二重に見える。したがって、制御部80は、指標M1,M2、指標P1,P2の位置または形状を解析することによって、被検眼に眼振等の異常がないかを判定してもよい。
【0046】
なお、制御部80は、合成された前眼部画像A3だけでなく、合成前の前眼部画像A1,前眼部画像A2を個別にモニタ70に示させるようにしてもよい。
【0047】
なお、被検眼画像を得る眼科装置において、第1光源及び第2光源から出射された光に限らず、異なるタイミングで取得される第1画像と第2画像の輝度情報を比較して、輝度の高い方を画像化させる画像処理によれば、被検眼画像において不規則に発生するノイズ光(例えば、外部照明)などの画像化が可能である。
【0048】
なお、本開示は、前眼部撮像光学系を持つ他の眼科装置にも適用可能である。例えば、角膜形状測定装置(角膜トポグラフィ)、眼圧測定装置、眼底撮影装置においても適用可能である。例えば、角膜形状測定装置の場合、例えば、経線方向に位置の異なる複数のリング指標が投影される。この場合、制御部80は、複数のリング指標を一つ飛ばしで交互に投影し、このとき撮影された2つの画像に基づいて、それぞれ角膜形状のマップ画像を生成してもよい。例えば、複数のリング指標を投影する多重リング光源において、最も内側のリング光源から奇数番目のリング光源と、偶数番目のリング光源を交互に点灯させ、それぞれ点灯に応じて観察光学系30によって前眼部画像A1,A2を撮影してもよい。そして、制御部80は、互いに異なる複数のリング指標が写り込んだ前眼部画像A1,A2において、それぞれ角膜形状分布を求め、マップ画像を作成してもよい。そして、制御部80は、これらのマップ画像を合成してより詳細なマップ画像を生成してもよい。なお、マップ画像を合成する場合、上記の位置合わせ方法を用いるとよい。なお、マップ画像は、例えば、被検眼の角膜曲率分布を示す画像であってもよい。この場合、マップ画像は、例えば、角膜曲率の大きさに基づいて色分けされてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 眼屈折力測定光学系
30 前眼部正面撮像光学系
40 アライメント投影光学系
41 第3光源
42 第4光源
50 ケラト投影光学系
51 第1光源
52 第2光源
70 モニタ
80 制御部
85 メモリ
図1
図2
図3
図4