(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558162
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/891 20180101AFI20190805BHJP
【FI】
B60N2/891
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-176947(P2015-176947)
(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-52360(P2017-52360A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 仁一
【審査官】
永安 真
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−093246(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3114557(JP,U)
【文献】
特開2006−069286(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3128833(JP,U)
【文献】
特開平10−006907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/891
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの上端部にヘッドレストを備えた乗物用シートであって、
前記ヘッドレストの下端部は、前記シートバックの上端よりも下方に延出し、かつ、前記シートバックの前記上端部よりも前側に位置し、
前記乗物用シートが搭載された乗物に対して後方から衝突荷重が入力された際に、着座者の背面のうち、頭部にあたる領域、頸部にあたる領域、及び胸部にあたる領域に前記ヘッドレストが当接し、
前記ヘッドレストにおける前記頸部にあたる領域に当接する部位は、前記胸部にあたる領域に当接する部位よりもシート前後方向の前側に位置しており、
前記ヘッドレストの下端が前記シートバックと当接し、
前記ヘッドレストは、ヘッドレストピラーに対して直接取付けられていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記乗物用シートが搭載された前記乗物に対して後方から衝突荷重が入力された際に、前記着座者の背面のうち、前記頭部にあたる領域、前記頸部にあたる領域、及び前記胸部にあたる領域に当接するように、前記ヘッドレストの状態が変化することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記ヘッドレストにおける前記頭部にあたる領域、前記頸部にあたる領域、及び前記胸部にあたる領域に当接する部位は、連なって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記ヘッドレストは、前記ヘッドレストにおける前記頭部にあたる領域から前記胸部にあたる領域に当接する部位の後方に、前記着座者を支持する支持部材を有し、
該支持部材によって前記ヘッドレストの状態が変化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記支持部材は、エアセルであり、該エアセルによって前記ヘッドレストの状態が変化することを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記支持部材は、低反発材であり、該低反発材によって前記ヘッドレストの状態が変化することを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記支持部材は、エアバッグであり、該エアバッグによって前記ヘッドレストの状態が変化することを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記エアバッグは前記ヘッドレストの内部における下方位置に納められていることを特徴とする請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記ヘッドレストは、前記支持部材を後方から保持する保持部材を有し、
該保持部材は、ヘッドレストピラーに取り付けられたプレートであり、
該プレートは、前記ヘッドレストの前面に沿う向きで前記ヘッドレストピラーに取り付けられていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記ヘッドレストは、ヘッドレストピラーと、前記支持部材を後方から保持する保持部材とを有し、
該保持部材は、前記ヘッドレストピラーと一体的に形成されていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に、後突時に着座者に加わる衝突荷重を好適に緩和することが可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の後突時に着座者に加わる衝突荷重を緩和するために、着座者の頸部を保護するように一部が頸部に対向する位置まで延在して形成されたヘッドレストを有する車両用シートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このように形成されたヘッドレストによって、後突時に、着座者の頭部及び頸部の両方を保護でき、特に、
頸部が弱い女性に効果的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平6−500936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシートにおいては、胸の上部とシートバックの間に隙間が形成されている(頸部から胸部にかけては、背骨が側面視S字状にカーブしているため隙間ができやすい)。
このため、車が後面衝突した場合、この隙間の部分に背骨が入り込むようになり、衝突荷重を緩和する効果が低くなることがあった。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、後突時に着座者に加わる衝突荷重を好適に緩和できる乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートバックの上端部にヘッドレストを備えた乗物用シートであって、前記ヘッドレストの下端部は、前記シートバックの上端よりも下方に延出し、かつ、前記シートバックの前記上端部よりも前側に位置し、前記乗物用シートが搭載された乗物に対して後方から衝突荷重が入力された際に、着座者の背面のうち、頭部にあたる領域、頸部にあたる領域、及び胸部にあたる領域に前記ヘッドレストが当接
し、前記ヘッドレストにおける前記頸部にあたる領域に当接する部位は、前記胸部にあたる領域に当接する部位よりもシート前後方向の前側に位置しており、前記ヘッドレストの下端が前記シートバックと当接し、前記ヘッドレストは、ヘッドレストピラーに対して直接取付けられていることにより解決される。
【0007】
上記構成によれば、着座者の背面のうち、頭部にあたる領域、頸部にあたる領域、及び胸部にあたる領域をヘッドレストで保護することができることで、後突時に着座者に加わる衝突荷重を好適に緩和することができる。
また、着座者の頸部と胸部の背面側に沿うようにヘッドレストが形成されることとなり、後突時に着座者に加わる衝突荷重を緩和することができる。
【0008】
また、前記乗物用シートが搭載された前記乗物に対して後方から衝突荷重が入力された際に、前記着座者の背面のうち、前記頭部にあたる領域、前記頸部にあたる領域、及び前記胸部にあたる領域に当接するように、前記ヘッドレストの状態が変化するようにしてもよい。
上記構成によれば、頭部にあたる領域、頸部にあたる領域、及び胸部にあたる領域に当接するようにヘッドレストの状態が変化することで、ヘッドレストと着座者の接触面積が増えて、後突時に着座者に加わる衝突荷重を緩和することができる。
【0010】
さらに、前記ヘッドレストにおける前記頭部にあたる領域、前記頸部にあたる領域、及び前記胸部にあたる領域に当接する部位は、連なって形成されていると好ましい。
上記構成によれば、ヘッドレストにおける頭部にあたる領域、頸部にあたる領域、及び胸部にあたる領域に当接する部位が連なって形成されていることで、後突時に、これらの隙間に着座者の体の一部が入ることを防止できるため、着座者に加わる衝突荷重を好適に緩和することができる。
【0011】
前記ヘッドレストは、前記ヘッドレストにおける前記頭部にあたる領域から前記胸部にあたる領域に当接する部位の後方に、前記着座者を支持する支持部材を有し、該支持部材によって前記ヘッドレストの状態が変化すると好ましい。
上記構成によれば、支持部材によって、後突時に着座者に加わる衝突荷重を緩和することができる。
【0012】
また、前記支持部材は、エアセルであり、該エアセルによって前記ヘッドレストの状態が変化するようにしてもよい。
上記構成によれば、エアセルによって、着座者の体にフィットするように後突時のヘッドレストの状態を変形させることができるため、着座者に加わる衝突荷重を緩和しつつ軽量化することができる。
【0013】
また、前記支持部材は、低反発材であり、該低反発材によって前記ヘッドレストの状態が変化するようにしてもよい。
上記構成によれば、低反発材によって、着座者の体にフィットするように後突時のヘッドレストの状態を変形させることができ、低コストで着座者に加わる衝突荷重を緩和することができる。
【0014】
また、前記支持部材は、エアバッグであり、該エアバッグによって前記ヘッドレストの状態が変化するようにしてもよい。
上記構成によれば、エアバッグによって、着座者の体にフィットするように後突時のヘッドレストの状態を変形させることができ、着座者に加わる衝突荷重を緩和することができる。
【0015】
また、前記エアバッグは前記ヘッドレストの内部における下方位置に納められていると好ましい。
また、前記ヘッドレストは、前記支持部材を後方から保持する保持部材を有し、該保持部材は、ヘッドレストピラーに取り付けられたプレートであり、該プレートは、前記ヘッドレストの前面に沿う向きで前記ヘッドレストピラーに取り付けられていると好ましい。
上記構成によれば、保持部材により支持部材を後方から保持することで、支持部材の後方への沈み込みを防止することができ、支持部材による衝突荷重の緩和する機能を維持することができる。
【0016】
また、前記ヘッドレストは、ヘッドレストピラーと、前記支持部材を後方から保持する保持部材とを有し、該保持部材は、前記ヘッドレストピラーと一体的に形成されているものでもよい。
上記構成によれば、保持部材がヘッドレストピラーと一体的に形成されているため、製造効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、後突時に着座者に加わる衝突荷重を緩和することができる。
本発明によれば、後突時に着座者に加わる衝突荷重を緩和しつつ軽量化することができる。
本発明によれば、低コストで後突時に着座者に加わる衝突荷重を緩和することができる。
本発明によれば、着座者に加わる衝突荷重を緩和する機能を維持することができる。
本発明によれば、後突時に着座者に加わる衝突荷重を緩和し、製造効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るシートバックを示す斜視図である。
【
図2】後突時の着座者と車両用シートの状態を示す側面図である。
【
図3】低反発フォームを備えるヘッドレストを示す模式的な断面図である。
【
図4】エアセルを備えるヘッドレストを示す模式的な断面図である。
【
図5】エアバッグを備えるヘッドレストを示す模式的な断面図である。
【
図6】プレート付きのピラーを備えるヘッドレストを示す模式的な断面図である。
【
図7】直線部、折返し部及び連結部を備え、プレートが取り付けられたピラーを示す斜視図である。
【
図8】ワイヤが架け渡されたピラーを示す斜視図である。
【
図9】直線部、折返し部、連結部及び架設部を備えるピラーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の乗物用シートの実施形態に係る車両用シートについて、図面を参照しながら説明する。特に、本実施形態に係る車両用シートは、後突時に着座者に加わる衝突荷重を緩和することを特徴とする。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
なお、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートSの前後方向に相当し、車両の走行方向と一致する方向である。また、「幅方向」とは、車両用シートSの幅方向(横幅)に相当する。
【0021】
<車両用シートの全体的な構成について>
本発明の実施形態に係る車両用シートSの全体的な構成について、
図1及び
図2を主に参照して説明する。なお、
図1は、シートバックS1を示す斜視図、
図2は、後突時の着座者Hと車両用シートSの状態を示す側面図である。
【0022】
車両用シートSは、本発明に係る乗物用シートに相当し、
図1及び
図2に示すように、シートバックS1と、シートクッションS2とを備える。
シートバックS1は、着座者Hの腰部の背面側を主に支持するシートバック本体1と、着座者Hの頭部、頸部及び胸部の背面側を支持するヘッドレスト2とを備える。
なお、以下において、着座者Hの頭部にあたる背面側の領域を第1領域R1、頸部にあたる背面側の領域を第2領域R2、胸部にあたる背面側の領域を第3領域R3という。
【0023】
シートバック本体1とヘッドレスト2とは、正面視U字状に形成されて両端側が直線的に延在するヘッドレストピラーとしてのピラー3によって連結されている。詳細には、ヘッドレスト2は、シートバック本体1に対して上下方向及び前後方向に移動し、移動した状態で固定可能にピラー3によってシートバック本体1に連結されている。
【0024】
<ヘッドレストの構成について>
次に、ヘッドレスト2について、
図1及び
図2に加えて、
図3〜
図5を参照して説明する。なお、
図3は、低反発フォーム20を備えるヘッドレスト2を示す模式的な断面図、
図4は、エアセル21を備えるヘッドレスト2を示す模式的な断面図、
図5は、エアバッグ22を備えるヘッドレスト2を示す模式的な断面図である。なお、
図3〜
図5においては、ヘッドレスト2における表皮を省略して示している。
【0025】
ヘッドレスト2は、
図1及び
図2に示すように、クッション材であるウレタンフォームと、クッション材を覆う表皮とから構成されている。ヘッドレスト2は、第1領域R1に対向する位置にある第1部位P1で着座者Hの頭部を支持し、第2領域R2に対向する位置にある第2部位P2で着座者Hの頸部を支持し、第3領域R3に対向する位置にある第3部位P3で着座者Hの胸部の背面側を支持している。
【0026】
特に、ヘッドレスト2の第3部位P3は、着座者Hの胸部の背面側を支持するように、シートバック本体1の上端部よりも前側、かつ、シートバック本体1の上端部よりも下方に隙間なく連続的に延在している。このため、ヘッドレスト2によれば、車両の後突時に、着座者Hの頭部及び頸部に加わる衝突荷重だけでなく、胸部の背面側に加わる衝突荷重を緩和することができる。
さらに、ヘッドレスト2は、上下に移動可能であるため、体格の異なる着座者Hが座ったとしてもヘッドレスト2の上下位置が体格に合う位置に調整されていれば、体格に関わらず、着座者Hの頭部、頸部及び胸部の背面側に加わる衝突荷重を緩和できることとなる。
【0027】
詳細には、ヘッドレスト2は、第2部位P2、第1部位P1、第3部位P3の順に、ヘッドレスト2からシート前後方向の前側(厳密には、シートバックS1の着座者Hとの接触面に垂直な方向における前側)に突出するように形成されている。このように形成されていることで、ヘッドレスト2は、着座者Hの頭部、頸部、胸部の背面側の輪郭に沿う形状を有することとなる。このため、ヘッドレスト2の第1部位P1、第2部位P2及び第3部位P3が、
図2に示す車両の後突時に着座者Hに当接して変形(換言すると、変化)したときに、略均等に沈み込むこととなり、略均等な反発力を着座者Hに付与することができる。
【0028】
<支持部材の構成について>
ヘッドレスト2は、
図3に示すように、通常のウレタンフォームではなく、着座者Hを支持する支持部材及び低反発材としての軟質ウレタン等の低反発フォーム20から構成されるものであってもよい。このように、低反発フォーム20から構成されるものであれば、着座者H
に押圧されることによって着座者Hの体型に合うように変形するため、上記のように、ヘッドレスト2の上下の各部位の前後方向の突出量を異ならせることは必須ではない。このため、通常運転時の触感をより良好にし、また美観を良好にすることを重視するような形状を採用することができる。
【0029】
また、ヘッドレスト2が備える支持部材の他の構成としては、
図4に示すように、エアセル21であってもよい。エアセル21は、空気を密閉した袋から成るものである。
エアセル21を備えるヘッドレスト2によれば、車両の後突時に、着座者Hに当接することによりエアセル21が押し潰されること(換言すると、変化すること)によって、着座者Hに後方から加わる衝突荷重を緩和することができる。そして、エアセル21によれば、内部の空間の分だけヘッドレスト2を軽量化することができる。
【0030】
また、
図5に示すように、ヘッドレスト2の内部に、着座者Hを支持する支持部材としてのエアバッグ22が設けられていてもよい。
具体的には、ヘッドレスト2は、着座者Hの頭部及び頸部のみに対向する位置に形成されている。そして、車両の後突時、又は図示せぬセンサによる信号に基づいて図示せぬECUが後突を予測したときに、着座者Hの胸部の背面側まで延出するようにエアバッグ22がヘッドレスト2から膨出する(換言すると、変化する)というものである。
このようにすれば、通常運転時には、エアバッグ22がヘッドレスト2の内部に収納されているため、着座者Hの頭部、頸部及び胸部背面に接触することなく違和感を着座者Hに与えない。特に、このとき、エアバッグ22は着座者Hの頭部及び頸部に当接しないため頭部の動きを制限することがない。そして、後突時には、着座者Hの頭部、頸部及び胸部の背面側まで支持するようにできる。
【0031】
<保持部材の構成について>
上記のヘッドレスト2における着座者Hに当接する部位の後ろ側に何の保持部材を設けない構成について説明した。
しかし、何の保持部材もヘッドレスト2に設けられていなければ、後突時に着座者Hがヘッドレスト2に当接することにより、ヘッドレスト2がピラー3の間に沈み込むように変形してしまうことがある。この場合には、ヘッドレスト2の衝突荷重を緩和する機能が低下することとなる。
【0032】
そこで、ヘッドレスト2における着座者Hに当接する部位の後ろ側(ウレタンフォーム若しくは低反発フォーム20の後ろ側)、又はエアセル21若しくはエアバッグ22の後方に設けられる保持部材について
図6〜
図9を参照して説明する。
なお、
図6は、プレート5付きのピラー3を備えるヘッドレスト2を示す模式的な断面図、
図7は、直線部40、折返し部41及び連結部42を備え、プレート5が取り付けられたピラー4を示す斜視図、
図8は、ワイヤ5aが架け渡されたピラー4を示す斜視図、
図9は、直線部40、折返し部41、連結部42及び架設部43を備えるピラー4を示す斜視図である。
【0033】
図6に示すピラー3は、正面視倒立U字状、側面視倒立L字状に形成されており、上部が前側に張り出すように、一本のパイプで形成されている。具体的には、ピラー3は、シートバック本体1に設けられた図示せぬヘッドレストガイドに支持される上下に直線的に延在する一対の直線部30と、一対の直線部30に上端を連結して、前側に突出するように上面視コの字状に形成された上部31とから構成されている。
【0034】
保持部材としてのプレート5は、板状に形成され、ヘッドレスト2の前面に沿う向きでピラー3の上部31の前側に取り付けられ、ヘッドレスト2における着座者Hに当接する部位の後ろ側に埋め込まれるようにして取り付けられている。具体的には、プレート5は、ピラー3の上部31の前側に上部側を取り付けられて、着座者Hの胸部の背面側に至るまで下方に延在している。
特に、プレート5がピラー3の上部31に回動可能に取り付けられていると、プレート5を回動させることにより、着座者Hの頸部を支持する部位のヘッドレスト2の膨らみを調整できることとなる。
なお、上記においては、低反発フォーム20を備えるヘッドレスト2に、ピラー3及びプレート5を設ける構成について
図6に示して説明したが、低反発フォーム20を備えるものの他、ウレタンフォームから成るものや、エアセル21やエアバッグ22を備えるものに適用してもよい。
特に、エアセル21又はエアバッグ22の後方にプレート5を設けるようにすることで、エアセル21の後方への変形を規制できるため反発力を高めることができ、エアバッグ22については、後方に膨らむことを制限して前方に素早く膨出させることができる。
【0035】
さらに、
図6に示す形態においては、プレート5は、その上部側をピラー3の上部31に取り付けられているが、
図7に示すように、プレート5の側面部及び下面部をヘッドレストピラーとしてのピラー4に取り付けられる構成であってもよい。
【0036】
ピラー4は、上下に直線的に延在する一対の直線部40と、直線部40の上端から前方に延びて下方に延びる一対の折返し部41と、一対の折返し部41に連続して両者を連結する正面視U字状の連結部42とから構成されている。
そして、プレート5の側面部及び下面部は、U字状の連結部42の内側に固定されている。
このような構成によれば、プレート5が連結部42によって幅方向及び下方向から支持されることになるため、プレート5の耐衝撃性を高めることができる。
【0037】
また、
図8に示すように、プレート5に代えて、上下に複数本の鋼製のワイヤ5aをピラー4の連結部42の内側にシート幅方向に架け渡すように取り付けてもよい。このようにすれば、プレート5を用いるものより軽量化することができる。
【0038】
さらに、ピラー4と別部材の保持部材を取り付けるのではなく、
図9に示すように、ピラー4の連結部42と一体的に架設部43を形成するようにしてもよい。架設部43は、ワイヤ5aと同様に上下に複数設けられて、シート幅方向に架け渡されるように連結部42と一体的に形成されている。
このように、連結部42に一体的に形成された架設部43を有するピラー4によれば、プレート5と比べて体積が小さい分、軽量化することができ、さらに、一体的に成形することによって、他部材を取り付ける作業を必要とせず、剛性を確保することができる。
【符号の説明】
【0039】
H 着座者
P1 第1部位
P2 第2部位
P3 第3部位
R1 第1領域(頭部にあたる領域)
R2 第2領域(頸部にあたる領域)
R3 第3領域(胸部にあたる領域)
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートバック
S2 シートクッション
1 シートバック本体
2 ヘッドレスト
20 低反発フォーム(低反発材,支持部材)
21 エアセル(支持部材)
22 エアバッグ(支持部材)
3,4 ピラー(ヘッドレストピラー)
30,40 直線部
31 上部
41 折返し部
42 連結部
43 架設部(保持部材)
5 プレート(保持部材)
5a ワイヤ(保持部材)