特許第6558167号(P6558167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6558167-通信装置、制御方法 図000002
  • 特許6558167-通信装置、制御方法 図000003
  • 特許6558167-通信装置、制御方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558167
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】通信装置、制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20190805BHJP
   H04L 12/827 20130101ALI20190805BHJP
【FI】
   H04L12/44 D
   H04L12/44 300
   H04L12/827
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-180985(P2015-180985)
(22)【出願日】2015年9月14日
(65)【公開番号】特開2017-59890(P2017-59890A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】大和田 泰次郎
(72)【発明者】
【氏名】大谷 清治
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−295281(JP,A)
【文献】 特開2008−167482(JP,A)
【文献】 特開2008−205848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00−12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1インターフェイスにおいて受信したフレームを第2インターフェイスから送信する通信装置であって、
前記第2インターフェイスでのリンクアップを検出する第1検出部と、
前記第1検出部がリンクアップを検出した場合、前記第2インターフェイスが送信すべきフレームを蓄積するバッファにおけるオーバーフローへの接近を検出する第2検出部と、
前記第2検出部がオーバーフローへの接近を検出した場合、前記第1インターフェイスにおける受信カウンタの値と前記第2インターフェイスにおける送信カウンタの値との差異がしきい値よりも小さいことによって、前記第2インターフェイスにおける送信失敗が非検出であれば、前記第1インターフェイスを介してフロー制御を実行
前記第1インターフェイスにおける受信カウンタの値と前記第2インターフェイスにおける送信カウンタの値との差異が前記しきい値以上であることによって、前記第2インターフェイスにおける送信失敗が検出されれば、前記第1インターフェイスを介したフロー制御を非実行とする制御部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1インターフェイスを介したフロー制御を非実行とした場合、フロー制御の非実行を継続することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
第1インターフェイスにおいて受信したフレームを第2インターフェイスから送信する通信装置での制御方法であって、
前記第2インターフェイスでのリンクアップを検出するステップと、
リンクアップを検出した場合、前記第2インターフェイスが送信すべきフレームを蓄積するバッファにおけるオーバーフローへの接近を検出するステップと、
オーバーフローへの接近を検出した場合、前記第1インターフェイスにおける受信カウンタの値と前記第2インターフェイスにおける送信カウンタの値との差異がしきい値よりも小さいことによって、前記第2インターフェイスにおける送信失敗が非検出であれば、前記第1インターフェイスを介してフロー制御を実行
前記第1インターフェイスにおける受信カウンタの値と前記第2インターフェイスにおける送信カウンタの値との差異が前記しきい値以上であることによって、前記第2インターフェイスにおける送信失敗が検出されれば、前記第1インターフェイスを介したフロー制御を非実行とするステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特にフレームを転送する通信装置、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レイヤ2スイッチは、LAN(Local Area Network)上のステーションを相互に接続する。レイヤ2のデータリンク層において、ビットエラーやバッファ満杯状態が発生した場合、受信装置側は異常な受信フレームを破棄するだけである。レイヤ2スイッチは、フロー制御を行うことによって、バッファリソース不足によるフレーム損失を回避可能である。フロー制御とは、送信装置側が受信装置側で受信可能なデータフレームのレートよりも高い速度でデータフレームを送信してしまうのを防ぐ制御機構である。フロー制御では、受信装置側から送信装置側に向かって送信のフィードバック制御を行い、送信装置側の送信レートは、受信装置側のバッファの状況に応じて調整される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−289744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信システムは、例えば、複数のレイヤ2スイッチをピラミッド状に接続することによって形成される。そのような構成において、末端近くのレイヤ2スイッチのポートに接続されたケーブルに障害が発生した場合に、当該レイヤ2スイッチがフロー制御を実行すると、通信システム全体の通信が停止してしまうおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーブルに障害が発生しても、通信システム全体の通信停止を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の通信装置は、第1インターフェイスにおいて受信したフレームを第2インターフェイスから送信する通信装置であって、第2インターフェイスでのリンクアップを検出する第1検出部と、第1検出部がリンクアップを検出した場合、第2インターフェイスが送信すべきフレームを蓄積するバッファにおけるオーバーフローへの接近を検出する第2検出部と、第2検出部がオーバーフローへの接近を検出した場合、第1インターフェイスにおける受信カウンタの値と第2インターフェイスにおける送信カウンタの値との差異がしきい値よりも小さいことによって、第2インターフェイスにおける送信失敗が非検出であれば、第1インターフェイスを介してフロー制御を実行第1インターフェイスにおける受信カウンタの値と第2インターフェイスにおける送信カウンタの値との差異がしきい値以上であることによって、第2インターフェイスにおける送信失敗が検出されれば、第1インターフェイスを介したフロー制御を非実行とする制御部と、を備える
【0007】
本発明の別の態様は、制御方法である。この方法は、第1インターフェイスにおいて受信したフレームを第2インターフェイスから送信する通信装置での制御方法であって、第2インターフェイスでのリンクアップを検出するステップと、リンクアップを検出した場合、第2インターフェイスが送信すべきフレームを蓄積するバッファにおけるオーバーフローへの接近を検出するステップと、オーバーフローへの接近を検出した場合、第1インターフェイスにおける受信カウンタの値と第2インターフェイスにおける送信カウンタの値との差異がしきい値よりも小さいことによって、第2インターフェイスにおける送信失敗が非検出であれば、第1インターフェイスを介してフロー制御を実行第1インターフェイスにおける受信カウンタの値と第2インターフェイスにおける送信カウンタの値との差異がしきい値以上であることによって、第2インターフェイスにおける送信失敗が検出されれば、第1インターフェイスを介したフロー制御を非実行とするステップと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブルに障害が発生しても、通信システム全体の通信停止を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
図2図1の通信装置の構成を示す図である。
図3図2の通信装置によるフロー制御の実行手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、複数の通信装置がピラミッド状に接続されることによって形成される通信システムに関する。通信装置は、例えば、レイヤ2スイッチ、スイッチングハブである。通信装置でのバッファオーバーフローには、フロー制御が有効であるが、前述のごとく、フロー制御によって通信システム全体の通信が停止してしまう場合がある。これに対応するために、本実施例における通信装置は、バッファのオーバーフローへの接近を検出した場合、ケーブルに障害が発生していなければ、フロー制御を実行するが、ケーブルに障害が発生していれば、フロー制御を実行しない。
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、サーバ10、通信装置20と総称される第1通信装置20a、第2通信装置20b、第3通信装置20c、第4通信装置20d、第5通信装置20e、第6通信装置20f、第7通信装置20g、第8通信装置20h、第9通信装置20i、第10通信装置20j、第11通信装置20k、第12通信装置20l、端末装置30と総称される第1端末装置30a、第2端末装置30b、第3端末装置30c、第4端末装置30d、第5端末装置30e、第6端末装置30f、第7端末装置30g、第8端末装置30h、第9端末装置30i、第10端末装置30j、第11端末装置30k、第12端末装置30lを含む。
【0013】
通信システム100は、複数の通信装置20がピラミッド状に接続されることによって形成される。ピラミッド状に形成された通信システム100の頂点の部分には、サーバ10が配置される。また、サーバ10には、第1通信装置20a、第2通信装置20bが接続される。さらに、第1通信装置20a、第2通信装置20bには、第3通信装置20c〜第6通信装置20fが接続され、第3通信装置20c〜第6通信装置20fには、第7通信装置20g〜第12通信装置20lが接続される。そのため、第7通信装置20g〜第12通信装置20lは、「2」つの通信装置20を介してサーバ10に接続され、第3通信装置20c〜第6通信装置20fは、「1」つの通信装置20を介してサーバ10に接続される。一方、第1通信装置20a、第2通信装置20bは、サーバ10に直接接続されているので、「0」の通信装置20を介してサーバ10に接続されているといえる。
【0014】
ここで、サーバ10との間に接続された通信装置20の数が同一の通信装置20は、同一階層の通信装置20といえる。また、サーバ10との間に接続された通信装置20の数が少ない階層ほど「上位」であり、通信装置20の数が多い階層ほど「下位」である。図1の場合、第1通信装置20a、第2通信装置20bが、サーバ10の階層の次に上位の階層に含まれ、第7通信装置20g〜第12通信装置20lが、最も下位の階層に含まれる。さらに、第7通信装置20g〜第12通信装置20lには、複数の端末装置30が接続される。なお、ピラミッド状に接続された通信装置20の階層の数は、「3」に限定されない。また、各階層に含まれた通信装置20の数は、図1と異なっていてもよい。さらに、上位の階層に含まれた通信装置20に端末装置30が接続されてもよい。
【0015】
サーバ10は、データが含まれたフレームを送信する。データは任意のものでよく、フレームの最終的な宛先は、端末装置30である。また、送信は、ユニキャスト送信でもよく、マルチキャスト送信でもよく、ブロードキャスト送信でもよい。通信装置20は、前述のごとく、レイヤ2スイッチ、スイッチングハブであり、フレームを転送する機能を有する。また、通信装置20は、フロー制御を実行可能である。フロー制御は、2つのノード間において高速な送信側が低速な受信側をオーバーランさせてしまうことを防止するようデータレートを管理するプロセスであり、その一例がバックプレッシャである。バックプレッシャとは、通信装置20内のバッファがオーバーフローになりそうになると、送信元に衝突信号を意図的に送信し、送信元にフレームの送信を抑制させる方式である。端末装置30は、ユーザ等によって操作させる電子機器であり、通信装置20を介してサーバ10からのフレームを受信する。端末装置30は、受信したフレームに含まれたデータに応じた処理を実行する。
【0016】
このような通信システム100の構成において、サーバ10から通信装置20を介して端末装置30にブロードキャストフレームを送信する場合を想定する。例えば、サーバ10は、ブロードキャストフレームを第1通信装置20aに送信し、第1通信装置20aは、受信したブロードキャストフレームを第3通信装置20cに送信する。また、第3通信装置20cは、受信したブロードキャストフレームを第7通信装置20gに送信し、第7通信装置20gは、受信したブロードキャストフレームを第1端末装置30aに送信する。第1端末装置30aにおいて処理能力が低下した場合、受信可能なデータレートが低下する。
【0017】
これにより、第7通信装置20gは、第3通信装置20cから、高速なデータレートでブロードキャストフレームを受信しているにもかかわらず、第1端末装置30aに、低速なデータレートでしかブロードキャストフレームを送信できない。その結果、第7通信装置20gの送信バッファがオーバーフローしそうになるので、第7通信装置20gは、第3通信装置20cに対してバックプレッシャを実行して、第3通信装置20cのデータレートを低下させる。その後、第1端末装置30aにおける処理能力の低下が回復すると、第7通信装置20gは、第3通信装置20cに対するバックプレッシャを解除する。その結果、もとのデータレートへの復帰が実現される。
【0018】
ここで、第7通信装置20gと第1端末装置30aの間のケーブルに障害、例えば短絡が発生した場合も、第7通信装置20gの送信バッファがオーバーフローしそうになるので、第7通信装置20gは、第3通信装置20cに対してバックプレッシャを実行する。なお、前述の第1端末装置30aの処理能力が低下した場合と異なって、ケーブルの障害は回復しない。そのため、バックプレッシャの実行によって、第3通信装置20cの送信バッファもオーバーフローしそうになり、第3通信装置20cは、第1通信装置20aに対してバックプレッシャを実行する。このように、送信バッファのオーバーフローが上位の階層まで伝播し、サーバ10がブロードキャストフレームを送信できなくなる。その結果、通信システム100全体の通信が停止されてしまう。このような状況の発生を抑制するために、通信装置20は、下記の処理を実行する。
【0019】
図2は、通信装置20の構成を示す。通信装置20は、上位装置40、下位装置50と総称される第1下位装置50a、第2下位装置50b、第3下位装置50c、第N−1下位装置50n−1に接続される。通信装置20は、ポート60と総称される第1ポート60a、第2ポート60b、第3ポート60c、第4ポート60d、第Nポート60n、スイッチ部62、表示部64を含む。スイッチ部62は、送信バッファ66と総称される第1送信バッファ66a、第2送信バッファ66b、第3送信バッファ66c、第4送信バッファ66d、第N送信バッファ66n、第1検出部68、第2検出部70、制御部72を含む。
【0020】
上位装置40は、通信装置20よりも上位の階層に配置された他の通信装置20あるいはサーバ10であり、下位装置50は、通信装置20よりも下位の階層に配置された他の通信装置20あるいは端末装置30である。ポート60は、LANケーブルを接続可能であり、LANケーブルを介して上位装置40あるいは下位装置50を接続する。そのため、ポート60は、外部の上位装置40あるいは下位装置50との間でフレームを入出力するためのインターフェイスであるといえる。また、各ポート60には、フレームを送信する際に使用される送信ピン(TDピン)と、フレームを受信する際に使用される受信ピン(RDピン)が含まれる。
【0021】
スイッチ部62は、1つのポート60において入力したフレームの宛先MACアドレスをもとに送信先のポート60を決定し、決定したポート60に当該フレームを転送する。なお、ブロードキャストフレームの場合、スイッチ部62は、入力したポート60以外のポート60にブロードキャストフレームを転送する。例えば、第1ポート60aからブロードキャストフレームを入力した場合、スイッチ部62は、第2ポート60bから第Nポート60nにブロードキャストフレームを転送する。また、第4ポート60dからブロードキャストフレームを入力した場合、スイッチ部62は、第1ポート60aから第3ポート60c、第Nポート60nにブロードキャストフレームを転送する。ここで、転送する際、転送すべきフレームは送信バッファ66に一旦蓄積される。送信バッファ66は、ポート60と1対1で対応づけられて配置される。例えば、第1ポート60aに対応するように第1送信バッファ66aが設けられる。他の送信バッファ66も同様である。
【0022】
第1検出部68は、各ポート60のリンクアップを検出する。これは、フレームの送信に使用するポート60のリンクアップを検出することに相当する。例えば、リンクアップの検出は、RDピンにおいてリンクパルス信号を受信しているか否かで判定され、受信していれば、リンクアップが検出される。第1検出部68は、ポート60毎にリンクアップを検出した場合、それを第2検出部70に通知する。
【0023】
第2検出部70は、第1検出部68からの通知を受けつけた場合、リンクアップが検出されたポート60に対応した送信バッファ66の空き容量を確認する。例えば、第2ポート60bのリンクアップが検出された場合、第2検出部70は、第2送信バッファ66bの空き容量を確認する。空き容量が第1しきい値よりも小さい場合、第2検出部70は、当該送信バッファ66におけるオーバーフローへの接近を検出する。第2検出部70は、送信バッファ66におけるオーバーフローへの接近を検出した場合、それを制御部72に通知する。
【0024】
制御部72は、第2検出部70からの通知を受けつけた場合、オーバーフローへの接近が検出された送信バッファ66に対応したポート60において送信失敗が検出されているか否かを確認する。送信失敗を検出するために、制御部72は、送信カウンタと受信カウンタとをポート60毎に備える。送信カウンタは、一定期間、例えば、100msecの間に当該ポート60から送信したフレーム数を計数する。一方、受信カウンタは、同一の一定期間に当該ポート60において受信したフレーム数を計数する。フレームとしてブロードキャストフレームを対象にした場合、各通信装置20は、1つのポート60においてブロードキャストフレームを受信すると、残りのポート60からブロードキャストフレームを転送する。
【0025】
送信失敗の確認対象のポート60が第2ポート60bである場合、送信失敗が発生していなければ、第2ポート60b以外のポート60での受信カウンタの合計値と、第2ポート60bでの送信カウンタの値が等しくなるべきである。このことを利用し、制御部72は、送信失敗の確認対象のポート60以外のポート60(以下、「受信側のポート60」という)での受信カウンタの合計値と、送信失敗の確認対象のポート60(以下、「送信側のポート60」という)での送信カウンタの値との差異が第2しきい値よりも小さい場合、送信側のポート60において送信失敗が非検出であると判定する。
【0026】
一方、制御部72は、差異が第2しきい値以上である場合、特に、受信カウンタの合計値が送信カウンタの値よりも大きい場合、送信側のポート60において送信失敗を検出する。ケーブルに短絡等の障害が発生している場合、送信側のポート60からブロードキャストフレームを送信しても、障害箇所でブロードキャストフレームが反射するので、送信が完了せず、送信カウンタの値が増加しないからである。なお、制御部72は、差異が第2しきい値以上である場合、すぐに送信失敗を検出しなくてもよい。例えば、制御部72は、所定の回数連続して、差異が第2しきい値以上である場合に、送信失敗を検出してもよい。所定の回数の一例は、「4」である。
【0027】
その後、制御部72は、送信側のポート60において送信失敗が非検出であると判定した場合、受信側のポート60を介して、バックプレッシャ等のフロー制御を実行する。なお、フロー制御には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。一方、制御部72は、送信側のポート60において送信失敗が検出された場合、受信側のポート60を介したフロー制御を非実行とする。この場合、制御部72は、送信側のポート60から送信すべきフレームを破棄する。ケーブルの障害が発生している場合、ケーブルを交換しなければ、データレートは回復しない。そのため、フロー制御を実行しても、フロー制御のためのフレームが無駄に受信側のポート60から送信されるだけになり、そのようなフレームによって帯域が消費されてしまう。また、フロー制御をされた上位装置40は、送信を待機した後、同フレームを再送処理するので、これも帯域の消費、上位装置40でのオーバーフロー、通信システム100全体の通信停止につながる。これらを抑制するために、送信側のポート60において送信失敗が検出された場合、つまりケーブルの障害の発生を推定した場合、制御部72は、フロー制御を実行しない。
【0028】
さらに、制御部72は、受信側のポート60を介したフロー制御を非実行とした場合、通信装置20を再起動させない限り、フロー制御の非実行を継続する。つまり、送信側のポート60に対するリンクアップの検出、オーバーフローへの接近の検出、送信失敗の検出を実行せずに、制御部72は、フロー制御を実行しないままにする。前述のごとく、ケーブルを交換しない限り、ケーブルの障害は復旧しないからである。なお、制御部72は、第2検出部70からの通知に応じて、送信側のポート60、受信側のポート60を変更しながら、前述の処理を実行する。
【0029】
表示部64は、制御部72が送信失敗を検出した場合、制御部72からの通知を受けつける。表示部64は、複数のポート60のそれぞれに対応したLED(Light Emitting Diode)を備え、通知において示されたポート60に対応したLEDを点灯あるいは点滅表示させる。これは、LEDによって示されたポート60に接続したケーブルにおいて短絡等の障害が発生していることを通知することに相当する。
【0030】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0031】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図3は、通信装置20によるフロー制御の実行手順を示すフローチャートである。第1検出部68がポート60のリンクアップを検出した場合(S10のY)、第2検出部70は、当該ポート60に対応した送信バッファ66の空き容量を確認する(S12)。オーバーフローに接近し(S14のY)、送信失敗を検出しない場合(S16のN)、制御部72は、フロー制御を実行する(S18)。一方、送信失敗を検出した場合(S16のY)、制御部72は、フロー制御を実行しない(S20)。第1検出部68がポート60のリンクアップを検出しない場合(S10のN)、あるいはオーバーフローに接近していない場合(S14のN)、処理は終了される。
【0032】
本実施例によれば、オーバーフローへの接近を検出しても、送信失敗を検出すれば、フロー制御を実行しないので、無駄なフレームの送信を停止できる。また、無駄なフレームの送信が停止されるので、ケーブルに障害が発生しても、通信システム全体の通信停止を抑制できる。また、フロー制御の非実行を決定した場合、フロー制御の非実行を維持するので、リンクアップ、オーバーフローへの接近、送信失敗を判定するための処理を不要にできる。また、これらの処理が不要になるので、処理量を抑制できる。また、ケーブルの障害発生をLEDにて通知するので、ケーブルの交換を促すことができる。また、フロー制御を実行しないので、上位装置における再送信の待機を回避できる。また、上位装置における再送信の待機が回避されるので、上位装置におけるオーバーフローを抑制できる。
【0033】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0034】
10 サーバ、 20 通信装置、 30 端末装置、 40 上位装置、 50 下位装置、 60 ポート、 62 スイッチ部、 64 表示部、 66 送信バッファ、 68 第1検出部、 70 第2検出部、 72 制御部、 100 通信システム。
図1
図2
図3