特許第6558190号(P6558190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558190
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】シートリクライニング装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20190805BHJP
   A47C 1/024 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B60N2/22
   A47C1/024
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-195364(P2015-195364)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-65579(P2017-65579A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野口 雅生
(72)【発明者】
【氏名】二本松 英雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 康敬
【審査官】 仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−150035(JP,A)
【文献】 特開2007−307182(JP,A)
【文献】 特開2004−322922(JP,A)
【文献】 特開2013−256256(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0228913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
A47C 1/00 − 1/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション側に固着された固定部材及びシートバック側に固着され前記固定部材に回動自在に支持された回動部材を有し、前記固定部材に対する前記回動部材の回動を規制するロック状態及び許容するロック解除状態に切替自在なリクライニングユニットと、
前記固定部材と同心で該固定部材に回動自在に支持された伝達レバーと、
ロック操作位置及びロック解除操作位置の間で前記シートクッション側に回動自在に支持された解除操作レバーと、
突部を有し、両端部が前記伝達レバー及び前記解除操作レバーにそれぞれ回動自在に支持され、前記解除操作レバーの前記ロック操作位置から前記ロック解除操作位置への回動に伴い前記伝達レバーを介して前記リクライニングユニットを前記ロック状態から前記ロック解除状態に切り替えるリンクと、
前記シートバック側に一体回動するように連結され、前記回動部材の軸線を中心とする周方向に延びるとともに前記シートクッションに対する前記シートバックの回動位置がロック解除保持領域に到達することで前記解除操作レバーが前記ロック解除操作位置にあるときの前記突部を乗り上げさせるロック解除保持部を有する保持プレートとを備えた、シートリクライニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートリクライニング装置において、
前記保持プレートは、前記回動部材に直に固着された、シートリクライニング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシートリクライニング装置において、
前記解除操作レバー及び前記リンクの端部は、
前記解除操作レバーに突設された係合凸部と、
前記リンクに形成され前記係合凸部が挿入された係合凹部であって、前記解除操作レバーの前記ロック解除操作位置への回動に伴い前記リンク及び前記伝達レバーを介して前記リクライニングユニットが前記ロック解除状態へと切り替わるように前記係合凸部に押圧され、前記リンク及び前記伝達レバーと共に前記リクライニングユニットが前記ロック解除状態にあるときに前記解除操作レバーの前記ロック操作位置への回動を許容するように前記係合凸部の移動を許容する係合凹部とで回動自在に支持された、シートリクライニング装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のシートリクライニング装置において、
前記固定部材及び前記回動部材は、前記シートクッション側としてのクッションサイドフレーム及び前記シートバック側としてのバックサイドフレームにそれぞれ固着されており、
前記保持プレートは、シートの幅方向において前記バックサイドフレームよりも前記クッションサイドフレームに近い側で前記回動部材に固着された、シートリクライニング装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のシートリクライニング装置において、
前記保持プレートは、前記ロック解除保持部に乗り上げた前記突部が前記ロック解除保持部を進行するに従い前記リクライニングユニットの解除ストロークを漸増する解除ストローク調整範囲を有した、シートリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートリクライニング装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。このシートリクライニング装置は、クッションフレーム(クッション側アーム)及びバックフレーム(バック側アーム)の間に介設されたリクライニングユニットを備える。このリクライニングユニットは、シートバックが起立状態と最後傾状態との間であるリクライニングロック範囲を占めるときは任意の角度でロックあるいはロック解除でき、起立状態と前倒し状態との間である非ロック範囲を占めるときはフリー回動する。また、シートリクライニング装置は、リクライニングユニットをロック状態からロック解除状態に切替操作するためのロック解除レバーを備える。さらに、シートリクライニング装置は、ロック解除レバーをロック解除する方向へ回動させたときに該ロック解除レバーの回動方向とは反対方向へ回動するようにロック解除レバーに長孔及びピンを介して連結されてロック解除レバーがロック方向へ回動するのを拘束する拘束レバーを備える。さらにまた、シートリクライニング装置は、バックフレームに設けられ、拘束レバーを押圧する押圧部を備える。
【0003】
このような構成にあって、ロック解除レバーのロック解除操作に伴い拘束レバーがロック解除位置を占めた状態で、シートバックを前倒しすると、押圧部が拘束レバーを押圧することにより該拘束レバーと共にロック解除レバーがロック解除位置に保持され、リクライニングユニットのロック解除が継続維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−307182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、シートバックの前倒し状態で押圧部が拘束レバーを保持(押圧)することによってロック解除レバーをロック解除位置に保持している。この場合、シートバックを前倒し状態から起立させようとすると、押圧部から解放された拘束レバーと共にロック解除レバーがロック位置に向かって回動しようとする。このとき、シートバックの前倒し状態がリクライニングユニットの非ロック範囲を占めていることで、ロック解除レバーがロック解除位置に保持される。換言すれば、シートバックの前倒し状態が非ロック範囲を占めるリクライニングユニットを採用する必要があり、設計の自由度が損なわれることになっている。
【0006】
本発明の目的は、設計の自由度をより向上させることができるシートリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するシートリクライニング装置は、シートクッション側に固着された固定部材及びシートバック側に固着され前記固定部材に回動自在に支持された回動部材を有し、前記固定部材に対する前記回動部材の回動を規制するロック状態及び許容するロック解除状態に切替自在なリクライニングユニットと、前記固定部材と同心で該固定部材に回動自在に支持された伝達レバーと、ロック操作位置及びロック解除操作位置の間で前記シートクッション側に回動自在に支持された解除操作レバーと、突部を有し、両端部が前記伝達レバー及び前記解除操作レバーにそれぞれ回動自在に支持され、前記解除操作レバーの前記ロック操作位置から前記ロック解除操作位置への回動に伴い前記伝達レバーを介して前記リクライニングユニットを前記ロック状態から前記ロック解除状態に切り替えるリンクと、前記シートバック側に一体回動するように連結され、前記回動部材の軸線を中心とする周方向に延びるとともに前記シートクッションに対する前記シートバックの回動位置がロック解除保持領域に到達することで前記解除操作レバーが前記ロック解除操作位置にあるときの前記突部を乗り上げさせるロック解除保持部を有する保持プレートとを備える。
【0008】
この構成によれば、前記リクライニングユニットが前記ロック状態にあるとき、前記解除操作レバーを前記ロック操作位置から前記ロック解除操作位置へと回動させることで、前記リンク及び前記伝達レバーを介して前記リクライニングユニットが前記ロック解除状態へと切り替わる。これにより、前記シートクッションに対する前記シートバックの回動位置、即ちシートバックの傾斜角度が調整可能となる。また、このとき、前記シートクッションに対する前記シートバックの回動位置が前記ロック解除保持領域に到達すると、前記ロック解除保持部が前記突部を乗り上げさせることで、前記シートバックの回動に関わらず前記リンクが前記伝達レバーと共に前記シートクッションに対する姿勢を維持する。つまり、前記シートバックを前倒し状態から起立させても、前記シートクッションに対する前記シートバックの回動位置が前記ロック解除保持領域にある限り、前記リクライニングユニットは前記ロック解除状態を維持する。このように、前記リクライニングユニットの仕様に依存することなく、前記保持プレートによる前記ロック解除保持領域の設定によって前記リクライニングユニットを前記ロック解除状態に維持させることができ、設計の自由度の向上が可能となる。
【0009】
上記シートリクライニング装置について、前記保持プレートは、前記回動部材に直に固着されることが好ましい。
この構成によれば、前記保持プレートは、前記回動部材(リクライニングユニット)に集約配置されることで、装置全体としてよりコンパクト化することができる。
【0010】
上記シートリクライニング装置について、前記解除操作レバー及び前記リンクの端部は、前記解除操作レバーに突設された係合凸部と、前記リンクに形成され前記係合凸部が挿入された係合凹部であって、前記解除操作レバーの前記ロック解除操作位置への回動に伴い前記リンク及び前記伝達レバーを介して前記リクライニングユニットが前記ロック解除状態へと切り替わるように前記係合凸部に押圧され、前記リンク及び前記伝達レバーと共に前記リクライニングユニットが前記ロック解除状態にあるときに前記解除操作レバーの前記ロック操作位置への回動を許容するように前記係合凸部の移動を許容する係合凹部とで回動自在に支持されることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、例えば前記シートクッションに対する前記シートバックの回動位置が前記ロック解除保持領域にあったとしても、前記解除操作レバーは、前記係合凹部内で前記係合凸部を移動させつつ、前記ロック操作位置への回動が可能である。従って、例えば前記解除操作レバーが外力の影響を受けて前記ロック解除操作位置から前記ロック操作位置に向かって回動したとしても、これに連動して前記リクライニングユニットがロック状態に切り替わることを抑制できる。
【0012】
上記シートリクライニング装置について、前記固定部材及び前記回動部材は、前記シートクッション側としてのクッションサイドフレーム及び前記シートバック側としてのバックサイドフレームにそれぞれ固着されており、前記保持プレートは、シートの幅方向において前記バックサイドフレームよりも前記クッションサイドフレームに近い側で前記回動部材に固着されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、前記保持プレートは、前記バックサイドフレームよりも前記クッションサイドフレームに近い側に配置されることで、装置全体としてよりコンパクト化することができる。
上記シートリクライニング装置について、前記保持プレートは、前記ロック解除保持部に乗り上げた前記突部が前記ロック解除保持部を進行するに従い前記リクライニングユニットの解除ストロークを漸増する解除ストローク調整範囲を有することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、前記解除ストローク調整範囲により、前記ロック解除保持部に乗り上げた前記突部が前記ロック解除保持部を進行するに従い前記解除ストロークが漸増されることで、前記リクライニングユニットの前記ロック解除状態をより安定的に維持できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、設計の自由度をより向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】シートリクライニング装置の一実施形態が適用されるシートの側面図。
図2】同実施形態のシートリクライニング装置についてその構造を示す分解斜視図。
図3】(a)、(b)は、同実施形態のシートリクライニング装置についてその構造を示す側面図及び断面図。
図4】同実施形態のシートリクライニング装置についてその動作を示す側面図。
図5】同実施形態のシートリクライニング装置についてその動作を示す側面図。
図6】同実施形態のシートリクライニング装置についてその動作を示す側面図。
図7】同実施形態のシートリクライニング装置についてその動作を示す側面図。
図8】変形形態のシートリクライニング装置についてその構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、シートリクライニング装置の一実施形態について説明する。なお、以下では、シートの前後方向を「前後方向」という。また、シートの幅方向における内側及び外側をそれぞれ「内側」及び「外側」という。
【0018】
図1に示すように、車両フロア1には、乗員の着座部を形成するシート2が設置されている。このシート2は、座面を形成するシートクッション3と、該シートクッション3の後端部に略円盤状のリクライニングユニット20を介して中心線O1の周りを傾動(回動)自在に支持されたシートバック4とを備えて構成される。そして、シートクッション3に対するシートバック4の傾斜角度は、シートバック4が前方に略沿うように延びる前倒し位置から後方に略沿うように延びる大倒し位置までの範囲に機械的に制限されている。また、シートクッション3に対するシートバック4の傾斜角度の範囲は、前倒し位置を含む前方寄りのロック解除保持領域と、大倒し位置を含む後方寄りの調整領域とに二分されている。
【0019】
本実施形態では、前倒し位置から大倒し位置までの範囲が略180°に設定されており、そのうちの調整領域が120°を若干下回るように設定されている。ロック解除保持領域では、シートクッション3に対するシートバック4の回動が可能な状態にリクライニングユニット20が保持されている。調整領域では、シートバック4の傾斜角度がリクライニングユニット20によって所定角度ごとに多段階で調整・保持可能となっている。
【0020】
図2及び図3(a)、(b)に示すように、リクライニングユニット20は、シートクッション3の側部後部の骨格をなすクッションサイドフレーム11と、シートバック4の側部下部の骨格をなすバックサイドフレーム12との間に介設されている。バックサイドフレーム12は、クッションサイドフレーム11の内側に配置されている。
【0021】
クッションサイドフレーム11は、例えば金属板からなり、上方に向かって突出する略円弧板状の連結部11aを有するとともに、該連結部11aの中心(中心線O1)を中心とする径方向に前方及び後方に向かって突出する前方規制片11b及び後方規制片11cを有する。一方、バックサイドフレーム12は、例えば金属板からなり、クッションサイドフレーム11に向かって突出する略円弧板状の連結部12aを有するとともに、該連結部12aの上方でその中心(中心線O1)を中心とする周方向に延在する規制片12bを有する。
【0022】
リクライニングユニット20は、連結部11aと略同心でクッションサイドフレーム11に固着された固定部材としての略円盤状の第1ディスク21と、連結部12aと略同心でバックサイドフレーム12に固着された回動部材としての略円盤状の第2ディスク22とを備える。第2ディスク22は、第1ディスク21に軸支された状態で軸線方向に抜け止めされている。これにより、バックサイドフレーム12がリクライニングユニット20を介してクッションサイドフレーム11に回動自在に支持される。このとき、規制片12bは、連結部11a及びリクライニングユニット20よりも外周側に位置しており、その中心線O1周りの回動軌跡上に前方規制片11b及び後方規制片11cが位置する。つまり、シートバック4の前倒れに伴い規制片12bが前方規制片11bに当接する位置が前倒し位置に一致し、シートバック4の後倒れに伴い規制片12bが後方規制片11cに当接する位置が大倒し位置に一致する。
【0023】
クッションサイドフレーム11、バックサイドフレーム12及びリクライニングユニット20には、中心線O1に沿って軸線の延びる段付き略柱状の操作軸31が貫通する。この操作軸31は、第1ディスク21に収容されたカム(図示略)と一体回動するように連結されている。このカムは、例えば中心線O1を中心とする径方向に移動自在に第1ディスク21に収容されたポール(図示略)に連結されており、回動に伴いポールを進退作動させる。リクライニングユニット20は、中心線O1を中心とするポールの径方向への進行に伴い第2ディスク22に形成された内歯車22aと噛合することで、第1及び第2ディスク21,22の相対回動、即ちクッションサイドフレーム11に対するバックサイドフレーム12の回動を規制する(ロック状態)。一方、リクライニングユニット20は、中心線O1を中心とするポールの径方向への退行に伴い内歯車22aとの噛合が外れることで、第1及び第2ディスク21,22の相対回動、即ちクッションサイドフレーム11に対するバックサイドフレーム12の回動を許容する(ロック解除状態)。なお、リクライニングユニット20は、第1ディスク21及びカムの間に介装される復帰スプリング23を備えており、該復帰スプリング23の付勢力により通常はロック状態に保持されている。
【0024】
クッションサイドフレーム11の上端部には、その外側面において例えば金属板からなるブラケット32が接合されている。また、操作軸31のクッションサイドフレーム11を回動自在に貫通する外側の先端部は、例えば金属板からなる伝達レバー33に一体回動するように嵌挿されている。この伝達レバー33は、中心線O1を中心とする後方寄りの径方向に延出するレバー凸片33aを有する。また、操作軸31の伝達レバー33を更に貫通する外側の先端部には、例えば捩りコイルスプリングからなる復帰スプリング34が巻回されている。この復帰スプリング34の両端末は、操作軸31及びブラケット32にそれぞれ掛止されており、該復帰スプリング34の付勢力によりロック状態に相当する回動位置に操作軸31及び伝達レバー33等が保持されている。換言すれば、復帰スプリング34は、ロック状態において、カムに対し操作軸31に遊びが生じないようにこれを付勢する。なお、伝達レバー33が回動すると、これに連動して操作軸31及びカムが回動することはいうまでもない。本実施形態では、伝達レバー33(及びカム)が図3(a)に示す回動位置から図示時計回りに回動することで、リクライニングユニット20が前述のロック状態からロック解除状態に切り替わるようになっている。
【0025】
伝達レバー33の下方となるクッションサイドフレーム11の下端部には、中心線O1と平行な軸線O2の周りに、例えば金属板からなる解除操作レバー35が支持ピン36により回動自在に支持されている。支持ピン36には、例えば捩りコイルスプリングからなる復帰スプリング37が巻回されている。この復帰スプリング37の両端末は、クッションサイドフレーム11及び解除操作レバー35にそれぞれ掛止されており、該復帰スプリング37の付勢力により解除操作レバー35が所定の回動位置(以下、「ロック操作位置」ともいう)に保持されている。解除操作レバー35は、ロック操作位置において軸線O2を中心とする径方向に前方に向かって延出する略弓形のハンドル部35aを有するとともに、後方に向かって延出するレバー凸片35bを有する。
【0026】
伝達レバー33のレバー凸片33a及び解除操作レバー35のレバー凸片35bには、例えば金属板からなる略アーム状のリンク38の両端部がそれぞれ回動自在に支持されている。すなわち、レバー凸片33a及びリンク38の上端部は、それらを貫通する支持ピン39により中心線O1と平行な軸線O3の周りに回動自在となっている。一方、リンク38の下端部には、係合凹部としての略直角台形状(異形孔形状)の係合孔38aが形成されている。そして、レバー凸片35b及びリンク38の下端部は、係合孔38aに遊挿されてレバー凸片35bに締結される係合凸部としての支持ピン41により中心線O1と平行な軸線O4の周りに回動自在となっている。
【0027】
なお、リンク38の上下方向中間部には、相対的に内側(クッションサイドフレーム11に近付く側)に変位させる略くの字状の折曲部38bが形成されており、該係合孔38aにおいてクッションサイドフレーム11に近接又は当接する。そして、折曲部38bには、突部としての略円柱状のピン42が内側に向かって突設されている。このピン42は、伝達レバー33の下方でクッションサイドフレーム11を貫通しており、その先端はリクライニングユニット20の外周側に到達している。
【0028】
解除操作レバー35がロック操作位置にあり、伝達レバー33がロック状態に相当する回動位置にあるとき、支持ピン41は係合孔38aの相対的に拡開された下端に位置する。従って、解除操作レバー35を図示時計回りに回動操作すると、支持ピン41により係合孔38aが下方に押圧されるリンク38が下方に向かって移動する。このとき、伝達レバー33は、レバー凸片33aが下方に引っ張られることで図示時計回りに、即ちリクライニングユニット20がロック解除状態に切り替わる方向に回動する。リクライニングユニット20のロック解除状態への切り替わりが完了したときの解除操作レバー35の回動位置を「ロック解除操作位置」ともいう。
【0029】
第2ディスク22には、例えば金属板からなる略環状の保持プレート45が固着されている。この保持プレート45は、第2ディスク22と同心の略円環状の固定部45aを有しており、該固定部45aにおいて第2ディスク22に嵌着されている。また、保持プレート45は、中心線O1を中心とする所定角度範囲で固定部45aから径方向に延出する略扇状のロック解除保持部45bを有する。このロック解除保持部45bの先端は、中心線O1を中心とする周方向に延びている。
【0030】
なお、保持プレート45は、バックサイドフレーム12よりも外側(クッションサイドフレーム11側)で第2ディスク22に固着されることで、クッションサイドフレーム11との離間距離が縮小されている。特に、ロック解除保持部45bの固定部45aとの境界部には、相対的に外側(クッションサイドフレーム11に近付く側)に変位させるテーパ45cが形成されており、これによりロック解除保持部45bがクッションサイドフレーム11に近付けられている。
【0031】
図4に示すように、リクライニングユニット20がロック解除状態にあるときのリンク38のピン42は、中心線O1を中心とするロック解除保持部45bの回動軌跡に隣接するその外周側に配置されている。従って、クッションサイドフレーム11に対するバックサイドフレーム12の図示時計回りの回動(シートバック4の前倒しに相当)に伴い第2ディスク22と一体回動する保持プレート45のロック解除保持部45bがピン42に到達すると、該ピン42を乗り上げさせてその上方への移動、即ちリクライニングユニット20がロック状態に切り替わる伝達レバー33の図示反時計回りの回動を規制する。これにより、リクライニングユニット20がロック解除状態に保持されることはいうまでもない。つまり、ロック解除保持領域は、ロック解除保持部45bがピン42に到達したシートバック4の前倒れの範囲に相当する。
【0032】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、図3(a)に示すように、解除操作レバー35がロック操作位置にあり、リクライニングユニット20がロック状態にあるとする。この状態で、解除操作レバー35を図示時計回りにロック解除操作位置へと回動操作する。このとき、図4への変化で示すように、レバー凸片35bと共に下方に移動する支持ピン41に係合孔38aの押圧されるリンク38が下方に移動して、レバー凸片33aにおいて下方に引っ張られる伝達レバー33が図示時計回りに回動する。これにより、リクライニングユニット20がロック解除状態に切り替わる。なお、この状態で解除操作レバー35を解放すれば、前述のようにリクライニングユニット20がロック状態に切り替わる(戻る)。つまり、シートバック4の傾斜角度が調整領域にあれば、前述の操作によって当該傾斜角度の調整・保持が可能である。
【0033】
また、図4から図5への変化で示すように、バックサイドフレーム12の図示反時計回りの回動(シートバック4の前倒しに相当)に伴い、保持プレート45のロック解除保持部45bがピン42に到達すると、該ピン42を乗り上げさせてその上方への移動、即ちリクライニングユニット20がロック状態に切り替わる伝達レバー33の図示反時計回りの回動を規制する。従って、図6への変化で示すように、シートバック4の前倒し位置に相当する回動位置までリクライニングユニット20がロック解除状態を保持する。この状態は、バックサイドフレーム12の図示時計回りの回動(シートバック4の後倒しに相当)に伴い、保持プレート45のロック解除保持部45bがピン42を通過するまで維持される。
【0034】
さらに、図6から図7への変化で示すように、係合孔38aとの遊びの範囲で支持ピン41を移動させつつ解除操作レバー35を図示反時計回りに回動させることで、該解除操作レバー35がロック操作位置に回動(復帰)する。
【0035】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、リクライニングユニット20がロック状態にあるとき、解除操作レバー35をロック操作位置からロック解除操作位置へと回動させることで、リンク38及び伝達レバー33を介してリクライニングユニット20がロック解除状態へと切り替わる。これにより、シートクッション3に対するシートバック4の回動位置、即ちシートバック4の傾斜角度が調整可能となる。また、このとき、シートクッション3に対するシートバック4の回動位置がロック解除保持領域に到達すると、ロック解除保持部45bがピン42を乗り上げさせることで、シートバック4の回動に関わらずリンク38が伝達レバー33と共にシートクッション3に対する姿勢を維持する。つまり、シートバック4を前倒し状態から起立させても、シートクッション3に対するシートバック4の回動位置がロック解除保持領域にある限り、リクライニングユニット20はロック解除状態を維持する。このように、リクライニングユニット20の仕様に依存することなく、保持プレート45によるロック解除保持領域の設定によってリクライニングユニット20をロック解除状態に維持させることができ、設計の自由度の向上が可能となる。
【0036】
例えば等角度間隔に配設された3つのポールを有して調整領域が最大でも120°に制限されるリクライニングユニット20であっても、これに依存することなく当該調整領域から繋がるロック解除保持領域を十分に確保できる。あるいは、ロック解除保持構造(第2ディスク22に形成される周知のロック解除保持用の環状ガイド等)を含まない簡易なリクライニングユニット20であっても、保持プレート45等によってロック解除保持領域を設定できる。換言すれば、基本的にリクライニングユニット20の仕様に依存することなくロック解除保持領域が設定可能であることで、該リクライニングユニット20の共通化が可能となり、コストを削減できる。
【0037】
(2)本実施形態では、保持プレート45は、第2ディスク22に直に固着されている。従って、保持プレート45は、第2ディスク22(リクライニングユニット20)に集約配置されることで、装置全体としてよりコンパクト化することができる。
【0038】
(3)本実施形態では、解除操作レバー35及びリンク38の端部は、解除操作レバー35に突設された支持ピン41と、リンク38に形成された係合孔38aとで回動自在に支持されている。そして、係合孔38aは、解除操作レバー35のロック解除操作位置への回動に伴いリンク38及び伝達レバー33を介してリクライニングユニット20がロック解除状態へと切り替わるように支持ピン41に押圧される。あるいは、係合孔38aは、リンク38及び伝達レバー33と共にリクライニングユニット20がロック解除状態にあるときに解除操作レバー35のロック操作位置への回動を許容するように支持ピン41の移動を許容する。これにより、例えばシートクッション3に対するシートバック4の回動位置がロック解除保持領域にあったとしても、解除操作レバー35は、係合孔38a内で支持ピン41を移動させつつ、ロック操作位置への回動が可能である。従って、例えば解除操作レバー35が外力の影響を受けてロック解除操作位置からロック操作位置に向かって回動したとしても、これに連動してリクライニングユニット20がロック状態に切り替わることを抑制できる。
【0039】
(4)本実施形態では、保持プレート45は、シートの幅方向においてバックサイドフレーム12よりも第1ディスク21に近い側で第2ディスク22に固着されている。従って、保持プレート45は、バックサイドフレーム12よりも第1ディスク21に近い側に配置されることで、装置全体としてよりコンパクト化することができる。また、保持プレート45は、バックサイドフレーム12等の固定前のリクライニングユニット20単体の状態で第2ディスク22に固着できるため、管理工数をより低減することができる。あるいは、バックサイドフレーム12は、保持プレート45の有無に関わらず第2ディスク22を固着できるため、ロック解除保持領域の設定の有無に応じた仕様の変更をより簡易に行うことができる。
【0040】
(5)本実施形態では、保持プレート45は、シートの幅方向において相対的にクッションサイドフレーム11に近付く側(外側)にロック解除保持部45bを変位させるテーパ45cが形成されている。従って、ロック解除保持部45bへの乗り上げに要するピン42の突出長を抑制することができる。
【0041】
(6)本実施形態では、リンク38は、シートの幅方向において相対的にクッションサイドフレーム11に近付く側(内側)にピン42を変位させる折曲部38bを有する。従って、ロック解除保持部への乗り上げに要するピン42の突出長を抑制することができる。
【0042】
(7)本実施形態では、保持プレート45の取付位置を変更することで、調整領域及びロック解除保持領域の境界位置を簡易に変更することができる。あるいは、前方規制片11b及び規制片12bによって規定される前倒し位置の変更に合わせてロック解除保持部45bの延在範囲を変更することで、ロック解除保持領域を簡易に変更することができる。
【0043】
(8)本実施形態では、基本的に板物1部品(保持プレート45)及びピン1個(ピン42)による構造の小変更で、ロック解除保持機能を追加できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0044】
図8に示すように、ロック解除保持部45bに解除ストローク調整範囲52を有する保持プレート51を採用してもよい。この解除ストローク調整範囲52は、ロック解除保持部45bの中心線O1を中心とする周方向一側(図示反時計回りの側)端、即ちピン42の乗り上げの開始点から周方向他側に向かうに従い中心線O1からの離間距離が漸増するように成形されている。従って、解除ストローク調整範囲52に乗り上げたピン42は、解除ストローク調整範囲52を進行するに従い、リンク38と共に下方に徐々に移動する。リンク38の下方への移動に伴うカムの回動により、ポール及び内歯車22aの外れ度合い(ポール及び内歯車22a間の径方向の隙間)が増加するように構成されている。つまり、「解除ストローク」とは、ポール及び内歯車22aの外れ度合いに相関するカムの回動量を意味する。このように、解除ストローク調整範囲52に乗り上げたピン42が解除ストローク調整範囲52を進行するに従い、解除ストロークが漸増することで、例えば製品ばらつきや組付ばらつきなどでカムが揺動したとしても、リクライニングユニット20のロック解除状態をより安定的に維持できる。
【0045】
・前記実施形態において、リクライニングユニット20の第2ディスク22及び保持プレート45は、一体形成されていてもよい。
・前記実施形態において、保持プレート45は、バックサイドフレーム12(シートバック4側)に固着されていてもよい。この場合、保持プレート45は、バックサイドフレーム12に一体形成されていてもよい。
【0046】
・前記実施形態において、リンク38の折曲部38bを省略してもよい。
・前記実施形態において、保持プレート45のテーパ45cを省略してもよい。
・前記実施形態において、保持プレート45は、シートの幅方向においてバックサイドフレーム12よりも内側(第1ディスク21から遠い側)で第2ディスク22に固着されてもよい。
【0047】
・前記実施形態において、リンク38の係合孔38aを省略して、その先端部が解除操作レバー35に回動のみが可能なように支持されていてもよい。この場合、ロック解除保持領域では、解除操作レバー35がシートバック4の回動に関わらずリンク38及び伝達レバー33と共にシートクッション3(クッションサイドフレーム11)に対する姿勢(ロック解除操作位置)を維持する。
【0048】
・前記実施形態において、保持プレート45は、第2ディスク22以外のバックサイドフレーム12(シートバック4側)の適宜箇所に固定されていてもよい。
・前記実施形態においては、クッションサイドフレーム11に第1ディスク21、伝達レバー33、解除操作レバー35、リンク38等を配置し、バックサイドフレーム12に第2ディスク22、保持プレート45等を配置したが、それらの配置関係は互いに逆であってもよい。
【0049】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)上記シートリクライニング装置において、
前記保持プレートは、シートの幅方向において相対的に前記クッションサイドフレームに近付く側に前記ロック解除保持部を変位させるテーパが形成された、シートリクライニング装置。
【0050】
この構成によれば、前記ロック解除保持部への乗り上げに要する前記突部の突出長を抑制することができる。
(ロ)上記シートリクライニング装置において、
前記リンクは、シートの幅方向において相対的に前記クッションサイドフレームに近付く側に前記突部を変位させる折曲部を有した、シートリクライニング装置。
【0051】
この構成によれば、前記ロック解除保持部への乗り上げに要する前記突部の突出長を抑制することができる。
【符号の説明】
【0052】
2…シート、3…シートクッション、4…シートバック、11…クッションサイドフレーム(シートクッション側)、12…バックサイドフレーム(シートバック側)、20…リクライニングユニット、21…第1ディスク(固定部材)、22…第2ディスク(回動部材)、33…伝達レバー、35…解除操作レバー、38…リンク、38a…係合孔(係合凹部)、41…支持ピン(係合凸部)、42…ピン(突部)、45,51…保持プレート、45b…ロック解除保持部、52…解除ストローク調整範囲。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8