特許第6558201号(P6558201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6558201-エアレスタイヤ 図000003
  • 特許6558201-エアレスタイヤ 図000004
  • 特許6558201-エアレスタイヤ 図000005
  • 特許6558201-エアレスタイヤ 図000006
  • 特許6558201-エアレスタイヤ 図000007
  • 特許6558201-エアレスタイヤ 図000008
  • 特許6558201-エアレスタイヤ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558201
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】エアレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   B60C7/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-205492(P2015-205492)
(22)【出願日】2015年10月19日
(65)【公開番号】特開2017-77744(P2017-77744A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】岩村 和光
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 信
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−037262(JP,A)
【文献】 特開2008−044445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/00、9/18、9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面を有する円筒状のトレッドリングを備えたエアレスタイヤであって、
前記トレッドリングには、その厚さ方向を貫通する複数の貫通孔と、補強体とが設けられており、
前記複数の貫通孔は、タイヤ周方向に間隔を空けて配置されており、
前記補強体は、タイヤ周方向に隣接する前記貫通孔間の領域をのびる第1補強体を含み、
前記第1補強体のタイヤ周方向の両端部は、前記貫通孔の内周面に露出することなく終端していることを特徴とするエアレスタイヤ。
【請求項2】
前記補強体は、タイヤ周方向に連続してのびる環状の第2補強体をさらに含み、
前記第2補強体は、前記貫通孔が形成されていない領域をのびている請求項1に記載のエアレスタイヤ。
【請求項3】
前記第2補強体は、複数の補強コードを含むプライである請求項2に記載のエアレスタイヤ。
【請求項4】
前記第2補強体の前記プライは、前記補強コードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻きつけられたジョイントレスプライである請求項3に記載のエアレスタイヤ。
【請求項5】
前記トレッドリングの横断面において、前記第1補強体が、前記第2補強体とタイヤ半径方向の同じ位置に設けられている請求項2乃至4のいずれかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項6】
前記第1補強体は、前記第2補強体の前記プライと同一の材料のプライである請求項2乃至5のいずれかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項7】
前記第1補強体は、複数の補強コードを含むプライである請求項1乃至5のいずれかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項8】
前記第1補強体は、金属板を含む請求項1乃至5のいずれかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項9】
前記複数の貫通孔は、タイヤ赤道上に設けられる請求項1乃至8のいずれかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項10】
前記複数の貫通孔は、第1のタイヤ周方向線上に配置された複数の第1貫通孔と、第2のタイヤ周方向線上に配置された複数の第2貫通孔とを含む請求項1乃至8のいずれかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項11】
前記第1補強体は、外側第1補強体と、そのタイヤ半径方向内側に配された内側第1補強体とを含み、前記外側第1補強体と前記内側第1補強体との間に、エラストマーからなるせん断層が配されている請求項1乃至10のいずれかに記載のエアレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水性と耐久性とを両立し、かつ、耐偏摩耗性を向上させたエアレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エアレスタイヤが種々提案されている。エアレスタイヤは、高圧空気を用いずに、自らの構造部材によって荷重を支持することができる。従って、エアレスタイヤは、パンクしないという利点を有している。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、円筒状のトレッドリングを備えたエアレスタイヤが記載されている。このトレッドリングには、厚さ方向を貫通する複数の貫通孔と、補強体とが設けられている。貫通孔は、エアレスタイヤの排水性を向上させ、補強体は、エアレスタイヤの耐久性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−044445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、補強体が貫通孔から浸透する水により腐食することを防止するために、環状の補強体を貫通孔からタイヤ幅方向に離間させて配置している。このため、特許文献1のトレッドリングの剛性は、タイヤ幅方向で不均一となり、偏摩耗が発生する要因となっていた。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、貫通孔間の領域をのびる複数の第1補強体を含むことを基本として、排水性と耐久性とを両立し、かつ、耐偏摩耗性を向上させたエアレスタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、接地面を有する円筒状のトレッドリングを備えたエアレスタイヤであって、前記トレッドリングには、その厚さ方向を貫通する複数の貫通孔と、補強体とが設けられており、前記複数の貫通孔は、タイヤ周方向に間隔を空けて配置されており、前記補強体は、タイヤ周方向に隣接する前記貫通孔間の領域をのびる第1補強体を含み、前記第1補強体のタイヤ周方向の両端部は、前記貫通孔の内周面に露出することなく終端していることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るエアレスタイヤにおいて、前記補強体は、タイヤ周方向に連続してのびる環状の第2補強体をさらに含み、前記第2補強体は、前記貫通孔が形成されていない領域をのびているのが望ましい。
【0009】
本発明に係るエアレスタイヤにおいて、前記第2補強体は、複数の補強コードを含むプライであるのが望ましい。
【0010】
本発明に係るエアレスタイヤにおいて、前記第2補強体の前記プライは、前記補強コードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻きつけられたジョイントレスプライであるのが望ましい。
【0011】
本発明に係るエアレスタイヤにおいて、前記トレッドリングの横断面において、前記第1補強体が、前記第2補強体とタイヤ半径方向の同じ位置に設けられているのが望ましい。
【0012】
本発明に係るエアレスタイヤにおいて、前記第1補強体は、前記第2補強体の前記プライと同一の材料のプライであるのが望ましい。
【0013】
本発明に係るエアレスタイヤにおいて、前記第1補強体は、複数の補強コードを含むプライであるのが望ましい。
【0014】
本発明に係るエアレスタイヤにおいて、前記第1補強体は、金属板を含むのが望ましい。
【0015】
本発明に係るエアレスタイヤにおいて、前記複数の貫通孔は、タイヤ赤道上に設けられるのが望ましい。
【0016】
本発明に係るエアレスタイヤにおいて、前記複数の貫通孔は、第1のタイヤ周方向線上に配置された複数の第1貫通孔と、第2のタイヤ周方向線上に配置された複数の第2貫通孔とを含むのが望ましい。
【0017】
本発明に係るエアレスタイヤにおいて、前記第1補強体は、外側第1補強体と、そのタイヤ半径方向内側に配された内側第1補強体とを含み、前記外側第1補強体と前記内側第1補強体との間に、エラストマーからなるせん断層が配されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエアレスタイヤは、トレッドリングに、その厚さ方向を貫通する複数の貫通孔と、補強体とが設けられている。このような貫通孔は、エアレスタイヤの排水性を向上させることができる。また、補強体は、トレッドリングの剛性を向上させることができ、その結果、エアレスタイヤの操縦安定性を向上させることができる。
【0019】
本発明において、補強体は、タイヤ周方向に隣接する貫通孔間の領域をのびる複数の第1補強体を含んでいる。このような第1補強体は、貫通穴により剛性が低下する貫通孔間の領域を、効率よく補強することができる。また、第1補強体は、その剛性を調整することで、トレッドリングのタイヤ幅方向の剛性を略均一にすることができ、エアレスタイヤの耐偏摩耗性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明において、各第1補強体のタイヤ周方向の両端部は、貫通孔の内周面に露出することなく終端している。このような第1補強体は、貫通孔から浸透する水に接触することがない。従って、第1補強体は、早期に腐食することがなく、エアレスタイヤの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のエアレスタイヤの一実施形態を示す全体斜視図である。
図2図1のトレッドリングの斜視図(一部破断図)である。
図3図2の補強体の部分斜視図である。
図4図1のトレッドリングのA−A線断面図である。
図5】他の実施形態の補強体の部分斜視図である。
図6】さらに他の実施形態のトレッドリングの斜視図(一部破断図)である。
図7】さらに他の実施形態のエアレスタイヤの全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1に示されるように、本実施形態のエアレスタイヤ1は、円筒状のトレッドリング2と、トレッドリング2のタイヤ半径方向内側に配されるハブ部3と、トレッドリング2とハブ部3とを連結する複数のスポーク4とを備えている。
【0023】
ハブ部3は、車軸に固定されるディスク部3aと、ディスク部3aの外周に形成された円周方向にのびる円筒部3bとを含んでいる。ハブ部3は、従来のタイヤホイールと同様に、例えば、スチール、アルミ合金又はマグネシウム合金等の金属材料によって形成され得る。
【0024】
各スポーク4は、板状の形状をなし、タイヤ周方向に複数設けられている。特に限定されるものではないが、スポーク4は、ポリウレタン等の高分子材料による注型成形体によって形成される。例えば、金型内に、予めトレッドリング2とハブ部3とが配置され、それらを連結するように、金型内に高分子材料が充填される。高分子材料が硬化することによって、トレッドリング2とハブ部3とを連結するスポーク4が形成される。なお、スポーク4の形状については、図示の態様以外にも、周知の様々な態様が採用され得る。
【0025】
本実施形態のトレッドリング2は、路面に接地する接地面5と、接地面5とは逆側に配され、かつ、ハブ部3側を向く内向面6とを有している。好ましい態様として、接地面5には、少なくとも1本の、本実施形態では2本の溝7が設けられている。このような溝7は、濡れた路面を走行する際、路面上の水を除去し、エアレスタイヤ1の排水性を向上させる。
【0026】
トレッドリング2には、接地面5から内向面6まで、その厚さ方向を貫通する複数の貫通孔8が設けられている。貫通孔8の断面形状は、例えば、円形状、楕円形状及び多角形状等の任意の形状から選択され得る。貫通孔8は、濡れた路面を走行する際、路面上の水を効率よく除去し、エアレスタイヤ1の排水性をより向上させる。
【0027】
本実施形態の貫通孔8は、例えば、溝7上に設けられている。貫通孔8が設けられる溝7の部分は、拡幅部9として、他の部分の溝幅に比して局部的に拡大している部分であるのが望ましい。拡幅部9は、濡れた路面を走行する際、路面上の水を除去し、エアレスタイヤ1の排水性をさらに向上させる。
【0028】
本実施形態の複数の貫通孔8は、第1のタイヤ周方向線La上に配置された複数の第1貫通孔8aと、第2のタイヤ周方向線Lb上に配置された複数の第2貫通孔8bとを含んでいる。複数の第1貫通孔8a及び複数の第2貫通孔8bを含む複数の貫通孔8は、それぞれ、タイヤ周方向に間隔を空けて配置されているのが望ましい。
【0029】
図2には、トレッドリング2の単体の斜視図(一部破断図)が示されている。図2に示されるように、本実施形態のトレッドリング2は、接地面5と内向面6とを構成するトレッドゴム部10を含んでいる。トレッドゴム部10は、接地面5を構成しているため、路面に対する摩擦力や耐摩耗性に優れた硫黄加硫されたゴム組成物が、好適に採用され得る。
【0030】
本実施形態のトレッドリング2には、トレッドゴム部10の内部に配された補強体11が設けられている。補強体11は、例えば、タイヤ周方向に隣接する貫通孔8間の領域をタイヤ周方向に不連続にのびる第1補強体12と、貫通孔8が形成されていない領域をタイヤ周方向に連続してのびる環状の第2補強体13とを含んでいる。このような補強体11は、トレッドリング2の剛性を向上させることができ、その結果、エアレスタイヤ1の操縦安定性を向上させることができる。
【0031】
図3には、補強体11の部分斜視図が示されている。図3に示されるように、補強体11の第2補強体13は、複数の補強コード14を含むプライ13Pであるのが望ましい。補強コード14としては、例えば、スチールコードが好適に採用される。第2補強体13のプライ13Pは、例えば、補強コード14がタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻きつけられたジョイントレスプライである。このような第2補強体13は、軽量化と強度とを両立することができる。
【0032】
補強体11の第1補強体12は、複数の補強コード14を含むプライ12Pであるのが望ましい。第1補強体12のプライ12Pは、例えば、第2補強体13のプライ13Pと同一の材料のプライであり、補強コード14がタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻きつけられたジョイントレスプライである。このような第1補強体12は、第2補強体13と略等しい剛性を有し、トレッドリング2のタイヤ幅方向の剛性を略均一にすることができるので、エアレスタイヤ1の耐偏摩耗性を向上させることができる。
【0033】
第1補強体12のタイヤ周方向の両端部12eは、貫通孔8の内周面に露出することなく終端している。第1補強体12の各端部12eと貫通孔8の内周面との間には、例えば、加硫成形時にトレッドゴム部10(図2に示す)のゴム組成物が流入し、第1補強体12の各端部12eが貫通孔8の内周面に露出することを防止している。第1補強体12の各端部12eは、貫通孔8の内周面には露出していないので、貫通孔8から浸透する水に接触することない。従って、第1補強体12の補強コード14がスチールコードであっても、第1補強体12は、早期に腐食することがなく、エアレスタイヤ1の耐久性を向上させることができる。
【0034】
図2に示されるように、第1補強体12は、例えば、外側第1補強体15と、そのタイヤ半径方向内側に配された内側第1補強体17とを含んでいる。第2補強体13も同様に、例えば、外側第2補強体16と、そのタイヤ半径方向内側に配された内側第2補強体18とを含んでいる。
【0035】
外側第1補強体15及び外側第2補強体16と、内側第1補強体17及び内側第2補強体18との間に、エラストマーからなるせん断層19が配されているのが望ましい。本明細書において、「エラストマー」とは、常温付近でゴム弾性を示す全ての高分子物質の総称であり、代表的なものとして、加硫ゴム及び樹脂を含む概念である。このようなせん断層19は、エアレスタイヤ1の操縦安定性を維持しながら転がり抵抗を低減することができる。
【0036】
図4には、図1のA−A線断面図が示されている。図4に示されるように、トレッドリング2の横断面において、外側第1補強体15は、外側第2補強体16とタイヤ半径方向の同じ位置に設けられているのが望ましい。また、内側第1補強体17は、内側第2補強体18とタイヤ半径方向の同じ位置に設けられているのが望ましい。このような各第1補強体15,17及び各第2補強体16,18は、トレッドリング2のタイヤ幅方向の剛性を容易に略均一にすることができ、エアレスタイヤ1の耐偏摩耗性を向上させることができる。
【0037】
図2及び図4に示されるように、本実施形態の外側第1補強体15は、第1のタイヤ周方向線La(図1に示す)に沿って配された第1の外側第1補強体15aと、第2のタイヤ周方向線Lb(図1に示す)に沿って配された第2の外側第1補強体15bとを含んでいる。同様に、本実施形態の内側第1補強体17は、第1のタイヤ周方向線Laに沿って配された第1の内側第1補強体17aと、第2のタイヤ周方向線Lbに沿って配された第2の内側第1補強体17bとを含んでいる。
【0038】
本実施形態の外側第2補強体16は、第1の外側第1補強体15aのタイヤ幅方向外側に配された第1の外側第2補強体16aと、第2の外側第1補強体15bのタイヤ幅方向外側配された第2の外側第2補強体16bとを含んでいる。外側第2補強体16は、さらに、第1の外側第1補強体15aと第2の外側第1補強体15bとの間に配された第3の外側第2補強体16cとを含んでいる。
【0039】
同様に、本実施形態の内側第2補強体18は、第1の内側第1補強体17aのタイヤ幅方向外側に配された第1の内側第2補強体18aと、第2の内側第1補強体17bのタイヤ幅方向外側に配された第2の内側第2補強体18bとを含んでいる。内側第2補強体18は、さらに、第1の内側第1補強体17aと第2の内側第1補強体17bとの間に配された第3の内側第2補強体18cとを含んでいる。
【0040】
上述の各第1補強体15a,15b,17a,17b及び各第2補強体16a,16b,16c,18a,18b,18cは、それぞれ、個別のプライで構成され、トレッドゴム部10の内部に配設されるのが望ましい。このような補強体11は、各プライが個別に構成されるので、プライの一部が破損した場合でも、他のプライにその影響が広がることがない。
【0041】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【0042】
例えば、上記実施形態の貫通孔8は、タイヤ半径方向に沿って貫通していたが、この態様に限定されず、貫通孔8は、トレッドリング2の接地面5から内向面6まで、その厚さ方向を貫通していればよい。従って、貫通孔8は、例えば、タイヤ半径方向に対し傾斜していてもよく、また、トレッドリング2内で屈曲又は湾曲していてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、第1補強体12のプライ12Pと第2補強体13のプライ13Pとは、個別のプライとして構成されていたが、例えば、単一のプライとして構成されてもよい。この場合、この単一のプライには、貫通孔8と同心で、貫通孔8の最大径よりも大きい大径孔が設けられるのが望ましい。このような単一のプライを含む補強体11でも、大径孔の端面が貫通孔8の内周面に露出することがないので、補強体11が早期に腐食することがなく、エアレスタイヤ1の耐久性を向上させることができる。
【0044】
図5には、他の実施形態の補強体11Aの部分斜視図が示されている。図5に示されるように、この実施形態の補強体11Aは、第1補強体12Aが金属板12APを含んでいる。このような金属板12APは、板厚を調整することで第1補強体12Aの剛性を調整することができる。このため、金属板12APは、補強体11Aのタイヤ幅方向の剛性を容易に略均一にすることができ、補強体11Aを含むエアレスタイヤの耐偏摩耗性を向上させることができる。
【0045】
このような第1補強体12Aでも、タイヤ周方向の両端部12eを貫通孔8の内周面に露出することなく終端させている。従って、第1補強体12Aは、早期に腐食することが防止され得る。
【0046】
図6には、さらに他の実施形態のトレッドリング2Bの斜視図(一部破断図)が示されている。図6に示されるように、この実施形態のトレッドリング2Bは、複数の貫通孔8Bが、タイヤ赤道C上に形成されている。トレッドリング2Bは、例えば、接地面5Bに溝が設けられていない。このように、トレッドリング2Bは、貫通孔8Bの大きさや配置、さらに、トレッドリング2Bを含むエアレスタイヤの用途に応じて、溝を設けるか否か選択することができる。
【0047】
この実施形態のトレッドリング2Bは、外側第1補強体15Bのタイヤ半径方向外側に、最外側第1補強体20Bが配されている。同様に、トレッドリング2Bは、外側第2補強体16Bのタイヤ半径方向外側に、最外側第2補強体21Bが配されている。このようにせん断層19Bのタイヤ半径方向外側の補強体を2層構造にすることで、トレッドリング2Bの剛性は、より強いものとなり得る。
【0048】
各第1補強体15B,20B及び各第2補強体16B,21Bは、例えば、それぞれ、複数の補強コードを含むプライである。外側第1補強体15Bの補強コード及び最外側第1補強体20Bの補強コードは、タイヤ周方向に対して同じ傾斜角度(例えば、15〜65度)で配列されているが、傾斜の向きが互いに逆とされているのが望ましい。同様に、外側第2補強体16Bの補強コード及び最外側第2補強体21Bの補強コードは、タイヤ周方向に対して同じ傾斜角度(例えば、15〜65度)で配列されているが、傾斜の向きが互いに逆とされているのが望ましい。
【0049】
このような各第1補強体15B,20B及び各第2補強体16B,21Bは、トレッドリング2Bのタイヤ周方向剛性、タイヤ軸方向剛性及びねじれ剛性をバランスよく高め、トレッドリング2Bを効果的に補強することができる。
【0050】
この実施形態のトレッドリング2Bは、さらにせん断層19Bのタイヤ半径方向内側に、内側第1補強体17B及び内側第2補強体18Bが配されている。内側第1補強体17B及び内側第2補強体18Bも、それぞれ、複数の補強コードを含むプライであるのが望ましい。内側第1補強体17B及び内側第2補強体18Bのプライは、好ましくは、補強コードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻きつけられたジョイントレスプライである。
【0051】
図7には、さらに他の実施形態のエアレスタイヤ1Cの全体斜視図が示されている。図7に示されるように、この実施形態のエアレスタイヤ1Cは、上述のエアレスタイヤ1と共通するディスク部3a及び円筒部3bを含むハブ部3と、複数のスポーク4とを備えている。エアレスタイヤ1Cは、さらに、接地面5Cと内向面6Cとを有するトレッドリング2Cを備えている。
【0052】
トレッドリング2Cの接地面5Cには、3本の溝7Cと複数の貫通孔8Cとが設けられている。この実施形態の複数の貫通孔8Cは、第1のタイヤ周方向線La上に配置された複数の第1貫通孔8Caと、第2のタイヤ周方向線Lb上に配置された複数の第2貫通孔8Cbと、タイヤ赤道C上に配置された複数の第3貫通孔8Ccとを含んでいる。
【0053】
図示は省略されるが、この実施形態においても、トレッドリング2Cは、タイヤ周方向に隣接する第1貫通孔8Ca間、第2貫通孔8Cb間及び第3貫通孔8Cc間の各領域をタイヤ周方向にのびる第1補強体が設けられている。この第1補強体の両端部も、各貫通孔8Ca,8Cb,8Ccの内周面に露出することなく終端しているのは言うまでもない。
【実施例】
【0054】
図1〜4の基本構造をなすエアレスタイヤ(タイヤサイズ125/80R13に相当するタイヤ)が、表1の仕様に基づき試作され、排水性、耐久性及び耐偏摩耗性がテストされた。スポークは、ウレタン樹脂(熱硬化性樹脂)による注型成形法により、トレッドリング及びハブ部と一体成形された。テスト方法は、次の通りである。
【0055】
<排水性>
各試供タイヤが、小型乗用車に装着され、テストドライバーが、ウエット状態の舗装路面のテストコースを走行させた。このときの排水性に関する走行特性が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする指数であり、数値が大きい程、排水性が優れていることを示す。
【0056】
<耐久性>
ドラム試験機を用い、各試供タイヤの湿熱条件での耐久テストが下記の条件で行われ、テスト後の各試供タイヤを切断し、目視により第1補強体のプライに錆が発生していないか確認された。結果は、錆の「有」又は「無」で示され、錆が無い場合が、第1補強体に腐食が発生しておらず、耐久性が優れていることを示す。
荷重:1.5kN
速度:60km/h
【0057】
<耐偏摩耗性>
偏摩耗試験機を用い、各試供タイヤが、下記の条件で走行され、各走行条件での偏摩耗量の平均が計算された。結果は、比較例1を100とする指数であり、数値が大きい程、耐偏摩耗性が優れていることを示す。
荷重:1.5kN
走行条件:制動条件、駆動条件、自由転動条件、旋回条件
【0058】
テストの結果が表1に示される。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から明らかなように、実施例のエアレスタイヤは、比較例に比べて排水性、耐久性及び耐偏摩耗性をバランスよく向上させていることが確認された。
【符号の説明】
【0061】
1 エアレスタイヤ
2 トレッドリング
5 接地面
8 貫通孔
11 補強体
12 第1補強体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7