(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記高分解能検出態様により検出された前記容量変化量に基づいて、前記静電容量センサに接触しない状態でかつ前記静電容量センサに物が接近する状態である接近状態にあるか否かを判定する
請求項1または請求項2に記載の静電容量検出装置。
前記制御装置は、前記高分解能検出態様で連続して得られる複数の前記容量変化量それぞれについて、前記静電容量センサに物が接触する状態を示す接触状態、前記静電容量センサに接触しない状態でかつ前記静電容量センサに物が接近する状態である接近状態、及び前記静電容量センサに物が接近していない状態である非検知状態のいずれにあるかを判定し、複数の前記容量変化量それぞれについての判定結果のパターンに基づいて前記静電容量センサに接触した物の種類を判定する
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の静電容量検出装置。
前記制御装置は、前記判定結果の前記パターンに基づいて前記静電容量センサに接触した物または接近する物を特定したときの判定結果が水であるとき、前記高分解能検出態様に基づく判定を停止する
請求項4に記載の静電容量検出装置。
前記中間電位が前記初期電位から前記設定電位に至るまでの接続回数を前記第1接続回数または第2接続回数として検出するときの、前記設定電位は設定変更可能に構成され、
前記制御装置は、前記高分解能検出態様では、前記設定電位を第1設定電位に設定して前記容量変化量を検出し、前記低分解能検出態様では、前記設定電位を前記第1設定電位よりも高い第2設定電位に設定して前記容量変化量を検出する
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の静電容量検出装置。
複数の前記静電容量センサを備え、前記複数の静電容量センサの一つである第1静電容量センサと、前記複数の静電容量センサの他の一つである第2静電容量センサとは設定距離を隔てて配置され、
前記制御装置は、前記第1静電容量センサ及び前記第2静電容量センサのそれぞれについて前記容量変化量を検出して前記容量変化量に基づいて、前記静電容量センサに物が接触する状態である接触状態、前記静電容量センサに接触しない状態でかつ前記静電容量センサに物が接近する状態である接近状態、及び前記静電容量センサに物が接近していない状態である非検知状態のいずれにあるかを判定し、同期間に得られる前記第1静電容量センサの判定結果と前記第2静電容量センサの判定結果とを含めた総合判定結果のパターンに基づいて、前記第1静電容量センサ及び前記第2静電容量センサに接近する物の動きを検出する
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の静電容量検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜
図16を参照して、静電容量検出装置について説明する。
図1に示されるように、静電容量検出装置2は、例えば、車両ドアのドアハンドル1に装備される。この静電容量検出装置2は、ドアハンドル1に接触する人の手、またはドアハンドル1にかかる水を検出する。以下、ドアハンドル1内に内蔵される静電容量検出装置2について説明する。
【0025】
[基本構成]
図2を参照して、静電容量検出装置2の基本構成を説明する。静電容量検出装置2は、2個の静電容量センサと、制御装置11(
図1参照)とを備える。2個の静電容量センサのうちの一方は、車両ドアの解錠用センサ(以下、「アンロック用センサ10A」という。)であり、他方は、車両ドアの施錠用センサ(以下、「ロック用センサ10B」という。)である。アンロック用センサ10Aとロック用センサ10Bとは、予め設定された距離(設定距離)だけ離間する。
【0026】
なお、アンロック用センサ10Aとロック用センサ10Bとを区別せず説明するときは、単に静電容量センサ10という。アンロック用センサ10Aは、ドアハンドル1の中間部かつ内側(車両ドアの外面に向かう部分)に配置される。ロック用センサ10Bは、ドアハンドル1の前側かつ外側に配置される。
【0027】
静電容量センサ10は、平面または曲面を有する電極14を有する。好ましくは、当該電極14と同じ構造を有する平面または曲面の導電性部材が、当該電極14に対向し、かつ所定距離を隔てて配置される。このような静電容量センサ10は所定容量を有する。静電容量センサ10の静電容量は、直接または間接に物が接触すること、または当該静電容量センサ10の近辺に物が配置されることによって増大する。すなわち、静電容量センサ10は、外的要因(物の接触または接近)により静電容量が変化するコンデンサ(以下、これを「センサコンデンサCX」という。)を有する。
【0028】
制御装置11は、静電容量センサ10の静電容量の変化量に対応する量(以下、これを「容量変化量」という。)を検出する。
制御装置11は、アンロック用センサ10Aに接続される第1回路部12Aと、ロック用センサ10Bに接続される第2回路部12Bと、第1回路部12A及び第2回路部12Bを制御する制御部13とを備える。第1回路部12Aの基本構成と第2回路部12Bの基本構成とは同じである。一方、設定電位Vthの大きさ、基準コンデンサCSの静電容量の大きさ、電極14の大きさ等については、第1回路部12Aと第2回路部12Bとは異なる値を有する。
【0029】
第1回路部12Aは、基準コンデンサCSと、制御部13により動作制御される3つのスイッチ(以下、それぞれを「第1スイッチSW1」〜「第3スイッチSW3」という。)と、電位判定装置CPとを備える。
【0030】
基準コンデンサCSは、静電容量センサ10に直列に接続される。具体的には、基準コンデンサCSと静電容量センサ10とは第1電位源と第2電位源との間に直列に配置される。第1電位源は、第2電位源よりも高電位である。第2電位源は接地されうる。基準コンデンサCSの一端は、第1電位源に接続され、他端は、第2電位源に接続される。基準コンデンサCSと第2電位源との間に静電容量センサ10の電極14が接続される。電極14は、空間を介して第2電位源と容量結合される。静電容量センサ10の静電容量は、電極14に接触または接近する物の存否により変化する。物の概念には、人の手、衣類、バッグ等の物体、水等の流動体が含まれる。
【0031】
第1スイッチSW1は、基準コンデンサCSに並列に接続される。第2スイッチSW2は、基準コンデンサCSと静電容量センサ10の電極14との間に接続される。第2スイッチSW2の一端は、基準コンデンサCSに接続され、他端は抵抗Rを介して電極14に接続される。また、第2スイッチSW2の他端は第3スイッチSW3を介して第2電位源に接続される。第3スイッチSW3は、静電容量センサ10に並列接続される。第3スイッチSW3の一端は抵抗Rを介して電極14側に接続され、他端は第2電位源に接続される。
【0032】
電位判定装置CPは、基準コンデンサCSと静電容量センサ10との間(すなわち、基準コンデンサCSと電極14との間)の位置(以下、「中間位置PM」という。)の電位(以下、「中間電位VM」という。)と、設定電位Vthとを比較し、中間電位VMが設定電位Vthよりも小さいか否かを判定する。電位判定装置CPは、中間電位VMが設定電位Vth以上であるとき、初期信号を出力し、中間電位VMが設定電位Vthよりも小さいとき、終了信号を出力する。電位判定装置CPは、比較器(コンパレータ)により構成され得る。
【0033】
図3を参照して、静電容量センサ10の容量変化量(すなわち、静電容量センサ10の静電容量の変化量に対応する量)を検出するためのスイッチング制御について説明する。
第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3は、所定周期で動作する。周期の初期において、第1スイッチSW1が閉状態に制御され、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3が開状態に制御される。これにより、基準コンデンサCSが初期化され、中間位置PMの電位は第1電位源の電位V1と等しくなる。以下の説明では、基準コンデンサCSが初期化されたときの中間位置PMの電位を「初期電位」(初期電位は電位V1に等しい。)という。
【0034】
次に、第1スイッチSW1が開状態に制御され、第2スイッチSW2が閉状態に制御され、かつ第3スイッチSW3が開状態に維持される(以下、このスイッチ動作を「第2スイッチ閉動作」という。)。このとき、基準コンデンサCSとセンサコンデンサCXとに電流が流れ、中間電位VMが低下する。
【0035】
次に、第1スイッチSW1が開状態に維持され、第2スイッチSW2が開状態に制御され、かつ第3スイッチSW3が閉状態に制御される(以下、このスイッチ動作を「第3スイッチ閉動作」という。)。
【0036】
引き続き、第1スイッチSW1が開状態に維持されたまま、第2スイッチ閉動作と第3スイッチ閉動作とは交互に繰り返される。このため、
図3に示されるように、中間電位VMは徐々に低下する。中間電位VMが設定電位Vthよりも小さい値になると、電位判定装置CPは、終了信号を制御部13に出力する。
【0037】
制御部13は、各周期において、周期の最初から終了信号を受信するまでの期間に実行された、第2スイッチ閉動作の回数(すなわち接続回数:以下、これを「スイッチング回数」という。)をカウントする。すなわち、制御部13は、中間電位VMが初期電位から設定電位Vthに至るまでの期間(時間t0から時間t1の間)にわたって第2スイッチ閉動作の回数(接続回数)をカウントする。
【0038】
さらに、制御部13は、各周期のスイッチング回数Nを時系列順にまたは時系列パラメータに関連付けて記憶する。そして、制御部13は、2時点間のスイッチング回数Nの差(以下、「スイッチング回数差ΔN」という。)を算出する。スイッチング回数差ΔNは、当該スイッチング回数差ΔNを演算する時よりも前の時点で得られたスイッチング回数N1(第1接続回数)と、当該演算時点でのスイッチング回数N2(第2接続回数)との差として定義される。すなわち、「スイッチング回数差ΔN」=「−(演算時点でのスイッチング回数N2−演算前時点のスイッチング回数N1)」である。演算前時点とは、演算時点よりも所定周期前または所定時間前の時点を示す。
【0039】
次に、制御部13は、スイッチング回数差ΔNと設定値NUMと比較し、スイッチング回数差ΔNが設定値NUMよりも大きいか否かを判定する。設定値NUMは、静電容量センサ10に物が接触または接近する場合においてスイッチング回数差ΔNが取り得る範囲の下限値を示す。制御部13は、スイッチング回数差ΔNが設定値NUMよりも大きいとき、静電容量センサ10に物が接触したまたは接近したと判定する。なお、以下では、制御部13が、スイッチング回数差ΔNと設定値NUMとの比較により、静電容量センサ10に接触するまたは接近する物の存否を判定することを「検出判定」という。
【0040】
ここで、スイッチング回数差ΔNの技術的意義を説明する。
上記したように、第1スイッチ閉動作により基準コンデンサCSは初期化されて、中間電位VMは初期電位になる。次いで、第2スイッチ閉動作と第3スイッチ閉動作とが交互に繰り返されることにより、中間電位VMは徐々に低下する。中間電位VMの低下の速度は、静電容量センサ10の静電容量の大きさに基づいて変化する。具体的には、静電容量センサ10の静電容量が大きい程、中間電位VMの低下が速くなる。中間電位VMの低下の遅さ(すなわち、中間電位VMが初期電位から設定電位Vthに至るまでの時間の長さ)はスイッチング回数Nに相関する。従って、静電容量センサ10の静電容量の変化量は、2時点間のスイッチング回数差ΔNと関係付けられる。このことから、2時点間のスイッチング回数差ΔNは、静電容量センサ10に物が接触または接近しているか否かを判定するためのパラメータとして用いられる。
【0041】
具体的には、静電容量センサ10に物が接触または接近することにより静電容量センサ10の静電容量が大きくなると、スイッチング制御で得られるスイッチング回数Nが減少し、スイッチング回数差ΔN(減少回数)が大きくなる。すなわち、スイッチング回数差ΔNの増大は、静電容量センサ10に物が接触または接近することを意味する。
【0042】
なお、静電容量センサ10の静電容量の容量変化量に対応するスイッチング回数差ΔNを得る際、2時点間のスイッチング回数N1,N2を用いるのは、次の理由による。静電容量センサ10の静電容量は、物の接触または接近以外の要因、例えば、環境(例えば、温度)により変化する。すなわち、静電容量センサ10の静電容量は、物の接触または接近がない場合においても変化し得る。このため、スイッチング回数差ΔNを演算するときの基準となるスイッチング回数N1を固定値とすると、そうして得られるスイッチング回数差ΔNは、物の接触または接近以外の要因に基づく変化を含むようになり、物の接触または接近を正確に判定するためのパラメータとして不適切なものとなる。これに対して、基準となるスイッチング回数N1を、スイッチング回数差ΔNを演算する演算時点よりも所定時間前の時点で得られる値に設定すると、両時点での環境は実質的に同じであると見做すことができるため、2時点間のスイッチング回数差ΔNは、物の接触または接近以外の要因に基づく変化を含まないようになる。従って、2時点間のスイッチング回数差ΔNを用いることにより、物の接触または接近を正確に判定することができる。このような理由で、実施形態では、2時点間のスイッチング回数差ΔNを物の接触または接近を正確に判定するためのパラメータとして用いる。
【0043】
[第1実施形態]
図4を参照して、第1実施形態に係る静電容量検出装置2について説明する。
本実施形態に係る静電容量検出装置2は、次の点で基本構成の静電容量検出装置2と相違する。
【0044】
静電容量検出装置2の基本構成では、基準コンデンサCSが1つのコンデンサにより構成されるが、本実施形態では、基準コンデンサCSが複数のサブコンデンサにより構成される。
図4に示される例では、基準コンデンサCSは、2個のサブコンデンサ(以下、「第1サブコンデンサCS1」及び「第2サブコンデンサCS2」という。)により構成される。2個のサブコンデンサCS1,CS2は並列接続される。
【0045】
また、静電容量検出装置2は、基準コンデンサCSの静電容量を切り替えるための第4スイッチSW4を備える。本実施形態では、第4スイッチSW4は、2個のサブコンデンサCS1,CS2のうち一方に設けられている。すなわち、2個のサブコンデンサCS1,CS2のうち一方のサブコンデンサが、第4スイッチSW4の動作に基づいて他方のスイッチに並列接続及び非接続可能に設けられている。
【0046】
制御部13は、第4スイッチSW4の動作により基準コンデンサCSを変更する。すなわち、制御部13は、第4スイッチSW4を開状態に制御することにより基準コンデンサCSの静電容量を第1サブコンデンサCS1の静電容量にし、第4スイッチSW4を閉状態に制御することにより基準コンデンサCSの静電容量を第1サブコンデンサCS1と第2サブコンデンサCS2との静電容量和とする。
【0047】
基準コンデンサCSが大容量の場合、中間位置PMの電位が初期電位から設定電位Vthに至るまでの時間が長い。このため、制御部13が、スイッチング回数Nを得る周期が長いといった特徴がある。一方、中間位置PMの電位が初期電位から設定電位Vthに至るまでの時間が長いという特徴から、静電容量センサ10の静電容量の変化量が小さいときでも、その変化量をスイッチング回数差ΔNaとして検出することが可能になる。すなわち、基準コンデンサCSが大容量の場合、静電容量センサ10の静電容量の変化は、高分解能で検出される。
【0048】
基準コンデンサCSが小容量の場合、中間位置PMの電位が初期電位から設定電位Vthに至るまでの時間が短い。このため、制御部13が、スイッチング回数Nを得る周期が短いといった特徴がある。一方、中間位置PMの電位が初期電位から設定電位Vthに至るまでの時間が短いという特徴から、静電容量センサ10の静電容量の変化量が小さいとき、その変化量をスイッチング回数差ΔNbとして検出することが困難になる。すなわち、基準コンデンサCSが小容量の場合、静電容量センサ10の静電容量の変化は、低分解能で検出される。
【0049】
制御部13は、基準コンデンサCSが高容量の場合の特徴と基準コンデンサCSが低容量の場合の特徴を活用して、2つの検出態様を有する。すなわち、制御部13は、高分解能検出態様と低分解能検出態様とを有する。なお、分解能は、静電容量センサ10の静電容量が規定量増大するときの、スイッチング回数Nの多さとして定義される。
【0050】
高分解能検出態様では、制御部13は、第4スイッチSW4を閉状態に制御し、基準コンデンサCSを高静電容量のコンデンサとして動作させ、高分解能で静電容量センサ10の容量変化量を検出する。これにより、制御部13は、静電容量センサ10に物の接近している状態であってかつ静電容量センサ10に接触していない状態(以下、「接近状態」)を高精度に検出する。以下、接近状態を検出することを「接近検知」という。
【0051】
図5(a)に示されるように、高分解能検出態様では、制御部13は、容量変化量としてのスイッチング回数差ΔNaが第1設定値NUM1よりも小さいとき、静電容量センサ10に物が接触していない状態(以下、「非検知状態」という。)にあると判定する。以下、この判定結果を「非検知(N)」という。
【0052】
また、制御部13は、スイッチング回数差ΔNaが第1設定値NUM1以上かつ第2設定値NUM2よりも小さいとき、静電容量センサ10に物が接近する接近状態であると判定する。この判定結果を「接近検知(A)」という。なお、「物が接近する接近状態」には、物が接近している状態(物への接近動作が継続している状態)と、接近した状態(接近動作が完了した状態、または、物が静電容量センサに対して離れて止まっている若しくは静止せずに静電容量センサの近くにある状態)とが含まれる。
【0053】
また、制御部13は、スイッチング回数差ΔNaが第3設定値NUM3以上であるとき、静電容量センサ10に物が接触する接触状態にあると判定する。以下、この判定結果を「接触検知(C)」という。
【0054】
なお、第1設定値NUM1、第2設定値NUM2及び第3設定値NUM3は、第1設定値NUM1<第2設定値NUM2<第3設定値NUM3の関係を有する。第2設定値NUM2と第3設定値NUM3とは等しい値ではない理由、すなわち接近検知の上限値と接触検知の下限値とを等しい値としていない理由は、物が接触しているにも拘わらず接近検知として検出する誤検知を抑制するためである。
【0055】
低分解能検出態様では、制御部13は、第4スイッチSW4を開状態に制御し、基準コンデンサCSを低静電容量のコンデンサとして動作させ、低分解能で静電容量センサ10の容量変化量を検出する。
【0056】
図5(b)に示されるように、低分解能検出態様では、制御部13は、容量変化量としてのスイッチング回数差ΔNbが設定値NUM4よりも小さいとき、静電容量センサ10に物が接触していないと判定する(「非検知(N)」判定)。また、制御部13は、容量変化量としてのスイッチング回数差ΔNbが設定値NUM4以上の値であるとき、静電容量センサ10に物が接触していると判定する(「接触検知C」判定)。なお、この例では、分解能が低いため、静電容量センサ10に物が接近する状態(すなわち接近状態)の判定を行わない。
【0057】
制御部13は、低分解能検出態様でのスイッチング制御と、高分解能検出態様でのスイッチング制御とを所定規則に従って実行する。
例えば、制御部13は、低分解能検出態様でのスイッチング制御と高分解能検出態様でのスイッチング制御とを交互に実行する。
【0058】
図6を参照して、制御部13が、低分解能検出態様でのスイッチング制御と高分解能検出態様でのスイッチング制御とを交互に実行するときの作用を説明する。なお、
図6では、低分解能検出態様でのスイッチング制御が実行される期間は、「P」で示されている。高分解能検出態様でのスイッチング制御が実行される期間は、「GP」で示されている。
【0059】
図6(a)は、制御部13が、高分解能検出態様でのスイッチング制御だけを実行するときの、制御部13が実行する検出判定の判定タイミングを示す。この制御は、
図6(b)に示されるスイッチング制御の比較例である。
図6(b)は、制御部13が、低分解能検出態様でのスイッチング制御と高分解能検出態様でのスイッチング制御とを交互に実行するときの、制御部13が実行する検出判定の判定タイミングを示す。
【0060】
制御部13は、スイッチング制御の終了後、スイッチング制御において得られるタイミング回数差に基づいて静電容量センサ10に物が接触する物の存否を判定する。
制御部13が、高分解能検出態様でのスイッチング制御だけを実行するときは、
図6(a)に示されるように、制御部13は、スイッチング制御の周期と同じ周期で判定結果(例えば、物の接触または接近の存否の判定結果)を出力する。このため、静電容量センサ10に物が接触した時点から制御部13がその物の接触があったと判定する時点までの応答時間の平均時間は、スイッチング制御の周期に等しいかこれに近い時間になる。
【0061】
一方、制御部13が、低分解能検出態様でのスイッチング制御と高分解能検出態様でのスイッチング制御とを交互に実行するときは、
図6(b)に示されるように、制御部13は、低分解能検出態様でのスイッチング制御の周期と高分解能検出態様でのスイッチング制御の周期の両方で判定結果を出力し得る。このため、静電容量センサ10に物が接触した時点から制御部13がその物の接触があったと判定する時点までの応答時間の平均時間は、両周期の平均か、その平均に近い値になる。すなわち、低分解能検出態様でのスイッチング制御と高分解能検出態様でのスイッチング制御とを交互に実行すると、高分解能検出態様でのスイッチング制御だけを実行する場合に比べて、平均すると、短時間で、物の接触を検出することができる。
【0062】
なお、物の接触を検出するのに要する応答時間の平均を更に短くするために、低分解能検出態様でのスイッチング制御と高分解能検出態様でのスイッチング制御との実行パターンにおいて、高分解能検出態様でのスイッチング制御の実行回数に対する低分解能検出態様でのスイッチング制御の実行回数の比率を高めてもよい。これにより、応答時間の平均を短縮することができる。
【0063】
以下、静電容量検出装置2の効果を説明する。
(1)本実施形態に係る静電容量検出装置2は、静電容量センサ10と、静電容量センサ10を制御する制御装置11を備える。制御装置11は、容量変化量(静電容量センサ10の静電容量の変化量に対応する量)を検出するための複数の検出態様を有する。制御装置11は、複数の検出態様のそれぞれで容量変化量を検出し、容量変化量に基づいて静電容量センサ10に対して接触または接近する物の存否を判定する。この構成によれば、静電容量検出装置2は、静電容量の変化について様相の異なる複数の変化態様を検出することができる。
【0064】
(2)上記実施形態では、制御装置11は、スイッチング回数差ΔN(容量変化量)を検出するための検出態様として、高分解能検出態様と低分解能検出態様とを有する。このため、静電容量センサ10に接触または接近する物の判定において、高精度の判定と、低精度の判定を行うことができる。
【0065】
(3)上記実施形態では、制御装置11は、低分解能検出態様により検出されたスイッチング回数差ΔNb(容量変化量)に基づいて、静電容量センサ10に物が接触する状態を示す接触状態にあるか否かを判定する。この構成によれば、高分解能検出態様により検出されたスイッチング回数差ΔNa(容量変化量)に基づいて物の接触状態を判定する場合に比べて、静電容量センサ10に接触または接近する物の存否を判定するときの判定に要する時間を短くすることができる。
【0066】
(4)上記実施形態では、制御装置11は、高分解能検出態様により検出されたスイッチング回数差ΔNa(容量変化量)に基づいて、静電容量センサ10に接触しない状態でかつ静電容量センサ10に物が接近する状態である接近状態にあるか否かを判定する。
【0067】
この構成によれば、高分解能検出態様により検出されたスイッチング回数差ΔNb(容量変化量)に基づいて、静電容量センサ10に接触または接近する物の接近態様を判定するため、高精度で当該接近状態を判定することができる。すなわち、接近状態とは異なる状態を接近状態と判定したり、この逆すなわち接近状態であるときに接近状態でないと判定したりする、誤判定を抑制することができる。
【0068】
(5)上記実施形態では、静電容量センサ10に直列に接続される基準コンデンサCSを備える。第1時刻において基準コンデンサCSと静電容量センサ10とを断続的に接続するとき、基準コンデンサCSと静電容量センサ10との間の中間電位VMが初期電位から設定電位Vthに至るまでのスイッチング回数(N1)を第1スイッチング回数(第1接続回数)として検出する。第1時刻よりも所定時間だけ隔てた第2時刻において、基準コンデンサCSと静電容量センサ10とを断続的に接続するとき、基準コンデンサCSと静電容量センサ10との間の中間電位VMが初期電位から設定電位Vthに至るまでのスイッチング回数(N2)を第2スイッチング回数(第2接続回数)として検出する。そして、容量変化量を第1スイッチング回数と第2スイッチング回数との差であるスイッチング回数差ΔN(回数差)として導出する。なお、第1時刻とは、実施形態に示す「当該スイッチング回数差ΔNを演算する時よりも前の時点」であり、第2時刻とは、実施形態に示す「スイッチング回数差ΔNを演算する時点」である。
【0069】
この構成では、静電容量センサ10の静電容量の変化量(すなわち容量変化量)を、デジタル値として検出する。このため、静電容量センサ10の静電容量の変化量を用いる演算が簡単になる。
【0070】
(6)上記実施形態では、基準コンデンサCSは、複数のサブコンデンサCS1,CS2により構成される。制御装置11は、複数のサブコンデンサCS1,CS2の容量結合態様として基準コンデンサCSの静電容量が異なる少なくとも2つの態様を有する。制御装置11は、高分解能検出態様では、第1結合態様により複数のサブコンデンサCS1,CS2を結合して容量変化量を検出する。制御装置11は、低分解能検出態様では、第1結合態様よりも基準コンデンサCSの静電容量が小さい第2結合態様により複数のサブコンデンサCS1,CS2を結合して容量変化量を検出する。なお、第1結合態様とは、実施形態において、第1サブコンデンサCS1と第2サブコンデンサCS2とを並列結合させる態様である。第2結合態様とは、実施形態においては、第1サブコンデンサCS1から第2サブコンデンサCS2を電気的に絶縁し、第1サブコンデンサCS1だけが第1回路部12Aに接続される態様を示す。
【0071】
この構成では、サブコンデンサCS1,CS2の結合態様により、基準コンデンサCSの静電容量を変更する。そして、基準コンデンサCSの静電容量を変更することにより、静電容量センサ10の静電容量の変化量(すなわち容量変化量)の検出の分解能を異ならせる。このように、上記構成では、検出の分解能を変更する構造が簡単である。
【0072】
[第2実施形態]
本実施形態に係る静電容量検出装置2の回路構成は、第1実施形態に係る静電容量検出装置2の回路構成に準ずる。更に、本実施形態では、次の構成を備える。制御部13は、低分解能検出態様において、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3の閉状態の時間を制御する。
【0073】
具体的には、制御部13は、閉時間(閉状態になっている時間)が異なる2つの態様で第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を制御する。なお、第2スイッチSW2の閉時間と第3スイッチSW3の閉時間とは等しい。以下、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を所定時間(以下、「第1時間」という。)にわたって閉状態にする制御を第1開閉制御といい、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を第1時間よりも短い時間(以下、「第2時間」)にわたって閉状態にする制御を第2開閉制御という。
【0074】
制御部13は、低分解能検出態様におけるスイッチング制御として、2つの態様のスイッチング制御を実行する。
第1スイッチング制御では、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を第1開閉制御により制御する。第2スイッチング制御では、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を第2開閉制御により制御する。
【0075】
また、制御部13は、第1スイッチング制御において得られるスイッチング回数差ΔNと、第2スイッチング制御において得られるスイッチング回数差ΔNとの比(第1スイッチング制御において得られるスイッチング回数差/第2スイッチング制御において得られるスイッチング回数差:以下、これを「スイッチング回数差比」という。)を演算する。
【0076】
スイッチング回数差比は、静電容量センサ10に接触する物の種類により異なる。人が静電容量センサ10に接触または接近する場合は、1または1に近い値になる。一方、水が静電容量センサ10に接触または接近する場合は、1から離れた値になる。これは次の理由による。
【0077】
静電容量センサ10への人の接触は水の付着に比べて、静電容量センサ10の静電容量を大きく増大させる。すなわち、人の接触は水の付着に比べてセンサコンデンサCXの時定数を小さくさせる。このため、人の接触の場合、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3の閉状態の時間長さに関係なく、中間電位VMは略一定値で低下する。したがって、スイッチング回数差比は1に近い値になる。これに対して、水の付着は人の接触に比べてセンサコンデンサCXの時定数を小さくさせる効果が小さい。水の接触の場合、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3の閉状態の時間長さが短くなると、中間電位VMの低下幅が小さくなる。この結果、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3の閉状態の時間長さが短くなると、当該時間長さが長い場合に比べて、中間電位VMが初期電位から設定電位Vthに至るまでの時間の短縮が少なくなり、スイッチング回数Nの減少量も小さくなり、スイッチング回数差ΔNが小さくなる。この結果、スイッチング回数差比は、1よりも大きくなる。なお、スイッチング回数差の差分(第1スイッチング制御において得られるスイッチング回数差−第2スイッチング制御において得られるスイッチング回数差)は、スイッチング回数差比と同様の特性を示す。すなわち、スイッチング回数差の差分は、静電容量センサ10に接触する物の種類により異なる。
【0078】
制御部13は、このことを利用し、スイッチング回数差比(第1スイッチング制御において得られるスイッチング回数差/第2スイッチング制御において得られるスイッチング回数差)またはスイッチング回数差の差分(第1スイッチング制御において得られるスイッチング回数差−第2スイッチング制御において得られるスイッチング回数差)が、所定値よりも大きいか否かに基づいて、静電容量センサ10に接触する物を判定する。
【0079】
図7は、低分解能検出態様での上記第1スイッチング制御と、低分解能検出態様での上記第2スイッチング制御と、高分解能検出態様でのスイッチング制御とのタイミングチャートの一例である。
図7に示される「P1」は、低分解能検出態様の第1スイッチング制御を示す。「P2」は、低分解能検出態様の第2スイッチング制御を示す。「GP」は、高分解能検出態様でのスイッチング制御を示す。
図7に示されるように、本実施形態では、アンロック用センサ10A及びロック用センサ10Bのいずれにおいても、スイッチング回数差比を求めるための制御を実行する。なお、スイッチング回数差比またはスイッチング回数差の差分を求めるための制御は、アンロック用センサ10A及びロック用センサ10Bの一方でのみ実行してもよい。
【0080】
以上の構成によれば、上述したように、静電容量センサ10に物が接触または接近するとき、スイッチング回数差比またはスイッチング回数差の差分に基づいてその物の種類を判定することができる。また、上記のスイッチング回数差比またはスイッチング回数差の差分によれば、静電容量検出装置2の分解能の高低に関係なく、所定の精度で、静電容量センサ10に物が接触または接近するとき、その物の種類を判定することができる。
【0081】
[第2実施形態の変形例]
図8を参照して、第2実施形態の変形例について説明する。
本変形例では、制御部13は、低分解能検出態様及び高分解能検出態様のいずれにおいても、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3の閉状態の時間を制御する。これにより、低分解能検出態様でのスイッチング制御において、スイッチング回数差比(またはスイッチング回数差の差分)が得られ、かつ、高分解能検出態様でのスイッチング制御において、スイッチング回数差比(またはスイッチング回数差の差分)が得られる。静電容量センサ10に接触する物の種類を精確に判定するときは、高分解能検出態様でのスイッチング制御において得られるスイッチング回数差比(またはスイッチング回数差の差分)が用いられる。静電容量センサ10に接触する物の種類を迅速に判定するときは、低分解能検出態様でのスイッチング制御において得られるスイッチング回数差比(またはスイッチング回数差の差分)が用いられる。
【0082】
図8は、低分解能検出態様の第1スイッチング制御と、低分解能検出態様の第2スイッチング制御と、高分解能検出態様の第1スイッチング制御と、高分解能検出態様の第2スイッチング制御とのタイミングチャートを示す。
図8に示される「GP1」は、高分解能検出態様の第1スイッチング制御を示す。「GP2」は、高分解能検出態様の第2スイッチング制御を示す。
【0083】
以上の構成によれば、第2実施形態に準じた効果が得られる。また、高分解能検出態様の第1スイッチング制御と高分解能検出態様の第2スイッチング制御とに基づいて得られるスイッチング回数差比またはスイッチング回数差の差分は、高分解能検出により得られる値であるため、静電容量センサ10の静電容量を増大させる量が人と水との中間あたりである物を、人及び水から区別して判定することができる。
【0084】
[第3実施形態]
本実施形態に係る静電容量検出装置2の回路構成は、第1実施形態に係る静電容量検出装置2の回路構成に準じた構成を有する。なお、本実施形態では、第1実施形態に係る回路構成を前提に説明するが、本実施形態に係る技術では、基準コンデンサCSが高容量であれば足り、基準コンデンサCSが複数のサブコンデンサにより構成されていなくてもよい。本実施形態に係る技術では、第1実施形態で説明した、高分解能検出態様でのスイッチング制御に係る技術と、スイッチング回数差ΔNの大きさに基づいて非検知と、接近検知と、接触検知とに区別して静電容量センサ10の物の接触または接近の存否を判定する技術とが用いられる。
【0085】
図9及び
図10を参照して、高分解能検出態様でのスイッチング制御による、物の判定処理について説明する。
図9(a)は、手が、静電容量センサ10に接触するときの、静電容量センサ10の静電容量の変化の例である。
図9(b)は、水が、静電容量センサ10に付着するときの、静電容量センサ10の静電容量の変化の例である。
【0086】
図9(a)及び
図9(b)に示されるように、水が静電容量センサ10に付着するときは、手が静電容量センサ10に接触するときに比べて、静電容量センサ10の静電容量の容量変化が速い。このように、静電容量センサ10に接触する物により、静電容量の容量変化の速度が異なる。この性質を利用し、静電容量センサ10に接触する物の種類を判別することが可能である。
【0087】
図9(a)及び
図9(b)には、静電容量センサ10の静電容量の変化を示すグラフの上には、スイッチング制御のタイミングが示されている。また、当該グラフの下には、高分解能検出態様における物の判定処理(
図5(a)参照)により得られる、スイッチング制御毎の判定結果が示されている。
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、静電容量センサ10に物が接近及び接触するときの静電容量の変化態様は、物に応じて、特有のパターンを有する。
【0088】
本実施形態では、このことを利用し、静電容量センサ10に接近及び接触する物の種類を判定する。
図10に示されるパターン1は、静電容量センサ10に人または手が接近及び接触するか否かを判定するときに用いられる、照合パターンである。照合パターンは、連続する第1期間、第2期間、第3期間、及び第4期間それぞれにおいて判定内容が規定されたものである。
【0089】
図10に示されるパターン2は、静電容量センサ10に水が接近及び付着するか否かを判定するときに利用される、照合パターンである。
制御部13は、高分解能検出態様でスイッチング制御を周期的に実行し、スイッチング制御毎に、検出判定(スイッチング回数差ΔNに基づく、物の接触または接近の存否の判定)を実行する。制御部13は、その判定結果を時系列順に、または時系列パラメータに関連付けして記憶する。制御部13が、検出判定により接触検知と判定するときは、パターン照合を行う。例えば、制御部13は、所定期間にわたる判定結果のパターンと、照合パターンであるパターン1及びパターン2のそれぞれとを比較し、いずれと一致するかを判定する。所定期間にわたる判定結果のパターンがいずれかと一致する場合、当該接触は、照合パターンに対応する物が静電容量センサ10に接触したと判定する。所定期間にわたる判定結果のパターンがいずれとも一致しないときは、その後に得られる判定結果のパターンに基づいてパターン照合を再度実行する。
【0090】
本実施形態に係る静電容量検出装置2の効果を説明する。
制御装置11は、高分解能検出態様で連続して得られる複数のスイッチング回数差(容量変化量)それぞれに基づいて、接触状態、接近状態、及び非検知状態のいずれにあるかを判定する。そして、複数のスイッチング回数差(容量変化量)それぞれについての判定結果のパターンに基づいて静電容量センサ10に接触した物の種類を判定する。
【0091】
静電容量センサ10に物が接近するときの静電容量センサ10の静電容量の変化態様は、物の種類により異なる。上記構成では、この変化態様を、高分解能検出態様で連続して得られる複数の容量変化量についてのパターンとして検出する。そして、制御装置11は、1つの情報(1つの容量変化量)だけでなく複数の情報のパターン(容量変化量それぞれの判定結果の組み合わせ)に基づいて、静電容量センサ10に接触した物の種類を判定する。このため、静電容量センサ10に接触または接近する物について、その物の種類を判定するときの判定精度を向上させることができる。なお、本実施形態の技術は、霧、霙、雪、雹、砂塵等の物の検出にも適用され得る。
【0092】
[第4実施形態]
本実施形態に係る静電容量検出装置2の回路構成は、第1実施形態に係る静電容量検出装置2の回路構成に準じた構成を有する。なお、本実施形態では、第1実施形態に係る回路構成を前提に説明するが、本実施形態に係る技術では、基準コンデンサCSが高容量であれば足り、基準コンデンサCSが複数のサブコンデンサにより構成されていなくてもよい。本実施形態に係る技術では、第1実施形態で説明した、高分解能検出態様でのスイッチング制御に係る技術と、スイッチング回数差ΔNの大きさに基づいて非検知と、接近検知と、接触検知とに区別して静電容量センサ10の物の接触または接近の存否を判定する技術とが用いられる。
【0093】
図11〜
図13を参照して、高分解能検出態様でのスイッチング制御による、ジェスチャー判定処理について説明する。
図11(a)及び
図11(b)は、手が、静電容量センサ10に接触せずにその近傍で、アンロック用センサ10A側からロック用センサ10B側に移動するときの、静電容量センサ10の静電容量の変化の一例を示す。
【0094】
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、手が、アンロック用センサ10Aに接近すると、その接近に従って、アンロック用センサ10Aの静電容量の変化量は増大する。手がアンロック用センサ10Aに最も接近したときはその静電容量の変化量はピークに達する。その後、手が、アンロック用センサ10Aから離れるにつれて、アンロック用センサ10Aの静電容量の変化量は減少する。手が、アンロック用センサ10Aとロック用センサ10Bとの間に位置すると、両者において静電容量の変化量は「0」または「0」に近い値になる。その後、これに引き続いて、手が、ロック用センサ10Bに接近すると、その接近に従って、ロック用センサ10Bの静電容量の変化量は増大する。手がロック用センサ10Bに最も接近したときはその静電容量の変化量はピークに達する。その後、手が、ロック用センサ10Bから離れるにつれて、ロック用センサ10Bの静電容量の変化量は減少する。
【0095】
このように、アンロック用センサ10Aからロック用センサ10Bに沿うように移動させる手の操作(ジェスチャー)は、アンロック用センサ10Aの静電容量の変化量及びロック用センサ10Bの静電容量の変化量の時系列変化として把握されうる。すなわち、所定のジェスチャーは、アンロック用センサ10Aとロック用センサ10Bとの静電容量の変化量のパターンに基づいて検出され得る。
【0096】
図11(a)及び
図11(b)において、静電容量センサ10の静電容量の変化を示すグラフの上には、スイッチング制御のタイミングが示されている。また、当該グラフの下には、高分解能検出態様における物の判定処理(
図5(a)参照)により得られる、スイッチング制御毎の判定結果が示されている。このように、アンロック用センサ10Aからロック用センサ10Bにかけて所定のジェスチャーが行われるときの静電容量の変化態様は、特有のパターンを有する。本実施形態では、このことを利用し、アンロック用センサ10Aからロック用センサ10Bにかけての所定ジェスチャーを検出する。
【0097】
図12に示されるパターンは、所定ジェスチャーであるか否かを判定するときに用いられる、照合パターンである。
制御部13は、アンロック用センサ10A及びロック用センサ10Bのそれぞれについて、高分解能検出態様でのスイッチング制御を周期的に実行し、スイッチング制御毎に、検出判定(スイッチング回数差ΔNに基づく、物の接触または接近の存否の判定)を実行する。制御部13は、その判定結果を時系列順に、または時系列パラメータに関連付けして記憶する。そして、制御部13は、このようにして得られた判定結果のパターンと、所定ジェスチャーに対応する照合パターンとの間でパターン照合を行う。例えば、制御部13は、所定期間にわたる判定結果のパターン(アンロック用センサ10A及びロック用センサ10Bの判定結果を含む。)と照合パターンとを比較し、両者が一致するか否かを判定する。所定期間にわたる判定結果のパターンが照合パターンと一致する場合、制御部13は、所定ジェスチャーが実行されたと判定する。
【0098】
なお、本実施形態の技術は、アンロック用センサ10Aからロック用センサ10Bに手を移動させるジェスチャーだけでなく、様々なジェスチャーの検出に適用され得る。例えば、本技術は、上記ジェスチャーとは反対方向に手を移動させるジェスチャー、アンロック用センサ10A及びロック用センサ10Bに両手をかざすようなジェスチャー、アンロック用センサ10Aまたはロック用センサ10Bに、手を接近させて離間させるという往復操作を2回以上繰り返すジェスチャーの検出に適用され得る。
【0099】
図13は、ジェスチャーを判定する処理(以下、「ジェスチャー判定処理」)のフローチャートである。ジェスチャー判定処理は、
図12の表に対応するものである。制御部13は、次のステップS1〜S5の一連の処理を所定周期で実行する。また、制御部13は、各ステップで、アンロック用センサ10A及びロック用センサ10Bのそれぞれにおいて、高分解能検出態様でスイッチング制御を実行し、両センサ10A,10Bそれぞれの判定結果を得る。
【0100】
ステップS1において、制御部13は、アンロック用センサ10Aとロック用センサ10Bとにおいて、第1期間において得られる全ての判定結果が「非検知」であるか否かを判定する。この判定が肯定であるとき、すなわち全ての判定結果が「非検知」であるとき、ステップS2に移行する。
【0101】
ステップS2において、制御部13は、アンロック用センサ10Aにおいて第2期間に得られる判定結果の少なくとも1個以上(例えば3つ)が連続して「接近検知」であり、かつロック用センサ10Bにおいて第2期間に得られる全ての判定結果が「非検知」であるか否かを判定する。この判定が肯定であるとき、ステップS3に移行する。
【0102】
ステップS3において、制御部13は、アンロック用センサ10Aとロック用センサ10Bとにおいて、第3期間において得られる判定結果の少なくとも1個以上(例えば、7個)が連続して「非検知」であるか否かを判定する。この判定が肯定であるとき、ステップS4に移行する。
【0103】
ステップS4において、制御部13は、ロック用センサ10Bにおいて第4期間に得られる判定結果の少なくとも1個以上(例えば3つ)が連続して「接近検知」であり、かつアンロック用センサ10Aにおいて第4期間に得られる全ての判定結果が「非検知」であるか否かを判定する。この判定が肯定であるとき、ステップS5に移行する。
【0104】
ステップS5において、制御部13は、アンロック用センサ10Aとロック用センサ10Bとにおいて、第5期間において得られる全ての判定結果が「非検知」であるか否かを判定する。この判定が肯定であるとき、すなわち全ての判定結果が「非検知」であるとき、「スライドジェスチャー」があったと判定する。
【0105】
なお、ステップS4において判定が否定されるときは、ステップS6に移行する。ステップS6において、制御部13は、アンロック用センサ10Aとロック用センサ10Bとにおいて、第4期間において得られる全ての判定結果が「非検知」であるか否かを判定する。この判定が肯定であるとき、「アンロック用センサ10Aに手をかざすジェスチャー」があったと判定する。
【0106】
制御部13は、ステップS1、ステップS2、ステップS3、ステップS5、ステップS6において否定判定するとき、一旦、ジェスチャー判定処理を終了し、その後、所定時間の経過後、ジェスチャー判定処理を再実行する。
【0107】
以下、本実施形態に係る静電容量検出装置2の効果を説明する。
本実施形態では、静電容量検出装置2は、アンロック用センサ10A(第1静電容量センサ)とロック用センサ10B(第2静電容量センサ)とを備える。アンロック用センサ10Aとロック用センサ10Bとは設定距離を隔てて配置される。
【0108】
制御装置11は、アンロック用センサ10A及びロック用センサ10Bのそれぞれについてスイッチング回数差(容量変化量)を検出して容量変化量に基づいて、接触状態、接近状態、及び非検知状態のいずれにあるかを判定する。そして、同期間に得られるアンロック用センサ10Aの判定結果とロック用センサ10Bの判定結果とを含めた総合判定結果のパターンに基づいて、アンロック用センサ10A及びロック用センサ10Bに接近する物の動きを検出する。この構成によれば、静電容量検出装置2の付近で手を移動させるようなジェスチャーを検出することができる。
【0109】
[第5実施形態]
図14を参照して、第5実施形態に係る静電容量検出装置2について説明する。本実施形態に係る静電容量検出装置2は、次の点で基本構成の静電容量検出装置2と相違する。
【0110】
静電容量検出装置2の基本構成では、スイッチング制御において、中間電位VMが設定電位Vthよりも小さいか否かを判定する。これに対し、本実施形態に係る静電容量検出装置2では、中間電位VMが第1設定電位Vth1よりも小さいか否かを判定する第1態様と、中間電位VMが第2設定電位Vth2よりも小さいか否かを判定する第2態様とを有する。なお、第2設定電位Vth2は、第1設定電位Vth1よりも高い電位である。
【0111】
電位判定装置CPは、比較器(コンパレータ)により構成される。電位判定装置CPの基準電位は、第5スイッチSW5及び第6スイッチSW6の動作により第1設定電位Vth1及び第2設定電位Vth2の一方に切り替えられる。具体的には、電位判定装置CPの入力部(基準電位を入力する部分)には、第1設定電位Vth1の電位源と第2設定電位Vth2の電位源とが接続される。そして、入力部と第1設定電位Vth1の電位源との間に第5スイッチSW5が配置され、入力部と第2設定電位Vth2の電位源との間に第6スイッチSW6が配置される。
【0112】
制御部13は、第5スイッチSW5及び第6スイッチSW6の動作により、入力部に入力する電位を第1設定電位Vth1及び第2設定電位Vth2の一方に切り替える。入力部に入力される電位が、中間電位VMの比較の基準となる設定電位Vthに対応する。
【0113】
設定電位Vthが高い場合、上記のスイッチング制御において中間位置PMの電位が初期電位から設定電位Vthに至るまでの時間が短い。このため、制御部13が、スイッチング回数Nを得る周期が短いといった特徴がある。一方、中間位置PMの電位が初期電位から設定電位Vthに至るまでの時間が短いという特徴から、静電容量センサ10の静電容量の変化量が小さいとき、その変化量をスイッチング回数差ΔNとして検出することが困難になる。すなわち、設定電位Vthが高い場合、静電容量センサ10の静電容量の変化は、低分解能で検出される。
【0114】
設定電位Vthが低い場合、上記のスイッチング制御において中間位置PMの電位が初期電位から設定電位Vthに至るまでの時間が長い。このため、制御部13が、スイッチング回数Nを得る周期が長いといった特徴がある。一方、中間位置PMの電位が初期電位から設定電位Vthに至るまでの時間が長いという特徴から、静電容量センサ10の静電容量の変化量が小さいときでも、その変化量をスイッチング回数差ΔNとして検出することが可能になる。すなわち、設定電位Vthが低い場合、静電容量センサ10の静電容量の変化は、高分解能で検出される。
【0115】
制御部13は、設定電位Vthが高い場合の特徴と設定電位Vthが低い場合の特徴を活用して、2つの検出態様を有する。すなわち、制御部13は、高分解能検出態様と低分解能検出態様とを有する。
【0116】
高分解能検出態様では、制御部13は、第5スイッチSW5を閉状態に制御しかつ第6スイッチSW6を開状態に制御することにより中間電位VMに対する基準電位を第1設定電位Vth1(低電位)に設定して、高分解能で静電容量センサ10の容量変化量を検出する。これにより、制御部13は、静電容量センサ10に物の接近している状態であってかつ静電容量センサ10に接触していない状態(すなわち、接近状態)を高精度に検出する。
【0117】
低分解能検出態様では、制御部13は、第6スイッチSW6を閉状態に制御しかつ第5スイッチSW5を開状態にすることにより中間電位VMに対する基準電位を第2設定電位Vth2(高電位)に設定して、低分解能で静電容量センサ10の容量変化量を検出する。これにより、制御部13は、短い周期で容量変化量を得ることができるため、短い時間で、静電容量センサ10に物の接触または接近があるか否かの判定結果を出す。
【0118】
制御部13は、高分解能検出態様のスイッチング動作と低分解能検出態様のスイッチング動作とについての実行態様は、第1実施形態の実行態様に準ずる。例えば、高分解能検出態様のスイッチング動作と低分解能検出態様のスイッチング動作とを交互に実行すること、各スイッチング動作それぞれについてスイッチング回数差ΔNを求めること、スイッチング回数差ΔNに基づいて静電容量センサ10に物が接触するまたは接近することを判定することは、第1実施形態の実行態様に準じる。
【0119】
上記したように、高分解能検出態様のスイッチング動作の特徴と低分解能検出態様のスイッチング動作の特徴とは、第1実施形態に示した各態様の特徴と同じであるため、本実施形態においても、第1実施形態の効果に準じた効果が得られる。
【0120】
本実施形態に係る静電容量検出装置2の効果を説明する。
本実施形態では、中間電位VMが初期電位から設定電位Vthに至るまでの接続回数を第1接続回数または第2接続回数として検出するときの、設定電位Vthは設定変更可能に構成される。制御装置11は、高分解能検出態様では、設定電位Vthを第1設定電位Vth1に設定して容量変化量を検出し、低分解能検出態様では、設定電位Vthを第1設定電位Vth1よりも高い第2設定電位Vth2に設定して容量変化量を検出する。
【0121】
この構成では、上記の設定電位Vthの値を変更することにより、静電容量センサ10の静電容量の変化量(すなわち容量変化量)の検出の分解能を異ならせる。このように、上記構成では、検出の分解能を変更する構造が簡単である。
【0122】
また、この構成では、第1実施形態に係る静電容量検出装置2よりも基準コンデンサCSの構成が簡単である。なお、基準コンデンサCSの構成を第1実施形態のように複数のサブコンデンサにより構成し、かつサブコンデンサの結合態様に応じて第5実施形態のように電位判定装置CPの基準電位を切り替えてもよい。
【0123】
[第5実施形態の変形例]
図15を参照して、第5実施形態の変形例について説明する。
本変形例に係る静電容量検出装置2では、中間電位VMが第1設定電位Vth1よりも小さいか否かを判定する第1態様と、中間電位VMが第2設定電位Vth2よりも小さいか否かを判定する第2態様とを有する。この点では、第5実施形態と同じである。本変形例と第5実施形態との間で相違する点は、第1設定電位Vth1と第2設定電位Vth2とを切り替える手段である。
【0124】
本変形例では、静電容量検出装置2は、2つの電位判定装置CP(以下、「第1電位判定装置CP1,第2電位判定装置CP2」という。)を有する。そして、第1電位判定装置CP1の出力部と制御部13との間に第7スイッチSW7が設けられ、第2電位判定装置CP2の出力部と制御部13との間に第8スイッチSW8が設けられている。第1電位判定装置CP1の基準電位は第1設定電位Vth1に設定される。第2電位判定装置CP2の基準電位は第1電位よりも高い電位である第2設定電位Vth2に設定される。
【0125】
このような構成において、第7スイッチSW7と第8スイッチSW8の制御は、第5実施形態における第5スイッチSW5と第6スイッチSW6の制御に準ずる。すなわち、制御部13は、第7スイッチSW7を閉状態に制御しかつ第8スイッチSW8を開状態に制御して、高分解能で静電容量センサ10の容量変化量を検出する。制御部13は、第8スイッチSW8を閉状態に制御しかつ第7スイッチSW7を開状態に制御して、低分解能で静電容量センサ10の容量変化量を検出する。すなわち、本変形例は、設定電位Vthを切り替える点において第5実施形態に係る静電容量検出装置2と同じである。このため、本変形例に係る静電容量検出装置2は、第5実施形態に係る静電容量検出装置2の効果に準じた効果を奏する。
【0126】
<その他の実施形態>
・上記各実施形態において、制御部13は、上記に示された各制御及び処理に加えて、次に示される被水処理を実行し得る。
【0127】
図16に示されるように、制御部13は、判定結果のパターンに基づいて静電容量センサ10に接触または接近する物の種類を判定する(ステップS10)。ステップS10では、第2実施形態または第3実施形態に示されるスイッチング制御及び物の判定処理が実行される。
【0128】
制御部13は、ステップS10において物が水であると判定する(「被水」であると判定する)とき、制御部13は、高分解能検出態様でのスイッチング制御から得られるスイッチング回数差ΔNに基づいて、物の接近状態を判定する判定(接近判定)を停止する(ステップS11)。
【0129】
静電容量センサ10に水が付着(または、静電容量センサ10の近傍のカバーに付着)すると次のことが生じる。すなわち、水の量または水が付着する面積の大きさ等の変化により静電容量センサ10の静電容量が変動する。このため、物の接近状態を判定するときの判定精度が低下する。上記構成では、静電容量センサ10に接触した物または接近する物が水であると判定したときには、高分解能検出態様に基づく判定を停止する。すなわち、上記静電容量検出装置2は、精度の低い判定結果を出力しない。
【0130】
・上記各実施形態では、静電容量検出装置2はドアハンドル1に内蔵されているが、静電容量検出装置2の配置場所はこれに限定されない。例えば、静電容量検出装置2は、車両ドア、車両(例えば乗降口周辺)、車両の窓柱内(ピラー内)、車両のエンブレム内に配置されうる。