特許第6558223号(P6558223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558223交通流データ収集装置、および交通流データ収集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558223
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】交通流データ収集装置、および交通流データ収集方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20190805BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   G08G1/01 D
   G08G1/01 E
   G08G1/04 D
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-224866(P2015-224866)
(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2017-91451(P2017-91451A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今吉 英司
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 透
(72)【発明者】
【氏名】竹本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】阪本 禎宏
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−259833(JP,A)
【文献】 特開2004−295165(JP,A)
【文献】 特開2012−137978(JP,A)
【文献】 特開2008−299785(JP,A)
【文献】 特開2007−328454(JP,A)
【文献】 特開2008−152495(JP,A)
【文献】 特開2006−251910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器が設置された交差点の流入路から前記交差点に進入した車両が当該交差点での分岐方向に関係なく走行する領域であって、前記流入路に対応付けて前記交差点内の一部に設定した検知領域内に位置する車両の有無を検知する車両検知部と、
前記車両検知部の検知結果に基づき、前記検知領域内に位置する車両が検知されているかどうかを示す車両検知信号を形成する車両検知信号形成部と、
前記車両検知信号形成部によって形成された前記車両検知信号を処理し、前記検知領域の占有率にかかる計測、および前記検知領域の交通流率にかかる計測を行う計測部と、
前記計測部によって計測された前記検知領域の占有率にかかる計測値、および前記検知領域の交通流率にかかる計測値を用いて、前記検知領域の占有率、および前記検知領域の交通流率を算出する算出部と、
前記算出部が算出した、前記流入路から前記交差点に進入する車両群の現示期間における前記検知領域の占有率、および前記検知領域の交通流率により、交通状況を判定する交通状況判定部と、を備えた交通流データ収集装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記流入路から前記交差点に進入する車両群の現示期間の開始時、および当該現示期間の終了時に、前記計測部が計測している前記検知領域の占有率にかかる計測値、および前記検知領域の交通流率にかかる計測値を用いて、前記流入路から前記交差点に進入する車両群の現示期間における前記検知領域の占有率、および前記検知領域の交通流率を算出する、請求項に記載の交通流データ収集装置。
【請求項3】
前記車両検知信号形成部は、前記流入路から前記交差点に進入する車両群の現示期間でないとき、前記車両検知部による検知結果にかかわらず、前記検知領域を内に位置する車両が検知されていないことを示す車両検知信号を形成する、請求項1、または2に記載の交通流データ収集装置。
【請求項4】
前記算出部は、第1のタイミング、および第2のタイミングに、前記計測部が計測している前記検知領域の占有率にかかる計測値、および前記検知領域の交通流率にかかる計測値を用いて、前記流入路から前記交差点に進入する車両群の現示期間における前記検知領域の占有率、および前記検知領域の交通流率を算出する、請求項に記載の交通流データ収集装置。
【請求項5】
前記交通状況判定部は、前記流入路から前記交差点内に進入し、前記検知領域を通過した車両の流出路が、滞留している車両で詰まっている先詰まり状態であるかどうかを判定する、請求項1〜4のいずれかに記載の交通流データ収集装置。
【請求項6】
前記車両検知部は、前記交差点内を撮像した撮像画像を処理し、この交差点内に設定した前記検知領域内に位置する車両の有無を検知する、請求項1〜のいずれかに記載の交通流データ収集装置。
【請求項7】
車両検知部が、信号灯器が設置された交差点の流入路から前記交差点に進入した車両が当該交差点での分岐方向に関係なく走行する領域であって、前記流入路に対応付けて前記交差点内の一部に設定した検知領域内に位置する車両の有無を検知する車両検知ステップと、
車両検知信号形成部が、前記車両検知部の検知結果に基づき、前記検知領域内に位置する車両が検知されているかどうかを示す車両検知信号を形成する車両検知信号形成ステップと、
計測部が、前記車両検知信号形成部によって形成された前記車両検知信号を処理し、前記検知領域の占有率にかかる計測、および前記検知領域の交通流率にかかる計測を行う計測ステップと、
算出部が、前記計測部によって計測された前記検知領域の占有率にかかる計測値、および前記検知領域の交通流率にかかる計測値を用いて、前記検知領域の占有率、および前記検知領域の交通流率を算出する算出ステップと、
交通状況判定部が、前記算出部が算出した、前記流入路から前記交差点に進入する車両群の現示期間における前記検知領域の占有率、および前記検知領域の交通流率により、交通状況を判定する交通状況判定ステップと、
を備えた交通流データ収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、信号灯器が設置された交差点の交通流にかかる交通流データを計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交差点の交通状況に応じて、交差点に設置されている信号灯器の現示表示を切り替えることが行われている(特許文献1、2等参照)。
【0003】
特許文献1は、CCDカメラで撮像した画像を処理して、交差点内に位置する車両の台数を検知し、検知した車両の台数に基づいて信号灯器の現示表示を切り替える構成を開示している。
【0004】
また、特許文献2は、ビデオカメラで交差点への流入路の出口付近に設定した追跡エリアと、交差点からの流出路の入口付近に設定した先詰まり判定エリアとを撮像し、先詰まり判定エリア内の車両の有無を検知し、検知結果に基づいて交差点からの流出路において先詰まりが発生しているかどうかを判定する構成を開示している。また、特許文献2は、交差点からの流出路において先詰まりが発生しているかどうかを判定した判定結果に基づき、信号灯器の現示表示を切り替える構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−299785号公報
【特許文献2】特開平4−352300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載された発明は、交差点内における車両の検知結果に基づいて、交差点の交通状況の判定に用いる交通流データを計測するものではなかった。
【0007】
この発明の目的は、交差点の交通状況の判定に用いる交差点の交通流データを、当該交差点内における車両の検知結果に基づいて計測する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の交通流データ収集装置は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
【0009】
車両検知部は、信号灯器が設置された交差点の流入路から、この交差点に進入した車両が当該交差点での分岐方向に関係なく走行する領域であって、流入路に対応付けて交差点内に設定した検知領域内に位置する車両の有無を検知する。車両検知部は、例えば、カメラ等の撮像装置により交差点内を撮像したフレーム画像を処理し、検知領域内に位置する車両の有無を検知する構成であってもよいし、ループコイル式、光電式、電波式等の車両感知器によって検知領域内に位置する車両の有無を検知する構成であってもよいし、その他の構成であってもよい。
【0010】
なお、流入路に対応付けられる検知領域は、この流入路から交差点に進入したほとんど全ての車両が走行する交差点内の領域である。
【0011】
車両検知信号形成部は、車両検知部の検知結果に基づき、検知領域内に位置する車両が検知されているかどうかを示す車両検知信号を形成する。車両検知信号は、例えばハイ、またはローの2値で、検知領域内に位置する車両が検知されているかどうかを示す信号である。車両検知信号は、車両検知部が検知領域内に位置する車両を検知しているとき、ハイであってもよいし(この場合、車両検知部が検知領域内に位置する車両を検知していないときロー)、ローであってもよい(この場合、車両検知部が検知領域内に位置する車両を検知していないときハイ)。
【0012】
計測部は、車両検知信号形成部によって形成された車両検知信号を処理し、検知領域の占有率にかかる計測、および検知領域の交通流率にかかる計測を行う。
【0013】
検知領域の占有率PGは、計測期間を時刻a〜時刻bまでのT[sec]とした場合、この計測期間中に車両が検知領域内に位置していた時間tの割合であり、
PG=(t/T)×100[%]
により算出される。
【0014】
言い換えれば、上記の時間tは、計測期間中に車両検知部が検知領域内に位置している車両を検知していた時間である。したがって、計測部は、検知領域の占有率にかかる計測として、車両検知信号を処理して上記の時間tを直接、または間接的に計測する構成であればよい。
【0015】
また、検知領域の交通流率Fは、検知領域における単位時間当たりの車両の通過台数であり、計測期間中の交通流率Fは、計測期間中に検知領域を通過した車両(通過車両)の台数Qを用いて、
F=Q/T[台/sec]
により算出される。
【0016】
したがって、計測部は、検知領域の交通流率にかかる計測として、車両検知信号を処理して検知領域を通過した通過車両の台数Qを直接、または間接的に計測する構成であればよい。算出部が、計測部によって計測された検知領域の占有率にかかる計測値、および検知領域の交通流率にかかる計測値を用いて、上述した検知領域の占有率PG、および検知領域の交通流率Fを算出する。
【0017】
そして、交通状況判定部が、検知領域の占有率PG、および交通流率Fにより、交差点の交通状況を判定する。交通状況判定部は、交差点の交通状況として、この検知領域に対応する流入路が混雑しているかどうかや、この検知領域に対応する流出路において先詰まりが発生しているかどうか等の判定を行う。
【0018】
このように、この発明にかかる交通流データ収集装置は、交差点の交通状況の判定に用いる交差点の交通流データを、当該交差点内における車両の検知結果に基づいて計測することができる。
【0020】
また、算出部は、検知領域の占有率PG、および検知領域の交通流率Fを適正に算出するため、この検知領域に対応する流入路の車両群が現示である現示期間において、計測部が計測した検知領域の占有率にかかる計測値、および検知領域の交通流率にかかる計測値を用いるのがよい。
【0021】
例えば、算出部は、流入路から交差点に進入する車両群の現示期間の開始時、および当該現示期間の終了時に、計測部が計測している検知領域の占有率にかかる計測値、および検知領域の交通流率にかかる計測値を用いて、流入路から前記交差点に進入する車両群の現示期間における検知領域の占有率、および検知領域の交通流率を算出する構成にすればよい。
【0022】
また、車両検知信号形成部を、流入路から交差点に進入する車両群の現示期間でないとき、車両検知部による検知結果にかかわらず、検知領域を内に位置する車両が検知されていないことを示す車両検知信号を形成する構成にしてもよい。この場合、算出部は、任意の第1のタイミング、および第2のタイミングに、計測部が計測している検知領域の占有率にかかる計測値、および検知領域の交通流率にかかる計測値を用いて、流入路から交差点に進入する車両群の現示期間における検知領域の占有率、および検知領域の交通流率を算出する構成にできる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、交差点の交通状況の判定に用いる交差点の交通流データを、当該交差点内における車両の検知結果に基づいて計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】交通管制システムの主要部の構成を示すブロック図である。
図2】車両検知装置、および信号制御装置が設置された交差点を示す概略図である。
図3】車両検知装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図4】信号制御装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図5】センタ装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図6】交差点に設置されている信号灯器の現示階梯図の例である。
図7】車両検知装置の動作を示すフローチャートである。
図8】車両検知信号形成処理を示すフローチャートである。
図9】交通流データ計測処理を示すフローチャートである。
図10】交通流データ収集処理を示すフローチャートである。
図11】交通状況判定処理を示すフローチャートである。
図12】交通状況の判定パターンを示す図である。
図13】別の例にかかる車両検知信号形成処理を示すフローチャートである。
図14】別の例にかかる交通流データ収集処理を示すフローチャートである。
図15】別の例にかかる交通状況の判定パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0026】
図1は、この例にかかる交通管制システムの主要部の構成を示すブロック図である。交通管制システムは、車両検知装置1と、信号制御装置2と、センタ装置3と、を備えている。
【0027】
車両検知装置1は、各交差点に設置される。車両検知装置1は、交差点内(後述する検知領域101〜108)に位置する車両を検知する。また、車両検知装置1は、交差点内に位置する車両の検知結果に基づく車両検知信号を出力する。この例では、車両検知装置1が、この発明で言う車両検知部、および車両検知信号形成部を有する。
【0028】
信号制御装置2は、各交差点に設置される。信号制御装置2は、交差点に設置されている信号灯器4の現示表示を制御する。また、信号制御装置2は、同じ交差点に設置されている車両検知装置1が出力した車両検知信号を処理して、この交差点の交通流にかかる交通流データの計測を行う。信号制御装置2は、計測した交通流データを出力する。この例では、信号制御装置2が、この発明で言う計測部を有する。
【0029】
センタ装置3は、交通管制センタに設置される。図1では、センタ装置3に接続されている信号制御装置2を1つだけ示しているが、実際には、複数の交差点に設置されている信号制御装置2が接続されている。センタ装置3は、接続されている信号制御装置2から入力された交通流データを用いて、この信号制御装置2が設置されている交差点の交通状況を判定する。また、センタ装置3は、判定した交差点の交通状況に応じて、この交差点に設置されている信号灯器4の現示表示の制御に用いる信号制御パラメータを生成する。この例では、センタ装置3が、この発明で言う算出部、および交通状況判定部を有する。
【0030】
図2は、この例にかかる車両検知装置1、および信号制御装置2が設置された交差点を示す概略図である。図3は、車両検知装置の主要部の構成を示すブロック図である。図4は、信号制御装置の主要部の構成を示すブロック図である。図5は、センタ装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【0031】
車両検知装置1は、制御部11と、第1の画像入力部12と、第2の画像入力部13と、第1の画像処理部14と、第2の画像処理部15と、出力部16と、を備えている。
【0032】
制御部11は、車両検知装置1本体各部の動作を制御する。
【0033】
第1の画像入力部12には、カメラ5aによって撮像されたフレーム画像が入力される。また、第2の画像入力部13には、カメラ6aによって撮像されたフレーム画像が入力される。この例では、図2の左右方向に車両が通行する道路を主道路、図2の上下方向に車両が通行する道路を従道路として説明する。カメラ5aは、交差点内に設定した検知領域101、102、105、106が撮像エリアに収まるように設置している。カメラ5bは、交差点内に設定した検知領域103、104、107、108が撮像エリアに収まるように設置している。カメラ5(5a、5b)のフレームレートは、数十フレーム/秒である。この例では、カメラ5(5a、5b)のフレームレートを、20フレーム/秒として説明する。
【0034】
検知領域101は、図2の右側から交差点に進入する直進車両、および左折車両の流入路111に対応付けている。検知領域102は、図2の右側から交差点に進入する右折車両の流入路112に対応付けている。検知領域103は、図2の左側から交差点に進入する直進車両、および左折車両の流入路113に対応付けている。検知領域104は、図2の左側から交差点に進入する右折車両の流入路114に対応付けている。検知領域105は、図2の下側から交差点に進入する直進車両、および左折車両の流入路115に対応付けている。検知領域106は、図2の下側から交差点に進入する右折車両の流入路116に対応付けている。検知領域107は、図2の上側から交差点に進入する直進車両、および左折車両の流入路117に対応付けている。検知領域108は、図2の上側から交差点に進入する右折車両の流入路118に対応付けている。
【0035】
各検知領域101〜108は、対応付けている流入路111〜118から交差点に進入したほとんど全ての車両が走行する交差点内の領域である。
【0036】
第1の画像処理部14は、第1の画像入力部12に入力されたフレーム画像(カメラ5aによって撮像されたフレーム画像)を処理し、検知領域101、102、105、106毎に、その検知領域内に車両が位置しているかどうかを検知する。また、第1の画像処理部14は、検知領域101、102、105、106毎に、車両の検知結果に基づく車両検知信号を形成する。
【0037】
第2の画像処理部15は、第2の画像入力部13に入力されたフレーム画像(カメラ5bによって撮像されたフレーム画像)を処理し、検知領域103、104、107、108毎に、その検知領域内に車両が位置しているかどうかを検知する。また、第2の画像処理部15は、検知領域103、104、107、108毎に、車両の検知結果に基づく車両検知信号を形成する。
【0038】
各検知領域101〜108の車両検知信号は、この例では、ハイ、またはローの2値で、検知領域101〜108内に位置する車両が検知されているかどうかを示す信号である。車両検知信号は、検知領域101〜108内に位置する車両を検知しているときハイであり、検知領域101〜108内に位置する車両を検知していないときローである。第1の画像処理部14、および第2の画像処理部15が、この発明で言う車両検知部および車両検知信号形成部にかかる構成を有する。
【0039】
出力部16は、検知領域101〜108毎に形成された車両検知信号を信号制御装置2に出力する。
【0040】
信号制御装置2は、制御部21と、車両検知信号入力部22と、交通流データ計測部23と、現示表示制御部24と、通信部25と、を備えている。
【0041】
制御部21は、信号制御装置2本体各部の動作を制御する。
【0042】
車両検知信号入力部22には、車両検知装置1において形成された各検知領域101〜108の車両検知信号が入力される。
【0043】
交通流データ計測部23は、車両検知信号入力部22に入力された各検知領域101〜108の車両検知信号を処理し、検知領域101〜108毎に交通流データを計測する。交通流データ計測部23は、検知領域101〜108毎に、占有率にかかる計測値をカウントする占有率カウンタと、交通流率にかかる計測値をカウントする交通流率カウンタと、を有している。すなわち、交通流データ計測部23は、検知領域101〜108毎に、占有率にかかる計測と、交通流率にかかる計測とを行う。この例では、交通流データは、占有率と交通流率とである。交通流データ計測部23が、この発明で言う計測部に相当する。
【0044】
現示表示制御部24は、交差点に設置されている信号灯器4(4a、4b)の現示表示を制御する。信号灯器4aは、主道路を走行して交差点に進入する車両に対するものである。また、信号灯器4bは、従道路を走行して交差点に進入する車両に対するものである。
【0045】
通信部25は、センタ装置3との間における通信を行う。信号制御装置2は、各検知領域101〜108について計測した交通流データを通信部25からセンタ装置3に送信する。また、信号制御装置2は、センタ装置3から送信されてきた、信号灯器4の現示表示を制御する信号制御パラメータを通信部25において受信する。
【0046】
センタ装置3は、制御部31と、交通状況判定部32と、信号制御パラメータ生成部33と、通信部34と、を備えている。
【0047】
制御部31は、センタ装置3本体各部の動作を制御する。
【0048】
交通状況判定部32は、検知領域101〜108毎に計測された交通流データを用いて、交差点の交通状況を判定する。交通状況判定部32は、検知領域101〜108毎に交通状況を判定し、各検知領域101〜108の交通状況を基にして、交差点の交通状況を判定する。交通状況判定部32が、この発明で言う交通状況判定部に相当する。
【0049】
信号制御パラメータ生成部33は、判定された各検知領域101〜108の交通状況に基づき、信号灯器4の現示表示を制御する信号制御パラメータを生成する。
【0050】
通信部34は、信号制御装置2との間における通信を行う。
【0051】
ここで、図2に示す交差点に設置されている信号灯器4の現示表示の変化について簡単に説明する。図6は、この交差点に設置されている信号灯器の現示階梯図である。図6に示す例では、信号灯器4(4a、4b)の階梯ステップ数は、10ステップである。
【0052】
階梯ステップ1は、信号灯器4aが青で、信号灯器4bが赤であり、
階梯ステップ2は、信号灯器4aが黄で、信号灯器4bが赤であり、
階梯ステップ3は、信号灯器4aが右折矢で、信号灯器4bが赤であり、
階梯ステップ4は、信号灯器4aが黄で、信号灯器4bが赤であり、
階梯ステップ5は、信号灯器4、および信号灯器4bが赤であり、
階梯ステップ6は、信号灯器4aが赤で、信号灯器4bが青であり、
階梯ステップ7は、信号灯器4aが赤で、信号灯器4bが黄であり、
階梯ステップ8は、信号灯器4aが赤で、信号灯器4bが右折矢であり、
階梯ステップ9は、信号灯器4aが赤で、信号灯器4bが黄であり、
階梯ステップ10は、信号灯器4、および信号灯器4bが赤である。
【0053】
信号灯器4(4a、4b)の現示表示は、上記階梯ステップ1〜10を1サイクルとし、これを繰り返す。
【0054】
また、この例では、階梯ステップ1、2の期間を、主道路側の直進車両、および左折車両の現示期間であるフェーズΦ1とし、階梯ステップ3、4の期間を、主道路側の右折車両の現示期間であるフェーズΦ2とし、階梯ステップ6、7の期間を、従道路側の直進車両、および左折車両の現示期間であるフェーズΦ4とし、階梯ステップ8、9の期間を、従道路側の右折車両の現示期間であるフェーズΦ5としている。フェーズΦ3、およびフェーズΦ6は、現示が交差点に進入するどの車両群でもない期間(所謂、全赤期間)である。
【0055】
以下、この例にかかる交通管制システムを構成する、車両検知装置1、信号制御装置2、およびセンタ装置3の動作について説明する。
【0056】
図7は。車両検知装置の動作を示すフローチャートである。車両検知装置1は、カメラ5aによって撮像されたフレーム画像が第1の画像入力部12に入力されているとともに、カメラ5bによって撮像されたフレーム画像が第2の画像入力部13に入力されている。上述したように、この例では、カメラ5a、5bのフレームレートは、20フレーム/秒であるので、第1の画像入力部12および第2の画像入力部13に入力されるフレーム画像の撮像間隔は50msecである。
【0057】
車両検知装置1は、第1の画像処理部14、および第2の画像処理部15のそれぞれが図7に示す処理を実行する。第1の画像処理部14は、4つの検知領域101、102、105、106に対して、カメラ5aが撮像した交差点のフレーム画像を用いて図7に示す処理を行い、第2の画像処理部15は、4つの検知領域103、104、107、108に対して、カメラ5bが撮像した交差点のフレーム画像を用いて図7に示す処理を行う。ここでは、第1の画像処理部14を例にして説明する。
【0058】
第1の画像処理部14は、第1の画像入力部12に入力されたカメラ5aが撮像した交差点のフレーム画像の中から処理対象フレーム画像を選択する(s1)。s1では、処理対象フレーム画像として、前回処理した処理対象フレーム画像の次にカメラ5aが撮像した交差点のフレーム画像を選択してもよいし、前回処理した処理対象フレーム画像から、カメラ5aが撮像した予め定めた所定フレーム数後(例えば、2フレーム後や、3フレーム後)の交差点のフレーム画像を選択してもよい。
【0059】
第1の画像処理部14は、s1で選択した処理対象フレーム画像に対して、4つの検知領域101、102、105、106のそれぞれについて車両の有無を検知する(s2)。第1の画像処理部14は、s2における車両の検知結果に基づき、4つの検知領域101、102、105、106のそれぞれについて、車両検知信号を形成し(s3)、s1に戻る。s3で形成される車両の検知信号は、ハイ、またはローの2値の信号である。
【0060】
なお、上述したように、4つの検知領域103、104、107、108については、第2の画像処理部15が、第2の画像入力部13に入力されたカメラ5bが撮像した交差点のフレーム画像を用いて図7に示す処理を行う。
【0061】
図8は、s3にかかる車両検知信号を生成する処理を示すフローチャートである。図8は、1つの検知領域について車両の検知信号を生成する処理(車両検知信号生成処理)を示している。すなわち、検知領域101〜108毎に、図8に示す車両検知信号生成処理が行われる。
【0062】
ここでは、第1の画像処理部14が、検知領域101の車両検知信号を生成する場合を例にして説明する。第1の画像処理部14は、検知領域101に位置する車両を検知していると(s11)、出力部16から出力している検知領域101の車両検知信号をハイにする(s12)。
【0063】
なお、出力部16は、上述したように各検知領域101〜108の車両検知信号を出力している。
【0064】
また、第1の画像処理部14は、s1において、検知領域101に位置する車両を検知していないと(s11)、その時点において出力部16から出力している検知領域101の車両検知信号がローであるかどうかを判定する(s13)。第1の画像処理部14は、s13で車両検知信号がローでない(ハイである。)と判定すると、予め定めているホールド時間(例えば、120msec)以上継続してハイであるかどうかを判定する(s14)。第1の画像処理部14は、検知領域101の車両検知信号がハイである期間が、予め定めているホールド時間以上継続していれば、出力部16から出力している検知領域101の車両検知信号をローにする(s15)。一方、第1の画像処理部14は、検知領域101の車両検知信号がハイである期間が、予め定めているホールド時間以上継続していなければ、出力部16から出力している検知領域101の車両検知信号をハイにする(s12)。s14にかかるステップは、ノイズ等の影響を受けて、車両検知信号のハイ、ローが頻繁に変化するのを防止するために設けている。
【0065】
また、第1の画像処理部14は、s13で車両検知信号がローであると判定すると、出力部16から出力している検知領域101の車両検知信号をローにする(s15)。
【0066】
なお、ここでは、検知領域101の検知信号の生成処理を説明したが、検知領域102〜108についても同様である。また、s12では、車両検知信号がローからハイに変化する場合もあれば、ハイが維持される場合もある。同様に、s15では、車両検知信号がハイからローに変化する場合もあれば、ローが維持される場合もある。
【0067】
次に信号制御装置2における交通流データの計測処理について説明する。図9は、交通流データの計測処理を示す図である。交通流データ計測部23が、図9に示す処理を行う。
【0068】
交通流データ計測部23は、上述したように、検知領域101〜108毎に、占有率にかかる計測値をカウントする占有率カウンタと、交通流率にかかる計測値をカウントする交通流率カウンタと、を有している。また、交通流データ計測部23は、検知領域101〜108毎に、図9に示す処理を行う。ここでは、検知領域101を例にして説明する。
【0069】
交通流データ計測部23は、予め定めた計測タイミングになると(s21)、検知領域101について入力されている車両検知信号がハイであるか、ローであるかを判定する(s22)。計測タイミングは、ここではカメラ5におけるフレーム画像の撮像周期(50msec)に合わせている。すなわち、交通流データ計測部23は、50msec経過する毎に、計測タイミングになったと判定する。
【0070】
交通流データ計測部23は、s22で検知領域101について入力されている車両検知信号がハイであると判定すると、検知領域101に対応する占有率カウンタを1カウントアップし(s23)、s21に戻る。また、交通流データ計測部23は、s22で検知領域101について入力されている車両検知信号がローであると判定すると、前回の計測タイミングにおける、検知領域101の車両検知信号がハイであったかどうかを判定する(s24)。
【0071】
交通流データ計測部23は、s24で前回の計測タイミングにおける検知領域101の車両検知信号がハイであったと判定すると、検知領域101に対応する交通流率カウンタを1カウントアップし(s25)、s21に戻る。また、交通流データ計測部23は、s24で前回の計測タイミングにおける検知領域101の車両検知信号がローであったと判定すると、検知領域101に対応する占有率カウンタ、および交通流率カウンタをカウントアップすることなく、s21に戻る。
【0072】
このように、交通流データ計測部23は、検知領域101〜108毎に、
(1)その検知領域101〜108の車両検知信号がハイであると(すなわち、その検知領域101〜108に位置している車両が検知されていれば、)、当該検知領域101〜108の占有率カウンタを1カウントアップし、
(2)その検知領域101〜108の車両検知信号がハイからローへの変化があると(すなわち、その検知領域101〜108に位置していた車両が当該検知領域101〜108外に移動すれば、)、当該検知領域101〜108の交通流率カウンタを1カウントアップし、
(3)その検知領域101〜108の車両検知信号がローで維持されていると(すなわち、その検知領域101〜108に位置している車両が検知されていない状態が継続していれば、)、当該検知領域101〜108の占有率カウンタ、および交通流率カウンタをカウントアップしない。
【0073】
次に、センタ装置3における交通流データ収集処理について説明する。図10は、交通流データ収集処理を示すフローチャートである。
【0074】
センタ装置3は、図6に示したフェーズΦ1の開始タイミングになると(s31)、通信部34において、検知領域101、103の交通流データの送信を信号制御装置2に要求し、この要求に応じて信号制御装置2から送信されてきた検知領域101、103の交通流データを取得する(s32)。s32では、交通流データとして、検知領域101、103に対応する占有率カウンタ、および交通流率カウンタのカウント値の送信を要求する。
【0075】
また、センタ装置3は、図6に示したフェーズΦ2の開始タイミングになると(s33)、通信部34において、検知領域101〜104の交通流データの送信を信号制御装置2に要求し、この要求に応じて信号制御装置2から送信されてきた検知領域101〜104の交通流データを取得する(s34)。s34では、交通流データとして、検知領域101〜104に対応する占有率カウンタ、および交通流率カウンタのカウント値の送信を要求する。
【0076】
また、センタ装置3は、図6に示したフェーズΦ3の開始タイミングになると(s35)、通信部34において、検知領域102、104の交通流データの送信を信号制御装置2に要求し、この要求に応じて信号制御装置2から送信されてきた検知領域102、104の交通流データを取得する(s36)。s36では、交通流データとして、検知領域102、104に対応する占有率カウンタ、および交通流率カウンタのカウント値の送信を要求する。
【0077】
また、センタ装置3は、図6に示したフェーズΦ4の開始タイミングになると(s37)、通信部34において、検知領域105、107の交通流データの送信を信号制御装置2に要求し、この要求に応じて信号制御装置2から送信されてきた検知領域105、107の交通流データを取得する(s38)。s38では、交通流データとして、検知領域105、107に対応する占有率カウンタ、および交通流率カウンタのカウント値の送信を要求する。
【0078】
また、センタ装置3は、図6に示したフェーズΦ5の開始タイミングになると(s39)、通信部34において、検知領域105〜108の交通流データの送信を信号制御装置2に要求し、この要求に応じて信号制御装置2から送信されてきた検知領域105〜108の交通流データを取得する(s40)。s40では、交通流データとして、検知領域105〜108に対応する占有率カウンタ、および交通流率カウンタのカウント値の送信を要求する。
【0079】
さらに、センタ装置3は、図6に示したフェーズΦ6の開始タイミングになると(s41)、通信部34において、検知領域106、108の交通流データの送信を信号制御装置2に要求し、この要求に応じて信号制御装置2から送信されてきた検知領域106、108の交通流データを取得し(s42)、s31に戻る。s42では、交通流データとして、検知領域102、104に対応する占有率カウンタ、および交通流率カウンタのカウント値の送信を要求する。
【0080】
センタ装置3は、上述の交通流データ収集処理を実行することにより、検知領域101〜108毎に、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間の開始タイミング、および現示期間の終了タイミングにおける占有率カウンタ、および交通流率カウンタのカウント値を取得している。各検知領域101〜108の占有率カウンタ、および交通流率カウンタは、対応する流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間の開始タイミングや、現示期間の終了タイミングにカウント値をリセットしていない。すなわち、各検知領域101〜108の占有率カウンタ、および交通流率カウンタのカウント値は累積値である。
【0081】
したがって、センタ装置3は、検知領域101〜108毎に、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118について、その流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間中における占有率カウンタのカウント数、および交通流率カウンタのカウント数を得ることができる。例えば、検知領域101について、s34で取得した占有率カウンタのカウント値から、s32で取得した占有率カウンタのカウント値を減算した値が、この検知領域101と対応付けている流入路111から交差点に進入する車両群の現示期間中における占有率カウンタのカウント数である。また、検知領域101について、s34で取得した交通流率カウンタのカウント値から、s32で取得した交通流率カウンタのカウント値を減算した値が、この検知領域101と対応付けている流入路111から交差点に進入する車両群の現示期間中における交通流率カウンタのカウント数である。
【0082】
次に、センタ装置3における交通状況判定処理について説明する。図11は、交通状況判定処理を示すフローチャートである。
【0083】
センタ装置3は、交通状況判定部32において、検知領域101〜108毎に、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118の交通状況を判定する。センタ装置3は、検知領域101〜108毎に、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間中の占有率PGを算出する(s51)。s51では、各検知領域101〜108の占有率PGを、
PG=(t/T)×100[%]
により算出する。Tは、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間の時間であり、tは、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間中に車両が検知領域101〜108内に位置していた時間である。tは、検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間中における占有率カウンタのカウント数と、上述したs21の計測タイミングの繰り返しの時間(この例では、50msec)と、の積である。
【0084】
また、センタ装置3は、検知領域101〜108毎に、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間中の交通流率Fを算出する(s52)。s52では、各検知領域101〜108の交通流率Fを、
F=Q/T[台/sec]
により算出する。Tは、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間の時間であり、Qは、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間中に検知領域101〜108を通過した車両の台数である。Qは、検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間中における交通流率カウンタのカウント数である。
【0085】
センタ装置3は、交通状況判定部32において、各流入路111〜118の交通状況を判定する(s53)。s53では、検知領域101〜108毎に、その検知領域101〜108について算出した占有率PG、および交通流率Fによって、図12に示す4つのパターンα〜δのいずれに該当するかを判定する。図12に示すPGkは、占有率PGについて予め定めた閾値であり、Fkは、交通流率Fについて予め定めた閾値である。閾値PGk、および閾値Fkは、管理者等が経験的に推測した値であってもよいし、交差点における実際の交通状況別に計測した占有率PG、および交通流率Fを用いて統計処理等で推定した値にしてもよい。
【0086】
図12に示すパターンαは、s51で算出した占有率PGが閾値PGkよりも小さく、且つs52で算出した交通流率Fが閾値Fkよりも小さいパターンである。このパターンαは、流入路において渋滞が発生しておらず、且つ流出路において先詰まりが発生していない交通状況である。
【0087】
パターンβは、s51で算出した占有率PGが閾値PGkよりも大きく、且つs52で算出した交通流率Fが閾値Fkよりも小さいパターンである。このパターンβは、流出路において先詰まりが発生している交通状況である。
【0088】
パターンγは、s51で算出した占有率PGが閾値PGkよりも小さく、且つs52で算出した交通流率Fが閾値Fkよりも大きいパターンである。このパターンγは、流入路において渋滞が発生しつつあり、且つ流出路において先詰まりが発生していない交通状況である。
【0089】
パターンδは、s51で算出した占有率PGが閾値PGkよりも大きく、且つs52で算出した交通流率Fが閾値Fkよりも大きいパターンである。パターンδは、流入路において渋滞が発生しているが、流出路において先詰まりが発生していない交通状況である。
【0090】
また、センタ装置3は、信号制御パラメータ生成部33において、上述した処理で各流入路111〜118について判定した交通状況に基づき、交差点に設置されている信号灯器4(4a、4b)の現示表示の制御に用いる信号制御パラメータを生成する。センタ装置3は、その時点における信号制御パラメータを基準にして信号制御パラメータを生成する。センタ装置3は、生成した信号制御パラメータを信号制御装置2に通知する。信号制御装置2は、センタ装置3から通知された信号制御パラメータに基づき、交差点に設置されている信号灯器4(4a、4b)の現示表示を制御する。
【0091】
このように、この例にかかる交通管制システムでは、交差点の流入路111〜118毎に、交差点内における車両の検知結果に基づき、交差点の交通状況の判定に用いる交通流データの計測が行える。
【0092】
また、各流入路111〜118の交通状況の判定を、その流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間中に計測した交通流データによって行う構成であるので、交通状況を精度よく判定することができる。
【0093】
さらに、各流入路111〜118の交通状況に基づいて交差点の信号灯器4(4a、4b)の現示表示の制御に用いる信号制御パラメータを生成するので、渋滞の発生が抑えられる。
【0094】
なお、上記の例では、各流入路111〜118の現示期間を、信号灯器4(4a、4b)の青表示または右折矢印表示と、これに続く黄表示を含めた期間としたが、信号灯器4(4a、4b)の青表示または右折矢印表示の期間(これに続く黄表示を含めない期間)にしてもよい。この場合、図10に示した処理において、各検知領域101〜108について交通流データを取得する現示期間の終了タイミングを変更すればよい。例えば検知領域101については、上記の例では、交通流データを取得する現示期間の終了タイミングがフェーズΦ2の開始タイミングであったが、図6に示す階梯ステップ2の開始タイミングに変更すればよい。
【0095】
次に、この発明の別の例について説明する。この例にかかる交通管制システムも上記と同じ構成である。異なる点は、図8に示した、車両検知装置1の車両検知信号形成処理と、図10に示したセンタ装置3の交通流データ収集処理である。
【0096】
この例にかかる車両検知装置1は、図13に示す車両検知信号形成処理を実行する。なお、図13では、図8に示した処理と同じ処理については、同じステップ番号を付している。この例にかかる車両検知信号形成処理は、以下に示すs61にかかる処理を図8に示したs11と、s12との間に追加している。その他の処理は、同じである。
【0097】
車両検知装置1は、s11で検知領域101に位置する車両を検知していると判定すると、現在が現示期間中であるかどうかを判定する(s61)。車両検知装置1は、s61で現示期間でないと判定すると、s15で車両検知信号をローにする。また、車両検知装置1は、s61で現示期間であると判定すると、s12で車両検知信号をハイにする。
【0098】
すなわち、車両検知装置1は、検知領域101〜108毎に、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間でないとき、その検知領域101〜108にかかる車両検知信号をローに維持する。したがって、図9に示した信号制御装置2における交通流データ計測処理では、各検知領域101〜108の占有率カウンタ、および交通流カウンタは、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間でないときカウントアップされることがない。
【0099】
なお、信号灯器4(4a、4b)、または信号制御装置2が、信号灯器4(4a、4b)のその時点における現示表示を示す信号を車両検知装置1に出力する構成とし、車両検知装置1は、この現示表示を示す信号によって、s61にかかる判定を行えばよい。
【0100】
また、センタ装置3は、上述したように、信号制御装置2が各検知領域101〜108の占有率、および交通流率にかかる交通流データを、その検知領域101〜108と対応付けている流入路111〜118から交差点に進入する車両群の現示期間に計測しているので、信号灯器4(4a、4b)の現示表示のサイクルに同期させて、交通流データを収集する必要がない。このため、センタ装置3は、図14に示すように、予め定められた収集タイミングになると(s71)、通信部34において、各検知領域101〜108の交通流データの送信を信号制御装置2に要求し、この要求に応じて信号制御装置2から送信されてきた各検知領域101〜108の交通流データを取得する(s72)。
【0101】
これにより、この例にかかるセンタ装置3も図11に示した交通状況判定処理が行える。
【0102】
また、上記の例では、各流入路111〜118の交通状況を、図12に示した4つのパターンα〜δのいずれであるかを判定するとしたが、図15に示す個のパターンA〜Iのいずれであるかを判定するようにしてもよい。
【0103】
図15に示すPGk1、PGk2(PGk1<PGk2)は、占有率PGについて予め定めた2つの閾値であり、Fk1、Fk2(Fk1<Fk2)は、交通流率Fについて予め定めた2つの閾値である。
【0104】
図15に示すパターンAは、占有率PGが閾値PGk1よりも小さく、且つ交通流率Fが閾値Fk1よりも小さいパターンである。パターンAは、流入路において渋滞が発生しておらず、且つ流出路において先詰まりが発生していない交通状況である。
【0105】
パターンBは、占有率PGが閾値PGk1と閾値PGk2と間の値であり、且つ交通流率Fが閾値Fk1よりも小さいパターンである。パターンBは、流入路において渋滞が発生しておらず、且つ流出路において先詰まりが発生しつつある交通状況である。
【0106】
パターンCは、占有率PGが閾値PGkよりも大きく、且つ交通流率Fが閾値Fk1よりも小さいパターンである。パターンCは、流出路において先詰まりが発生している交通状況である。
【0107】
パターンDは、占有率PGが閾値PGk1よりも小さく、且つ交通流率Fが閾値Fk1と閾値Fk2と間の値であるパターンである。パターンDは、上述のパターンAと同様に、流入路において渋滞が発生しておらず、且つ流出路において先詰まりが発生していない交通状況である。但し、パターンDは、パターンAよりも、流入路における交通量が増加している。
【0108】
パターンEは、占有率PGが閾値PGk1と閾値PGk2と間の値であり、且つ交通流率Fが閾値Fk1と閾値Fk2と間の値であるパターンである。パターンEは、上述のパターンBと同様に、流入路において渋滞が発生し、流出路において先詰まりが発生しつつある交通状況である。但し、パターンEは、パターンBよりも、流入路における交通量が増加している。
【0109】
パターンFは、占有率PGが閾値PGkよりも大きく、且つ交通流率Fが閾値Fk1と閾値Fk2と間の値であるパターンである。パターンFは、流入路において渋滞が発生しつつあり、且つ流出路において先詰まりが発生しつつある交通状況である。
【0110】
パターンGは、占有率PGが閾値PGk1よりも小さく、且つ交通流率Fが閾値Fk2よりも大きいパターンである。パターンGは、流入路において渋滞が発生しつつあり、且つ流出路において先詰まりが発生していない交通状況である。
【0111】
パターンHは、占有率PGが閾値PGk1と閾値PGk2と間の値であり、且つ交通流率Fが閾値Fk2よりも大きいパターンである。パターンHは、流入路において渋滞が発生しつつあり、且つ流出路において先詰まりが発生しつつある交通状況である。
【0112】
パターンIは、占有率PGが閾値PGkよりも大きく、且つ交通流率Fが閾値Fk2よりも大きいパターンである。パターンIは、流入路において渋滞が発生している交通状況である。
【0113】
また、上記の例では、2つのカメラ5(5a、5b)を用いて、検知領域101〜108を撮像するとしたが、1つのカメラ5で検知領域101〜108を撮像する構成としてもよいし、3つ以上のカメラ5で検知領域101〜108を撮像する構成としてもよい。すなわち、交差点内に設定した検知領域101〜108を撮像するカメラ5の台数は、何台であってもよい。
【0114】
また、上記の例では、検知領域101〜108内に位置する車両の検知を、その検知領域101〜108を撮像したフレーム画像を処理して行うとしたが、ループコイル式、光電式、電波式等の車両感知器によって検知領域内に位置する車両の有無を検知する構成であってもよいし、その他の構成であってもよい。
【0115】
さらに上記の例では、この発明にかかる交通流データ収集装置の構成を、車両検知装置1、信号制御装置2、およびセンタ装置3に分割して備える例で説明したが、車両検知装置1、信号制御装置2、またはセンタ装置3のいずれかの装置にまとめて備えるようにしてもよいし、車両検知装置1、信号制御装置2、およびセンタ装置3とは異なる筐体の装置として構成してもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…車両検知装置
2…信号制御装置
3…センタ装置
4(4a、4b)…信号灯器
5(5a、5b)…カメラ
11…制御部
12…第1の画像入力部
13…第2の画像入力部
14…第1の画像処理部
15…第2の画像処理部
16…出力部
21…制御部
22…車両検知信号入力部
23…交通流データ計測部
24…現示表示制御部
25…通信部
31…制御部
32…交通状況判定部
33…信号制御パラメータ生成部
34…通信部
101〜108…検知領域
111〜118…流入路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15