(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のフック装置であって、前記回動規制部は、前記フックユニットと一体に変位するように当該フックユニットとつながるフック側係合部と、前記シーブユニットと一体に変位するように当該シーブユニットとつながるシーブ側係合部と、を有し、前記フックユニットが前記シーブユニットに対して前記下端位置にあるときは前記フックユニットに対する前記シーブユニットの相対的な回動を許容するように前記フック側係合部及び前記シーブ側係合部が互いに離間する一方、前記フックユニットが前記シーブユニットに対して前記上端位置にあるときは前記フック側係合部及び前記シーブ側係合部が互いに係合可能であって当該係合により前記フックユニットに対する前記シーブユニットの相対的な回動を規制するように、前記フック側係合部及び前記シーブ側係合部が配置されている、フック装置。
請求項1または2記載のフック装置であって、中心軸をもつ連結軸部材をさらに備え、当該連結軸部材は、前記フックユニット及び前記シーブユニットの少なくとも一方に当該連結軸部材の中心軸回りに相対的に回動可能となるように連結され、かつ、前記フックユニット及び前記シーブユニットの一方に前記特定範囲内で相対的に昇降可能となるように連結されている、フック装置。
請求項3記載のフック装置であって、前記フックユニット及び前記シーブユニットの一方に前記連結軸部材のその中心軸に沿った方向への挿入を許容する長孔が設けられ、この長孔は前記特定範囲内で前記長孔に沿った前記連結軸部材の昇降を許容するように上下方向に延びる、フック装置。
請求項2記載のフック装置であって、中心軸をもつ連結軸部材をさらに備え、当該連結軸部材は、前記フックユニットに当該連結軸部材の中心軸回りに相対的に回動可能となるように、かつ、前記特定範囲内で相対的に昇降可能となるように連結される一方、前記シーブユニットに当該シーブユニットと一体に変位するように固定されており、前記シーブ側係合部は前記連結軸部材に固定され、前記フック側係合部は前記フックユニットのうち前記連結軸部材の周囲に位置する部位に固定されている、フック装置。
請求項2記載のフック装置であって、中心軸をもつ連結軸部材をさらに備え、当該連結軸部材は、前記シーブユニットに当該連結軸部材の中心軸回りに相対的に回動可能となるように、かつ、前記特定範囲内で相対的に昇降可能となるように連結される一方、前記フックユニットに当該フックユニットと一体に変位するように固定されており、前記フック側係合部は前記連結軸部材に固定され、前記シーブ側係合部は前記シーブユニットのうち前記連結軸部材の周囲に位置する部位に固定されている、フック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記フック装置では、そのフックユニットとシーブユニットとを分解する際の安全性の確保が重要な課題となる。具体的に、当該分解のためには、前記フックユニットを一旦着地させ、吊り下げ時に張っていた吊り荷用ロープ、すなわち前記シーブユニットのフックシーブに巻き掛けられているロープ、を弛ませる必要があるが、当該シーブユニットは当該フックユニットに対して横方向に回動可能であるため、前記吊り荷用ロープの弛みは前記フックユニットに対して前記シーブユニットが倒伏方向に大きく回動するのを許容するおそれがある。このようなシーブユニットの倒伏を防ぐことは、安全性を確保する上で非常に重要である。
【0006】
当該シーブユニットの回動を阻止する手段として、当該シーブユニット及び前記フックユニットに互いに合致するピン挿入穴をそれぞれ設けておき、前記吊り荷用ロープを弛ませる前に前記各ピン挿入孔に共通の固定ピンを挿入して前記フックシーブブロックと前記フックユニットとの相対位置を固定することが考えられる。しかし、当該ピン挿入孔に対する当該固定ピンの挿脱作業は面倒である。さらに、当該挿脱を行うためには、前記シーブユニット及び前記フックユニットのそれぞれのピン挿入穴の位置を相互に正確に合致させなければならないが、双方のピン挿入穴の位置を外部から目視で確認することは困難であり、よって当該ピン挿入穴同士の位置合わせの作業は容易でない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、互いに回動可能に連結されるフックユニット及びシーブユニットを備えたフック装置であって、特別な作業を要することなく、前記フックユニットが着地した状態での前記シーブユニットの著しい回動を防ぐことが可能なものを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供されるフック装置は、吊り荷が掛けられるフックを含むフックユニットと、吊り荷用ロープが巻き掛けられるフックシーブを含むシーブユニットであって、前記フックユニットに対して相対的に回動可能でかつ限られた範囲内で相対的に昇降可能となるように当該フックユニットに連結されたものと、前記フックユニットが前記シーブユニットに対して相対的に最も上昇した位置である上端位置にあるときは前記フックユニットが前記シーブユニットに対して相対的に最も降下した位置である下端位置にあるときに比べて前記シーブユニットの相対回動を規制する回動規制部と、を備える。
【0009】
このフック装置によれば、前記回動規制部は、前記フックユニット及び前記シーブユニットの使用状態に応じて前記フックユニットに対する前記シーブユニットの回動の規制を自動的に行い、これにより当該フック装置の安全性を高めることができる。具体的に、当該回動規制部は、前記フックユニット及び前記シーブユニットが吊り荷用ロープによって吊り下げられて前記フックユニットがその自重で前記シーブユニットに対して相対的に最も降下した下端位置にある状態では、前記フックユニットに対する前記シーブユニットの回動を許容する一方、前記フックユニットが着地してからさらに前記シーブユニットが降下することにより前記フックユニットが前記シーブユニットに対して相対的に最も上昇した上端位置に至ると、前記シーブユニットの相対回動を規制する。従って、固定ピンの挿脱といった特別な作業を行うことなく、前記フックユニットを着地させるだけで自動的に当該フックユニットに対する前記シーブユニットの相対回動を規制して安全性を確保することが可能である。
【0010】
前記回動規制部は、具体的には、前記フックユニットと一体に変位するように当該フックユニットとつながるフック側係合部と、前記シーブユニットと一体に変位するように当該シーブユニットとつながるシーブ側係合部と、を有し、前記フックユニットが前記シーブユニットに対して前記下端位置にあるときは前記フックユニットに対する前記シーブユニットの相対的な回動を許容するように前記フック側係合部及び前記シーブ側係合部が互いに離間する一方、前記フックユニットが前記シーブユニットに対して前記上端位置にあるときは前記フック側係合部及び前記シーブ側係合部が互いに係合可能であって当該係合により前記フックユニットに対する前記シーブユニットの相対的な回動を規制するように、前記フック側係合部及び前記シーブ側係合部が配置されているものが、好適である。
【0011】
前記フック側係合部及び前記シーブ側係合部は、前記フックユニットと前記シーブユニットとの相対変位を利用して互いに離間する状態と互いに係合可能な状態とに切換わることにより、当該相対変位に対応した適正な回動規制を行うことができる。
【0012】
前記フックユニットと前記シーブユニットとの連結のための具体的手段としては、中心軸をもつ連結軸部材であって、前記フックユニット及び前記シーブユニットの少なくとも一方に当該連結軸部材の中心軸回りに相対的に回動可能となるように連結され、かつ、前記フックユニット及び前記シーブユニットの一方に前記特定範囲内で相対的に昇降可能となるように連結されているものが、好適である。
【0013】
このフック装置では、連結軸部材を媒介とするだけの簡素な構造で、当該連結軸部材の中心軸を中心とする前記フックユニットと前記シーブユニットとの間の相対的な回動と、前記特定範囲内での前記フックユニットと前記シーブユニットとの間の相対的な昇降と、を許容しながら両ユニットを連結することができる。
【0014】
具体的には、前記フックユニット及び前記シーブユニットの一方に前記連結軸部材のその中心軸に沿った方向への挿入を許容する長孔が設けられ、この長孔は前記特定範囲内で前記長孔に沿った前記連結軸部材の昇降を許容するように上下方向に延びるものが、好適である。
【0015】
前記連結軸部材は、例えば、前記フックユニットに当該連結軸部材の中心軸回りに相対的に回動可能となるように、かつ、前記特定範囲内で相対的に昇降可能となるように連結されており、かつ前記シーブユニットに当該シーブユニットと一体に変位するように固定されていてもよい。この構造において、前記回動規制部が前記フック側係合部と前記シーブ側係合部とを有する場合、前記連結軸部材に前記シーブ側係合部を固定し(両者が一体に形成されている場合も含む。以下の「固定」も同じ。)、前記フックユニットのうち前記連結軸部材の周囲に位置する部位に前記フック側係合部を固定することが可能である。この配置は、前記フック側係合部及び前記シーブ側係合部を前記連結軸部材の近くに集約したコンパクトな構造で、前記フックユニットに対する前記シーブユニットの回動のロック及びアンロックを効果的に行うことを可能にする。
【0016】
前記連結軸部材は、あるいは、前記シーブユニットに当該連結軸部材の中心軸回りに相対的に回動可能となるように、かつ、前記特定範囲内で相対的に昇降可能となるように連結されており、かつ前記フックユニットに当該フックユニットと一体に変位するように固定されていてもよい。この構造において、前記回動規制部が前記フック側係合部と前記シーブ側係合部とを有する場合、前記連結軸部材に前記フック側係合部を固定し、前記シーブユニットのうち前記連結軸部材の周囲に位置する部位に前記シーブ側係合部を固定することが可能である。この配置も、前記フック側係合部及び前記シーブ側係合部を前記連結軸部材の近くに集約したコンパクトな構造で、前記フックユニットに対する前記シーブユニットの回動のロック及びアンロックを効果的に行うことを可能にする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、互いに回動可能に連結されるフックユニット及びシーブユニットを備えたフック装置であって、特別な作業を要することなく、前記フックユニットが着地した状態での前記シーブユニットの著しい回動を防ぐことが可能なものが、提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1及び
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るフック装置を示す。このフック装置は、単一のフックユニットUfと、複数のシーブユニットUsと、を備える。複数のシーブユニットUsは、選択的にかつ着脱可能に前記フックユニットUfに連結されることが可能であり、
図1は、前記フックユニットUfに対して左右の位置でそれぞれシーブユニットUsが連結された状態を示す。
【0021】
前記フックユニットUfは、吊り荷が掛けられるフック10と、当該フック10を縦軸回りに旋回可能に保持するフック旋回保持部20と、フック旋回保持部20を水平軸回りに揺動可能に保持するフック揺動保持部30と、を有する。
【0022】
前記フック10は、例えば鍛造品からなり、本体軸12と、左右一対の鉤部14と、を一体に有する。前記本体軸12は、上下方向に延びる円柱状をなす。前記各鉤部14は、当該本体軸12の下端から左右両側に突出しかつ上向きに曲がった形状を有し、当該鉤部14に吊り荷が掛けられることが可能である。当該鉤部14の先端と前記本体軸12との間には適宜離脱防止用のプレート16またはチェーンが掛渡される。
【0023】
前記フック旋回保持部20は、フック支軸22と、フックキャップ24と、フック軸受26と、を有する。前記フック支軸22は、略円柱状をなし、その中心軸が特定の水平方向である前後方向(
図1では奥行き方向、
図2では左右方向)に延びるように配置される。当該フック支軸22の軸方向の中央部には当該フック支軸22を上下方向に貫通するフック挿通孔22aが設けられ、当該フック挿通孔22aに前記フック10の本体軸12が挿通される。前記フックキャップ24は、前記本体軸12の上端部、すなわち前記フック挿通孔22aに挿通される本体軸12のうち前記フック支軸22よりも上側に突出する部分、に固定され、当該フック支軸22よりもその径方向の外側に突出する。前記フック軸受26は、スラスト軸受であり、前記フックキャップ24の下面と前記フック支軸22の上面との間に介在する。このフック軸受26を媒介として、前記フック10及び前記フックキャップ24が上下方向の中心軸回りに旋回可能となるように前記フック支軸22に支持される。
【0024】
前記フック揺動保持部30は、一対のフック支持板32と、図略の連結部材と、を有する。前記フック支持板32は、前記前後方向に間隔をおいて互いに平行となるように配置され、前記フック支軸22の前後端部をそれぞれ支持する下端部を有する。当該下端部は、当該フック支軸22を図略の軸受を介して回転可能に、つまりフック支軸22及びフック10を前後方向の水平軸回りに揺動可能に、支持する。前記連結部材は、前記フック支持板32同士を(前記フック旋回保持部20を含む)他の部材と干渉しない位置で相互に連結する。
【0025】
なお、本発明に係るフックユニットの構造は前記フックユニットUfの構造に限定されない。例えば、前記フック10の形状や用途によっては、当該フック10が前記フック支軸22に直接固定されてもよいし、あるいは、当該フック10が前記フック支軸22を介さずに直接フック支持板32に連結されてもよい。
【0026】
前記複数のシーブユニットUsのそれぞれは、複数枚のフックシーブ40と、シーブ保持部50と、を有する。シーブ保持部50は、前記複数枚のフックシーブ40を左右方向に延びる共通の水平軸回りに回転可能に保持する。前記各フックシーブ40には共通の吊り荷用ロープ42が巻き掛けられる。詳しくは、クレーンのブームの先端に設けられた複数のブームポイントシーブと前記複数のフックシーブ40との間に複数回にわたって巻き掛けられ、これにより、フック装置全体が前記吊り荷用ロープ42を介して前記ブームの先端から吊り下げられる。
【0027】
前記シーブ保持部50は、シーブ支軸52と、左右一対の外側支持板53と、複数の中間支持板54と、前後一対の本体板56と、を有する。
【0028】
前記シーブ支軸52は、前記各フックシーブ40の中心部分を左右方向に貫通するように配置され、これにより、当該複数のフックシーブ40をまとめて支持する。当該シーブ支軸52と前記複数のフックシーブ40との間にはそれぞれ図略の軸受が介在し、これにより、各フックシーブ40は前記シーブ支軸52の中心軸(すなわち当該フックシーブ40自身の中心軸)回りに回転可能となるように当該シーブ支軸52に支持される。
【0029】
前記一対の外側支持板53は、左右方向に互いに離間する位置で上下方向に延びる姿勢で配置され、前記シーブ支軸52の左右両端部をそれぞれ支持する。前記複数の中間支持板54は、前記一対の外側支持板53同士の間の領域で上下方向に延びる姿勢で配置され、前記シーブ支軸52の中間部分をそれぞれ支持する。当該中間支持板54の必要数(0も含む。)は前記フックシーブ40の枚数によって適宜設定される。
【0030】
前記一対の本体板56は、前記外側支持板53及び前記中間支持板54の下半部を前後両側から挟むように配置されて当該下半部に接合され、これにより当該支持板53,54を相互に一体化する。
【0031】
さらに、この実施の形態に係るフック装置は、次の構成を有する。
【0032】
I)前記複数のシーブユニットUsのそれぞれは、連結軸部材である回動連結軸60を媒介とすることにより、共通の前記フックユニットUfに対して水平な回動中心軸回りに相対的に回動可能でかつ限られた特定の範囲内で相対的に昇降可能となるように、当該フックユニットUfに着脱可能に連結される。
【0033】
なお、この実施の形態に係るフック装置では、
図1に示されるように前記フック支持板32の上端部の左右両側部位にそれぞれ前記シーブユニットUsが連結されるダブル態様と、
図3に示されるように前記フック支持板32の上端部の左右方向中央部位にのみ前記シーブユニットUsが連結されるシングル態様との間での選択が可能となっている。前記ダブル態様は、比較的重量の大きい吊り荷の昇降時に前記吊り荷用ロープ42に生じる張力を軽減するために選択され、前記シングル態様は比較的重量の小さい吊り荷の昇降時にフック装置全体の重量を軽減するために選択される。
【0034】
II)前記フック装置は、回動規制部70をさらに備え、この回動規制部70は、前記フックユニットUfが前記シーブユニットUsに対して相対的に最も降下した位置である下端位置(
図1及び
図2に示される位置)にあるときは前記フックユニットUfに対する前記シーブユニットUsの相対回動を許容するアンロック状態となり、前記フックユニットUfが前記シーブユニットUsに対して相対的に最も上昇した位置である上端位置にあるときは前記アンロック状態に比べて前記フックユニットUfに対する前記シーブユニットUsの倒伏方向の相対回動を規制するロック状態となる。
【0036】
I)回動連結軸60について
前記回動連結軸60は、円柱状をなし、その中心軸が特定の水平方向である前後方向に延びるように配置されるようにして、前記フックユニットUfの前記一対のフック支持板32と、前記シーブユニットUsの前記一対の本体板56とを連結する。具体的には、
図2に示されるように、前記一対の本体板56の下端部が前記一対のフック支持板32の上端部のすぐ内側に位置するようにそれぞれ配置され、前記回動連結軸60は前記一対の本体板56及び前記一対のフック支持板32を左右方向に貫通するように配置される。
【0037】
前記回動連結軸60は、前記一対のフック支持板32に対しては、当該回動連結軸60の中心軸回りに相対的に回動可能でかつ前記特定の範囲内で昇降可能となるように、当該フック支持板32にそれぞれ連結されている。具体的には、前記フック支持板32の左右方向の中央部位及びその両側の部位にそれぞれ上下方向に延びる長孔62が当該フック支持板32をその厚み方向に貫通するように形成されており、これらの複数の長孔62のうち選ばれた態様(ダブル態様またはシングル態様)に対応する長孔62に前記回動連結軸60が挿通される。例えば、前記ダブル態様が選ばれた場合には
図1に示されるように左右両側の長孔62にそれぞれ回動連結軸60が挿通され、前記シングル態様が選ばれた場合には
図3に示されるように中央の長孔62にのみ回動連結軸60が挿通される。いずれの場合も、当該回動連結軸60の両端部であって前記フック支持板32よりも外側に突出する部分の周囲に抜け止め用のリング部材64が配置され、当該リング部材64が抜け止めピン66によって前記回動連結軸60の端部に固定される。
【0038】
従って、前記回動連結軸60は、前記フック支持板32に対し、前記長孔62内において当該回動連結軸60の中心軸回りに相対回転することが可能であり、かつ、当該長孔62の長手方向の範囲内においてのみ相対的に昇降することが可能である。
【0039】
一方、前記回動連結軸60は、前記一対の本体板56に対しては、当該本体板56と一体に変位するように(換言すれば本体板56に対して相対的な回動及び昇降をしないように)当該本体板56に固定されている。具体的には、
図5及び
図6に示されるように、前記本体板56の下端部に前記回動連結軸60の挿通を許容する貫通穴56aが設けられるとともに、当該本体板56の裏面に前記貫通穴56aを囲む環状の固定用部材58が固定され、前記貫通穴56aの位置で前記本体板56及び前記固定用部材58に前記回動連結軸60が挿通された状態で当該回動連結軸60及び前記固定用部材58をその直径方向に貫通するように固定用ピン68が差し込まれている。
【0040】
なお、前記回動連結軸60と前記本体板56とを固定するための具体的手段は限定されない。両者は例えば溶接により相互に固定されてもよい。
【0041】
このように、前記回動連結軸60は、前記フックユニットUfのフック支持板32に対しては相対的に回転可能でかつ特定の範囲内で昇降可能である一方、前記シーブユニットUsの本体板56に対してはこれと一体に変位する(つまり相対変位不能である)ので、当該フックユニットUfに対して当該回動連結軸60の中心軸回りに相対回動可能でかつ前記特定の範囲内で昇降可能となるように、当該フックユニットUfに前記シーブユニットUsを連結することが可能である。
【0042】
II)回動規制部について
前記回動規制部70は、一対のフック側係合部72と、シーブ側係合部74と、を有する。前記フック側係合部72は、前記フックユニットUfと一体に変位するように当該フックユニットUfとつながり、前記シーブ側係合部74は、前記シーブユニットUsと一体に変位するように当該シーブユニットUsとつながる。
【0043】
具体的に、前記シーブ側係合部74は、前記シーブユニットUsと一体に変位する前記回動連結軸60と一体に回転するように当該回動連結軸60に固定されている。詳しくは、当該シーブ側係合部74は、
図1及び
図3に示されるように前記シーブユニットUsが傾いていない正規の姿勢で前記回動連結軸60の下面から下向きに突出するように、当該下面に溶接等によって固定されている。
【0044】
一方、前記一対のフック側係合部72は、前記回動連結軸60の周囲に配置され、前記フック支持板32の表側面に当該表側面よりも外向きに突出するように固定されている。当該フック側係合部72の左右方向についての位置は、
図1及び
図3に示されるように前記フックユニットUf及び前記シーブユニットUsがともに傾いていない正規の姿勢にあるときに当該フック側係合部72が前記シーブ側係合部74から左右方向の両側にそれぞれ外れる位置に、換言すれば、当該フック側係合部72が当該シーブ側係合部74を左右両側から挟むことが可能となる位置に、設定されている。当該フック係合部72の上下方向についての位置は、
図1〜
図3に示されるように前記フックユニットUfが前記シーブユニットUsに対して相対的に最も降下した下端位置(この実施の形態では
図4に示されるように前記回動連結軸60が前記長孔62の上端で前記フック支持板32と当たる位置)にあるときは、当該フック側係合部72が前記シーブ側係合部74から下方に離間して当該シーブ側係合部74が固定された前記回動連結軸60及びこれと一体に変位する前記シーブユニットUsの前記フックユニットUfに対する相対的な回動を許容する一方、前記フックユニットUfが前記シーブユニットUsに対して相対的に最も上昇した上端位置(この実施の形態では
図9に示されるように前記リング部材64が前記フック側係合部72に当たる位置)にあるときは当該フック側係合部72が前記シーブ側係合部74と係合可能となる(正確には
図9に示されるように当該フック側係合部72が当該シーブ側係合部74の左右両外側の位置で当該シーブ側係合部74と近接して当該シーブ側係合部74の僅かな変位で当該シーブ側係合部74と当たる)ことにより前記フックユニットUfに対する前記シーブユニットUsの相対的な回動を規制するように、設定されている。
【0045】
なお、この実施の形態に係るフック装置は、
図1に示されるようなダブル態様において左右のシーブユニットUsの水平姿勢を保つためのリンク部材80をさらに備えている。当該リンク部材80は、前記両シーブユニットUsの本体板56に対してそれぞれ着脱可能に連結される両端部を有する。具体的には、
図1及び
図2に示すように、前記シーブユニットUsの両本体板56の上部を前後方向に貫通する状態で当該本体板56に固定されるリンク用連結軸82が設けられ、当該リンク用連結軸80の両端部にそれぞれ前記リンク部材80の端部が当該リンク用連結軸82の中心軸回りに回動可能でかつ着脱可能となるように連結されている。
【0046】
このリンク部材80は、両シーブユニットUsの本体板56及びこれらをつなぐ前記フック支持板32とともに平行運動機構を構成し、この平行運動機構は、前記両シーブユニットUsの位置の高さ方向のずれにかかわらず当該シーブユニットUsを正規の姿勢(左右方向に傾きのない姿勢)を保つことをより確実にする。しかし、このリンク部材80は本発明において必須のものではなく、適宜省略されてもよい。
【0047】
次に、このフック装置の使用要領及び作用を説明する。
【0048】
このフック装置が例えば
図1に示されるダブル態様で使用される場合、当該フック装置のフックユニットUfのフック支持板32の上端部の左右両側部位にそれぞれ回動連結軸60を介して左右一対のシーブユニットUsの本体板56の下端部が相対的に回動可能でかつ特定の範囲内で昇降可能に連結される。具体的には、前記本体板56の下端部にそれぞれ前記回動連結軸60が固定されるとともに、当該回動連結軸60の両端部が前記フック支持板32の上端部の左右両側部位に形成された長孔62に挿通された後、当該両端部にそれぞれリング部材64が抜け止めピン66(
図4参照)によって固定される。また、この実施の形態ではリンク部材80の左右両端部がそれぞれ各シーブユニットUsのリンク用連結軸82に連結される。
【0049】
一方、前記左右のシーブユニットUsのフックシーブ40には、互いに別のウインチから引き出された荷吊り用ロープ42が巻き掛けられ、当該ウインチ及び当該荷吊り用ロープ42によって両シーブユニットUsが互いに独立して巻上げられる。すなち、フック装置全体が前記各シーブユニットUsのフックシーブ40に巻き掛けられた荷吊り用ロープ42を介して吊り上げられる。
【0050】
このとき、フックユニットUfは、その自重(荷吊り作業時はさらにその吊り荷の重量)によりシーブユニットUsに対して最も降下した下端位置(
図1に示される位置)に保持されるので、
図3及び
図4に示されるように、フックユニットUfのフック支持板32に固定されたフック側係合部72は前記回動連結軸60に固定されたシーブ側係合部74に対して上下方向に離間し、これにより、当該フックユニットUfに対するシーブユニットUsの相対回動(具体的にはシーブユニットUsに固定された回動連結軸60の長孔62内での回転)を許容する。この回動は、例えば
図7に示されるように両シーブユニットUsの位置が高さ方向について相互にずれる場合にも、当該シーブユニットUsを正規の姿勢に保つことを可能にする。この効果は、前記リンク部材80が付加される場合により確実となる。
【0051】
一方、前記フック装置を分解する場合、つまり前記フックユニットUfから前記各シーブユニットUsを切り離す場合、は、
図8に示されるように地面Gの上に当該フック装置が降ろされる。具体的には、
図8に示されるように前記フックユニットUfにおけるフック10の回動を伴いながらフック支持板32の下端部が地面Gに着地するまでフック装置が降ろされる。さらに、前記各フックシーブ40に掛けられている吊り荷用ロープ42が緩められ、この状態でリンク部材80が取り外され、さらには回動連結軸60が抜き取られてフックユニットUfと各シーブユニットUsとが切り離される。
【0052】
この作業において、前記フックユニットUfに対する前記シーブユニットUsの回動が規制されていないと、前記リンク部材80が取り外された時点(当該リンク部材80が用いられていない場合には吊り荷用ロープ42が緩められた時点)でシーブユニットUsが倒伏方向(
図1では左右両外側に向かう方向)に回動して安全性に支障をきたす場合があるが、このフック装置では、前記フック支持板32が着地してからのフックユニットUfの降下によってシーブユニットUsの回動が自動的にロックされるので、高い安全性が保障される。
【0053】
具体的には、着地したフックユニットUfに対して各シーブユニットUsがさらに降下することにより、当該フックユニットUfが当該シーブユニットUsに対して相対的に最も上昇した上端位置に至り、これにより
図9及び
図10に示されるように回動連結軸60に固定されたシーブ側係合部74が一対のフック側係合部72同士の間に嵌まり込むため、当該回動連結軸60及びこれに固定されるシーブユニットUsがフックユニットUfに対して当該回動連結軸60の中心軸回りに回動することが規制される。しかも、この回動ロック状態は前記フックユニットUfの着地に追従して自動的に形成されるので、例えばフックユニットUfとシーブユニットUsとに形成されたピン挿通孔に固定ピンを挿通するといった特別な固定作業を要しない。従って、前記フックユニットUfを着地させるだけで自動的に当該フックユニットUfに対する前記シーブユニットUsの相対回動を規制して安全性を確保することが可能である。
【0054】
以上の作用効果は、
図3に示されるようなシングル態様、つまり中央の長孔62に挿通される単一の回動連結軸60によって単一のシーブユニットUsのみがフックユニットUfに連結される態様においても、そのフックユニットUf(のフック支持板32)の着地の際に同様に得ることが可能である。
【0055】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係るフック装置の要部を示す。前記第1の実施の形態に係る回動連結軸60は、フックユニットUfのフック支持板32に相対的に回動可能でかつ昇降可能に連結されるとともにシーブユニットUsの本体板56にこれと一体に変位するように固定されているのに対し、第2の実施の形態に係る回動連結軸60は、フックユニットUfのフック支持板32にこれと一体に固定されるとともにシーブユニットUsの本体板56に相対的に回動可能でかつ昇降可能に連結されている。具体的には、前記本体板56に前記第1の実施の形態に係る長孔62と同様の長孔63が形成され、当該長孔63に前記回動連結軸60が挿通されている。
【0056】
この第2の実施の形態では、
図11に示すように、前記フックユニットUfと一体に変位する前記回動連結軸60に当該回動連結軸60から上向きに突出するようにフック側係合部73が固定され、前記シーブユニットUsの本体板56に前記フック側係合部73と係合可能な左右一対のシーブ側係合部75が固定されている。当該一対のシーブ側係合部75の高さ方向の位置は、前記第1の実施の形態と同様、前記シーブユニットUsに対して前記フックユニットUfが最も降下した下端位置(この第2の実施の形態では
図11に示されるように前記フックユニットUfに固定される前記回動連結軸60が前記シーブユニットUsの本体板56に形成された長孔63の下端で当該本体板56に当接する位置)では前記フック側係合部73から十分に離間して前記シーブユニットUsに対する前記回動連結軸60及び前記フックユニットUfの相対的な回動を許容する一方、前記シーブユニットUsに対して前記フックユニットUfが最も上昇した上端位置(この実施の形態では前記回動連結軸60が前記長孔63の上端で前記本体板56に当接する位置)では前記フック側係合部73が前記一対のシーブ側係合部75同士の間に嵌まり込んで前記シーブユニットUsに対する前記回動連結軸60及び前記フックユニットUfの相対的な回動を規制するように、設定されている。
【0057】
図12は、本発明の第3の実施の形態に係るフック装置の要部を示す。
【0058】
この第3の実施の形態では、前記第1の実施の形態に係る一対のフック側係合部72及びシーブ側係合部74の組み合わせに代え、
図12に示すようなフック側係合部92及びシーブ側係合部94の組み合わせにより回動規制部90が構成されている。具体的に、この第3の実施の形態に係るフックユニットUfは、第1の実施の形態と同様にフック支持板32を有し、このフック支持板32の左右両端部から側方に前記フック側係合部92が突出している。一方、この第3の実施の形態に係るシーブユニットUsは、第1の実施の形態と同様に本体板56を有し、この本体板56の表側面から外向きに(
図12では手前に)シーブ側係合部94が突出している。
【0059】
このシーブ側係合部94の位置は、
図12に示されるように前記シーブユニットUsに対して前記フックユニットUfが最も降下した下端位置にあるときは前記フック側係合部92から上方に十分に離間して前記フックユニットUfに対する前記シーブユニットUsの相対的な回動を許容する一方、前記シーブユニットUsに対して前記フックユニットUfが最も上昇した上端位置にあるときは
図12に二点鎖線で示されるように前記シーブ側係合部94が前記フック側係合部92と当接可能となる位置まで当該フック側係合部92に近接して当該当接により前記フックユニットUfに対する前記シーブユニットUsの相対的な回動、正確には
図12に矢印で示される倒伏方向の回動、を阻止するように、設定されている。
【0060】
このように、回動規制部は必ずしもフックユニットに対するシーブユニットの両方向の回動を規制するものに限られず、規制が必要とされる方向の回動のみを規制するものであってもよい。例えば、
図1に示される態様において、シーブユニットUsの倒伏方向の回動(外向きの回動)よりもシーブユニットUs同士が当接する方向の回動(内向きの回動)の規制が重視される場合には、当該方向の回動のみを規制するように回動規制部が構成されてもよい。このように、フックユニットが上端位置にあるときの相対的な回動の規制とは、フックユニットが下端位置にあるときの相対的な回動との対比による相対的なものであり、その規制の度合いについてはフック装置の仕様等に応じて適宜設定されることが可能である。
【0061】
また、第3の実施の形態として例示されるように、回動規制部を構成するフック側係合部及びシーブ側係合部は連結軸部材(第3の実施の形態では回動連結軸60)から離れた位置に設けられてもよい。ただし、当該係合部の一方を連結軸部材に固定し、他方を当該連結軸部材の周囲に配置することは、コンパクトな構造で前記の回動規制を効果的に行うことを可能にする。
【0062】
図13及び
図14は、本発明の第4の実施の形態に係るフック装置の要部を示す。この第4の実施の形態では、前記第1の実施の形態と同様に回動連結軸60がシーブユニットUsと一体に変位するように当該シーブユニットUsに固定されるとともにフックユニットUfに対して相対的に回動可能でかつ昇降可能となるように当該フックユニットUfに連結されているが、後者の連結について前記長孔62以外の手段が用いられている。
【0063】
具体的に、この実施の形態に係るフックユニットUf及びシーブユニットUsは、回動連結軸60に加えて
図13及び
図14に示されるスライド板100を介して相対的に昇降可能に連結されている。前記スライド板100は、前記シーブユニットUsに固定された前記回動連結軸60に相対回転可能となるように連結されるとともに、前記フックユニットUfに特定の範囲内で相対的に昇降可能となるように連結されている。
【0064】
詳しくは、前記フックユニットUfが前記第1の実施の形態に係るフック支持板32と同様のフック支持板32を有するのに加え、当該フック支持板32は、前記スライド板100を上下方向に案内する左右一対の案内壁32aと、この案内壁32aから下方に所定距離だけ離れた位置にある左右一対のストッパ32bと、を有する。前記スライド板100の下端部には他の部位よりも外向きに突出して前記案内壁32aの下端と当接可能な被拘束凸部102が形成され、この被拘束凸部102が前記案内壁32aの下端に当接する下端位置と当該被拘束部102が前記ストッパ32bに当接する上端位置との間で前記スライド板100、前記回動連結軸60及び前記シーブユニットUsが前記フックユニットUfに対して相対的に昇降可能となっている。この構造でも、前記フックユニットUfが前記上端位置にあるときに両係合部72,74が互いに係合可能となるようにこれらが配置されることにより、前記各実施の形態と同様の効果をえることが可能である。
【0065】
その他、本発明は例えば次のような形態をとることが可能である。
【0066】
(1)本発明は、第1の実施の形態に係るフック装置のように、ダブル態様(
図1)とシングル態様(
図3)とに切換可能なものに限定されない。また、フックユニットに連結されるシーブユニットの数も限定されない。例えば、フックユニットに対して3以上のシーブユニットが連結されるフック装置においても、それぞれのシーブユニットのフックユニットに対する相対的な回動について本発明を適用することが可能である。
【0067】
(2)本発明に係る連結軸部材は、フックユニット及びシーブユニットのうちの一方に回動可能に連結され、他方に昇降可能に連結されるものでもよい。例えば、前記フックユニット及びシーブユニットのうちの一方のユニットが前記長孔62,63と同様の長孔を有する一方、当該連結軸部材が円形断面部と円形以外の形状の断面を有する異形断面部とを有し、当該異形断面部が前記一方のユニットの長孔に昇降可能であるが相対回転はできないように挿通され、前記円形断面部が他方のユニットに相対回転可能に連結される態様であってもよい。
【0068】
(3)本発明に係るフック側係合部及びシーブ側係合部は、それぞれフックユニット及びシーブユニットと一体に変位するようにこれらとつながっていればよく、その具体的な態様は限定されない。例えば、第1の実施の形態において、前記フック側係合部72は前記フック支持板32と一体に形成されていてもよく、前記シーブ側係合部74は前記回動連結軸60と一体に形成されていてもよい。