【文献】
Tahsin Kilicoglu et al.,"Electrical and photovoltaic properties of an organic-inorganic heterojunction based on a BODIPY dye",Microelectronic Engineering,2011年,Vol.88,pp.150-154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2種類の光電変換素子材料がそれぞれ電子供与性および電子受容性の光電変換素子材料であり、前記一般式(1)で表される化合物が電子受容性の光電変換素子材料である請求項4記載の光電変換素子。
赤色光、緑色光および青色光を検出する光電変換素子を有し、該緑色光を検出する光電変換素子が請求項1〜5いずれか記載の光電変換素子である請求項8記載のイメージセンサ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<光電変換素子>
本発明の光電変換素子は、第一電極と第二電極の間に少なくとも一層の有機層が存在し、光を電気エネルギーに変換する光電変換素子であって、前記有機層に後述の一般式(1)で表される化合物を含有するものである。
【0015】
ここで、有機層は、光を電気エネルギーに変換する光電変換層を少なくとも一層含む。
図1〜
図4に本発明の光電変換素子の例を示す。
図1は、第一電極10と第二電極20の間に光電変換層15を有する光電変換素子の例である。
【0016】
図1のような、有機層が光電変換層1層のみからなる構成の他に、
図2ないし4のように、陽極と陰極の間に電荷阻止層を挿入した構成でもよい。電荷阻止層とは、電子または正孔をブロックする機能を有する層である。陽極と光電変換層との間に挿入される場合は電子阻止層13、陰極と光電変換層との間に挿入される場合は正孔阻止層17と呼ぶ。有機層は、これらの層のいずれか一種のみを含んでいても良いし、両方含んでいても良い。
【0017】
以下、第一電極10が陽極、第二電極20が陰極である場合を例に説明する。
【0018】
(陽極および陰極)
光電変換素子において、陽極と陰極は、素子の中で作られた電子および正孔を流し、十分に電流を流せるための役割を有する。陽極と陰極は、光電変換層に光を入射させるために、少なくとも一方は透明または半透明であることが望ましい。通常、基板上に形成される陽極を透明電極とすることが好ましい。
【0019】
陽極は、正孔を光電変換層から効率良く抽出できる材料であって、かつ透明である材料からなることが好ましい。材料としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物;金、銀、クロムなどの金属;ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質;ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが好ましく、ガラス基板上に透明導電膜を形成したITOガラスやネサガラスを用いることが特に好ましい。透明電極は素子で作られた電流を十分流せればよいが、素子の光電変換効率の観点からは低抵抗であることが好ましい。例えば、抵抗値が300Ω/□以下のITO基板が特に好ましい。ITO基板を用いる場合、ITOの厚みは、抵抗値に合わせて任意に選ぶことができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。また、ガラス基板の材質は、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので、無アルカリガラス、または、SiO
2などのバリアコートを施したソーダライムガラスが好ましい。ガラス基板の厚みは、機械的強度の観点から、0.5mm以上が好ましい。また、陽極が安定に機能するのであれば、基板はガラスである必要はなく、例えばプラスチック基板上にITO膜を形成して陽極としても良い。ITO膜の形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法、化学反応法など特に制限を受けるものではない。
【0020】
陰極の材料としては、電子を光電変換層から効率良く抽出できる物質が好ましい。材料としては、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、セシウム、ストロンチウムなどがあげられる。電子抽出効率をあげて素子特性を向上させるためにはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびセシウムから選ばれた低仕事関数金属またはこれらの低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかし、これらの低仕事関数金属は、一般に大気中で不安定であることが多い。そのため、例えば、微量のリチウムやマグネシウム、セシウム(真空蒸着の膜厚計表示で1nm以下)をドーピングして安定性の高い電極を使用する方法が好ましい例として挙げることができる。またフッ化リチウムのような無機塩の使用も可能である。さらに電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニア、窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子などを積層することが好ましい。これらの電極の作製法としては、抵抗加熱、電子線ビーム、スパッタリング、イオンプレーティング、コーティングなどの方法が好ましく用いられる。
【0021】
(光電変換層)
光電変換層は、単独の光電変換素子材料から構成されていても良いが、高い光電変換効率を得るためには2種類以上の光電変換素子材料から構成されることが好ましく、電子供与性の光電変換素子材料と電子受容性の光電変換素子材料から構成されることがより好ましい。光電変換層が2種以上の光電変換素子材料から構成される場合、該光電変換層は、2種以上の光電変換素子材料が混合された1層でもよいし、それぞれ1種以上の光電変換素子材料からなる層が積層された複数層でもよい。さらには、混合層と各々の単独層が混合された構成でも良い。
【0022】
ここでいう電子受容性とは、電子親和力が高く、電子を受け取りやすい性質を示す。また電子供与性とは、電子を放出しやすい性質を示す。光電変換層が電子受容性が高いn型有機半導体材料と電子供与性が高いp型有機半導体材料から構成される場合、入射光により光電変換層で生成された励起子が基底状態に戻っていく前に、効率良く電子と正孔に分離させることができる。分離された電子と正孔が、それぞれn型有機半導体材料およびp型有機半導体材料を通って陰極と陽極に流れていくことで、高い光電変換効率を得ることができる。
【0023】
光電変換層を構成する光電変換材料の光吸収波長領域によって、光電変換層の吸収波長が決められるため、用いようとする色に対応する光吸収特性の材料を用いることが好ましい。例えば、緑色の光電変換素子では450nm〜550nmで光を吸収する材料で光電変換層を構成する。また、上述したように高い光電変換効率を得るために光電変換層を2種以上の材料で構成する場合、p型有機半導体材料とn型有機半導体材料のエネルギー準位が正孔と電子を効率良く分離し、電極側に移動できる材料で光電変換層を構成することが好ましい。
【0024】
p型有機半導体材料は、イオン化ポテンシャルが比較的小さく、電子供与性があって正孔輸送性化合物であれば、どの有機化合物でも良い。p型有機半導体材料の例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合多環芳香族誘導体を有する化合物やその誘導体;シクロペンタジエン誘導体、フラン誘導体、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンゾチオフェン誘導体、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体;N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどの芳香族アミン誘導体;スチリルアミン誘導体、ベンジジン誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、キナクリドン誘導体などを挙げられる。また、ポリマー系のp型有機半導体材料としては、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体を挙げられる。
【0025】
n型有機半導体材料は、電子親和力が高く、電子輸送性の化合物であれば、どの材料でもよい。n型有機半導体材料の例としては、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体;4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、芳香族アセチレン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体;イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体;アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体;リンオキサイド誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体;ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体を挙げられる。また分子内にニトロ基、シアノ基、ハロゲンまたはトリフルオロメチル基を有する有機化合物;キノン系化合物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物などの酸無水物系化合物;C60、PCBMなどのフラーレンおよびフラーレン誘導体なども挙げられる。
【0026】
後述の一般式(1)で表される化合物は、1×10
5cm
−1以上の吸収係数を有しており、従来用いられている無機系の光電変換材料と比較しても吸収係数が1〜2桁以上高い。そのため効率良く光を吸収して電気エネルギーに変換することができるため、光電変換素子の感度を向上することができる。さらに一般式(1)で表される化合物は、シャープな吸収スペクトルを有しているために波長選択精度が高く、光電変換素子の色選択性を向上することができる。
【0027】
一般式(1)で表される化合物は約450nmから550nmの波長領域で光を吸収するため、緑色の光電変換層に用いられることが好ましい。なお、一般式(1)で表される化合物は、ピロメテン骨格を含むため電子受容性の光電変換素子材料として好ましく機能する。したがってn型有機半導体材料として用いられることが好ましい。
【0028】
(電荷阻止層)
電荷阻止層とは、光電変換層で光電変換された電子および正孔を効率良くかつ安定に電極から取り出すために用いられる層であり、電子を阻止する電子阻止層と正孔を阻止する正孔阻止層とが挙げられる。これらは無機物から構成されても良いし、有機化合物から構成されても良い。さらに、無機物と有機化合物の混合層からなってもよい。
【0029】
正孔阻止層とは、光電変換層で生成された正孔が陰極側に流れ、電子と再結合するのを阻止するための層である。各層を構成する材料の種類によっては、この層を挿入することにより正孔と電子の再結合が抑制され、光電変換効率が向上する。正孔阻止性材料は光電変換材料よりもHOMOレベルがエネルギー的に低いものがよい。光電変換層からの正孔の移動を効率良く阻止できる好ましい正孔阻止性材料としては、具体的には8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、ナフタレン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体;ビピリジン、ターピリジンなどのオリゴピリジン誘導体;フェナントロリン誘導体、キノリン誘導体、芳香族リンオキサイド化合物などがある。これらの正孔阻止材料は単独でも用いられるが、2種類以上の正孔阻止材料を積層または混合して使用しても構わない。
【0030】
電子阻止層とは、光電変換層で生成された電子が陽極側に流れ、正孔と再結合するのを阻止するための層である。各層を構成する材料の種類によっては、この層を挿入することにより正孔と電子の再結合が抑制され、光電変換効率が向上する。電子阻止性材料は光電変換材料よりもLUMOレベルがエネルギー的に高いものがよい。光電変換層からの電子の移動を効率良く阻止できる好ましい電子阻止性材料としては、具体的にはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどのトリフェニルアミン類;ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)類、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ジスチリル誘導体、ヒドラゾン系化合物;オキサジアゾール誘導体やフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体に代表される複素環化合物;ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどが挙げられる。素子作製に必要な薄膜を形成し、光電変換層から正孔を抽出できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば良い。これらの電子阻止材料は単独でも用いられるが、2種類以上の電子阻止材料を積層または混合して使用しても構わない。
【0031】
正孔阻止層および電子阻止層は、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリサルフォン、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や;フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
【0032】
有機層の形成方法は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法など特に限定されるものではないが、抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が特性面で好ましい。各有機層の厚みは、有機物質の抵抗値にも影響されるが、1〜1000nmの間が好ましい。
【0033】
<光電変換素子材料>
本発明の光電変換素子は、有機層に一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0035】
R
1〜R
4は、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基またはアリールエーテル基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
5およびR
6はハロゲン、水素またはアルキル基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
7はアリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基である。Mはm価の金属を表し、ホウ素、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛および白金から選ばれる少なくとも一種の金属である。Lはハロゲン、水素、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基から選ばれた基である。mは1ないし6であり、m−1が2以上の場合、各Lは互いに同じでも異なっていても良い。
【0036】
これらの置換基のうち、水素は重水素であってもよい。
【0037】
また、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示す。さらに置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0038】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
【0039】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0040】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0041】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介して芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0042】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0043】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ターフェニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0044】
ヘテロアリール基とは、フラニル基、チオフェニル基、ピリジル基、キノリニル基、ピラジニル基、ピリミニジニル基、トリアジニル基、ナフチリジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基などの炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上30以下の範囲である。
【0045】
上記置換基の中でも、R
1〜R
4としては、一般式(1)のピロメテン骨格の共役を伸ばさず、吸収波長への影響を与えないアルキル基が好ましい。アルキル基の中でも、熱的安定性に優れることから、メチル基またはt−ブチル基がより好ましい。さらに合成の容易さから、メチル基が特に好ましく用いられる。
【0046】
R
5およびR
6としては、熱的安定性の観点からアルキル基または水素が好ましく、吸収スペクトルにおいて狭い半値幅を得やすい点で水素がより好ましい。
【0047】
また、一般式(1)において、Mはホウ素、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛および白金からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。シャープなスペクトルを与え、より高い吸収係数が得られる点からホウ素が特に好ましい。Mがホウ素の場合、mは3(m−1は2)となる。
【0048】
Lは1価または0価の基で分子内の1つまたは2つの原子を通じてMと結合する。ここで0価とは、例えばLがピリジル基の場合に非共有電子対を通じてMに対し配位する場合などをいう。また、2つの原子を通じてMと結合するとは、いわゆるキレート配位を意味する。アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基の説明は上述の通りである。
【0049】
Mがホウ素の場合、Lはフッ素、含フッ素アリール基、含フッ素ヘテロアリール基および含フッ素アルキル基から選ばれた基が好ましく、より高い蛍光量子収率が得られることから、フッ素または含フッ素アリール基であることがより好ましい。Lは、合成の容易さから、フッ素であることがさらに好ましい。ここで、含フッ素アリール基とは、フッ素を含むアリールであり、例えばフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基およびペンタフルオロフェニル基などがあげられる。含フッ素ヘテロアリール基とは、フッ素を含むヘテロアリール基であり、例えばフルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基およびトリフルオロピリジル基などがあげられる。含フッ素アルキル基とは、フッ素を含むアルキル基であり、トリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基などがあげられる。
【0050】
また、Mがホウ素以外の場合、Lはキレート配位子であることが好ましい。
【0051】
R
7は、より高い吸収係数およびより高い耐熱性が得られる点から、アリール基およびヘテロアリール基から選ばれた基であることが好ましく、吸収係数の点からアリール基がより好ましい。さらに、R
7はかさ高い置換基であることが好ましい。R
7がかさ高いことで分子の凝集を防ぐことができるため、経時的に安定に高い光電変換効率が得られる。
【0052】
このようなかさ高い置換基の好ましい例として下記一般式(2)で表される構造が挙げられる。
【0054】
R
8は、アリール基またはヘテロアリール基である。アリール基およびヘテロアリール基の説明は上述の通りである。lは1〜3の整数である。lが2以上である場合、R
8はそれぞれ同じでも異なっても良い。R
8は、より具体的には下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される基が好ましい。
【0056】
ここで、R
9〜R
12は、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基である。アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基の説明は上述の通りである。より高い光電変換効率が得られる点でアルキル基の方がより好ましく用いられ、分子の凝集を防ぐことから、特にメチル基およびtert−ブチル基が好ましい例として挙げられる。
【0057】
一般式(2)において、lは2であることがより好ましい。また、R
8は一般式(5)で表される基がより好ましい。
【0058】
一般式(3)〜(5)で表示される基の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0060】
ここで、上記具体例の基は、さらに置換されていても非置換でも良い。置換基の説明は上述の通りである。一般式(1)で表される化合物の一例を以下に示す。
【0069】
一般式(1)で表される化合物は、例えば特表平8−509471号公報や特開2000−208262号公報に記載の方法で製造することができる。すなわち、ピロメテン化合物と金属塩を塩基共存下で反応することにより目的とするピロメテン系金属錯体が得られる。
【0070】
また、ピロメテン−フッ化ホウ素錯体の合成については、J. Org. Chem., vol.64, No.21, pp.7813-7819 (1999)、Angew. Chem., Int. Ed. Engl., vol.36, pp.1333-1335 (1997)などに記載されている方法を参考に製造することができる。すなわち、下記一般式(6)で表される化合物と一般式(7)で表される化合物をジクロロメタン中で反応させ、ピロメテン骨格を形成した後、アミンの存在下、三フッ化ホウ素ジエチルエーテルを加えることにより、ピロメテン−フッ化ホウ素錯体が得られる。
【0072】
さらに、一般式(6)で表される化合物については、例えばブロモ化ベンズアルデヒドとボロン酸誘導体を鈴木カップリング(参考文献:Chem. Rev., vol.95 (1995))で反応させることにより、R
7に種々のアリール基およびヘテロアリール基を導入したものが得られる。
【0073】
一般式(1)で表される化合物は、光電変換素子において光電変換層に用いられる。さらに、光電変換層が電子供与性および電子受容性の関係を有する2種類の光電変換素子材料から構成される場合、一般式(1)で表される化合物は、n型有機半導体材料として機能する。
【0074】
<イメージセンサ>
イメージセンサは、光学的な映像を電気的な信号に変換する半導体素子である。一般的にイメージセンサは、光を電気エネルギーに変換する前述の光電変換素子と電気エネルギーを電気信号に読み出す回路で構成される。イメージセンサの用途によって、複数の光電変換素子を一次元直線または二次元平面に配列することができる。また、モノカラーのイメージセンサの場合は、1種の光電変換素子のみを有していてもよいが、カラーイメージセンサの場合は、2種以上の光電変換素子を有する。例えば赤色光を検出する光電変換素子、緑色光を検出する光電変換素子、および青色光を検出する光電変換素子を有する。各色の光電変換素子は、積層構造、すなわち一つの画素に複数の光電変換素子が積層された構造で構成されていてもよいし、複数の光電変換素子が横に並んだマトリクス構造で構成されてもよい。
【0075】
なお、光電変換素子が一つの画素に積層された構造の場合は、
図7に示すように、緑色光を検出する光電変換素子32、青色光を検出する光電変換素子33、赤色光を検出する光電変換素子31を順次積層した3層構造でも良く、
図8に示すように緑色光を検出する光電変換素子32が上層に全面配置され、赤色光を検出する光電変換素子31および青色光を検出する光電変換素子33が下層にマトリクス構造で形成された2層構造でも良い。これらの構造は、緑色光を検出する光電変換素子が入射光に対して最も近い層に配置されているものである。
【0076】
またマトリクス構造の場合の光電変換素子の配列は、ベイヤー配列、ハニカム配列、ストライプ状配列、デルタ配列などの配列から選択することができる。
【0077】
前述のとおり、一般式(1)で表される化合物は、緑色領域にシャープな吸収スペクトルを有しているので、緑色の光電変換素子の光電変換素子材料として用いたとき、選択的に緑色光を吸収して、赤色光と青色光を透過することができる。この場合、
図7のように光電変換素子が縦型に積層された構造の場合は、緑色の光電変換素子を最上層、すなわち入射光に対して最も近い層として設けることにより、緑色の光電変換素子において赤色光および青色光の検出ノイズを極めて少なくすることができる。また、緑色の光電変換素子において赤色光および青色光の吸収が少ないので、下層の赤色および青色の光電変換素子において極めて高い感度で光を検出することができる。よって色分離性に優れたカラーイメージセンサを提供することができる。各色の積層の順序はこれに限らず、
図7とは異なっていても良いが、上記の観点から、緑色光を検出する光電変換素子に本発明の光電変換素子を使用した場合、緑色の光電変換素子を最上層に配置する構成が好ましい。また、青色の光電変換素子の色選択性が優れている場合には、短波長の検出しやすさの観点で、青色の光電変換素子を最上層に配置する構成をとっても良い。
【0078】
また、緑色光を検出する光電変換素子に本発明の光電変換素子を使用し、赤色光を検出する光電変換素子および青色光を検出する光電変換素子については、従来用いられている無機系の光電変換材料や有機光電変換材料から適宜組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、下記の各実施例にある化合物の番号は前記に記載した化合物の番号を指すものである。また構造分析に関する評価方法を下記に示す。
【0080】
化合物の
1H−NMRは、超伝導FTNMR EX−270(日本電子(株)製)を用い、重クロロホルム溶液にて測定を行った。
【0081】
化合物の吸収スペクトルは、U−3200形分光光度計(日立製作所(株)製)を用い、石英基板上に測定サンプルを50nmの膜厚で蒸着して測定を行った。吸収係数はLambert−Beer Lawにより計算した。
【0082】
合成例1
化合物[1]の合成方法
3,5−ジブロモベンズアルデヒド(3.0g)、4−t−ブチルフェニルボロン酸(5.3g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.4g)、炭酸カリウム(2.0g)をフラスコに入れ、窒素置換した。ここに脱気したトルエン(30mL)および脱気した水(10mL)を加え、4時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、有機層を、分液した後に飽和食塩水で洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(3.5g)を白色固体として得た。
【0083】
3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(1.5g)と2,4−ジメチルピロール(0.7g)を反応溶液に入れ、脱水ジクロロメタン(200mL)およびトリフルオロ酢酸(1滴)を加えて、窒素雰囲気下、4時間撹拌した。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(0.85g)の脱水ジクロロメタン溶液を加え、さらに1時間撹拌した。反応終了後、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.0mL)およびジイソプロピルエチルアミン(7.0mL)を加えて、4時間撹拌した後、さらに水(100mL)を加えて撹拌し、有機層を分液した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、下記に示す化合物[1]を0.4g得た(収率18%)。
1H−NMR(CDCl3,ppm):7.95(s,1H)、7.63−7.48(m,10H)、6.00(s,2H)、2.58(s,6H)、1.50(s,6H)、1.37(s,18H)。
【0084】
また、化合物[1]の光吸収特性は以下のようであった。
吸収スペクトル:λmax514nm(薄膜:50nm)
半値幅:39nm
吸収係数:1.21×10
5/cm
【0085】
【化15】
【0086】
(化合物D−1および化合物[1]を含む膜の光吸収特性)
石英基板上に下記に示す化合物D−1と上記化合物[1]を蒸着速度比1:1で50nm蒸着した。蒸着膜の吸収スペクトルを測定した結果、
図5に示すように緑色領域のみに吸収を持つシャープな吸収スペクトルとなった。また、光吸収特性は以下の通りであった。
吸収スペクトル:λmax514nm
半値幅:39nm
吸収係数:7.42×10
4/cm
【0087】
【化16】
【0088】
(化合物D−1と化合物A−1を含む膜の光吸収特性)
化合物[1]の代わりにA−1を用いたこと以外は、合成例1と同様の方法で化合物D−1と化合物A−1を石英基板上に蒸着し、吸収スペクトルを測定した。
図6に示すように緑領域だけでなく、赤領域および青領域にも吸収を持つブロードな吸収スペクトルとなった。また、光吸収特性は以下の通りであった。
吸収スペクトル:λmax529nm
半値幅:142nm
吸収係数:9.06×10
4/cm。
【0089】
実施例1
化合物[1]を用いた光電変換素子を次のように作製した。ITO透明導電膜を150nm堆積させたガラス基板(旭硝子(株)製、15Ω/□、電子ビーム蒸着品)を30×40mmに切断し、エッチングを行い、陽極基板を得た。得られた陽極基板をアセトンおよび”セミコクリーン(登録商標)56”(フルウチ化学(株)製)を用いて、各々15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。続いて、イソプロピルアルコールを用いて15分間超音波洗浄し、さらに熱メタノールに15分間浸漬させた後、乾燥した。この陽極基板を、素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10
−5Pa以下になるまで排気した。この陽極基板のITO層上に、抵抗加熱法によって、電子阻止層として酸化モリブデンを30nm蒸着した。次に、光電変換層として化合物D−1と化合物[1]を蒸着速度比1:1で共蒸着した。次に、アルミニウムを100nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を得た。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。
【0090】
比較例1
光電変換層を蒸着する時、化合物[1]の代わりにA−1を用いた以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
【0091】
【化17】
【0092】
実施例1および比較例1の各光電変換素子にバイアス電圧(−3V)を印加したときの分光感度特性をそれぞれ
図9および
図10に示す。なお、分光感度特性は、分光感度測定装置(SM−250、分光計器(株)製)を用い、400nm〜700nmまでの単色光を光電変換素子に照射した際の出力電流を求めることにより測定を行った。
【0093】
実施例1の素子においては、波長450nm以上550nm以下の緑色領域において選択性良く光電変換することができた。一方、比較例1の素子においては、波長450nm未満の青色領域および波長550nmより長波長の赤色領域も光電変換されており、色選択性が悪い結果となった。
【0094】
実施例2〜3
化合物D−1と化合物[1]の蒸着速度比を、それぞれ2:1、3:1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。各光電変換素子にバイアス電圧(−5V)を印加したときの光電変換特性を表1に示す。いずれの素子においても、色選択性が良好な光電変換特性を示した。
【0095】
実施例4〜10、比較例2
化合物[1]の代わりにn型半導体材料として下記に示す化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。各光電変換素子にバイアス電圧(−5V)を印加したときの光電変換特性を表1に示す。実施例4〜10においては、吸収スペクトルの半値幅が小さく色選択性が良好であったが、比較例2においては吸収スペクトルの半値幅が大きく、色選択性が悪化した。
【0096】
【化18】
【0097】
【化19】
【0098】
【表1】