特許第6558254号(P6558254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558254
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】電力変換システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20190805BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20190805BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H02M7/48 R
   H02M3/155 F
   H02M3/155 U
   H02J3/38 130
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-6999(P2016-6999)
(22)【出願日】2016年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-130991(P2017-130991A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 由晴
(72)【発明者】
【氏名】綾井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕介
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/105081(WO,A1)
【文献】 特開2015−146666(JP,A)
【文献】 特開2012−151923(JP,A)
【文献】 特開2000−152661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02J 3/38
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源回路とパワーコンディショナとを互いに接続して成る電力変換システムであって、
前記パワーコンディショナは、
前記直流電源回路とDCバスとの間に設けられた第1のDC/DCコンバータと、
前記DCバスと交流電路との間に設けられ、交流半サイクル内で前記第1のDC/DCコンバータと交互に休止期間を有しつつスイッチング動作するインバータと、を備え、
前記直流電源回路は、
蓄電池と、
前記蓄電池と前記第1のDC/DCコンバータとの間に設けられ、直流リアクトルを含む、双方向性の第2のDC/DCコンバータと、を備え、
前記第2のDC/DCコンバータの前記直流リアクトルに流れる電流を一定値とする制御を行う制御部を有する電力変換システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2のDC/DCコンバータの高電圧側の電圧フィードバック制御の操作量に、高電圧側の電圧目標値を低電圧側の電圧検出値で除した値を乗じて算出される値について、一定の周期で平均化した値を充放電電流目標値と定め、前記第2のDC/DCコンバータの高電圧側を一定電圧に制御する請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
Tは前記周期、
igdc_refは前記充放電電流目標値、
ipwm_ref_pi_vdcは前記操作量、
vdc_refは前記電圧目標値、及び、
vgdcは前記電圧検出値であるとした場合、
である請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1のDC/DCコンバータの低電圧側の電圧フィードバックに基づく補償量を交流半周期で平均化した値を、前記第1のDC/DCコンバータに含まれる直流リアクトルの電流目標値と定め、前記第1のDC/DCコンバータの低電圧側を一定電圧に制御する請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記パワーコンディショナは、1又は複数の太陽光発電パネルとも接続される複合型のパワーコンディショナであり、前記第2のDC/DCコンバータは、前記太陽光発電パネルの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧を高電圧側に出力する請求項2又は請求項3に記載の電力変換システム。
【請求項6】
前記パワーコンディショナは、1又は複数の太陽光発電パネルとも接続される複合型のパワーコンディショナであり、前記第1のDC/DCコンバータは、前記太陽光発電パネルの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧を低電圧側に出力する請求項4に記載の電力変換システム。
【請求項7】
前記第2のDC/DCコンバータが自己の高電圧側を一定電圧に制御する場合、前記第2のDC/DCコンバータは、一定にすべき電圧目標値を前記パワーコンディショナから受信する通信を行う請求項2、請求項3又は請求項5に記載の電力変換システム。
【請求項8】
前記第1のDC/DCコンバータが自己の低電圧側を一定電圧に制御する場合、前記第1のDC/DCコンバータは、前記第2のDC/DCコンバータへ出力電力指令値を送信する通信を行う請求項4又は請求項6に記載の電力変換システム。
【請求項9】
直流電源回路とパワーコンディショナとを互いに接続して成り、前記パワーコンディショナは、前記直流電源回路とDCバスとの間に設けられた第1のDC/DCコンバータと、前記DCバスと交流電路との間に設けられたインバータとを有し、前記直流電源回路は、蓄電池と、前記蓄電池と前記第1のDC/DCコンバータとの間に設けられ、直流リアクトルを含む、双方向性の第2のDC/DCコンバータとを有するものである電力変換システムを実行主体とした、その制御方法であって、
前記第2のDC/DCコンバータは、前記蓄電池の電圧を前記第1のDC/DCコンバータの低電圧側の電圧に昇圧し、又は、その逆方向に降圧し、
前記第1のDC/DCコンバータと、前記インバータとは、交流半サイクル内で交互に休止期間を有しつつスイッチング動作し、
前記第2のDC/DCコンバータの前記直流リアクトルに流れる電流を一定値とする制御を行う、電力変換システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子のスイッチングによって、直流/交流の電力変換を行う電力変換システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽光発電用のパワーコンディショナ(電力変換装置)は、直流の発電電力を交流に変換して、商用電力系統へ系統連系する運転を行う。伝統的なパワーコンディショナの変換動作によれば、発電した電圧を、交流側のピーク電圧より高い一定電圧まで昇圧回路で昇圧した後、インバータで交流電圧に変換している。この場合、昇圧回路及びインバータは、常時高速なスイッチング動作を行っている。
【0003】
一方、かかるパワーコンディショナでは、変換効率を向上させることが重要である。そこで、直流側の電圧と交流側の瞬時電圧の絶対値とを常に比較して、昇圧回路については昇圧が必要な期間のみスイッチング動作させ、インバータについては降圧が必要な期間のみスイッチング動作させる、という制御(以下、最小スイッチング変換方式という。)が提案されている(例えば特許文献1,2参照。)。このような最小スイッチング変換方式によって昇圧回路及びインバータにスイッチング動作の休止期間ができると、その分、スイッチング損失等が低減されるので、変換効率を向上させることができる。
【0004】
また、近年、太陽電池と蓄電池という2種類の直流電源を用いて、直流/交流の電力変換を行う、いわゆる複合型のパワーコンディショナが提案されている(例えば、特許文献3,4参照。)。このような複合型のパワーコンディショナは、1又は複数の太陽光発電パネルからの出力と、蓄電池の出力とを1台のパワーコンディショナに繋ぎ込むことができる。パワーコンディショナ内には各電源の必要に応じてDC/DCコンバータ(チョッパ回路)、及び、インバータが搭載され、商用電力系統との系統連系運転を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5618022号公報
【特許文献2】特許5618023号公報
【特許文献3】特開2015−142460号公報
【特許文献4】特開2015−192549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複合型のパワーコンディショナにおいては、特に、各種の蓄電池を接続したい現実的なニーズがある。ところが、色々な種類の蓄電池を使用することを想定すると、その端子電圧は広範囲に及ぶ。現実にはさらに、想定した範囲外の電圧の蓄電池を使用したい場合もあり、現状ではパワーコンディショナ側の対応が十分ではない。
【0007】
一方、蓄電池を直流電源として最小スイッチング変換方式を適用した場合、蓄電池に流れる充放電電流が脈流になる。これは、DCバスの電圧が一定電圧ではないことに起因する無効電流を、蓄電池に並列接続された電解コンデンサによって完全には吸収できないからである。このことは、直ちに問題となることではないが、一定値の直流電流と脈流電流とを比べると、後者の方が、蓄電池の内部抵抗によって発生する損失が大きい。
【0008】
かかる課題に鑑み、本発明は、電力変換システムにおいて、各種の蓄電池に対する汎用性を高め、かつ、蓄電池の損失を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、直流電源回路とパワーコンディショナとを互いに接続して成る電力変換システムであって、前記パワーコンディショナは、前記直流電源回路とDCバスとの間に設けられた第1のDC/DCコンバータと、前記DCバスと交流電路との間に設けられ、交流半サイクル内で前記第1のDC/DCコンバータと交互に休止期間を有しつつスイッチング動作するインバータと、を備え、前記直流電源回路は、蓄電池と、前記蓄電池と前記第1のDC/DCコンバータとの間に設けられ、直流リアクトルを含む、双方向性の第2のDC/DCコンバータと、を備えたものであり、前記第2のDC/DCコンバータの前記直流リアクトルに流れる電流を一定値とする制御を行う制御部を有する電力変換システムである。
【0010】
また、他の観点からは、直流電源回路とパワーコンディショナとを互いに接続して成り、前記パワーコンディショナは、前記直流電源回路とDCバスとの間に設けられた第1のDC/DCコンバータと、前記DCバスと交流電路との間に設けられたインバータとを有し、前記直流電源回路は、蓄電池と、前記蓄電池と前記第1のDC/DCコンバータとの間に設けられ、直流リアクトルを含む、双方向性の第2のDC/DCコンバータとを有するものである電力変換システムを実行主体とした、その制御方法であって、前記第2のDC/DCコンバータは、前記蓄電池の電圧を前記第1のDC/DCコンバータの低電圧側の電圧に昇圧し、又は、その逆方向に降圧し、前記第1のDC/DCコンバータと、前記インバータとは、交流半サイクル内で交互に休止期間を有しつつスイッチング動作し、前記第2のDC/DCコンバータの前記直流リアクトルに流れる電流を一定値とする制御を行う、電力変換システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力変換システムにおいて、各種の蓄電池に対する汎用性を高め、かつ、蓄電池の損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電力変換システムの概略構成の一例を示す図である。
図2図1における蓄電池にのみ注目した電力変換システムの詳細を示す回路図の一例である。
図3】最小スイッチング変換方式における、DC/DCコンバータ及びインバータの動作の特徴を簡略に示す波形図(横書き)である。
図4】最小スイッチング変換方式における、DC/DCコンバータ及びインバータの動作の特徴を簡略に示す波形図(縦書き)である。
図5】第2のDC/DCコンバータの高電圧側の電圧制御ブロック線図である。
図6】第2のDC/DCコンバータにおける直流リアクトルの電流制御ブロック線図である。
図7】比較のために、図2から第2のDC/DCコンバータを削除した回路図である。
図8図7の回路における電流センサによって検出される系統電流の波形図である。
図9図7の回路における電圧センサによって検出される系統電圧の波形図である。
図10図7の回路における電流センサによって検出される蓄電池への充電電流の波形図である。
図11】電圧センサによって検出される、DC/DCコンバータと、パワーコンディショナとの相互接続点での電圧の波形図である。
図12図2の回路における電流センサによって検出される蓄電池への充電電流の波形図である。
図13】情報信号の送受信の例を示す図である。
図14】DC/DCコンバータのスイッチング動作の2例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
【0014】
(1)これは、直流電源回路とパワーコンディショナとを互いに接続して成る電力変換システムであって、前記パワーコンディショナは、前記直流電源回路とDCバスとの間に設けられた第1のDC/DCコンバータと、前記DCバスと交流電路との間に設けられ、交流半サイクル内で前記第1のDC/DCコンバータと交互に休止期間を有しつつスイッチング動作するインバータと、を備え、前記直流電源回路は、蓄電池と、前記蓄電池と前記第1のDC/DCコンバータとの間に設けられ、直流リアクトルを含む、双方向性の第2のDC/DCコンバータと、を備え、前記第2のDC/DCコンバータの前記直流リアクトルに流れる電流を一定値とする制御を行う制御部を有する電力変換システムである。
【0015】
このように構成された電力変換システムでは、パワーコンディショナと蓄電池との間に入出力電圧の大きな差があっても、昇降圧が可能となり、しかも電圧の適用範囲が広くなる。従って、出力電圧の異なる各種の蓄電池を第2のDC/DCコンバータ経由でパワーコンディショナに接続することができる。また、第1のDC/DCコンバータとインバータとが交流半サイクル内で交互にスイッチングの休止期間を有する最小スイッチング変換方式では、脈流波形の電流が第1のDC/DCコンバータの低電圧側に流れようとするが、制御部が、第2のDC/DCコンバータの直流リアクトルに流れる電流を一定値とする制御を、例えば、第1のDC/DCコンバータの低電圧側(第2のDC/DCコンバータの高電圧側)の電圧を一定値とする制御において行うことにより、蓄電池には直流電流のみが流れ、脈流波形の電流は流れない。これにより、蓄電池の内部抵抗による損失を抑制し、蓄電池の劣化を遅らせ、また、蓄電池の性能を充分に発揮させることができる。
【0016】
(2)また、(1)の電力変換システムにおいて、前記制御部は、前記第2のDC/DCコンバータの高電圧側の電圧フィードバック制御の操作量に、高電圧側の電圧目標値を低電圧側の電圧検出値で除した値を乗じて算出される値について、一定の周期で平均化した値を充放電電流目標値と定め、前記第2のDC/DCコンバータの高電圧側を一定電圧に制御してもよい。
この場合、第2のDC/DCコンバータの低電圧側には、平均化処理された平坦な直流電流を流すことができる。すなわち、第2のDC/DCコンバータは、蓄電池の充放電電流を、脈流波形ではない一定電流に制御することができる。
【0017】
(3)また、(2)の電力変換システムにおいて、例えば、
Tは前記周期、
igdc_refは前記充放電電流目標値、
ipwm_ref_pi_vdcは前記操作量、
vdc_refは前記電圧目標値、及び、
vgdcは前記電圧検出値であるとした場合、
である。
この演算により、蓄電池の充放電電流目標値を、脈流でない一定電流に制御することができる。
【0018】
(4)また、(1)の電力変換システムにおいて、前記制御部は、前記第1のDC/DCコンバータの低電圧側の電圧フィードバックに基づく補償量を交流半周期で平均化した値を、前記第1のDC/DCコンバータに含まれる直流リアクトルの電流目標値と定め、前記第1のDC/DCコンバータの低電圧側を一定電圧に制御するようにしてもよい。
この場合、第1のDC/DCコンバータの低電圧側には、平均化処理された平坦な直流電流を流すことができる。そのため、第1のDC/DCコンバータの低電圧側の電圧を一定値とすることができる。
【0019】
(5)また、(2)又は(3)の電力変換システムにおいて、前記パワーコンディショナは、1又は複数の太陽光発電パネルとも接続される複合型のパワーコンディショナであり、前記第2のDC/DCコンバータは、前記太陽光発電パネルの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧を高電圧側に出力するようにしてもよい。
第2のDC/DCコンバータが太陽光発電パネルの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧を高電圧側に出力した場合には、パワーコンディショナは、最小スイッチング変換方式の動作を最適化することができる。
【0020】
(6)同様に、(4)の前記パワーコンディショナは、1又は複数の太陽光発電パネルとも接続される複合型のパワーコンディショナであり、前記第1のDC/DCコンバータは、前記太陽光発電パネルの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧を低電圧側に出力するようにしてもよい。
【0021】
(7)また、(2)、(3)又は(5)の電力変換システムにおいて、前記第2のDC/DCコンバータが自己の高電圧側を一定電圧に制御する場合、前記第2のDC/DCコンバータは、一定にすべき電圧目標値を前記パワーコンディショナから受信する通信を行うようにしてもよい。
この場合、通信により、パワーコンディショナから第2のDC/DCコンバータに対して高電圧側の出力電圧目標値を知らせることができる。例えば、太陽光発電パネルの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧をDCバスの電圧とする場合に、出力電圧目標値を第2のDC/DCコンバータに知らせることができる。これにより、第2のDC/DCコンバータは、太陽光発電パネルの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧を高電圧側に出力することができる。また、その結果、第1のDC/DCコンバータは、スイッチング停止期間が増加し、このことが、最小スイッチング変換方式の動作の最適化に寄与する。
【0022】
(8)また、(4)又は(6)の電力変換システムにおいて、前記第1のDC/DCコンバータが自己の低電圧側を一定電圧に制御する場合、前記第1のDC/DCコンバータは、前記第2のDC/DCコンバータへ出力電力指令値を送信する通信を行うようにしてもよい。
この場合、第2のDC/DCコンバータに出力電力指令値を知らせることで、第2のDC/DCコンバータは、充放電電流を、出力電力指令値に基づいた定電流に制御することができる。
【0023】
(9)一方、方法の観点からは、直流電源回路とパワーコンディショナとを互いに接続して成り、前記パワーコンディショナは、前記直流電源回路とDCバスとの間に設けられた第1のDC/DCコンバータと、前記DCバスと交流電路との間に設けられたインバータとを有し、前記直流電源回路は、蓄電池と、前記蓄電池と前記第1のDC/DCコンバータとの間に設けられ、直流リアクトルを含む、双方向性の第2のDC/DCコンバータとを有するものである電力変換システムを実行主体とした、その制御方法であって、
前記第2のDC/DCコンバータは、前記蓄電池の電圧を前記第1のDC/DCコンバータの低電圧側の電圧に昇圧し、又は、その逆方向に降圧し、前記第1のDC/DCコンバータと、前記インバータとは、交流半サイクル内で交互に休止期間を有しつつスイッチング動作し、前記第2のDC/DCコンバータの前記直流リアクトルに流れる電流を一定値とする制御を行う、電力変換システムの制御方法である。
【0024】
このような電力変換システムの制御方法によれば、パワーコンディショナと蓄電池との間に入出力電圧の差があっても、第2のDC/DCコンバータが、双方の電圧仲介役をすることができる。従って、出力電圧の異なる各種の蓄電池を第2のDC/DCコンバータ経由でパワーコンディショナに接続することができる。また、第1のDC/DCコンバータとインバータとが交流半サイクル内で交互にスイッチングの休止期間を有する最小スイッチング変換方式では、脈流波形の電流が第1のDC/DCコンバータの低電圧側に流れようとするが、第2のDC/DCコンバータの直流リアクトルに流れる電流を一定値とする制御を、例えば、第1のDC/DCコンバータの低電圧側(第2のDC/DCコンバータの高電圧側)の電圧を一定値とする制御において行うことにより、蓄電池には直流電流のみが流れ、脈流波形の電流は流れない。これにより、蓄電池の内部抵抗による損失を抑制し、蓄電池の劣化を遅らせ、また、蓄電池の性能を充分に発揮させることができる。
【0025】
[実施形態の詳細]
以下、実施形態の詳細について図面を参照して説明する。
【0026】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る電力変換システム(その制御方法も含む。)について説明する。
【0027】
《回路構成》
図1は、電力変換システム100の概略構成の一例を示す図である。この電力変換システム100は、複数且つ複数種類の直流電源を複合型のパワーコンディショナ1に接続して構成され、商用電力系統3との系統連系が可能である。商用電力系統3とパワーコンディショナ1との間の交流電路5には、需要家の負荷4が接続されている。図において、複合型のパワーコンディショナ1には、例えば3つの太陽光発電パネル7A,7B,7Cが接続されている。なお、この「3つ」というのは一例に過ぎない。また、パワーコンディショナ1には、蓄電池6が、双方向性のDC/DCコンバータ8を介して、接続されている。具体的には、DC/DCコンバータ8の低電圧側(図の左側)が蓄電池6に接続され、高電圧側(図の右側)がパワーコンディショナ1に接続されている。
【0028】
ここで、例えば数値例を挙げると、商用電力系統3の電圧はAC202V、その場合のピーク値(波高値)は約286V、太陽光発電パネル7A,7B,7Cからパワーコンディショナ1内のDC/DCコンバータ(図示せず。)に入力されMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を経た電圧はDC250Vである。この電圧がパワーコンディショナ1内のDCバス電圧となる。一方、蓄電池6の電圧はDC39〜53Vである。従って、蓄電池の6の電圧はDC/DCコンバータ8によって昇圧され、さらに、パワーコンディショナ1内のDC/DCコンバータ11(図2)によってDC250Vまで昇圧される。
【0029】
DC/DCコンバータ8を設けることの基本的な効果は、パワーコンディショナ1と蓄電池6との間に入出力電圧の大きな差があっても、昇降圧が可能となり、しかも電圧の適用範囲が広くなることである。従って、出力電圧の異なる各種の蓄電池6を、DC/DCコンバータ8経由で、パワーコンディショナ1に接続することができる。
【0030】
図2は、図1における蓄電池6にのみ注目した電力変換システム100の詳細を示す回路図の一例である。交流電路5と蓄電池6との間には、パワーコンディショナ1と、DC/DCコンバータ8とが設けられている。交流電路5には、図1では省略したが、交流電路5の電力モニタ30が設けられている。
なお、蓄電池6は、実際には単なる電池のみではなく蓄電システムとして構成されており、自己の状態を監視するモニタ機能及び、外部と情報交換するための通信機能を有している(詳細後述)。
【0031】
パワーコンディショナ1は、主回路要素として、DC/DCコンバータ11と、その高電圧側のDCバス12と、DCバス12に接続されたインバータ13と、DC/DCコンバータ11の低電圧側に接続された低電圧側コンデンサ14と、DCバス12に接続された中間コンデンサ15と、交流リアクトル16と、交流側コンデンサ17とを備えている。DC/DCコンバータ8の高電圧側は、DC/DCコンバータ11の低電圧側と互いに接続されている。インバータ13は、DC/DCコンバータ11の高電圧側と互いに接続されている。
【0032】
DC/DCコンバータ11は、チョッパ回路を構成する回路要素としての、直流リアクトル11Lと、ハイサイドのスイッチング素子Q3及び逆並列に接続されたダイオードd3と、ローサイドのスイッチング素子Q4及び逆並列に接続されたダイオードd4とを備えている。
インバータ13は、スイッチング素子Q5,Q6,Q7,Q8をフルブリッジ接続したものである。スイッチング素子Q5,Q6,Q7,Q8にはそれぞれ、逆並列にダイオードd5,d6,d7,d8が接続されている。
【0033】
DC/DCコンバータ8及びDC/DCコンバータ11は共に、双方向に使用することができ、蓄電池6の放電時は昇圧チョッパとなり、蓄電池6の充電時は降圧チョッパとなる。また、インバータ13は、直流から交流への変換を行うだけでなく双方向性のDC/ACコンバータとなることができ、逆方向の、交流から直流への変換も行うことができる。
【0034】
スイッチング素子Q3〜Q8としては、例えば図示しているIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、MOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用することができる。
交流リアクトル16及び交流側コンデンサ17は、フィルタ回路を構成し、インバータ13で発生する高周波成分が交流電路5に漏れ出ることを防止している。
【0035】
計測用の回路要素としては、低電圧側コンデンサ14の両端電圧を検出する電圧センサ18と、直流リアクトル11Lに流れる電流を検出する電流センサ19と、DCバス12の電圧すなわち中間コンデンサ15の両端電圧を検出する電圧センサ20と、交流リアクトル16に流れる電流を検出する電流センサ21と、交流側コンデンサ17の両端電圧を検出する電圧センサ22とが設けられている。各センサの検出出力信号は、制御部10に送られる。
【0036】
制御部10は、スイッチング素子Q3,Q4,Q5〜Q8のオン・オフを制御する。
制御部10は例えば、コンピュータを含み、ソフトウェア(コンピュータプログラム)をコンピュータが実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部の記憶装置(図示せず。)に格納される。但し、コンピュータを含まないハードウェアのみの回路で制御部10を構成することも可能ではある。
【0037】
一方、DC/DCコンバータ8は、チョッパ回路としての、直流リアクトル8Lと、ハイサイドのスイッチング素子Q1及び逆並列に接続されたダイオードd1と、ローサイドのスイッチング素子Q2及び逆並列に接続されたダイオードd2とを備えている。また、DC/DCコンバータ8の低電圧側には低電圧側コンデンサ81が接続され、高電圧側には高電圧側コンデンサ82が接続されている。スイッチング素子Q1,Q2としては例えばIGBTやMOSFETを用いることができる。
【0038】
計測用の回路要素としては、コンデンサ81の両端電圧を検出する電圧センサ83と、直流リアクトル8Lに流れる電流を検出する電流センサ84と、高電圧側コンデンサ82の両端電圧を検出する電圧センサ85とが設けられている。各センサの検出出力信号は、制御部80に送られる。
【0039】
制御部80は、スイッチング素子Q1,Q2のオン・オフを制御する。
制御部80は例えば、コンピュータを含み、ソフトウェア(コンピュータプログラム)をコンピュータが実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部の記憶装置(図示せず。)に格納される。但し、コンピュータを含まないハードウェアのみの回路で制御部80を構成することも可能ではある。
【0040】
DC/DCコンバータ8及び蓄電池6は、直流電源回路9を構成している。すなわち、電力変換システム100は、直流電源回路9とパワーコンディショナ1とを互いに接続して成るものである。そして、パワーコンディショナ1は、直流電源回路9とDCバス12との間に設けられた第1のDC/DCコンバータ11と、DCバス12と交流電路5との間に設けられ、交流半サイクル内で第1のDC/DCコンバータ11と交互に休止期間を有しつつスイッチング動作するインバータ13とを備えている。
また、直流電源回路9の第2のDC/DCコンバータ8は、蓄電池6と第1のDC/DCコンバータ11との間に設けられており、直流リアクトル8Lを含む、双方向性のコンバータである。
【0041】
また、制御部10及び制御部80は、通信機能を有しており、制御部10は、電力モニタ30及び制御部80と、必要な通信を行うことができる。制御部80は、蓄電池6及び制御部10と、必要な通信を行うことができる。
【0042】
《最小スイッチング変換方式の説明》
図3及び図4は、最小スイッチング変換方式における、DC/DCコンバータ11及びインバータ13の動作の特徴を簡略に示す波形図である。両図は同じ内容を示しているが、図3は特に、直流入力から交流出力までの振幅の関係が見やすいように横書き表示し、図4は特に、制御のタイミングが見やすいように縦書き表示している。図3の上段及び図4の左欄はそれぞれ、比較のために、最小スイッチング変換方式ではない伝統的なスイッチング制御を表す波形図である。また、図3の下段及び図4の右欄はそれぞれ、最小スイッチング変換方式の動作を示す波形図である。
【0043】
まず、図3の上段(又は図4の左欄)において、伝統的なスイッチング制御では、入力される直流電圧Vdcに対するDC/DCコンバータの出力は、Vdcよりも高い値の等間隔のパルス列状である。この出力は中間コンデンサによって平滑化され、DCバスに、電圧Vとして現れる。これに対してインバータは、PWM(Pulse Width Modulation)制御されたスイッチングを半周期で極性反転しながら行う。この結果、最終的な平滑化を経て、正弦波の交流電圧Vacが得られる。
【0044】
次に、図3の下段の最小スイッチング変換方式では、交流波形の電圧目標値Vacの瞬時値の絶対値と、入力である直流電圧Vdcとの比較結果に応じて、DC/DCコンバータ11とインバータ13とが動作する。すなわち、電圧目標値Vacの絶対値においてVac<Vdc(又はVac≦Vdc)のときは、DC/DCコンバータ11は停止し(図中の「ST」)、Vac≧Vdc(又はVac>Vdc)のときは、DC/DCコンバータ11が昇圧動作を行う(図中の「OP」)。DC/DCコンバータ11の出力は中間コンデンサ15により平滑化され、DCバス12に、図示の電圧Vとして現れる。
【0045】
ここで、中間コンデンサ15が小容量(例えばマイクロファラッドのレベル)である。そのため、交流波形の絶対値のピーク前後となる一部の波形が平滑化されずにそのまま残る。すなわち、平滑は、DC/DCコンバータ11による高周波のスイッチングの痕跡を消す程度には作用するが、商用周波数の2倍程度の低周波を平滑化することはできないように中間コンデンサ15が小容量になっている。
【0046】
これに対してインバータ13は、電圧目標値Vacの絶対値と、直流電圧Vdcとの比較結果に応じて、Vac<Vdc(又はVac≦Vdc)のときは、高周波スイッチングを行い(図中の「OP」)、Vac≧Vdc(又はVac>Vdc)のときは、高周波スイッチングを停止する(図中の「ST」)。高周波スイッチングを停止しているときのインバータ13は、スイッチング素子Q5,Q8がオン、Q6,Q7がオフの状態と、スイッチング素子Q5,Q8がオフ、Q6,Q7がオンの状態のいずれかを選択することにより、必要な極性反転のみを行う。インバータ13の出力は交流リアクトル16及び交流側コンデンサ17により平滑化され、所望の交流出力が得られる。
【0047】
ここで、図4の右欄に示すように、DC/DCコンバータ11とインバータ13とは、交互に高周波スイッチングの動作をしており、DC/DCコンバータ11が昇圧の動作をしているときは、インバータ13は高周波スイッチングを停止し、DCバス12の電圧に対して必要な極性反転のみを行っている。逆に、インバータ13が高周波スイッチング動作するときは、DC/DCコンバータ11は停止して、低電圧側コンデンサ14の両端電圧が、直流リアクトル11L及びダイオードd3を介してDCバス12に現れる。
【0048】
以上のようにして、DC/DCコンバータ11とインバータ13とによる最小スイッチング変換方式の動作が行われる。
【0049】
《第2のDC/DCコンバータの制御》
次に、第2の(外付けの)DC/DCコンバータ8の制御について説明する。
図5は、DC/DCコンバータ8の高電圧側の電圧制御ブロック線図である。制御の実行主体は制御部80である。図において、制御部80は、電圧センサ85(図2)が検出する高電圧側の電圧検出値vdcを制御量として、高電圧側の電圧目標値vdc_refと、制御量vdcとの誤差量dvdcを計算する。そして、制御部80は、誤差量dvdcをPI補償器に通して、操作量ipwm_ref_pi_vdcを算出する。
【0050】
以下に、直流リアクトル8Lの電流目標値igdc_refを求める式を示す。
なお、文字フォントの違い(立体/イタリック体)には意味は無く、同じ文字は同じ量を表している(以下同様)。
【0051】
【0052】
上記の式において、高電圧側の電圧制御ブロック線図で算出した操作量ipwm_ref_pi_vdcは、物理的にはDC/DCコンバータ8の高電圧側コンデンサ82に入出する電流を意味している。従って、DC/DCコンバータ8における直流リアクトル8Lの電流目標値の算出にあたっては、高電圧側の電圧目標値vdc_refを、電圧センサ83(図2)が検出する蓄電池側の電圧検出値vgdcで除した値を、操作量ipwm_ref_pi_vdcに乗算して、直流リアクトル8Lの電流目標値に換算する。そして、その換算値をPWM周期よりも長い一定の周期Tで平均化して直流リアクトル8Lの電流目標値igdc_refとする。交流成分を取り除くことが目的であるためTは交流周期(例えば1/60[秒])、またはその1/2とする。
【0053】
図6は、DC/DCコンバータ8における直流リアクトル8Lの電流制御ブロック線図である。制御部80は、電流センサ84が検出する直流リアクトル8Lの電流検出値igdcを制御量として、直流リアクトル8Lの電流目標値igdc_refとの誤差量digdcを計算する。そして、制御部80は、誤差量digdcをPI補償器に通し、その計算結果に外乱補償として蓄電池側の電圧検出値vgdcを加算して、さらに高電圧側の電圧検出値vdcで除算する。これにより、操作量th_swが算出される。この操作量を用いてDC/DCコンバータ8のスイッチング素子Q1,Q2のデューティを決定する。
【0054】
なお、DC/DCコンバータ8は、太陽光発電パネル7A,7B,7Cの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧を高電圧側に出力する。
DC/DCコンバータ8が、太陽光発電パネル7A,7B,7Cの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧を高電圧側に出力した場合には、DC/DCコンバータ11のスイッチング停止期間が増加する。このことは、パワーコンディショナ1における最小スイッチング変換方式の動作の最適化に寄与する。
なお、同様に、DC/DCコンバータ11が、太陽光発電パネル7A,7B,7Cの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧を低電圧側に出力することもできる。
【0055】
《検証》
上記のDC/DCコンバータ8の制御の結果を検証する。これは、一例として、約1.5kWの電力を、商用電力系統3から蓄電池6に充電する場合である。
図7は、比較のために、図2からDC/DCコンバータ8を削除した回路図である。図8は、図7の回路における電流センサ21によって検出される系統電流(周波数は50Hz)の波形図である。また、図9は、図7の回路における電圧センサ22によって検出される系統電圧(周波数は50Hz)の波形図である。そして、図10は、図7の回路における電流センサ19によって検出される蓄電池6への充電電流の波形図である。前述の最小スイッチング変換方式により、充電電流は脈流となっており、平均値として29.6[A]、0から見たピーク値は68[A]、脈流の周期は交流の周期の1/2である。
【0056】
次に、図2の回路に示す電力変換システム100についての波形図を示す。
電流センサ21によって検出される系統電流(周波数は50Hz)の波形図、及び、電圧センサ22によって検出される系統電圧(周波数は50Hz)の波形図は、それぞれ、図8及び図9と同じである。
【0057】
図11は、電圧センサ18,85によって検出されるDC/DCコンバータ8と、パワーコンディショナ1との相互接続点での電圧の波形図である。この波形図は、縦軸方向にスケールを拡大している。平均値は200[V]、ピーク・トゥー・ピークの値は、6[V]である。
そして、図12は、図2の回路における電流センサ84によって検出される蓄電池6への充電電流の波形図である。図示のように、極めて微小な変動はあるものの、充電電流は直流と言える状態となっていることがわかる。電流の平均値は、30.2[A]、ピーク・トゥー・ピークの値は、1.8[A]である。
【0058】
以上の検証結果より、DC/DCコンバータ8を蓄電池6とパワーコンディショナ1との間に設け、所定の制御を行うことで、蓄電池6への充電電流が直流になることが示された。なお、ここでは充電について記載したが、蓄電池6の放電時にも同様に、放電電流は直流となる。
充放電電流が直流になると、平均値が同じ値である脈流で充放電する場合と比べて、蓄電池6の内部抵抗による損失は2/3に低下する。
【0059】
《通信について》
DC/DCコンバータ8を蓄電池6とパワーコンディショナ1との間に置くことによって、DC/DCコンバータ8の制御部80に通信の仲介役をさせることができる。例えば、DC/DCコンバータ8に、蓄電池6との通信に関して、各種の通信インターフェース機能を搭載すれば、例えば蓄電池メーカーによって各種の通信仕様となっている蓄電池6を使用しても、DC/DCコンバータ8との通信を行うことができる。パワーコンディショナ1から見れば、DC/DCコンバータ8とさえ通信できれば、蓄電池6の通信仕様は問わないで済むことになり、実用上、至便である。
【0060】
図13は、情報信号の送受信の例を示す図である。DC/DCコンバータ8と蓄電池6との間では、信号S1,S2が送受信される。パワーコンディショナ1とDC/DCコンバータ8との間では、信号S3,S4が送受信される。電力モニタ30とパワーコンディショナ1との間では、信号S5,S6が送受信される。
【0061】
信号の内容としては、例えば以下のものがある。PCSはパワーコンディショナ、PVは太陽光発電パネル、DC/DCはDC/DCコンバータ8を、それぞれ意味する略語である。
S1:運転開始指示、運転停止指示
S2:蓄電池両端電圧、セル電圧、システム動作情報、電流、SOC(State of Charge)
S3:DC/DC動作指示、PCS動作状況
S4:DC/DC動作モード、PCSへの要求状態、蓄電池動作情報
S5:PCS動作指示、蓄電池動作指示、蓄電池充放電目標値、PCS出力電力最大値、エラー解除フラグ
S6:PCS動作内容、蓄電池動作内容、PCS出力電力、各PV発電電力、蓄電池充放電電力、蓄電池容量(SOC)、PCS状態、蓄電池状態、ログコード
【0062】
《第1実施形態のまとめ》
上記電力変換システム100では、パワーコンディショナ1と蓄電池6との間に入出力電圧の大きな差があっても、昇降圧が可能となり、しかも電圧の適用範囲が広くなる。従って、出力電圧の異なる各種の蓄電池をパワーコンディショナ1に接続することができる。また、第1のDC/DCコンバータ11とインバータ13とが交流半サイクル内で交互にスイッチングの休止期間を有する最小スイッチング変換方式では、脈流波形の電流が第1のDC/DCコンバータ11の低電圧側に流れようとするが、第2のDC/DCコンバータ8の直流リアクトル8Lに流れる電流を一定値とする制御(言い換えれば、DC/DCコンバータ8の高電圧側の電圧を一定値とする制御)を行うことにより、蓄電池6には直流電流のみが流れ、脈流波形の電流は流れない。これにより、蓄電池6の内部抵抗による損失を抑制し、蓄電池6の劣化を遅らせ、また、蓄電池6の性能を充分に発揮させることができる。
【0063】
また、第2のDC/DCコンバータ8が自己の高電圧側を一定電圧に制御する場合、第2のDC/DCコンバータ8は、一定にすべき電圧目標値をパワーコンディショナ1から受信する通信を行う。この通信により、パワーコンディショナ1から第2のDC/DCコンバータ8に対して高電圧側の出力電圧目標値を知らせることができる。例えば、太陽光発電パネルの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧をDCバス12の電圧とする場合に、出力電圧目標値を第2のDC/DCコンバータ8に知らせることができる。これにより、第2のDC/DCコンバータ8は、太陽光発電パネルの出力電圧のうち最も高い電圧と一致する電圧を高電圧側に出力することができる。また、その結果、第1のDC/DCコンバータ11は、スイッチング停止期間が増加し、このことが、最小スイッチング変換方式の動作の最適化に寄与する。
【0064】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の電力変換システム(その制御方法も含む。)について説明する。回路構成及び最小スイッチング変換については、第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、第1の実施形態における第2のDC/DCコンバータ8の定電流制御をいわば「従」として、パワーコンディショナ1内のDC/DCコンバータ11主導で、DC/DC11の低電圧側を一定電圧に制御する定電圧制御が行われるようにする。
【0065】
《第1のDC/DCコンバータの制御》
まず、以下のように回路の諸量を定義する。なお、以下の「蓄電池部・・」とは、DC/DCコンバータ8を介して蓄電池6へ接続するための、DC/DCコンバータ11の低電圧側終端を意味する。
【0066】
dc:直流リアクトル11Lの電流検出値
dc:直流リアクトル11Lの電流目標値
dc:蓄電池部入力電圧検出値(電圧センサ18の検出値)
dc:蓄電池部入力電圧目標値
dc:コンデンサ14及び82の合成容量
ac:交流系統電圧検出値(電圧センサ22の検出値)
ac:交流出力電流目標値
ac:交流側コンデンサ17の容量
inv:交流リアクトル16の電流目標値
inv:インバータ13の交流側での電圧目標値
inv:インバータ13の抵抗成分(主に交流リアクトル16の抵抗成分)
inv:交流リアクトル16のインダクタンス
:中間コンデンサ15の容量
:中間コンデンサ15の電圧検出値(電圧センサ20の検出値)
:中間コンデンサ15の電圧目標値
dc:DC/DCコンバータ11の抵抗成分(主に直流リアクトル11Lの抵抗成分)
dc:直流リアクトル11Lのインダクタンス
【0067】
まず、直流リアクトル11Lの電流検出値Idcは、合成容量Cdcと蓄電池部入力電圧検出値Vdcにより(1)式のように書ける。
【0068】
電圧フィードバック的に書き直すと、fを制御周期として(2)式のようになる。
【0069】
交流半周期で平均化すると、次の(3)式のようになる。
【0070】
こうして、交流半周期のフィードバック制御で直流リアクトル電流の直流成分を得る。ここで、Tは交流半周期、Kdcは補償係数である。
【0071】
そして、直流リアクトル11Lの電流目標値は、(インバータ13の直流側での電力)+(中間コンデンサ15の充放電電力)を、スイッチング素子Q4のコレクタ−エミッタ間の電圧(これはIGBTの場合で、MOSFETの場合はドレイン−ソース間の電圧)で除して求めることができる。スイッチング素子Q4のコレクタ−エミッタ間の電圧は蓄電池部入力電圧検出値Vdcから抵抗成分と直流リアクトル11LのインダクタンスLdcによる電圧降下を考慮して計算することができる。すなわち、直流リアクトル11Lの電流目標値は、以下の(4)式により表される。
【0072】

【0073】
交流半周期で平均をとると(5)式になる。

【0074】
中間コンデンサ15の充放電電力と直流リアクトル11Lの電圧降下は、交流半周期における平均をとると0となるので、(6)式のように書ける。なお、記号〈 〉は平均値を表す。
【0075】
ところで、交流リアクトル16の電流目標値Iinvについては交流出力電流目標値Iacと交流側コンデンサCacの充放電電流により、(7)式で表される。
【0076】
交流周期の実効値を計算すると、交流側コンデンサ17の充放電電流は0となるので、(8)式になる。
【0077】
そして、インバータ13の電圧目標値Vinvは、交流系統電圧検出値Vacに抵抗成分と交流リアクトル16のインダクタンス成分による電圧降下を考慮して、(9)式のように表される。
【0078】
交流周期の実効値を計算すると、交流リアクトル16の電圧降下は0となり、(8)式を代入すると(10)式になる。
【0079】
(6)式に(8)式と(10)式を代入すると(11)式になる。
【0080】
〈Iacrmsについて解くと、(12)式のようになり、Idc_rは(3)式で求めたものを用いることで交流出力電流の実効値を得る。

【0081】
〈Iacrms、〈Vacrmsの値が定まることで、PLL(Phase Locked Loop)で交流電圧に同期したIac、Vacを生成することができ、これを(7)式に代入してインバータ13の電流目標値Iinvが得られる。また、(9)式からはVinvが得られ、(4)式からは直流リアクトル電流目標値Idcが得られる。
【0082】
以上の演算により、パワーコンディショナ1のDC/DCコンバータ11における低電圧側の定電圧制御に従った、最小スイッチング変換方式によるパワーコンディショナ1の系統連系動作が可能となる。
これにより、蓄電池6の充放電電流の波形図としては、前述の図12と同様の結果が得られる。
【0083】
図14は、DC/DCコンバータ11のスイッチング動作の2例を表す図である。
中間コンデンサ15の電圧目標値Vdc*は一定電圧に設定するが、太陽光発電中の発電電圧の最大値である電圧値をVpv−maxとした場合、Vdc*<Vpv−maxであれば、中間コンデンサ15の電圧Vの最小電圧は、Vpv−maxになるため、DC/DCコンバータ11は常に昇圧または降圧動作を行ってしまって、最小スイッチング変換にならず変換効率低下を招く(図14の(a))。そのため、Vdc*の設定値はVpv−maxとすることにより、DC/DCコンバータ11の無駄な昇圧動作がなくなるので、変換効率向上へつながる(図14の(b))。
【0084】
《第2実施形態のまとめ》
上記のように、第2実施形態では、第1のDC/DCコンバータ11の低電圧側の電圧フィードバックに基づく補償量を交流半周期で平均化した値を、第1のDC/DCコンバータ11の直流リアクトル11Lの電流目標値と定め、第1のDC/DCコンバータ11の低電圧側を一定電圧に制御することができる。
第1のDC/DCコンバータ11の低電圧側の電圧を一定値とする定電圧制御を行うことにより、第1のDC/DCコンバータ11主導で、第2のDC/DCコンバータ8は定電流制御を行い、第2のDC/DCコンバータ8に流れる電流を一定値にすることができる。
従って、蓄電池6には直流電流のみが流れ、脈流波形の電流は流れない。これにより、蓄電池6の内部抵抗による損失を抑制し、蓄電池6の劣化を遅らせ、また、蓄電池6の性能を充分に発揮させることができる。
【0085】
また、第1のDC/DCコンバータ11が自己の低電圧側を一定電圧に制御する場合、第1のDC/DCコンバータ11は、第2のDC/DCコンバータ8へ出力電力指令値を送信する通信を行うことができる。この場合、第2のDC/DCコンバータ8に出力電力指令値を知らせることで、第2のDC/DCコンバータ8は、充放電電流を、出力電力指令値に基づいた定電流に制御することができる。
【0086】
<補記>
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
但し、明細書及び図面に開示した通りの全ての構成要素を備える電力変換システムも、本発明に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
1 パワーコンディショナ
3 商用電力系統
4 負荷
5 交流電路
6 蓄電池
7A,7B,7C 太陽光発電パネル
8 DC/DCコンバータ
8L 直流リアクトル
9 直流電源回路
10 制御部
11 DC/DCコンバータ
11L 直流リアクトル
12 DCバス
13 インバータ
14 低電圧側コンデンサ
15 中間コンデンサ
16 交流リアクトル
17 交流側コンデンサ
18,20,22 電圧センサ
19,21 電流センサ
30 電力モニタ
80 制御部
81 低電圧側コンデンサ
82 高電圧側コンデンサ
83,85 電圧センサ
84 電流センサ
100 電力変換システム
d1〜d8 ダイオード
Q1〜Q8 スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14