(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応ステップは、前記一次造粒物中のセメントと前記反応水とを水和反応させて、前記石炭灰とセメントと水との混合物である石炭灰造粒層を生成し、前記着色材混合物中のセメントと前記反応水とを水和反応させて、前記着色材とセメントと水との混合物であり、前記石炭灰造粒層の表面を覆う着色層を生成する、請求項1に記載の石炭灰造粒物の製造方法。
前記石炭灰混合ステップは、前記石炭灰とセメントとを互いに付着させるための水を添加し、前記一次造粒ステップは、前記水が添加された石炭灰混合物を転動させることにより、前記石炭灰混合物を集合させて前記一次造粒物を生成する、請求項1又は請求項2に記載の石炭灰造粒物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、石炭灰とセメントとを混合して造粒した造粒物は、主成分である石炭灰の色である灰色となる。従って、水底が見える水域に造粒物が覆砂された場合、水底が灰色となり、景観を損ねる場合がある。また、造粒物が砂浜に打ち上げられたりした場合にも、この造粒物が砂浜の中で目立ち、景観を損ねる場合がある。従って、景観を損ねないように、石炭灰造粒物を灰色以外の色に着色することが求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、適切な着色を施した石炭灰造粒物の製造方法、及び適切な着色を施した石炭灰造粒物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の石炭灰造粒物の製造方法は、石炭灰とセメントとを混合して粉体状の石炭灰混合物を生成する石炭灰混合ステップと、前記石炭灰と異なる色の着色材と、セメントとを混合して粉体状の着色材混合物を生成する着色材混合ステップと、前記石炭灰混合物の集合体である一次造粒物を生成する一次造粒ステップと、前記一次造粒物の表面に反応水を添加する反応水添加ステップと、前記一次造粒物の表面に前記着色材混合物を付着させて、前記一次造粒物の表面に前記着色材混合物が被覆された二次造粒物を生成する二次造粒ステップと、前記二次造粒物中のセメントと前記反応水とを水和反応させて、石炭灰造粒物を生成する反応ステップと、を有する。
【0008】
前記石炭灰造粒物の製造方法において、前記反応ステップは、前記一次造粒物中のセメントと前記反応水とを水和反応させて、前記石炭灰とセメントと水との混合物である石炭灰造粒層を生成し、前記着色材混合物中のセメントと前記反応水とを水和反応させて、前記着色材とセメントと水との混合物であり、前記石炭灰造粒層の表面を覆う着色層を生成することが好ましい。
【0009】
前記石炭灰造粒物の製造方法において、前記石炭灰混合ステップは、前記石炭灰とセメントとを互いに付着させるための水を添加し、前記一次造粒ステップは、前記水が添加された石炭灰混合物を転動させることにより、前記石炭灰混合物を集合させて前記一次造粒物を生成することが好ましい。
【0010】
前記石炭灰造粒物の製造方法において、前記着色材混合ステップは、前記着色材とセメントとを互いに付着させるための水を添加することが好ましい。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の石炭灰造粒物は、石炭灰とセメントと水との混合物である石炭灰造粒層と、前記石炭灰と異なる色の着色材と、セメントと水との混合物であり、前記石炭灰造粒層の表面を覆う着色層と、を有する。
【0012】
前記石炭灰造粒物において、前記着色材は、Caを主成分として含有する無機材料であることが好ましい。
【0013】
前記石炭灰造粒物において、前記着色層は、全体の5重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、石炭灰造粒物に適切な着色を施すことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0017】
(石炭灰造粒物)
図1は、本実施形態に係る石炭灰造粒物の模式的な断面図である。本実施形態に係る石炭灰造粒物Aは、石炭灰造粒層1と、着色層2とを有する。石炭灰造粒物Aは、母材としての粒状の石炭灰造粒層1の表面に、着色層2が被覆された粒体である。石炭灰造粒物Aは、例えば内湾や入江、湖沼などの閉鎖性水域などの水底を覆うことで、この水域の環境改善を行うことができる。
【0018】
石炭灰造粒層1は、石炭灰とセメントと水との混合物で構成される層である。すなわち、石炭灰造粒層1は、石炭灰を含む水和物である。石炭灰は、本実施形態ではフライアッシュであるが、例えばクリンカアッシュなど、任意の石炭灰であってよい。石炭灰は、灰色である。セメントは、高炉セメントであるが、これに限られず任意のセメントであってよい。石炭灰造粒層1は、石炭灰とセメントとの総配合量に対し、石炭灰が70重量%以上となるように配合され、それに所定量の水を加えることによって生成された水和物である。
【0019】
着色層2は、着色材とセメントと水との混合物で構成される層である。すなわち、着色層2は、着色材を含む水和物である。着色材は、石炭灰と異なる色の材料である。着色材は、水と化学反応を起こさない無機材料であることが好ましい。本実施形態における着色材は、Ca(カルシウム)成分を主成分として含む無機材料である。着色材としては、以上説明した無機材料であって、牡蠣殻などの貝殻、瓦、高炉スラグなど、廃棄物を利用することが好ましい。また、着色材は、利用する環境に応じて、その環境における景観を損ねない色となるものを選定すればよい。セメントは、高炉セメントであるが、これに限られず任意のセメントであってよい。着色層2は、着色材とセメントとの総配合量に対し、着色材が5重量%以上50重量%以下となるように配合され、それに所定量の水を加えることによって生成された水和物である。
【0020】
石炭灰造粒物Aは、着色層2が、全体の5重量%以上50重量%以下である。また、石炭灰造粒物Aは、粒径が5mm以上50mm以下である。石炭灰造粒物Aは、石炭灰造粒層1及び着色層2が多孔層であるため、例えば気孔率が35%以上の多孔体となっている。
【0021】
(石炭灰造粒システム)
次に、石炭灰造粒物Aを製造するための石炭灰造粒システム10について説明する。
図2は、石炭灰造粒システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係る石炭灰造粒システム10は、石炭灰混合装置20、着色材混合装置30、造粒装置40、及び乾燥装置50を有する。
【0022】
石炭灰混合装置20は、石炭灰とセメントとを混合して、粉体状の石炭灰混合物A1を生成する装置である。石炭灰混合装置20は、例えば粉体を空練するミキサーである。石炭灰混合装置20は、石炭灰とセメントとの総配合量に対し、石炭灰が70重量%以上となるような配合比で、粉体である石炭灰と粉体であるセメントとが投入される。石炭灰混合装置20は、それらを空練して混合する。その後、石炭灰混合装置20は、水W1が添加され、さらに混合を行う。水W1は、混合された石炭灰とセメントとを湿らせることにより、石炭灰とセメントとを付着させ、後述する一次造粒物A2の造粒を容易にするために添加される。水W1の添加量は、石炭灰とセメントとを湿らせる程度の量であればよく、石炭灰とセメントとが完全に水和するよりも少ない量である。さらに言えば、水W1の添加量は、後述する反応水W3の添加量より少ない。より詳しくは、水W1の添加量は、石炭灰混合物A1全体の10重量%以上30重量%以下である。従って、石炭灰混合物A1は、水和により固化した水和物となっているものでなく、石炭灰とセメントとが混合された状態で存在する粉体状になっている。
【0023】
なお、本実施形態では、石炭灰混合物A1を生成するのに、石炭灰混合装置20を用いているが、石炭灰混合装置20を用いずに、作業者が石炭灰とセメントとを混合して、石炭灰混合物A1を生成してもよい。
【0024】
着色材混合装置30は、着色材とセメントとを混合して、粉体状の着色材混合物を生成する装置である。着色材混合装置30は、例えば粉体を空練するミキサーである。着色材混合装置30は、着色材とセメントとの総配合量に対し、着色材が5重量%以上50重量%以下となるような配合比で、粉体である着色材と粉体であるセメントとが投入される。着色材混合装置30は、それらを空練して混合する。その後、着色材混合装置30には、水W2が添加され、さらに混合を行う。水W2は、混合された着色材とセメントとを湿らせることにより、着色材とセメントとを付着させ、後述する二次造粒物A3の造粒を容易にするために添加される。水W2の添加量は、着色材とセメントとを湿らせる程度の量であればよく、着色材とセメントとが完全に水和するよりも少ない量である。さらに言えば、水W2の添加量は、後述する反応水W3の添加量より少ない。より詳しくは、水W2の添加量は、着色材混合物全体の10重量%以上30重量%以下である。従って、着色材混合物は、水和により固化した水和物となっているものでなく、着色材とセメントとが混合された状態で存在する粉体状になっている。
【0025】
なお、着色材は、上述のように粉体状であるが、後述する一次造粒物A2の粒径よりも小さいものであれば、粒径は任意である。例えば、着色材は、粒径が2mm以下であることが好ましい。また、本実施形態では、着色材混合物を生成するのに、着色材混合装置30を用いているが、着色材混合装置30を用いずに、作業者が着色材とセメントとを混合して、着色材混合物を生成してもよい。
【0026】
造粒装置40は、石炭灰混合物A1を集合させて一次造粒物を生成した後、後述する反応水W3及び着色材混合物を添加することにより、二次造粒物を生成する装置である。
図3は、造粒装置の模式図である。
図3に示すように、造粒装置40は、軸部41と、容器部42とを有する。軸部41は、軸状の部材であり、動力により回転する。容器部42は、外周に壁を有する容器である。容器部42は、軸部41の周囲に設けられており、軸部41の回転に伴い回転する。
【0027】
造粒装置40は、容器部42に石炭灰混合物A1が投入される。造粒装置40は、軸部41を回転させて容器部42内の石炭灰混合物A1を転動させる。石炭灰混合物A1は、水W1が添加されているため、転動することにより、水W1をバインダとして石炭灰混合物A1が集合して造粒物を生成する。造粒装置40は、このように石炭灰混合物A1を転動することにより整粒して、複数の一次造粒物A2を生成する。一次造粒物A2は、粒径が5mm以上50mm以下の粒体である。
【0028】
その後、造粒装置40は、一次造粒物A2の表面に反応水W3を添加する。反応水W3は、石炭灰混合物A1中のセメントを水和反応させるための水であり、かつ、一次造粒物A2の表面に着色材混合物を付着させるためのバインダとして用いられる水である。反応水W3の添加量は、一次造粒物A2の10重量%以上30重量%以下である。一次造粒物A2は、反応水W3が添加されていても、水和反応により固化した水和物となっているものでなく、粉体である石炭灰と粉体であるセメントとが集合した塊(造粒体)である。言い換えれば、一次造粒物A2は、水和反応が開始する前の状態、又は水和反応の進行段階の状態であるため、固化しておらず、ある程度の粘性を有する粘性体である。
【0029】
その後、造粒装置40は、容器部42内に着色材混合物が添加される。着色材混合物は、石炭灰混合物A1と着色材混合物の総量に対して、5重量%以上50重量%以下となるように添加される。この際、造粒装置40は、反応水W3が表面に添加された一次造粒物A2を転動させている。また、着色材混合物の各粉体の粒径は、一次造粒物A2より小さい。そのため、造粒装置40は、反応水W3をバインダとして一次造粒物A2の表面に着色材混合物を付着させ、さらには一次造粒物A2の表面に着色材混合物を被覆させる。言い換えれば、造粒装置40は、一次造粒物A2の表面に着色材混合物が被覆した二次造粒物A3を生成する。二次造粒物A3も、一次造粒物A2と同様に、水和反応が開始する前の状態、又は水和反応の進行段階の状態であるため、固化しておらず、粉体であるセメント、石炭灰、及び着色材とが集合した塊(造粒体)である。二次造粒物A3も、ある程度の粘性を有する粘性体となっている。
【0030】
造粒装置40は、以上のように二次造粒物A3を製造するが、一次造粒物A2の表面に着色材混合物が被覆した二次造粒物A3を生成するものであれば、その構造及び製造方法は任意である。
【0031】
乾燥装置50は、内部に二次造粒物A3を収納する容器である。乾燥装置50は、内部の湿度が所定値以下に保たれている。乾燥装置50内に収納された二次造粒物A3は、反応水W3により水和反応が進行して固化し、水和物である石炭灰造粒物Aとなる。二次造粒物A3内部の一次造粒物A2は、反応水W3によって水和して、石炭灰造粒層1となる。二次造粒物A3の表面の着色材混合物は、反応水W3によって水和し、石炭灰造粒層1の表面に結合した着色層2となる。
【0032】
以下、石炭灰造粒システム10を用いた石炭灰造粒物Aの製造方法について、フローチャートを用いて説明する。
図4は、石炭灰造粒物の製造方法を説明するフローチャートである。
図4に示すように、石炭灰造粒システム10は、石炭灰混合装置20により、石炭灰とセメントとを混合する(ステップS10)。ここでの混合、すなわち空練の時間は、例えば30秒である。石炭灰とセメントとを混合した後、石炭灰造粒システム10は、石炭灰混合装置20により、石炭灰とセメントとに水W1を添加して混合し、石炭灰混合物A1を生成する(ステップS12)。ここでの混合、すなわち空練の時間は、例えば1分である。石炭灰混合物A1は、水W1によって湿らされた粉体であり、水和生成物ではない。
【0033】
石炭灰造粒システム10は、着色材混合装置30により、着色材とセメントとを混合する(ステップS14)。ここでの混合、すなわち空練の時間は、例えば30秒である。着色材とセメントとを混合した後、石炭灰造粒システム10は、着色材混合装置30により、着色材とセメントとに水W2を添加して混合し、着色材混合物を生成する(ステップS16)。ここでの混合、すなわち空練の時間は、例えば1分である。着色材混合物は、水W2によって湿らされた粉体であり、水和生成物ではない。なお、ステップS14及びステップS16は、後述するステップS22より前であれば、どのタイミングで実行されてもよい。
【0034】
石炭灰混合物A1を生成した後、石炭灰造粒システム10は、造粒装置40により、石炭灰混合物A1同士を集合させて、一次造粒物A2を生成する(ステップS18)。具体的には、造粒装置40は、容器部42内の石炭灰混合物A1を転動させることにより、石炭灰混合物A1同士を集合させて整粒し、複数の一次造粒物A2を生成する。一次造粒物A2を生成した後、石炭灰造粒システム10は、造粒装置40により、一次造粒物A2の表面に反応水W3を添加し(ステップS20)、さらに一次造粒物A2の表面に着色材混合物を被覆させて、二次造粒物A3を生成する(ステップS22)。具体的には、造粒装置40は、一次造粒物A2の表面に反応水を添加して一次造粒物A2の表面を湿らせた後、一次造粒物A2を転動させつつ、容器部42内に着色材混合物を投入する。一次造粒物A2の表面が湿っており、かつ、着色材混合物の粒径が一次造粒物A2より小さいため、着色材混合物は、一次造粒物A2の表面に付着する。そして、造粒装置40は、一次造粒物A2を転動させることにより、一次造粒物A2の表面全体に着色材混合物を付着させて、一次造粒物A2の表面を着色材混合物で被覆する。
【0035】
二次造粒物A3を生成した後、例えば作業者が、二次造粒物A3を乾燥装置50内に収納する。二次造粒物A3は、乾燥装置50内に、例えば3日間程度収納される。石炭灰造粒システム10は、乾燥装置50内に収納された二次造粒物A3を水和反応させて、石炭灰造粒物Aを生成し(ステップS24)、石炭灰造粒物Aの製造処理は終了する。二次造粒物A3は、添加された反応水W3と二次造粒物A3中のセメントとが水和反応して固化し、水和生成物である石炭灰造粒物Aとなる。具体的には、二次造粒物A3の内部の一次造粒物A2中のセメントと石炭灰と反応水W3とが水和反応して、石炭灰造粒層1となる。また、二次造粒物A3の表面の着色材混合物中のセメントと反応水W3とが水和反応して、着色層2となる。なお、本実施形態では、二次造粒物A3を乾燥装置50内に収納して水和反応を進行させたが、乾燥装置50は必ずしも必要なく、乾燥装置50内に二次造粒物A3を収納させずに水和反応を進行させてもよい。ただし、石炭灰造粒システム10は、二次造粒物A3を乾燥装置50に収納することで、二次造粒物A3中の余分な水、すなわち水和反応に不要な水を除去するため、水和反応をより適切に行わせることが可能となる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、石炭灰混合ステップと、着色材混合ステップと、一次造粒ステップと、反応水添加ステップと、二次造粒ステップと、反応ステップとを有する。石炭灰混合ステップは、石炭灰とセメントとを混合して粉体状の石炭灰混合物A1を生成する。着色材混合ステップは、石炭灰と異なる色の着色材と、セメントとを混合して粉体状の着色材混合物を生成する。一次造粒ステップは、石炭灰混合物A1の集合体である一次造粒物A2を生成する。反応水添加ステップは、一次造粒物A2の表面に反応水W3を添加する。二次造粒ステップは、一次造粒物A2の表面に着色材混合物を付着させて、一次造粒物A2の表面に着色材混合物が被覆された二次造粒物A3を生成する。反応ステップは、二次造粒物A3中のセメントと反応水W3とを水和反応させて、石炭灰造粒物Aを生成する。このようにして生成された石炭灰造粒物Aは、石炭灰造粒層1の表面を着色層2が覆ったものとなる。
【0037】
石炭灰を主成分として造粒物を製造した場合、その造粒物の色は、主成分の石炭灰の色である灰色となる。このようにして製造した造粒物で水底を覆砂した場合、水底が見える水域では、水底が灰色となり、景観を損ねる場合がある。また、造粒物が砂浜に打ち上げられたりした場合にも、この造粒物が砂浜の中で目立ち、景観を損ねる場合がある。従って、このような造粒物に、使用水域に応じた適切な着色を施すことが求められている。しかし、着色のために、石炭灰と着色材とを混合して造粒物を製造しても、石炭灰の灰色成分が強いため、灰色と異なる色に着色することが困難である。本実施形態に係る石炭灰造粒物Aは、石炭灰が含有された石炭灰造粒層1の表面に、石炭灰が含有されず着色材が含有された着色層2が被覆されている。着色層2は、石炭灰を含まないため、石炭灰の色にならず、着色材由来の色となる。従って、石炭灰造粒物Aは、表面の色を着色層2の色にすることができ、適切な着色が施されたものとなる。
【0038】
また、石炭灰造粒物Aは、石炭灰造粒層1と着色層2との二層となっているため、その製造方法によっては、一層からなる造粒物の製造よりも、製造時間が大幅に長くなるおそれがある。例えば、石炭灰造粒層1を水和反応により生成した後、表面に着色材混合物を付着させてから水和させて、着色層2を生成する場合、石炭灰造粒層1の水和反応に要する時間と、着色層2の水和反応に要する時間とが必要となる。水和反応に要する時間は、例えば数日と長いため、このように2回の水和反応を別のタイミングで行う場合、一層の造粒物の製造時間に比べ、製造時間が大幅に長くなる。しかし、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、水和反応前の一次造粒物A2を生成した後、その表面を着色材混合物で被覆して二次造粒物A3を生成し、その後に水和反応させて石炭灰造粒物Aを生成する。すわなち、この石炭灰造粒物Aの製造方法は、内部の一次造粒物A2と表面の着色材混合物とを、同じタイミングで水和反応させる。これにより、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、製造時間が長くなることを抑制することができる。ただし、石炭灰造粒物Aは、石炭灰造粒層1の表面に着色層2が被覆されたものであれば、石炭灰造粒層1を水和反応により生成した後、着色層2を水和反応により生成する方法で製造されてもよい。
【0039】
また、反応ステップは、一次造粒物A2中のセメントと反応水W3とを水和反応させて石炭灰造粒層1を生成し、着色材混合物中のセメントと反応水W3とを水和反応させて、石炭灰造粒層1の表面を覆う着色層2を生成する。本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、このように石炭灰造粒層1と着色層2とを生成することにより、石炭灰を主成分とした内部の石炭灰造粒層1と、所定の色に着色された表面の着色層2とを、適切に製造することが可能となる。
【0040】
また、石炭灰混合ステップは、石炭灰とセメントとを互いに付着させるための水W1を添加し、一次造粒ステップは、水W1が添加された石炭灰混合物A1を転動させることにより、一次造粒物A2を生成する。石炭灰混合物A1は、水W1が添加されているため、転動することにより、水W1をバインダとして石炭灰混合物A1が集合する。そのため、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの製造方法は、石炭灰混合物A1を適切に整粒して、一次造粒物A2を製造することができる。また、水W1は、石炭灰混合物A1の転動前、すなわち造粒装置40への投入前に添加される。これにより、本実施形態に係る製造方法は、粉体である石炭灰とセメントとが、造粒装置40内で舞い上がって粉塵状になることを抑制して、一次造粒物A2の生成を容易にする。
【0041】
また、着色材混合ステップは、着色材とセメントとを互いに付着させるための水W2を添加する。すなわち、水W2は、着色材混合物の石炭灰混合物A1への添加前、すなわち造粒装置40への投入前に添加される。これにより、本実施形態に係る製造方法は、粉体である着色材とセメントとが、造粒装置40内で舞い上がって粉塵状になることを抑制して、二次造粒物A3の生成を容易にする。
【0042】
また、本実施形態における着色材は、Caを主成分として含有する無機材料である。従って、石炭灰造粒物Aは、水環境に悪影響を及ぼすことを抑制しつつ、適切に着色が施される。
【0043】
(実施例)
次に、本実施形態に係る石炭灰造粒物Aの実施例について説明する。
図5は、実施例に係る石炭灰造粒物の写真である。
図6及び
図7は、比較例に係る石炭灰造粒物の写真である。
図5に示した実施例に係る石炭灰造粒物Aaは、石炭灰混合物A1と着色材混合物との総量に対して、着色材混合物が30重量%となるように、着色材混合物が配合されている。また、実施例に係る石炭灰造粒物Aaにおいて、石炭灰混合物A1は、石炭灰とセメントとの総配合量に対し石炭灰が85重量%となるように配合されている。また、実施例に係る石炭灰造粒物Aaにおいて、着色材混合物は、着色材とセメントとの総配合量に対し着色材が75重量%となるように配合されている。実施例に係る石炭灰造粒物Aaは、着色材として、牡蠣殻を砕いた粉体を使用している。
【0044】
図6及び
図7に示した比較例に係る石炭灰造粒物X1、X2は、本実施形態とは異なり、石炭灰混合物A1と着色材混合物とを混合して生成されたものである。すなわち、石炭灰造粒物X1、X2は、石炭灰と着色材とセメントとが混合された粉体状の混合物に、反応水W3を添加して生成されたものであり、一つの層のみを有している。
図6に示す比較例に係る石炭灰造粒物X1は、石炭灰混合物A1と着色材混合物との総量に対して、着色材混合物が37.5重量%となるように、着色材混合物が配合されている。その他の配合条件は、実施例と同じである。また、
図7に示す比較例に係る石炭灰造粒物X2は、石炭灰混合物A1と着色材混合物との総量に対して、着色材混合物が50重量%となるように、着色材混合物が配合されている。その他の配合条件は、実施例と同じである。
【0045】
図5、
図6、及び
図7において、左側と中央との写真は、石炭灰造粒物の断面の写真であり、右側の写真は、石炭灰造粒物の表面の写真である。
図5に示す実施例に係る石炭灰造粒物Aaは、
図6及び
図7の比較例に係る石炭灰造粒物X1、X2よりも、着色材混合物の配合量が少ないにも関わらず、表面が薄い色、すなわち表面が石炭灰の色と異なる色になっている。このように、実施例に係る石炭灰造粒物Aaは、表面に石炭灰を有さない着色層2が設けられているため、比較例と比べ、適切な着色が施される。
【0046】
次に、異なる着色材を用い、また着色材混合物中のセメント配合比を変化させた実施例について説明する。
図8は、実施例に係る石炭灰造粒物の圧壊強度を比較したグラフである。実施例に係る石炭灰造粒物Abは、着色材として高炉スラグを砕いた粉体を用いており、着色材とセメントとの総配合量に対し、セメントが25重量%(着色材が75重量%)となっている。実施例に係る石炭灰造粒物Acは、着色材として瓦を砕いた粉体を用いており、着色材とセメントとの総配合量に対し、セメントが25重量%(着色材が75重量%)となっている。実施例に係る石炭灰造粒物Adは、着色材として牡蠣殻を砕いた粉体を用いており、着色材とセメントとの総配合量に対し、セメントが25重量%(着色材が75重量%)となっている。実施例に係る石炭灰造粒物Aeは、着色材として牡蠣殻を砕いた粉体を用いており、着色材とセメントとの総配合量に対し、セメントが50重量%(着色材が50重量%)となっている。石炭灰造粒物Ab、Ac、Ad、Aeのその他の配合条件は、石炭灰造粒物Aaと同じである。
【0047】
図8は、石炭灰造粒物Ab、Ac、Ad、Aeの圧壊強度を示している。石炭灰造粒物Abの圧壊強度は、1.54N/mm
2であり、石炭灰造粒物Acの圧壊強度は、0.78N/mm
2であり、石炭灰造粒物Adの圧壊強度は、0.95N/mm
2であり、石炭灰造粒物Aeの圧壊強度は、1.57N/mm
2であった。
図8に示す基準圧壊強度は、着色材を用いない石炭灰造粒物(石炭灰とセメントとの総量に対し、セメントが15重量%配合)の圧壊強度の一例であり、ここでは、1.2N/mm
2である。石炭灰造粒物Ab、Aeの圧壊強度は、基準圧壊強度以上の値となっている。すなわち、石炭灰造粒物Abは、着色材として高炉スラグを用いた着色層2を有することにより、着色材を用いないものよりも、圧壊強度が向上する。また、石炭灰造粒物Ad、Aeの圧壊強度が示すように、着色材混合物中のセメント配合比を増加させることで、圧壊強度を向上させることができる。この場合、石炭灰混合物A1中のセメントの配合量を変えずに、着色材混合物におけるセメントの配合量のみを増加させているため、着色材を用いない石炭灰造粒物よりも、セメントの増加量を抑制しながら、圧壊強度を向上させることが可能となる。着色材として瓦を用いた場合でも、着色材混合物中のセメント配合比を増加させることで、セメントの増加量を抑制しながら、圧壊強度を向上させることが可能となる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。