(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塗装対象物に設定した見切り線を境界として前記見切り線に対して一方の領域である第1領域を第1色彩塗料にて塗装し、前記見切り線に対して他方の領域である第2領域を第2色彩塗料にて塗装する、塗り分け塗装方法であって、
所定範囲に広がる霧状にした塗料を噴霧する第1塗装機を用いて、前記見切り線を含む前記第1領域と、前記第1領域の側から前記見切り線を越えた前記第2領域の少なくとも一部の領域と、を前記第1色彩塗料にて塗装する、第1領域塗装工程と、
前記第1領域塗装工程に続けて、前記第1塗装機よりも広がり幅が狭い霧状にした塗料を噴霧する第2塗装機を用いて、前記第2領域における前記見切り線に沿った所定幅の領域である見切り領域を前記第2色彩塗料にて塗装する、見切り領域塗装工程と、
前記見切り領域塗装工程に続けて、前記第1塗装機を用いて、前記第2領域における前記見切り領域塗装工程にて未装塗の領域である未塗装領域と、前記見切り領域における前記未塗装領域の側の領域と、を前記第2色彩塗料にて塗装する、第2領域塗装工程と、
前記第1領域塗装工程、前記見切り領域塗装工程、前記第2領域塗装工程、にて塗布された塗料を乾燥させる、乾燥工程と、を有し、
前記見切り領域塗装工程にて前記見切り領域の塗装に使用される前記第2色彩塗料には、粘度調整剤が混合されており、
前記第2色彩塗料と、前記粘度調整剤と、を別々に用意し、
前記見切り領域塗装工程では、前記第2塗装機に前記第2色彩塗料と前記粘度調整剤とを別々に供給して前記第2塗装機におけるいずれかの個所にて前記第2色彩塗料と前記粘度調整剤とを混合して噴霧する、
塗り分け塗装方法。
塗装対象物に設定した見切り線を境界として前記見切り線に対して一方の領域である第1領域を第1色彩塗料にて塗装し、前記見切り線に対して他方の領域である第2領域を第2色彩塗料にて塗装する、塗り分け塗装方法であって、
所定範囲に広がる霧状にした塗料を噴霧する第1塗装機を用いて、前記見切り線を含む前記第1領域と、前記第1領域の側から前記見切り線を越えた前記第2領域の少なくとも一部の領域と、を前記第1色彩塗料にて塗装する、第1領域塗装工程と、
前記第1領域塗装工程に続けて、前記第1塗装機よりも広がり幅が狭い霧状にした塗料を噴霧する第2塗装機を用いて、前記第2領域における前記見切り線に沿った所定幅の領域である見切り領域を前記第2色彩塗料にて塗装する、見切り領域塗装工程と、
前記見切り領域塗装工程に続けて、前記見切り領域塗装工程にて用いた前記第2塗装機を用いて、前記第2領域における前記見切り領域塗装工程にて未装塗の領域である未塗装領域と、前記見切り領域における前記未塗装領域の側の領域と、を前記第2色彩塗料にて塗装する、第2領域塗装工程と、
前記第1領域塗装工程と、前記見切り領域塗装工程と、第2領域塗装工程と、にて塗布された塗料を乾燥させる、乾燥工程と、を有し、
前記見切り領域塗装工程にて前記見切り領域の塗装に使用される前記第2色彩塗料には、粘度調整剤が混合されており、
前記第2色彩塗料と、前記粘度調整剤と、を別々に用意し、
前記見切り領域塗装工程では、前記第2塗装機に前記第2色彩塗料と前記粘度調整剤とを別々に供給して前記第2塗装機におけるいずれかの個所にて前記第2色彩塗料と前記粘度調整剤とを混合して噴霧する、
塗り分け塗装方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明では、従来から一般的に行われているマスキングテープを用いた塗り分け塗装方法にて、車両のボディを塗り分け塗装している。マスキングテープを用いた場合の塗装工程は、一般的には
図24に示すように、下地塗装・硬化工程S110の後に、第1ベース色塗装工程S120、乾燥工程S121、クリア塗装工程S122、焼付(硬化)工程S123、マスキング工程S124、第2ベース色塗装工程S140、乾燥工程S141、クリア塗装工程S142、焼付(硬化)工程S143、マスキング剥離工程S144、の10個の工程を経て塗り分け塗装が終了する。塗り分け塗装をしない単色の場合では、下地塗装・硬化工程S110の後に、第1ベース色塗装工程S120、乾燥工程S121、クリア塗装工程S122、焼付(硬化)工程S123、の4個の工程で済む。従って、塗り分け塗装をする場合、工程が増える分、リードタイムが長くなり、生産効率の低下や、管理費の増加を招く。また、第2ベース色塗装工程S140や、2回目の乾燥工程S141や、2回目のクリア塗装工程S142や、2回目の焼付(硬化)工程S143、の増加により、設備エネルギーの使用量、揮発性有機化合物の発生量、クリア塗料の使用量、が増加するので、あまり好ましくない。
【0007】
また特許文献2に記載の発明では、塗装ガンの吐出口の角度を、塗装対象物の見切り線の個所の面に対して、(噴霧開き角)θ/2[°]以上の角度に傾斜した状態を維持しながら見切り線に沿って塗装ガンを移動しなければならない。例えば近年の車両のボディは、商品性の向上や空力特性の向上等から、非常に複雑な3次元曲面を有しているものもあり、θ/2[°]以上の角度に傾斜した状態を維持しながら見切り線に沿って塗装ガンを(一定速度で)移動させることが困難な場合や、安定した見切り線(境界がボケることなく鮮明な見切り線、ブレが少ない見切り線)を形成することができない場合が考えられる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、塗り分け塗装の工程の数をより削減することが可能であり、かつ、塗装対象物が複雑な3次元曲面を有していても、より安定した見切り線を容易に形成することができる塗り分け塗装方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る塗り分け塗装方法は次の手段をとる。まず、本発明の第1の発明は、塗装対象物に設定した見切り線を境界として前記見切り線に対して一方の領域である第1領域を第1色彩塗料にて塗装し、前記見切り線に対して他方の領域である第2領域を第2色彩塗料にて塗装する、塗り分け塗装方法であって、所定範囲に広がる霧状にした塗料を噴霧する第1塗装機を用いて、前記見切り線を含む前記第1領域と、前記第1領域の側から前記見切り線を越えた前記第2領域の少なくとも一部の領域と、を前記第1色彩塗料にて塗装する、第1領域塗装工程と、前記第1領域塗装工程に続けて、前記第1塗装機よりも広がり幅が狭い霧状にした塗料を噴霧する第2塗装機を用いて、前記第2領域における前記見切り線に沿った所定幅の領域である見切り領域を前記第2色彩塗料にて塗装する、見切り領域塗装工程と、前記見切り領域塗装工程に続けて、前記第1塗装機を用いて、前記第2領域における前記見切り領域塗装工程にて未装塗の領域である未塗装領域と、前記見切り領域における前記未塗装領域の側の領域と、を前記第2色彩塗料にて塗装する、第2領域塗装工程と、前記第1領域塗装工程、前記見切り領域塗装工程、前記第2領域塗装工程、にて塗布された塗料を乾燥させる、乾燥工程と、を有
し、前記見切り領域塗装工程にて前記見切り領域の塗装に使用される前記第2色彩塗料には、粘度調整剤が混合されており、前記第2色彩塗料と、前記粘度調整剤と、を別々に用意し、前記見切り領域塗装工程では、前記第2塗装機に前記第2色彩塗料と前記粘度調整剤とを別々に供給して前記第2塗装機におけるいずれかの個所にて前記第2色彩塗料と前記粘度調整剤とを混合して噴霧する、塗り分け塗装方法である。
【0010】
次に、本発明の第2の発明は、塗装対象物に設定した見切り線を境界として前記見切り線に対して一方の領域である第1領域を第1色彩塗料にて塗装し、前記見切り線に対して他方の領域である第2領域を第2色彩塗料にて塗装する、塗り分け塗装方法であって、所定範囲に広がる霧状にした塗料を噴霧する第1塗装機を用いて、前記見切り線を含む前記第1領域と、前記第1領域の側から前記見切り線を越えた前記第2領域の少なくとも一部の領域と、を前記第1色彩塗料にて塗装する、第1領域塗装工程と、前記第1領域塗装工程に続けて、前記第1塗装機よりも広がり幅が狭い霧状にした塗料を噴霧する第2塗装機を用いて、前記第2領域における前記見切り線に沿った所定幅の領域である見切り領域を前記第2色彩塗料にて塗装する、見切り領域塗装工程と、前記見切り領域塗装工程に続けて、前記見切り領域塗装工程にて用いた前記第2塗装機を用いて、前記第2領域における前記見切り領域塗装工程にて未装塗の領域である未塗装領域と、前記見切り領域における前記未塗装領域の側の領域と、を前記第2色彩塗料にて塗装する、第2領域塗装工程と、前記第1領域塗装工程と、前記見切り領域塗装工程と、第2領域塗装工程と、にて塗布された塗料を乾燥させる、乾燥工程と、を有
し、前記見切り領域塗装工程にて前記見切り領域の塗装に使用される前記第2色彩塗料には、粘度調整剤が混合されており、前記第2色彩塗料と、前記粘度調整剤と、を別々に用意し、前記見切り領域塗装工程では、前記第2塗装機に前記第2色彩塗料と前記粘度調整剤とを別々に供給して前記第2塗装機におけるいずれかの個所にて前記第2色彩塗料と前記粘度調整剤とを混合して噴霧する、塗り分け塗装方法である。
【0011】
【0012】
次に、
本実施の形態に記載の塗り分け塗装方法には、前記粘度調整剤が混合された混合第2色彩塗料と、前記粘度調整剤が混合されていない非混合第2色彩塗料と、を別々に用意し、前記見切り領域塗装工程では、前記混合第2色彩塗料を塗装に使用し、前記第2領域塗装工程では、前記非混合第2色彩塗料を塗装に使用する、塗り分け塗装方法
が有る。
【0013】
【0014】
次に、本発明の
第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る塗り分け塗装方法であって、インクジェット方式にて、前記第2塗装機から塗料を噴霧する、塗り分け塗装方法である。
【0015】
次に、
本実施の形態に記載の塗り分け塗装方法には、エアレス方式にて、前記第2塗装機から塗料を噴霧する、塗り分け塗装方法
が有る。
【0016】
次に、
本実施の形態に記載の塗り分け塗装方法には、前記見切り領域塗装工程において、前記エアレス方式にて前記第2塗装機から塗料を噴霧する際、塗装対象物に接触することなく前記見切り線に沿った位置に、霧状の塗料を遮蔽するスクリーンを配置して塗料を噴霧する、塗り分け塗装方法
が有る。
【0017】
次に、本発明の
第4の発明は、上記第1の発明〜第3の発明のいずれか1つに係る塗り分け塗装方法であって、前記第1塗装機として、ベル型の塗装機を用いる、塗り分け塗装方法である。
【0018】
次に、本発明の
第5の発明は、上記第1の発明〜第4の発明のいずれか1つに係る塗り分け塗装方法であって、塗装対象物は、車両のボディである、塗り分け塗装方法である。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、第2塗装機を用いて、第1塗装機よりも広がり幅が狭い霧状にした塗料を、第2領域における見切り線に沿った所定幅の見切り領域に塗布する。例えば広がり幅が狭いインクジェット方式の第2塗装機を用いることで、塗装対象物が複雑な3次元曲面を有していても、より安定した見切り線を容易に形成することができる。また、マスキング工程、マスキング剥離工程、第1領域塗装工程と第2領域塗装工程の間における乾燥工程やクリア塗装工程等が不要であるので、塗り分け塗装の工程の数をより削減することができる。また、塗料の吐出口の角度を厳密に調整する必要がないので、見切り線に沿って吐出口を移動させるだけでよく、安定した見切り線を形成することができる。
【0020】
第2の発明によれば、第1の発明と同様、第2塗装機を用いて、第1塗装機よりも広がり幅が狭い霧状にした塗料を、第2領域における見切り線に沿った所定幅の見切り領域に塗布する。従って、第2の発明と同様の効果を得ることができる。また、第1の発明では、第2領域塗装工程を第1塗装機で行ったが、第2の発明では、第2領域塗装工程を第2塗装機で行う。つまり、見切り領域塗装工程と、当該見切り領域塗装工程に続く第2領域塗装工程と、を同じ第2塗装機で行うので、塗装機の変更に要する手間を省略することができる。
【0021】
また、第1、第2の発明によれば、見切り領域に塗布される第2色彩塗料に粘度調整剤を混合することで、見切り線のブレをさらに抑制するとともに、見切り線をより鮮明に形成することができる。
【0022】
本実施の形態に記載の塗り分け塗装方法によれば、混合第2色彩塗料と、非混合第2色彩塗料と、を別々に用意することで、見切り領域を塗装する際、粘度調整剤が安定的に混合された混合第2色彩塗料を用いることができるので便利である。
【0023】
また、第1、第2の発明によれば、見切り領域を塗装する際に、第2塗装機で第2色彩塗料と粘度調整剤を混合して噴霧する。このため、予め混合第2色彩塗料を用意する必要がないので、設備に必要な面積を低減することができる。また、予め用意した混合第2色彩塗料の混合割合の維持管理等を削減することができる。
【0024】
第3の発明によれば、第2塗装機からインクジェット方式にて塗料を噴霧するので、噴霧の広がり幅が非常に狭く、より鮮明な見切り線を形成することができる。
【0025】
本実施の形態に記載の塗り分け塗装方法によれば、第2塗装機からエアレス方式にて塗料を噴霧するので、噴霧の広がり幅が比較的狭く、より鮮明な見切り線を形成することができる。
【0026】
本実施の形態に記載の塗り分け塗装方法によれば、スクリーンを用いて塗料を遮蔽することで、比較的容易に、より鮮明な見切り線を形成することができる。
【0027】
第4の発明によれば、第1塗装機を用いて塗装する際、短時間に、かつ広範囲に塗装することができるので便利である。
【0028】
第5の発明によれば、第1の発明〜第4の発明に記載の塗り分け塗装方法を、車両のボディの塗装に適用することで、塗り分け塗装の工程の数をより削減し、かつ、塗装対象物が複雑な3次元曲面を有していても、より安定した見切り線を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】塗り分け塗装を施した車両の例を説明する斜視図である。
【
図2】本発明の塗り分け塗装方法を用いた塗装工程の流れを説明する図である。
【
図3】第1〜第8の各実施の形態において、第1領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗料への粘度調整剤の混合方法、第2領域塗装工程で使用する塗装機、を一覧にした図である。
【
図4】第1の実施の形態において、第1領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗料への粘度調整剤の混合方法、第2領域塗装工程で使用する塗装機、の例を説明する概略外観図である。
【
図5】第1の実施の形態において、第1領域塗装工程の塗装の様子を説明する斜視図である。
【
図7】第1の実施の形態において、見切り領域塗装工程の塗装の様子を説明する斜視図である。
【
図8】
図7の状態をVIII方向から見た図である。
【
図9】第1の実施の形態において、第2領域塗装工程の塗装の様子を説明する斜視図である。
【
図11】第2の実施の形態において、第1領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗料への粘度調整剤の混合方法、第2領域塗装工程で使用する塗装機、の例を説明する概略外観図である。
【
図12】第2の実施の形態において、第2領域塗装工程の塗装の様子を説明する斜視図である。
【
図14】第3の実施の形態において、第1領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗料への粘度調整剤の混合方法、第2領域塗装工程で使用する塗装機、の例を説明する概略外観図である。
【
図15】第4の実施の形態において、第1領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗料への粘度調整剤の混合方法、第2領域塗装工程で使用する塗装機、の例を説明する概略外観図である。
【
図16】第5の実施の形態において、第1領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗料への粘度調整剤の混合方法、第2領域塗装工程で使用する塗装機、の例を説明する概略外観図である。
【
図17】第5の実施の形態において、見切り領域塗装工程の塗装の様子を説明する斜視図である。
【
図19】第6の実施の形態において、第1領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗料への粘度調整剤の混合方法、第2領域塗装工程で使用する塗装機、の例を説明する概略外観図である。
【
図20】第6の実施の形態において、第2領域塗装工程の塗装の様子を説明する斜視図である。
【
図22】第7の実施の形態において、第1領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗料への粘度調整剤の混合方法、第2領域塗装工程で使用する塗装機、の例を説明する概略外観図である。
【
図23】第8の実施の形態において、第1領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗装機、見切り領域塗装工程で使用する塗料への粘度調整剤の混合方法、第2領域塗装工程で使用する塗装機、の例を説明する概略外観図である。
【
図24】従来の塗り分け塗装方法による塗装工程の流れ説明する図である。
【
図25】従来の、各領域を塗装する塗装機の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。なおX軸、Y軸、Z軸が記載されている図では、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Z軸方向は(例えば平面状の)塗装対象物に直交する鉛直下方向を示している。また、X軸方向は塗装対象物の面に平行かつ見切り線に直交する方向を示し、Y軸方向は塗装対象物の面に平行かつ見切り線に平行な方向を示している。以下の説明において、塗装の様子を説明する図は、塗装対象物における見切り線の周囲の一部を抜き出して拡大した図である。
【0031】
●[本発明の塗り分け塗装方法を用いて塗装した塗装対象物の例(
図1)と、当該塗り分け塗装方法を用いた塗装工程の例(
図2)]
以下、塗装対象物が車両のボディである例、かつ車両のボディに設定した見切り線を境界として異なる2色の色彩に塗り分ける例、を説明する。例えば、商品性の向上等を目的として、
図1に示すように、車両1のボディに見切り線Lpを設定し、見切り線Lpを境界として、異なる2色の色彩に塗り分ける場合がある。異なる2色にボディを塗り分ける場合、見切り線Lpに対して一方の領域(
図1の例では、見切り線Lpの上方の領域)である第1領域A1を第1色彩塗料にて塗装し、見切り線Lpに対して他方の領域(
図1の例では、見切り線Lpの下方の領域)である第2領域A2を第2色彩塗料にて塗装する。
【0032】
マスキングテープ等を利用した、従来の塗り分け塗装方法による塗装工程では、
図24を用いて上述したように、第1ベース色塗装工程S120の後に、マスキング工程を含めて10個の工程が必要である。この場合、第1ベース色塗装工程S120では、
図25に示すように、ベル型の塗装ガン111を有する第1塗装機110に、第1塗料タンク141内の第1色彩塗料T11を供給し、塗装ガン111の吐出口111Nから開き角θ11にて塗料を噴霧して塗装する。また、第2ベース色塗装工程S140では、
図25に示すように、ベル型の塗装ガン111を有する第1塗装機110に、第2塗料タンク142内の第2色彩塗料T12を供給し、塗装ガン111の吐出口111Nから開き角θ11にて塗料を噴霧して塗装する。また塗り分けを行わず単色で塗装する場合は、上述したように、下地塗装・硬化工程S110の後に、4個の工程で済む。従って、2色に塗り分けて塗装する場合、単色で塗装する場合と比較して、作業時間が非常に長くなり、生産効率の低下や管理費の増加を招く。また、単色で塗装する場合と比較して、第2ベース色塗装工程S140や、2回目の乾燥工程S141や、2回目のクリア塗装工程S142や、2回目の焼付(硬化)工程S143、の増加により、設備エネルギーの使用量、揮発性有機化合物の発生量、クリア塗料の使用量、が増加する。
【0033】
次に
図2に、本発明の塗り分け塗装方法を用いた塗装工程の例を示す。
図2に示す塗装工程は、下地塗装・硬化工程S10、第1領域塗装工程S20、見切り領域塗装工程S30、第2領域塗装工程S40、乾燥工程S41、クリア塗装工程S42、焼付(硬化)工程S43、を有している。従って、下地塗装・硬化工程S10の後の工程が、
図24に示す従来の10個の工程から、6個の工程へと削減されている。従って、生産効率の低下を抑制することが可能であり、設備エネルギーの使用量、揮発性有機化合物の発生量、クリア塗料の使用量、の増加を抑制することができる。なお
図2において点線にて示す工程は、
図24に示す従来の塗装工程に対して削減される工程を示している。また、
図2に示す塗装工程は、
図24に示す従来の塗装工程に対して、第1ベース色塗装工程S120が第1領域塗装工程S20に置き換えられ、見切り領域塗装工程S30が追加され、第2ベース色塗装工程S140が第2領域塗装工程S40に置き換えられている。
【0034】
第1領域塗装工程S20では、所定範囲に広がる霧状にした塗料を噴霧する第1塗装機を用いて、見切り線Lp(
図1参照)を含む第1領域A1(
図1参照)と、第1領域A1の側から見切り線Lpを越えた第2領域A2(
図1参照)の少なくとも一部の領域と、を第1色彩塗料にて塗装する。
【0035】
見切り領域塗装工程S30では、第1塗装機よりも広がり幅が狭い霧状にした塗料を噴霧する第2塗装機を用いて、第2領域における見切り線に沿った所定幅の領域である見切り領域、を第2色彩塗料にて塗装する。なお、見切り領域塗装工程にて使用する第2色彩塗料には、安定した見切り線を形成するために、粘度調整剤が所定の含有率で混合されていることが好ましい。
【0036】
第2領域塗装工程S40では、第1塗装機または第2塗装機のいずれかを用いて、第2領域における見切り領域塗装工程にて未塗装の領域である未塗装領域と、見切り領域における未塗装領域の側の領域と、を第2色彩塗料にて塗装する。
【0037】
なお、粘度調整剤の種類としては、アルコール系、ケトン系、エステル系、芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系がある。そして、アルコール系では、メタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等を用いることができる。またケトン系では、アセトン等を用いることができる。またエステル系では、酢酸エチル、酢酸ブチル等を用いることができる。また芳香族炭化水素系では、トルエン、キシレン等を用いることができる。また脂肪族炭化水素系では、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等を用いることができる。
【0038】
また、下地塗装・硬化工程S10は、例えば電着塗装工程、焼付(硬化)工程、中塗り塗装工程、焼付(硬化)工程、を含む従来と同様であるので、詳細な説明を省略する。また、乾燥工程S41、クリア塗装(保護層形成)工程S42、焼付(硬化)工程S43も、従来と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0039】
本発明の塗り分け塗装方法は、後述するように、見切り領域塗装工程S30にて、見切り線を含む見切り領域を特殊な塗装方法で塗装することに加えて、粘度調整剤を混合した第2色彩塗料にて塗装することで、マスキングテープ等を用いることなく、安定した見切り線(境界がボケることなく鮮明な見切り線、ブレが少ない見切り線)を容易に形成し、塗り分け塗装の工程の数を削減している。また、塗装対象物の面に対して塗装ガンの吐出口の角度を厳密に調整する必要がないので、塗装対象物が複雑な3次元曲面を有していても、より安定した見切り線を容易に形成することができる。
【0040】
●[塗り分け塗装方法における実施の形態の種類(
図3)]
以下、上記の塗装工程において、本願の特徴である、第1領域塗装工程S20にて使用する塗装機及び塗装方法、見切り領域塗装工程S30にて使用する塗装機及び塗装方法、見切り領域塗装工程にて使用する第2色彩塗料への粘度調整剤の混合方法、第2領域塗装工程S40にて使用する塗装機及び塗装方法、について、
図3に示す8通りの実施の形態について説明する。なお、第1領域塗装工程で使用する塗装機は、第1〜第8の実施の形態で違いは無い。以下、第1〜第8の実施の形態を、順に説明する。
【0041】
●[
(参考事例)第1の実施の形態(
図3、
図4〜
図10)]
第1の実施の形態では、
図3に示すように、第1領域塗装工程で使用する塗装機は、ベル型の塗装ガン(ノズル)を有する塗装機である。また見切り領域塗装工程で使用する塗装機は、インクジェット方式の塗装ガン(ノズル)を有する塗装機である。また見切り領域塗装工程で使用する第2色彩塗料への粘度調整剤の混合方法は、予め混合しておく方法である。また第2領域塗装工程で使用する塗装機は、ベル型の塗装ガン(ノズル)を有する塗装機である。これらの概略外観図を
図4に示す。なお
図4において、第2領域塗装工程で使用するベル型の第1塗装機10は、第1領域塗装工程で使用した第1塗装機10と同じであってもよいし、別の第1塗装機10であってもよい。
【0042】
図4に示すように、第1領域塗装工程の塗装では、ベル型の塗装ガン11を有する第1塗装機10に、第1色彩塗料T1が収容された第1塗料タンク41から第1色彩塗料T1を供給して塗装する。ベル型の塗装ガン11の吐出口11Nからの噴霧の開き角θ1の角度は、インクジェット方式やエアレス方式の吐出口からの噴霧の開き角と比較して非常に大きいので、広範囲を、短時間に、ムラなく塗装することができる。
【0043】
また
図4に示すように、見切り領域塗装工程の塗装では、インクジェット式の塗装ガン21を有する第2塗装機20に、第2色彩塗料T2と粘度調整剤Vとが所定比率で混合された混合第2色彩塗料T2Vが収容された混合塗料タンク42Aから混合第2色彩塗料T2Vを供給して塗装する。インクジェット方式の塗装ガン21の吐出口21Nからの噴霧の開き角θ2は、ベル型の塗装ガン11からの噴霧の開き角θ1と比較して非常に小さい。インクジェット方式の塗装ガン21からの噴霧の広がり幅は、ベル型の塗装ガン11からの噴霧の広がり幅よりも狭く、ほとんど広がらない。また、混合塗料タンク42Aには、予め、第2色彩塗料T2と粘度調整剤Vとが所定比率で混合された混合第2色彩塗料T2V(例えば、粘度調整剤Vが収容された粘度調整剤タンク43から混合バルブ43Vを経由させて混合)が収容されている。噴霧の開き角θ2の小さなインクジェット方式の第2塗装機20を用いて、粘度調整剤Vが混合された混合第2色彩塗料を塗布することで、安定した見切り線を形成することができる。
【0044】
また
図4に示すように、第2領域塗装工程の塗装では、ベル型の塗装ガン11を有する第1塗装機10に、第2色彩塗料T2が収容された第2塗料タンク42から第2色彩塗料T2(粘度調整剤が混合されていない非混合第2色彩塗料)を供給して塗装する。
【0045】
また
図5及び
図6に、第1領域塗装工程にて第1領域A1を、ベル型の塗装ガン11を有する第1塗装機にて塗装する様子を示す。各実施の形態において、塗装対象物80は、車両のボディ81の表面に、電着塗装や中塗り塗装等の下地82が形成されている。ベル型の塗装ガン11から噴霧された第1色彩塗料T1は、第1領域A1、及び第1領域A1の側から見切り線Lpを越えた第2領域A2の少なくとも一部の領域(第1重畳領域K1)に塗布される。
【0046】
また
図7及び
図8に、見切り領域塗装工程にて見切り領域Mを、インクジェット方式の塗装ガン21を有する第2塗装機にて塗装する様子を示す。インクジェット式の塗装ガン21を、見切り線Lpに沿って(Y軸方向に)移動させることで、噴霧された混合第2色彩塗料T2Vを、第2領域A2における見切り線Lpに沿った所定幅の見切り領域Mに塗布することができる。なお、見切り領域Mは、第1重畳領域K1、第2重畳領域K2を含んでいる。第1重畳領域K1は、第1領域塗装工程にて塗装された第1色彩塗料T1の上に、見切り領域塗装工程にて塗装された混合第2色彩塗料T2Vが重なる領域である。また第2重畳領域K2は、見切り領域塗装工程にて塗装された混合第2色彩塗料T2Vの上に、後述する第2領域塗装工程にて塗装される第2色彩塗料T2(非混合第2色彩塗料)が重なる領域である。
【0047】
また
図9及び
図10に、第2領域塗装工程にて未塗装領域(第2領域A2における見切り領域Mを除いた領域)と、見切り領域における未塗装領域の側の領域(第2重畳領域K2)とを、ベル型の塗装ガン11を有する第1塗装機にて塗装する様子を示す。見切り領域Mと同じ色彩(第2色彩)であるので、見切り領域塗装工程で塗装した混合第2色彩塗料T2Vと、第2領域塗装工程で塗装した第2色彩塗料T2(非混合第2色彩塗料)との境界は目立たない。
【0048】
第1の実施の形態では、見切り領域をインクジェット方式で塗装することで、安定した見切り線を形成できる。また見切り領域を、予め所定比率で粘度調整剤を混合した混合第2色彩塗料にて塗装するので、粘度調整剤の混合割合が安定しており、より安定した見切り線を形成することができる。また、第2領域塗装工程において、第2領域の未塗装領域と第2重畳領域をベル型の第1塗装機で塗装することで、第2領域塗装工程の塗装を、比較的短時間で行うことができる。
【0049】
●[
(参考事例)第2の実施の形態(
図3、
図11〜
図13)]
第2の実施の形態では、
図3に示すように、第1の実施の形態に対して、第2領域塗装工程で使用する塗装機が、ベル型でなくインクジェット方式の塗装ガンを有する塗装機である点が異なる。以下、この相違点を主に説明する。
【0050】
図11に示すように、見切り領域塗装工程の塗装と第2領域塗装工程の塗装とを、同一の第2塗装機20(インクジェット方式の塗装ガン21を有する第2塗装機20)にて行う。第2塗装機20には、混合第2色彩塗料T2Vが収容された混合塗料タンク42Aから混合第2色彩塗料T2Vがバルブ25Vを介して供給され、第2色彩塗料T2が収容された第2塗料タンク42から第2色彩塗料T2がバルブ26Vを介して供給される。従って、見切り領域塗装工程の塗装を行う場合は、バルブ25Vを開口してバルブ26Vを閉鎖する。また第2領域塗装工程の塗装を行う場合は、バルブ25Vを閉鎖してバルブ26Vを開口する。なお
図11における、第1領域塗装工程の塗装は、第1の実施の形態(
図4)と同じであるので説明を省略する。
【0051】
また
図12及び
図13に、第2領域塗装工程にて未塗装領域(第2領域A2における見切り領域Mを除いた領域)と、見切り領域における未塗装領域の側の領域(第2重畳領域K2)とを、インクジェット方式の塗装ガン21を有する第2塗装機にて塗装する様子を示す。見切り領域Mと同じ色彩(第2色彩)であるので、見切り領域塗装工程で塗装した混合第2色彩塗料T2Vと、第2領域塗装工程で塗装した第2色彩塗料T2(非混合第2色彩塗料)との境界は目立たない。なお、第1領域塗装工程の塗装の様子、見切り領域塗装工程の塗装の様子、は第1の実施の形態の説明(
図5〜
図8)と同じであるので説明を省略する。
【0052】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、第2塗装機にて見切り領域塗装工程の塗装を行った後、第2塗装機へ供給する塗料を、混合塗料タンク42Aから第2塗料タンク42へと切り替えて、そのまま第2塗装機を使用できるので、塗装機を切り替える手間を省略することができる。
【0053】
●[第3の実施の形態(
図3、
図14)]
第3の実施の形態では、
図3に示すように、第1の実施の形態に対して、見切り領域塗装工程で使用する第2色彩塗料T2への粘度調整剤Vの混合方法が異なる。また、
図14に示すように、見切り領域塗装工程と第2領域塗装工程にて、共通の第2塗料タンク42から第2色彩塗料T2を供給する点が、
図4に示す第1の実施の形態とは異なる。以下、この相違点を主に説明する。なお
図14において、第2領域塗装工程で使用するベル型の第1塗装機10は、第1領域塗装工程で使用した第1塗装機10と同じであってもよいし、別の第1塗装機10であってもよい。
【0054】
図14に示すように、見切り領域塗装工程の塗装では、第2塗装機20に、第2塗料タンク42からの第2色彩塗料T2(非混合第2色彩塗料)と、粘度調整剤タンク43からの粘度調整剤Vと、を別々に供給し、第2塗装機20のいずれかの個所(
図14の例では、塗装ガン21)にて、第2色彩塗料T2と粘度調整剤Vとを混合し、粘度調整剤Vが所定比率で混合された混合第2色彩塗料T2Vを、塗装ガン21から噴霧する。なお、混合バルブ43Vを調整することで混合比率が調整される。
【0055】
また
図14に示すように、第2領域塗装工程の塗装では、ベル型の塗装ガン11を有する第1塗装機10に、見切り領域塗装工程で使用した第2塗料タンク42から第2色彩塗料T2(非混合第2色彩塗料)を供給して塗装する。なお
図14における、第1領域塗装工程の塗装は、第1の実施の形態(
図4)と同じであるので説明を省略する。
【0056】
また、第1領域塗装工程の塗装の様子、見切り領域塗装工程の塗装の様子、第2領域塗装工程の塗装の様子、については、第1の実施の形態の説明(
図5〜
図10)と同様であるので説明を省略する。
【0057】
第3の実施の形態(
図14)では、第1の実施の形態(
図4)と比較して、混合塗料タンク42Aが不要であるので、設備が必要とする面積を低減できる。
【0058】
●[第4の実施の形態(
図3、
図15)]
第4の実施の形態では、
図3に示すように、第3の実施の形態に対して、第2領域塗装工程にて使用する塗装機が、ベル型でなくインクジェット方式の塗装ガンを有する塗装機である点が異なる。以下、この相違点を主に説明する。
【0059】
図15に示すように、見切り領域塗装工程の塗装と第2領域塗装工程の塗装とを、同一の第2塗装機20(インクジェット方式の塗装ガン21を有する第2塗装機20)にて行う。第2塗装機20には、第2塗料タンク42からの第2色彩塗料T2(非混合第2色彩塗料)と、粘度調整剤タンク43からの粘度調整剤Vと、が別々に供給されている。そして、見切り領域塗装工程の塗装を行う場合は、混合バルブ43Vを開口して、第2色彩塗料T2と粘度調整剤Vとを第2塗装機20に供給して混合第2色彩塗料T2Vを用いて塗装する。また第2領域塗装工程の塗装を行う場合は、混合バルブ43Vを閉鎖して、第2色彩塗料T2のみを第2塗装機20に供給して塗装する。なお
図15における、第1領域塗装工程の塗装は、第1の実施の形態(
図4)と同じであるので説明を省略する。
【0060】
また、第1領域塗装工程の塗装の様子、見切り領域塗装工程の塗装の様子、については、第1の実施の形態の説明(
図5〜
図10)と同様であるので説明を省略する。また、第2領域塗装工程の塗装の様子は、第2の実施の形態の説明(
図12、
図13)と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
第4の実施の形態(
図15)では、第3の実施の形態(
図14)と比較して、混合バルブ43Vを開閉するだけで、インクジェット方式の塗装ガンを有する第2塗装機にて、見切り領域塗装工程の塗装と、第2領域塗装工程の塗装と、を切り替えることができるので、便利である。
【0062】
●[
(参考事例)第5の実施の形態(
図3、
図16〜
図18)]
第5の実施の形態では、
図3に示すように、第1の実施の形態に対して、見切り領域塗装工程にて使用する塗装機が、インクジェット方式でなくエアレス方式の塗装ガンを有する塗装機である点が異なる。以下、この相違点を主に説明する。
【0063】
図16に示すように、見切り領域塗装工程の塗装では、エアレス方式の塗装ガン21Aを有する第2塗装機20Aを用いて塗装する。エアレス方式の塗装ガン21Aの吐出口21ANからの噴霧の開き角θ2Aは、ベル型の塗装ガン11からの噴霧の開き角θ1と比較して非常に小さい。また、エアレス方式の塗装ガン21Aからの噴霧の広がり幅は、ベル型の塗装ガン11からの噴霧の広がり幅よりも狭く、インクジェット方式の噴霧の広がり幅よりも少し広い。従って、インクジェット方式よりもエアレス方式のほうが、単位時間あたりの塗装面積が広い。なお、第2塗装機20Aに供給する混合第2色彩塗料T2Vは、第1の実施の形態と同様の混合方法で混合しており、説明は省略する。また
図16における、第1領域塗装工程の塗装、第2領域塗装工程の塗装は、第1の実施の形態(
図4)と同じであるので説明を省略する。
【0064】
また
図17及び
図18に、見切り領域塗装工程にて見切り領域Mを、エアレス方式の塗装ガン21Aを有する第2塗装機にて塗装する様子を示す。エアレス方式の塗装ガン21Aを、見切り線Lpに沿って(Y軸方向に)移動させることで、噴霧された混合第2色彩塗料T2Vを、第2領域A2における見切り線Lpに沿った所定幅の見切り領域Mに塗装することができる。なお、見切り領域Mは、第1重畳領域K1、第2重畳領域K2を含んでいる。また、噴霧の際、塗装対象物80に接することなく見切り線Lpに沿った位置に、霧状の塗料を遮蔽するスクリーンSを配置すると、より好ましい。また、塗装対象物80とスクリーンSとの間の離間距離HS(
図18参照)は、適宜設定される。また、第1領域塗装工程の塗装の様子、第2領域塗装工程の塗装の様子、については、第1の実施の形態の説明(
図5、
図6、
図9、
図10)と同様であるので説明を省略する。
【0065】
第5の実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、見切り領域塗装工程にて、インクジェット方式でなくエアレス方式の塗装ガンを用いることで、見切り領域の塗装を、第1の実施の形態よりも短時間で行うことができる。
【0066】
●[
(参考事例)第6の実施の形態(
図3、
図19〜
図21)]
第6の実施の形態では、
図3に示すように、第5の実施の形態に対して、第2領域塗装工程にて使用する塗装機が、ベル型でなくエアレス方式の塗装ガンを有する塗装機である点が異なる。以下、この相違点を主に説明する。
【0067】
図19に示すように、見切り領域塗装工程の塗装と第2領域塗装工程の塗装とを、同一の第2塗装機20(エアレス方式の塗装ガン21Aを有する第2塗装機20A)にて行う。第2塗装機20Aには、混合第2色彩塗料T2Vが収容された混合塗料タンク42Aから混合第2色彩塗料T2Vがバルブ25Vを介して供給され、第2色彩塗料T2が収容された第2塗料タンク42から第2色彩塗料T2がバルブ26Vを介して供給される。従って、見切り領域塗装工程の塗装を行う場合は、バルブ25Vを開口してバルブ26Vを閉鎖する。また第2領域塗装工程の塗装を行う場合は、バルブ25Vを閉鎖してバルブ26Vを開口する。なお
図19における、第1領域塗装工程の塗装は、第1の実施の形態(
図4)と同じであるので説明を省略する。
【0068】
また
図20及び
図21に、第2領域塗装工程にて未塗装領域(第2領域A2における見切り領域Mを除いた領域)と、見切り領域における未塗装領域の側の領域(第2重畳領域K2)とを、エアレス方式の塗装ガン21Aを有する第2塗装機にて塗装する様子を示す。見切り領域Mと同じ色彩(第2色彩)であるので、見切り領域塗装工程で塗装した混合第2色彩塗料T2Vと、第2領域塗装工程で塗装した第2色彩塗料T2(非混合第2色彩塗料)との境界は目立たない。また、第1領域塗装工程にて第1領域を塗装する様子は、第1の実施の形態(
図5、
図6)と同様であるので説明を省略する。また、見切り領域塗装工程にて見切り領域を塗装する様子は、第5の実施の形態(
図17、
図18)と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
第6の実施の形態では、第5の実施の形態と比較して、第2塗装機にて見切り領域塗装工程の塗装を行った後、第2塗装機へ供給する塗料を、混合塗料タンク42Aから第2塗料タンク42へと切り替えて、そのまま第2塗装機を使用できるので、塗装機を切り替える手間を省略することができる。また、見切り領域塗装工程及び第2領域塗装工程にて、インクジェット方式でなくエアレス方式の塗装ガンを用いることで、見切り領域M、未塗装領域及び第2重畳領域K2の塗装を、第2の実施の形態よりも短時間で行うことができる。
【0070】
●[
(参考事例)第7の実施の形態(
図3、
図22)]
第7の実施の形態では、
図3に示すように、第5の実施の形態に対して、見切り領域塗装工程で使用する第2色彩塗料T2への粘度調整剤Vの混合方法が異なる。また、
図22に示すように、見切り領域塗装工程と第2領域塗装工程にて、共通の第2塗料タンク42から第2色彩塗料T2を供給する点が、
図16に示す第5の実施の形態とは異なる。以下、この相違点を主に説明する。なお
図16において、第2領域塗装工程で使用するベル型の第1塗装機10は、第1領域塗装工程で使用した第1塗装機10と同じであってもよいし、別の第1塗装機10であってもよい。
【0071】
図22に示すように、見切り領域塗装工程の塗装では、第2塗装機20Aに、第2塗料タンク42からの第2色彩塗料T2(非混合第2色彩塗料)と、粘度調整剤タンク43からの粘度調整剤Vと、を別々に供給し、第2塗装機20Aのいずれかの個所(
図22の例では、塗装ガン21A)にて、第2色彩塗料T2と粘度調整剤Vとを混合し、粘度調整剤Vが所定比率で混合された混合第2色彩塗料T2Vを、塗装ガン21Aから噴霧する。なお、混合バルブ43Vを調整することで混合比率が調整される。
【0072】
また
図22に示すように、第2領域塗装工程の塗装では、ベル型の塗装ガン11を有する第1塗装機10に、見切り領域塗装工程で使用した第2塗料タンク42から第2色彩塗料T2(非混合第2色彩塗料)を供給して塗装する。なお
図22における、第1領域塗装工程の塗装は、第1の実施の形態(
図4)と同じであるので説明を省略する。
【0073】
また、第1領域塗装工程の塗装の様子、第2領域塗装工程の塗装の様子、については、第1の実施の形態の説明(
図5、
図6、
図9、
図10)と同様であるので説明を省略する。また、見切り領域塗装工程の塗装の様子は、第5の実施の形態(
図17、
図18)と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
第7の実施の形態(
図22)では、第5の実施の形態(
図16)と比較して、混合塗料タンク42Aが不要であるので、設備が必要とする面積を低減できる。
【0075】
●[
(参考事例)第8の実施の形態(
図3、
図23)]
第8の実施の形態では、
図3に示すように、第7の実施の形態に対して、第2領域塗装工程にて使用する塗装機が、ベル型でなくエアレス方式の塗装ガンを有する塗装機である点が異なる。以下、この相違点を主に説明する。
【0076】
図23に示すように、見切り領域塗装工程の塗装と第2領域塗装工程の塗装とを、同一の第2塗装機20(エアレス方式の塗装ガン21Aを有する第2塗装機20A)にて行う。第2塗装機20Aには、第2塗料タンク42からの第2色彩塗料T2(非混合第2色彩塗料)と、粘度調整剤タンク43からの粘度調整剤Vと、が別々に供給されている。そして、見切り領域塗装工程の塗装を行う場合は、混合バルブ43Vを開口して、第2色彩塗料T2と粘度調整剤Vとを第2塗装機20Aに供給して混合第2色彩塗料T2Vを用いて塗装する。また第2領域塗装工程の塗装を行う場合は、混合バルブ43Vを閉鎖して、第2色彩塗料T2のみを第2塗装機20Aに供給して塗装する。なお
図23における、第1領域塗装工程の塗装は、第1の実施の形態(
図4)と同じであるので説明を省略する。
【0077】
また、第1領域塗装工程の塗装の様子は、第1の実施の形態の説明(
図5、
図6)と同様であるので説明を省略する。また、見切り領域塗装工程の塗装の様子は、第5の実施の形態の説明(
図17、
図18)と同様であるので説明を省略する。また、第2領域塗装工程の塗装の様子は、第6の実施の形態の説明(
図20、
図21)と同様であるので説明を省略する。
【0078】
第8の実施の形態(
図23)では、第7の実施の形態(
図22)と比較して、混合バルブ43Vを開閉するだけで、エアレス方式の塗装ガンを有する第2塗装機にて、見切り領域塗装工程の塗装と、第2領域塗装工程の塗装と、を切り替えることができるので、便利である。
【0079】
また、第1〜第8の実施の形態にて、第1重畳領域K1において、下方に位置する第1色彩塗料T1が、上方に位置する混合第2色彩塗料T2Vと混ざり合って色が反転することを防止するために、混合第2色彩塗料T2Vに、表面張力調整剤を所定割合で混合するようにしてもよい。
【0080】
また、14〜15[μm]のアルミ小片である光輝材が含有された塗料をインクジェット方式で塗装する場合、粘度調整剤を含有させることで、塗料中における光輝材の傾き具合や並び方を調整することが可能であり、ベル型やエアレス方式等で塗装した場合との見た目の色彩や光沢具合の違いが発生することを抑制できる。また、見切り領域塗装工程にて塗装する見切り領域の幅(見切り線に直交する方向の幅)は、例えば150[mm]程度である。また、第5〜第8の実施の形態にて使用するスクリーンSにおける塗装対象物からの離間距離は、例えば30[mm]程度である。
【0081】
本発明の塗り分け塗装方法は、本実施の形態で説明した塗装機、塗装機の外観、塗装工程等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0082】
本実施の形態の説明では、2色に塗り分ける例を説明したが、複数の見切り線を設定し、3色以上に塗り分けることも可能である。また本実施の形態の説明では、車両のボディを塗り分ける例を説明したが、車両のボディに限定されず、種々の塗装対象物を2色以上に塗り分ける塗り分け塗装方法として適用することができる。
【0083】
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。