特許第6558277号(P6558277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558277パーキングブレーキワイヤーの伸び除去治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558277
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】パーキングブレーキワイヤーの伸び除去治具
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/10 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   B60T7/10 R
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-43518(P2016-43518)
(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公開番号】特開2017-159695(P2017-159695A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平田 翔
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−040328(JP,U)
【文献】 特開2003−300457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/00 − 7/10
B60T 11/04
F16C 1/22
G05G 1/04
G05G 7/10
G05G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪に設けられたブレーキ機構を、運転席横に設けられたブレーキレバーの操作により、ワイヤーケーブルを介して作動させるパーキングブレーキにおける、前記ワイヤーケーブルに存在する初期伸びを除去する治具であって、上方に引かれた状態の前記ブレーキレバーの下面に当接する支持部材と、前記ブレーキレバー先端に設けられた解除ボタンを押圧状態に保持する保持部材と、を備え、前記保持部材により前記解除ボタンを押圧しつつ、前記支持部材を上下動させる構成であることを特徴とするパーキングブレーキワイヤーの伸び除去治具。
【請求項2】
前記支持部材は、前記ブレーキレバーに沿う長尺状の部材であり、その下方に設けられた基材に対して上下回動可能に軸支されていることを特徴とする請求項1に記載のパーキングブレーキワイヤーの伸び除去治具。
【請求項3】
前記基材の上面には、前記支持部材が傾斜状態で当接する受け部が設けられていて、前記支持部材は、前記受け部の上面と当接しており、前記受け部が一定の作動をくりかえすことで前記支持部材が連続で上下動する構成であることを特徴とする請求項2に記載のパーキングブレーキワイヤーの伸び除去治具。
【請求項4】
前記受け部は、受け台と、前記受け台を貫通して水平方向に延設された軸部と、偏心させた状態で前記軸部に固定され、前記軸部の回転に伴って回転することにより前記支持部材に断続的に当接するカム部材からなることを特徴とする請求項3に記載のパーキングブレーキワイヤーの伸び除去治具。
【請求項5】
回転工具を前記軸部に連結し、前記回転工具の回転にて前記カム部材を連続回転させることにより、前記カム部材に断続的に当接する前記支持部材を上下動させることを特徴とする請求項4に記載のパーキングブレーキワイヤーの伸び除去治具。
【請求項6】
前記基材には、前記基材から延設された支点と、一端が前記支持部材の下面と当接する第一当接部位と、他端が前記支点を挟んで前記第一当接部位と反対側に位置する第二当接部位とを備え、前記第二当接部位への作動力により、前記第一当接部位が上下動するよう構成された伝達部材が設けられたことを特徴とする請求項3に記載のパーキングブレーキワイヤーの伸び除去治具。
【請求項7】
前記伝達部材は、前記第二当接部位へ打撃工具による打撃を連続的に加えることにより、前記第一当接部位が連続で上下動するよう構成された請求項6に記載のパーキングブレーキワイヤーの伸び除去作業治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキングブレーキワイヤーの伸びを除去する治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の車輪に設けられたブレーキ機構は、運転席横に設けられているブレーキレバーの操作によりワイヤーケーブルを介してパーキングブレーキを作動させる。パーキングブレーキは、通常、車両への組み付け後にワイヤーケーブルの伸びを除去することで、ブレーキを調整する作業(以下、「ワイヤー伸び除去作業」と記す。)が必要となる。車両の車輪に設けられたブレーキ機構は、運転席横に設けられているブレーキレバーの操作によりワイヤーケーブルを介してパーキングブレーキを作動させる。パーキングブレーキは、通常、車両への組み付け後にワイヤーケーブルの伸びを除去することで、ブレーキを調整する作業(以下、「ワイヤー伸び除去作業」と記す。)が必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のワイヤー伸び除去作業は、作業者がブレーキレバーの解除ボタンを押さえながら、複数回上下動して行うことや、ブレーキレバーの上下動の荷重が大きいことより、作業者の負担が大きいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は、手動での作業を簡素化して、作業者の負担を小さくするパーキングブレーキワイヤーの伸び除去治具を提供する。
【0005】
請求項1に記載の本発明は、車両の車輪に設けられたブレーキ機構において、運転席横に設けられたブレーキレバーの操作により、ワイヤーケーブルを介して作動させるパーキングブレーキにおける、ワイヤーケーブルに存在する伸びを除去する治具であって、上限に引かれた状態のブレーキレバーの下面に当接する支持部材と、ブレーキレバー先端に設けられた解除ボタンを押圧状態に保持する保持部材と、を備え、保持部材により解除ボタンを押圧しつつ、支持部材を上下動させる構成である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、支持部材がブレーキレバーに沿う長尺状の本体と、基材とが軸部2Cにより軸支され、支持部材の下方に基材が設けられている。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、基材の上面に支持部材が傾斜状態で当接する受け部が設けられていて、支持部材が受け部の上面と当接しており、受け部が一定の作動をくりかえすことで支持部材が連続で上下動する構成である。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、受け部が受け台と、受け台を貫通して水平方向に延設された軸部と、偏心させた状態で軸部に固定され、軸部の回転に伴って回転することにより支持部材に断続的に当接するカム部材からなる。
【0009】
請求項5に記載の本発明は、回転工具を軸部に連結し、回転工具の回転にてカム部材を連続回転させることにより、カム部材に断続的に当接する支持部材を上下動させるものである。
【0010】
請求項6に記載の本発明は、受け部が、基材から延設された支点と、一端が支持部材の下面と当接する第一当接部位と、他端が支点を挟んで第一当接部位と反対側に位置する第二当接部位とを備え、第二当接部位への作動力により第一当接部位を上下動させる伝達部材である。
【0011】
請求項7に記載の本発明は、伝達部材が、第二当接部位へ打撃工具による打撃を連続的に加えることにより、第一当接部位を連続で上下動させるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明により、支持部材と保持部材をブレーキレバーに当接させて上下動するようにしたので、簡易的な治具でブレーキワイヤーの伸びを除去することができるとともに、作業者の負荷を低減することができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明により、作業時に支持部材をドライバー席の横に備えつけられたブレーキレバーに沿って、容易に取付けることができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明により、基材の上面に設けた受け部を作動させるだけの構成のため、座席間の狭いスペースにも取り付けることができる。
【0015】
請求項4に記載の本発明により、偏心したカム部材を受け部として用いることで、受け部の作動を簡易な構造で実現することができる。ここで、「偏心させた状態で軸部に固定」とは、カム部材が、回転軸に垂直な断面で見て楕円形・卵形等であり、回転時に回転軸から支持部材との当接部までの距離が変化するような非円形状で形成されている状態を示す。また、カム部材が回転軸に垂直な断面で見て円形状で形成され、中心からずらした位置を回転軸としている場合も該当する。
【0016】
請求項5に記載の本発明により、回転工具をカム部材の軸部と連結して、回転工具にてカム部材を回転させるため、容易にカム部材を回転させることができる。
【0017】
請求項6に記載の本発明は、伝達部材を上下動させるものであって、その作動力により支持部材を上下動させるものであるため、支持部材へ作動力を容易に伝達することができる。
【0018】
請求項7に記載の本発明は、伝達部材へ打撃工具による打撃を連続的に加えることで、伝達部材を上下動させるため、支持部材を容易に上下動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、車両運転席の横にあるブレーキレバー1を、通常の状態から上方へ引いた状態で、本発明のワイヤー伸び除去治具2をブレーキレバー1の下に固定したものである。ブレーキレバー1を上方に引き上げる前の状態で見て、その長手方向が前後方向、それと垂直な方向(紙面の奥行方向)が左右方向となる。ワイヤー伸び除去治具2は、車室内の床面等に固定するための基台2fと、ブレーキレバー1を支持するための支持部材2aとを有する。なお、ワイヤー伸び除去治具2は、ブレーキレバー1の下に固定する際、前後方向へ位置ずれしないように、基台2fを車両に固定されたホルダ(図示なし)に設けた開口に挿入することで固定している。
【0021】
図2は、本発明の第一実施形態である回転工具を使用した作業方法である。ブレーキレバー1の支持部材2aが傾斜した状態で当接する受け部3bが、基材2dに設けられている。基材2dの上面には、左右一対の受け台3aが間隔を空けて固定されており、左右一対の受け台3aの間には、非円形状のカム4が回転可能に軸支されている。カム4の回転は、左右の受け台3aを貫通して軸部4aとなる軸棒を、カム4の貫通穴に通すことで実現している。
作業時は、支持部材2aとブレーキレバー1が当接し、かつ、保持部材2bがブレーキレバー1の解除ボタン1aを押圧して保持している。
そして、軸部4aに軸方向から回転工具を挿し込み、工具のモーターを回転させることで軸部4a及びカム部材4を連続回転させる。その結果カム部材4の先端が上方に向き、支持部材2aと当接して支持部材2aを受け台3aから浮かせる状態と、カム部材4の先端が下方に向き、支持部材2aと受け台3aが当接する状態を繰り返す。したがって、支持部材2aが基材2dとの回動軸部2cを中心に上下回動する。支持部材2aの上下回動に追従してブレーキレバー1は上下回動する。この時のブレーキレバー1先端部の上下移動量は5mm程度である。なお、同実施形態は受け台3aの側面にカム部材4を配置することによりスペースをとらないことを利点とする。
【0022】
図3は、本発明の第二実施形態である打撃工具を使用するものである。図2と同様にブレーキレバー1の支持部材2aが傾斜した状態で当接する受け台3aが、基材2fに設けられている。伝達部材5は基材2dの側面に一体成型された底部(以下基材2fという。)と、第一当接部位5c及び第二当接部位5dを有する上部と、からなっている。上部が軸部5aにより底部5bと軸支されている。打撃工具6は筒状の形状で、伸縮部8の先端に第二当接部位を打撃する打撃部7を備えている。
なお、軸部5aは請求項6に記載の支点に相当する。
作業時は、打撃工具6を起動させると伸縮部8が動き、打撃部7が第二当接部位に連続的に打撃を与える。第一当接部位5cが支持部材2aに振動を伝達させることで支持部材2aが上下動する。これにより支持部材2aの上下回動に追従してブレーキレバー1は上下回動する。なお、同実施形態は真上から打撃工具6の力を伝達部材5に伝え、てこの原理より軸部5aを支点にスムーズに力を伝えることを利点とする。
【0023】
第二実施形態の打撃工具6は、常に一定の力で動作し続ける手で持つタイプの電動打撃工具が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ブレーキレバーに本発明を設置した状態の図である。
図2】本発明の第一実施形態を示す概略図(2a)支持部材とカム部材が回転により当接し上方向に動く状態図(2b)支持部材とカム部材が当接していない状態図
図3】本発明の第二実施形態を示す概略図(3a)打撃工具が伝達工具と当接しているが支持部材が上方向に上がってない状態図(3b)打撃工具によって支持部材が上方向に上がっている状態図(3c)伝達部材を除いた側面図
【符号の説明】
【0025】
1 ブレーキレバー
1a ブレーキレバー解除ボタン
2 パーキングブレーキワイヤー伸び除去治具
3a 受け台
3b 受け部
2a 支持部材
2b 保持部材
2c 軸部
2d 2g 基材
2f 基台
4 カム部材
4a 軸部
5 伝達部材
5a 軸部
5b 底部
5c 第一当接部位
5d 第二当接部位
6 打撃工具
7 先端部
8 伸縮部
図1
図2
図3