特許第6558304号(P6558304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本スペリア社の特許一覧

特許6558304ハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法
<>
  • 特許6558304-ハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法 図000002
  • 特許6558304-ハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法 図000003
  • 特許6558304-ハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法 図000004
  • 特許6558304-ハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法 図000005
  • 特許6558304-ハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法 図000006
  • 特許6558304-ハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558304
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】ハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/06 20060101AFI20190805BHJP
   B21F 1/02 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   B23K3/06 K
   B21F1/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-108076(P2016-108076)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-213572(P2017-213572A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】592025786
【氏名又は名称】株式会社日本スペリア社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100143373
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲郎
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−58138(JP,A)
【文献】 特開平7−217395(JP,A)
【文献】 実公昭53−18417(JP,Y2)
【文献】 特開2015−137964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/06
B21F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンダ線がロール状に巻回されたハンダ線コイルを保持するハンダ保持具と、
前記ハンダ線コイルから引き出されたハンダ線の巻き癖を低減するための巻き癖低減部とを備え、
前記巻き癖低減部は、
平面状の第一面を有する第一部材と、
前記第一面との間に前記引き出されたハンダ線を挟むための平面状の第二面を有する第二部材とを備え
前記第一部材は、前記第一面に設けられた輪状の複数のループを含み、
前記第二部材は、前記第二面に前記ループと係合可能に設けられたフックを含み、
前記第一部材と前記第二部材とから面ファスナーが構成されるハンダ線供給装置。
【請求項2】
前記第一部材及び前記第二部材は、常温で前記ハンダ線よりも軟らかい材料から構成される請求項1記載のハンダ線供給装置。
【請求項3】
前記複数のフックは、互いに隣接するフック同士の間隔が、実質的に前記ハンダ線の直径以下にされている請求項1又は2に記載のハンダ線供給装置。
【請求項4】
前記第一部材と前記第二部材とを互いに係合させた状態で、前記第一面と前記第二面の間隔が、実質的に前記ハンダ線の直径の2倍以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のハンダ線供給装置。
【請求項5】
前記複数のフックは、互いに隣接するフック同士の間隔が、1.0mm以下である請求項1又は2に記載のハンダ線供給装置。
【請求項6】
前記第一部材と前記第二部材とを互いに係合させた状態で、前記第一面と前記第二面の間隔が、1.0mm以上、2.0mm以下である請求項1、2、及び5のいずれか1項に記載のハンダ線供給装置。
【請求項7】
前記ハンダ線コイルをさらに含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のハンダ線供給装置。
【請求項8】
前記ハンダ保持具と前記巻き癖低減部とが取り付けられた支柱と、
前記支柱を直立させて支持する脚部とをさらに備える請求項1〜7のいずれか1項に記載のハンダ線供給装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のハンダ線供給装置を用いて、前記ハンダ線コイルから引き出されたハンダ線を前記第一面と前記第二面との間に挟む工程と、
前記ハンダ線を、前記第一部材及び前記第二部材と摺動させつつ前記巻き癖低減部から引き出す工程とを含むハンダ線供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンダ線がロール状に巻回されたハンダ線コイルからハンダ線を供給するためのハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンダ線(糸ハンダ)をボビンに巻き取ったハンダ線コイルからハンダ線を引き出して、自動ハンダ付け装置や手ハンダに用いられるこて先へハンダ線を供給することが行われている。このようにコイル状に巻き回されたハンダ線には巻き癖が付くため、ハンダ線コイルから引き出されたハンダ線は、波打ったりよれたりする。このような巻き癖の付いたハンダ線を自動ハンダ付け装置に供給すると、ハンダ線が引っかかるおそれがある。手ハンダの場合であっても、巻き癖の付いたハンダ線でははんだ付けの作業性が低下する。
【0003】
そこで、複数のローラを千鳥状に配置し、これらのローラでハンダ線を蛇行させつつ送り出すことで、ハンダ線の巻き癖を解消するようにしたハンダ線供給装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−58138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のハンダ線供給装置は、ハンダ線を蛇行させるために複数のローラを千鳥状に配置する必要があるため、構造が複雑化するという不都合があった。
【0006】
本発明の目的は、ハンダ線の巻き癖を低減する機構を簡素化することが容易なハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るハンダ線供給装置は、ハンダ線がロール状に巻回されたハンダ線コイルを保持するハンダ保持具と、前記ハンダ線コイルから引き出されたハンダ線の巻き癖を低減するための巻き癖低減部とを備え、前記巻き癖低減部は、平面状の第一面を有する第一部材と、前記第一面との間に前記引き出されたハンダ線を挟むための平面状の第二面を有する第二部材とを備える。
【0008】
この構成によれば、ハンダ線コイルから引き出されたハンダ線が、第一面と第二面との間に挟まれることにより、ハンダ線の巻き癖が低減される。背景技術のように複数のローラを千鳥状に配置する必要がないので、巻き癖を低減する機構を容易に簡素化することができる。
【0009】
また、前記第一部材及び前記第二部材は、常温で前記ハンダ線よりも軟らかい材料から構成されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ハンダ線が第一部材及び第二部材と摺動する際にハンダ線に傷が付くおそれが低減される。
【0011】
また、前記第一部材は、前記第一面に設けられた輪状の複数のループを含み、前記第二部材は、前記第二面に前記ループと係合可能に設けられたフックを含み、前記第一部材と前記第二部材とから面ファスナーが構成されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、面ファスナーの付着力によりハンダ線が挟み込まれるので、効果的にハンダ線の巻き癖を低減することができる。
【0013】
また、前記複数のフックは、互いに隣接するフック同士の間隔が、実質的に前記ハンダ線の直径以下にされていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ハンダ線をフックによって、しっかりと両側から挟み込むことができるので、ハンダ線の巻き癖低減効果が向上する。
【0015】
また、前記第一部材と前記第二部材とを互いに係合させた状態で、前記第一面と前記第二面の間隔が、実質的に前記ハンダ線の直径の2倍以下であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第一面と第二面とに挟まれたハンダ線の歪みをハンダ線の直径の略2倍以下に押さえることができるので、ハンダ線を実質的に直線状に矯正することが可能になる。
【0017】
また、前記複数のフックは、互いに隣接するフック同士の間隔が、1.0mm以下であることが好ましい。
【0018】
フック同士の間隔を1.0mm以下とすれば、巻き癖の影響が顕著な直径0.8mm〜1.2mm程度のハンダ線に対して、より効果的に巻き癖を低減可能となる。
【0019】
また、前記第一部材と前記第二部材とを互いに係合させた状態で、前記第一面と前記第二面の間隔が、1.0mm以上、2.0mm以下であることが好ましい。
【0020】
第一面と第二面の間隔を1.0mm以上、2.0mm以下とすれば、巻き癖の影響が顕著な直径0.8mm〜1.2mm程度のハンダ線に対して、より効果的に巻き癖を低減可能となる。
【0021】
また、前記ハンダ線コイルをさらに含むことが好ましい。
【0022】
この構成によれば、ハンダ線供給装置にハンダ線コイルが取り付けられている。
【0023】
また、前記ハンダ保持具と前記巻き癖低減部とが取り付けられた支柱と、前記支柱を直立させて支持する脚部とをさらに備えることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、ハンダ線供給装置を単独で自立させて用いることができる。
【0025】
また、本発明に係るハンダ線供給方法は、上述のハンダ線供給装置を用いて、前記ハンダ線コイルから引き出されたハンダ線を前記第一面と前記第二面との間に挟む工程と、前記ハンダ線を、前記第一部材及び前記第二部材と摺動させつつ前記巻き癖低減部から引き出す工程とを含む。
【0026】
この構成によれば、上述のハンダ線供給装置によってハンダ線の巻き癖を低減することができるので、巻き癖を低減する機構を簡素化することが容易である。
【発明の効果】
【0027】
このような構成のハンダ線供給装置、及びハンダ線供給方法によれば、ハンダ線の巻き癖を低減する機構を簡素化することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係るハンダ線供給装置の構成の一例を示す斜視図である。
図2図1に示すハンダ保持具の構成を詳細に示す斜視図である。
図3図2に示すハンダ保持具に収容され、保持可能なハンダ線コイルの一例を示す説明図である。図3(a)はボビン無しのハンダ線コイルであるハンダ線ボビンレスコイルの一例を示し、図3(b)はボビン付ハンダ線コイルの一例を示している。
図4図1に示す巻き癖低減部の構成を説明するための説明図である。
図5図1に示す巻き癖低減部のV−V断面を示す断面図である。
図6図1に示すハンダ線供給装置でボビン付ハンダ線コイルを用いる態様を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明の一実施形態に係るハンダ線供給装置の構成の一例を示す斜視図である。
【0030】
図1に示すハンダ線供給装置1は、大略的に、ハンダ保持具2と、巻き癖低減部3と、ハンダ保持具2及び巻き癖低減部3を支持する支柱61と、支柱61を直立させて支持する脚部62とを備えている。
【0031】
図2は、図1に示すハンダ保持具2の構成を詳細に示す斜視図である。図2に示すハンダ保持具2は、円筒形状を有する容器本体部20と、容器本体部20の一端側の開口部を閉塞する底部24と、容器本体部20の他端側の開口部を閉塞するための、脱着可能な蓋体4と、外部の構造物にハンダ保持具2を取り付けるための取付部材5とを備えている。
【0032】
底部24の略中央部には、容器本体部20の内部空間と外部空間とを連通させる底部貫通孔25が形成され、蓋体4の略中央部には、蓋体4を表裏に貫通する蓋体貫通孔41が形成されている。容器本体部20の周壁には、容器本体部20の軸方向に長尺の形状を有し、容器本体部20の内部空間と外部空間とを連通させる長孔21が形成されている。長孔21は、複数設けられていてもよい。
【0033】
容器本体部20は、透光性を有する材料、例えば、透明又は半透明の樹脂材料から構成されている。なお、容器本体部20と底部24とは、同じ材料で一体成形されていてもよい。容器本体部20の軸方向の長さ、あるいは蓋体4が取り付けられた状態での容器本体部20の内部空間の、軸方向の長さは、ハンダ保持具2への収容が予定されているハンダ線ボビンレスコイル101及びハンダ線コイル203のうち長い方のハンダ線コイルの軸方向の長さより、僅かに長く、例えば1mm〜20mmの範囲で長くされている。
【0034】
容器本体部20の内径は、ハンダ保持具2への収容が予定されているハンダ線ボビンレスコイル101及びハンダ線コイル203のうち、太い方の直径より、僅かに大きく、例えば1mm〜20mmの範囲で大きくされている。
【0035】
容器本体部20の両端近傍の内面には、摩擦を低減するための摩擦低減部材23,23が、周方向に沿って帯状に延びて取り付けられている。摩擦低減部材23,23としては、低摩擦係数を有するフッ素樹脂のシート状のテープを用いることができる。フッ素樹脂としては例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))、いわゆるテフロン(登録商標)を用いることができる。フッ素樹脂のシート状のテープとしては、例えば日東電工(株)製フッ素樹脂粘着テープ、NITOFLON(登録商標)を用いることができる。なお、摩擦低減部材23,23は、容器本体部20の内面よりも摩擦係数の小さい材料で構成されていればよく、フッ素樹脂で構成される例に限らない。また、ハンダ保持具2は、摩擦低減部材23,23を備えていなくてもよい。
【0036】
蓋体4の周縁部には、底部24とは反対側の容器本体部20の端部の周縁22と係合するように凹溝42が形成されている。また、蓋体4には、周縁部から径方向に突出する摘まみ部43が取り付けられている。蓋体4は、例えば柔軟性を有するポリエチレン等の樹脂材料を用いて構成されている。
【0037】
これにより、ユーザは、凹溝42を周縁22と係合させるように容器本体部20に蓋体4を取り付けることにより、容器本体部20の開口部を蓋体4で閉じることができ、摘まみ部43を摘まんで蓋体4を取り外すことで、容器本体部20の開口部を開くことができる。このように、蓋体4は、容器本体部20に対して脱着可能にされているので、蓋体4を外して容器本体部20内に後述するハンダ線ボビンレスコイル101又はボビン付ハンダ線コイル201を収容し、蓋体4を取り付けることによって、容器本体部20内に収容されたハンダ線ボビンレスコイル101又はボビン付ハンダ線コイル201をハンダ保持具2で保持することができる。
【0038】
なお、蓋体4は、凹溝42によって容器本体部20に取り付けられる例に限らない。蓋体4の容器本体部20への取付構造としては、例えば、ねじ構造その他、種々の取付構造を採用することができる。
【0039】
取付部材5は、容器本体部20の周面に固着されたベース部52と、ベース部52から容器本体部20の径方向に延びるように取り付けられたボルト51とを備えている。ボルト51は、ハンダ線供給装置1の支柱61に形成された取付孔611に挿通可能にされている。これにより、ハンダ保持具2を取り付けようとする支柱61の取付孔611にボルト51を挿通し、ボルト51にナット63を締結することによって、支柱61にハンダ保持具2を取り付けることが可能となる。
【0040】
図3は、図2に示すハンダ保持具2に収容され、保持可能なハンダ線コイルの一例を示す説明図である。図3(a)は、ボビン無しのハンダ線コイルであるハンダ線ボビンレスコイルの一例を示す斜視図である。図3(b)は、ボビン付ハンダ線コイルの一例を示す斜視図である。図3(a)に示すボビン無しのハンダ線ボビンレスコイル101は、ハンダ線102が中空円柱状に巻回されたハンダ線コイル103と、ハンダ線コイル103の外表面を被覆する被覆フィルム104と、ハンダ線ボビンレスコイル101の一端側(図3(a)では上面)に貼付された略円形のラベル105とを備えている。
【0041】
被覆フィルム104及びラベル105には、ハンダ線コイル103の中空部106の開口部に対応する位置に、開口部107が形成されている。図3(a)では図示を省略しているが、被覆フィルム104には、ハンダ線コイル103の中空部106の図中下側の開口部に対応する位置にも、開口部が形成されている。
【0042】
これにより、ハンダ線ボビンレスコイル101は、中空部106からハンダ線102を引き出して、被覆フィルム104やラベル105の開口部を通して外部にハンダ線102を引き出し可能にされている。
【0043】
なお、ハンダ保持具2は、必ずしも被覆フィルムで被覆されたハンダ線ボビンレスコイルを収容する例に限られない。例えば、被覆フィルム104で被覆されないハンダ線コイル103を単体でハンダ保持具2に収容してもよい。
【0044】
図3(b)に示すボビン付ハンダ線コイル201は、例えば樹脂のボビン202と、ボビン202にハンダ線102が巻回されたハンダ線コイル203とを備えている。ボビン202は、円筒状をした芯部204と、この芯部204の両端に略直角に設けられた円盤状をした鍔部205,205とを一体に有している。ボビン付ハンダ線コイル201は、図3(b)に示すように、ハンダ線コイル203の外周からハンダ線102を引き出すようになっている。なお、ボビン付ハンダ線コイル201は、ハンダ線ボビンレスコイル101に後からボビンを取り付けてボビン付ハンダ線コイル201とされたものであってもよい。
【0045】
図1に示す例では、ハンダ保持具2内に、ハンダ線ボビンレスコイル101が収容、保持されている状態を示している。図1では、ハンダ保持具2の軸方向が、略鉛直となる鉛直姿勢になるように、ハンダ保持具2の姿勢が設定された状態で、ボルト51にナット63が締結されている。
【0046】
支柱61は、例えば扁平な板状の金属棒等で構成されている。脚部62は、ハンダ保持具2内に収容されたハンダ線コイルの重量でハンダ線供給装置1が倒れないように、例えばハンダ保持具2内に収容されるハンダ線コイルよりも重い金属板などで構成されている。
【0047】
支柱61の、ハンダ保持具2の下方には、巻き癖低減部3を支柱61に取り付ける取付部材64が固着されている。取付部材64は、例えば、板状の支柱61に対して略平行な板状のプレート部641と、プレート部641の両端部から支柱61へ向かって延び、その先端が支柱61に固着された固定部642,642とを備えている。
【0048】
巻き癖低減部3は、例えば第一部材31と第二部材32とからなる面ファスナーを用いて構成されている。第二部材32の背面がプレート部641に固着され、第一部材31は、第二部材32に対して脱着可能に付着されている。そして、ハンダ保持具2の底部貫通孔25から引き出されたハンダ線102が、第一部材31と第二部材32との間に挿通されている。
【0049】
図4は、図1に示す巻き癖低減部3の構成を説明するための説明図である。図4は、巻き癖低減部3を第二部材32と第一部材31とに分離した状態を示している。図4(a)は第一部材31を示し、図4(b)は第二部材32を示している。図4(b)には、巻き癖低減部3に挿通されたハンダ線102を第二面322に重ねて示している。
【0050】
図4(a)に示す第一部材31は、シート状の第一シート311と、第一シート311の一方の面である第一面312に植設された輪状の複数のループ313とを備えている。図4(b)に示す第二部材32は、シート状の第二シート321と、第二シート321の一方の面である第二面322に立設された鉤状の複数のフック323とを備えている。
【0051】
第一シート311は例えば化学繊維で織られた柔軟性(可撓性)を有する布地から構成され、ループ313は例えば柔軟性を有する化学繊維の糸から構成されている。これにより、第一シート311及びループ313を用いて構成される第一部材31は、常温、例えば10℃〜30℃の温度範囲において、ハンダ線102よりも軟らかい(硬度が小さい)ものとされている。
【0052】
また、第二シート321及びフック323は常温、例えば10℃〜30℃の温度範囲において、ハンダ線102よりも軟らかい(硬度が小さい)樹脂材料で構成されている。これにより、第一部材31及び第二部材32を、常温でハンダ線102よりも軟らかい(硬度が小さい)ものとすることができる結果、ハンダ線102が第一部材31及び第二部材32と摺動する際にハンダ線102に傷が付くおそれが低減される。さらに、フック323は、弾性及び可撓性を有する材料で構成されている。
【0053】
第一面312と第二面322とを対向させて第一部材31と第二部材32とを密着させることにより、フック323がループ313に係合し、第一部材31と第二部材32とが付着するようになっている。
【0054】
複数のフック323は、第二面322に、略格子状に配列されて立設されている。複数のフック323が第二面322に略格子状に配列されると、巻き癖低減部3に挿通されたハンダ線102は、複数のフック323の列の間に挟まれるように位置する。
【0055】
なお、横方向の各フック323相互間の間隔と、縦方向の各フック323相互間の間隔とは異なっていてもよい。横方向と縦方向とで各フック323相互間の間隔が異なっている場合、間隔が狭い方向に沿うように、ハンダ線102が第一面312と第二面322との間に挿通されることが好ましい。これにより、幅の広い方の列の間にハンダ線102が挟まれ、かつハンダ線102の両側でハンダ線102を間に挟むフック323の数が、間隔が広い方向に沿うようにハンダ線102を挿通した場合よりも多くなる。
【0056】
複数のループ313は、図4(a)では第一面312に格子状に植設される例を示したが、必ずしも格子状に植設される例に限らない。複数のループ313は、複数のフック323相互間の間隔よりも狭い間隔で、密集して植設されることが好ましい。複数のループ313が複数のフック323相互間の間隔よりも狭い間隔で密集して植設されることにより、各フック323がループ313に係合しやすくなる結果、第一部材31と第二部材32とが付着し易くなる。
【0057】
図5は、図1に示す巻き癖低減部3のV−V断面を示す断面図である。図5(a)は断面全体を大略的に示し、図5(b)は図5(a)の要部の拡大図である。上述のように構成された巻き癖低減部3の、第一面312と第二面322との間にハンダ線102を挿通すると、ハンダ線102は、図4(b)で示したように、第一面312の面方向に沿う両側をフック323で挟まれ、かつ第一面312と直交する方向に第一面312と第二面322とで挟まれることになる。
【0058】
その結果、巻き癖低減部3に挿通された部分、すなわち第一部材31と第二部材32とで挟まれた部分のハンダ線102の形状は、略直線状に近づくように矯正されることになる。
【0059】
図5に示す例では、ハンダ線102と直交する方向(図4(b)では横方向)の各フック323相互間の間隔D2は、ハンダ線102の直径D1よりも小さい例を示している。このように、間隔D2が、ハンダ線102の直径D1よりも小さいか、又は略同一であれば、すなわち間隔D2が実質的に直径D1以下であれば、ハンダ線102をフック323によって、しっかりと両側から挟み込むことができるので、ハンダ線102の形状を略直線状に近づくように矯正する効果が向上する。間隔D2がゼロの場合であっても、フック323が可撓性及び弾性を有するので、ハンダ線102の両側のフック323が変形しつつハンダ線102を弾性的に挟み込むことが可能である。
【0060】
また、巻き癖低減部3は、第一部材31と第二部材32とを互いに係合させた状態で、第一面312と第二面322の間隔D3が、ハンダ線102の直径D1の2倍以下であれば、第一面312と第二面322とに挟まれたハンダ線102の歪みは、直径D1の2倍以下に押さえられるので、略直線状に矯正される。また、ループ313がハンダ線102と第一面312の間に挟まる場合があることも考慮すると、間隔D3が、ハンダ線102の直径D1の2倍以下であれば、第一部材31と第二部材32とに挟まれた部分のハンダ線102の形状を、より効果的に略直線状に矯正することが可能となる。
【0061】
また、ハンダ線の巻き癖は、直径の太いものほど手ハンダの作業性や自動ハンダ装置でのハンダ給送に影響しやすく、一般的に使用されることが多いハンダ線の中では、直径0.8mm〜1.2mm程度のハンダ線において、巻き癖の影響が顕著である。
【0062】
そこで、フック323相互間の間隔D2を1.0mmとすれば、直径1.0〜1.2mmのハンダ線に対しては、間隔D2がハンダ線の直径D1以下となってハンダ線102の形状を、略直線状に近づくように修正することができる。また、直径0.8mmのハンダ線に対しては、間隔D2がハンダ線の直径D1よりわずかに0.2mm大きいものの実質的にハンダ線102が両側のフック323で挟まれる結果、ハンダ線102の形状を、より効果的に略直線状に近づくように修正することが可能になる。
【0063】
同様に、第一面312と第二面322の間隔D3を1.0mm以上、2.0mm以下とすれば、間隔D3が1.0mmのとき、直径1.2mmのハンダ線に対して直径D1よりも間隔D3が狭くなるものの、第一シート311が柔軟性を有するので、直径1.2mmのハンダ線を第一面312と第二面322との間に挟んだ場合であっても第一シート311が膨らんで、第一部材31のループ313と第二部材32のフック323の係合を維持したままハンダ線を挟み込むことができる。
【0064】
また、間隔D3が2.0mmのとき、直径0.8mmのハンダ線に対して間隔D3が直径D1の2倍である1.6mmを超える。しかしながら、直径1.2mmのハンダ線より細い直径0.8mmのハンダ線は、直径1.2mmのハンダ線より軟らかいため、巻き癖低減部3からハンダ線が引き出される際の張力により直線状に伸ばされる作用が直径1.2mmのハンダ線よりも強く働く。その結果、第一面312と第二面322の間隔D3を1.0mm以上、2.0mm以下とすれば、直径0.8mm〜1.2mm程度のハンダ線に対して、より効果的にハンダ線102の形状を略直線状に近づくように修正することが可能になる。
【0065】
このように、ハンダ保持具2で保持されたハンダ線ボビンレスコイル101からハンダ線102を引き出して巻き癖低減部3に挿通し、ハンダ線102を第一面312と第二面322との間に挟む工程と、第一面312と第二面322との間に挟まれたハンダ線102を、第一部材31及び第二部材32と摺動させつつ巻き癖低減部3から引き出す工程とを含むハンダ線供給方法を実行することによって、図1に示すように、ハンダ線ボビンレスコイル101から引き出された段階でのハンダ線102の巻き癖を、巻き癖低減部3から引き出すことによって低減することができる。
【0066】
以上、ハンダ線供給装置1によれば、背景技術のように、複数のローラを千鳥状に配置する必要がなく、巻き癖を低減する機構を容易に簡素化することができる。なお、フック323相互間の間隔D2が実質的にハンダ線の直径以下、第一面312と第二面322の間隔D3が実質的にハンダ線の直径の2倍以下、間隔D2が1.0mm以下、間隔D2が1.0mm以上、2.0mm以下といった条件が満たされることは、ハンダ線102の形状を略直線状に近づける効果が向上する点でのぞましいが、必ずしもこれらの条件が満たされていなくても、ハンダ線102の形状を略直線状に近づける効果は得られる。
【0067】
巻き癖低減部3からのハンダ線102の引き出しは、例えば手ハンダ作業を行うユーザが手作業で行ってもよい。あるいは、巻き癖低減部3から引き出されたハンダ線102を、自動ハンダ装置へ送ることによって、自動ハンダ装置によって、ハンダ線102を巻き癖低減部3から引き出させてもよい。
【0068】
なお、ハンダ線ボビンレスコイル101からハンダ線102を引き出す例を示したが、ボビンに巻き回されたボビン付ハンダ線コイル201からハンダ線102を引き出すようにしてもむろんよい。例えば図6に示すように、ハンダ保持具2内にボビン付ハンダ線コイル201を収容し、ハンダ保持具2の軸方向が略水平となる水平姿勢でボルト51にナット63を締結してハンダ保持具2を支柱61に取り付けてもよい。そして、長孔21から引き出したハンダ線102を、巻き癖低減部3に挿通してもよい。
【0069】
図6に示すように、ハンダ保持具2内にボビン付ハンダ線コイル201を収容して水平姿勢にすると、ボビン202の鍔部205,205が、容器本体部20内面の摩擦低減部材23,23の上に乗るようになっている。すなわち、ハンダ保持具2の長さがボビン202の軸方向の長さ、すなわちボビン付ハンダ線コイル201の長さよりも僅かに長くされており、ハンダ保持具2に収容されたボビン付ハンダ線コイル201の鍔部205,205の位置と、容器本体部20の両端近傍の内面に配設された摩擦低減部材23,23の位置とが対応するようになっている。
【0070】
この状態で巻き癖低減部3からハンダ線102を引き出すと、長孔21からハンダ線102が繰り出され、ボビン付ハンダ線コイル201が回転し、鍔部205,205が摩擦低減部材23,23に対して摺動する。このとき、摩擦低減部材23,23によって、鍔部205,205と摩擦低減部材23,23との摩擦が低減される結果、スムーズにボビン付ハンダ線コイル201が回転することができるので、ボビン付ハンダ線コイル201から円滑にハンダ線102を供給することが可能となる。
【0071】
なお、ハンダ保持具は、ハンダ線コイルを保持することができればよく、ハンダ保持具2のような容器状のものに限らない。例えば、ハンダ保持具は、ボビン付ハンダ線コイル201の芯部204の孔に挿通される軸芯状の部材によって、ボビン付ハンダ線コイル201を回転可能に保持するものであってもよい。
【0072】
また、ハンダ線供給装置1は、必ずしも脚部62を備えていなくてもよく、支柱61を備えていなくてもよい。ハンダ保持具2及び巻き癖低減部3は、支柱61に取り付けられる例に限らない。ハンダ保持具2及び巻き癖低減部3は、例えば自動ハンダ装置等の装置類のフレーム等に取り付けられていてもよく、ハンダ線供給装置1はこれら装置類の一部として構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 ハンダ線供給装置
2 ハンダ保持具
3 巻き癖低減部
4 蓋体
5 取付部材
20 容器本体部
21 長孔
22 周縁
23 摩擦低減部材
24 底部
25 底部貫通孔
31 第一部材
32 第二部材
41 蓋体貫通孔
42 凹溝
51 ボルト
52 ベース部
61 支柱
62 脚部
63 ナット
64 取付部材
101 ハンダ線ボビンレスコイル
102 ハンダ線
103 ハンダ線コイル
104 被覆フィルム
105 ラベル
106 中空部
107 開口部
201 ボビン付ハンダ線コイル
202 ボビン
203 ハンダ線コイル
204 芯部
205 鍔部
311 第一シート
312 第一面
313 ループ
321 第二シート
322 第二面
323 フック
611 取付孔
641 プレート部
642 固定部
D1 直径
D2,D3 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6