特許第6558315号(P6558315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558315気泡径分布測定装置及び気泡径分布測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558315
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】気泡径分布測定装置及び気泡径分布測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/02 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   G01N15/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-131762(P2016-131762)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-4450(P2018-4450A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】島岡 治夫
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−071547(JP,A)
【文献】 特開2004−069431(JP,A)
【文献】 特開2016−048183(JP,A)
【文献】 特開2011−247748(JP,A)
【文献】 特開2016−099279(JP,A)
【文献】 特開2003−057164(JP,A)
【文献】 特開2016−048185(JP,A)
【文献】 特開2007−263876(JP,A)
【文献】 米国特許第04283128(US,A)
【文献】 米国特許第06598464(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0166037(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101393107(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104596898(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 − 15/14
G01N 21/00 − 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液にファインバブルが含有されたファインバブル含有媒体の画像を撮影する画像撮影部と、
前記ファインバブル含有媒体に対してレーザ光を照射し、回折・散乱光の強度分布を表す光強度分布データを取得する光強度測定部と、
前記光強度分布データに基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の粒子径分布データを算出する粒子径分布測定部と、
前記画像撮影部により撮影された画像に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の中からファインバブルを識別するファインバブル識別部と、
前記ファインバブル識別部により識別されたファインバブルのサイズを判定する気泡サイズ判定部と、
前記粒子径分布データから、前記気泡サイズ判定部により判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間以外の粒子径区間のデータを除去することにより、ファインバブルの気泡径分布データを取得する気泡径分布測定部とを備えることを特徴とする気泡径分布測定装置。
【請求項2】
前記画像撮影部により撮影された画像に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブル以外の異物を識別する異物識別部と、
前記異物識別部により識別された異物のサイズを判定する異物サイズ判定部と、
前記画像撮影部により撮影された画像に含まれるファインバブルの数及び異物の数をカウントする粒子数カウント部と、
前記粒子数カウント部によりカウントされたファインバブルの数及び異物の数の比率を算出する比率算出部とをさらに備え、
前記気泡径分布測定部は、前記気泡サイズ判定部により判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間に、前記異物サイズ判定部により判定された異物のサイズが含まれている場合に、当該粒子径区間におけるデータが前記比率算出部により算出された比率に基づいて補正された気泡径分布データを取得することを特徴とする請求項1に記載の気泡径分布測定装置。
【請求項3】
前記画像撮影部は、ファインバブル含有媒体の画像を一定周期で撮影しており、
前記ファインバブル識別部は、一定周期で撮影される各画像についてファインバブルを順次識別し、
前記気泡径分布測定部は、前記ファインバブル識別部によりファインバブルが識別された画像に基づくファインバブルの気泡径分布データを、次の画像についてファインバブルが識別されるまで取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡径分布測定装置。
【請求項4】
原液にファインバブルが含有されたファインバブル含有媒体の画像を撮影する画像撮影ステップと、
前記ファインバブル含有媒体に対してレーザ光を照射し、回折・散乱光の強度分布を表す光強度分布データを取得する光強度測定ステップと、
前記光強度分布データに基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の粒子径分布データを算出する粒子径分布測定ステップと、
前記画像撮影ステップにより撮影された画像に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の中からファインバブルを識別するファインバブル識別ステップと、
前記ファインバブル識別ステップにより識別されたファインバブルのサイズを判定する気泡サイズ判定ステップと、
前記粒子径分布データから、前記気泡サイズ判定ステップにより判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間以外の粒子径区間のデータを除去することにより、ファインバブルの気泡径分布データを取得する気泡径分布測定ステップとを含むことを特徴とする気泡径分布測定方法。
【請求項5】
前記画像撮影ステップにより撮影された画像に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブル以外の異物を識別する異物識別ステップと、
前記異物識別ステップにより識別された異物のサイズを判定する異物サイズ判定ステップと、
前記画像撮影ステップにより撮影された画像に含まれるファインバブルの数及び異物の数をカウントする粒子数カウントステップと、
前記粒子数カウントステップによりカウントされたファインバブルの数及び異物の数の比率を算出する比率算出ステップとをさらに含み、
前記気泡径分布測定ステップでは、前記気泡サイズ判定ステップにより判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間に、前記異物サイズ判定ステップにより判定された異物のサイズが含まれている場合に、当該粒子径区間におけるデータが前記比率算出ステップにより算出された比率に基づいて補正された気泡径分布データを取得することを特徴とする請求項4に記載の気泡径分布測定方法。
【請求項6】
前記画像撮影ステップでは、ファインバブル含有媒体の画像を一定周期で撮影しており、
前記ファインバブル識別ステップでは、一定周期で撮影される各画像についてファインバブルを順次識別し、
前記気泡径分布測定ステップでは、前記ファインバブル識別ステップによりファインバブルが識別された画像に基づくファインバブルの気泡径分布データを、次の画像についてファインバブルが識別されるまで取得することを特徴とする請求項4又は5に記載の気泡径分布測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を測定するための気泡径分布測定装置及び気泡径分布測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロバブルやウルトラファインバブルといったファインバブルの研究及び利用が活発に行われている。ファインバブルは、例えば、気泡径が100μm以下の微細気泡であり、気泡径が1μm以上のものはマイクロバブル、気泡径が1μm未満のものはウルトラファインバブルと呼ばれている。
【0003】
ファインバブルには、洗浄効果や殺菌効果といった様々な効果が期待されている。例えば、工場やプラント、公衆トイレなどで、ファインバブルを用いて各種設備の洗浄を行えば、洗剤の使用量を削減することができる。そのため、ファインバブルを用いた洗浄方法は、環境に優しい新たな洗浄方法として注目されている。
【0004】
このようなファインバブルの特性と効果の関係は、ファインバブルの気泡径や気泡量(濃度)に依存している。そこで、レーザ回折・散乱式の粒子径分布測定装置などを用いて、ファインバブルの気泡径分布(粒子径分布)を測定する技術が提案されている。
【0005】
また、測定対象となる液体(ファインバブル含有媒体)には、ファインバブル以外にも、例えば、粉塵又は土などの固体粒子や、オイル又はエマルジョンなどの液体粒子といった異物(コンタミ)が含まれている場合がある。このような場合に対応するため、ファインバブルとコンタミとを識別した上で、ファインバブルの気泡径分布を測定する技術も提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載の粒子径分布測定装置では、試料溶液(原液)に対してレーザ光を照射し、回折・散乱光の強度分布を表す第1光強度分布データを取得する。また、ファインバブル発生装置によって、試料溶液(原液)にファインバブルを含有させ、そのファインバブル含有媒体(原液及びファインバブル)に対してレーザ光を照射し、回折・散乱光の強度分布を表す第2光強度分布データを取得する。ファインバブル含有媒体には、ファインバブル及びコンタミが含まれており、原液にはコンタミのみが含まれている。そして、この粒子径分布測定装置では、原液から得られる第1光強度分布データを、ファインバブル含有媒体から得られる第2光強度分布データから差し引いたデータを用いて粒子径分布を演算することで、ファインバブルのみの気泡径分布を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−48185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来の装置を用いる場合には、ファインバブルが含有されていない原液、及び、原液にファインバブルが含有されたファインバブル含有媒体の両方を測定する必要がある。しかし、例えば、自然界で発生するファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を測定する場合もある。この場合には、ファインバブル含有媒体を用意することはできるが、ファインバブルが含有されていない原液を用意することが難しい。そのため、このような場合、すなわち、ファインバブル含有媒体のみから、そのファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を測定する場合には、上記装置による測定は適していない。
【0009】
そこで、ファインバブル含有媒体中の粒子の画像を撮影し、撮影された画像に基づいて各粒子がファインバブルであるか否かを識別することが考えられる。このような方法であれば、撮影された画像を目視することにより、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルとコンタミとを判別することが可能である。
【0010】
しかしながら、このような方法では、ファインバブル含有媒体のごく一部の画像を撮影するため、サンプル数が少なく、その識別結果のみに基づいてファインバブルの気泡径分布を算出すると、算出されたファインバブルの気泡径分布の精度が極めて低くなってしまう。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ファインバブル含有媒体のみを用いて、そのファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を精度よく測定できる気泡径分布測定装置及び気泡径分布測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る気泡径分布測定装置は、画像撮影部と、光強度測定部と、粒子径分布測定部と、ファインバブル識別部と、気泡サイズ判定部と、気泡径分布測定部とを備える。前記画像撮影部は、原液にファインバブルが含有されたファインバブル含有媒体の画像を撮影する。前記光強度測定部は、前記ファインバブル含有媒体に対してレーザ光を照射し、回折・散乱光の強度分布を表す光強度分布データを取得する。前記粒子径分布測定部は、前記光強度分布データに基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の粒子径分布データを算出する。前記ファインバブル識別部は、前記画像撮影部により撮影された画像に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の中からファインバブルを識別する。前記気泡サイズ判定部は、前記ファインバブル識別部により識別されたファインバブルのサイズを判定する。前記気泡径分布測定部は、前記粒子径分布データから、前記気泡サイズ判定部により判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間以外の粒子径区間のデータを除去することにより、ファインバブルの気泡径分布データを取得する。
【0013】
このような構成によれば、粒子径分布測定部により算出される粒子径分布データのうち、気泡サイズ判定部により判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間以外の粒子径区間のデータが除去されることで、気泡径分布測定部によりファインバブルの気泡径分布データが取得される。
【0014】
そのため、ファインバブル含有媒体にコンタミが含まれる場合であっても、気泡径分布データにおいて、コンタミに関するデータを除去することができる。
その結果、ファインバブル含有媒体のみを用いて、そのファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を精度よく測定できる。
【0015】
(2)また、前記気泡径分布測定装置は、異物識別部と、異物サイズ判定部と、粒子数カウント部と、比率算出部とをさらに備えてもよい。前記異物識別部は、前記画像撮影部により撮影された画像に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブル以外の異物を識別する。前記異物サイズ判定部は、前記異物識別部により識別された異物のサイズを判定する。前記粒子数カウント部は、前記画像撮影部により撮影された画像に含まれるファインバブルの数及び異物の数をカウントする。前記比率算出部は、前記粒子数カウント部によりカウントされたファインバブルの数及び異物の数の比率を算出する。前記気泡径分布測定部は、前記気泡サイズ判定部により判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間に、前記異物サイズ判定部により判定された異物のサイズが含まれている場合に、当該粒子径区間におけるデータが前記比率算出部により算出された比率に基づいて補正された気泡径分布データを取得してもよい。
【0016】
このような構成によれば、気泡径分布データにおいて、ファインバブルのサイズを含む粒子径区間に異物のサイズが含まれる場合であっても、その区間におけるデータを、ファインバブルの数及び異物の数の比率に基づいて、補正できる。
そのため、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を一層精度よく測定できる。
【0017】
(3)また、前記画像撮影部は、ファインバブル含有媒体の画像を一定周期で撮影してもよい。前記ファインバブル識別部は、一定周期で撮影される各画像についてファインバブルを順次識別してもよい。前記気泡径分布測定部は、前記ファインバブル識別部によりファインバブルが識別された画像に基づくファインバブルの気泡径分布データを、次の画像についてファインバブルが識別されるまで取得してもよい。
【0018】
このような構成によれば、気泡径分布測定部によるファインバブルの気泡径分布データの取得を連続的に実施しつつ、画像撮影部によりファインバブル含有媒体の画像が撮影された場合には、最新の画像からファインバブルを識別し、その最新の識別結果に基づいて、気泡径分布測定部によりファインバブルの気泡径分布データを取得できる。
そのため、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布をリアルタイムで測定できる。
【0019】
(4)本発明に係る気泡径分布測定方法は、画像撮影ステップと、光強度測定ステップと、粒子径分布測定ステップと、ファインバブル識別ステップと、気泡サイズ判定ステップと、気泡径分布測定ステップとを含む。前記画像撮影ステップでは、原液にファインバブルが含有されたファインバブル含有媒体の画像を撮影する。前記光強度測定ステップでは、前記ファインバブル含有媒体に対してレーザ光を照射し、回折・散乱光の強度分布を表す光強度分布データを取得する。前記粒子径分布測定ステップでは、前記光強度分布データに基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の粒子径分布データを算出する。前記ファインバブル識別ステップでは、前記画像撮影ステップにより撮影された画像に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の中からファインバブルを識別する。前記気泡サイズ判定ステップでは、前記ファインバブル識別ステップにより識別されたファインバブルのサイズを判定する。前記気泡径分布測定ステップでは、前記粒子径分布データから、前記気泡サイズ判定ステップにより判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間以外の粒子径区間のデータを除去することにより、ファインバブルの気泡径分布データを取得する。
【0020】
(5)また、前記気泡径分布測定方法は、異物識別ステップと、異物サイズ判定ステップと、粒子数カウントステップと、比率算出ステップとをさらに含んでもよい。前記異物識別ステップでは、前記画像撮影ステップにより撮影された画像に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブル以外の異物を識別する。前記異物サイズ判定ステップでは、前記異物識別ステップにより識別された異物のサイズを判定する。前記粒子数カウントステップでは、前記画像撮影ステップにより撮影された画像に含まれるファインバブルの数及び異物の数をカウントする。前記比率算出ステップでは、前記粒子数カウントステップによりカウントされたファインバブルの数及び異物の数の比率を算出する。前記気泡径分布測定ステップでは、前記気泡サイズ判定ステップにより判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間に、前記異物サイズ判定ステップにより判定された異物のサイズが含まれている場合に、当該粒子径区間におけるデータが前記比率算出ステップにより算出された比率に基づいて補正された気泡径分布データを取得してもよい。
【0021】
(6)また、前記画像撮影ステップでは、ファインバブル含有媒体の画像を一定周期で撮影してもよい。前記ファインバブル識別ステップでは、一定周期で撮影される各画像についてファインバブルを順次識別してもよい。前記気泡径分布測定ステップでは、前記ファインバブル識別ステップによりファインバブルが識別された画像に基づくファインバブルの気泡径分布データを、次の画像についてファインバブルが識別されるまで取得してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、粒子径分布測定部により算出される粒子径分布データのうち、気泡サイズ判定部により判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間以外の粒子径区間のデータが除去されることで、気泡径分布測定部によりファインバブルの気泡径分布データが取得される。そのため、ファインバブル含有媒体にコンタミが含まれる場合であっても、気泡径分布データにおいて、コンタミに関するデータを除去することができる。その結果、ファインバブル含有媒体のみを用いて、そのファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る気泡径分布測定装置の構成例を示したブロック図である。
図2】画像撮影部及び光強度測定部の構成例を概略的に示した図である。
図3】気泡径分布測定装置の制御部、及び、その周辺の部材の具体的構成を示したブロック図である。
図4】制御部による処理の一例を示したフローチャートである。
図5】画像撮影部によって撮影された画像を概略的に示した図である。
図6A】コンタミに関するデータが含まれる気泡径分布データの一例を示した図である。
図6B図6Aのデータからコンタミに関するデータを削除した後の気泡径分布データの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.気泡径分布測定装置の全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る気泡径分布測定装置1の構成例を示したブロック図である。この気泡径分布測定装置1は、ファインバブルが含有されたファインバブル含有媒体を測定対象とし、当該ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を測定するための装置である。
【0025】
ファインバブル含有媒体は、例えば、自然界で発生するファインバブル含有媒体であって、ファインバブルに加えて、粉塵又は土などの固体粒子や、オイル又はエマルジョンなどの液体粒子といった異物(コンタミ)が含まれている。ファインバブル含有媒体は、例えば、水の他、アルコール又は油といった任意の液体を原液とし、この原液にファインバブルが含有されている媒体である。具体的には、ファインバブル含有媒体は、例えば、気泡径が100μm以下の微細気泡からなるファインバブルを含んでいる。より具体的には、気泡径が1μm未満のウルトラファインバブル、及び、気泡径が1μm以上のマイクロバブルの少なくとも一方が、気体粒子として原液に含有されている。気体粒子を構成する気体は、空気であってもよいし、例えば、オゾンや水素といった空気以外の気体であってもよい。
【0026】
気泡径分布測定装置1には、ポンプ2、画像撮影部3、光強度測定部4及びデータ処理装置5などが備えられている。気泡径分布測定装置1では、ポンプ2の駆動により、ファインバブル含有媒体が、画像撮影部3及び光強度測定部4に順次供給される。光強度測定部4に供給された後のファインバブル含有媒体は、外部に排水される。また、データ処理装置5は、画像撮影部3及び光強度測定部4に電気的に接続されており、これらからの信号が適宜入力される。
【0027】
画像撮影部3は、供給されるファインバブル含有媒体を撮影するように構成されている。具体的には、画像撮影部3は、ファインバブル含有媒体中の粒子を撮影する。
【0028】
光強度測定部4は、ファインバブル含有媒体に対して光(レーザ光)を照射し、ファインバブル含有媒体からの回折・散乱光(レーザ回折・散乱光)の強度分布を測定する。これにより、光強度測定部4では、ファインバブル含有媒体からの回折・散乱光の強度分布を表す光強度分布データが取得される。光強度測定部4における測定で得られる光強度分布データは、データ処理装置5に入力される。
【0029】
データ処理装置5は、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を測定する際のデータを処理するためのものであり、例えば、パーソナルコンピュータにより構成される。このデータ処理装置5は、制御部51、操作部52、表示部53及び記憶部54などを備えている。
【0030】
制御部51は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む構成であり、操作部52、表示部53及び記憶部54などの各部が電気的に接続されている。操作部52は、例えばキーボード及びマウスを含む構成であり、作業者が操作部52を操作することにより入力作業などを行うことができるようになっている。
【0031】
表示部53は、例えば、液晶表示器などにより構成することができ、作業者が表示部53の表示内容を確認しながら作業を行うことができるようになっている。記憶部54は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスクなどにより構成することができる。
【0032】
2.画像撮影部及び光強度測定部の詳細構成
図2は、画像撮影部3及び光強度測定部4の構成例を概略的に示した図である。
(1)画像撮影部
画像撮影部3には、光源31、フローセル32及びカメラ33などが備えられている。
光源31は、フローセル32に向けて光を照射するように構成されている。
【0033】
フローセル32には、測定対象となるファインバブル含有媒体が供給される。フローセル32に供給された後のファインバブル含有媒体は、後述する光強度測定部4のフローセル45に供給される。すなわち、フローセル32、及び、後述するフローセル45は、ファインバブル含有媒体の流入方向において、直列となるように配置されている。
【0034】
カメラ33は、フローセル32を挟んで、光源31の反対側に配置されている。カメラ33は、フローセル32に対向している。カメラ33は、光源31からの光を受けて、フローセル32内のファインバブル含有媒体の画像を一定周期で撮影する。カメラ33は、撮影した画像に関する信号をデータ処理装置5に出力するようになっている。
【0035】
(2)光強度測定部
光強度測定部4は、レーザ回折・散乱式の粒子径分布測定装置により構成されている。すなわち、本実施形態では、固体粒子や液体粒子の粒子径分布を測定するための粒子径分布測定装置を用いて、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブル(気体粒子)の気泡径分布(粒子径分布)が測定される。
【0036】
光強度測定部4には、光源41、集光レンズ42、空間フィルタ43、コリメータレンズ44、フローセル45、集光レンズ46、フォトダイオードアレイ47、側方センサ48及び複数の後方センサ49などが備えられている。フローセル45には、測定対象となるファインバブル含有媒体であって、フローセル32を通過した後のファインバブル含有媒体が供給される。
【0037】
光源41は、例えば、レーザ光源からなり、当該光源41から照射されたレーザ光が、集光レンズ42、空間フィルタ43及びコリメータレンズ44を通過することにより平行光となる。このようにして平行光とされたレーザ光は、フローセル45に照射され、フローセル45内のファインバブル含有媒体に含まれる粒子群(コンタミ及びファインバブルを含む。)で回折又は散乱した後、集光レンズ46を通ってフォトダイオードアレイ47により受光されるようになっている。
【0038】
フォトダイオードアレイ47は、光源41側から見てフローセル45の前方(光源41側とは反対側)に配置されている。これにより、フォトダイオードアレイ47に備えられた複数の受光素子は、それぞれ前方センサ471を構成している。フォトダイオードアレイ47は、フローセル45内のファインバブル含有媒体からの回折・散乱光(回折光又は散乱光)を検出するための検出器を構成している。
【0039】
本実施形態におけるフォトダイオードアレイ47は、互いに異なる半径を有するリング状又は半リング状の検出面が形成された複数(例えば、64個)の前方センサ471を、集光レンズ46の光軸を中心として同心円状に配置することにより構成されたリングディテクタであり、各前方センサ471には、それぞれの位置に応じた回折・散乱角度の光が入射する。したがって、フォトダイオードアレイ47の各前方センサ471の検出信号は、各回折・散乱角度の光の強度を表すことになる。
【0040】
これに対して、側方センサ48は、光源41側から見てフローセル45の側方に配置されている。この例では、フローセル45が薄い中空状の部材により形成されており、その厚み方向Dが光源41から入射するレーザ光の光軸Lと平行になるように配置される。側方センサ48は、フローセル45に対して、例えば、厚み方向Dに直交する方向に並べて配置される。
【0041】
図2では、側方センサ48がフローセル45の上方に配置されているが、これに限らず、フローセル45の下方、右方、左方など、フローセル45の厚み方向Dに直交する面内の任意の位置に配置されていてもよい。これにより、厚み方向Dに対して直交する方向への回折・散乱光を側方センサ48で受光することができる。ただし、側方センサ48は、厚み方向Dに対して90°の方向への回折・散乱光を受光するような構成に限らず、厚み方向Dに対して70°〜110°、より好ましくは80°〜100°の方向への回折・散乱光を受光するような構成であってもよい。
【0042】
複数の後方センサ49は、それぞれ光源41側から見てフローセル45の後方(光源41側)に配置されている。これにより、各後方センサ49は、側方センサ48よりも後方への回折・散乱光を受光することができる。各後方センサ49は、フローセル45に対して異なる角度で配置されることにより、それぞれ異なる角度で入射する回折・散乱光を受光することができる。この例では、2つの後方センサ49が設けられているが、これに限らず、例えば、1つ又は3つ以上の後方センサ49が設けられた構成であってもよい。
【0043】
フォトダイオードアレイ47の各前方センサ471、側方センサ48及び各後方センサ49の検出信号は、A/D変換器(図示せず)によりアナログ信号からデジタル信号に変換された後、データ処理装置5に入力されるようになっている。このデータ処理装置5に入力されるデータが、光強度分布データである。これにより、各センサ471,48,49における受光強度が、各センサ471,48,49の素子番号に対応付けてデータ処理装置5に入力される。
【0044】
ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を測定する際には、画像撮影部3のフローセル32を通過した後のファインバブル含有媒体が、光強度測定部4のフローセル45に供給される。そして、光強度測定部4で得られる光強度分布データに基づいて、データ処理装置5の制御部51が演算を行うことにより、粒子径分布データが生成される。粒子径分布データを生成する際には、下記式(1)の関係を用いることができる。
【0045】
【数1】
ここで、s、q及びAは、下記式(2)〜(4)で表される。
【0046】
【数2】
【0047】
上記sは、光強度分布データ(ベクトル)である。上記sにおける各要素s(i=1,2,・・・,m)は、フォトダイオードアレイ47の各前方センサ471、側方センサ48及び各後方センサ49における検出強度である。
【0048】
上記qは、頻度分布%として表現される粒子径分布データ(ベクトル)である。測定対象となる粒子径範囲(最大粒子径がx、最小粒子径がxn+1)をn分割し、それぞれの粒子径区間を[x,xj+1]とすると、上記qにおける各要素q(j=1,2,・・・,n)は、各粒子径区間[x,xj+1]に対応する粒子量である。
通常は、体積基準が用いられ、下記式(5)を満たすように、すなわち各要素qの合計が100%となるように正規化が行われる。
【0049】
【数3】
【0050】
上記Aは、粒子径分布データqを光強度分布データsに変換する係数行列である。上記Aにおける各要素ai,j(i=1,2,・・・,m、j=1,2,・・・,n)は、各粒子径区間[x,xj+1]に属する単位粒子量の粒子群によって回折及び散乱した光のi番目の素子における検出強度である。
【0051】
上記Aにおける各要素ai,jの値は、屈折率をパラメータの一つとして用いて予め理論的に計算することができる。このとき、ファインバブル(気体粒子)を構成する気体の屈折率を用いて、各要素ai,jの値を算出しておけばよい。各要素ai,jの値は、フラウンホーファ回折理論又はミー散乱理論を用いて算出される。例えば、粒子径が光源41からのレーザ光の波長に比べて十分に大きい場合(例えば10倍以上)には、フラウンホーファ回折理論を用いて各要素ai,jの値を計算することができる。一方、粒子径が光源41からのレーザ光の波長と同程度、又は、それより小さい場合には、ミー散乱理論を用いて各要素ai,jの値を計算することができる。
【0052】
このようにして上記Aにおける各要素ai,jの値を求めれば、上記式(1)に基づいて、下記式(6)により粒子径分布データqを求めることができる。ただし、AはAの転置行列である。
【0053】
【数4】
【0054】
本実施形態では、画像撮影部3のフローセル32を通過した後のファインバブル含有媒体は、光強度測定部4のフローセル45に供給される。そして、光強度測定部4において、光強度分布データが算出される。
【0055】
具体的には、上述の式(2)で得られる光強度分布データsを用いて粒子径分布データqが算出されることにより、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布が測定される。
【0056】
ここで、上記したように、ファインバブル含有媒体には、ファインバブルに加えて、コンタミが含まれている。そのため、光強度測定部4で測定される光強度分布データsには、ファインバブルに対応するデータに加えて、コンタミに対応するデータが含まれる。そして、そのままのデータに基づいて気泡径分布を測定すると、コンタミに関するデータが気泡径分布に含まれるため、ファインバブルの気泡径分布の測定精度が低下してしまう。そこで、本実施形態では、以下の構成及び方法により、ファインバブルの気泡径分布が測定される。
【0057】
3.制御部及び周辺の部材の具体的構成
図3は、気泡径分布測定装置1の制御部51、及び、その周辺の部材の具体的構成を示したブロック図である。
気泡径分布測定装置1には、上記したように、画像撮影部3、光強度測定部4、制御部51及び表示部53が備えられている。
【0058】
制御部51は、CPUがプログラムを実行することにより、ファインバブル識別部511、気泡サイズ判定部512、異物識別部513、異物サイズ判定部514、粒子数カウント部515、比率算出部516、粒子径分布測定部517、気泡径分布測定部518及び表示制御部519などとして機能する。
【0059】
ファインバブル識別部511は、画像撮影部3により撮影された画像に基づいて、すなわち、画像撮影部3のカメラ33からの信号に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の中からファインバブルを識別する。
【0060】
気泡サイズ判定部512は、ファインバブル識別部511により識別されたファインバブルのサイズを判定する。
異物識別部513は、画像撮影部3により撮影された画像に基づいて、すなわち、画像撮影部3のカメラ33からの信号に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブル以外の異物(コンタミ)を識別する。
【0061】
異物サイズ判定部514は、異物識別部513により識別された異物(コンタミ)のサイズを判定する。
粒子数カウント部515は、ファインバブル識別部511の識別結果、及び、異物識別部513の識別結果に基づいて、画像撮影部3のカメラ33で撮影された画像に含まれるファインバブルの数及び異物(コンタミ)の数をカウントする。
【0062】
比率算出部516は、気泡サイズ判定部512の判定結果、異物サイズ判定部514の判定結果、及び、粒子数カウント部515によりカウントされた粒子数に基づいて、粒子数カウント部515によりカウントされたファインバブルの数及び異物(コンタミ)の数の比率を算出する。
粒子径分布測定部517は、光強度測定部4からの信号(光強度分布データ)に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の粒子径分布データを算出する。
【0063】
気泡径分布測定部518は、気泡サイズ判定部512、異物サイズ判定部514、比率算出部516及び粒子径分布測定部517のそれぞれの処理結果に基づいて、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布データを取得する。
表示制御部519は、気泡径分布測定部518で取得される気泡径分布データに基づいて、ファインバブルの気泡径分布を表示部53に表示させる処理を行う。
【0064】
4.制御部による制御動作
図4は、制御部51による処理の一例を示したフローチャートである。
気泡径分布測定装置1における測定では、まず、画像撮影部3のフローセル32にファインバブル含有媒体が供給される。そして、画像撮影部3において、カメラ33によりフローセル32内のファインバブル含有媒体が一定周期で撮影される。すなわち、画像撮影部3では、気泡径分布測定装置1における測定が開始されてから、一定時間が経過するたびに(ステップS101でYes)、フローセル32内のファインバブル含有媒体が撮影される(ステップS102:画像撮影ステップ)。
【0065】
図5は、画像撮影部3(カメラ33)によって撮影された画像を概略的に示した図である。図5の例では、カメラ33により撮影された画像311に、複数のファインバブル312と、ファインバブル312以外の粒子である複数のコンタミ313とが含まれている。
【0066】
ファインバブル312は、球形状である。各ファインバブル312は、そのサイズ(直径)が一様ではなく、種々の寸法(サイズ)で形成されている。
コンタミ313は、球形状でない形状であって、例えば、幅方向(横方向)の寸法が、幅方向と直交する直交方向(縦方向)の寸法よりも大きい扁平形状である。各コンタミ313は、そのサイズが一様ではなく、種々の寸法(サイズ)で形成されている。
このような画像311が、画像撮影部3において撮影される。
【0067】
図4のステップS102の後、制御部51のファインバブル識別部511は、画像撮影部3のカメラ33で撮影された画像311(図5参照)に含まれる粒子の中からファインバブル312を識別する(ステップS103:ファインバブル識別ステップ)。具体的には、ファインバブル識別部511は、画像311に基づいて、ファインバブル312が球形の粒子であることから、ファインバブル312を識別する。このファインバブル312は、上記したように、種々のサイズを有している。
【0068】
そして、気泡サイズ判定部512は、ファインバブル識別部511により識別されたファインバブル312のそれぞれの気泡サイズ(ファインバブルサイズ)を判定する(ステップS104:気泡サイズ判定ステップ)。
【0069】
このようなファインバブルの識別は、ウルトラファインバブル及びマイクロバブルのいずれについても可能であるが、粒子が球形であるか否かを判定するために必要なカメラ33の画素数を考慮すれば、マイクロバブルの識別に特に効果的である。ウルトラファインバブルのような極めて小さい気体粒子の識別を行う場合には、気体粒子にブラウン運動が生じるため、液体試料に対して遠心力を作用させることが好ましい。
【0070】
また、異物識別部513は、画像撮影部3のカメラ33で撮影された画像311に含まれる粒子の中から異物であるコンタミ313を識別する(ステップS105:異物識別ステップ)。具体的には、異物識別部513は、画像311に基づいて、コンタミ313が球形の粒子でないことから、コンタミ313を識別する。このコンタミ313は、上記したように、種々のサイズを有している。
【0071】
そして、異物サイズ判定部514は、異物識別部513により識別されたコンタミ313のそれぞれのサイズ(異物サイズ)を判定する(ステップS106:異物サイズ判定ステップ)。例えば、図5に示すように、各コンタミ313の縦方向の寸法をL1、横方向の寸法をL2とした場合に、下記式(7)によりコンタミ313の径Lを算出することができる。このように、識別されたコンタミ313の複数方向の寸法の平均値を算出することにより、当該コンタミ313の径を判定することができる。
L=(L1+L2)/2 ・・・(7)
【0072】
また、画像撮影部3のフローセル32を通過した後のファインバブル含有媒体は、光強度測定部4のフローセル45に供給される。そして、光強度測定部4において、フローセル45内のファインバブル含有媒体にレーザ光が照射され、回折・散乱光の強度分布を表す光強度分布データが取得される(図4のステップS107:光強度測定ステップ)。
【0073】
そして、粒子径分布測定部517は、光強度測定部4が取得した光強度分布データに基づいて、上記のように、ファインバブル含有媒体に含まれる粒子の粒子径分布データを算出する(ステップS108:粒子径分布測定ステップ)。
【0074】
また、気泡径分布測定部518は、粒子径分布測定部517が算出した粒子径分布データに基づいて、気泡径分布データを算出する。
図6Aは、コンタミ313に関するデータが含まれる気泡径分布データの一例を示した図である。図6Aでは、ステップS108で算出された粒子径分布データを、そのまま気泡径分布データとしたときのデータP1が示されている。
【0075】
データP1では、各粒子径区間における粒子量がグラフで示されている。このデータP1には、コンタミ313に関するデータQ1,Q2,Q3が含まれている。
なお、図6Aにおいて、データQ3は、ある粒子径区間において、ファインバブル312及びコンタミ313のデータが混在する場合におけるコンタミ313のデータを表している。具体的には、気泡径分布測定装置1における測定において、気泡サイズ判定部512が判定するファインバブル312のサイズ(直径)と、異物サイズ判定部514が算出する上記式(7)のコンタミ313の径とが同一の粒子径区間に含まれる場合がある。データQ3は、このような場合におけるコンタミ313のデータを表している。
【0076】
気泡径分布測定部518、このようなコンタミ313に関するデータを、以下のようにして除去して、気泡径分布データを算出する(ステップS109:気泡径分布測定ステップ)。
図6Bは、図6AのデータP1からコンタミ313に関するデータを削除した後の気泡径分布データ(P2)の一例を示した図である。
【0077】
具体的には、気泡径分布測定部518は、粒子径分布測定部517で算出される粒子径分布データから、気泡サイズ判定部512により判定されたファインバブル312のサイズを含む粒子径区間以外の粒子径区間のデータを除去する。この例では、気泡径分布測定部518は、図6Aに示すデータP1から、気泡サイズ判定部512により判定されたファインバブル312のサイズを含む粒子径区間以外の粒子径区間のデータであるデータQ1及びQ2を除去する。
【0078】
また、気泡サイズ判定部512により判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間に、異物サイズ判定部514により判定された異物のサイズが含まれる場合には、粒子数カウント部515は、その粒子径区間におけるファインバブル312の数及びコンタミ313の数をカウントする。また、比率算出部516は、粒子数カウント部515によりカウントされたファインバブル312の数及びコンタミ313の数の比率を算出する。
【0079】
この場合には、気泡径分布測定部518は、粒子径分布データにおいて、異物のサイズが含まれる粒子径区間におけるデータを、比率算出部516が算出した比率に基づいて補正して気泡径分布データとする。具体的には、気泡径分布測定部518は、粒子径分布データにおいて、異物のサイズが含まれる粒子径区間におけるデータのうち、コンタミ313の比率の部分を除去する処理を行う。この例では、気泡径分布測定部518は、図6Aに示すデータP1から、一定の割合を占めるコンタミ313のデータQ3を除去する処理を行い、データP2を算出する。
【0080】
このように、気泡径分布測定部518は、同じ粒子径区間においてファインバブル312及びコンタミ313に関するデータが混在する場合であっても、比率算出部516が算出した比率に基づいて粒子径分布データを補正することにより、図6Bに示すファインバブルのみの気泡径分布データ(P2)を算出する。
この気泡径分布は、表示部53に表示されることによりモニタされる(ステップS110)。
【0081】
上記のようなステップS101〜S110の処理は、気泡径分布測定装置1による測定が終了となるまで(ステップS111でYes)、リアルタイムで実行される。
【0082】
なお、この継続して実施される処理において、上記したように、画像撮影部3は、ファインバブル含有媒体の311を一定周期で撮影する。また、ファインバブル識別部511は、画像撮影部3により一定周期で撮影される各画像311についてファインバブルを順次識別し、異物識別部513は、画像撮影部3により一定周期で撮影される各画像311についてコンタミを順次識別する。
【0083】
このとき、一定周期内(一定時間が経過する前)の処理である場合には(ステップS101でNo)、ステップS102〜S106の処理は実行されずに、ステップS107以降の処理が実行される。また、ステップ109で実施される処理は、画像撮影部3で撮影された最新の画像311に基づいて実行される。すなわち、ステップS102〜S106の処理はある程度の時間がかかるため、気泡径分布測定部518は、ファインバブル識別部511によりファインバブルが識別された画像311に基づくファインバブルの気泡径分布データの取得を、次の画像311についてファインバブルが識別されるまで実施する。画像撮影部3により新しい画像311が撮影されると、気泡径分布測定部518は、その最新の画像311に基づくファインバブルの気泡径分布データの取得を実施する。
【0084】
5.作用効果
(1)本実施形態では、気泡径分布測定装置1において、気泡径分布測定部518は、粒子径分布測定部517により算出される粒子径分布データのうち、気泡サイズ判定部512により判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間以外の粒子径区間のデータ(例えば、図6A及び図6BにおけるデータQ1,Q2)を除去して、ファインバブルの気泡径分布データを取得する(ステップS109:気泡径分布測定ステップ)。
【0085】
そのため、ファインバブル含有媒体にコンタミ313が含まれる場合であっても、気泡径分布データにおいて、コンタミ313に関するデータを除去することができる。
その結果、ファインバブル含有媒体のみを用いて、そのファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を精度よく測定できる。
【0086】
(2)また、本実施形態では、気泡径分布測定装置1において、気泡サイズ判定部512により判定されたファインバブルのサイズを含む粒子径区間に、異物サイズ判定部514により判定された異物のサイズが含まれる場合には、気泡径分布測定部518は、粒子径分布データにおいて、異物のサイズが含まれる粒子径区間におけるデータを、比率算出部516が算出した比率に基づいて補正して気泡径分布データとする。具体的には、気泡径分布測定部518は、粒子径分布データにおいて、コンタミ313のサイズが含まれる粒子径区間のデータのうち、コンタミ313の比率の部分(例えば、図6A及び図6BにおけるデータQ3)を除去する処理を行う。
【0087】
すなわち、気泡径分布測定装置1では、気泡径分布データにおいて、ファインバブル312のサイズを含む粒子径区間にコンタミ313のサイズが含まれる場合であっても、その区間におけるデータを、ファインバブルの数及び異物の数の比率に基づいて、補正できる。
そのため、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布を一層精度よく測定できる。
【0088】
(3)また、本実施形態では、気泡径分布測定装置1において、画像撮影部3は、ファインバブル含有媒体の311を一定周期で撮影する(ステップS102)。また、ファインバブル識別部511は、画像撮影部3により一定周期で撮影される各画像311についてファインバブルを順次識別する(ステップS103:ファインバブル識別ステップ)。そして、気泡径分布測定部518は、ファインバブル識別部511によりファインバブルが識別された画像311に基づくファインバブルの気泡径分布データの取得を、次の画像311についてファインバブルが識別されるまで実施する(ステップS109:気泡径分布測定ステップ)。画像撮影部3により新しい画像311が撮影されると、気泡径分布測定部518は、その最新の画像311に基づくファインバブルの気泡径分布データの取得を実施する。
【0089】
そのため、気泡径分布測定部518によるファインバブルの気泡径分布データの取得を連続的に実施しつつ、画像撮影部3によりファインバブル含有媒体の画像が撮影された場合には、最新の画像からファインバブルを識別し、その最新の識別結果に基づいて、気泡径分布測定部518によりファインバブルの気泡径分布データを取得できる。
その結果、ファインバブル含有媒体に含まれるファインバブルの気泡径分布をリアルタイムで測定できる。
【0090】
6.変形例
上記の実施形態では、気泡径分布測定装置1では、ファインバブル含有媒体として、自然界で発生するファインバブル含有体が用いられるとして説明した。しかし、気泡径分布測定装置1にファインバブル発生装置が備えられ、このファインバブル発生装置によって、原液に対してファインバブルが含有されることによりファインバブル含有体が生成されてもよい。この場合、気泡径分布測定部518が取得する気泡径分布データに基づいて、ファインバブル発生装置がフィードバック制御されることが好ましい。
【符号の説明】
【0091】
1 気泡径分布測定装置
3 画像撮影部
4 光強度測定部
51 制御部
511 ファインバブル識別部
512 気泡サイズ判定部
513 異物識別部
514 異物サイズ判定部
515 粒子数カウント部
516 比率算出部
517 粒子径分布測定部
518 気泡径分布測定部
519 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B