(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メインノズル及びサブノズルからのエア噴射により、緯糸飛走経路を経て緯入れされる緯糸の飛走状態を検知するエアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置であって、
前記緯糸の緯糸測長貯留装置からの解舒を検出するバルーンセンサと、
前記緯糸飛走経路における織幅の中央よりも前記メインノズルとは反対側に配置された緯糸センサと、
前記緯糸センサの緯糸検出信号に基づく緯糸到達タイミングと前記バルーンセンサの緯糸解舒信号に基づく緯糸解舒タイミングとを比較する比較処理部と、
前記比較処理部により求められたタイミング差が前記サブノズルの噴射圧に対して変化する変化領域と前記タイミング差の変化が安定する安定領域との境界となる第1境界圧力を含む前記タイミング差と前記サブノズルの噴射圧との関係を記憶する第1記憶部と、
前記織幅内に設けられるとともに前記緯糸飛走経路における前記織幅の中央よりも前記メインノズル側に配置された織幅内緯糸センサと、
前記サブノズルの噴射圧毎に、毎回の緯入れから得られる前記織幅内緯糸センサの緯糸検出信号に基づく出力電圧を積分して得られた積分電圧を、複数回の緯入れ分だけ平均処理する積分平均処理部と、
前記積分平均処理部により求められた平均積分値が前記サブノズルの噴射圧に対して変化する変化領域と前記平均積分値の変化が安定する安定領域との境界となる第2境界圧力を含む前記平均積分値と前記サブノズルの噴射圧との関係を記憶する第2記憶部と、
前記第1記憶部及び前記第2記憶部に記憶された各々の関係を示すグラフを並列表示する表示部と、を備えたことを特徴とするエアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置。
前記表示部は、前記第1境界圧力と前記第2境界圧力との間の圧力のうち、前記緯糸の種類に応じて推奨される圧力を表示するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置。
前記表示部は、前記第1境界圧力と前記第2境界圧力との間の圧力のうち、織機の回転数に応じて推奨される圧力を表示するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のエアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
緯糸測長貯留装置に貯留された緯糸がメインノズル及びサブノズルからのエア噴射により筬内通路(緯糸飛走経路)を飛走する状態で緯入れされる際、緯糸の先端が緯入れ完了の所定位置に到達する途中の状態では、その後寄りの部分が波打つ状態で飛走する。そして、緯入れ完了近くの時点で、波打つ状態がなくなって伸びきり状態で緯入れされる。
【0007】
緯糸の緯入れ時におけるサブノズルの最適な噴射圧を決定する場合、緯糸先端が緯入れ範囲の終端に到達する時期である緯糸先端到達時期TWと、緯糸測長貯留装置における緯糸解舒終了時期TBWとの差(TW−TBW)の変化点がひとつの目安となる。また、特許文献2では、積分法により求めた積分値とサブノズルの圧力との関係を用いて、緯入れ時におけるサブノズルの最適な噴射圧を求めている。
【0008】
特許文献2の積分法により求められた積分値の変化点から求められる最適な噴射圧は、緯糸先端到達時期TWと緯糸解舒終了時期TBWとの差の変化点から求められる最適な噴射圧と概ね一致している。しかし、このようにして得られる最適な噴射圧は、これ以下に噴射圧を低下させた場合には緯糸の緩みが発生する、という噴射圧の下限値を示しているに過ぎない。したがって、このように求められたサブノズルの噴射圧のみによっては、作業者は、この下限値に対してどの程度の余裕度を持って噴射圧を設定すればよいかを判断し辛い。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、サブノズルの最適噴射圧の設定を容易に行うことができるエアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するエアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置は、メインノズル及びサブノズルからのエア噴射により、緯糸飛走経路を経て緯入れされる緯糸の飛走状態を検知するエアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置であって、前記緯糸の緯糸測長貯留装置からの解舒を検出するバルーンセンサと、前記緯糸飛走経路における織幅の中央よりも前記メインノズルとは反対側に配置された緯糸センサと、前記緯糸センサの緯糸検出信号に基づく緯糸到達タイミングと前記バルーンセンサの緯糸解舒信号に基づく緯糸解舒タイミングとを比較する比較処理部と、前記比較処理部により求められたタイミング差が前記サブノズルの噴射圧に対して変化する変化領域と前記タイミング差の変化が安定する安定領域との境界となる第1境界圧力を含む前記タイミング差と前記サブノズルの噴射圧との関係を記憶する第1記憶部と、前記織幅内に設けられるとともに前記緯糸飛走経路における前記織幅の中央よりも前記メインノズル側に配置された織幅内緯糸センサと、前記サブノズルの噴射圧毎に、毎回の緯入れから得られる前記織幅内緯糸センサの緯糸検出信号に基づく出力電圧を積分して得られた積分電圧を、複数回の緯入れ分だけ平均処理する積分平均処理部と、前記積分平均処理部により求められた平均積分値が前記サブノズルの噴射圧に対して変化する変化領域と前記平均積分値の変化が安定する安定領域との境界となる第2境界圧力を含む前記平均積分値と前記サブノズルの噴射圧との関係を記憶する第2記憶部と、前記第1記憶部及び前記第2記憶部に記憶された各々の関係を示すグラフを並列表示する表示部と、を備えた。
【0011】
サブノズルの噴射圧を、第1境界圧力よりも低くすると、緯糸が伸びきらない状態で緯糸飛走経路を飛走してしまう可能性が高くなるため、この第1境界圧力は、緯糸の緯入れ時におけるサブノズルの最適な噴射圧を決定する際の一つの目安(下限値)となる。
【0012】
一方、第1境界圧力よりもサブノズルの噴射圧を高くしていくと、平均積分値の変化量が安定する安定領域が存在することが分かった。これによれば、サブノズルの噴射圧を、第2境界圧力よりも高くしても、緯糸の伸びきりタイミングはほとんど変化しないことが分かった。よって、サブノズルの噴射圧を、第2境界圧力よりも高くしても、緯糸飛走経路において緯糸の伸びきりタイミングは早くならず、噴射流体消費量が無駄に増大してしまう。
【0013】
積分平均処理部により求められた平均積分値は、緯糸飛走経路における織幅の中央よりもメインノズル側に配置された織幅内緯糸センサで糸振れを検出していることになるので、サブノズルの噴射圧の影響を受け易い。一方、比較処理部により求められたタイミング差は、緯糸飛走経路における織幅の中央よりも前記メインノズルとは反対側に配置された緯糸センサで緯糸到達タイミングを検出していることになる。したがって、タイミング差には緯糸飛走経路を飛走する緯糸の姿勢に差が生じることによる緯糸到達タイミングのばらつきが含まれるので、サブノズルの噴射圧の影響を受ける度合いが、平均積分値よりも小さくなる。このため、サブノズルの噴射圧を低下させたときの影響はタイミング差よりも平均積分値に先に現れるから、タイミング差の変化が始まる第1境界圧力は、平均積分値の変化が始まる第2境界圧力よりも低くなる。
【0014】
表示部によって並列表示されたグラフにおいて、第1境界圧力と第2境界圧力との間が、緯糸を安定的にかつ経済的に飛走させるために好ましいサブノズルの噴射圧範囲となる。したがって、表示部によって並列表示されたグラフによって、このサブノズルの噴射圧範囲内において、緯入れの難しさ等に応じサブノズルの噴射圧に適宜の余裕度を設定することができ、サブノズルの噴射圧の最適設定を容易に行うことができる。
【0015】
上記エアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置において、前記緯糸センサは、前記織幅内に設けられているとよい。これによれば、緯糸センサが織幅外に配置されている場合に比べて、緯糸センサの緯糸検出信号に基づく緯糸到達タイミングとバルーンセンサの緯糸解舒信号に基づく緯糸解舒タイミングとのタイミング差のサブノズルの噴射圧に対する第1境界圧力がより明確に現れるため、サブノズルの噴射圧の最適設定をより容易に行うことができる。
【0016】
上記エアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置において、前記表示部は、前記第1境界圧力と前記第2境界圧力との間の圧力のうち、前記緯糸の種類に応じて推奨される圧力を表示するように構成されているとよい。これによれば、緯糸の種類に応じて、サブノズルの噴射圧を適切に設定することができる。
【0017】
上記エアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置において、前記表示部は、前記第1境界圧力と前記第2境界圧力との間の圧力のうち、織機の回転数に応じて推奨される圧力を表示するように構成されているとよい。これによれば、織機の回転数に応じて、サブノズルの噴射圧を適切に設定することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、サブノズルの最適噴射圧の設定を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、エアジェット織機における緯糸飛走状態検知装置を具体化した一実施形態を
図1〜
図6にしたがって説明する。なお、以下の説明において、緯糸を経糸開口内に緯入れして緯糸を搬送する緯入れ方向に対し、緯入れ方向と反対側を上流、緯入れ方向側を下流とする。
【0021】
図1に示すように、緯入れ装置10は、緯入れノズル11、給糸部12、緯糸測長貯留装置13、筬14、複数のサブノズル15、及び制御装置16を備える。制御装置16には、表示機能及び入力機能を有する表示装置16aが付属されている。
【0022】
給糸部12は、緯入れノズル11の上流側に配設されている。給糸部12の緯糸Yは、緯糸測長貯留装置13の巻付けアーム(図示せず)の回転により引き出され、貯留ドラム17に巻き付けられた状態で貯留される。
【0023】
緯糸測長貯留装置13には、緯糸係止ピン18、及び緯糸Yの緯糸測長貯留装置13からの解舒を検出するバルーンセンサ19が設けられている。緯糸係止ピン18及びバルーンセンサ19は、貯留ドラム17の周囲に配設されている。バルーンセンサ19は、緯糸係止ピン18に対して緯糸Yの解舒方向側に並べて配置されている。緯糸係止ピン18は、制御装置16と電気的に接続されている。緯糸係止ピン18は、制御装置16に予め設定された織機回転角度において、貯留ドラム17に貯留された緯糸Yを解舒する。緯糸係止ピン18による緯糸Yの解舒が行われるタイミングは、緯入れ開始タイミングである。
【0024】
バルーンセンサ19は、制御装置16と電気的に接続されている。バルーンセンサ19は、緯入れ中に貯留ドラム17から解舒される緯糸Yを検出し、制御装置16に緯糸解舒信号を発信する。制御装置16は、予め設定された回数(本実施形態では3回)の緯糸解舒信号を受信すると、緯糸係止ピン18を作動する。緯糸係止ピン18は、貯留ドラム17から解舒される緯糸Yを係止し、緯入れを終了させる。
【0025】
なお、緯糸係止ピン18が緯糸Yを係止するための作動タイミングは、織幅TLに相当する長さの緯糸Yを貯留ドラム17に貯留するために要する巻き付け回数に応じて設定されている。本実施形態では、貯留ドラム17に3巻された緯糸Yの長さが織幅TLに相当するため、制御装置16は、バルーンセンサ19の緯糸解舒信号を3回受信すると、緯糸Yを係止する動作信号が緯糸係止ピン18に発信されるように設定されている。バルーンセンサ19の緯糸検出信号は、貯留ドラム17からの緯糸Yの解舒信号であり、制御装置16において、エンコーダ20から得られる織機回転角度信号に基づき緯糸解舒タイミングとして認識される。
【0026】
緯入れノズル11は、貯留ドラム17の緯糸Yを引き出すタンデムノズル21と、緯糸Yを筬14の緯糸飛走経路14aに緯入れするメインノズル22と、を有する。タンデムノズル21の上流側には、緯入れ終了前に、飛走する緯糸Yを制動するブレーキ23が設けられている。
【0027】
メインノズル22、サブノズル15、及び筬14は、スレイ(図示せず)上に配設され、エアジェット織機の前後方向に往復揺動される。また、タンデムノズル21、ブレーキ23、緯糸測長貯留装置13、及び給糸部12は、エアジェット織機のフレーム(図示せず)又は床面(図示せず)に取り付けられたブラケット(図示せず)等に固定されている。
【0028】
緯糸飛走経路14aの下流側には、エンドセンサ24が配設されている。エンドセンサ24は織幅TLよりも下流側に配置されている。よって、エンドセンサ24は、織幅TLの外に配置されている。そして、エンドセンサ24は、到達した緯糸Yを検出する。エンドセンサ24は、制御装置16と電気的に接続されている。制御装置16は、エンドセンサ24の緯糸検出信号の有無により緯入れ不良の発生を検出する。また、エンドセンサ24の緯糸検出信号は、緯糸Yの到達信号であり、制御装置16において、エンコーダ20から得られる織機回転角度信号に基づき緯入れ終了タイミングIEとして認識される。
【0029】
エンドセンサ24よりも上流側の織幅TL内の緯糸飛走経路14aには、第1織幅内緯糸センサ25が配設されている。第1織幅内緯糸センサ25は、緯糸飛走経路14aにおける織幅TLの中央よりもメインノズル22とは反対側に配置された緯糸センサである。第1織幅内緯糸センサ25は、制御装置16と電気的に接続されている。第1織幅内緯糸センサ25による緯糸検出信号は、制御装置16において、エンコーダ20から得られる織機回転角度信号に基づき、緯入れされた緯糸Yの先端が第1織幅内緯糸センサ25の設置位置に到達した緯糸中間到達タイミングISとして認識される。
【0030】
第1織幅内緯糸センサ25は、投光用光ファイバー及び受光用光ファイバーを有する。そして、エアジェット織機の駆動時、第1織幅内緯糸センサ25の投光用光ファイバーから緯糸飛走経路14aに向けて光が出射され、筬14及び緯糸Yで反射した光が受光用光ファイバーに受光される。受光用光ファイバーで受光された光は、フィラーアンプ(図示せず)に入力される。フィラーアンプは、入力された光を受光部としてのフォトダイオードで受光して電気信号に変換し、変換された電気信号を増幅した後、制御装置16へ出力する。
【0031】
メインノズル22は、配管22aを介してメインバルブ22vに接続されている。メインバルブ22vは、配管22bを介してメインエアタンク26に接続されている。タンデムノズル21は、配管21aを介してタンデムバルブ21vに接続されている。タンデムバルブ21vは、配管21bを介してメインバルブ22vと共通のメインエアタンク26に接続されている。
【0032】
メインエアタンク26は、メイン圧力計27、メインレギュレータ28、元圧力計29、及びフィルタ30を介して、織布工場に設置された共通のエアコンプレッサ31に接続されている。メインエアタンク26では、エアコンプレッサ31から供給され、メインレギュレータ28により設定圧力に調整された圧縮エアが貯蔵される。また、メインエアタンク26に供給される圧縮エアの圧力は、メイン圧力計27により常時検出されている。
【0033】
サブノズル15は、1例として6群に分けられ、各群は、4本のサブノズル15により構成されている。各群に対応して6個のサブバルブ32が配設され、各群のサブノズル15は、それぞれ配管33を介して各サブバルブ32に接続されている。各サブバルブ32は、共通のサブエアタンク34に接続されている。
【0034】
サブエアタンク34は、サブ圧力計35を介してサブレギュレータ36に接続されている。また、サブレギュレータ36は、配管36aにより、メイン圧力計27とメインレギュレータ28とを接続している配管28aに接続されている。サブエアタンク34では、エアコンプレッサ31から供給され、サブレギュレータ36により設定圧力に調整された圧縮エアが貯蔵される。また、サブエアタンク34に供給される圧縮エアの圧力は、サブ圧力計35により常時検出されている。
【0035】
メインバルブ22v、タンデムバルブ21v、サブバルブ32、元圧力計29、メイン圧力計27、サブ圧力計35、及びブレーキ23は、制御装置16と電気的に接続されている。制御装置16には、メインバルブ22v、タンデムバルブ21v、サブバルブ32、及びブレーキ23を作動するための作動タイミングや作動期間が予め設定されている。また、制御装置16は、元圧力計29、メイン圧力計27、及びサブ圧力計35の検出信号を受信する。
【0036】
メインバルブ22v及びタンデムバルブ21vには、緯糸係止ピン18が作動する緯入れ開始タイミングよりも早いタイミングで制御装置16から作動指令信号が出力され、メインノズル22及びタンデムノズル21から圧縮エアが噴射される。ブレーキ23には、緯糸係止ピン18が作動して貯留ドラム17の緯糸Yを係止する緯入れ終了タイミングIEよりも早い時期に制御装置16から作動指令信号が出力される。ブレーキ23は、高速で飛走する緯糸Yを制動して緯糸Yの飛走速度を低下させ、緯入れ終了タイミングIEにおける緯糸Yの衝撃を緩和する。
【0037】
図2(a)は、織幅TLに対するエンドセンサ24及び第1織幅内緯糸センサ25の配置位置を示している。
図2(b)は、バルーンセンサ19の緯糸解舒タイミングB1、B2、B3、第1織幅内緯糸センサ25の緯糸中間到達タイミングIS、エンドセンサ24の緯入れ終了タイミングIE、及びブレーキ23のブレーキ開始タイミングBTを示している。
【0038】
図2(a)において、位置L、2L、3Lは、貯留ドラム17の1巻分、2巻分、3巻分の緯糸貯留長さに相当する緯糸Yの先端位置を示す。緯糸Yが緩みなく飛走した場合、バルーンセンサ19における1回目、2回目、3回目の緯糸解舒信号発生時の緯糸解舒タイミングB1、B2、B3では、緯糸Yの先端はそれぞれ、位置L、2L、3Lに位置する。よって、以下の説明では、位置L、2L、3Lを理想緯糸先端位置と称する。
【0039】
図2(b)において、緯糸解舒タイミングB1、B2、B3はそれぞれ、バルーンセンサ19における1回目、2回目、3回目の緯糸解舒信号に基づく織機回転角度を示している。なお、織機回転角度は、緯糸解舒信号発生時におけるエンコーダ20の回転角度信号により把握することができる。以下、各種タイミングにおける織機回転角度は、同様にエンコーダ20の回転角度信号により把握される。
【0040】
緯入れ終了タイミングIEは、エンドセンサ24による緯糸検出信号発生時の織機回転角度を示している。ブレーキ開始タイミングBTは、緯入れ終了タイミングIEよりも前に緯糸Yの制動が開示されるように、制御装置16に予め設定されている織機回転角度である。
【0041】
第1織幅内緯糸センサ25は、緯入れ中、ブレーキ23が作動を開始するブレーキ開始タイミングBTに対応する緯糸Yの先端位置BL、すなわち、ブレーキ開始タイミングBT及び緯糸Yの速度から推定される織幅TL内における緯糸Yの先端位置BLよりも緯入れ方向上流側に設置されている。
【0042】
本実施形態では、第1織幅内緯糸センサ25は、織幅TLの織端から貯留ドラム17の2巻分の緯糸貯留長さに対応する理想緯糸先端位置2Lに設置されている。緯糸Yが緩みなく飛走した場合には、緯糸Yは緯糸解舒タイミングB2に理想緯糸先端位置2Lに到達するので、第1織幅内緯糸センサ25により検出される緯糸中間到達タイミングISは、緯糸解舒タイミングB2と一致するはずである。しかしながら、サブノズル15の噴射圧が低く、サブノズル15の搬送性能が緯入れノズル11の緯糸解舒性能よりも弱い場合、飛走中の緯糸Yに緩みが生じるため、緯糸中間到達タイミングISは緯糸解舒タイミングB2とのタイミング差Δだけ遅れる。
【0043】
制御装置16は、緯糸中間到達タイミングISと緯糸解舒タイミングB2とを比較してタイミング差Δを求める。よって、本実施形態において、制御装置16は、第1織幅内緯糸センサ25の緯糸検出信号に基づく緯糸到達タイミングである緯糸中間到達タイミングISとバルーンセンサ19の緯糸解舒信号に基づく緯糸解舒タイミングB2とを比較する比較処理部として機能している。
【0044】
この緯糸中間到達タイミングISと緯糸解舒タイミングB2とのタイミング差Δの大きさを見ることで緯入れ中の緯糸Yの飛走状態を把握することができる。2回目の緯糸解舒タイミングB2は、ブレーキ23のブレーキ開始タイミングBTの直前の緯糸解舒タイミングである。したがって、第1織幅内緯糸センサ25は、ブレーキ23の制動作用の影響を受けていない緯糸Yの飛走状態を検出することができる。
【0045】
制御装置16には、各種の織物条件及び製織条件が登録され、記憶されている。織物条件としては、例えば、緯糸Yに使用する糸の材質、番手、等の緯糸種類、緯糸密度、経糸に使用する糸の材質、番手等の経糸種類、経糸密度、織幅、織物組織等が含まれている。製織条件としては、例えば、織機の回転数、メインエアタンク26及びサブエアタンク34の圧縮エアの圧力、メインバルブ22v及びタンデムバルブ21vの開度、緯入れ開始タイミング、目標緯入れ終了タイミング等が含まれる。
【0046】
次に、緯糸中間到達タイミングISと緯糸解舒タイミングB2とのタイミング差Δに基づく緯糸飛走状態の監視を利用した緯入れ装置10の制御の1例として、サブノズル15の噴射圧を最適な圧力に設定する方法を説明する。
【0047】
図3に示す第1曲線AD1は、サブノズル15の噴射圧と、緯糸中間到達タイミングISと緯糸解舒タイミングB2とのタイミング差Δとの関係を示す曲線である。第1曲線AD1は、緯入れノズル11の噴射圧を調整して緯入れ終了タイミングIEを一定に保持した状態で、サブノズル15の噴射圧を高低に種々変更したときの、緯糸中間到達タイミングISと緯糸解舒タイミングB2とのタイミング差Δをプロットして得たものである。
【0048】
第1曲線AD1が示すように、制御装置16により求められたタイミング差Δがサブノズル15の噴射圧に対して変化する変化領域とタイミング差Δの変化が安定する安定領域との境界となる第1境界圧力P1を示す第1変化点X1が存在することが分かった。なお、「変化領域」とは、「安定領域」と比較して、サブノズル15の噴射圧に対するタイミング差Δ(バイアス角度)の変化量が大きくなる領域である。この第1境界圧力P1は、緯糸Yの緯入れ時におけるサブノズル15の最適な噴射圧を決定する際の一つの目安(下限値)となる。
【0049】
第1曲線AD1は、制御装置16に記憶される。よって、本実施形態において、制御装置16は、第1境界圧力P1を含むタイミング差Δとサブノズル15の噴射圧との関係を記憶する第1記憶部としても機能する。
【0050】
図1に示すように、織幅TL内の緯糸飛走経路14aにおいて、織幅TLの中央よりもメインノズル22側には、第2織幅内緯糸センサ45が配置されている。第2織幅内緯糸センサ45は、制御装置16と電気的に接続されている。また、ハードウエアの構成として、第2織幅内緯糸センサ45と制御装置16との間には、フィラーアンプ46、バンドパスフィルタ47、全波整流回路48、平均化回路49、積分回路50、A/D変換器51が、第2織幅内緯糸センサ45側からこの順に設けられている。
【0051】
第2織幅内緯糸センサ45は、投光用光ファイバー及び受光用光ファイバーを有する。そして、エアジェット織機の駆動時、第2織幅内緯糸センサ45の投光用光ファイバーから緯糸飛走経路14aに向けて光が出射され、筬14及び緯糸Yで反射した光が受光用光ファイバーに受光される。受光用光ファイバーで受光された光は、フィラーアンプ46に入力される。フィラーアンプ46は、入力された光を受光部としてのフォトダイオードで受光して電気信号に変換し、変換された電気信号を増幅した後、バンドパスフィルタ47へ出力する。
【0052】
図4において波形W1で示すように、第2織幅内緯糸センサ45で検出される信号電圧の値が高いほど緯糸Yの糸振れが大きい状態を示している。制御装置16は、毎回の緯入れ毎に、バンドパスフィルタ47、全波整流回路48、平均化回路49通過後の緯糸検出信号に基づく出力電圧を積分回路50にてリアルタイムで積分し、積分期間である緯糸通過開始から緯入れ終了までの間の積分電圧を記憶する。
【0053】
続いて、制御装置16は、サブノズル15の噴射圧毎に、複数回(例えば100回)の緯入れから得られた積分電圧を、平均処理して平均積分値を求める。よって、本実施形態において、制御装置16は、サブノズル15の噴射圧毎に、毎回の緯入れから得られる第2織幅内緯糸センサ45の緯糸検出信号に基づく出力電圧を積分して得られた積分電圧を平均処理する積分平均処理部としても機能する。続いて、制御装置16は、サブノズル15の噴射圧と平均電圧、即ち平均積分値との関係を求める。
【0054】
図5において第2曲線AD2に示すように、サブノズル15の噴射圧と平均積分値(平均電圧)との関係が得られる。ここで、制御装置16により求められた平均積分値がサブノズル15の噴射圧に対して変化する変化領域と平均積分値の変化が安定する安定領域との境界となる第2境界圧力P2を示す第2変化点X2が存在することが分かった。なお、「変化領域」とは、「安定領域」と比較して、サブノズル15の噴射圧に対する平均積分値の変化量が大きくなる領域である。そして、サブノズル15の噴射圧を、第2境界圧力P2よりも高くしても、緯糸Yの伸びきりタイミングはほとんど変化しないことが分かった。
【0055】
第2曲線AD2は、制御装置16に記憶される。よって、本実施形態において、制御装置16は、第2境界圧力P2を含む平均積分値とサブノズル15の噴射圧との関係を記憶する第2記憶部としても機能する。
【0056】
図6に示すように、制御装置16は、第1曲線AD1及び第2曲線AD2を表示装置16aに並列表示する。よって、本実施形態において、表示装置16aは、グラフである第1曲線AD1及び第2曲線AD2を並列表示する表示部である。
【0057】
また、表示装置16aは、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間の圧力のうち、緯糸Yの種類に応じて推奨される圧力を表示するように構成されている。さらに、表示装置16aは、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間の圧力のうち、織機の回転数に応じて推奨される圧力を指し示すように構成されている。
【0058】
制御装置16は、緯糸Yの種類に応じて推奨される圧力を、表示装置16aが「▲」で指し示すように表示装置16aを制御する。例えば、緯糸Yが比較的細い場合では、制御装置16は、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間の圧力のうち、低い圧力Paを指し示すように表示装置16aを制御する。また、例えば、緯糸Yが比較的太い場合では、制御装置16は、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間の圧力のうち、中間の圧力Pbを指し示すように表示装置16aを制御する。さらに、例えば、緯糸Yが撚糸の場合では、制御装置16は、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間の圧力のうち、高い圧力Pcを指し示すように表示装置16aを制御する。
【0059】
また、制御装置16は、織機の回転数に応じて推奨される圧力を、表示装置16aが「▲」で指し示すように表示装置16aを制御する。例えば、織機の回転数が小さい場合では、制御装置16は、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間の圧力のうち、低い圧力Paを指し示すように表示装置16aを制御する。また、例えば、織機の回転数が大きい場合では、制御装置16は、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間の圧力のうち、高い圧力Pcを指し示すように表示装置16aを制御する。
【0060】
次に、本実施形態の作用について説明する。
サブノズル15の噴射圧を、第1境界圧力P1よりも低くすると、緯糸Yが伸びきらない状態で緯糸飛走経路14aを飛走してしまう可能性が高くなる。このため、この第1境界圧力P1は、緯糸Yの緯入れ時におけるサブノズル15の最適な噴射圧を決定する際の一つの目安(下限値)となる。一方、サブノズル15の噴射圧を、第2境界圧力P2よりも高くしても、緯糸飛走経路14aにおいて緯糸Yが伸びきるタイミングがこれ以上早くなることはないため、噴射流体消費量が無駄に増大してしまう。
【0061】
制御装置16により求められた平均積分値は、緯糸飛走経路14aにおける織幅TLの中央よりもメインノズル22側に配置された第2織幅内緯糸センサ45で糸振れを検出していることになるので、サブノズル15の噴射圧の影響を受け易い。一方、制御装置16により求められたタイミング差Δは、緯糸飛走経路14aにおける織幅TLの中央よりもメインノズル22とは反対側に配置された第1織幅内緯糸センサ25で緯糸中間到達タイミングISを検出していることになる。したがって、タイミング差Δには、緯糸飛走経路14aを飛走する緯糸Yの姿勢に差が生じることによる緯糸中間到達タイミングISのばらつきが含まれるので、サブノズル15の噴射圧の影響を受ける度合いが、平均積分値よりも小さくなる。このため、サブノズル15の噴射圧を低下させたときの影響はタイミング差Δよりも平均積分値に先に現れるから、第1境界圧力P1は、第2境界圧力P2よりも低くなる。
【0062】
表示装置16aによって並列表示されたグラフである第1曲線AD1及び第2曲線AD2において、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間が、緯糸Yを安定的にかつ経済的に飛走させるために好ましいサブノズル15の噴射圧範囲となる。したがって、作業者は、表示装置16aによって並列表示された第1曲線AD1及び第2曲線AD2を確認して、このサブノズル15の噴射圧範囲内において、緯入れの難しさ等に応じサブノズル15の噴射圧に適宜の余裕度を設定することができ、サブノズル15の噴射圧の最適設定を容易に行うことができる。
【0063】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)制御装置16は、第1境界圧力P1を含むタイミング差Δとサブノズル15の噴射圧との関係を示す第1曲線AD1を記憶する。また、制御装置16は、第2境界圧力P2を含む平均積分値とサブノズル15の噴射圧との関係を示す第2曲線AD2を記憶する。そして、表示装置16aは、制御装置16に記憶された第1曲線AD1及び第2曲線AD2を並列表示する。表示装置16aによって並列表示された第1曲線AD1及び第2曲線AD2において、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間が、緯糸Yを安定的にかつ経済的に飛走させるために好ましいサブノズル15の噴射圧範囲となる。したがって、作業者は、表示装置16aによって並列表示された第1曲線AD1及び第2曲線AD2によって、このサブノズル15の噴射圧範囲において、緯入れの難しさ等に応じサブノズル15の噴射圧に適宜の余裕度を設定することができ、サブノズル15の噴射圧の最適設定を容易に行うことができる。
【0064】
(2)第1織幅内緯糸センサ25は、織幅TL内に設けられている。これによれば、第1織幅内緯糸センサ25の緯糸検出信号に基づく緯糸中間到達タイミングISとバルーンセンサ19の緯糸解舒信号に基づく緯糸解舒タイミングB2とのタイミング差Δのサブノズル15の噴射圧に対する第1境界圧力P1がより明確に現れるため、サブノズル15の噴射圧の最適設定をより容易に行うことができる。
【0065】
(3)表示装置16aは、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間の圧力のうち、緯糸Yの種類に応じて推奨される圧力を表示するように構成されている。これによれば、緯糸Yの種類に応じて、サブノズル15の噴射圧を適切に設定することができる。
【0066】
(4)表示装置16aは、第1境界圧力P1と第2境界圧力P2との間の圧力のうち、織機の回転数に応じて推奨される圧力を表示するように構成されている。これによれば、織機の回転数に応じて、サブノズル15の噴射圧を適切に設定することができる。
【0067】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、第1織幅内緯糸センサ25を削除してもよい。そして、制御装置16は、エンドセンサ24の緯糸検出信号に基づく緯糸到達タイミングとバルーンセンサ19の緯糸解舒信号に基づく緯糸解舒タイミングとを比較し、タイミング差を求めるようにしてもよい。エンドセンサ24は、緯糸飛走経路14aにおける織幅TLの中央よりもメインノズル22とは反対側に配置された緯糸センサである。
【0068】
○ 実施形態において、表示装置16aは、緯糸Yの種類に応じて推奨される圧力を、「▲」で指し示すように構成されていたが、これに限らず、例えば、表示装置16aは、緯糸Yの種類に応じて推奨される圧力を、数値で表示するように構成されていてもよい。
【0069】
○ 実施形態において、表示装置16aは、織機の回転数に応じて推奨される圧力を、「▲」で指し示すように構成されていたが、これに限らず、例えば、表示装置16aは、織機の回転数に応じて推奨される圧力を、数値で表示するように構成されていてもよい。
【0070】
○ 実施形態において、表示装置16aが、緯糸Yの種類に応じて推奨される圧力を表示するように構成されていなくてもよい。
○ 実施形態において、表示装置16aが、織機の回転数に応じて推奨される圧力を表示するように構成されていなくてもよい。