(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558401
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】玄関部構造
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
E04H1/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-153382(P2017-153382)
(22)【出願日】2017年8月8日
(65)【公開番号】特開2019-31828(P2019-31828A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】三木 健史
(72)【発明者】
【氏名】向谷 唯以
(72)【発明者】
【氏名】松本 愛子
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−255293(JP,A)
【文献】
特開2013−002261(JP,A)
【文献】
特開2005−336869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02 − 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の住戸に設けられる玄関部構造であって、
玄関土間及び当該玄関土間よりも床が高く、少なくとも1以上の居室へアクセス可能な玄関ホールを有する前記玄関と、前記玄関土間及び前記玄関ホールに隣接して配置され少なくとも前記玄関土間から出入り可能な出入口を有するシューズクロークと、前記玄関ホールと前記シューズクロークとの境界に設けられる間仕切家具と、を備え、
前記間仕切家具は、前記玄関ホール側及び前記シューズクローク側の両側から収納物を出し入れ可能な下駄箱であり、
前記シューズクロークは、当該シューズクロークから前記玄関を通過せずに、当該玄関からアクセス可能な居室とは異なる他の居室へアクセス可能であり、
前記シューズクロークと前記他の居室との間には、前記シューズクローク及び前記他の居室から行き来可能なウォークスルークローゼットを配置することを特徴とする玄関部構造。
【請求項2】
前記シューズクロークは前記玄関土間に面して前記出入口が形成されるとともに、当該玄関土間と同じ床高さの土間床を有することを特徴とする請求項1に記載の玄関部構造。
【請求項3】
前記間仕切家具は前記玄関側に開閉可能な扉を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の玄関部構造。
【請求項4】
前記シューズクロークは、前記ウォークスルークローゼットに面する第二出入口を有し、
前記ウォークスルークローゼットは、寝室に出入り可能な第三出入口を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の玄関部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズクロークを有する玄関部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、履物を収容するために、玄関に隣接していわゆるシューズクロークを設けることが知られている。シューズクロークは、一般に、玄関から間仕切壁によって仕切られることにより、玄関に隣接して玄関の土間部から出入り可能に設けられるものである。このようなシューズクロークの中には、玄関の土間部に面する出入口の他に、別の箇所に面する出入口を設けることで、所謂ウォークスルー形式としたものもあり、玄関の土間部から玄関ホールを通過して居室に入る動線と、玄関の土間部からシューズクロークを通過して、キッチンなどの別の空間に入る動線との2つの生活動線に分ける提案がなされている。
【0003】
ところで、シューズクロークを設けるために玄関に間仕切壁を設置した場合に当該間仕切壁の厚さによって玄関のスペースが狭められる問題や間仕切壁を施工する手間が発生する。このような問題や手間を軽減するために、シューズクローク側の面が開口した下駄箱が設けられた間仕切収納家具をによって玄関とシューズクロークとを区画する発明が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−88663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シューズクロークを所謂ウォークスルー形式として玄関に繋がる生活動線を2つに分けた場合であっても、履物はシューズクロークに収納されているので、帰宅時や外出時には、一旦シューズクロークで履物を脱ぐ又は履く必要があるので、玄関の土間部から玄関ホールを通過して居室に入る生活動線が十分に活用されない問題がある。一方、玄関の土間部から玄関ホールを通過して居室に入る生活動線を活用すると、シューズクロークを通過しないので、玄関土間に履物が置いたままになる問題が生じうる。そこで、玄関にもシューズクロークとは別に下駄箱を設置する場合には玄関が狭くなる問題があり、また、必ずしも履きたい履物を玄関の下駄箱に収納しておけないので、結局、シューズクロークに入って履物を取り出すことになる。
【0006】
そこで、本発明はシューズクロークを通過する動線とシューズクロークを通過しない動線のいずれの動線からも履物などの収納物が出し入れ可能となる玄関部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の玄関部構造は、
集合住宅の住戸に設けられる玄関部構造であって、玄関土間及び当該玄関土間よりも床が高く、少なくとも1以上の居室へアクセス可能な
玄関ホールを有する前記玄関と、前記玄関
土間及び前記玄関ホールに隣接して配置され少なくとも前記玄関
土間から出入り可能な出入口を有するシューズクロークと、前記玄関
ホールと前記シューズクロークとの境界に設けられる間仕切家具と、を備え、前記間仕切家具は、前記玄関
ホール側及び前記シューズクローク側の両側から収納物を出し入れ可能な下駄箱であり、前記シューズクロークは、当該シューズクロークから前記玄関を通過せずに、当該玄関からアクセス可能な居室とは異なる他の居室へアクセス可能であり、前記シューズクロークと前記他の居室との間には、前記シューズクローク及び前記他の居室から行き来可能なウォークスルークローゼットを配置することを特徴としている。
【0008】
本発明の玄関部構造は、
前記シューズクロークは前記玄関土間に面して前記出入口が形成されるとともに、当該玄関土間と同じ床高さの土間床を
有することを特徴としている。
【0009】
本発明の玄関部構造は、前記間仕切家具は前記玄関側に開閉可能な扉を有することを特徴としている。
【0012】
本発明の玄関部構造は、
前記シューズクロークは、前記ウォークスルークローゼットに面する第二出入口を有し、前記ウォークスルークローゼットは、寝室に出入り可能な第三出入口を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の玄関部構造によると、間仕切家具が玄関側及びシューズクローク側の両側から収納物を出し入れ可能な下駄箱であるので、シューズクローク内に入ることなく履物などの収納物を収納し、又は取り出すことができ生活動線をスムーズにすることができるとともに、シューズクローク側からも出し入れ可能であるので生活場面に応じて便利に選択することができる。
【0014】
本発明の玄関部構造によると、間仕切家具が玄関ホールとシューズクロークとの境界に設けられるので、玄関ホールで履物を出し入れすることと、シューズクロークで履物を出し入れすることの両方が可能であり、生活場面に応じて便利に選択することができる。
【0015】
本発明の玄関部構造によると、間仕切家具は玄関側に開閉可能な扉を有するので、玄関側からは従来からある下駄箱のように見せることができ、下駄箱とシューズクロークの両方の機能を併せ持つことができる。
【0016】
本発明の玄関部構造によると、シューズクロークは、玄関を通過せずに居室にアクセス可能な第二出入口を有するので、所謂ウォークスルー形式のシューズクロークとすることができ、シューズクロークを通過する動線と、シューズクロークを通過しない動線のいずれの生活動線を通る場合であっても履物を出し入れすることができ、生活場面に応じてスムーズで利便性の高い生活動線とすることができる。
【0017】
本発明の玄関部構造によると、第二出入口はウォークスルークローゼットに面するので、シューズクロークを通過する動線を通って外出し又は帰宅する際には、ウォークスルークローゼットをも通過することになるので、外套をウォークスルークローゼット内に収納するなど生活動線の利便性を高めることができる。また、第二出入口を単なる廊下やホールに繋ぐ場合に比べて必要面積を小さくすることができる。
【0018】
本発明の玄関部構造によると、ウォークスルークローゼットは、寝室に出入り可能な第三出入口を有するので、生活動線が玄関土間からシューズクローク、ウォークスルークローゼットを経て寝室に繋がることになり、外出準備などの利便性を高めることができるとともに、シューズクローク及びウォークスルークローゼットを寝室に設けられた収納兼寝室から玄関に通じる廊下として用いることができ利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】玄関部構造を備えた住戸の間取りを示す断面図。
【
図2】2つの生活動線を説明する
図1の一部拡大図。
【
図3】シューズクローク及びウォークスルークローゼットの外観構成を説明する一部省略斜視図。
【
図4】シューズクローク側から収納物を取り出す状態の間仕切家具の内部構成を説明する鉛直方向に切断した断面図。
【
図5】玄関ホール側から収納物を取り出す状態の間仕切家具の内部構成を説明する鉛直方向に切断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る玄関部構造1の最良の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態の玄関部構造1は集合住宅の住戸に設けられる玄関部構造1である。なお、本発明の玄関部構造1は、集合住宅の住戸に設けられるものに限定されるものではなく、戸建住宅の住戸の玄関部構造1であってもよい。
【0021】
玄関部構造1は、
図1及び
図2に示すように、共用廊下10などの外部から出入りする玄関ドア2を有する玄関3と、玄関土間4から出入り可能な第一出入口13を有するシューズクローク6と、玄関3とシューズクローク6との境界に設けられる間仕切家具7と、シューズクローク6に隣接しており第二出入口14によってシューズクローク6と繋がるウォークスルークローゼット8と、を備えている。なお、本発明における「出入口」は本実施形態に置いては第一出入口13が相当する。
【0022】
玄関3は、玄関土間4と、玄関土間4よりも床が高い玄関ホール5とを有している。玄関土間4は平面視矩形に形成されており、間口方向の一方の壁にシューズクローク6と繋がる第一出入口13が形成されている。玄関ホール5は、玄関土間4の奥行側に上がり框16を介して形成されており、奥行方向に延びてリビングダイニング18及びキッチン19に繋がっている。また、玄関ホール5は、奥行方向の中間部で一方の間口方向に延びて洗面所20に繋がるとともに、トイレ21のドアに面している。したがって、外部から屋内に入る生活動線として、玄関ドア2を通過して玄関土間4から玄関ホール5に上がり、リビングダイニング18及びキッチン19に入室する動線及び洗面所20やトイレ21に入る動線が形成されている。
【0023】
シューズクローク6は、
図3に示すように、玄関土間4の一方の壁に形成された第一出入口13によって、玄関土間4と出入り可能に配置されている。第一出入口13には開き戸の第一開閉ドアが開閉自在に設けられている。シューズクローク6の床は、玄関土間4と同じ床高さの土間床61である。シューズクローク6は玄関土間4よりも奥行方向に長く形成されており、シューズクローク6の一部は玄関ホール5と間仕切家具7を挟んで隣接している。シューズクローク6の奥行側には第二出入口14を介してウォークスルークローゼット8が隣接している。第二出入口14は、ドアが設けられておらず、シューズクローク6とウォークスルークローゼット8とは常に互いに行き来可能に開放されている。第二出入口14の床面には上がり框17が形成されており、ウォークスルークローゼット8の床面がシューズクローク6の土間床61よりも高く形成されている。
【0024】
間仕切家具7は、
図3から
図5に示すように、シューズクローク6と玄関ホール5との境界に設けられる造作家具であり、収納物22としての履物を収納可能な下駄箱である。間仕切家具7は、一対の側壁部71と、当該一対の側壁部71の間に架設される複数の棚板72と、玄関ホール5側に形成された扉73と、を有している。棚板72は例えば側壁部71に形成された図示しないダボに支持される平板材であり、高さの異なる履物を効率的に収納するために、棚板72の高さは可変であることが好ましい。
【0025】
間仕切家具7は
図3に示すようにシューズクローク6側が常に開放されており、例えば
図4に示すように、棚板72上の履物などの収納物22をシューズクローク6側から取り出し、又は棚板72上に収納物22を載置することができる。また、扉73は、本実施形態においては折れ戸である。
図5に示すように、扉73を開くことにより、玄関ホール5側から棚板72に載置されて収納されている収納物22を取り出し、又は棚板72に収納物22を載置することができる。なお、扉73は折れ戸に限定されるものではなく引き戸、引き違い戸、開き戸などの間仕切家具7の玄関ホール5側の面を開閉可能な構成であればよい。
【0026】
ウォークスルークローゼット8は、第二出入口14を介してシューズクローク6と繋がるとともに、間口方向の玄関ホール5と反対側の壁に第三出入口15が形成されて、寝室9に行き来自在に繋がっている。第三出入口15には折れ戸の第三開閉ドアが形成されている。ウォークスルークローゼット8は、第二出入口14及び第三出入口15が形成された側面と対向する側面に沿ってそれぞれハンガーパイプ81が架設されており、外套などの衣類を収納可能な構成となっている。なお、図示しないがウォークスルークローゼット8はハンガーパイプ81の他に棚や引き出し等の収納部が形成されていてもよい。
【0027】
このように玄関土間4、シューズクローク6、ウォークスルークローゼット8、寝室9がつながっているので、外出時や帰宅時にシューズクローク6やウォークスルークローゼット8を通過することで、履物や外套を収納しつつ居室内に入る利便性の高い動線とすることができる。
【0028】
ウォークスルークローゼット8は、シューズクローク6及び寝室9にアクセス可能であることで、玄関3からアクセスしやすい位置に配置された外套などを保管するクロークルームとしての役割を果たすとともに、寝室9に設けられた衣類などを収納するクローゼットとしての役割を果たすことができ、さらに、シューズクローク6から寝室9に到る通路としての役割をも果たすことができる。一般的なシューズクロークの出入口を2箇所設けて単にウォークスルー形式にした場合2箇所の出入口それぞれに大きなスペースが必要となるが、本実施形態の玄関部構造1のように第二出入口14をウォークスルークローゼット8と繋いだことにより、て第二出入口14にほとんどスペースが必要なくなるので省スペース化することもできる。
【0029】
以上のように本実施形態の本発明の玄関部構造1によると、
図2に示すように、玄関土間4から玄関ホール5を通過して、リビングダイニング18、キッチン19、洗面所20、又はトイレ21に入る玄関ホール側の生活動線11と、玄関土間4から、シューズクローク6、及びウォークスルークローゼット8を通過して寝室9に入るシューズクローク側の生活動線12との2つの生活動線が形成されている。
【0030】
そして玄関ホール5及びシューズクローク6のいずれの側からでも間仕切家具7に収納された履物などの収納物22を取り出し可能であり、また、いずれの側からでも収納することができるので、玄関ホール側の生活動線11を利用する場合でもシューズクローク側の生活動線12を利用する場合でも間仕切家具7内の所望の履き物を取り出し又は収納することができ、これらの生活動線を生活場面に応じて自由に選択することができる。
【0031】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る玄関部構造1は例えば集合住宅の住戸や戸建住宅の玄関部に用いられる構造として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 玄関部構造
3 玄関
4 玄関土間
5 玄関ホール
6 シューズクローク
7 間仕切家具
8 ウォークスルークローゼット
9 寝室
13 第一出入口(出入口)
14 第二出入口
15 第三出入口
73 扉