(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。それぞれの図において、共通する部材には同一の符号が付されている。
【0012】
図1〜
図5に示される打込機10はハウジング11を有し、ハウジング11はシリンダ12を収容するシリンダケース部11aと、シリンダケース部11aの先端部に一体となったモータケース部11bとを備えている。モータケース部11bに沿ってハンドル部11cがシリンダケース部11aの頂部側に一体となっている。ハンドル部11cの先端部とモータケース部11bの先端部との間には、連結部11dが一体に設けられている。このように、ハウジング11は、シリンダケース部11a、モータケース部11b、ハンドル部11c、および連結部11dを備えている。ハウジング11は、2つのハウジング半体を有し、ハウジング11は、2つのハウジング半体同士を固定して組み立てられている。2つのハウジング半体は、それぞれナイロンまたはポリカーボネート等の合成樹脂により、それぞれ別個に成形されている。
【0013】
シリンダケース部11a内に円筒形状のシリンダ12が収容され、シリンダ12は、シリンダ孔12aを有する。シリンダ孔12aにピストン13が移動可能に設けられている。ピストン13の動作方向は、シリンダ12の中心軸O1方向である。シリンダ12は、金属材料、例えば、アルミニウムで一体成形されている。ピストン13は、
図8に示すシリンダ12の上端を頂部140とし、
図7に示すシリンダ12の下端を先端部141として、シリンダ12の先端部141と頂部140との間で往復動作可能である。シリンダ12の頂部140及び先端部141は、シリンダ12の中心軸O1方向で、互いに最も離れた位置にある。中心軸O1方向は、中心軸O1と平行な方向、つまり、中心軸O1に沿った方向である。
【0014】
ピストン13の頂面によりピストン室14が形成される。ピストン13にドライバブレード15が連結されている。ハウジング11のシリンダケース部11aにノーズ部16が設けられ、ノーズ部16に射出口17が設けられ、ドライバブレード15は、射出口17内で中心軸O1方向に往復動可能に支持されている。ドライバブレード15は、シリンダケース部11a内から射出口17及びハウジング11の外部に亘って配置されている。
【0015】
ハウジング11には、多数の止具82を収容するマガジン18が取り付けられており、マガジン18内の止具82は射出口17へ1本ずつ供給される。ドライバブレード15は、射出口17に供給された止具82に打込力を与え、止具82を木材や石膏ボードなどの被打込部材に打ち込む。作業者は、止具82を打込む際にハンドル部11cを把持し、シリンダ12の中心軸O1を被打込部材の表面に対して垂直にする。
【0016】
図2に示されるように、モータケース部11bはハンドル部11cに対して打込機10の幅方向一方側にずれて配置され、マガジン18はモータケース部11bに対して反対側に幅方向に傾斜して配置される。マガジン18は、
図1に示されるように、後端部から先端部に向けて下向きに傾斜している。ただし、マガジン18をシリンダ12に対して直角に配置するようにしても良い。
【0017】
図3、
図4、
図6、
図7、
図8のように、シリンダケース部11aの内面から突出した突起部21,22,130が設けられている。突起部21,22,130は、中心軸O1方向で間隔をおいて配置されている。突起部22,130は、中心軸O1方向で、突起部21とノーズ部16との間に配置されている。突起部130は、中心軸O1方向で、突起部22とノーズ部16との間に配置されている。突起部21,22,130は、シリンダケース部11a内にそれぞれ環状に配置されており、突起部21は支持孔21aを形成し、突起部22は支持孔22aを形成し、突起部130は、支持孔130aを形成している。支持孔21a,22a,130aは、同心状に配置されており、シリンダ12の中心軸O1方向の一部は、支持孔21a,22a,130a内に配置されている。支持孔130aの内径は、支持孔22aの内径よりも大きい。また、突起部22と突起部130との間に、支持溝132が設けられている。支持溝132は環状である。
【0018】
図3、
図4、
図7のように、シリンダケース部11a内において、シリンダ12における中心軸O1方向の先端部141を含む箇所に、ホルダ23が設けられている。ホルダ23はノーズ部16に接続され、かつ、シリンダ12がホルダ23に連結されている。ホルダ23がシリンダ12に連結された箇所は、ノーズ部16に近い方の端部である。ホルダ23は、端壁部23a及び円筒部23bを備えている。円筒部23bの内径は、シリンダ12の外径よりも大きく、端壁部23aは貫通孔24を有している。ドライバブレード15は、貫通孔24内へ移動可能に配置されている。
【0019】
ホルダ23は、中心軸O1方向で突起部22とノーズ部16との間に配置されている。シリンダ12の外周面に雄ねじ12bが形成され、円筒部23bの内周面に雌ねじ23dが形成されている。シリンダ12とホルダ23とがねじ結合されて、中心軸O1方向に互いに固定されている。中心軸O1方向で、シリンダ12の配置領域と、ホルダ23の配置領域とが重なって重複部X1が形成され、シリンダ12とホルダ23とは、重複部X1でねじ結合されている。
【0020】
円筒部23bの外周面から、径方向で外側に張り出したフランジ131が設けられている。フランジ131は環状に設けられており、フランジ131は支持溝132に配置されている。フランジ131の外径は、支持孔22a,130aの内径よりも大きい。支持溝132に防振ゴム133が配置されている。防振ゴム133は環状であり、かつ、断面形状はU字形状である。防振ゴム133は、フランジ131を全周に亘って覆う。フランジ131と突起部22,130との間に、防振ゴム133が介在している。フランジ131は、中心軸O1方向で、防振ゴム133を介して突起部22,130に係合する。つまり、ホルダ23は、突起部22,130により、中心軸O1方向で位置決めされている。また、ホルダ23は、支持溝132の内面により、径方向で位置決めされている。
【0021】
図1および
図3は、ドライバブレード15がピストン13により打ち出され、ピストン13が前進位置にある状態を示す。前進位置は、ピストン13がダンパ25に押し付けられた下死点である。
図4はドライバブレード15によりピストン13が押されて、ピストン13が後退位置にある状態を示す。後退位置は、ピストン13がダンパ25から最も離れた上死点である。端壁部23aに凹部23cが設けられており、凹部23cにダンパ25が配置されている。ダンパ25は、ゴム状弾性体またはウレタンで一体成形されており、中心軸O1方向で、ダンパ25の配置領域は、先端部141の配置位置を含む。ピストン13が動作してドライバブレード15のフランジ61がダンパ25に衝突すると、ダンパ25は衝撃荷重を減衰及び低減する。
【0022】
ピストン13を
図4の後退位置へ移動させる回転円板26が設けられている。シリンダケース部11a内に、筒形状の収容部137が設けられており、回転円板26は収容部137内に収容されている。収容部137は、ホルダ23に連続して一体成形されている。回転円板26は駆動軸27に設けられており、駆動軸27は、
図1に示されるように、モータケース部11bに取り付けられた軸受28a,28bにより回転自在に支持される。複数のラック爪31aを有するラック31がドライバブレード15に取り付けられ、ラック爪31aに係合及び離脱する複数のピン32が回転円板26に円周方向に間隔を隔てて取り付けられている。
【0023】
図1および
図3に示されるように、回転円板26の回転中心軸Rは、シリンダ12の中心軸O1に対してシリンダ12の径方向に距離Cだけシフトし、中心軸O1に対してほぼ直角となっている。
図1には、回転中心軸Rの部分の断面と、中心軸O1の部分の断面とが示されている。中心軸O1は、機械工学の観点から定まる仮想線または中心線または軸線であり、中心軸O1は物体として存在する訳ではない。
【0024】
回転円板26を回転するために、モータケース部11b内に電動モータ33が設けられている。電動モータ33は、モータケース部11bに固定されるステータ33aと、ステータ33a内に回転自在に設けられたロータ33bと、を有する。ロータ33bに設けられたモータ軸34には冷却ファン35が取り付けられ、冷却ファン35により電動モータ33を冷却するための冷却風がハウジング11内に生成される。ハウジング11には、外気を導入する図示しない吸気孔と、モータ冷却後の空気を排出する図示しない排出孔とが設けられている。
【0025】
遊星歯車式の減速機36がモータケース部11b内に設けられており、減速機36の入力軸37aはモータ軸34に連結され、減速機36の出力軸37bは駆動軸27に連結される。モータ軸34は、モータケース部11bに取り付けられた軸受38aにより回転自在に支持されている。モータ軸34が入力軸37aに連結され、モータケース部11b内に減速機ホルダー39が設けられている。軸受38bが減速機ホルダー39内に設けられている。入力軸37aは、軸受38bにより回転自在に支持されている。モータケース部11b内にギヤケース138が設けられており、減速機36はギヤケース138内に収容されている。ギヤケース138は、ホルダ23に対して固定要素を用いて固定されている。
【0026】
連結部11dにバッテリ40が取り付けられている。バッテリ40は、連結部11dに対して取り付け及び取り外しが可能であり、バッテリ40は電動モータ33に電力を供給する。バッテリ40は、収容ケース40aと、収容ケース40a内に収容された複数の電池セルと、を有する。電池セルはリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池などからなる二次電池である。
【0027】
図8のように、シリンダ12の中心軸O1方向で、シリンダ12の外に蓄圧容器41が設けられている。シリンダケース部11aは開口部11eを備え、シリンダ12の中心軸O1方向の頂部140は、開口部11eを介してシリンダケース部11aの外に配置されている。蓄圧容器41は、本体134及びホルダ139を有する。本体134及びホルダ139は、共に金属材料で成形されている。本体134は、円筒部44と、円筒部44に連続する天壁部43と、を備えている。ホルダ139は、環状の底壁部42と、底壁部42から中心軸O1方向に延ばされた突起部46と、底壁部42から中心軸O1方向に延ばされた突起部48と、を備えている。突起部46の外径は、円筒部44の内径よりも小さく、突起部46は円筒部44内に配置されている。また、突起部48は、底壁部42から、突起部46とは逆向きに延ばされている。突起部48の外径は、突起部46の内径よりも小さい。
【0028】
天壁部43は、シリンダ12の頂部及び底壁部42と対向している。蓄圧容器41の内部に、ピストン室14に連通する圧縮室45が形成される。頂部140は、圧縮室45の内面を形成する。底壁部42は、
図5のように外周面が円形の要素であり、底壁部42の中心O2は、ハンドル部11cに向けてシリンダ12の中心軸O1から偏心量Eだけ偏心し、底壁部42はシリンダ12に対して径方向にずれている。したがって、蓄圧容器41の圧縮室45はシリンダ12の中心軸O1に対して偏心している。
【0029】
蓄圧容器41の円筒部44の外径は、シリンダ12の外径よりも大きい。このため、シリンダ12の頂部140の投影面積内に圧縮室45を形成する場合に比べて、シリンダ12及び蓄圧容器41を含めた上下方向の打込機10の長さを、短くすることができる。頂部140の投影面積とは、中心軸O1に対して垂直な平面内で、頂部140の外周縁によって形成される円の面積である。これにより、打込機10を小型化することができる。
【0030】
図8のように、突起部46の外周面にシール部材47aが取り付けられており、シール部材47aは、円筒部44と突起部46との間を気密にシールする。シリンダ12の中心軸O1方向で、蓄圧容器41内に位置する端部に、フランジ135が設けられている。フランジ135は、シリンダ12の外周面から径方向で外側に向けて突出している。フランジ135は環状であり、フランジ135の外径は、突起部48の内径よりも大きい。このため、フランジ135と突起部48とが係合すると、蓄圧容器41はシリンダ12に対して中心軸O1方向の移動が規制される。シリンダ12の外周面にシール部材47bが取り付けられており、シール部材47bは、シリンダ12と突起部48との間を気密にシールする。
【0031】
開口部11e及び蓄圧容器41を覆うカバー51が設けられている。カバー51は、シリンダケース部11aの外に配置されている。カバー51は、円筒部51aと、円筒部51aに連続する円板部51bと、を備えている。カバー51は、合成樹脂または金属材料で一体成形されている。円筒部51aの内径は、蓄圧容器41の外径よりも大きく、円筒部51aにおける中心軸O1方向の端部は、シリンダケース部11aに接触する。
【0032】
さらに、カバー51と蓄圧容器41とを連結する連結要素136が設けられている。連結要素136は、軸部材であり、連結要素136は、底壁部42と円板部51bとをつないでいる。カバー51と蓄圧容器41とが連結要素136で連結された状態で、カバー51は、蓄圧容器41に対して中心軸O1方向に予め定められた範囲内で移動可能である。連結要素136は、複数個設けられており、円筒部44に対して径方向で外側に配置されている。このため、連結要素136は、圧縮室45の気密性を阻害しない。さらに、円板部51bと天壁部43との間に、シート状の防振ゴム52が介在されている。
【0033】
さらに、突起部21とシリンダ12の外周面との間に、環状の防振ゴム53が配置されている。支持孔21aの内径は、シリンダ12の外径よりも大きく、支持孔21aに防振ゴム53が取り付けられている。防振ゴム53は、シリンダ12が、中心軸O1に対して交差する方向、例えば、径方向に振動することを防止する。防振ゴム52,53,133は、ゴム弾性を備えた軟質材、例えば、ウレタン、エラストマーにより、それぞれ一体成形されている。軟質材とは、シリンダ12を形成する金属の剛性よりも低い剛性の材料を意味する。
【0034】
ピストン室14と圧縮室45の内部には、ガスとして空気が充填される。空気は圧縮性の気体である。
図1に示されるように、ダンパ25に押し付けられているピストン13、圧縮室45に向けて移動する場合、次の制御が行われる。まず、電動モータ33の動力が減速機36を介して回転円板26に伝達され、回転円板26は、
図3で反時計方向に回転する。回転円板26が回転すると、ピン32がラック爪31aに順次噛み合い、ピストン13は、
図4に示されるようにシリンダ12の開口端、つまり、上死点まで上昇する。このように、ピストン13が上昇する行程で、ピストン室14内の圧縮空気が圧縮室45内に入り込む。ピストン13が上死点に到達すると、圧縮室45内の圧縮空気の圧力は最大となる。ピストン13が上死点へ到達した後、回転円板26が回転してピン32とラック爪31aとの噛み合いが解かれると、ピストン13は、圧縮室45中の圧縮空気の圧力で上死点から下死点へ向けて移動する。回転円板26の回転角度は、図示しない角度検出センサにより検出される。
【0035】
ノーズ部16にはプッシュロッド54が軸方向に往復動自在に設けられている。プッシュロッド54は、コンタクトアームとも呼ばれる。プッシュロッド54を付勢する圧縮コイルばね55が設けられている。プッシュロッド54は、圧縮コイルばね55の力でダンパから離れる向き、つまり、
図1で下方へ押される。プッシュロッド54が被打込部材に突き当てられてプッシュロッド54が、圧縮コイルばね55の力に抗して後退移動すると、図示しない押し付け検知センサは、プッシュロッド54が被打込部材へ押し付けられたことを検出する。ハンドル部11cには、トリガ56が設けられており、トリガ56の操作状態をトリガスイッチ57が検出する。
【0036】
ハウジング11内にはコントローラ58が設けられ、コントローラ58には、上述した角度検出センサ、押し付け検知センサ、およびトリガスイッチ57からの検出信号が送られる。
図1および
図3に示されるように、ピストン13が前進位置にある状態でトリガ56が操作されるとともに、プッシュロッド54が被打込部材に突き当てられてトリガスイッチ57がオンになると、電動モータ33が回転する。電動モータ33の回転力は減速機36を介して回転円板26に伝達され、ピストン13が後退位置へ移動する。ピン32とラック爪31aとの噛み合いが解かれると、ピストン13は圧縮室45内の圧縮空気により前進位置まで移動し、ドライバブレード15は止具82を被打込部材に打ち込む。
【0037】
ドライバブレード15の基端部には、
図3および
図4に示されるように、ダンパ25に当接するフランジ61が設けられ、フランジ61から上方に向けて連結部62が突出している。フランジ61がダンパ25に衝突すると、ダンパ25は、ピストン13及びドライバブレード15の運動エネルギを低減または減衰する。ピストン13に凹部63が設けられており、連結部62は凹部63に配置されている。連結部62には、中心軸O1の方向に延びた長孔64が設けられている。この長孔64にピストンピン65が配置されており、長孔64の長軸は、ピストンピン65の外径よりも大きい。ピストン13には止め輪66が取り付けられ、止め輪66はピストンピン65の両端部に当接する。止め輪66は、ピストンピン65がピストン13から抜けることを防止する。ピストン13の外周部にシール部材67が装着されており、シール部材67は、ピストン13とシリンダ孔12aとの間をシールする。なお、フランジ131は、中心軸O1方向でシール部材67がシリンダ12の内面と摺動する範囲外に設けられている。シール部材67がシリンダ12の内面と摺動する範囲とは、ピストン13が上死点と下死点との間で往復動する際に、シール部材67がシリンダ12の内面と摺動する範囲である。
【0038】
このように、ドライバブレード15とピストン13とが、ピストンピン65を介して連結されているため、ドライバブレード15はピストン13に対してピストン13の径方向に移動可能である。このため、ドライバブレード15にシリンダ12の径方向の力が加わった場合でも、ピストン13がシリンダ12の内面に押し付けられることを防止できる。
【0039】
圧縮室45内に圧縮空気を充填するために、
図1に示す充填バルブ71が設けられている。充填バルブ71は、蓄圧容器41の底壁部42に設けられている。充填バルブ71は、基端部がナット72により底壁部42に固定され、先端部が底壁部42の下方、つまり、シリンダ12側に突出している。充填バルブ71の先端部にジョイント部73が設けられ、圧縮室45に圧縮空気を充填するときには、コンプレッサ、空気入れ、ボンベなどの各種圧縮気体供給手段の供給口がジョイント部73に接続される。充填バルブ71は、内部に逆止弁が組み込まれており、圧縮空気供給手段の供給口がジョイント部73に接続されると、逆止弁が開放されて、圧縮空気などの圧縮気体が圧縮室45内に充填される。供給口をジョイント部73から外すと、逆止弁により充填バルブ71は閉じられる。
【0040】
供給口を充填バルブ71のジョイント部73に接続するために、ハウジング11には図示しない開口部が設けられている。打込機10を組み立てる際に、充填バルブ71を使用して圧縮空気供給手段により圧縮室45に圧縮空気が供給される。さらに、圧縮室45内のガス圧が低下した場合に、圧力供給手段により圧縮室45に圧縮空気が供給される。一方、ハウジング11内からシリンダ12を取り出す際には、充填バルブ71に組み込まれた逆止弁を操作治具により操作して、圧縮室45内のガスが外部に排出される。また、作業者がリリーフバルブ81を手作業で操作して、圧縮室45内のガスを圧縮室45の外部へ排出することもできる。
【0041】
圧縮室45内の圧力が設定値を超えた場合に、圧縮室45内の圧縮空気を外部に排出するために、リリーフバルブ81が底壁部42に設けられている。この設定値は、打込機10により打ち込まれる最大長さの止具82を打ち込むために、必要な圧縮室45の圧力に設定される。
【0042】
充填バルブ71及びリリーフバルブ81は、
図1および
図2に示されるように、シリンダ12の径方向で外側に向けて突出した底壁部42に設けられている。このため、底壁部42の下方、つまり、シリンダ12側に形成されるスペースを利用して、そのスペースに充填バルブ71及びリリーフバルブ81が配置されている。これにより、シリンダケース部11aの径が大型化することを抑制できる。特に、
図1および
図2に示されるように、充填バルブ71及びリリーフバルブ81を、ハンドル部11cとシリンダ12との間のスペースに配置すると、蓄圧容器41はシリンダ12の中心軸O1に対してハンドル部11c側にずれて配置されているので、圧縮室45の下方のスペースを有効に活用して、充填バルブ71とリリーフバルブ81とを配置することができる。
【0043】
マガジン18はノーズ部16及び連結部11dに取り付けられている。止具82はマガジン18内へ並べて収容され、止具82は、バネ力で射出口17へ供給される。
【0044】
図1に示す減速機36は、複数組の遊星歯車機構を備えており、入力軸37aと出力軸37bとの間の動力伝達経路に、複数組の遊星歯車機構が配置されている。また、減速機36はギヤケース120を備え、ギヤケース120内に複数の遊星歯車機構が収容されている。電動モータ33の回転力は、減速機36を介して回転円板26に伝達される。
【0045】
次に、打込機10の制御系統を簡単に説明する。回転円板26の回転角度を検出するホイール角度検出スイッチが設けられ、プッシュロッド54の位置を検知して信号を出力するプッシュロッドスイッチが設けられ、モータ軸34の回転角度及び回転数を検出する位相検出センサが設けられている。これらのスイッチ及びセンサの信号は、コントローラ58へ入力され、コントローラ58は、電動モータ33のモータ軸34の停止、回転、回転速度を制御する。
【0047】
(打込機の非使用状態) 打込機10の非使用状態は、プッシュロッド54が被打込部材から離れ、かつ、トリガ56の操作力が解除されている状態である。コントローラ58は、打込機10が非使用状態にあると、電動モータ33を停止する。つまり、ピストン13は圧縮室45の空気圧でダンパ25に向けて押され、
図9のように、フランジ61がダンパ25に押し付けられ、ピストン13及びドライバブレード15は停止している。
【0048】
プッシュロッド54が被打込部材W1から離れ、かつ、トリガ56の操作力が解除されている場合、シリンダ12は、中心軸O1と交差する方向の荷重を受けない。また、防振ゴム53はシリンダ12の外周面に押し付けられて弾性変形している。つまり、防振ゴム53は、シリンダ12の径方向で所定の締め代を備えている。さらに、防振ゴム133は、フランジ131と支持溝132の内面との間に挟まれて弾性変形している。つまり、防振ゴム133は、シリンダ12の径方向で所定の締め代を備えている。
【0049】
さらに、プッシュロッド54が被打込部材W1から離れ、かつ、トリガ56の操作力が解除されている場合、防振ゴム133はフランジ131と突起部22,130との間に挟まれて、弾性変形している。つまり、防振ゴム133は、中心軸O1方向で所定の締め代を備えている。
【0050】
(プッシュロッドを被打込部材へ押し付ける作業) 作業者がハンドル部11cを手でつかみ、
図10のようにプッシュロッド54を被打込部材W1へ中心軸O1方向に荷重F1で押し付けると、荷重F1に対する反力F2が発生する。反力F2は、圧縮コイルばね55及びノーズ部16を経由してホルダ23へ伝達される。反力F2は荷重F1とは逆向きであり、その反力F2は、
図7のように、ホルダ23のフランジ131を経由して防振ゴム133へ伝達される。防振ゴム133は弾性変形することでハンドル部11cへ伝達される反力F2を低減する。また、ホルダ23及びシリンダ12が、反力F2を受けてハウジング11に対して中心軸O1方向に所定量移動する。また、シリンダ12の外周面と防振ゴム53との間で摩擦力が発生する。
【0051】
一方、プッシュロッド54が中心軸O1に対して傾斜する方向に、被打込部材W1へ押し付けられた場合は、シリンダ12に対して中心軸O1と交差する方向の荷重が生じる。シリンダ12が受ける中心軸O1と交差する方向の荷重は、シリンダ12の径方向の荷重を含む。シリンダ12が中心軸O1と交差する方向の荷重を受けると、防振ゴム53,133が弾性変形し、シリンダ12が受けた荷重を低減する。なお、突起部21の内径は、シリンダ12の外径よりも大きく、シリンダ12の外周面と突起部21との間の隙間が設定されている。隙間の値は、シリンダ12がハウジング11に対して径方向に移動して防振ゴム53が弾性変形しても、シリンダ12の外周面が突起部21に接触しない値に設定されている。
【0052】
さらに、コントローラ58は、プッシュロッド54が被打込部材W1へ押し付けられ、かつ、トリガ56に操作力が加えられていると、電動モータ33を回転する。電動モータ33の回転力は、減速機36を介して回転円板26に伝達される。回転円板26が、
図3で反時計方向に回転して、ピン32がラック31に噛み合うと、
図10のように、ドライバブレード15が下死点から上死点へ向けて上昇し、圧縮室45の空気圧が上昇する。
【0053】
(止具の打ち込み時) 電動モータ33の回転力でドライバブレード15が移動し、ドライバブレード15が
図4のように上死点に到達した後、ピン32がラック31から離れる。すると、ドライバブレード15は、圧縮室45の空気圧で上死点から下死点へ向けて中心軸O1方向に移動する。そして、ドライバブレード15が射出口17に位置する止具82に衝突し、ドライバブレード15は、
図11のように止具82を被打込部材W1へ打ち込む。
【0054】
ドライバブレード15が止具82を荷重F3で打ち込むと、荷重F3に対する反力F4が、ドライバブレード15及びピストン13へ伝達される。また、反力F4の一部は、ノーズ部16を介してホルダ23へ伝達される。反力F4の向きは、荷重F3の向きとは逆である。
【0055】
このため、ドライバブレード15で止具82を打撃する時、ホルダ23は中心軸O1方向の反力F4の一部を受ける。したがって、ホルダ23は中心軸O1方向の荷重を受け、防振ゴム133が弾性変形することで、荷重を吸収及び緩和し、シリンダ12は、中心軸O1方向でハウジング11に対して位置決めされた状態に維持される。
【0056】
この衝撃をホルダ23に設けられているフランジ131で受け止めているので、
図6において、シリンダ12がシール部材67と摺動する部分に変形を生じさせるような荷重が加わらなくなる。したがって、シリンダ12の変形によるエアー漏れがなくなる。また、衝撃力によるシリンダ12の変形を考慮しなくて済むので、シリンダ12を薄肉化でき、これによりシリンダ12の軽量化が図れる。また、上記実施例では、シリンダ12とホルダ23と別の部品であり、そのシリンダ12とホルダ23とを互いに固定しているが、シリンダ12とホルダ23とが一体構造であっても同様の効果を得られる。シリンダ12とホルダ23とが一体構造とは、単一の部品であること、または一体成形されていることを意味する。
【0057】
また、ホルダ23が中心軸O1方向の荷重を受ける時、シリンダ12の外周面と防振ゴム53との間に摩擦力が発生する。このため、シリンダ12が中心軸O1方向で荷重を受ける箇所は、中心軸O1方向の1箇所、つまり、シリンダ12とホルダ23とのねじ固定箇所のみである。つまり、シリンダ12は中心軸O1方向で圧縮荷重または引っ張り荷重を受けにくい。
【0058】
また、ドライバブレード15が止具82を被打込部材W1へ打ち込む際に、ドライバブレード15は余剰の運動エネルギを持っている状態で下降し、フランジ61がダンパ25に衝突する。ここで、ドライバブレード15及びピストン13の運動エネルギの一部は、ダンパ25により吸収されるが、ダンパ25が吸収できなかった残りの運動エネルギは、ホルダ23へ伝達される。つまり、ホルダ23は、
図7に示す中心軸O1方向の荷重F5を受ける。荷重F5の向きは、
図11に示した荷重F3の向きと同じである。ホルダ23が荷重F5を受けると、防振ゴム133が弾性変形することで、ホルダ23が受けた荷重F5を吸収及び緩和する。
【0059】
さらに、ホルダ23が中心軸O1方向の荷重F5を受ける時、シリンダ12の外周面と防振ゴム53との間に摩擦力が発生する。このため、シリンダ12は中心軸O1方向の荷重を受けても、その荷重を中心軸O1方向の1箇所、つまり、ホルダ23との連結箇所のみである。つまり、シリンダ12は中心軸O1方向で圧縮荷重または引っ張り荷重を受けにくい。
【0060】
なお、止具82が被打込部材W1へ打ち込まれて停止すると、
図9のようにドライバブレード15が受ける反力で打込機10が浮き上がり、プッシュロッド54が被打込部材W1から離れ、プッシュロッド54は圧縮コイルばね55の力で元の位置に戻る。さらに、ドライバブレード15が止具82から離れる。
【0061】
上記のように、プッシュロッド54を被打込部材W1に押し付けた場合、または、ドライバブレード15で止具82を被打込部材W1へ打ち込む場合において、ホルダ23が受けた中心軸O1方向の反力及び荷重は、シリンダ12で受け止めることなく、防振ゴム133を介してハウジング11で受け止める。したがって、シリンダ12が中心軸O1方向の圧縮荷重または引っ張り荷重を受けることを抑制できる。また、シリンダ12に加わる径方向の荷重は、防振ゴム53,133により吸収または緩和される。このため、シリンダ12を保持するハウジング11の強度設計が容易となり、打込機10の小型化、または軽量化を図ることができる。また、作業者が手で握るハンドル部11cに伝達される衝撃荷重を緩和でき、使い心地の良い打込機10を提供できる。
【0062】
さらに、蓄圧容器41とカバー51とは、
図8のように連結要素136で連結されている。圧縮室45の圧力が上昇すると、天壁部43が圧力を受け、本体134は中心軸O1方向で突起部21から離れる向きの荷重F6を受ける。すると、荷重F6の一部は、防振ゴム52を介してカバー51に伝達される。カバー51は、中心軸O1方向で突起部21から離れる向きで押され、カバー51の移動力は、連結要素136を介してホルダ139へ伝達される。すると、突起部48がフランジ135へ係合する。このようにして、蓄圧容器41は、中心軸O1方向で位置決めされる。
【0063】
さらに、カバー51に物体が接触して、中心軸O1方向の荷重F7を受けた場合について説明する。荷重F7の向きは、荷重F6の向きとは逆である。カバー51が荷重F7を受けると、防振ゴム52が弾性変形することで、衝撃を吸収及び緩和する。また、荷重F7の一部が、防振ゴム52を介して本体134へ伝達されると、本体134は、中心軸O1方向で突起部21へ近づく向きで移動する。本体134の移動力は、ホルダ139へ伝達され、ホルダ139は、中心軸O1方向で突起部21に近づく向きで移動する。このため、シリンダ12が中心軸O1方向の荷重を受け止めることを抑制できる。蓄圧容器41が、中心軸O1方向で突起部21へ近づくと、円筒部51aとシリンダケース部11aとが接触して、ハウジング11が荷重を受ける。さらには、打ち込み時の衝撃で、蓄圧容器41の天壁部43がカバー51に衝突することがなく、衝撃でカバー51が破損することを防止することができる。
【0064】
次に、ハウジング11が、シリンダ12を中心軸O1に対して交差する方向で支持する構造の他の例を、
図12を参照して説明する。中心軸O1方向で突起部21が配置された範囲は、突起部48が配置された範囲と重なる。突起部
21の内径は、突起部
48の外径よりも大きく、突起部21の内周に防振ゴム53が設けられている。防振ゴム53は、突起部48の外周面に押し付けられて弾性変形している。シリンダ12が中心軸O1に対して交差する方向の荷重を受けると、その荷重はホルダ139を介して防振ゴム53に伝達される。防振ゴム53は、弾性変形して荷重を吸収および緩和する。さらに、シリンダ12が、ホルダ23と共に中心軸O1方向に振動すると、シール部材47bと突起部48との接触箇所、または、突起部48と防振ゴム53との接触箇所で摩擦力が生じる。
【0065】
ここで、本実施形態で説明した構成と、本発明の構成との対応関係を説明すると、ピストン13が、本発明の動作部材であり、ドライバブレード15が、本発明の打撃子であり、シリンダ12が、本発明のガイド部材であり、ホルダ23が、本発明のホルダであり、防振ゴム133が、本発明の第1緩衝材であり、防振ゴム53が、本発明の第2緩衝材であり、開口部11eが、本発明の開口部であり、防振ゴム52が、本発明の第3緩衝材であり、突起部48が、本発明の突起部であり、突起部21が、本発明の支持部であり、電動モータ33が、本発明のモータであり、ピン32が、本発明のピニオンであり、回転円板26が、本発明の回転体であり、回転円板26、ラック31、減速機36、駆動軸27が、本発明の動力変換機構であり、頂部140が、本発明の第1端部であり、先端部141が、本発明の第2端部である。
【0066】
本発明の打込機は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明の打込機は、ベローズ内に形成した圧縮室と、ベローズの端部に固定された動作部材と、動作部材を移動可能に支持するシリンダと、を有する打込機であってもよい。さらに、本発明の打込機は、バネの弾性力で動作部材を動作させる構造でもよい。バネは、金属製のバネを含む。さらに、本発明のガイド部材は、シリンダの他、動作部材の動作をガイドする直線状のレール、直線状のフレームを含む。本発明の動作部材をダンパから圧縮室に向けて移動させる動力変換機構は、ラックアンドピニオン機構の他、プーリとワイヤーを含む。つまり、動力変換機構は、ワイヤーの牽引力で動作部材を動作させる構造を含む。
【0067】
さらに、実施形態で説明した電動モータは、直流電源としての電池を動力源とする直流モータ(DCインバータモータ)と、交流電源を使用するモータ(ACインバータモータ)と、を含む。さらに、電池の代わりに交流電源を直流電源に変換するAC−DCコンバータを使用して、商用電源(交流電源)を直流電源に変換して打込機内の直流モータ(DCインバータモータ)に電力を供給するようにしてもよい。さらに、モータは、電動モータ
に替えて、油圧モータ、空気圧モータ、内燃機関の何れかを用いてもよい。