(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアミドの単量体(A)をポリマー(B)の存在下、得られるポリアミドの結晶化温度以上で重合しポリアミド微粒子を製造する方法であって、重合開始時にポリアミドの単量体(A)とポリマー(B)が均一に溶解しており、重合後にポリアミド微粒子が析出する際、単量体(A)とポリマー(B)の溶解度パラメーター差の二乗が0.1〜25、かつポリアミドとポリマー(B)の溶解度パラメーター差の二乗が0.1〜16の範囲であるポリアミド微粒子の製造方法。
ポリマー(B)が、極性基を有しない、または水酸基および水硫基から選ばれるいずれかを有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のポリアミド微粒子の製造方法。
ポリマー(B)が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、およびこれらのアルキルエーテル体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のポリアミド微粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細を説明する。
【0022】
本発明は、ポリアミドの単量体(A)をポリマー(B)の存在下で、単量体(A)を重合して得られるポリアミドの結晶化温度より高い温度で重合しポリアミド微粒子を製造する方法であって、重合開始時にポリアミドの単量体(A)とポリマー(B)が均一に溶解しており、重合後にポリアミド微粒子が析出することで、従来の方法では困難であった結晶化温度が高く融点がより高いポリアミドについても、真球、表面平滑、微細かつ粒度分布が狭いポリアミド微粒子が得られることを特徴とする。
【0023】
重合開始時のポリアミドの単量体(A)がポリマー(B)に均一に溶解しているかどうかは、反応槽が透明溶液であることを目視で確認すれば良い。重合開始時に懸濁液または2相に分離した状態であるとポリアミドの単量体(A)とポリマー(B)が非相溶であることを示し、凝集物の生成や強撹拌等が必要になる。この場合、更に溶媒(C)を使用してポリアミドの単量体(A)とポリマー(B)を均一化した後に、重合を開始しても構わない。重合後にポリアミド微粒子が析出しているかどうかは、反応槽が懸濁液であることを目視で確認すれば良い。重合終了時点で均一溶液であると、ポリアミドとポリマー(B)が均一に相溶していることを示し、冷却等によって凝集物や多孔質の微粒子となる。
【0024】
本発明
の製造方法により得られるポリアミド微粒子を構成するポリアミドとは、アミド基を含む構造のポリマーを示し、ポリアミドの単量体(A)であるアミノ酸の重縮合反応、ラクタム類と開始剤によるアニオン開環重合、カチオン開環重合や水などによる加水分解後の開環重合、ジカルボン酸とジアミン、またはそれらの塩の重縮合反応などによって製造される。ラクタム類の場合、開始剤による単量体(A)やポリマー(B)との均一溶液化が形成されず、開始剤が発火性であるため、真球で表面平滑なポリアミド微粒子が容易に得られるポリアミドの結晶化温度以上の温度での重合が困難であるため、カチオン重合や水などによる開環重合が好ましく、得られるポリアミドの結晶化温度以上での重合において、開始剤によるポリアミドの着色、架橋物やゲル生成物抑制の観点から水などによる開環重合で実施することが最も好ましい。
【0025】
本発明の製造方法においてポリアミド微粒子の原料となる具体的なポリアミドの単量体(A)を例示すると、アミノヘキサン酸、アミノウンデカン酸、アミノドデカン酸、パラメチル安息香酸などのアミノ酸類、ε−カプロラクタムやラウロラクタムなどのラクタム類、シュウ酸、スクシン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸類とエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンや3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンなどのジアミン類からそれぞれ選ばれる混合物やそれらの塩などが挙げられる。これらの単量体(A)は、本発明を損なわない範囲であれば2種以上を使用すること、また共重合可能な他の成分を含むことも構わない。単量体(A)とポリマー(B)との溶解性が向上し、かつ得られるポリアミド微粒子の粒子径が微細かつ粒度分布が狭くなる点から、アミノヘキサン酸、ε−カプロラクタムやヘキサメチレンジアミンとアジピン酸が好ましく、アミノヘキサン酸やε−カプロラクタムがさらに好ましく、ε−カプロラクタムが最も好ましい。
【0026】
この単量体(A)を重合することで製造されるポリアミドの具体的な例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、リウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミド共重合体(ポリアミド6/66)などが挙げられる。これらは、本発明を損なわない範囲であれば、他の共重合可能な成分を含んでいても構わない。本発明の製造方法においては、得られるポリアミド微粒子の粒子径が微細かつ粒度分布が狭くなり、更に得られるポリアミド微粒子を構成するポリアミドの耐熱性が高くなることから、結晶化温度が150℃以上であることが好ましく、ポリアミド6,ポリアミド66及びこれらの共重合体から選ばれるいずれかであることがさらに好ましい。
【0027】
ポリアミド微粒子を構成するポリアミドの重量平均分子量の範囲は、8,000〜3,000,000が好ましい。ポリマー(B)との相分離を誘起させる観点から、重量平均分子量は、10,000以上がより好ましく、さらに好ましくは15,000以上であり、最も好ましくは20,000以上である。本発明では、重合中の粘度がポリマー(B)に依存するため、ポリアミドの分子量増加による粘度上昇が抑制される。従って、ポリアミドの重合時間を延長し分子量を極めて高くできる利点がある。しかし重合時間が長すぎると、架橋物などポリアミドの副反応物やポリマー(B)の劣化などが発生するため、ポリアミドの重量平均分子量は2,000,000以下がより好ましく、1,000,000以下がさらに好ましい。
【0028】
なおポリアミド微粒子を構成するポリアミドの重量平均分子量とは、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒にゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した値をポリメチルメタクリレートで換算した重量平均分子量を示す。
【0029】
本発明におけるポリマー(B)とは、重合開始時点でポリアミドの単量体(A)に溶解するが、重合後にポリアミドとは相溶しないポリマーを示す。溶解とは、重合を開始する温度や圧力の条件下でポリマー(B)と単量体(A)が均一に溶解しているかどうかで判断する。ポリマー(B)とポリアミドとの非相溶は、重合後における温度や圧力の条件下で懸濁液または2相に分離しているかどうかで判断する。均一溶液や懸濁液、2相分離であるか否かの判断は、反応槽を目視で確認することで可能である。
【0030】
さらに詳しく述べると、ポリマー(B)はポリアミドの単量体と非反応性であることが、均一な溶液からポリアミド微粒子を析出させる観点から好ましい。具体的には、ポリマー(B)がポリアミドのアミド基を形成するカルボキシル基やアミノ基と反応する極性基を有していない、またはカルボキシル基やアミノ基との反応性が低い極性基を有しているものであることが好ましい。カルボキシル基やアミノ基と反応する極性基としては、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基などが挙げられる。カルボキシル基やアミノ基との反応性の低い極性基としては、水酸基、水硫基などが挙げられるが、これらは架橋反応を抑制する観点から、ポリマー(B)中の極性基が4個以下であることが好ましく、3個以下がより好ましく、2個以下が最も好ましい。
【0031】
またポリマー(B)は、生成するポリアミド微粒子を微細にする観点、および単量体(A)への溶解性が高く、かつ粒度分布を狭くする観点から、ポリアミドと非相溶であるが親和性が高いほうが好ましい。換言すると単量体(A)/ポリマー(B)間やポリマー(B)/ポリアミド間の親和性は、各々の溶解度パラメーター(以下SP値と称する)をδ
A、δ
B、δ
PA(J
1/2/cm
3/2)とした際に、単量体(A)とポリマー(B)間は、その溶解度パラメーター差の二乗、即ち(δ
A−δ
B)
2、ポリマー(B)とポリアミド間は、その溶解度パラメーター差の二乗、即ち(δ
PA−δ
B)
2で表すことが可能である。ゼロに近いほど親和性が高く、溶解や相溶し易くなるが、単量体(A)とポリアミドのδ
Aとδ
PAは異なるため、ポリアミドが凝集物となりにくく、ポリマー(B)が単量体(A)に溶解せず凝集物が生成するのを防ぐ観点から、(δ
A−δ
B)
2は0.1〜25の範囲を満たすことが好ましい。(δ
A−δ
B)
2の下限は0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、1以上が特に好ましい。(δ
A−δ
B)
2の上限は、16以下がより好ましく、12以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましく、7以下が最も好ましい。一方で、ポリマー(B)が均一に相溶してポリアミド微粒子が得られないことを防ぐ一方、非相溶となってポリアミドが凝集物となることを防ぐ観点から、(δ
PA−δ
B)
2は0.1〜16の範囲を満たすことが好ましい。(δ
PA−δ
B)
2の下限は0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、1以上が特に好ましい。(δ
PA−δ
B)
2の上限は、12以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、7以下が特に好ましく、4以下が最も好ましい。
【0032】
なおSP値は、Properties of Polymers 4th Edition(D.W. Van Krevelen著、Elsevier Science社2009年発行)、Chapter7、P215記載のHoftyzer−Van Krevelenの凝集エネルギー密度とモル分子容から算出した値を示す。本方法で計算できない場合は、同章P195記載のFedorsの凝集エネルギー密度とモル分子容から算出した値を示す。また単量体(A)やポリマー(B)を2種以上使用する場合は、各々のSP値とモル分率の積を加算した値を示す。
【0033】
このようなポリマー(B)の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール共重合とこれらの片末端、または両末端の水酸基をメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などで封鎖したアルキルエーテル体、オクチルフェニル基などで封鎖したアルキルフェニルエーテル体などが挙げられる。特に、ポリアミド単量体(A)との相溶性に優れ、得られるポリアミド微粒子の粒度分布が狭くなることから、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびこれらのアルキルエーテル体であることが好ましく、ポリアミド単量体(A)を加水分解による開環重合や溶媒として使用する水との相溶性にも優れる観点から、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体がさらに好ましく、ポリエチレングリコールが最も好ましい。これらは、本発明を損なわない範囲で2種以上を同時に使用しても構わない。
【0034】
得られるポリアミド微粒子の粒子径、粒度分布を狭くできる一方、均一溶液の粘度が高くなり過ぎてポリアミドの重合反応速度が極端に遅くなることを防ぐ観点から、ポリマー(B)の重量平均分子量の好ましい上限は500,000であり、100,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。ポリマー(B)とポリアミドの相溶性が向上し過ぎすることによってポリアミド微粒子が形成され難くなることを防ぐ観点から、ポリマー(B)の重量平均分子量は、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上がさらに好ましい。
【0035】
なお、ポリマー(B)の重量平均分子量とは、水を溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した値をポリエチレングリコールで換算した重量平均分子量を示す。ポリマー(B)が水に溶解しない場合は、テトラヒドロフランを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した値をポリスチレンで換算した重量平均分子量を示す。
【0036】
これら単量体(A)とポリマー(B)を混合し均一溶液を得た後に、単量体(A)を重合して得られるポリアミドの結晶化温度より高い温度で重合を開始することでポリアミド微粒子を製造する。この際、均一な混合溶液中で単量体(A)がポリアミドに変換するに従いポリアミド微粒子が結晶化することなく均質に誘起されるため、重合後に真球、表面平滑、微細かつ粒度分布の狭いポリアミド微粒子が析出すると考えられる。
【0037】
重合速度が適度で、重合と共に誘発される相分離が発生して粒子形成が円滑に起こる一方、粒子形成が重合の早期から発生するために凝集物等が多量に生成することを防ぐ観点から、重合を行う際の単量体(A)とポリマー(B)の配合時の質量比は、5/95〜80/20の範囲であることが好ましい。単量体(A)/ポリマー(B)の質量比下限は、10/90がより好ましく、20/80がさらに好ましく、30/70が最も好ましい。一方、単量体(A)/ポリマー(B)の質量比上限としては、70/30がより好ましく、60/40がさらに好ましく、50/50が特に好ましい。
【0038】
単量体(A)をポリアミドに重合する方法としては、公知の方法を使用することができる。その方法は、単量体(A)の種類によるが、ラクタム類の場合、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属やブチルリチウム、ブチルマグネシウムなどの有機金属化合物などを開始剤として使用するアニオン開環重合、酸を開始剤とするカチオン開環重合や水などを使用する加水分解型の開環重合などが一般に使用される。真球で表面平滑なポリアミド微粒子が容易に得られるポリアミドの結晶化温度以上の温度で重合を行うことが可能であるため、カチオン開環重合や加水分解型の開環重合が好ましく、得られるポリアミドの結晶化温度以上の温度での重合において、開始剤によるポリアミドの着色、架橋反応によるゲル化や分解反応が抑制される観点から、加水分解型の開環重合がより好ましい。ラクタム類を加水分解で開環重合する方法としては、公知の方法であれば制限されないが、水の共存下に加圧し、ラクタムの加水分解を促進しながらアミノ酸を生成させ、その後水を除去しながら開環重合と重縮合反応を行う方法が好ましい。
【0039】
この場合、水が存在していると重縮合反応が起こらないため、水が反応槽の系外に排出されたと同時に重合が開始する。従ってラクタム類の加水分解が進行する範囲であれば、使用する水の量に特に制限は無いが、通常単量体(A)とポリマー(B)の総量を100質量部とすると、水の使用量を100質量部以下とするのが好ましい。ポリアミド微粒子の生産効率が向上するため、水の使用量は70質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下が特に好ましい。ラクタム類の加水分解反応が進行しないのを防ぐため、水の使用量の下限は1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、10質量部以上が特に好ましい。重縮合中に縮合によって生成する水(縮合水)を除去する方法としては、常圧で窒素などの不活性ガスを流しながら除去する方法や、減圧で除去する方法など、公知の方法を適宜使用できる。
【0040】
また単量体(A)がアミノ酸、ジカルボン酸とジアミン、またはそれらの塩の場合、重合方法として重縮合反応を使用できる。一方、これらの単量体(A)の場合、ポリマー(B)と均一に溶解しない組み合わせが存在する。そのような単量体(A)とポリマー(B)においては、更に単量体(A)とポリマー(B)の溶媒(C)を追加することで、ポリアミド微粒子を製造することが可能となる。
【0041】
溶媒(C)は、上記の範囲であれば特に限定されないが、単量体(A)とポリマー(B)を溶解し、且つ重縮合反応を進行させるために系外に排出する必要のある縮合水と同一である点から水が最も好ましい。
【0042】
具体的には、単量体(A)にアミノヘキサン酸やアミノドデカン酸などのアミノ酸、または単量体(A)にアジピン酸とヘキサメチレンジアミンなどのジカルボン酸とジアミンを使用する場合、ポリマー(B)としてポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、およびこれらのアルキルエーテル体、溶媒(C)として水を加えることで、重合を開始する温度で均一な溶液が形成される。その後、溶媒(C)の水と重縮合の進行によって発生する縮合水を反応槽外に排出することで、重合が進行しながらポリアミド微粒子を製造することが可能となる。この場合、アミノ酸、またはジカルボン酸とジアミンとポリマー(B)の総量を100質量部とすると、溶媒(C)として使用する水の量は10〜200質量部であることが好ましい。粒子径が粗大化するのを防ぐ観点から、水の使用量は150質量部以下がより好ましく、120質量部以下がさらに好ましい。一方、溶媒として機能するのを担保する観点から、水の使用量は20質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。
【0043】
ラクタム類とアミノ酸および/またはジカルボン酸やジアミンを2種以上混合して使用しても構わないが、この場合は水が、加水分解や溶媒(C)として機能する。
【0044】
重合温度は、ポリアミドの重合が進行する範囲であれば特に制限が無いが、高い結晶化温度のポリアミドを真球により近く、かつ表面平滑な形状に制御する観点から、重合温度を、得られるポリアミドの結晶化温度以上の温度とすることが好ましい。重合温度は、得られるポリアミドの結晶化温度+15℃以上とするのがより好ましく、得られるポリアミドの結晶化温度+30℃以上とするのがさらに好ましく、得られるポリアミドの結晶化温度+45℃以上とするのが特に好ましい。3次元架橋物などのポリアミドの副反応や着色やポリマー(B)の劣化などの進行を防ぐ観点から、重合温度は、得られるポリアミドの融点+100℃以下とするのが好ましく、得られるポリアミドの融点+50℃以下とするのがより好ましく、得られるポリアミドの融点+20℃以下とするのがさらに好ましく、得られるポリアミドの融点と同じ温度での重合が特に好ましく、得られるポリアミドの融点−10℃以下とするのが最も好ましい。
【0045】
なお、ポリアミド微粒子を構成するポリアミドの結晶化温度とは、DSC法を用いて、窒素雰囲気下、30℃からポリアミドの融点を示す吸熱ピークから30℃高い温度まで20℃/分の速度で昇温した後に1分間保持し、20℃/分の速度で30℃まで温度を冷却させる際に出現する発熱ピークの頂点を示す。また一旦冷却後、さらに20℃/分で昇温した際の吸熱ピークの頂点をポリアミド微粒子の融点とする。
【0046】
重合時間としては、得ようとするポリアミド微粒子の分子量に応じて適宜調整可能であるが、重合が進行してポリアミド微粒子を得ることを担保する一方、3次元架橋物などのポリアミドの副反応や着色やポリマー(B)の劣化など進行を防ぐ観点から、通常0.1〜70時間の範囲であることが好ましい。重合時間の下限としては、0.2時間以上がより好ましく、0.3時間以上がさらに好ましく、0.5時間以上が特に好ましい。重合時間の上限としては、50時間以下がより好ましく、25時間以下がさらに好ましく、10時間以下が特に好ましい。
【0047】
本発明の効果を損なわない範囲で、重合促進剤を加えても構わない。促進剤としては、公知のものが使用でき、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機系リン化合物が挙げられる。これらは、2種類以上を使用しても構わない。添加量としては適宜選択できるが、単量体(A)100質量部に対して1質量部以下添加することが好ましい。
【0048】
また他の添加剤を加えることも可能であり、例えばポリアミド微粒子の粒径制御のための界面活性剤、分散剤、ポリアミド微粒子の特性を改質するためや使用するポリマー(B)の安定性を向上するための酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤などが挙げられる。これらは2種以上を使用しても構わない。また単量体(A)やポリアミドを改質する目的と、ポリマー(B)を改質する目的で異なる物を2種以上使用しても構わない。添加量としては適宜選択できるが、単量体(A)とポリマー(B)の合計100質量部に対して1質量部以下添加することが好ましい。
【0049】
本発明では、均一溶液からポリアミド微粒子が均質に誘起されるため、撹拌を実施しなくても微細な微粒子を製造できるが、より粒径の制御や粒度分布を均一にするため撹拌を行っても構わない。撹拌装置としては、撹拌翼や溶融混練機、ホモジナイザーなど公知の装置を使用することが可能であり、例えば撹拌翼の場合、プロペラ、パドル、フラット、タービン、コーン、アンカー、スクリュー、ヘリカル型などが挙げられる。撹拌速度は、ポリマー(B)の種類、分子量によるが、大型装置でも熱を均質に伝える一方、壁面へ液が付着して配合比などが変化することを防ぐ観点から、0〜2,000rpmの範囲であることが好ましい。撹拌速度の下限としては、より好ましくは10rpm以上、さらに好ましくは30rpm以上、特に好ましくは50rpm以上であり、撹拌速度の上限としては、1,600rpm以下がより好ましく、1,200rpm以下がさらに好ましく、800rpm以下が特に好ましい。
【0050】
重合終了後のポリアミド微粒子とポリマー(B)の混合物からポリアミド微粒子を単離するには、重合終了時点の混合物をポリアミド微粒子の貧溶媒中に吐出した後に単離する方法、または反応槽中にポリアミド微粒子の貧溶媒を加えた後に単離する方法などが挙げられる。ポリアミド微粒子同士が溶融し、合着して粒子径分布が広くなることを防ぐ観点から、ポリアミド微粒子の融点以下、より好ましくは結晶化温度以下にまで冷却した後に、混合物をポリアミド微粒子の貧溶媒中に吐出し単離する方法、または反応槽にポリアミド微粒子の貧溶媒を加え単離する方法などが好ましく、反応槽にポリアミド微粒子の貧溶媒を加え単離する方法がより好ましい。単離方法としては、減圧や加圧ろ過、デカンテーション、遠心分離、スプレードライなど公知の方法を適宜選択できる。
【0051】
ポリアミド微粒子の貧溶媒としては、ポリアミドを溶解せず、さらには単量体(A)やポリマー(B)を溶解する溶媒であることが好ましい。このような溶媒としては適宜選択できるが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類や水が好ましい。
【0052】
ポリアミド微粒子の洗浄、単離、乾燥は公知の方法で実施することが可能である。ポリアミド微粒子への付着物や内包物を除去するための洗浄方法としては、リスラリー洗浄などを使用することができ、適宜加温しても構わない。洗浄で使用する溶媒としては、ポリアミド微粒子を溶解せず、単量体(A)やポリマー(B)を溶解する溶媒であれば制限はなく、経済性の観点からメタノール、エタノール、イソプロパノールや水が好ましく、最も水が好ましい。単離は、減圧や加圧ろ過、デカンテーション、遠心分離、スプレードライなど適宜選択できる。乾燥は、ポリアミド微粒子の融点以下で実施するのが好ましく、減圧しても構わない。風乾、熱風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥や凍結乾燥などが選択される。
【0053】
上記の方法によってポリアミド微粒子が製造されるが、特に本発明では、これまで困難であった結晶化温度の高いポリアミド微粒子を均一な粒子径かつ真球で表面平滑な形状で製造することが可能である。
【0054】
本発明
の製造方法により得られるポリアミド微粒子を構成する高い結晶化温度のポリアミドとは、結晶化温度が150℃以上の結晶性ポリアミドを示す。結晶性に起因した融点や耐薬品性などが増加し、より耐熱性の高いポリアミドになるため、ポリアミドの結晶化温度は160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましい。形状が多孔状となるのを防ぐ観点から、ポリアミドの結晶化温度は300℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、260℃以下が特に好ましい。
【0055】
具体的に例示するならば、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミド共重合体(ポリアミド6/66)などが挙げられ、好ましくは、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミド共重合体(ポリアミド6/66)、より好ましくは、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミド共重合体(ポリアミド6/66)である。
【0056】
本発明
の製造方法により得られるポリアミド微粒子の数平均粒子径は、0.1〜100μmの範囲である。数平均粒子径が100μmを超えると、粒子から作製した塗膜表面が不均質になる。ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、80μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下が特に好ましい。数平均粒子径が0.1μm未満であると、粒子同士の凝集が発生する。ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、0.3μm以上が好ましく、0.7μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましく、2μm以上が特に好ましく、3μm以上が最も好ましい。
【0057】
本発明におけるポリアミド微粒子の粒子径分布を示す粒子径分布指数としては、3.0以下である。粒子径分布指数が3.0を超えると、塗料や化粧品用途において流動性に劣り、塗膜表面の均質性が損なわれる。粒子径分布指数は2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.3以下がさらに好ましく、1.2以下が最も好ましい。また、その下限値は、理論上1である。
【0058】
なお、ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に100個の粒子直径を特定し、その算術平均を求めることにより算出することが出来る。上記写真において、真円状でない場合、即ち楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子径とする。粒子径を正確に測定するためには、少なくとも1,000倍以上、好ましくは、5,000倍以上の倍率で測定する。また粒子径分布指数は、上記で得られた粒子径の値を、下記数値変換式に基づき、決定される。
【0060】
なお、Di:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
【0061】
本発明のポリアミド微粒子は、真球な形状に加えて表面が平滑な形態であるため、化粧品や塗料に良好な滑り性や流動性を付与することが可能である。
【0062】
ポリアミド微粒子の真球性を示す真球度は、90以上である。真球度が90に満たない場合には、化粧品や塗料の用途において、より滑らかな感触を与えることができない。真球度は、好ましくは95以上、より好ましくは97以上、さらに好ましくは98以上である。またその上限値は、100である。
【0063】
なお、ポリアミド微粒子の真球度は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に30個の粒子を観察し、その短径と長径から下記数式に従い、決定される。
【0065】
なお、S:真球度、a:長径、b:短径、n:測定数30とする。
【0066】
ポリアミド微粒子表面の平滑性は、ポリアミド微粒子がアマニ油を吸収する量で表すことが可能である。即ち、表面が平滑であるほど表面に孔の存在しない微粒子となり、アマニ油の吸収量を示すアマニ油吸油量が少なくなる。本発明のポリアミド微粒子のアマニ油吸油量は、100mL/100g以下である。ポリアミド微粒子のアマニ油吸油量が100mL/100gを超えると、化粧品や塗料に良好な流動性を与えることができない。ポリアミド微粒子のアマニ油吸油量は90mL/100g以下が好ましく、80mL/100g以下がより好ましく、70mL/100g以下がさらに好ましく、60mL/100g以下が特に好ましい。アマニ油吸油量の下限は0mL/100g以上である。
【0067】
なお、アマニ油吸油量は、日本工業規格(JIS規格)JIS K 5101「顔料試験方法 精製あまに油法」に準じて測定される。
【0068】
また表面の平滑性は、ガス吸着によるBET比表面積によっても表すことが可能であり、表面が平滑であるほど、BET比表面積は小さくなる。具体的には、10m
2/g以下であることが好ましく、より好ましくは5m
2/g以下であり、さらに好ましくは3m
2/g以下であり、特に好ましくは1m
2/g以下であり、最も好ましくは0.5m
2/g以下でる。
【0069】
なおBET比表面積は、日本工業規格(JIS規格)JIS R 1626(1996)「気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じて測定される。
【実施例】
【0070】
以下本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
(1)平均粒子径および粒子径分布指数
ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に100個の粒子直径を特定し、その算術平均を求めることにより算出した。上記写真において、真円状でない場合、即ち楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子径とした。また粒子径分布指数は、上記で得られた粒子径の値を、下記数値変換式に基づき算出した。
【0072】
【数3】
【0073】
なお、Di:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
【0074】
(2)真球度
ポリアミド微粒子の真球度は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に30個の粒子を観察し、その短径と長径から下記数式に従い算出した。
【0075】
【数4】
【0076】
なお、S:真球度、a:長径、b:短径、n:測定数30とする。
【0077】
(3)アマニ油吸油量
日本工業規格(JIS規格)JISK5101“顔料試験方法 精製あまに油法”に準じ、ポリアミド微粒子約100mgを時計皿の上に精秤し、精製アマニ油(関東化学株式会社製)をビュレットで1滴ずつ徐々に加え、パレットナイフで練りこんだ後に、試料の塊ができるまで滴下−練りこみを繰り返し、ペーストが滑らかな硬さになった点を終点とし、滴下に使用した精製アマニ油の量から吸油量(mL/100g)を算出した。
【0078】
(4)BET比表面積
日本工業規格(JIS規格)JISR1626(1996)“気体吸着BET法による比表面積の測定方法”に従い、日本ベル製BELSORP−maxを用いて、ポリアミド微粒子約0.2gをガラスセルに入れ、80℃で約5時間減圧脱気した後に、液体窒素温度におけるクリプトンガス吸着等温線を測定し、BET法により算出した。
【0079】
(5)ポリアミド微粒子を構成するポリアミドの結晶化温度と融点
TAインスツルメント社製示差走査熱量計(DSCQ20)を用いて、窒素雰囲気下、30℃からポリアミドの融点を示す吸熱ピークから30℃高い温度まで20℃/分の速度で昇温した後に1分間保持し、20℃/分の速度で30℃まで温度を冷却させる際に出現する発熱ピークの頂点を結晶化温度とした。冷却後、さらに20℃/分で昇温した際の吸熱ピークを融点とした。測定に要したポリアミド微粒子は約8mgである。
【0080】
(6)ポリアミド微粒子を構成するポリアミドの分子量
ポリアミドの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリメチルメタクリレートによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。測定サンプルは、ポリアミド微粒子約3mgをヘキサフルオロイソプロパノール約3gに溶解し調整した。
装置:Waters e−Alliance GPC system
カラム:昭和電工株式会社製HFIP−806M×2
移動相:5mmol/Lトリフルオロ酢酸ナトリウム/ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:1.0ml/min
温度:30℃
検出:示差屈折率計。
【0081】
(7)ポリマー(B)の分子量
ポリマー(B)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。測定サンプルは、ポリマー(B)約3mgを水約6gに溶解し調整した。
装置:株式会社島津製作所製 LC−10Aシリーズ
カラム:東ソー株式会社製TSKgelG3000PWXL
移動相:100mmol/L塩化ナトリウム水溶液
流速:0.8ml/min
温度:40℃
検出:示差屈折率計。
【0082】
[実施例1]
100mLのオートクレーブにε―カプロラクタム(和光純薬工業株式会社製特級、SP値19.5)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール6,000、分子量7,700、SP値21.3)6g、加水分解用に水10gを加え密封後、窒素で10kg/cm
2まで置換した。窒素を放出させながら系の圧力を0.1kg/cm
2に調整後、温度を240℃まで昇温させた。この際、系の圧力が10kg/cm
2に達した後、圧が10kg/cm
2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御した。温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm
2・分の速度で放圧させ重合を開始した。この時点で内溶液は均一透明であった。温度を255℃まで上昇させながら系内の圧力を0kg/cm
2にまで低下させ、0kg/cm
2になると同時に窒素を3時間流しながら加熱を維持し重合を完了させた。なお重合後は、内溶液が懸濁していた。窒素を再度10kg/cm
2まで充填後、室温まで冷却させた。得られた固形物に水を加え80℃に加熱し、溶解物を溶かした。得られたスラリー液のろ過を行い、ろ上物に水40gを加え、80℃で洗浄を行った。その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、粉末を2.8g得た。また、200μm超の凝集物は存在しなかった。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の214℃、結晶化温度は172℃であり、分子量は38,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド6粉末は真球の微粒子形状であり、数平均粒子径は6.6μm、粒子径分布指数は1.08、真球度は96、アマニ油吸油量は57mL/100g、BET比表面積は1.0m
2/gであった。なおポリアミド6のSP値は、21.9である。該真球ポリアミド6微粒子の走査型電子顕微鏡写真(倍率×3000)を
図1に示す。また、得られたポリアミド6微粒子の特性を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
[実施例2]
ε―カプロラクタムを5g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール6,000)を5gに変更した以外は実施例1と同様の方法で重合を行い、粉末を0.7g得た。重合開始時点では均一溶液、重合後は懸濁溶液であった。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の216℃、結晶化温度は169℃であり、分子量は44,100であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド6粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は12.9μm、粒子径分布指数1.76、真球度は95、アマニ油吸油量は54mL/100gであった。該真球ポリアミド6微粒子の走査型電子顕微鏡写真(倍率×1000)を
図2に示す。また、得られたポリアミド6微粒子の特性を表1に示す。
【0085】
[実施例3]
ε―カプロラクタムを2g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール6,000)を8gに変更した以外は実施例1と同様の方法で重合を行い、粉末を1.5g得た。重合開始時点では均一溶液、重合後は懸濁溶液であった。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の213℃、結晶化温度は172℃であり、分子量は26,800であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド6粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は5.3μm、粒子径分布指数1.24、真球度は95、アマニ油吸油量は59mL/100gであった。また、得られたポリアミド6微粒子の特性を表1に示す。
【0086】
[実施例4]
分子量の異なるポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、分子量18,600、SP値21.3)に変更した以外は実施例1と同様の方法で重合を行い、粉末を3.3g得た。重合後は均一溶液、重合終了時点では懸濁溶液であった。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の211℃、結晶化温度は170℃であり、分子量は35,600であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド6粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は6.1μm、粒子径分布指数は1.23、真球度は92、アマニ油吸油量は60mL/100gであった。また、得られたポリアミド6微粒子の特性を表1に示す。
【0087】
[実施例5]
分子量の異なるポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール35,000、分子量31,000、SP値21.3)に変更した以外は実施例1と同様の方法で重合を行い、粉末を2.1g得た。重合開始時点では均一溶液、重合後は懸濁溶液であった。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の210℃、結晶化温度は175℃であり、分子量は32,500であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド6粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は3.5μm、粒子径分布指数は1.15、真球度は93、アマニ油吸油量は59mL/100gであった。また、得られたポリアミド6微粒子の特性を表1に示す。
[実施例6]
分子量の異なるポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール2,000、分子量2,300、SP値21.3)に変更した以外は実施例1と同様の方法で重合を行い、粉末を2.3g得た。重合開始時点では均一溶液、重合後は懸濁溶液であった。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の212℃、結晶化温度は171℃であり、分子量は41,700であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド6粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は6.1μm、粒子径分布指数は1.34、真球度は93、アマニ油吸油量は53mL/100gであった。また、得られたポリアミド6微粒子の特性を表1に示す。
【0088】
[実施例7]
ポリエチレングリコールをポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリプロピレングリコール2,000、分子量3,600、SP値18.7)に変更した以外は実施例1と同様の方法で重合を行い、粉末を2.3g得た。重合開始時点では均一溶液、重合後は懸濁溶液であった。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の216℃、結晶化温度は170℃であり、分子量は38,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド6粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は21.5μm、粒子径分布指数は1.92、真球度は91、アマニ油吸油量は65mL/100gであった。また、得られたポリアミド6微粒子の特性を表1に示す。
【0089】
[実施例8]
ポリエチレングリコールをポリテトラメチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリテトラメチレングリコール2,000、分子量7,500、SP値17.9)に変更した以外は実施例1と同様の方法で重合を行い、粉末を2.3g得た。重合開始時点では均一溶液、重合後は懸濁溶液であった。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の214℃、結晶化温度は169℃であり、分子量は40,200であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド6粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は31.5μm、粒子径分布指数は2.76、真球度は90、アマニ油吸油量は63mL/100gであった。また、得られたポリアミド6微粒子の特性を表1に示す。
【0090】
[実施例9]
100mLのオートクレーブにアジピン酸1.7g(東京化成工業株式会社製、SP値25.4)、ヘキサメチレンジアミン50%水溶液2.2g(東京化成工業株式会社製、SP値19.2)、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、分子量18,600)6g、溶媒として水2.6gを加え密封後、窒素で10kg/cm
2まで置換した。窒素を放出させながら系の圧力を0.1kg/cm
2に調整後、温度を260℃まで昇温させた。この際、系の圧力が17.5kg/cm
2に達した後、圧が17.5kg/cm
2を維持するよう微放圧させながら制御した。温度が260℃に達した後に、0.6kg/cm
2・分の速度で放圧させ重合を開始した。この時点で内溶液は均一透明であった。温度を280℃まで上昇させながら系内の圧力を0にまで低下させ、0になると同時に窒素を1時間流しながら加熱を維持し重合を完了させた。なお重合後は、内溶液が懸濁していた。得られたスラリー液のろ過を行い、ろ上物に水40gを加え、80℃で洗浄を行った。その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、粉末を2.3g得た。また、200μm超の凝集物は存在しなかった。得られた粉末の融点はポリアミド66と同様の267℃、結晶化温度は211℃であり、分子量は73,600であった。また操走査型電子顕微鏡観察からポリアミド66粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は6.5μm、粒子径分布指数は1.60、真球度は91、アマニ油吸油量は56mL/100gであった。該真球ポリアミド66微粒子の走査型電子顕微鏡写真(倍率×1500)を
図3に示す。なおポリアミド66のSP値は、20.6である。また、得られたポリアミド66微粒子の特性を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
[実施例10]
100mLのオートクレーブにアミノヘキサン酸(和光純薬工業株式会社製、SP値17.5)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール6,000)6g、溶媒として水10gを加え均一な溶液を形成後に密封し、窒素で10kg/cm
2まで置換した。窒素を放出させながら系の圧力を0.1kg/cm
2に調整後、温度を240℃まで昇温させた。この際、系の圧力が10kg/cm
2に達した後、圧が10kg/cm
2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御した。温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm
2・分の速度で放圧させ重合を開始した。温度を255℃まで上昇させながら系内の圧力を0にまで低下させ、0になると同時に窒素を3時間流しながら加熱を維持し重合を完了させた。なお重合後は、内溶液が懸濁していた。窒素を再度10kg/cm
2まで充填後、室温まで冷却させた。得られた固形物に水を加え80℃に加熱し、溶解物を溶かした。得られたスラリー液のろ過を行い、ろ上物に水40gを加え、80℃で洗浄を行った。その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、粉末を1.4g得た。また、200μm超の凝集物は存在しなかった。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の216℃、結晶化温度は170℃であり、分子量は21,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド6粉末は真球の微粒子形状であり、数平均粒子径は13.1μm、粒子径分布指数は1.54、真球度は92、アマニ油吸油量は60mL/100gであった。また、得られたポリアミド6微粒子の特性を表2に示す。
【0093】
[実施例11]
アミノヘキサン酸をアミノドデカン酸(和光純薬工業株式会社製、SP値17.2)、分子量の異なるポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000)に変更した以外は実施例10と同様の方法で重合を行い、粉末を0.8g得た。なお温度を100℃以上に昇温した時点から均一な溶液を形成し、重合後は懸濁溶液であった。得られた粉末の融点はポリアミド12と同様の173℃、結晶化温度は139℃であり、分子量は110,00であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド12粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は6.6μm、粒子径分布指数1.37、真球度は94、アマニ油吸油量は54mL/100gであった。該真球ポリアミド12微粒子の走査型電子顕微鏡写真(倍率×1000)を
図4に示す。また、得られたポリアミド12微粒子の特性を表2に示す。
【0094】
[実施例12]
アミノドデカン酸を2g、ポリエチレングリコールを8gに変更した以外は実施例11と同様の方法で重合を行い、粉末を1.2g得た。得られた粉末の融点はポリアミド12と同様の175℃、結晶化温度は136℃であり、分子量は50,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド12粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は6.0μm、粒子径分布指数1.30、真球度は96、アマニ油吸油量は58mL/100gであった。また、得られたポリアミド12微粒子の特性を表2に示す。
【0095】
[比較例1]
ポリエチレングリコールをジメチルシリコーンオイル(信越化学工業株式会社製KF−96H、10,000cs、分子量88,400、SP値14.5)、洗浄時の水をトルエンに変更した以外は実施例1と同様の方法で重合を行った。重合開始時点で2相に分離しており、重合後はシリコーンとポリアミドの2相に粗大分離したままであった。トルエンを使用して洗浄を行ったが、200μm超にポリアミド凝集物が3.2g回収され、粒子は得られなかった。
【0096】
[比較例2]
ポリエチレングリコールをポリスチレン(アルドリッチ株式会社製ポリスチレンMw=280,000、分子量278,400、SP値16.6)、洗浄時の水をトルエンに変更した以外は実施例1と同様の方法で重合を行った。重合開始時点で2相に分離しており、重合後はポリスチレンとポリアミドの2相に粗大分離したままであった。トルエンを使用して洗浄を行ったが、200μm超にポリアミド凝集物が3.3g回収され、粒子は得られなかった。
【0097】
[比較例3]
撹拌機を備え付けた反応容器に流動パラフィン355mL、ε−カプロラクタム109g、N,N‘−エチレンビスアデアラアミド0.6g、微細シリカ0.5gを加え、650rpmで撹拌した。容器を100℃まで加熱し200トルの真空下で流動パラフィン31mLを留去させ、残存水分を取り除いた。系を大気圧に戻した後に、窒素流入下で水素化ナトリウム0.5gを加え密封後、60分間撹拌した。温度を110℃に昇温後、1時間かけて温度を130℃まで昇温させ重合を開始すると同時に、ステアリルイソシアネート2.9gを0.02g/分の速度で系中にポンプを介して送液した。なお、重合開始時点で溶液は懸濁していた。重合は、130℃まで昇温後に2時間維持して重合を完了させた。温度を室温まで冷却後に、トルエンで流動パラフィンを洗浄後に、粉末を85g得た。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の210℃、結晶化温度は165℃であり、分子量は34,400であった。また操作型電子顕微鏡観察からポリアミド6粉末は不定形の微粒子であり、数平均粒子径は18.0μm、粒度分布指数は1.30、真球度は68であった。該不定形ポリアミド6微粒子の走査型電子顕微鏡写真(倍率×1000)を
図5に示す。また、得られたポリアミド6微粒子の特性を表2に示す。
【0098】
[比較例4]
水を使用しないこと以外は実施例10と同様の方法で重合を行ったが、重合開始時点で2相に分離しており、重合後はポリアミド6とポリエチレングリコールの2相に粗大分離し、ポリアミド6粒子は得られなかった。
【0099】
[比較例5]
水を使用しないこと以外は実施例11と同様の方法で重合を行ったが、重合開始時点で2相に分離しており、重合後はポリアミド12とポリエチレングリコールの2相に粗大分離し、ポリアミド12粒子は得られなかった。