(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558521
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】濁水の清澄化方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20190805BHJP
E03B 3/04 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
C02F1/00 L
E03B3/04
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-227383(P2013-227383)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-85285(P2015-85285A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月19日
【審判番号】不服2018-1475(P2018-1475/J1)
【審判請求日】2018年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【合議体】
【審判長】
菊地 則義
【審判官】
豊永 茂弘
【審判官】
小川 進
(56)【参考文献】
【文献】
特公平6−98246(JP,B2)
【文献】
特開平10−114934(JP,A)
【文献】
特開昭51−119844(JP,A)
【文献】
実公昭63−50794(JP,Y2)
【文献】
特開昭60−261817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
E03B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面近傍に設けられた取水口の近傍に、上部にフロートを有し、組紐の芯の周りの複数の片持ち構造のループ繊維をモール状加工したラッシュを有する組紐からなる水透過垂下膜状体を、水流に対し対向するように多重展張した表層取水浄化装置を設置し、濁水を該装置の水透過垂下膜状体を透過させることで清浄化した水流を前記ラッシュにより下降流にするとともに、前記取水口から清澄化水を取水することを特徴とする、濁水の清澄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム、湖沼、調整池、沈澱池、排水池、河川などの濁水の清澄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ダム、湖沼、調整池、沈澱池、排水池、河川などの水は、降雨時や田園の代掻き、土砂崩れ等により高濁水として滞留貯水される。これらの濁水中の微粒子は、長時間の沈降時間を要し、長時間に亘り濁水状態が保持される。
これらの濁水を上水道、工業用水、発電、特に工業用水などに使用する場合、実際の基準値以上の濁水となり、対応ができずに使用できない事態がしばしば生起していた。また上水道では、原水の高濁度化が沈砂池内の沈殿物の増加を来すために、沈澱池の凝集上限値を超える濁度が数千mg/Lになると長時間の処理が困難になる等の問題等が発生するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記したようなダム、湖沼、調整池、沈澱池、排水池、河川などから取水して上水道、工業用水、発電などに用いる場合に取水口近傍に付着型フェンスを多重展張し、濁水を該付着型フェンスを通過させて濁水の原因物質である微粒子状物質を除去して清澄化し前記目的を達成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、水面近傍に設けられた取水口に至る水流路に対し、上部にフロートを有し、機能性を有する水透過垂下膜状体を水流に対し対向するように多重展張した表層取水浄化装置を有する水透過垂下膜状体を透過させて処理した後前記取水口から清澄化水を取水することを特徴とする濁水の清澄化方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明方法によれば、水透過垂下膜状体に設けられた機能性物質により、交差流を生起させ、濁水中の微粒子(汚濁物質)を捕捉し易くし、さらに水透過垂下膜状体を透過(通過)摺ることによって水流が下降流となるために水面部近傍に微粒子が拡散するのを防止することができる。
また本発明に使用する表層取水浄化装置はフォローティング式であるため容易に設置することができ、使用場所も任意のところに設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】水透過垂下膜状体を示す縄(なわ)のれんの正面図
【
図4】小規模ダムに水透過垂下膜状体を設置した態様を示す斜視図
【
図5】小規模ダムに水透過垂下膜状体を設置した態様を示す平面図
【
図6】小規模ダムに水透過垂下膜状体を設置した態様を示す縦断面図
【
図7】ダムに水透過垂下膜状体を設置した他の態様を示す斜視図
【
図10】ダムに水透過垂下膜状体を設置した他の態様を示す平面図
【
図12】ダムに水透過垂下膜状体を設置した他の態様を示す平面図
【
図14】ダム湖に表層取水浄化装置を設置した態様を示す縦断面図
【
図15】ダム湖に表層取水浄化装置を設置した態様を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明方法に使用する水透過垂下膜状体1としては
図1に示すようなネット2、また
図2に示すような縄のれん状3のものが使用でき、その他不織布やモールコード等の様々なものが使用できる。
ここで云うモールコードは、ロープの芯の周りに複数の小さなループ繊維を螺旋にモール状加工した組紐を云う。
前記ネットの網目は一般的に1〜4cm程度のものが好ましく、また縄のれん状の場合は、0.1〜2cmの太さのものが好ましく、さらに三つ打ち、八つ打ちで構成されたロープがその表面に凹凸部が多くあるので好ましい。
【0008】
また、水透過垂下膜状体1には、その表面に機能性物質が設けられている。この機能性物質として
は ラッシュが好ましい。
ここで云うラッシュは、ロープの芯の周りに複数のループ繊維
を モール状加工した組紐を云
う。
本発明の機能性物質のラッシュは、ロープの芯からループ繊維が10cm以上あり、片持ち構造となっている為、ループ繊維に付着物が着いても重力で自然に剥落し、水底に沈降して転がりながら粒子径を大きくして、再浮上しにくい水底の沈殿物質となる。
【0009】
このように機能性を有する水透過垂下膜状体1は、
図3に示すように必要により支持枠を介して、その上部にフロート4を一体に設ける。そして、水透過垂下膜状体1の縦幅(水深方向)は設置場所の水深および濁水の濁度によって異なるが、一般的には1〜5mであることが好ましい。また横幅な表層取水浄化装置の規模に応じて適宜選択することができる。
【0010】
この機能性を有する水透過垂下膜状体1は水流に対しその膜状面を対向するように設置し、かつ前後の水透過垂下膜状体1の間に間隔を設けて多重展張する。なお水透過垂下膜状体1間の間隔は、単位時間当りに取水量および濁水の濁度のよって適宜決定することができるが、一般的には0.6〜5mの間隔を設けることが好ましい。また水透過垂下膜状体1の下端部には、巻き上りを防止するために重錘5が設けられている。
【0011】
次に小規模ダムに設置し、濁水の清澄化方法について
図4で説明する。
取水塔6の両サイドの壁面にレール7を鉛直に設置する。コの字形の支持枠(図示せず)を介してフロートを設けた水不透過垂下膜(下端部に重錘5を設ける)8はレール7を水位の変化によって上下にスライドするように設けられており、かつ両サイドに設けられた水不透過垂下膜(シート膜)8の間に水透過垂下膜状体1を間隔を設けて多重展張する(
図4においては5条展張した場合を示す)。
【0012】
また他の態様として
図5および
図6に示すようにダム幅いっぱいにフロート付の水透過垂下膜状体1を水流に対し対向するように多重展張することもできる(
図5および
図6においては二重展張の場合を示す)。このような展張方法を採用すると流木流入防止も行うことができる。
本発明方法は、前記した取水塔6を囲繞するように水透過垂下膜状体1を設置したり、ダム幅いっぱいに設置したりすることができ、場合によっては
図5および
図6に示すように併用することもできる。
【0013】
また他の態様として
図7、
図8および
図9に示すように半円形の支持枠を介して上部にフロートを、下部に水透過垂下膜状体1を取り付けて取水塔を囲繞するように間隔を設けて半円形状に多重展張することもできる。
さらに他の態様として
図10および
図11に示すように長方型の短辺部の一方を半円型にした上部支持枠9の側部にフロート10を設け、半円型部分にはゴミ等を除去するためのネット11を設ける。ネット11の下部は、前記上部支持枠9と同型の下部支持枠12に固定する。そして上部支持枠9内には水流に対して対向するように上部にフロートを有する水透過垂下膜状体1を間隔を設けて多重展張する(
図9は4条展張した場合を示した)。また半円型部の対向する短辺部には隔壁13を有する取水口部14を下部支持枠12に固定する。取水口部14の隔壁13はその上部が水面下にあるため該隔壁13を越流させて取水できるので清澄化を効率的に取水することができる。また前記取水口部14には水面近傍部に取水口を有する取水管15を設ける。さらに下部支持枠12にはスリット状の底部16を設けることもできる。このスリット状の底部16を設けることによって水深の浅いところに設置しても下部からの濁水の巻き上げ防止することができると共に、水透過垂下膜状体1から剥離落下してもスリット間から外に排出できる。
【0014】
さらに他の態様としては
図12および
図13に示すように六角型の型枠を2個調整し、上部六角型型枠(図示せず)の上部にフロートを一体に設け、また上部六角型の型枠の下部に水透過垂下膜状体1を一体に設ける。このように六角形状に多重展張することによって表層取水浄化装置を調製する。
また六角形の中心部に水面近傍に取水口17を有する取水管18を設ける。この取水管18は上部六角型型枠および下部支持枠19に固定されている。また外縁部を構成する水透過垂下膜状体1は
図13に示すように下部が水不透過性の垂下膜体20で構成され、上部が水透過垂下膜状体で構成されているものも使用することができる。
【0015】
図10および
図12に示したような表層取水浄化装置の場合は
図14に示すようにフレキシブル耐圧ホース21を用いてダムに設けられ新設された取水管22に接続下流側河川等を送水する。