(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施態様を列記して説明する。
【0013】
(1)本発明の実施形態に係る接続部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成されて送電線に接続される接続部材であって、前記送電線が圧縮接続される圧縮把持部と、前記送電線と導通される相手部材に接続される接合面と、を備え、前記接合面は、その表面にめっき層を備える。
【0014】
上記の接続部材は、相手部材に接続される接合面の表面にめっき層を備えることで、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成された接合面が腐食や酸化することを抑制できる。よって、接続部材と相手部材との導通経路となる接合界面に、アルミニウムの酸化物が絶縁物として介在されることを抑制できる。そのため、その導通経路での電気抵抗の増大を抑制でき、異常過熱の発生を抑制できる。
【0015】
(2)上記の接続部材の一例として、前記送電線はジャンパ線であり、前記相手部材は送電線本線を把持するクランプ本体であり、前記接続部材は前記クランプ本体と連結されるジャンパソケットであり、前記接合面は前記ジャンパソケットにおける前記クランプ本体との連結面である形態が挙げられる。
【0016】
接続部材がジャンパソケットであることで、クランプ本体との間で導通経路を確保でき、送電線本線とジャンパ線との間で良好な導通を確保することができる。
【0017】
(3)上記の接続部材の一例として、前記送電線は送電線本線であり、前記相手部材はジャンパ線を把持するジャンパソケットであり、前記接続部材は前記ジャンパソケットと連結されるクランプ本体であり、前記接合面は前記クランプ本体における前記ジャンパソケットとの連結面である形態が挙げられる。
【0018】
接続部材がクランプ本体であることで、ジャンパソケットとの間で導通経路を確保でき、送電線本線とジャンパ線との間で良好な導通を確保することができる。
【0019】
(4)上記の接続部材の一例として、前記接続部材は、電気機器又はアダプタが接続される羽子板状の接合面を備える圧縮端子である形態が挙げられる。
【0020】
接続部材が圧縮端子であることで、圧縮端子に接続される電気機器又はアダプタとの間で導通経路を確保でき、送電線と電気機器又はアダプタとの間で良好な導通を確保することができる。
【0021】
(5)上記の接続部材の一例として、前記めっき層は、その構成金属の酸化物の電気抵抗率が1Ω・m以下である形態が挙げられる。
【0022】
上記構成によれば、めっき層が酸化して酸化物が生成され、その酸化物が接合界面に介在されたとしても、電気抵抗の大幅な増大を抑制することができ、異常過熱の発生を抑制することができる。
【0023】
(6)上記の接続部材の一例として、前記めっき層は、最表面がスズめっき層である形態が挙げられる。
【0024】
めっき層の最表面がスズめっき層であることで、めっき層を介して相手部材との良好な導通を確保することができる。スズめっき層が酸化してめっき層の最表面に比較的硬いスズ酸化物が生成されたとしても、このスズ酸化物は、熱伸縮や振動などによって荷重が加わることで容易に破壊され易いからと考えられる。よって、再度、柔らかいスズが露出されるため、めっき層を介して相手部材との良好な導通を確保することができる
【0025】
(7)上記の接続部材の一例として、前記めっき層は、前記接合面側から順に、亜鉛めっき層、ニッケルめっき層、スズめっき層が積層された積層構造である形態が挙げられる。
【0026】
接合面がアルミニウム又はアルミニウム合金から構成されているため、接合面とスズめっき層との間に亜鉛めっき層及びニッケルめっき層を備えることで、接合面とスズめっき層との間に高い密着性を有することができる。
【0027】
(8)上記の接続部材の一例として、前記めっき層は、厚さが3μm以上10μm以下である形態が挙げられる。
【0028】
めっき層が3μm以上であることで、接合面の腐食や酸化を抑制し易い。めっき層の厚さは、厚いほど接合面の腐食や酸化を抑制する効果が大きいが、10μm超だとその効果に差は見られない傾向にあると考えられる。よって、めっき層が10μm以下であることで、十分に接合面での酸化などを抑制でき、かつめっき層の材料を低減し、かつめっき時間を低減することができる。
【0029】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態の詳細を、以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図中の同一符号は、同一名称物を示す。
【0030】
≪実施形態1≫
・全体構成
実施形態1では、
図1,2に示すように、ACSRなどの送電線の本線Mが圧縮接続されるクランプ本体10と、ジャンパ線Jが圧縮接続されるジャンパソケット20と、を備える圧縮形引留クランプ1αを例にして、接続部材を説明する。クランプ本体10は、接続部材であり、本線Mが圧縮接続される圧縮把持部11と、ジャンパソケット20に接続される本体側接合部12と、を備える。ジャンパソケット20は、接続部材であり、ジャンパ線Jが圧縮接続される圧縮把持部21と、クランプ本体10に接続されるソケット側接合部22と、を備える。クランプ本体10及びジャンパソケット20は、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成されている。本体側接合部12の接合面12mと、ソケット側接合部22の接合面22mと、が接触して電気的かつ機械的に接続されることで、本線Mとジャンパ線Jとが電気的に接続される。つまり、クランプ本体10とジャンパソケット20とは互いに接続される相手部材であり、本体側接合面12mとソケット側接合面22mとは互いに相手部材との連結面である。本実施形態1の圧縮形引留クランプ1αの主たる特徴とするところは、クランプ本体10の本体側接合面12m及びジャンパソケット20のソケット側接合面22mが、その表面にめっき層100を備えることにある。以下、まずクランプ本体10とジャンパソケット20の基本構成を説明し、その後にクランプ本体10及びジャンパソケット20における各接合面12m,22mについて説明する。
【0031】
・クランプ本体及びジャンパソケットの基本構成
クランプ本体10は、
図1,2に示すように、円筒形でその内部に送電線の本線Mが圧縮接続される圧縮把持部11と、ジャンパソケット20との連結面である本体側接合面12m(
図2)を有する板状の本体側接合部12と、を備える。圧縮把持部11は、本線Mの鋼心部を圧縮接続する鋼心圧縮部と、鋼心圧縮部の外側から被せて配置され、本線Mのアルミニウム撚線部を圧縮接続するアルミニウム圧縮部と、を備える。鋼心圧縮部は、鉄塔の碍子に接続するための取付部13が引留め側(
図1の右側)に突設されている。本体側接合部12は、圧縮把持部11の引留め側(
図1の右側)の端部において、圧縮把持部11の軸方向とほぼ直交する平面に延設されている。本体側接合部12には、複数の挿通孔12h(
図2)が形成されている。
【0032】
ジャンパソケット20は、
図1,2に示すように、円筒形でその内部にジャンパ線Jが圧縮接続される圧縮把持部21と、クランプ本体10との連結面であるソケット側接合面22mを有する二股状のソケット側接合部22と、を備える。ソケット側接合部22は、クランプ本体10の本体側接合部12を挟み込んで配置される。ソケット側接合部22の二股部分は、それぞれ矩形板であり、本体側接合部12に対応した大きさを有する。また、各二股部分は、その間に本体側接合部12が介在されるような間隔を有する。各二股部分には、複数の挿通孔22h(
図2)が形成されている。本体側接合部12の挿通孔12hと、ソケット側接合部22の各二股部分の挿通孔22hと、を位置合わせして、両挿通孔12h,22hにボルト40を挿通してナットで締め付けることで、本体側接合部12とソケット側接合部22とは、各接合面12m,22mが接触して導通状態を確保して接続される。
【0033】
上記クランプ本体10及びジャンパソケット20の基本構成には、公知の構成のものを用いることができる
【0034】
・クランプ本体及びジャンパソケットの接合面について
クランプ本体10の本体側接合部12は、
図2に示すように、ジャンパソケット20のソケット側接合部22と対向する本体側接合面12mの表面にめっき層100を備える。本体側接合部12は、その表裏がソケット側接合部22で挟み込まれるため、本体側接合部12の表裏の接合面12mのそれぞれにめっき層100を備える。本体側接合部12の側面は、ソケット側接合部22に対向配置されておらず外方に露出されているため、ここでは、めっき層を備えない。同様に、ジャンパソケット20のソケット側接合部22は、
図2に示すように、クランプ本体10の本体側接合部12と対向するソケット側接合面22mの表面にめっき層100を備える。ソケット側接合部22は、本体側接合部12を挟み込んで配置するため、ソケット側接合部22の二股部分の内側の接合面22mにめっき層100を備える。ソケット側接合部22の側面は、本体側接合部12に対向配置されておらず外方に露出されているため、ここでは、めっき層を備えない。
【0035】
めっき層100は、本体側接合面12mとソケット側接合面22mとの接合界面において、互いに良好な電気的接触を確保するために設けられる。クランプ本体10及びジャンパソケット20は、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成されているため、上記接合界面において酸化すると、その酸化物は絶縁物となって電気抵抗が増大する。本体側接合面12m及びソケット側接合面22mの各表面にめっき層100を備えることで、上記接合界面におけるアルミニウムの酸化物の形成を抑制することができ、接合界面を介しての導通を確保することができる。
【0036】
めっき層100は、その構成金属の酸化物の電気抵抗率が1Ω・m以下であることが好ましい。めっき層100の構成金属が酸化した酸化物の電気抵抗が1Ω・m以下であることで、本体側接合面12mとソケット側接合面22mとの接合界面に酸化物(絶縁物)が介在していたとしても、その接合界面での電気抵抗の増大を抑制でき、接合界面を介しての導通を十分に確保することができる。めっき層100の構成金属が酸化した酸化物の電気抵抗は、1×10
−1Ω・m以下、1×10
−2Ω・m以下、特に1×10
−3Ω・m以下であることが好ましい。
【0037】
また、めっき層100は、ビッカース硬さHvが60以下であることが好ましい。めっき層100の硬さ(ビッカース硬さHv)が60以下であることで、本体側接合面12mとソケット側接合面22mとの接合界面において、ボルト40による締め付けに伴い、上記接合界面の微小な隙間を埋めることができ、雨水や外気などの侵入を抑制し易い。また、各接合面12m,22mの全面に亘ってめっき層100で覆うことができるため、めっき層100が介在することで各接合面12m,22mにおけるアルミニウムの酸化物の生成を回避することができる。めっき層100の硬さ(ビッカース硬さHv)は、3以上であり50以下、さらに30以下、20以下、特に10以下であることが好ましい。
【0038】
さらに、めっき層100は、本体側接合面12m及びソケット側接合面22mを構成するアルミニウム又はアルミニウム合金の線膨張係数との差異が小さい金属材料で構成されていることが好ましい。そうすることで、圧縮形引留クランプ1αの使用条件下における高温においても安定した密着性を確保し易く、各接合面12m,22mの露出を抑制し易い。めっき層100の線膨張係数は、20×10
−6/℃以上25×10
−6/℃以下程度が挙げられる。
【0039】
他に、めっき層100は、その構成金属の酸化物が、圧縮形引留クランプ1αの使用条件下における熱伸縮や振動、ボルト40による締付力によって破壊され得る金属材料で構成されていることが好ましい。そうすることで、めっき層100の構成金属の酸化物が生成されたとしても、上記熱伸縮や振動などによって荷重が加わることで破壊され易く、再度、めっき層100が露出されるため、本体側接合面12mとソケット側接合面22mとの接合界面に酸化物(絶縁物)が常に介在される状態を回避し易い。
【0040】
めっき層100の厚さは、3μm以上10μm以下であることが挙げられる。めっき層100が3μm以上であることで、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成される接合面12m,22mの腐食や酸化を抑制し易い。めっき層100の厚さは、厚いほど接合面12m,22mの腐食や酸化を抑制する効果が大きいが、10μm超だとその効果に差は見られない傾向にあると考えられる。よって、めっき層100が10μm以下であることで、十分に接合面12m,22mでの酸化などを抑制でき、かつめっき層100の材料を低減し、めっき時間も低減できる。めっき層100の厚さは、さらに2μm以上8μm以下、3μm以上6μm以下、特に4μm以上5.5μm以下、5μm程度であることが挙げられる。
【0041】
めっき層100は、
図2の右側に示す拡大図のように、本体側接合面12m(ソケット側接合面22m)側から順に、亜鉛めっき層110、ニッケルめっき層120、スズめっき層130が積層された積層構造であることが挙げられる。ここでは、本体側接合面12mの表面に形成されるめっき層100と、ソケット側接合面22mの表面に形成されるめっき層100と、は同様としている。
【0042】
めっき層100の最表面に形成されるスズめっき層130は、本体側接合面12mとソケット側接合面22mとの接合界面において、互いに良好な電気的接触を確保するために形成される。スズめっき層130は、Sn(不可避不純物が含まれる場合もある)で構成される層である。めっき層100の最表面にスズめっき層130を備えることで、以下のような効果を奏する。(1)スズめっきは柔らかいため、上記接合界面の微小な空隙を埋め易く、アルミニウムの酸化物の生成を抑制し易い。(2)スズの酸化物は比較的電気抵抗が低いため、スズめっき層130の表面にスズの酸化物が生成されたとしても、電気抵抗の増大を抑制し易い。スズの酸化物には三つの形態が存在するが、特に二酸化スズ(SnO
2)は、比較的高い導電性を有するため、上記接合界面において、良好な導通を確保できる。(3)スズの酸化物は荷重が加わることで容易に破壊されるため、スズの酸化物が生成されたとしても、再度柔らかいめっき層100が露出し易く、上記接合界面における密着性を確保でき、良好な導通を確保できる。(4)スズはアルミニウム又はアルミニウム合金の線膨張係数との差異が小さく、圧縮形引留クランプ1αの使用条件下における高温においても安定した密着性を確保し易い。
【0043】
スズめっき層130の厚さは、3μm以上10μm以下であることが挙げられる。スズめっき層130の厚さが3μm以上であることで、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成される接合面12m,22mの腐食や酸化を抑制し易い。スズめっき層130の厚さは、厚いほど接合面12m,22mの腐食や酸化を抑制する効果が大きいが、10μm超だとその効果に差は見られない傾向にあると考えられる。よって、スズめっき層130が10μm以下であることで、十分に接合面12m,22mでの酸化などを抑制でき、かつスズめっき層130の材料を低減し、めっき時間も低減できる。
【0044】
ニッケルめっき層120は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成される接合面12m,22mとスズめっき層130との間の密着性を高めるために形成される。ニッケルは、アルミニウムや亜鉛に対してもスズに対しても高い密着性を有するからである。また、ニッケルめっき層120は、接合面12m,22m直上の亜鉛めっき層110からスズめっき層130に亜鉛原子が拡散する役割も果たす。
【0045】
ニッケルめっき層120の厚さは、1μm以上10μm以下であることが挙げられる。ニッケルめっき層120の厚さは、1μm以上であることで、接合面12m,22mとスズめっき層130との間の密着性を向上できる。ニッケルめっき層120の厚さが10μm以下であることで、十分に接合面12m,22mとスズめっき層130との密着性を確保でき、かつニッケルめっき層120の材料を低減し、めっき時間も低減できる。
【0046】
亜鉛めっき層110は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成される接合面12m,22mの表面に、電解めっきによってニッケルめっき層120及びスズめっき層130を形成するために形成される。アルミニウム又はアルミニウム合金は、活性な金属であるため、大気といった酸素含有雰囲気に曝されると酸化されて酸化物が生成される。アルミニウムの酸化物は絶縁物であるため、導通が必要な電解めっきを利用しためっき層の形成が難しい。一方、亜鉛めっき層110は、無電解めっき(化学めっき)によって行うことができる(ジンケート処理とも言う)ので、アルミニウムの酸化物に覆われた接合面12m,22mであっても、亜鉛めっき層110を形成することができる。亜鉛めっき層110の表面にはそれほど厚い酸化被膜は形成されないので、無電解めっきによって、一旦接合面12m,22mの表面に亜鉛めっき層110を形成すれば、その上に電解めっきによってめっき層(ここではニッケルめっき層112)を形成することが可能となる。
【0047】
亜鉛めっき層110は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成される接合面12m,22m上に電解めっきによってめっき層を形成することができ、均一で緻密である程度の厚さであればよく、薄ければ薄いほどよい。
【0048】
上記多層構造のめっき層100は、接合面12m,22mの直上に無電解めっきによって亜鉛めっき層110を形成した後、電解めっきによってニッケルめっき層120及びスズめっき層130を順に形成すればよい。
【0049】
本体側接合面12mにめっき層100を備えるクランプ本体10と、ソケット側接合面22mにめっき層100を備えるジャンパソケット20とを組み付けると、本体側接合面12mとソケット側接合面22mとの接合界面は、互いのめっき層100の最表面にあるスズめっき層130同士の接合界面となる。上述したように、スズめっき層130は柔らかいため、スズめっき層130同士の接合によって上記接合界面の微小な空隙を埋め易く、アルミニウムの酸化物の生成を抑制し易い。また、スズめっき層130の表面にスズの酸化物が生成されたとしても、荷重が加わることで容易に破壊され、再度柔らかいスズめっき層130が露出し易く、上記接合界面における密着性を確保でき、良好な導通を確保できる。
【0050】
ここでは、本体側接合面12mとソケット側接合面22mとの接合界面において、双方の接合面12m,22mにめっき層100を備えているが、いずれか一方の接合面にめっき層100を備えていてもよい。つまり、接続部材に接続される相手部材の接合面は、めっき層を備えていてもよいし、省略してもよい。例えば、ジャンパソケット20のソケット側接合面22mにめっき層100を備え、クランプ本体10の本体側接合面12mにはめっき層を備えない形態とすることができる。つまり、圧縮形引留クランプ1αを構成するクランプ本体10及びジャンパソケット20のうち、ジャンパソケット20を接合面22mにめっき層100を備える本実施形態の接続部材とし、クランプ本体10を従来のクランプ本体とすることができる。
【0051】
この場合、クランプ本体10とジャンパソケット20とを組み付けると、本体側接合面12mとソケット側接合面22mとの接合界面は、本体側接合面12mとソケット側接合面22m上のめっき層100(スズめっき層130)との接合界面となる。本体側接合面12mの表面は、ジャンパソケット20側のめっき層100によって覆われることになる。よって、本体側接合面12m上でのアルミニウムの酸化物の生成をある程度は抑制できる。しかし、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成される接合面12mとスズめっき層130との間の密着性に若干劣るため、本体側接合面12m及びソケット側接合面22mの双方にめっき層100を備える場合に比較して、アルミニウムの酸化物の生成抑制効果は劣る虞がある。
【0052】
めっき層100は、少なくとも相手部材との対向面である接合面に形成される。ここでは、クランプ本体10は、ジャンパソケット20との連結面である本体側接合面12mにめっき層100が形成されている。この他に本体側接合部12の側面にもめっき層100が形成されていてもよい。本体側接合部12の全面に亘ってめっき層100を備えると、めっき層100を備えない領域に対してマスキングを行う手間が省けて、製造性に優れる。しかし、めっき層100の最表面(スズめっき層130)が酸化されて酸化物が生成されると、変色する場合があり、外方に露出される領域にめっき層130を備えると、見栄えを損なう虞がある。よって、本体側接合部12のうち、ジャンパソケット20との連結面である本体側接合面12mに、めっき層130を備えることが好ましい。ジャンパソケット20についても、同様であり、ソケット側接合部22の側面にもめっき層100が形成されていてもよい。
【0053】
・効果
本実施形態1の圧縮形引留クランプ1αは、クランプ本体10の本体側接合面12mと、ジャンパソケット20のソケット側接合面22mとの接合界面において、めっき層100が介在されることで、アルミニウムの酸化物の生成を抑制できる。よって、上記接合界面を介しての導通経路の電気抵抗の増大を抑制でき、異常過熱の発生を抑制できる。
【0054】
めっき層100の最表面にスズめっき層130を備えることで、(1)本体側接合面12mとソケット側接合面22mとの接合界面における微小な空隙を埋め易く、アルミニウムの酸化物の生成をさらに抑制し易い。(2)スズの酸化物は電気抵抗が低いため、スズめっき層130の表面にスズの酸化物が生成されたとしても、電気抵抗の増大を抑制し易い。(3)スズの酸化物は荷重が加わることで容易に破壊されるため、スズの酸化物が生成されたとしても、再度柔らかいめっき層100が露出し易い。(4)圧縮形引留クランプ1αの使用条件下における高温においても安定した密着性を確保し易い。
【0055】
本体側接合面12m及びソケット側接合面22mの双方の表面にめっき層100を備えることで、クランプ本体10とジャンパソケット20とを組み付けると、本体側接合面12mとソケット側接合面22mとの接合界面は、互いのめっき層100の最表面にあるスズめっき層130同士の接合界面となる。よって、上記(1)〜(4)の効果をさらに高めることができる。
【0056】
≪実施形態2≫
実施形態2では、
図3に示すように、送電線の本線Mが圧縮接続されるクランプ本体10と、ジャンパ線Jが圧縮接続されるジャンパソケット20と、を備える金車通過型クランプ1βを例にして、接続部材を説明する。金車通過型クランプ1βは、クランプ本体10及びジャンパソケット20の基本構成として、クランプ本体10とジャンパソケット20との連結箇所が、実施形態1の圧縮形引留クランプ1αと異なる。金車通過型クランプは、送電線Mを鉄塔にクランプで引留めるにあたり、クランプ本体10に電線Mを圧縮接続し、ジャンパソケット20を組み付けていない状態で、電線Mを金車にかけて所定の位置まで移送する際に用いるものである。その他の構成については、実施形態1と同様である。
【0057】
クランプ本体10は、接続部材であり、本線Mが圧縮接続される円筒状の圧縮把持部11と、ジャンパソケット20との連結面である本体側接合面12mを有する本体側接合部12と、を備える。圧縮把持部11は、その引留め側(
図3の右側)領域に、軸方向両側に平坦面を有しており、この平坦面がジャンパソケット20と接合される本体側接合面12mである(
図3の右図)。つまり、本体側接合部12は、圧縮把持部11の外周面の一部に配置されており、圧縮把持部11の軸方向に沿った外縁から突出していない。本体側接合部12には、複数の挿通孔が形成されている。ジャンパソケット20は、接続部材であり、ジャンパ線Jが圧縮接続される円筒状の圧縮把持部21と、クランプ本体10との連結面であるソケット側接合面22mを有するソケット側接合部22と、を備える。ソケット側接合部22は、クランプ本体10の本体側接合部12(円筒状部材の両側面)を挟み込んで配置する二股状である。この二股部分は、本体側接合部12の軸方向に沿って延設されている。二股部分には、複数の挿通孔が形成されている。本体側接合部12の挿通孔と、ソケット側接合部22の二股部分の挿通孔と、を位置合わせして、両挿通孔にボルト40を挿通して固定することで、本体側接合部12とソケット側接合部22とは、各接合面12m,22mが接触して導通状態を確保して接続される。
【0058】
クランプ本体10の本体側接合部12は、ジャンパソケット20のソケット側接合部22と対向する本体側接合面12mの表面にめっき層を備える。同様に、ジャンパソケット20のソケット側接合部22は、クランプ本体10の本体側接合部12と対向するソケット側接合面22mの表面にめっき層を備える。めっき層については、実施形態1と同様である。金車通過型クランプ1βにおいても、クランプ本体10の本体側接合面12mと、ジャンパソケット20のソケット側接合面22mとの接合界面において、めっき層100が介在されることで、アルミニウムの酸化物の生成を抑制できる。よって、上記接合界面を介しての導通経路の電気抵抗の増大を抑制でき、異常過熱の発生を抑制できる。
【0059】
≪実施形態3≫
実施形態3では、
図4に示すように、送電線の本線Mが圧縮接続されるクランプ本体10と、ジャンパ線Jが圧縮接続されるジャンパソケット20と、を備える金車通過型クランプの別形態として短尺クランプ1γを例にして、接続部材を説明する。短尺クランプ1γは、クランプ本体10及びジャンパソケット20の基本構成として、クランプ本体10とジャンパソケット20との連結箇所が、実施形態2の金車通過型クランプ1βと異なる。
【0060】
短尺クランプ1γは、実施形態2の金車通過型クランプ1βと同様に、クランプ本体10には圧縮把持部11の外周面の一部に本体側接合部12が配置されており、ジャンパソケット20には本体側接合部12を挟むように二股状のソケット側接合部22が形成されている。本体側接合部10には貫通孔は形成されておらず、ソケット側接合部22と接触しない領域の対向面(円筒状部材の上下面)にそれぞれ等間隔に複数の溝部(ここでは三つの凹部)を備える。ソケット側接合部22には、本体側接合部12を挟み込んだ際に、本体側接合部12の上下面にある溝部に対応した位置に貫通孔を備える。本体側接合部12の溝部と、ソケット側接合部22の挿通孔と、を位置合わせして、挿通孔にボルト40を挿通すると共にボルトを溝部に沿わせることで、本体側接合部12を上下のボルト40で挟んだ状態とする(
図4の右図を参照)。この状態でボルト40を固定すると、本体側接合部12とソケット側接合部22とは、各接合面12m,22mが接触して導通状態を確保して接続される。本体側接合部12及びソケット側接合部22の各接合面12m,22mの表面にめっき層を備える点は実施形態2と同様である。
【0061】
≪実施形態4≫
クランプ本体とジャンパソケットとを備える各種クランプにおいて、クランプ本体とジャンパソケットとを分岐アダプタを介して連結することができる。具体的には、一つのクランプ本体と複数のジャンパソケットとを分岐アダプタで連結し、電流を本線から複数のジャンパ線に分岐することができる。分岐アダプタは、一つのクランプ本体と複数のジャンパソケットとを連結する導電部材である。クランプ本体及びジャンパソケットは、本体側接合面及びソケット側接合面がそれぞれ分岐アダプタとの連結面である点が実施形態1〜3と異なり、それ以外の基本的な構成や、接合面にめっき層を備える点については実施形態1〜3と同様である。つまり、クランプ本体は、本線が圧縮接続される圧縮把持部と、分岐アダプタとの連結面である本体側接合面と、を備える接続部材であり、分岐アダプタが相手部材となる。同様に、ジャンパソケットは、ジャンパ線が圧縮接続される圧縮把持部と、分岐アダプタに接続されるソケット側接合面と、を備える接続部材であり、分岐アダプタが相手部材となる。以下に、一つのクランプ本体と二つのジャンパソケットとを分岐アダプタを介して連結する形態を説明する。
【0062】
分岐アダプタは、クランプ本体との連結面である第一接合面を有する二股状の第一接合部と、一方のジャンパソケットとの連結面である第二接合面を有する板状の第二接合部と、他方のジャンパソケットとの連結面である第三接合面を有する板状の第三接合部と、を備える。分岐アダプタは、例えば、第一接合部と第二接合部と第三接合部とが一体に設けられたY字状部材である。分岐アダプタの各接合部には、複数の挿通孔が形成されている。分岐アダプタの各接合面には、めっき層を備えることが好ましい。
【0063】
クランプ本体は、本体側接合部が分岐アダプタの第一接合部の二股部分により挟み込んで配置される。本体側接合部の挿通孔と、第一接合部の各二股部分の挿通孔と、を位置合わせして、両挿通孔にボルトを挿通してナットで締め付ける。それにより、本体側接合部と第一接合部とは、本体側接合面と第一接合面とが接触して導通状態を確保して接続される。ジャンパソケットは、ソケット側接合部の二股部分で第二接合部(第三接合部)を挟み込んで配置される。ソケット側接合部の各二股部分の挿通孔と、第二接合部(第三接合部)の挿通孔と、を位置合わせして、両挿通孔にボルトを挿通してナットで締め付ける。それにより、ソケット側接合部と第二接合部(第三接合部)とは、ソケット側接合面と第二接合面(第三接合面)とが接触して導通状態を確保して接続される。
【0064】
≪実施形態5≫
複数のジャンパソケット同士を、アダプタを介して連結することができる。アダプタは、例えば、複数のジャンパソケット間に介在される導電部材である。導電部材は、ソケット側接合部の二股部分に配置され、ジャンパソケットとの連結面となる接合面を複数有する接続プレートや分岐プレートなどが挙げられる。接続プレートは、一対の接合部を有し、一対の接合部にそれぞれ接続される一対のジャンパソケット間で導通させるものである。分岐プレートは、三つ以上の接合部を有し、三つ以上の接合部にそれぞれ接続される三つ以上のジャンパソケット間で導通させるものであり、一つのジャンパソケットから残部のジャンパソケットに電流を分岐させるものである。導電部材の接合面(接合部)には、複数の挿通孔が形成されている。導電部材の接合面には、めっき層を備えることが好ましい。各ジャンパソケットの二股部分に導電部材を配置して、ジャンパソケットの挿通孔と、導電部材の挿通孔と、を位置合わせして、両挿通孔にボルトを挿通してナットで締め付ける。それにより、ジャンパソケットの接合部と導通部材の接合部とは、ジャンパソケットの接合面と導通部材の接合面とが接触して導通状態を確保して接続される。この場合、導電部材で接続された複数のジャンパソケット間で電流を分岐したりすることができる。
【0065】
≪実施形態6≫
実施形態6では、
図5に示すように、送電線の本線Mが圧縮接続される圧縮把持部91と、電気機器又はアダプタが接続される羽子板状の接合部92と、を備える圧縮端子1δを例にして、接続部材を説明する。圧縮端子1δは、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成されている。圧縮端子1δのように、電気機器又はアダプタと導通接続される接合面92mにめっき層を備えることで、接合面92mにおいて、アルミニウムの酸化物が生成されることを抑制できる。よって、この接合面92mを介しての導通経路の電気抵抗の増大を抑制でき、異常過熱の発生を抑制できる。
【0066】
圧縮端子1δと接続される電気機器は、例えば、ブッシングやトランスなどが挙げられる。圧縮端子1δと接続されるアダプタは、例えば、複数の圧縮端子1δ,…間に介在される導電部材などが挙げられる。導電部材は、複数の圧縮端子1δ,…の各接合面92m,…と接合する複数の接合面を有する接続プレートや分岐プレートなどが挙げられる。接続プレートや分岐プレートは、実施形態5で説明したものと同様のものを利用できる。圧縮端子1δの挿通孔92hと、導電部材の接合部の挿通孔と、を位置合わせして、両挿通孔にボルトを挿通してナットで締め付ける。それにより、圧縮端子1δの接合部92と導通部材の接合部とは、圧縮端子1δの接合面92mと導通部材の接合面とが接触して導通状態を確保して接続される。この場合、導電部材で接続された複数の端子部材1δ,…間で電流を分岐したりすることができる。