(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558540
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】竪型粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
B02C15/04
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-235797(P2015-235797)
(22)【出願日】2015年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-100086(P2017-100086A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】三隅 高寛
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆昌
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−71306(JP,A)
【文献】
特開平6−277542(JP,A)
【文献】
実開平4−940(JP,U)
【文献】
特開平4−74542(JP,A)
【文献】
実開平4−50140(JP,U)
【文献】
特開昭60−114356(JP,A)
【文献】
実開平1−163440(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 15/00−15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブル上面で粉砕原料を介して粉砕ローラを回転自在に転動させて前記粉砕原料を粉砕する竪型粉砕機において、
前記回転テーブル上面に環状のテーブルライナを平面視で扇形状に複数分割して配置し、前記テーブルライナの外周側にダムリングを設け、前記テーブルライナを複数分割した延長線上の前記ダムリングに微粉排出部を設けたことを特徴とする竪型粉砕機。
【請求項2】
前記微粉排出部は、前記ダムリングに形成した溝又は孔、複数分割したダムリング間の隙間のいずれか1つまたはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の竪型粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、石炭、オイルコークス、石灰石、スラグ、クリンカ、セメント原料、その他の無機原料、又は化学品、バイオマス等の有機原料を所定粒径の粉体に粉砕する竪型粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭、バイオマス等の原料を粉砕する粉砕機として、竪型粉砕機が広く用いられている。従来の竪型粉砕機は、粉砕機の外郭を形成するケーシング内に、回転テーブルと、回転テーブルの上面外周部を円周方向に等分する位置に配置した複数個の粉砕ローラを備えている。
【0003】
このような竪型粉砕機は、回転テーブルの中央に粉砕原料が供給されると回転テーブルの回転により、粉砕原料が回転テーブルの外周部へと移動する。外周部には、粉砕ローラが圧接して回転しているので、粉砕原料は、粉砕ローラと回転テーブルの間へ侵入して粉砕される。そして、回転テーブルの外周面とケーシングの内周面との間の環状通路から吹き上がる熱空気によって、熱空気とともに粉粒体が乾燥されながらケーシング内を上昇する。粉粒体は、ケーシング内の上部に設けた分級手段によって振り分けられて所定粒度の製品が外部へ排出される。分級手段を通過できない粗粉は再度回転テーブル上に落下して、目標の粒サイズになるまで繰り返し粉砕される。
【0004】
この竪型粉砕機にはテーブルの外周部にダムリングが設けられている。ダムリングは、回転する回転テーブル上の原料の層厚をある一定値に保持して、遠心力により回転テーブルの中心から外周に向かって滑動する原料を一定時間回転テーブル上に保持して粉砕ローラと回転テーブルとの間でなされる粉砕作用を行わせる役割がある。
【0005】
ところで、粉砕ローラの粉砕面である外周面のうちで、もっとも粉砕作用を行う位置は、過去の運転実績における摩耗の進行程度から判断すると、粉砕ローラの外径側、すなわち最もダムリングの内周面に近い位置である。従って、粉砕ローラに粉砕面圧が最も加わり粉砕作用が大きい粉砕ローラ大径部分直下の位置で細粉砕され、粉砕ローラとダムリングの間に粉砕された細粒物が集まり滞留する。
粉砕された細粒物は、回転テーブル上面に敷設されたテーブルライナ(耐摩耗材)の分割部分の隙間に、粉砕ローラによって圧し付けられる。環状のテーブルライナは、回転テーブルの中心側に近い方を内径側、回転テーブル外側を外径側とする扇形状に分割されている(例えば特許文献1に開示)。
【0006】
前述したようにテーブルライナは、扇形状の外径側が粉砕時に強く圧接し、内径側の圧し付け力が小さい。このテーブルライナは硬化肉盛溶接やセラミックを粉砕面に配した板状に形成されている。そして回転テーブル上面への固定は、ボルトなどの締結ではなく、テーブルライナの大径側と内径側が浮き上がらないように、別金物でテーブルライナの周囲を固定している。その理由は、回転テーブル上面は粉砕ローラが圧接する部分であり、粉砕物を微粉砕(例えばセメント原料の場合、ブレン値約3000程度)されるので、粉砕ローラと回転テーブルの間隔は狭くなる。固定用ボルトなどの突起が回転テーブル上面にあると粉砕層確保や粉体の流れを阻害するので、突起物などを粉砕面に配することができないためである。
【0007】
具体的なテーブルライナはほぼ平板状に加工され、回転テーブル上面に敷設されている。テーブルライナは、粉砕ローラと接する面を硬化肉盛溶接したり、クロム鋼にセラミック粒を鋳込んだりしたものが使用される。これらの加工時の熱影響で、完全な平板を製造することは難しい。また回転テーブル上面に敷設したときにテーブルとの間、テーブルライナの敷設間に隙間が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平1−163440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この隙間に粉砕ローラによって圧接された微粉砕物が圧し付けられて、隙間に押し込められる。そして粉砕時に隙間に粉体が圧し付けられてテーブルライナの下側に入り込み、テーブルライナを変形させる外力が作用したり、粉体の侵入箇所に局所的な摩耗が発生したりする。特に、硬化肉盛溶接を施したテーブルライナの溶接ビードには冷却時にヘアークラックが多く現れるが、テーブルライナ本体の変形によって、ヘアークラックが大きなクラックとなり、本体の割れや剥離トラブルの要因となっていた。
【0010】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、テーブルライナの分割部分に粉体が侵入することを低減して、テーブルライナの変形、摩耗を防止して粉砕効率の向上を図れる竪型粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するための第1の手段として、回転テーブル上面で粉砕原料を介して粉砕ローラを回転自在に転動させて前記粉砕原料を粉砕する竪型粉砕機において、前記回転テーブル上面に環状のテーブルライナを平面視で扇形状に複数分割して配置し、前記テーブルライナの外周側にダムリングを設け、前記テーブルライナを複数分割した延長線上の前記ダムリングに微粉排出部を設けたことを特徴とする竪型粉砕機を提供することにある。
上記のように、テーブルライナを複数分割した延長線上のダムリングに微粉排出部を設けているので、テーブルライナの分割部分に押し付けられた粉体を延長線上に設けたダムリングの微粉排出部から回転テーブルの外部へ排出することができ、テーブルライナの分割箇所の隙間に粉砕荷重によって微粉砕された粉体が圧し付けられる量を低減して、テーブルライナの変形や摩耗を効果的に抑制して粉砕効率を高めることができる。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、前記第1の手段において、前記微粉排出部は、前記ダムリングに形成した溝又は孔、複数分割したダムリング間の隙間のいずれか1つまたはこれらの組み合わせであることを特徴とする竪型粉砕機を提供することにある。
このような構成を採用することにより、テーブルライナの分割箇所の隙間に粉砕荷重によって微粉砕された粉体が圧し付けられる量を低減して、テーブルライナの変形や摩耗を効果的に抑制して粉砕効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記のような本発明によれば、テーブルライナの分割箇所の隙間に粉砕荷重によって微粉砕された粉体が圧し付けられる量を低減して、テーブルライナの変形や摩耗を効果的に抑制して粉砕効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】竪型粉砕機の回転テーブル上面の一部を拡大した斜視図である。
【
図3】微粉排出部を形成したダムリングの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の竪型粉砕機の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図1は竪型粉砕機の回転テーブル上面の一部を拡大した斜視図である。
図2は回転テーブル上面の平面図である。
図3は微粉排出部を形成したダムリングの説明図である。
図4は竪型粉砕機の構成概略図である。
【0016】
[竪型粉砕機10]
図4に示すように竪型粉砕機10は、ケーシング12と、回転テーブル14と、回転テーブル14の上面外周部を円周方向に等分する位置に配置した複数個の粉砕ローラ16と、回転テーブル14の外周に沿って形成した環状通路40と、ケーシング12の上部に設けた分級手段30と、回転テーブル上面14Aに敷設した環状のテーブルライナ17と、回転テーブル14の外周縁部上に取り付けたダムリング48と、微粉排出部50を主な基本構成としている。
【0017】
粉砕ローラ16は、支点となる下部ケーシング12Bに回動自在に軸着した上部アーム20と、上部アーム20と一体に形成した下部アーム22とを介して油圧シリンダ24のピストンロッドに連結されている。粉砕ローラ16は油圧シリンダ24の作動によって回転テーブル上面14Aに押圧されて、回転テーブル14に粉砕原料を介して従動することによって回転する。
【0018】
回転テーブル上面14Aには、テーブルライナ17が敷設されている。テーブルライナ17は、粉砕ローラ16の粉砕面と対向する環状の耐摩耗材である。このテーブルライナ17は、硬化肉盛溶接やセラミックを粉砕面に配した板状であって、回転テーブル16の半径方向に沿って放射状に分割した扇形状(回転テーブル14の円周をほぼ45度の中心角で8等分してできる扇形)、又は回転テーブル14の円周をほぼ45度の中心角で等分してできる扇形の両側辺を回転テーブル14の回転方向(
図2(B)に示す矢印)に所定の角度で前傾したほぼ扇形状を、環状に並べて形成されている。そして、回転テーブル上面への取り付けは、固着金物18を用いている。このような回転テーブル上面14Aに敷設されたテーブルライナ17は、分割部分に隙間が生じている。
【0019】
ケーシング12の回転テーブル上面14Aの上方には、分級手段30が設けられている。
分級手段30は、回転軸30aと、回転羽根30bと、固定羽根30cを備えている。回転軸30aはケーシング12の上面から下方へ垂下し、外部の駆動モータ(不図示)により回転自在な構成である。回転軸30aの下部には、回転軸30aを軸心として環状に複数の回転羽根30bが並んで形成されている。さらに、回転羽根30bの外周には、複数の固定羽根30cが並んで形成されている。回転羽根30b及び固定羽根30cはいずれも、長手方向が回転軸30aの軸心と平行に配置されており、ケーシング12内を上昇してきた熱空気は、回転軸30a軸心と平行な羽根の隙間から供給される。このような構成の分級手段30は、回転軸30aと共に回転羽根30bが回転し、固定羽根30cと回転羽根30bを通過した微細な粉粒体(微粉)のみが上部取出口44から排出される。
【0020】
固定羽根30cの下端部には、内部コーン30e及びフィード管30fが設けられている。内部コーン30eは、上方から下方に向かって径が小さくなる漏斗状に形成し、フィード管30fは、内部コーン30eの下端に接続する円筒状に形成し、分級手段30を通過できなかった粉粒体を捕捉して、フィード管30fを介して下部の排出口から回転テーブル上面14Aへ供給する構造となっている。
【0021】
内部コーン30eには、原料投入シュート34が接続している。この原料投入シュート34を介して原料投入口32から回転テーブル上面14Aに原料が投入される。
原料投入シュート34から投入した原料は、回転テーブル上面14Aを渦巻き状の軌跡を描きながら回転テーブル上面14Aの外周部に移動して、回転テーブル上面14Aと粉砕ローラ16の間に噛み込まれ粉砕される。そして、粉砕された粉粒体の一部は、回転テーブル上面14Aの外縁部に周設されて原料の層厚を調整するダムリング48を乗り越えて、回転テーブル上面14Aの外周部とケーシング12の隙間である環状通路40へと向かう。ここで、下部ケーシング12Bの回転テーブル14の下方には、所定温度に加熱された熱空気を導入するためのガス導入口42を設けている。
【0022】
竪型粉砕機10の運転中において、ガス導入口42より熱空気を導入することによって、ケーシング12内において回転テーブル14の下方から分級手段30を通過して上部取出口44へと流れる熱空気の上昇気流が生じている。
竪型粉砕機10内に投入した原料と、回転テーブル14と粉砕ローラ16に粉砕されてダムリング48を乗り越えた粉粒体の一部は、環状通路40からの熱空気によって吹き上げられてケーシング12内を上昇し、分級手段30に到達する。
【0023】
ここで、径及び質量の大きな粉粒体は、分級手段30の固定羽根30c及び回転羽根30bを通過することができず、内部コーン30eに落下して再度粉砕ローラ16に噛み込まれて粉砕される。一方、径の小さな粉粒体は、隙間を開けて並べられた固定羽根30c及び回転羽根30bの間を抜けて分級手段30を通過して上部取出口44よりケーシング12外へ取り出される。
また、粉砕ローラ16に噛み込まれずそのまま環状通路40に達したような一部の極大の粒径の原料は、環状通路40より回転テーブル14の下方に落下して下部取出口46より竪型粉砕機10の外に取り出される。
【0024】
[微粉排出部50]
微粉排出部50は、テーブルライナ17を複数分割した延長線上に位置するダムリング48(延長線と交差するダムリング48)に形成されている。
図1,2(A)に示す微粉排出部50は、ダムリング48を回転テーブル上面14Aの半径方向に沿って複数分割したリング同士の隙間である。
この他にも
図3(1)に示すように微粉排出部50は、ダムリング48の上面から下方へ切り欠いた溝や、
図3(2)に示すようにダムリング48の下面から上方へ切り欠いて回転テーブル14との間に形成された孔の形態を採用することもできる。
【0025】
このような微粉排出部50は、環状のテーブルライナ17を半径方向又は半径方向と交差する方向に沿って複数分割した延長線上に位置するダムリング48に形成しているので、分割したテーブルライナ17間の隙間に圧し付けられた粉体を回転テーブル14の回転によって生じる遠心力によってテーブルの外周側へと移動した後、微粉排出部50から回転テーブル上面14Aの外部へ排出させることができる。
【0026】
[作用]
上記構成による本発明の竪型粉砕機の作用について、以下説明する。
竪型粉砕機10の回転テーブル14を回転させると、油圧シリンダ24によって回転テーブル上面14Aに押圧された粉砕ローラ16も回転する。そして、原料投入口32から回転テーブル上面14Aに粉砕原料が投入されると、回転テーブル上面14Aに落下して回転テーブル上面14Aを渦巻き状の軌跡を描きながら遠心力でテーブルの外周部に設けたダムリング48側へ移動する。この移動途中で粉砕原料は、粉砕ローラ16と回転テーブル14の間で圧縮粉砕されて微粉化する。そして粉砕ローラ16とダムリング48の間の回転テーブル上面14Aに粉砕された微粉が集まって滞留する。微粉は粉砕ローラによって圧し付けられると共に、回転テーブルの遠心力で、粉砕物の密度が高くなる。
本発明の竪型粉砕機10は、環状のテーブルライナを半径方向又は半径方向と交差する方向に沿って複数分割した延長線上に位置するダムリング48に微粉排出部50を形成している。このため、分割したテーブルライナ17間の隙間に圧し付けられた粉体は、回転テーブル14の回転によって生じる遠心力によってテーブルの外周側へと移動した後、隙間の延長線上にある微粉排出部50から回転テーブル上面14Aの外部へ排出させることができる。従って、テーブルライナ17の分割箇所の隙間に粉砕荷重によって微粉砕された粉体が圧し付けられる量を低減して、テーブルライナ17の変形や摩耗を効果的に抑制して粉砕機の粉砕効率を高めることができる。
【0027】
そしてダムリング48を乗り越えた粉体や、微粉排出部50から排出された粉体は、回転テーブル14の外周面とケーシング12の内周面との間の環状通路40から吹き上がる熱空気によって、熱空気とともに乾燥されながらケーシング12内を上昇する。
粉粒体は、ケーシング12内の上部に設けた分級手段30によって振り分けられて所定粒度の製品が外部へ排出される。一方、分級手段30を通過できない粗粉は内部コーン30eを介して再度回転テーブル上面14Aに落下して所定の粒径となるまで粉砕される。
【0028】
このような本発明の竪型粉砕機によれば、テーブルライナの分割箇所の隙間に粉砕荷重によって微粉砕された粉体が圧し付けられる量を低減して、テーブルライナの変形や摩耗を効果的に抑制して粉砕効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、スラグ、セメント、石炭、バイオマス等の原料を回転テーブルの回転に従動する粉砕ローラで粉砕する竪型粉砕機に特に有用である。
【符号の説明】
【0030】
10………竪型粉砕機、12………ケーシング、12B………下部ケーシング、14………回転テーブル、14A………回転テーブル上面、16………粉砕ローラ、16a………ローラ軸、17………テーブルライナ、18………固着金物、20………上部アーム、22………下部アーム、24………油圧シリンダ、30………分級手段、30a………回転軸、30b………回転羽根、30c………固定羽根、30e………内部コーン、30f………フィード管、32………原料投入口、34………原料投入シュート、40………環状通路、42………ガス導入口、44………上部取出口、48………ダムリング、50………微粉排出部。