(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、マウスピースは口にくわえて使用するため、使用者の衛生面を考慮して、使い捨ての製品として提供されることが多い。このため、マウスピースはできるだけ安価に提供されることが望ましい。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のマウスピースは、フィルタをマウスピースの内部に取り付けるために構造が複雑化し、コストが高くなっていた。
【0006】
本発明の目的は、フィルタ付きのマウスピースを従来よりも安価に提供することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
呼吸気を流すための流路を形成する筒状のマウスピース本体と、
前記流路に配置されるフィルタと、
前記マウスピース本体の内側に挿入される筒状の挿入部材と、
を備え、
前記フィルタは、前記流路の断面形状に対応する第1のフィルタ部分と、前記第1のフィルタ部分の外周縁から折り返される第2のフィルタ部分とを有し、前記第2のフィルタ部分が前記マウスピース本体の内周面と前記挿入部材の外周面との間に挟持されている
ことを特徴とするマウスピースである。
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
前記第2のフィルタ部分の折り返し寸法が2mm以上である
ことを特徴とする上記第1の態様に記載のマウスピースである。
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記マウスピース本体の一端部にすぼみ部が設けられている
ことを特徴とする上記第1または第2の態様に記載のマウスピースである。
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
上記第1〜第3の態様のいずれか1つに記載のマウスピースと、
前記マウスピースが着脱可能に取り付けられる部材と、
を備え、
前記マウスピースを通して供給される呼気に含まれる所定の成分を検査する
ことを特徴とする呼気検査装置である。
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
呼吸気を流すための流路を形成する筒状のマウスピース本体と、前記流路に配置されるフィルタと、前記マウスピース本体の内側に挿入される筒状の挿入部材と、を準備する工程と、
前記挿入部材の一端部に前記フィルタを被せる工程と、
前記フィルタの一部を折り返して前記挿入部材を前記マウスピース本体の内側に挿入することにより、前記フィルタの折り返し部分を前記マウスピース本体の内周面と前記挿入部材の外周面との間に挟み込む工程と、
を備えるマウスピースの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルタ付きのマウスピースを従来よりも安価に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.マウスピースの構成
2.マウスピースの製造方法
3.マウスピースの使用方法
4.呼気検査装置の構成
5.呼気検査装置の使用方法
6.実施形態の効果
7.変形例等
【0011】
<1.マウスピースの構成>
図1は本発明の実施形態に係るマウスピースの構成例を示す断面図であり、
図2(A)は
図1に示すマウスピースを左方向から見た図、(B)は右方向から見た図である。また、
図3は本発明の実施形態に係るマウスピースの構成例を示す分解斜視図である。
図示したマウスピース1は、筒状のマウスピース本体2と、フィルタ3と、筒状の挿入部材4と、を備える。
【0012】
(マウスピース本体)
マウスピース本体2は、呼吸気を流すための流路6を形成するものである。ここで記述する「呼吸気」とは、「呼気および/または吸気」を意味する。マウスピース本体2は、たとえば樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂、より好ましくはポリプロピレンで構成されている。また、マウスピース本体2は、マウスピース本体2内に配置されるフィルタ3や挿入部材4の位置、状態等を外部から目視で確認できるよう、透明または半透明の材料で構成することが好ましい。
【0013】
マウスピース本体2は、断面円形の筒状(円筒状)に形成されている。このため、マウスピース1は、全体的にストロー形状になっている。ここで記述する「ストロー形状」とは、中心軸が真っ直ぐ(直線上)に延びる円筒形をいう。マウスピース本体2の肉厚は、好ましくは、0.2mm以上1.0mm以下に設定される。マウスピース本体2の長さは、好ましくは、5cm以上10cm以下に設定される。ただし、マウスピース本体2の肉厚および長さは、それぞれ、マウスピース1の使用目的に応じて適宜設定または変更することが可能である。マウスピース本体2の長さとは、マウスピース本体2の中心軸方向の寸法をいう。
【0014】
マウスピース本体2の中心軸方向の一端部には開口7が形成され、同他端部には開口8が形成されている。開口7,8は、それぞれ円形に形成されている。マウスピース本体2の中心軸方向の一端部は、内向きに丸みをつけたすぼみ部9になっている。このすぼみ部9においては、マウスピース本体2の内径および外径が、開口7に向かって徐々に小さくなっている。これに対して、マウスピース本体2の他端側では、マウスピース本体2の内径および外径が、開口8に向かって一様に同じ径になっている。このため、開口8の口径は、開口7の口径よりも大きくなっている。
【0015】
(フィルタ)
フィルタ3は、呼吸気に含まれる塵埃やウィルス、細菌、唾液などを捕集して感染を予防するためにマウスピース1に設けられる。フィルタ3は、好ましくは、ポリプロピレン製の不織布によって構成される。フィルタ3は、好ましくは、BFE(細菌濾過効率)が75%以上、PFE(微粒子濾過効率)が93%以上の性能をもつ素材で構成される。フィルタ3は適度な厚みを有している。なお、フィルタ3の性能は、フィルタ3を構成する素材(不織布など)の目の細かさや厚み寸法などで決まるため、所望の性能を満たす素材でフィルタ3を構成するとよい。
【0016】
フィルタ3は、マウスピース本体2が形成する流路6に配置されている。フィルタ3は、マウスピース本体2の中心軸方向において、開口7の近傍に配置されている。フィルタ3は、流路6の断面形状に対応する第1のフィルタ部分3aと、第1のフィルタ部分3aの外周縁から折り返される第2のフィルタ部分3bとを一体に有している。流路6の断面形状とは、マウスピース本体2をその中心軸方向と直交する方向で断面したときの流路6の形状をいう。本実施形態においては、マウスピース本体2が円筒状に形成されている。このため、流路6の断面形状が円形になっており、これに対応して第1のフィルタ部分3aの形状も円形になっている。ここで記述する第1のフィルタ部分3aの形状とは、マウスピース本体2の中心軸方向からフィルタ3を見たときの第1のフィルタ部分3aの形状をいう。
【0017】
第2のフィルタ部分3bは、第1のフィルタ部分3aの外周縁から直角に折り返されている。第2のフィルタ部分3bは、マウスピース本体2の内周面と挿入部材4の外周面との間に挟持されている。挟持とは、挟んで支持することを意味する。マウスピース本体2の内径と挿入部材4の外径との差は、それらの隙間部分に挟まれるフィルタ3(第2のフィルタ部分3b)に適度な圧縮力が加わるよう、フィルタ3の厚み寸法よりも小さく設定されている。たとえば、フィルタ3の厚み寸法が0.5mmであるとすると、マウスピース本体2の内径と挿入部材4の外径との差によって生じる隙間寸法は0.4mm以下に設定される。
【0018】
第2のフィルタ部分3bの折り返し寸法Lは、好ましくは2mm以上、より好ましくは3.5mm以上、さらに好ましくは5mm以上である。ただし、折り返し寸法Lが長すぎると、その分だけフィルタ3として実質的に機能しない無駄な部分が増える。また、マウスピース1を製造する際の組立性が悪化するおそれもある。このため、第2のフィルタ部分3bの折り返し寸法Lは、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
【0019】
(挿入部材)
挿入部材4は、マウスピース本体2の内部でフィルタ3を保持するために、マウスピース本体2の内側に挿入される部材である。挿入部材4は、マウスピース本体2の内部(筒内)に、マウスピース本体2と同心状に配置される。挿入部材4は、たとえば樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂、より好ましくは、マウスピース本体2と同一の素材であるポリプロピレンで構成されている。挿入部材4は、マウスピース本体2と同様に、断面円形の筒状(円筒状)に形成されている。挿入部材4の肉厚は、好ましくは、マウスピース本体2と同様に、0.2mm以上1.0mm以下に設定される。挿入部材4の長さは、マウスピース本体2から挿入部材4が突出しないよう、マウスピース本体2の長さよりも短く設定される。たとえば、マウスピース本体2の長さが5cm以上10cm以下であるとすると、挿入部材4の長さは3cm以上5cm未満に設定される。ただし、挿入部材4の長さは、マウスピース本体2の長さに応じて適宜設定または変更することが可能である。挿入部材4の長さとは、挿入部材4の中心軸方向の寸法をいう。
【0020】
挿入部材4の中心軸方向の一端部には開口11が形成され、同他端には開口12が形成されている。挿入部材4の開口11は、フィルタ3(第1のフィルタ部分3a)によって塞がれている。なお、ここでは説明の便宜上、開口11と開口12に別々の符号を付しているが、挿入部材4はその中心軸方向で左右対称構造になっているため、開口11と開口12の位置関係は逆であってもかまわない。挿入部材4は、その中心軸方向全体にわたって内径および外径が一様に同じ径になっている。このため、開口11の口径と開口12の口径とは、互いに同一の径に設定されている。挿入部材4の外径は、マウスピース本体2の内径よりも小さく設定されている。また、挿入部材4の外径は、好ましくは、マウスピース本体2の開口7の口径よりも大きく設定するとよい。
【0021】
<2.マウスピースの製造方法>
続いて、本発明の実施形態に係るマウスピースの製造方法について説明する。
【0022】
まず、マウスピース1の構成部材となるマウスピース本体2、フィルタ3および挿入部材4を準備する。
【0023】
次に、
図4に示すように、組立用治具15に挿入部材4とフィルタ3をセットする。組立用治具15は、ベース部16と、ベース部16から起立する大径軸部17と、大径軸部17の上端から起立する小径軸部18と、を備える。ベース部16は、平らな板状に形成されている。大径軸部17と小径軸部18は、互いに同軸状に配置されている。小径軸部18の外径は、挿入部材4の内径よりも小さく設定されている。小径軸部18の長さは、挿入部材4の長さよりも短く設定されている。大径軸部17の外径は、挿入部材4の外径よりも大きく、かつマウスピース本体2の内径よりも小さく設定されている。大径軸部17と小径軸部18を合わせた長さは、マウスピース本体2の長さよりも短く設定されている。
【0024】
上記構成の組立用治具15に挿入部材4とフィルタ3をセットする場合は、まず、小径軸部18に挿入部材4を嵌め入れることにより、挿入部材4の下端部を大径軸部17の上端部に突き当てる。これにより、挿入部材4が小径軸部18によって垂直に支持される。
【0025】
次に、挿入部材4の上端部にフィルタ3を被せる。フィルタ3は、マウスピース本体2や挿入部材4の断面形状にあわせて正面視円形(
図3)に形成されている。このとき、
図5に示すように、フィルタ3と挿入部材4が同心円状に配置されるように、フィルタ3の中心部を挿入部材4に位置合わせする。その際、挿入部材4に被せたフィルタ3の位置が安易にずれないよう、挿入部材4の開口端に、滑り止め効果を奏する細かい凹凸を形成してもよい。これにより、挿入部材4の上端部に被せたフィルタ3の位置ずれやこれに伴う落下などを抑制することができる。
【0026】
次に、挿入部材4の直上に、開口8を下向きにしてマウスピース本体2を配置した後、フィルタ3の上からマウスピース本体2を押し込む。このとき、フィルタ3の外側の部分は、マウスピース本体2に押されて折り返される。また、挿入部材4は、マウスピース本体2の内側に挿入(圧入)される。その結果、フィルタ3の折り返し部分(第2のフィルタ部分3b)は、マウスピース本体2の内周面と挿入部材4の外周面との間に挟み込まれる。なお、フィルタ3については、フィルタ3の上からマウスピース本体2を押し込む前に、作業者の手で折り返してもよい。また、挿入部材4の開口端に滑り止め用の細かい凹凸を形成しておけば、マウスピース本体2を押し込んだ際のフィルタ3の位置ずれを抑制することができる。
【0027】
また、挿入部材4にフィルタ3を被せたときに、フィルタ3の外側に適度な被り代L1(
図5)を確保しておけば、マウスピース本体2の押し込む途中でフィルタ3の位置がずれたとしても、挿入部材4の円周方向の全周にわたってフィルタ3の折り返し部(第2のフィルタ部分3b)を確保することができる。なお、フィルタ3の被り代L1は、フィルタ3の外側を折り返す前の、挿入部材4の外径とフィルタ3の外径の差に相当する。このため、フィルタ3の外側を折り返して第2のフィルタ部分3bを設けた場合、第2のフィルタ部分3bの折り返し寸法L(
図1)は、フィルタ3の位置ずれがないものと仮定すると、被り代L1と同等の寸法になる。
【0028】
上述のようにマウスピース本体2を押し込む場合は、マウスピース本体2の開口8側の端部がベース部16に突き当たるまでマウスピース本体2を押し込んでもよいし、挿入部材4に被せた
フィルタ3がマウスピース本体2のすぼみ部9に突き当たるまでマウスピース本体2を押し込んでもよい。後者の場合は、マウスピース本体2に挿入部材4を挿入するときに、マウスピース本体2のすぼみ部9がストッパーとして機能する。このため、すぼみ部9のストッパー機能を利用して、マウスピース本体2と挿入部材4を相対的に位置合わせすることができる。
以上で、
図1に示すマウスピース1が得られる。
【0029】
<3.マウスピースの使用方法>
本発明の実施形態に係るマウスピース1は、使用者が口にくわえて使用する。その際、使用者は、マウスピース本体2の開口7側の端部を口にくわえる。このとき、マウスピース本体2にすぼみ部9を形成しておけば、マウスピース1をくわえたときにすぼみ部9の丸みによって口当たりが柔らかくなる。また、マウスピース1をくわえた使用者が呼吸をするときに、唾液の飛沫がマウスピース1内に侵入しにくくなる。
【0030】
上述のように使用者がマウスピース1をくわえて呼吸をすると、呼気および吸気は、マウスピース本体2内を次のように流れる。まず、呼気は、マウスピース本体2の開口7から流路6に向かって流れ込むとともに、流路6に配されたフィルタ3を通して開口8から流れ出る。このとき、呼気に含まれる細菌、ウィルス等はフィルタ3によって捕集される。一方、吸気は、マウスピース本体2の開口8から流路6に流れ込むとともに、流路6に配されたフィルタ3を通して開口7から流れ出る。このとき、吸気に含まれる細菌、ウィルス等はフィルタ3によって捕集される。したがって、使用者ごとに新しいマウスピース1を使用すれば、感染予防の効果が得られる。
【0031】
<4.呼気検査装置の構成>
図6は本発明の実施形態に係る呼気検査装置の構成例を示す側面図であり、
図7は同平面図である。また、
図8(A)は
図6に示す呼気検査装置を左方向から見た図であり、同図(B)は右方向から見た図である。
【0032】
図示した呼気検査装置21は、ケース22と、マウスピース1と、ケーブル23と、を備える。ケース22の内部には、マウスピース1を使用する使用者の呼気や吸気の通り道となる通路(不図示)と、この通路を通る呼気に含まれる所定の成分を検査するためのセンサ(不図示)が設けられている。このセンサは、たとえば、マウスピース1を通してケース22内に供給される呼気中の成分として、たとえば、呼気に含まれる所定のガス濃度を検査(検出)する。所定のガス濃度の一例としては、二酸化炭素の濃度を挙げることができる。その場合、センサは、赤外線を出射する発光部と、発光部が出射した赤外線を受光する受光部と、を用いて構成することが可能である。
【0033】
マウスピース1は、ケース22に取り付けられている。ケース22には、図示しない筒部が設けられている。筒部は、ケース22内の上記通路に連通する。連通とは、空間的につながるという意味である。マウスピース1は、ケース22の筒部に対して着脱可能に取り付けられるようになっている。具体的には、ケース22にマウスピース1を取り付ける場合は、マウスピース本体2の開口8をケース22の筒部に嵌め入れる。これにより、マウスピース本体2の開口7やすぼみ部9は、ケース22から遠い側に配置される。このため、呼気検査装置21を使用する使用者は、マウスピース1の開口7側の端部を容易に口にくわえることが可能となる。一方、ケース22からマウスピース1を取り外す場合は、ケース22から離間する方向にマウスピース1(マウスピース本体2)を引き抜く。これにより、ケース22に取り付けるマウスピース1を交換することが可能となる。なお、ここではマウスピース1が着脱可能に取り付けられる部材の一例として、ケース22を挙げたが、これ以外の部材にマウスピース1を取り付ける構成になっていてもよい。
【0034】
ケーブル23は、呼気検査装置21と図示しない計測装置とを電気的に接続するためのケーブルである。ケーブル23の長さは、必要に応じて適切な長さに設定される。ケーブル23は、計測装置から呼気検査装置21に上記センサを駆動するための電力を供給したり、計測装置と呼気検査装置
21との間で上記センサの駆動を制御する制御信号の受け渡しをしたり、上記センサで検出した結果を電気信号として出力したりするために用いられる。なお、ここでは呼気検査装置21と計測装置を別々に構成しているが、これに限らず、これらを一体で構成することも可能である。
【0035】
<5.呼気検査装置の使用方法>
続いて、本発明の実施形態に係る呼気検査装置21の使用方法について説明する。
まず、呼気検査を受ける被検者(使用者)の手に、マウスピース1付きの呼気検査装置21を持たせる。次に、マウスピース1の開口7側を被検者の口にくわえてもらう。次に、被検者に自然に呼吸してもらい、その状況でセンサを用いた呼気検査を行う。この呼気検査では、被検者の呼気に含まれる所定の成分の一例として、呼気中の二酸化炭素濃度を検査する。呼気中の二酸化炭素濃度はEtCO
2で表される。EtCO
2は、呼気終末二酸化炭素濃度(end tidal CO
2)を意味する用語である。二酸化炭素濃度(EtCO
2)の測定には、たとえば、波長が3.75μm以上4.25μm以下の中赤外線を利用するセンサを用いるとよい。
【0036】
実際に被検者がマウスピース1を口にくわえて呼吸すると、被検者の呼吸に応じて、マウスピース本体2内の流路6を呼気および吸気が交互に流れる。また、呼気検査装置21のケース22内の通路にも呼気および吸気が交互に流れる。このとき、被検者が息を吐き出したときに通路を流れる呼気の移動方向と、被検者が息を吸い込んだときに通路を流れる吸気の移動方向とは、互いに反対方向になる。すなわち、被検者が息を吐き出したときは、マウスピース1からケース22内の通路に向かって呼気が流れ、被検者が息を吸い込んだときは、ケース22内の通路からマウスピース1に向かって吸気が流れる。
【0037】
このような状況のもとで、ガス濃度検出用のセンサは、発光部から赤外線を発光するとともに、この赤外線を受光部で受光することにより、通路内を流れる呼気中の二酸化炭素濃度を検出する。具体的な検出原理は次のとおりである。まず、二酸化炭素は、発光部から出射される赤外線を吸収する性質を有する。このため、ケース22の通路を流れる二酸化炭素の濃度が相対的に高ければ、その分だけ二酸化炭素に吸収される赤外線の割合が多くなる。よって、受光部における赤外線の受光量は相対的に少なくなる。これと逆に、ケース22の通路を流れる二酸化炭素の濃度が相対的に低ければ、その分だけ二酸化炭素に吸収される赤外線の割合が少なくなる。よって、受光部における赤外線の受光量は相対的に多くなる。したがって、受光部が受光した赤外線の受光量に基づいて、被検者の呼気に含まれる二酸化炭素濃度を検出することが可能となる。
【0038】
実際の検出では、センサの受光部が出力する電気信号が、ケーブル23を通して計測装置に送られる。このとき、計測装置では、受光部から与えられた電気信号を所定のアルゴリズムにしたがって処理することにより、その電気信号を、呼気中の二酸化炭素濃度(EtCo
2)を示す数値(単位:mmHg)に変換する。そして、変換した数値を必要に応じて計測装置の表示部に表示する。呼気中の二酸化炭素濃度と動脈血中の二酸化炭素濃度との間には相関がある。このため、呼気検査装置21を用いて呼気中の二酸化炭素濃度を測定することにより、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の診断を正確に行うことができる。具体的には、たとえば、呼気中の二酸化炭素濃度が規定の値(たとえば、45mmHg)を超える場合は、COPDを発症している疑いが強いという診断を下すことができる。
【0039】
<6.実施形態の効果>
本発明の実施形態においては、マウスピース本体2、フィルタ3および挿入部材4を用いてマウスピース1を構成するとともに、マウスピース本体2と挿入部材4との間(隙間部分)にフィルタ3の一部(第2のフィルタ部分3b)を挟んで支持する構造を採用している。これにより、フィルタ付きのマウスピース1を従来よりも安価に提供することができる。
【0040】
また、マウスピース本体2は、すぼみ部9の部分を除いて、ストレートの筒状になっており、挿入部材4も、全体がストレートの筒状になっているため、それぞれの部品コストを安く抑えることができる。また、マウスピース1は非常に単純な構造であるにもかかわらず、フィルタ3をマウスピース本体2内に確実に保持することができる。
【0041】
また、フィルタ3の第2のフィルタ部分3bは、マウスピース本体2と挿入部材4の隙間部分を埋めるように挟持される。このため、フィルタ3としての機能は、第1のフィルタ部分3aだけでなく第2のフィルタ部分3bでも得られる。その場合、第2のフィルタ部分3bの折り返し寸法は、フィルタ3の厚み寸法よりも大きく確保される。このため、マウスピース本体2と挿入部材4の隙間部分から細菌、ウィルス等が漏出することを効果的に抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態に係るマウスピース1では、接着剤を使用しなくてもフィルタ3を保持することができる。このため、マウスピース1の使用者が接着剤の臭いを不快に感じたり、接着剤の成分を使用者が吸い込んだりするおそれがない。なお、本発明に係るマウスピースは、接着剤を使用しない構成を好ましい態様の1つとするものであるが、接着剤の不使用を必須の要件とするものではない。
【0043】
本発明の実施形態においては、マウスピース本体2の一端部にすぼみ部9を設けているため、マウスピース1をくわえる使用者の口当たりを柔らかくすることができる。また、マウスピース本体2に挿入される挿入部材4の位置決め用ストッパーとしてすぼみ部9を利用することもできる。
【0044】
本発明の実施形態においては、呼気検査装置21の構成として、マウスピース1をケース22に着脱可能に取り付ける構成を採用している。これにより、マウスピース1をディスポーザブル(使い捨て品)として取り扱う場合でも、上述のようにマウスピース1を低価格で提供できることから、コスト的な負担が軽くなる。このため、たとえば定期健診などで呼気検査を行う場合に、被検者ごとにマウスピース1を新しいものに換えて使用することができる。したがって、マウスピース1を消毒等する手間をかけることなく、呼気検査を衛生的に行うことができる。
【0045】
<7.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0046】
たとえば、上記実施形態においては、それぞれ筒状をなすマウスピース本体2および挿入部材4の断面形状を円形としたが、これに限らず、たとえば、四角形(正方形、長方形等)やそれ以外の多角形、または楕円形、あるいは直線と曲線を組み合わせた形状、または曲率が異なる曲線(円弧線)どうしを組み合わせた形状などであってもよい。ただし、いずれの場合もマウスピース本体2と挿入部材4の断面形状は同じ形状とするのがよい。
【0047】
また、マウスピース本体2、フィルタ3および挿入部材4の素材については、少なくともいずれか1つを紙製としてもよい。
【0048】
また、フィルタ3の素材として、不織布の代わりにガーゼを用いてもよいし、不織布とガーゼを併用してもよい。また、フィルタ3は、マウスピース本体2の開口7から開口8までの流路6上で、どこに配置されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、マウスピース本体2の一端部にすぼみ部9を設け、このすぼみ部9のストッパー機能を利用して、マウスピース本体2と挿入部材4の相対的な位置合わせを可能としたが、これに限らず、たとえば、マウスピース本体2の中心軸方向の途中に、部分的にマウスピース本体2の径を縮小した縮径部を形成し、この縮径部のストッパー機能を利用して、マウスピース本体2と挿入部材4の相対的な位置合わせを行える構成を採用してもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、組立用治具15を用いてマウスピース1を製造する方法を例に挙げて説明したが、組立用治具15を使用せずにマウスピース1を製造することも可能である。その場合は、挿入部材4の一端部にフィルタ3を被せて、第2のフィルタ部分3bとなる部分を折り返し、その状態で挿入部材4をマウスピース本体2に挿入(圧入)すればよい。ただし、マウスピース1を効率よく安定した品質で製造するうえでは、上述した組立用治具15、あるいはこれに代わる他の組立用治具を使用することが望ましい。
【0051】
また、上記実施形態においては、呼気検査装置21を用いて、呼気に含まれる二酸化炭素の濃度を検査(検出)する場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、たとえば、呼気に含まれる酸素濃度、一酸化窒素濃度、アルコール濃度などを検査する場合にも適用可能である。
【0052】
また、本発明に係るマウスピースは、呼気検査装置に装着して使用する場合に限らず、これを口にくわえて息を吐くまたは吸う、あるいは呼吸をする、様々な場面で広く使用することが可能である。具体的には、たとえば、肺機能測定装置や人工呼吸器などに装着して使用することが可能である。その場合は、それぞれの用途や機器にあわせて、マウスピースの寸法(外径、長さなど)を設定すればよい。