特許第6558570号(P6558570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558570
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 1/06 20060101AFI20190805BHJP
   F28D 1/047 20060101ALI20190805BHJP
   F24H 9/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   F28D1/06 A
   F28D1/047 A
   F24H9/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-127313(P2015-127313)
(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公開番号】特開2017-9231(P2017-9231A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 譲治
【審査官】 菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−274044(JP,A)
【文献】 特開2014−070844(JP,A)
【文献】 実開昭58−189478(JP,U)
【文献】 特開2012−002464(JP,A)
【文献】 特開2010−127512(JP,A)
【文献】 特開2008−292032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/047 − 1/06
F24H 1/14
F24H 8/00 − 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管を収容するケースと、
前記複数の伝熱管の両端部に接続して設けられ、かつ前記複数の伝熱管の内部に連通する一対のチャンバを内部に形成している入水用および出湯用の一対のヘッダ部と、
を備えており、
前記一対のヘッダ部は、前記ケースの側板部とは別体の補助部材を用いて形成された一対のヘッダ用壁部を前記側板部に組み付けることにより構成されている、熱交換器であって、
前記一対のヘッダ用壁部は、互いに一体的に繋がった状態に形成されており、
前記一対のチャンバどうしを連通させるバイパス流路が、前記側板部および前記補助部材によって形成されており、
前記側板部および前記補助部材は、前記一対のヘッダ用壁部の相互間領域に位置して互いに対向する領域を有しており、かつこの領域において前記側板部および前記補助部材の少なくとも一方の対向面に、他方から離間する方向に窪んだ凹状部が設けられていることによって、前記バイパス流路が形成されていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記補助部材は、前記一対のヘッダ用壁部に繋がって前記一対のヘッダ用壁部の周囲に拡がるように延設された延設板部を有しており、
前記側板部に対する前記補助部材の組み付けは、前記延設板部を前記側板部に対向接触させて溶接またはロウ付けすることにより図られている、熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器であって、
前記ケースの側板部には、前記ケースの外方側または内方側に膨出する膨出部が設けられており、
前記補助部材の前記一対のヘッダ用壁部は、前記一対の膨出部に嵌合可能な形態に形成されている、熱交換器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記ケースは、前記側板部によって塞がれる開口部が幅方向端部に形成されているケース本体部を備えており、
前記開口部の周縁部、ならびに前記側板部および前記補助部材のそれぞれの外周縁部は、互いに重なり合うように配され、かつこの重なり合う部分において、前記ケース本体部、前記側板部および前記補助部材の接合が図られている、熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載の熱交換器であって、
前記側板部および前記補助部材の外周縁部には、前記ケースの外側方向に屈曲された第1および第2の屈曲部がそれぞれ形成されており、
前記開口部の周縁部、ならびに前記側板部および前記補助部材のそれぞれの外周縁部が互いに重なり合う構成は、前記開口部に前記側板部が嵌入され、かつこの側板部の第1の屈曲部の内側に前記補助部材の第2の屈曲部が嵌入されていることにより実現されている、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給湯装置の構成要素などとして用いられる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、熱交換器の一例として、特許文献1に記載のものを先に提案している。
同文献に記載の熱交換器においては、複数の伝熱管を収容するケースの側板部に、入水用および出湯用の一対のヘッダ部が設けられている。各ヘッダ部は、ケースの側板部に、ケースの外方に膨出した膨出部を形成し、かつこの膨出部に、補助部材を用いて形成されたヘッダ用壁部を外嵌させて溶接することにより構成されている。前記膨出部の先端壁部には、複数の伝熱管の端部が溶接されている。このことにより、ケースの側板部と補助部材のヘッダ用壁部との両者によって、複数の伝熱管の内部に連通するチャンバが形成されている。
このような構成によれば、一対のヘッダ部を利用し、複数の伝熱管に対する湯水の流入出を適切に行なわせることが可能である。ヘッダ部は、ケースの側板部を利用して形成されているために、部品点数の少数化や全体の小型化を図り、さらには製造コストの低減化をも好適に図ることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、ケースの側板部に設けられた一対のヘッダ部は、補助部材を用いて別体で形成された2つのヘッダ用壁部をケースの側板部に溶接した構成とされているため、前記一対のヘッダ部を製作するには、2つのヘッダ用壁部を個々に製作して準備しておいてから、ケースの側板部に対する2つのヘッダ用壁部の位置決めを個々に行なうとともに、それらの溶接も個々に行なう必要がある。このため、一対のヘッダ部の製造作業が、やや煩雑となる。したがって、熱交換器の製造をさらに容易にし、製造コストの低減を促進する上で、未だ改善の余地がある。
【0005】
なお、本出願人は、前記以外の熱交換器として、特許文献2に記載の熱交換器も先に提案している。同文献に記載の熱交換器においては、複数の伝熱管として螺旋状伝熱管を用いているが、一部の伝熱管については、螺旋状伝熱管よりも全長寸法が短く、流路抵抗が小さい非螺旋状の伝熱管としている。これは、複数の伝熱管に湯水を流通させる際に発生する圧力損失を小さくする効果をもたらせる。ただし、圧力損失を小さくすることを目的として、螺旋状伝熱管とは別に非螺旋状の伝熱管をさらに設ける手段を採用した場合、熱交換器全体の構成が煩雑となる。したがって、そのような構成の煩雑化を回避しつつ、湯水流通時の圧力損失を小さくできるようにすることも望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−70844号公報
【特許文献2】特開2008−121959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、製造が容易であって、従来よりも製造コストを低減することが可能な熱交換器を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される熱交換器は、複数の伝熱管を収容するケースと、前記複数の伝熱管の両端部に接続して設けられ、かつ前記複数の伝熱管の内部に連通する一対のチャンバを内部に形成している入水用および出湯用の一対のヘッダ部と、を備えており、前記一対のヘッダ部は、前記ケースの側板部とは別体の補助部材を用いて形成された一対のヘッダ用壁部を前記側板部に組み付けることにより構成されている、熱交換器であって、前記一対のヘッダ用壁部は、互いに一体的に繋がった状態に形成されており、前記一対のチャンバどうしを連通させるバイパス流路が、前記側板部および前記補助部材によって形成されており、前記側板部および前記補助部材は、前記一対のヘッダ用壁部の相互間領域に位置して互いに対向する領域を有しており、かつこの領域において前記側板部および前記補助部材の少なくとも一方の対向面に、他方から離間する方向に窪んだ凹状部が設けられていることによって、前記バイパス流路が形成されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、一対のヘッダ用壁部は、一体的に繋がった状態で形成されているため、一対のヘッダ用壁部が別体に形成されていた従来技術とは異なり、ケースの側板部に対する一対のヘッダ用壁部のそれぞれの位置決めや溶接などの組み付け作業を、個々に行なう必要がなくなり、それらの作業を一括して少ない作業工程で合理的に行なうことが可能となる。その結果、従来技術よりも一対のヘッダ部の形成作業、ひいては熱交換器全体の製造作業の容易化を図り、製造コストを低減することができる。
さらにこのような構成によれば、入水用のヘッダ部のチャンバに供給された湯水の一部を、バイパス流路を介して出湯用のヘッダ部のチャンバに流れさせることができる。したがって、入水用のヘッダ部のチャンバに供給された湯水の全量が複数の伝熱管に流れる場合と比較すると、熱交換器に湯水を送り込んで通過させる際の圧力損失を小さくすることができる。特許文献2に記載された圧力損失減少用の伝熱管を別途設ける必要を無くすことが可能である。
またこのような構成によれば、前記バイパス流路を簡易に形成することが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記補助部材は、前記一対のヘッダ用壁部に繋がって前記一対のヘッダ用壁部の周囲に拡がるように延設された延設板部を有しており、前記側板部に対する前記補助部材の組み付けは、前記延設板部を前記側板部に対向接触させて溶接またはロウ付けすることにより図られている。
【0012】
このような構成によれば、ケースの側板部に対する補助部材の組み付け(接合)をより容易に、かつ強固に行なうことが可能である。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記ケースの側板部には、前記ケースの外方側または内方側に膨出する膨出部が設けられており、前記補助部材の前記一対のヘッダ用壁部は、前記一対の膨出部に嵌合可能な形態に形成されている。
【0014】
このような構成によれば、ケースの側板部に補助部材を組み付ける際には、ケースの側板部に設けられた一対の膨出部に補助部材の一対のヘッダ用壁部を嵌合させることにより、これらの正確な位置合わせなどを行なうことが可能となる。したがって、一対のヘッダ部の形成作業の一層の容易化、ならびに適正化を図ることができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記ケースは、前記側板部によって塞がれる開口部が幅方向端部に形成されているケース本体部を備えており、前記開口部の周縁部、ならびに前記側板部および前記補助部材のそれぞれの外周縁部は、互いに重なり合うように配され、かつこの重なり合う部分において、前記ケース本体部、前記側板部および前記補助部材の接合が図られている。
【0020】
このような構成によれば、ケース本体部、側板部、および補助部材の三者の接合を一括して行なうことが可能であり、これら三者を1つずつ順次接合する場合と比較すると、熱交換器全体の製造工程数を少なくすることができる。したがって、製造コストを一層低減することができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記側板部および前記補助部材の外周縁部には、前記ケースの外側方向に屈曲された第1および第2の屈曲部がそれぞれ形成されており、前記開口部の周縁部、ならびに前記側板部および前記補助部材のそれぞれの外周縁部が互いに重なり合う構成は、前記開口部に前記側板部が嵌入され、かつこの側板部の第1の屈曲部の内側に前記補助部材の第2の屈曲部が嵌入されていることにより実現されている。
【0022】
このような構成によれば、ケース本体部の開口部に側板部が嵌入し、かつこの側板部の第1の屈曲部の内側に補助部材の第2の屈曲部が嵌入した構造により、ケース本体部の開口部の周縁部、側板部の外周縁部、および補助部材の外周縁部を互いに重なり合わせて、これらの部分を容易に接合することが可能である。したがって、熱交換器の製造作業をより容易かつ的確に行なうことができる。
【0023】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る熱交換器の一例を示す外観斜視図である。
図2図1の分解斜視図である。
図3】(a)は、図1のIIIa−IIIa断面図であり、(b)は、(a)のIIIb−IIIb断面図である。
図4】(a)は、図3(a)のIVa部拡大断面図であり、(b)は、図3(b)のIVb部拡大断面図である。
図5図4(a)の分解断面図である。
図6図1のVI−VI要部断面図である。
図7図1のVII−VII要部断面図である。
図8図1に示す熱交換器の側面図である。
図9図8の分解側面図である。
図10図1に示す熱交換器における溶接またはロウ付けの一例を示す側面図である。
図11図1に示す熱交換器における溶接またはロウ付けの他の例を示す側面図である。
図12】(a)は、本発明の他の例を示す外観斜視図であり、(b)は、(a)のXIIb−XIIb要部断面図である。
図13】(a)は、本発明の他の例を示す外観斜視図であり、(b)は、(a)の分解斜視図である。
図14】(a)は、本発明の他の例を示す平面断面図であり、(b)は、(a)のXIVb−XIVb断面図であり、(c)は、右側面図である。
図15】(a)は、本発明の他の例を示す平面断面図であり、(b)は、(a)のXVb−XVb断面図であり、(c)は、右側面図である。
図16】本発明の他の例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1図11は、本発明に係る熱交換器の一例を示している。
本実施形態の熱交換器A1は、たとえば給湯装置における潜熱回収用の熱交換器であり、ガスバーナなどのバーナ(図示略)によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なって湯水加熱を行なう用途に用いられる。
図1および図2に示すように、熱交換器A1は、補助部材3を備えており、この補助部材3に関連する構成に特徴がある。熱交換器A1の構成のうち、それ以外の基本的な構成については、前記した特許文献1に記載の熱交換器と同様である。具体的には、熱交換器A1は、補助部材3以外として、ケース2、このケース2内に収容された複数の伝熱管1、およびこれら複数の伝熱管1の下端部および上端部に繋がった入水用および出湯用の一対のヘッダ部H(Ha,Hb)を具備している。さらに、一対のヘッダ部Hどうしを繋ぐバイパス流路6も具備している。
【0027】
図3によく表われているように、複数の伝熱管1は、平面視略矩形状または略長円状に形成された複数の螺旋状管体を利用して構成されたものであり、これら複数の螺旋状管体は、互いにサイズが異なり、かつ略同心の重ね巻き状に配されている。各伝熱管1の下部および上部は、略水平に延びる直状管体部10a,10bとされている。
【0028】
ケース2は、略直方体状であり、矩形筒状の胴体部としてのケース本体部20と、このケース本体部20の幅方向両端の開口部27,27aを塞ぐ一対の側板部21,21aとを組み合わせて構成されている。ケース本体部20および側板部21,21aのそれぞれは、たとえばステンレスなどの金属板を用いて構成されている。ケース2の後壁部20cには、給気口25が設けられており、この給気口25からケース2内に流入した燃焼ガスは、複数の伝熱管1の隙間を通過した後に前壁部20dに設けられている排気口26に到達する。この過程において前記燃焼ガスから各伝熱管1により熱回収がなされ、各伝熱管1内を流通する湯水が加熱される。
【0029】
ケース2の側板部21には、ケース2の外方に向けて膨出する側面視略長円状の一対の膨出部22がプレス加工により形成されている。これら一対の膨出部22の先端壁部22bには、複数の孔部23が設けられており、複数の伝熱管1の両端部は、それらの孔部23に挿入されてから先端壁部22bに溶接されている。
【0030】
補助部材3は、側板部21の外面側に重ね合わせて接合することにより、一対のヘッダ部Hを構成するための部材である。この補助部材3は、側板部21と同様な材質の金属板にプレス加工を施したものであり、輪郭形状や全体のサイズも側板部21に対応したものとされている。
【0031】
図2において、補助部材3は、一対のヘッダ用壁部30、これら一対のヘッダ用壁部30の相互間に形成されたバイパス流路用壁部31、およびそれらの壁部30,31に繋がってそれらの周囲に拡がるように延設された平板状の延設板部32を有している。一対のヘッダ用壁部30は、側板部21の膨出部22に対応した形状およびサイズの膨出状である。補助部材3は、側板部21の外面側に重ね合わせるように配され、かつ各ヘッダ用壁
部30は、膨出部22の周壁部22aに外嵌されている(図3図5、および図8図9も参照)。この外嵌は、膨出部22の先端壁部22bとヘッダ用壁部30との間に、複数の伝熱管1の内部に連通したチャンバ5が形成されるように行なわれている。このことにより、入水用および出湯用のヘッダ部Hが構築されている。ヘッダ用壁部30には、孔部33が設けられ、かつこの孔部33を利用して配管用の継手部材4が取り付けられている。継手部材4の開口40は、入水口40(40a)または出湯口40(40b)であり、一対の継手部材4には、不図示の入水管および出湯管が連結される。
【0032】
図6において、バイパス流路6は、一対のヘッダ部Hのそれぞれのチャンバ5どうしを繋ぎ、かつ入水用のヘッダ部Haに入水した湯水の一部を、矢印N1に示すように、出湯用のヘッダ部Hb内に流れさせるための部分である。図7に示すように、補助部材3のバイパス流路用壁部31は、側板部21から離間する方向(ケース2の外側方向)に窪んだ凹状部60を形成する部分であり、この凹状部60の両端は、一対のチャンバ5に繋がっている。バイパス流路用壁部31と側板部21とが互いに対向してそれらの相互間に形成された空間部が、バイパス流路6である。
【0033】
図4(a)および図5によく表われているように、側板部21および補助部材3の外周縁部には、ケース2の外側方向に屈曲した第1および第2の屈曲部24,34がそれぞれ形成されている。第1および第2の屈曲部24,34は、側板部21および補助部材3の外周縁の略全周域にわたって一連に繋がった状態に形成されており、枠状または角筒状となっている。ケース本体部20、側板部21、および補助部材3の三者の組み付けは、ケース本体部20の開口部27に側板部21が嵌入され、かつ側板部21の第1の屈曲部24の内側に補助部材3の第2の屈曲部34が嵌入された状態で行なわれている。このことにより、図4(a)によく表われているように、ケース本体部20の開口部27の周縁部27’、側板部21の第1の屈曲部24、および補助部材3の第2の屈曲部34は、互いに重なり合った状態とされ、かつこの部分に溶接が施されている。この溶接は、たとえばTIG溶接であり、溶接用のジグ90を、周縁部27’ならびに第1および第2の屈曲部24,34に対向させることによって、これら三者を一括して溶接することが可能である。
【0034】
好ましくは、図10または図11に示すように、補助部材3には追加の溶接、またはロウ付けが行なわれる。すなわち、図10に示す構成においては、補助部材3の延設板部32のうち、一対のヘッダ用壁部30およびバイパス流路用壁部31の輪郭に沿った領域B1(同図のクロスハッチング部分B1)が、側板部21に溶接されている。図11に示す構成においては、補助部材3の延設板部32(同図のクロスハッチング部分B2であり、ヘッダ用壁部30およびバイパス流路用壁部31を除く略平板状部分)が、側板部21にロウ付けされている。
【0035】
このような構成によれば、チャンバ5やバイパス流路6の湯水が側板部21と補助部材3との相互間の位置に漏出することを確実に防止する上で好ましい。補助部材3の第2の屈曲部34を側板部21の第1の屈曲部24に溶接しただけでは、入水用のヘッダ部Haに供給される湯水の圧力が比較的高い場合に、補助部材3の延設板部32と側板部21との対向面間に隙間が発生し、この隙間にチャンバ5およびバイパス流路6の湯水が漏出する虞がある。これに対し、前記した図10または図11の構成によれば、そのような虞を解消することが可能である。熱交換器A1が、たとえば一般給湯用の熱交換器として用いられ、湯水供給圧が比較的高い場合には、図10または図11に示したような構成を採用することが望まれる。これに対し、熱交換器A1が、たとえば暖房給湯用または風呂給湯用の熱交換器として用いられ、湯水供給圧が比較的低い場合には、図10または図11に示したような構成を採用しなくても特段の不具合はない。
【0036】
次に、前記した熱交換器A1の作用について説明する。
【0037】
まず、一対のヘッダ部Hは、単一部材である補助部材3をケース2の側板部21に重ね合わせて接合することにより構成されており、一対のヘッダ部Hを形成するに際し、2つの部材を側板部21に個々に接合するような必要はない。したがって、一対のヘッダ部Hの形成作業は容易であり、熱交換器A1の製造コストを低減することができる。
【0038】
とくに、本実施形態においては、図4(a)を参照して説明したように、ケース本体部20の開口部27の周縁部27’、側板部21の第1の屈曲部24、および補助部材3の第2の屈曲部34を互いに嵌合させて重ね合わせるようにして、これらの部分に溶接を施しているために、側板部21への補助部材3の溶接のみならず、ケース本体部20への側板部21の溶接も一括して行なうことができる。溶接を施す前段階における前記三者の組み付け、およびその位置合わせ作業も容易となる。その結果、熱交換器A1の製造作業が一層容易となる。また、補助部材3に設けられる一対のヘッダ用壁部30を膨出状とし、これらの部分を側板部21の一対の膨出部22に外嵌させる構造を採用しているため、ヘッダ部Hの各所に不当な隙間などを生じないように各部の位置合わせを正確に行なうことができるといった利点も得られる。
【0039】
一対のヘッダ部Hのそれぞれのチャンバ5どうしは、バイパス流路6を介して繋がっており、図6を参照して説明したように、入水用のヘッダ部Haに入水した湯水の一部を出湯用のヘッダ部Hb内に流れさせることが可能である。このため、たとえば入水用のヘッダ部Haに入水した湯水の全量を複数の伝熱管1に流れさせる場合と比較すると、圧力損失が小さくなる。したがって、湯水流通の圧力損失を小さくすることを目的として、複数の伝熱管1とは別に短寸の伝熱管をさらに設けるような煩わしさを無くすことができる。
【0040】
図12図16は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0041】
図12に示す熱交換器A2においては、前記実施形態のバイパス流路6およびバイパス流路用壁部31に相当する部位が設けられていない。バイパス流路6は、湯水流通の圧力損失を小さくする上で有効であるが、本実施形態のように省略することが可能である。
【0042】
図13に示す熱交換器A3においては、同図(b)によく表われているように、補助部材3は、一対のヘッダ用壁部30がバイパス流路用壁部31を介して繋がった形態とされ、かつ先の実施形態の延設板部32に相当する部分を具備しない構成、または殆ど具備しない構成とされている。側板部21に補助部材3を組み付ける手段としては、たとえば補助部材3の外周縁部を側板部21に溶接またはロウ付けする手段を採用すればよい。
本実施形態によれば、補助部材3の全体の小サイズ化ならびに軽量化を図ることが可能である。なお、本発明においては、既述したように、バイパス流路6を省略することが可能であるが、このような場合には、一対のヘッダ用壁部30を一体的に繋ぐ部位を、たとえば単なる平板状などに形成することもできる。
【0043】
図14に示す熱交換器A4においては、複数の伝熱管1が略水平な姿勢の蛇行状管体部とされ、かつ上下高さ方向に並んでいる。各伝熱管1の両端部は、ケース2の側板部21に設けられた膨出部22の先端壁部22bに接合されているが、この膨出部22は、ケース2の内側方向に膨出している。補助部材3のヘッダ用壁部30は、ケース2の内側方向に膨出した形状とされた上で、膨出部22の内側に嵌入されており、膨出部22との組み合わせによってヘッダ部Hを構成している。なお、図14においては、入水口40aおよび出湯口40bを構成する継手部材4を簡略化して示している(この点は、図15も同様
)。
本実施形態から理解されるように、本発明においては、蛇行状の伝熱管1を使用したり、あるいは側板部21に設けられる膨出部22を、ケース2の内側方向に膨出させた形態とすることが可能である。図14においては、一対のチャンバ5どうしを繋ぐバイパス流路6を省略しているが、バイパス流路6を設けることが可能である(後述の図16も同様)。
【0044】
図15に示す熱交換器A5においては、図14に示した熱交換器A4とは、補助部材3の形状が相違している。本実施形態における補助部材3には、側板部21の膨出部22に嵌合する膨出状の部分は設けられておらず、図15(b)によく表われているように、ヘッダ用壁部30は、膨出部22の開口部を塞ぐ略平板状の壁部として形成されている。一方、側板部21のうち、一対の膨出部22の相互間の位置には、凹状部60が形成されており、この凹状部60を利用してバイパス流路6が設けられている。
本実施形態から理解されるように、本発明でいう補助部材のヘッダ用壁部は、必ずしも膨出状に形成されていなくてもよい。また、バイパス流路6の形成手段としては、凹状部60を側板部21に形成する手段、補助部材3に形成する手段、あるいは側板部21および補助部材3の双方に形成する手段を採用することができる。
【0045】
図16に示す熱交換器A6においては、ケース2の側板部21に、ケース2の外方側に膨出した一対の膨出部22が設けられ、この部分に継手部材4が取り付けられている。一方、補助部材3は、一対の膨出部22の内側開口部を塞ぐように、側板部21の内面側に配されて側板部21に接合されている。補助部材3には、複数の伝熱管1の端部が接合されており、膨出部22の内側には、各伝熱管1の内部に連通したチャンバ5が形成されている。
本実施形態から理解されるように、補助部材3を側板部21の内側に設けた構成とし、この補助部材3に伝熱管1の端部を接合させた構成とすることも可能である。
【0046】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0047】
本発明でいう補助部材は、上述した実施形態から理解されるように、ケースの側板部とは別体の部材であって、少なくとも一対のヘッダ用壁部(側板部に組み付けられることによってヘッダ部を構成する壁部)を一体的に形成したものであればよい。ケースの側板部は、必ずしもケース本体部と別体で形成されていなくてもよく、ケース本体部を形成する部材に一体的に繋がった領域を折り曲げるなどして、ケースの側板部とした構成とすることもできる。上述した実施形態の熱交換器は、いわゆる1缶1水路方式(1つのケース内に1系統の水路を構成する伝熱管を収容した方式)とされているが、これに代えて、1缶複数水路方式(1つのケース内に複数系統の水路を構成する伝熱管を収容した方式)とすることができる。この場合、入水用および出湯用のヘッダが、複数対で設けられるが、これら複数対のヘッダのうち、少なくとも一対のヘッダが本発明の意図する構成であれば、本発明の技術的範囲に包摂される。
【0048】
伝熱管は、螺旋状管や蛇行状管に限定されず、これら以外の種々の伝熱管(たとえばU字管や直状管など)とすることもできる。本発明に係る熱交換器は、給湯装置における潜熱回収用の熱交換器に限らず、顕熱回収用とすることもでき、さらには湯水加熱用途以外の種々の用途に用いることもできる。
【符号の説明】
【0049】
A1〜A6 熱交換器
H ヘッダ部
1 伝熱管
2 ケース
20 ケース本体部
21 側板部(ケースの)
22 膨出部
24 第1の屈曲部
27 開口部(ケース本体部の)
27’ 周縁部(開口部の)
3 補助部材
30 ヘッダ用壁部
31 バイパス流路用壁部
32 延設板部
34 第2の屈曲部
5 チャンバ
6 バイパス流路
60 凹状部
図1
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