(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る流体圧シリンダ及びピストン組立体の製造方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0025】
本発明の流体圧装置の一例として
図1に示す流体圧シリンダ10Aは、中空筒状のシリンダチューブ12(ボディ)と、シリンダチューブ12の一端部に配置されたヘッドカバー14と、シリンダチューブ12の他端部に配置されたロッドカバー16と、シリンダチューブ12内に軸方向(矢印X方向)に移動可能に配置されたピストンユニット18と、ピストンユニット18に連結されたピストンロッド20とを備える。この流体圧シリンダ10Aは、例えばワークの搬送等のためのアクチュエータとして用いられる。
【0026】
シリンダチューブ12は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料により構成され、軸方向に沿って延在した筒体からなる。本実施形態では、シリンダチューブ12は、中空円筒形に形成されている。シリンダチューブ12は、軸方向の一端側(矢印X2方向側)に設けられた第1ポート12aと、軸方向の他端側(矢印X1方向側)に設けられた第2ポート12bと、第1ポート12a及び第2ポート12bに連通する摺動孔13(シリンダ室)とを有する。
【0027】
ヘッドカバー14は、例えば、シリンダチューブ12と同様の金属材料により構成された板状体であり、シリンダチューブ12の一端部(矢印X2方向側の端部)を閉塞するように設けられている。ヘッドカバー14により、シリンダチューブ12の一端部が気密に閉じられている。
【0028】
ヘッドカバー14の内壁面14aには、第1ダンパ22が設けられている。第1ダンパ22は、例えば、ゴム材やエラストマー材等の弾性材料により構成されている。第1ダンパ22の構成材料としては、例えば、ウレタン等が挙げられる。本実施形態において、第1ダンパ22は中心部に貫通孔22aを有するリング状に形成されている。
【0029】
第1ダンパ22の中心部側には、ロッドカバー16側(ピストンロッド20及びピストンユニット18側)に向かって膨出した膨出部23が設けられている。第1ダンパ22において、膨出部23が設けられた部分の厚さは、膨出部23よりも径方向外側の外周部の厚さよりも厚い。ピストンロッド20及びピストンユニット18がヘッドカバー14側へと変位した際、膨出部23は、ピストンロッド20及びピストンユニット18と当接可能である。
【0030】
ロッドカバー16は、例えば、シリンダチューブ12と同様の金属材料により構成された円形リング状の部材であり、シリンダチューブ12の他端部(矢印X1方向側の端部)を閉塞するように設けられている。ロッドカバー16の外周部には外側環状溝24が形成されている。外側環状溝24には、ロッドカバー16の外周面と摺動孔13の内周面との間をシールする弾性材料からなる外側シール部材26が装着されている。
【0031】
ロッドカバー16の内周部には内側環状溝28が形成されている。内側環状溝28には、ロッドカバー16の内周面とピストンロッド20の外周面との間をシールする弾性材料からなる内側シール部材30が装着されている。なお、ロッドカバー16は、シリンダチューブ12の他端側の内周部に固定されたストッパ32により係止されている。
【0032】
ピストンユニット18は、シリンダチューブ12内(摺動孔13)に軸方向に摺動可能に収容され、摺動孔13内を第1ポート12a側の第1圧力室13aと第2ポート12b側の第2圧力室13bとに仕切っている。本実施形態において、ピストンユニット18は、ピストンロッド20の一端部20a(以下、「基端部20a」という)に連結されている。
【0033】
図1に示すように、ピストンユニット18は、パッキン34と、パッキン装着溝36が設けられたピストン本体38とを有する。
図1及び
図2に示すように、ピストン本体38は、第1ピストン部材40と、第2ピストン部材42と、ウエアリング44(サポート部材)と、ガスケット46と、マグネット48と、固定板50と、複数の連結ピン52とを備える。
【0034】
第1ピストン部材40は、ピストンロッド20の基端部20aから径方向外側に突出した板状且つリング状の部材である。第1ピストン部材40の外径は、ピストンロッド20の外径よりも大きい。第1ピストン部材40の内端縁が、ピストンロッド20の基端部20aの外周に接合されている。第1ピストン部材40とピストンロッド20との接合手段としては、例えば、溶接、接着等が挙げられる。
【0035】
第1ピストン部材40には、第1ピストン部材40を板厚方向に貫通する複数(本実施形態では3つ)のピン孔54aが形成されている。複数のピン孔54aは、周方向に等間隔に形成されている。
【0036】
第1ピストン部材40の構成材料としては、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属材料や、硬質樹脂等が挙げられる。第1ピストン部材40とピストンロッド20とが溶接により接合されている場合、良好な接合強度を確保するため、第1ピストン部材40は、ピストンロッド20と同じ金属材料で構成されているとよい。
【0037】
第2ピストン部材42は、その内側にロッド挿通孔43を有する中空円筒形の部材であり、第1ピストン部材40に隣接して配置されている。第2ピストン部材42は、ロッド挿通孔43を囲む周壁部56を有する。本実施形態では、第2ピストン部材42は、第1ピストン部材40のピストンロッド20の先端部20b側に隣接して、ピストンロッド20を囲むように配置されている。第2ピストン部材42の外径は、第1ピストン部材40の外径よりも小さい。第2ピストン部材42の一端部には縮径部42aが設けられており、当該縮径部42aにガスケット46が配置されている。
【0038】
第2ピストン部材42の周壁部56には、第1ピストン部材40に設けられた複数のピン孔54aと同数(本実施形態では3つ)のピン挿通孔54bが設けられている。ピン挿通孔54bは、第2ピストン部材42の周壁部56を軸方向(矢印X方向)に貫通している。複数のピン孔54aと同様に、複数のピン挿通孔54bは、周方向に等間隔に形成されている。
【0039】
第2ピストン部材42の内周部には、周方向に間隔を置いて径方向外側に凹む複数の凹部58が設けられるとともに、これらの凹部58の間に径方向内方に突出する複数の凸部60が設けられている。これらの凸部60の各々に、上述したピン挿通孔54bが形成されている。本実施形態では、凸部60の頂部(内端)は、ピストンロッド20の外周面から離間している。凸部60の頂部(内端)は、ピストンロッド20の外周面に当接していてもよい。
【0040】
第2ピストン部材42の内周部と、ピストンロッド20の外周面との間には、空洞62(
図1参照)が形成されている。本実施形態では、空洞62はピストンロッド20の周りを一周する環状に形成されている。なお、凸部60の頂部(内端)がピストンロッド20の外周面に当接する場合、空洞62はピストンロッド20の周方向に間隔を置いて複数形成される。本実施形態において、第1ピストン部材40及び第2ピストン部材42は、鋳造により成形されている。なお、第1ピストン部材40及び第2ピストン部材42の成形方法は、鋳造に限定されず、他の方法、例えば、切削加工等であってもよい。
【0041】
パッキン34は、第2ピストン部材42の外周部に装着された弾性体からなるリング状のシール部材(例えば、Oリング)である。パッキン34の構成材料としては、ゴム材やエラストマー材等の弾性材料が挙げられる。パッキン34の外径は、パッキン34が自然状態(摺動孔13内に配置されておらず、径方向内側に弾性圧縮されていない状態)及び摺動孔13内に配置された状態で、ウエアリング44
及びマグネット48の外径よりも大きい。
【0042】
パッキン34の外周部は、全周に亘って摺動孔13の内周面と気密又は液密に密着している。パッキン34の内周部は、全周に亘って第2ピストン部材42の外周面と気密又は液密に密着している。パッキン34は、摺動孔13の内周面と第2ピストン部材42の外周面との間に挟まれて径方向に弾性的に圧縮された状態となっている。パッキン34によりピストンユニット18の外周面と摺動孔13の内周面との間がシールされ、摺動孔13内の第1圧力室13aと第2圧力室13bが気密又は液密に仕切られている。
【0043】
ウエアリング44は、流体圧シリンダ10Aの作動中に軸方向に垂直な方向に大きい横荷重がピストンユニット18に作用した際に第1ピストン部材40の外周面が摺動孔13の内周面に接触することを防止するための部材である。ウエアリング44は、円形リング状の部材であり、第1ピストン部材40の外周部を囲むように第1ピストン部材40の外周部に装着されている。
【0044】
本実施形態においてウエアリング44は、第1ピストン部材40の端面(矢印X1方向側の端面)に接触し且つ径方向に沿って延在する径方向部44aと、第1ピストン部材40の外周面に当接し且つ軸方向に沿って延在する軸方向部44bとを有する。ウエアリング44(具体的には径方向部44a)はパッキン34の一方側の側部(矢印X2方向側の側部)と当接している。径方向部44aの内径は、第1ピストン部材40の外径よりも小さい。軸方向部44bは、径方向部44aの外端部から軸方向に延出している。ウエアリング44の外径(軸方向部44bの外径)は、第1ピストン部材40、マグネット48及びヨークの外径よりも大きい。
【0045】
ウエアリング44は、低摩擦材からなる。ウエアリング44と摺動孔13の内周面との間の摩擦係数は、パッキン34と摺動孔13の内周面との間の摩擦係数よりも小さい。このような低摩擦材としては、例えば、四フッ化エチレン(PTFE)のような低摩擦性と耐摩耗性とを兼ね備えた合成樹脂材料や、金属材料(例えば、軸受鋼)等が挙げられる。
【0046】
ガスケット46は、第1ピストン部材40と第2ピストン部材42とウエアリング44との間に配置された弾性体からなる円形リング状の部材である。ガスケット46は、パッキン34と同様の材料により構成され得る。ガスケット46は、第1ピストン部材40と第2ピストン部材42とウエアリング44とに気密又は液密に密着している。
【0047】
具体的に、ガスケット46は、第1ピストン部材40の第2ピストン部材42側の端面に密着し、第2ピストン部材42の縮径部42aの外周面に密着し、且つウエアリング44の内周面(径方向部44aの内周面)に密着している。このようなガスケット46により、第1ピストン部材40と第2ピストン部材42との間、第1ピストン部材40とウエアリング44との間、及び第2ピストン部材42とウエアリング44との間が気密又は液密にシールされている。
【0048】
マグネット48は、円形リング状の部材であり、第
2ピストン部材
42の外周部を囲むように第
2ピストン部材
42の外周部に装着されている。マグネット48は、ウエアリング44と反対側(矢印X1方向側)でパッキン34に隣接して配置され、パッキン34の他方側の側部と当接している。マグネット48は、例えば、フェライト磁石、希土類磁石等である。
【0049】
なお、シリンダチューブ12の外面には、ピストンユニット18のストローク両端に相当する位置に図示しない磁気センサが取り付けられている。マグネット48が発生する磁気を磁気センサによって感知することで、ピストンユニット18の動作位置が検出される。
【0050】
ウエアリング44の端面(矢印X1方向側の端面)と、マグネット48の端面(矢印X2方向側の端面)と、
第2ピストン部材42の外周面とにより、径方向内側に凹み且つ周方向に環状に延在するパッキン装着溝36が形成されている。パッキン34は、パッキン装着溝36に装着されている。
【0051】
固定板50は、円形リング状の部材であり、第1ピストン部材40と協働して、ウエアリング44、パッキン34及びマグネット48を保持している。本実施形態では、固定板50は、ピストンロッド20を囲んでいる。具体的に、固定板50は、マグネット48のパッキン34と反対側の端面(矢印X1方向側の端面)に当接するとともに、第2ピストン部材42の第1ピストン部材40と反対側の端面(矢印X1方向側の端面)に当接している。
【0052】
固定板50の構成材料としては、例えば、炭素鋼(圧延鋼材等)、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属材料や、硬質樹脂材料等が挙げられる。固定板50は、ヨークとしての機能も兼ねるように、圧延鋼材等の磁性体からなる部材であってもよい。
【0053】
固定板50には、第2ピストン部材42に設けられた複数のピン挿通孔54bと同数(本実施形態では3つ)のピン孔54cが形成されている。複数のピン孔54cは、固定板50を板厚方向に貫通している。複数のピン孔54cは、第2ピストン部材42に設けられた複数のピン挿通孔54bと同様に周方向に等間隔に形成されている。
【0054】
複数の連結ピン52は、軸方向に隣接して配置された第1ピストン部材40、第2ピストン部材42及び固定板50を軸方向に締結し、これらの部材を相互固定して一体化している。上述したウエアリング44、パッキン34及びマグネット48は、第1ピストン部材40と固定板50との間に保持されている。各連結ピン52は、第1ピストン部材40に設けられたピン孔54a、第2ピストン部材42に設けられたピン挿通孔54b、及び固定板50に設けられたピン孔54cに挿通されており、第1ピストン部材40と固定板50とに係合している。
【0055】
各連結ピン52の一端部(矢印X1方向側の端部)には、連結ピン52の軸部53に対して拡径した鍔部64が設けられている。鍔部64の外径は、固定板50に設けられたピン孔54cの直径よりも大きい。これにより、鍔部64は、固定板50におけるピン孔54cの周囲部分と係合している。各連結ピン52の他端部(矢印X2方向側の端部)は、軸部53に対して拡径したカシメ部66(
図1参照)が設けられている。
【0056】
カシメ部66は、連結ピン52の他端部を軸方向に加圧して塑性変形させることにより形成されている。本実施形態では、カシメ部66は、ピン孔54aの孔形状に倣ってテーパ状に形成されており、ピン孔54aと係合している。なお、カシメ部66は、連結ピン52の軸部53に対して垂直に突出する板状に形成され、第1ピストン部材40におけるピン孔54aの周囲部分と係合していてもよい。
【0057】
ピストンユニット18のヘッドカバー14と反対側の端部(矢印X1方向側の端部)には、弾性部材からなる第2ダンパ68が装着されている。第2ダンパ68は、第1ダンパ22と同様の材料により構成され得る。第2ダンパ68は、円形リング状に形成されており、ピストンロッド20を囲むように配置されている。本実施形態では、第2ダンパ68は、固定板50に取り付けられている。第2ダンパ68の外径は、固定板50の外径よりも小さい。
【0058】
第2ダンパ68の固定板50側の端部の内周側には径方向内側に向かって凹む係合溝70が設けられている。係合溝70は周方向に間隔を置いて複数設けられている。係合溝70が固定板50の内縁部と係合することにより、第2ダンパ68が固定板50に支持されている。また、第2ダンパ68の固定板50側の端面には、周方向に間隔を置いて複数の凹状の切欠き72が形成されている。各切欠き72は、上述した各連結ピン52の鍔部64を収容している。
【0059】
なお、流体圧シリンダ10Aにおいて、第1ダンパ22及び第2ダンパ68のいずれか一方をなくしてもよく、あるいは、第1ダンパ22及び第2ダンパ68の両方をなくしてもよい。
【0060】
ピストンロッド20は、摺動孔13の軸方向に沿って延在する柱状(円柱状)の部材である。ピストンロッド20の基端部20aに上述した第1ピストン部材40が接合されている。ピストンロッド20はロッドカバー16を貫通している。ピストンロッド20の基端部20aと反対側の端部である先端部20bは、摺動孔13の外部に露出している。ピストンユニット18とピストンロッド20とにより、ピストン組立体74が構成されている。
【0061】
ピストンロッド20の構成材料としては、例えば、第1ピストン部材40の構成材料として挙げた材料(炭素鋼等)が挙げられる。ピストンロッド20は、第1ピストン部材40と同じ材料により構成されてもよく、あるいは第1ピストン部材40と異なる材料により構成されてもよい。
【0062】
次に、上記のように構成されるピストン組立体74の組立方法を説明する。
【0063】
まず、第1ピストン部材40が溶接等により接合されたピストンロッド20を用意する。そして、第1ピストン部材40が設けられたピストンロッド20に対して、上述した第2ピストン部材42、ウエアリング44、ガスケット46、パッキン34、マグネット48、固定板50、連結ピン52及び第2ダンパ68を軸方向に移動して組み付ける組付工程(
図3A〜
図3H)を行う。これにより、ピストン組立体74が得られる。
【0064】
具体的に、組付工程では、
図3A〜
図3Cに示すように、まず、ピストンロッド20がウエアリング44、ガスケット46及び第2ピストン部材42に挿入されるように、ウエアリング44、ガスケット46及び第2ピストン部材42をピストンロッド20の基端部20a側に向かって順に移動させる。この場合、例えば、
図3A〜
図3Cのように、ピストンロッド20の先端部20bを上方に向けた状態でピストンロッド20を保持し、第1ピストン部材40上に、ウエアリング44、ガスケット46及び第2ピストン部材42を重ねていく。
【0065】
これにより、ウエアリング44が第1ピストン部材40の外周部に配置され、第2ピストン部材42の一端部が第1ピストン部材40に当接し、且つ第1ピストン部材40、第2ピストン部材42及びウエアリング44の間にガスケット46が配置された状態となる。このとき、第1ピストン部材40に設けられた複数のピン孔54aと、第2ピストン部材42に設けられた複数のピン挿通孔54bと、固定板50に設けられた複数のピン孔54cとは、互いに周方向の位相を一致させておく。
【0066】
次に、
図3D及び
図3Eに示すように、第2ピストン部材42の外周部にパッキン34及びマグネット48を順に装着する。この場合、環状のパッキン装着溝にパッキンを装着する従来の組立方法と異なり、径方向外側に引っ張って拡径させることなく、パッキン34を第2ピストン部材42の外周部に容易に装着することができる。また、従来の組立方法では、ピストン外周部で複数のマグネットピースを接着により繋ぎ合わせることにより環状のマグネットを構成していたが、本実施形態によれば、マグネット48を環状のまま第2ピストン部材42に組み付けることができる。次に、
図3Fに示すように、第2ピストン部材42の他端部に固定板50を当接させる。
【0067】
上記のようにパッキン34、マグネット48及び固定板50を重ねたら、次に、この状態で、
図3Gに示すように、複数の連結ピン52を、固定板50に設けられた複数のピン孔54c、第2ピストン部材42に設けられた複数のピン挿通孔54b、及び第1ピストン部材40に設けられた複数のピン孔54aに挿入する。そして、第1ピストン部材40から突出した各連結ピン52の端部を押圧して塑性変形させることにより拡径させ、これによりカシメ部66(
図1参照)を形成する。この結果、第1ピストン部材40、第2ピストン部材42及び固定板50が複数の連結ピン52によって軸方向に強固に締結され、且つ第2ピストン部材42、ウエアリング44及びマグネット48によって形成されたパッキン装着溝36にパッキン34が装着された状態となる。
【0068】
次に、
図3Hに示すように、固定板50に第2ダンパ68を取り付ける。この場合、第2ダンパ68は変形しやすい弾性部材で構成されているため、第2ダンパ68を固定板50に押し付けることで、固定板50の内縁部に第2ダンパ68の係合溝70(
図1参照)を簡単に係合させることができる。従って、固定板50への第2ダンパ68の取付けが容易である。
【0069】
以上により、ピストン組立体74の組立てが完了する。
【0070】
次に、上記のように構成された
図1に示す流体圧シリンダ10Aの作用及び効果を説明する。流体圧シリンダ10Aは、第1ポート12a又は第2ポート12bを介して導入される圧力流体(例えば、圧縮空気)の作用によって、ピストンユニット18を摺動孔13内で軸方向に移動させる。これにより、当該ピストンユニット18に連結されたピストンロッド20が進退移動する。
【0071】
具体的に、ピストンユニット18をロッドカバー16側へと変位(前進)させるには、第2ポート12bを大気開放状態とし、図示しない圧力流体供給源から第1ポート12aを介して圧力流体を第1圧力室13aへと供給する。そうすると、圧力流体によってピストンユニット18がロッドカバー16側へと押される。これにより、ピストンユニット18がピストンロッド20とともにロッドカバー16側へと変位(前進)する。そして、第2ダンパ68がロッドカバー16の端面に当接することで、ピストンユニット18の前進動作が停止する。この場合、弾性材料で構成された第2ダンパ68により、ピストンユニット18とロッドカバー16とが直接当接することが回避される。これにより、ピストンユニット18が前進位置(ロッドカバー16側のストロークエンド)へと到達することに伴う衝撃及び衝撃音の発生を効果的に防止又は抑制することができる。
【0072】
一方、ピストンユニット18をヘッドカバー14側へと変位(後退)させるには、第1ポート12aを大気開放状態とし、図示しない圧力流体供給源から第2ポート12bを介して圧力流体を第2圧力室13bへと供給する。そうすると、圧力流体によってピストンユニット18がヘッドカバー14側へと押される。これにより、ピストンユニット18がヘッドカバー14側へと変位する。そして、ピストンロッド20及び第1ピストン部材40が第1ダンパ22(膨出部23)に当接することで、ピストンユニット18の後退動作が停止する。この場合、弾性材料で構成された第1ダンパ22により、ピストンユニット18とヘッドカバー14とが直接当接することが回避される。これにより、ピストンユニット18が後退位置(ヘッドカバー14側のストロークエンド)へと到達することに伴う衝撃及び衝撃音の発生を効果的に防止又は抑制することができる。
【0073】
流体圧シリンダ10Aでは、複数の部材(第2ピストン部材42、ウエアリング44及びマグネット48)の組合せによりパッキン装着溝36が形成されている。このため、パッキン34を装着するための溝部を溝加工(切削加工)により形成する場合と比較して、生産性を向上させることができる。また、第1ピストン部材40及び第2ピストン部材42を鋳造により成形することで、溝加工する場合よりも使用材料の削減が可能であるため、経済的であり、且つ省資源化を図ることができる。
【0074】
溝加工によって形成された溝部にパッキン34を装着するには、パッキン34を弾性変形させて溝部よりも拡径させた状態にしてから溝部に嵌め込むことが必要である。このため、このような溝加工で形成された溝部にパッキン34を装着する工程を自動化(ロボットによる自動組立工程の一部とする)ことは困難である。これに対し、ピストンユニット18では、複数の部材の組合せによりパッキン装着溝36が形成されるため、組立工程においてはパッキン34を拡径することなくピストン本体38に装着することができる。従って、パッキン装着工程のロボットによる自動化が容易である。
【0075】
また、上述したように、パッキン34以外の部材についても、第1ピストン部材40が設けられたピストンロッド20に対して軸方向に移動させて積み重ねることにより、ピストンロッド20に組み付けることができる。従って、ピストンユニット18(ピストン組立体74)の組立工程の自動化を容易に図ることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、第2ピストン部材42の内周部は、ピストンロッド20の外周面から離間しており、第2ピストン部材42とピストンロッド20との間に空洞62が形成されている。このため、第2ピストン部材42の軽量化を通じてピストンユニット18の軽量化を図ることができる。ピストンユニット18の軽量化により、圧力流体の消費量が削減され、省エネルギー化を図ることができる。
【0077】
上述した流体圧シリンダ10Aでは、ピストンユニット18の一方側のみに突出するピストンロッド20が採用されているが、
図4A及び
図4Bに示すように、ピストンユニット18の両側に突出するピストンロッド21、21aが採用されてもよい。
【0078】
図4Aに示すピストンロッド21は中実構造を有し、
図4Bに示すピストンロッド21aは中空構造を有する。この場合、ピストンユニット18は、溶接又は接着剤により、ピストンロッド21、21aの外周面に接合され得る。ピストンロッド21、21aの各々は、軸方向に連結された第1ロッド部及び第2ロッド部からなるものであってもよい。この場合、第1ロッド部と第2ロッド部の連結方法は、螺合(捩じ込み)、溶接、接着等であってもよい。
【0079】
ピストンユニット18は、上述した構成に限らず、
図5A〜
図9に示すピストンユニット18a〜18jのように種々の構成を採用し得る。これらの構成によっても、軸方向に複数の部品を積み重ねることで、パッキン34が装着されたピストンユニット18a〜18jを組み立てることができる。なお、ピストンユニット18a〜18jは、後述する第2〜第6実施形態に係る流体圧シリンダ10B〜10Fにおいても採用し得る。
【0080】
図5Aに示すピストンユニット18aでは、マグネット48(
図1参照)に代えて、パッキン34に隣接してスペーサ76が配置されている。このため、ピストンユニット18aでは、第2ピストン部材42、ウエアリング44及びスペーサ76により、パッキン装着溝36が形成されている。
図5Aの場合、スペーサ76は断面が四角形状を有する。
【0081】
図5Bに示すピストンユニット18bでは、別の形状を有するスペーサ76aがパッキン34に隣接して配置されている。このため、ピストンユニット18bでは、第2ピストン部材42、ウエアリング44及びスペーサ76aにより、パッキン装着溝36が形成されている。
図5Bのスペーサ76aは、断面が角型U字形状を有する。なお、
図5A及び
図5Bのピストンユニット18a、18bの場合、ヨークが不要であるため、固定板50は、非磁性体からなる部材でよい。
【0082】
図5Cに示すピストンユニット18cでは、ウエアリング44(
図1参照)が省略されている。このため、ピストンユニット18cでは、第1ピストン部材40、第2ピストン部材42及びマグネット48により、パッキン装着溝36が形成されている。従って、パッキン34は、第1ピストン部材40に隣接して配置され、第1ピストン部材40とマグネット48との間に保持される。
【0083】
図6A〜
図6Cに示すピストンユニット18d〜18fでは、ヨークとして機能する固定板50(
図1等参照)が省略されている。
図6Aのピストンユニット18dにおいて、連結ピン78の鍔部78aは、上述した連結ピン52の鍔部64(
図2参照)よりも大径且つ第2ピストン部材42の外径よりも大径であり、マグネット48のパッキン34と反対側の端面に当接(係合)している。このため、鍔部78aにより、第2ピストン部材42からのマグネット48の脱落が阻止されている。すなわち、ピストンユニット18dでは、連結ピン78の鍔部78aが、マグネット48を保持する固定板の機能を兼ねている。
【0084】
図6Bのピストンユニット18eにおいて、第2ピストン部材80は、パッキン34及びマグネット48がその外周部に装着された基部80aよりも径方向外方に突出する鍔部80bを有する。鍔部80bは、マグネット48のパッキン34と反対側の端面に当接している。このため、鍔部80bにより、第2ピストン部材80からのマグネット48の脱落が阻止されている。すなわち、ピストンユニット18eでは、第2ピストン部材80の鍔部80bが、マグネット48を保持する固定板の機能を兼ねている。
【0085】
図6Cのピストンユニット18fでは、マグネット48及び固定板50が省略されている。第2ピストン部材82は、パッキン34がその外周部に装着された基部82aよりも径方向外方に突出する鍔部82bを有する。鍔部82bは、パッキン34に当接している。このため、ピストンユニット18fでは、第1ピストン部材40と第2ピストン部材82により、パッキン装着溝36が形成されている。パッキン34は、第1ピストン部材40と鍔部82bとの間に保持されている。
【0086】
図7Aに示すピストンユニット18gでは、連結ピン84の第1ピストン部材40側(矢印X2方向側)の端部は、軸部53に対して垂直に突出する板状の鍔部84aとして形成されている。すなわち、連結ピン84は、上述した連結ピン52におけるカシメ部66(
図1参照)を、鍔部84aに置換したものであり、鍔部84a以外の部分については連結ピン52と同様の構成を有する。
【0087】
図7Bに示すピストンユニット18hでは、連結ピン86の矢印X1方向側の端部は、軸部53に対してテーパ状に拡径したカシメ部86aとして形成されている。すなわち、連結ピン86は、上述した連結ピン52における鍔部64(
図2参照)を、カシメ部86aに置換したものであり、カシメ部86a以外の部分については連結ピン52と同様の構成を有する。
【0088】
図8に示すピストンユニット18iは、ピストンロッド88の一端部88aに、ピストンロッド88から軸方向(矢印X2方向)に突出するように接続されている。具体的に、このピストンユニット18iは、軸方向に関して、
図1に示したピストンユニット18と逆向きに配置したものである。従って、ピストンユニット18iの構成要素自体は、
図1に示したピストンユニット18と同じである。
【0089】
図8に示すピストンロッド88とピストンユニット18iとからなるピストン組立体74aの全長Lh2は、
図1に示すピストン組立体74の全長(ピストンロッド20の長さL1と同じ)と同じである。一方、
図8に示すピストンロッド88の長さL2は、
図1に示すピストンロッド20の長さL1よりも短い。
【0090】
このように、
図8に示すピストン組立体74aによれば、
図1に示すピストン組立体74と比較して、ピストンロッド88の長さL2を短くすることが可能となる。従って、可動部であるピストンロッド88の軽量化が可能となり、圧力流体の消費量の削減、及び省エネルギー化が図られる。
【0091】
図9に示すピストンユニット18jにおいて、第2ピストン部材92の外径(平面寸法)は、第1ピストン部材90の外径(平面寸法)よりも大きい。具体的に、第1ピストン部材90の外径D2は、
図1に示した第1ピストン部材40の外径D1よりも小さい。第2ピストン部材92は、その基部92aの外周部においてパッキン34及びマグネット48が配置されるとともに、基部92aよりも外径が大きい環状の大径部92bを有する。大径部92bは、第1ピストン部材90を囲んでいる。大径部92bの外周部に、ウエアリング44が配置されている。
【0092】
このように構成されたピストンユニット18jでは、
図1に示したピストンユニット18を採用した場合と同様に、複数の部材(第2ピストン部材92、ウエアリング44及びマグネット48)の組合せによりパッキン装着溝36が形成されている。このため、
図1に示したピストンユニット18を採用した場合と同様に、生産性を向上させることができるとともに、軸方向に複数の部品を積み重ねることで、ピストンユニット18jを含むピストン組立体74bを容易に組み立てることができる。従って、ピストンユニット18jを含むピストン組立体74bの組立工程の自動化を容易に図ることができる。
【0093】
図1に示したピストンロッド20及び第1ピストン部材40では、別部品として作製されたピストンロッド20及び第1ピストン部材40が溶接等によって接合されている。このような構成に代えて、
図10Aに示すピストンロッド20及び第1ピストン部材40が一体成形されたピストンロッド部材94、又は
図10Bに示すピストンロッド21b及び第1ピストン部材40が一体成形されたピストンロッド部材94aが採用されてもよい。ピストンロッド部材94、94aは、鍛造又は鋳造により成形され得る。
【0094】
具体的に、
図10Aに示すピストンロッド部材94は、中実構造のピストンロッド20と、ピストンロッド20の一端部から連続して径方向外側に突出した第1ピストン部材40とを有する。
図10Bに示すピストンロッド部材94aは、中空構造のピストンロッド21bと、ピストンロッド21bの一端部から連続して径方向外側に突出した第1ピストン部材40とを有する。
【0095】
次に、第2〜第6実施形態に係る流体圧シリンダ10B〜10Fについて、以下に説明する。
【0096】
図11に示す第2実施形態に係る流体圧シリンダ10Bは、
図1に示した流体圧シリンダ10Aにおける第1ダンパ22及び第2ダンパ68に代えて、これらと異なる構成の第1ダンパ96及び第2ダンパ98を採用している。第1ダンパ22及び第2ダンパ68と同様に、第1ダンパ96及び第2ダンパ98は、ゴム材等の弾性材料により構成されている。流体圧シリンダ10Bにおける第1ダンパ96及び第2ダンパ98以外の構成は、流体圧シリンダ10Aと同じである。
【0097】
第1ダンパ96は、ピストンユニット18が矢印X2方向へと移動して後退位置へと到達する際に、ピストンユニット18に当接することにより、衝撃及び衝撃音の発生を防止又は抑制する。第1ダンパ96は、リング状に形成されており、ヘッドカバー14の内壁面14aに取り付けられている。
【0098】
第1ダンパ96の内径は、ピストンロッド20の外径よりも大きい。第1ダンパ96の外径は、ピストンユニット18の外径と略同じである。このため、
図1に示した第1ダンパ22と比較して、第1ダンパ96は、有効体積を稼ぐことができる。従って、第1ダンパ96は、ピストンユニット18が後退位置へと到達する際に、衝撃及び衝撃音の発生を一層効果的に防止又は抑制することが可能である。
【0099】
第2ダンパ98は、ピストンユニット18が矢印X1方向へと移動して前進位置へと到達する際に、
ロッドカバー16に当接することにより、衝撃及び衝撃音の発生を防止又は抑制する。第2ダンパ98は、ピストンロッド20を囲むリング状に形成されるとともに、ピストンロッド20の軸方向に沿って、ピストンロッド20の外周部と第2ピストン部材42の内周部との間に配置されている。第2ダンパ98の内周部は、ピストンロッド20の外周部と接触しており、第2ダンパ98はピストンロッド20によって支持されている。
【0100】
ピストンロッド20が挿入される前(組立前)の第2ダンパ98の内径は、ピストンロッド20の外径よりも小さい。このため、組立状態では、第2ダンパ98は、第2ダンパ98自体の弾性復元力によって、ピストンロッド20の外周部に圧接している。
【0101】
第2ダンパ98のヘッドカバー14側(矢印X2方向側)の端部が第1ピストン部材40に当接している状態で、第2ダンパ98のロッドカバー16側(矢印X1方向側)の端部は、ピストン本体38(具体的には、連結ピン52の鍔部64)よりもロッドカバー16側に突出している。なお、流体圧シリンダ10Bの作動中(ピストンユニット18の往復動作中)、第2ダンパ98は第1ピストン部材40から離間することがあってもよい。
【0102】
第2ダンパ98の外周部と第2ピストン部材42の内周部との間には、適度な大きさの隙間が形成されている。このため、第2ダンパ98は、軸方向の圧縮荷重を受けた際に、外径が大きくなることにより軸方向に短縮するように弾性変形する。従って、第2ダンパ98は、衝撃吸収能力を支障なく発揮することができる。
【0103】
また、第2ダンパ98は、
図1に示した第2ダンパ68と比較して、外径は小さいものの、軸方向長さを大きく取ることができるため、衝撃吸収能力に影響する有効体積を稼ぐことができる。従って、第2ダンパ98は、ピストンユニット18が前進位置へと到達する際に、衝撃及び衝撃音の発生を一層効果的に防止又は抑制することが可能である。
【0104】
さらに、第2ダンパ98の外周部形状は、第2ピストン部材42の内周部形状に沿って形成されている。すなわち、第2ダンパ98の外周部は、第2ピストン部材42の複数の凸部60(
図2も参照)が挿入された複数の凹部98aを有する波形状に形成されている。この構成により、第2ダンパ98の体積を可及的に稼ぐことができ、衝撃吸収能力を一層高めることが可能である。
【0105】
図12に示す第3実施形態に係る流体圧シリンダ10Cは、
図1に示した流体圧シリンダ10Aにおけるピストンユニット18に設けた第2ダンパ68に代えて、ロッドカバー16のピストンユニット18に対向する側の面16aに第2ダンパ100を設けている。第2ダンパ100は、ピストンユニット18が矢印X1方向へと移動して前進位置へと到達する際に、ピストンユニット18に当接することにより、衝撃及び衝撃音の発生を防止又は抑制する。流体圧シリンダ10Cにおけるその他の構成は、流体圧シリンダ10Aと同じである。
【0106】
図13に示す第4実施形態に係る流体圧シリンダ10Dは、中空筒状のシリンダチューブ102(ボディ)と、シリンダチューブ102の一端部に配置されたヘッドカバー104と、シリンダチューブ102の他端部に配置されたロッドカバー106とを備える。流体圧シリンダ10Dは、さらに、シリンダチューブ102内に軸方向(矢印X方向)に移動可能に配置されたピストンユニット18と、ピストンユニット18に連結されたピストンロッド108と、ピストンユニット18の一方及び他方のストロークエンドにおける衝撃を緩和するクッション機構110とを備える。
【0107】
シリンダチューブ102は、円筒体からなり、その内部にはピストンユニット18が収容されヘッドカバー104及びロッドカバー106によって閉塞された摺動孔103(シリンダ室)が形成されている。
【0108】
ヘッドカバー104は、矢印X1方向に突出したリング状の第1段付き部112を有し、この第1段付き部112が、シリンダチューブ102の矢印X2方向側の端部に挿入されている。第1段付き部112の外周部には、シリンダチューブ102との間にガスケット114が介装されている。ヘッドカバー104には、第1中央空洞部116と、この第1中央空洞部116と連通した第1ポート118が形成されている。第1ポート118を介して、圧力流体の供給・排出が行われる。
【0109】
ロッドカバー106は、矢印X2方向に突出したリング状の第2段付き部120を有し、この第2段付き部120が、シリンダチューブ102の矢印X1方向側の端部に挿入されている。第2段付き部120の外周部には、シリンダチューブ102との間にガスケット122が介装されている。ロッドカバー106には、第2中央空洞部124と、この第2中央空洞部124と連通した第2ポート126が形成されている。第2ポート126を介して、圧力流体の供給・排出が行われる。
【0110】
ロッドカバー106の内周部において、第2中央空洞部124の矢印X1方向側にはロッド孔128が形成されている。ロッド孔128に、ピストンロッド108を軸方向にガイドするリング状のブッシュ130が配置されている。また、ロッド孔128には、ブッシュ130の矢印X1方向に隣接して、パッキン132が配置されている。パッキン132は、ピストンロッド108の外周面に気密に密着している。
【0111】
上述したシリンダチューブ102、ヘッドカバー104及びロッドカバー106は、複数の連結ロッド134及びナット136によって、軸方向に締結されている。このため、シリンダチューブ102は、ヘッドカバー104及びロッドカバー106の間に挟持された状態で固定されている。
【0112】
ピストンユニット18は、第1実施形態におけるピストンユニット18と同様に構成されている。ピストンユニット18のロッドカバー106側の端部には第2ダンパ68が配置されている。ピストンユニット18のヘッドカバー104側には第1ダンパ138が配置されている。なお、第1ダンパ138の詳細については後述する。
【0113】
クッション機構110は、可動部(ピストンロッド108)側に設けられた第1クッション部材140及び第2クッション部材142(クッションリング)と、固定部(ヘッドカバー104及びロッドカバー106)側に設けられた弾性部材からなるリング状の第1クッションシール144及び第2クッションシール146とを有する。
【0114】
第1クッション部材140は、ピストンロッド108の矢印X2方向側の端部においてピストンロッド108と同軸状に設けられている。具体的に、第1クッション部材140は、ピストンロッド108よりも小径に形成されるとともに、ピストンロッド108の端面から矢印X2方向に突出している。第1クッション部材140は、中空又は中実の円筒状に形成されている。なお、第1クッション部材140の外径は、ピストンロッド108の外径と同じでもよく、あるいは、ピストンロッド108の外径より大きくてもよい。
【0115】
第1クッション部材140は、ピストンロッド108と一体成形された部分であってもよく、あるいは、ピストンロッド108と接合された別部品であってもよい。第1クッション部材140がピストンロッド108と別部品の場合、第1クッション部材140は、例えば、溶接、接着、螺合等の接合手段によって、ピストンロッド108と接合され得る。
【0116】
第1クッション部材140の外周部は、軸方向に外径が一定のストレート部140aと、このストレート部140aのピストンロッド108と反対側(矢印X2方向側)に隣接して形成されるとともにピストンロッド108から離間する方向に向かって徐々に縮径するテーパ部140bとを有する。テーパ部140bは、第1クッション部材140の自由端部側の外周部である。
【0117】
第1クッション部材140の根元部(固定端部)には、ストレート部140aよりも小径な縮径部140cが形成されている。縮径部140cによって、第1クッション部材140とピストンロッド108との間には環状凹部が形成されている。この環状凹部に、弾性部材からなるリング状の第1ダンパ138の内周部が係合することにより、第1ダンパ138が保持されている。
【0118】
第1クッションシール144は、リング状の第1ホルダ148の内周部に保持されている。第1ホルダ148は、軸方向に貫通した孔部148aを有し、ヘッドカバー104の第1段付き部112の内周部に固定されている。第1ホルダ148の孔部148aに第1クッション部材140が挿入されていない状態では、摺動孔103と第1中央空洞部116は、孔部148aを介して連通している。
【0119】
第1クッションシール144は、第1ホルダ148の孔部148aを形成する内周面よりも内方に突出している。このため、第1ホルダ148の孔部148aに第1クッション部材140が挿入される際に、第1クッションシール144は、全周に亘って第1クッション部材140の外周面に摺接する。
【0120】
第2クッション部材142は、ピストンユニット18のロッドカバー106側(矢印X1方向側)に隣接して、ピストンユニット18の近傍において、ピストンロッド108と同軸状に設けられている。第2クッション部材142は、ピストンロッド108よりも大径且つピストンユニット18よりも小径に形成されたリング状の部材であり、ピストンロッド108の外周面に、例えば、溶接、接着等により接合されている。
図13において、第2クッション部材142の外径は、ピストンロッド108の外径よりも若干大きい程度である。
【0121】
第2クッション部材142の外周部は、軸方向に外径が一定のストレート部142aと、このストレート部142aの矢印X1方向側(ロッドカバー106側)に隣接して形成されるとともに矢印X1方向側に向かって縮径するテーパ部142bとを有する。
【0122】
第2クッションシール146は、リング状の第2ホルダ150の内周部に保持されている。第2ホルダ150は、軸方向に貫通した孔部150aを有し、ロッドカバー106の第2段付き部120の内周部に固定されている。第2ホルダ150の孔部150aに第2クッション部材142が挿入されていない状態では、摺動孔103と第2中央空洞部124は、孔部150aを介して連通している。
【0123】
第2クッションシール146は、第2ホルダ150の孔部150aを形成する内周面よりも内方に突出している。このため、第2ホルダ150の孔部150aに第2クッション部材142が挿入される際に、第2クッションシール146は、全周に亘って第2クッション部材142の外周面に摺接する。
【0124】
次に、上記のように構成された流体圧シリンダ10Dの作用を説明する。なお、以下の説明では、圧力流体としてエア(圧縮エア)を用いる場合を説明するが、エア以外の気体を用いてもよい。
【0125】
流体圧シリンダ10Dは、第1ポート118又は第2ポート126を介して導入される圧力流体の作用によって、ピストンユニット18を摺動孔103内で軸方向に移動させる。これにより、当該ピストンユニット18に連結されたピストンロッド108が進退移動する。
【0126】
具体的に、ピストンユニット18が
図13に示す後退位置に位置している状態で、第2ポート126を大気開放状態とし、図示しない圧力流体供給源から第1ポート118及び第1中央空洞部116及び孔部148aを介して、エアを第1圧力室103aへと供給する。そうすると、エアによってピストンユニット18がロッドカバー106側へと押される。これにより、ピストンユニット18がピストンロッド108とともにロッドカバー106側へと変位(前進)する。この場合、第2圧力室103b内のエアは、第2ホルダ150の孔部150a及び第2中央空洞部124を介して、第2ポート126から排出される。
【0127】
そして、第2ダンパ68が第2ホルダ150に当接することで、ピストンユニット18の前進動作が停止する。このため、第2ダンパ68によって、ピストンユニット18が前進位置(ロッドカバー106側のストロークエンド)へと到達することに伴う衝撃及び衝撃音の発生が緩和される。なお、第2ダンパ68は、ピストンユニット18が前進位置に来た際にロッドカバー106(及び第2ホルダ150)に当接する大きさに形成されてもよい。
【0128】
ピストンユニット18が前進位置へと近づく際、第2クッション部材142は第2ホルダ150の孔部150aに挿入される。これに伴い、第2クッションシール146の内周部が第2クッション部材142の外周面(ストレート部142a)に接触して、この接触部分に気密シールが形成される。この気密シールによって、孔部150aを介した第2圧力室103b側から第2中央空洞部124側へのエアの流動が阻止される。なお、エアは、図示しない小さな孔部を介して第2ポート126へ少量ずつ排気される。
【0129】
この結果、第2圧力室103bにエアクッションが形成される。第2圧力室103bのエアクッションは、ピストンユニット18がロッドカバー106側に変位する際の変位抵抗となることで、ロッドカバー106側のストロークエンド付近でピストンユニット18の変位を減速させる。従って、ピストンユニット18がストロークエンドに到達した際の衝撃が一層緩和される。
【0130】
一方、ピストンユニット18が前進位置(ロッドカバー106側のストロークエンド)に位置している状態で、第1ポート118を大気開放状態とし、図示しない圧力流体供給源から第2ポート126、第2中央空洞部124及び孔部148aを介して、エアを第2圧力室103bへと供給する。そうすると、エアによってピストンユニット18がヘッドカバー104側へと押される。これにより、ピストンユニット18がヘッドカバー104側へと変位(後退)する。この場合、第1圧力室103a内のエアは、第1ホルダ148の孔部
150a及び第1中央空洞部116を介して、第1ポート118から排出される。
【0131】
そして、第1ダンパ138が第1ホルダ148に当接することで、ピストンユニット18の前進動作が停止する。このため、第1ダンパ138によって、ピストンユニット18が後退位置(ヘッドカバー104側のストロークエンド)へと到達することに伴う衝撃及び衝撃音の発生が緩和される。
【0132】
ピストンユニット18が後退位置へと近づく際、第1クッション部材140は第1ホルダ148の孔部148aに挿入される。これに伴い、第1クッションシール144の内周部が第1クッション部材140の外周面(ストレート部140a)に接触して、この接触部分に気密シールが形成される。この気密シールによって、孔部148aを介した第1圧力室103a側から第1中央空洞部116側へのエアの流動が阻止される。
【0133】
この結果、第1圧力室103aにエアクッションが形成される。第1圧力室103aのエアクッションは、ピストンユニット18がヘッドカバー104側に変位する際の変位抵抗となることで、ヘッドカバー104側のストロークエンド付近でピストンユニット18の変位を減速させる。従って、ピストンユニット18がストロークエンドに到達した際の衝撃が一層緩和される。
【0134】
この場合、本実施形態では、ピストンロッド108の外周面にリング状の第2クッション部材142が接合されている。このため、組立工程(製造工程)において、ピストンロッド108と一体化された第1ピストン部材40に他の複数の部品(ウエアリング44等)及びパッキン34を軸方向に積み重ねることで、ピストンユニット18とピストンロッド108とからなるピストン組立体74cを組み立てた後に、ピストンロッド108の外周面に第2クッション部材142を取り付けることができる。従って、軸方向に部品を積み重ねていくことで組立て可能なピストンユニット18の構造(組立工程の自動化が容易な構造)を採用しつつ、クッション機構110を容易に設けることができる。
【0135】
図14Aに示す第5実施形態に係る流体圧シリンダ10Eは、いわゆる単動型シリンダとして構成されている。具体的に、この流体圧シリンダ10Eは、第1実施形態に係る流体圧シリンダ10Aにおいて第2ダンパ68をなくし、代わりに、ピストンユニット18とロッドカバー16との間にスプリング154を配置したものである。この場合、第2ポート12bは大気開放されている。
【0136】
流体圧シリンダ10Eにおいて、第1ポート12aを介して第1圧力室13aに圧力流体を供給すると、圧力流体によってピストンユニット18がロッドカバー16側へと変位(前進)し、前進位置のストロークエンドへと到達する。そして、第1ポート12aへと圧力流体の供給を停止するとともに、第1ポート12aを大気開放すると、ピストンユニット18はスプリング154の弾性付勢力によってヘッドカバー14側へと変位(後退)し、後退位置のストロークエンドへと到達する。
【0137】
図14Bに示す第6実施形態に係る流体圧シリンダ10Fも、いわゆる単動型シリンダとして構成されている。具体的に、この流体圧シリンダ10Fは、第1実施形態に係る流体圧シリンダ10Aにおいて第1ダンパ22をなくし、代わりに、ピストンユニット18とヘッドカバー14との間にスプリング154を配置したものである。この場合、第1ポート12aは大気開放されている。
【0138】
流体圧シリンダ10Fにおいて、第2ポート12bを介して第2圧力室13bに圧力流体を供給すると、圧力流体によってピストンユニット18がヘッドカバー14側へと変位(後退)し、後退位置のストロークエンドへと到達する。そして、第2ポート12bへと圧力流体の供給を停止するとともに、第2ポート12bを大気開放すると、ピストンユニット18はスプリング154の弾性付勢力によってロッドカバー16側へと変位(前進)し、前進位置のストロークエンドへと到達する。
【0139】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。例えば、本発明は、ピストンユニット及びシリンダチューブの断面形状が非円形(四角形状や、楕円形状等の長円形状等)の流体圧シリンダにも適用可能である。また、本発明は、複数のピストン及びピストンロッドを備えた多ロッド型(デュアルロッド型等)の流体圧シリンダにも適用可能である。
【0140】
また、本発明は、アクチュエータ等として用いられる流体圧シリンダに限らず、ピストンを有する他の形態の流体圧装置にも適用可能である。本発明を適用できるピストンを有する他の形態の流体圧装置としては、例えば、ピストンによって弁体を移動させて流路の切り換えをするバルブ装置、ピストンロッドを入力軸としてこれに連結されたピストンを変位させて測長を行う測長シリンダ、ピストンを変位させることによりピストンロッドを介してピストンと連結されたテーブルを変位させるスライドテーブル、ピストンを変位させこのピストン変位を変換することで開閉動作する把持部によってワークを把持するチャック装置、等が挙げられる。