【文献】
KASHIMA et al.,Effect of a novel repellent, acetylated glyceride, against sweet potato whitefly, Bemisia tabaci (Ge,JOURNAL OF PESTICIDAL SCIENCE,2014年 4月27日,V39,P91-97,Abstract, P91 左欄第1−12行、P92 Fig. 1, P96左欄第13−21行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における「植物ウイルス」は、例えばトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)、Tobacco leaf curl Japan virus(TbLCJV)、Honeysuckle yellow vein mosaic virus(HYVMV)のようなベゴモウイルス属;ウリ類退緑黄化ウイルス(CCYV)、トマトインフェクシャスクロロシスウイルス(TICV)、トマトクロロシスウイルス(ToCV)、Cucurbit yellow stunting disorder virus(CYSDV)、Lettuce infectious yellows virus(LIYV)、Beet pseudo yellow virus(BPYV)のようなクリニウイルス属;パパイヤ輪点ウイルス(PRSV)、カボチャモザイクウイルス(WMV)、ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)、ジャガイモYウイルス(PVY)、チューリップモザイクウイルス(TBV)、Cucumber vein yellowing virus(CVYV)、Sweet potato mild virus(SPMMV)のようなポティウイルス属;トマト黄化えそウイルス(TSWV)、スイカ灰白色斑紋ウイルス(WSMoV)、メロン黄化えそウイルス(MYSV)、インパチェンスネクロティックスポットウイルス(INSV)、アイリスイエロースポットウイルス(IYSV)、Capsicum chlorosis virus(CaCV)、Chrysanthemum stem necrosis virus(CSNV)のようなトスポウイルス属;などが挙げられる。
これらの植物ウイルスの中で、主にコナジラミ類が伝播するものとしては、TYLCV、TbLCJV、HYVMV、BPYV、CCYV、TICV、ToCV、CYSDV、LIYV、CVYV、SPMMVなどが挙げられる。
また、主にアザミウマ類が伝播するものとしては、TSWV、WSMoV、MYSV、INSV、IYSV、CaCV、CSNVなどが挙げられる。
また、主にアブラムシ類が伝播するものとしては、PRSV、WMV、ZYMV、PVY、TBVなどが挙げられる。
本発明においては、コナジラミ類が伝播する植物ウイルスの抑制に特に有効であり、その中でもトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)の抑制に特に有効である。
トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)は、タバココナジラミ成虫によって媒介される植物ウイルスであり、一度感染してしまうと治療手段はなく、世界的に深刻な問題を引き起こしている。タバココナジラミ成虫は、一般的に寄生植物の葉表に飛来後に、葉裏に移動し、師管液の吸汁や交尾行動を行う。成虫がいったん葉裏に定着すると、強い振動などの大きな刺激が無い限り、ほとんど移動することはない。TYLCVは、タバココナジラミ成虫が師管液を吸汁する際に排出される唾液とともに植物ウイルスが植物体内に侵入し、植物に感染することが知られている。この感染が起きるためには、一定の植物ウイルス量が植物体内にとりこまれることが必要であるが、タバココナジラミ成虫の師管液の吸汁開始から15分程度という早さで植物に感染する。
したがって、慣行的に有機リン系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、合成ピレスロイド系殺虫剤、昆虫脱皮調節系殺虫剤、ネオニコチノイド系殺虫剤等の薬剤に抵抗性のタバココナジラミ成虫の防除に用いられてきたニテンピラムなどの既存の殺虫剤を用いても、タバココナジラミ成虫に対する殺虫効果を発揮するまでに時間を必要とするため、感染圧が高い場合にはウイルス感染を十分に抑制することができていなかった。
【0008】
化合物Aは食品添加物として知られており、例としては、以下の式(I):
(式中、lは0〜16の整数であり、mは0〜16の整数であり、nは0〜16の整数であり、l、m、nのうち1種又は2種は0である(但し、l、m、nの全てが0である場合を除く))で表される化合物が挙げられる。
化合物Aとしては、式(I)においてl、m、nの1種又は2種が0である化合物が好ましく、l、m、nの1種又は2種が0であり且つ残りの1つが6〜16である化合物がより好ましく、l、m、nの1種又は2種が0であり且つ残りの1つが10である化合物(すなわち、グリセリンジアセトモノラウレート)であることが特に好ましい。
【0009】
化合物Bは化学農薬であり、化合物B中、
(I)ニテンピラム(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第817〜818頁に記載の化合物である。
(II)ジノテフラン(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第391〜392頁に記載の化合物である。
(III)ピリダベン(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第986〜987頁に記載の化合物である。
(IV)スピロメシフェン(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1046〜1047頁に記載の化合物である。
(V)ブプロフェジン(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第138〜139頁に記載の化合物である。
(VI)フェンピロキシメート(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第488〜489頁に記載の化合物である。
(VII)アセタミプリド(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第9〜10頁に記載の化合物である。
(VIII)ミルベメクチン(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第793〜794頁に記載の化合物である。
(IX)トルフェンピラド(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1136〜1137頁に記載の化合物である。
(X)フロニカミド(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第507〜508頁に記載の化合物である。
(XI)ピメトロジン(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第968〜969頁に記載の化合物である。
(XII)ピリフルキナゾン(一般名)は、The Pesticide Manual(第15版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第992頁に記載の化合物である。
【0010】
クロチアニジン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第225〜226頁に記載の化合物である。
イミダクロプリド(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第640〜642頁に記載の化合物である。
チアメトキサムは、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1104〜1105頁に記載の化合物である。
スルホキサフロル(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1057〜1058頁に記載の化合物である。
ピリダリル(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第981〜982頁に記載の化合物である。
シクラニリプロール(一般名)は、国際公開公報WO2005/077934に化合物No16として記載の化合物である。
クロラントラニリプロール(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第172〜173頁に記載の化合物である。
シアントラニリプロール(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第247〜248頁に記載の化合物である。
フェンプロパトリン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第474〜475頁に記載の化合物である。
フェニトロチオン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第465〜466頁に記載の化合物である。
エトフェンプロックス(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第445〜446頁に記載の化合物である。
テフルベンズロン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1073〜1074頁に記載の化合物である。
チアクロプリド(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1102〜1103頁に記載の化合物である。
ルフェヌロン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第692〜693頁に記載の化合物である。
スピロテトラマト(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1042〜1043頁に記載の化合物である。
ピリプロキシフェン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第992〜993頁に記載の化合物である。
フルピラジフロン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第536頁に記載の化合物である。
トリフルメゾピリム(triflumezopyrim:一般名)は、3,4-ジヒドロ-2,4-ジオキソ-1-(ピリミジン-5-イルメチル)-3-(α,α,α-トリフルオロ-m-トルイル)-2H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-1-イウム-3-アイド(3,4-dihydro-2,4-dioxo-1-(pyrimidin-5-ylmethyl)-3-(α,α,α-trifluoro-m-tolyl)-2H-pyrido[1,2-a]pyrimidin-1-ium-3-ide)のIUPAC名で知られている化合物である。
MSI-1302、AKD-1193、NC-515及びMIE-1209は、一般社団法人日本植物防疫協会の平成26年度新農薬実用化試験成績集(稲・野菜等)・虫害防除(III 北陸地域)(平成26年11月4日発行)に記載されている薬剤(新規化合物)の委託試験コードである。また、NC-515は特開2015-44791中にも記載されている化合物である。
スピネトラム(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1034〜1035頁に記載の化合物である。
ピリミホスメチル(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第909〜910頁に記載の化合物である。
エマメクチン安息香酸塩(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第410〜411頁に記載の化合物である。
メチダチオン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第748〜749頁に記載の化合物である。
キノメチオネート(chinomethionate:一般名)は、6-メチル-1,3-ジチオロ[4,5-b]キノキサリン-2-オン(6-methyl-1,3-dithiolo[4,5-b]quinoxalin-2-one)のIUPAC名で知られている化合物である。
カルタップ(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第166〜167頁に記載の化合物である。
チオシクラム(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1114〜1115頁に記載の化合物である。
スピノサド(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1036〜1038頁に記載の化合物である。
ノバルロン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第818〜819頁に記載の化合物である。
レピメクチン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第689〜690頁に記載の化合物である。
アセキノシル(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第7〜9頁に記載の化合物である。
酸化フェンブタスズ(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第460〜461頁に記載の化合物である。
テブフェンピラド(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第1067〜1068頁に記載の化合物である。
DBEDC(一般名)は、ドデシルベンゼンスルホン酸ビスエチレンジアミン銅錯塩(II)の化学名で知られた化合物である。
クロルフルアズロン(一般名)は、The Pesticide Manual(第16版;BRITISH CROP PROTECTION COUNCIL)第179〜180頁に記載の化合物である。
【0011】
ここで、(I)ニテンピラム、(II)ジノテフラン、(III)ピリダベン、(X)フロニカミド、(XI)ピメトロジン及び(XII)ピリフルキナゾンは一般に殺成虫剤として用いられる化合物である。また、(IV)スピロメシフェン、(V)ブプロフェジン、(VI)フェンピロキシメート、(VII)アセタミプリド、(VIII)ミルベメクチン及び(IX)トルフェンピラドは一般に殺卵又は殺幼虫剤として用いられる化合物である。全く意外なことに、本発明はこうした殺卵又は殺幼虫剤として用いられる化合物との組合せにおいても相乗的に植物ウイルス感染抑制効果を奏する。
上記した化合物Bの中でも、本発明の効果をより顕著に発揮するために好ましいのは、ニテンピラム、ジノテフラン、ピリダベン、スピロメシフェン、ブプロフェジン、フェンピロキシメート、アセタミプリド、ミルベメクチン、トルフェンピラド、フロニカミド、ピメトロジン、ピリフルキナゾンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。より好ましいのは、(I)ニテンピラム、(II)ジノテフラン、(III)ピリダベン、(IV)スピロメシフェン、(V)ブプロフェジン、(VI)フェンピロキシメート、(VII)アセタミプリド、(VIII)ミルベメクチン、(IX)トルフェンピラドからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましいのは、(I)ニテンピラム、(III)ピリダベン、(V)ブプロフェジン、(VI)フェンピロキシメート、(VIII)ミルベメクチンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましいのは、(V)ブプロフェジンと(VI)フェンピロキシメートとの混用である。
【0012】
化合物Bには、塩を形成できる化合物が含まれ、当該塩としては、農業上許容されるものであればいずれのものでもよいが、例えばナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;モノメチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩のようなアンモニウム塩;塩酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩のような無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩のような有機酸塩;などが挙げられる。
【0013】
本発明においての各化合物の混合比率は、製剤形態、気象条件などに応じ適宜調整する必要があり一概に定めることはできないが、化合物Aと化合物Bの混合比率は、例えば重量比で1:30〜25,600:1であり、望ましくは1:16〜6,400:1、より望ましくは1:8〜1600:1、さらにより望ましくは1:4〜240:1である。
【0014】
組成物中に含まれる化合物Aと化合物Bの量は、各化合物の混合比率、製剤形態、気象条件などに応じ適宜調整すればよい。また、化合物A及び化合物Bは、施用時に水などで希釈してもよい。
作物に施用する際の化合物Aの量は、400〜12,800ppmであることが好ましく、500〜6,400ppmであることがより好ましく、800〜3,000ppmであることがさらにより好ましく、1,000〜2,000ppmであることが特に好ましい。また、1,600〜6,400ppmであってもよい。同様に、作物に施用する際の化合物Bの量は、0.5〜12,000 ppmであることが好ましく、1〜6,000ppmであることがより好ましく、2〜3,000ppmであることがさらにより好ましく、3〜1,000ppmであることがさらにより好ましく、5〜500ppmであることが特に好ましい。
【0015】
本発明における「施用」は、植物ウイルスを伝播する有翅害虫が悪影響を与える「作物」又は「作物の部分」に、散布、土壌処理など任意の既知の方法で行うことができる。施用時期は特に制限されないが、有翅害虫の作物への飛来前にあらかじめ施用しておくことが好ましい。
【0016】
本発明における「作物」には、ナス、キュウリ、トマト、ミニトマトなどが含まれるが、好ましくはトマト、ミニトマトである。「作物の部分」には、前記作物の根、茎、枝、葉、花などを含む作物の任意の部分を表すものとする。ここで、作物について詳述するに、望まれる収穫作物、及び望まれない野生作物又は収穫作物(自然に生じる収穫作物を含む)などのすべての作物を意味すると理解されるべきである。作物は伝統的な育種手法及び最適化手法によって得ることができる作物であってもよい。また、バイオテクノロジー手法及び組換え手法によって得ることができる作物であってもよい。さらに、トランスジェニック植物を含むものである。
【0017】
本発明における植物ウイルスを伝播する「有翅害虫」は、例えばタバココナジラミ、オンシツコナジラミのようなコナジラミ類;チャノキイロアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ヒラズハナアザミウマのようなアザミウマ類;ワタアブラムシ、モモアカアブラムシのようなアブラムシ類;などが挙げられる。中でも、コナジラミ類が伝播する植物ウイルスに対して有効である。コナジラミ類の中では、タバココナジラミが伝播する植物ウイルスに対して特に有効である。
ここで、植物ウイルスを伝播する「有翅害虫」は、ネオニコチノイド系化合物や合成ピレスロイド系化合物などの殺虫剤に耐性を有する有翅害虫(抵抗性有翅害虫)も含まれ、交叉耐性又は多剤耐性を有する有翅害虫も含まれる。
また、本発明における「抑制」とは、植物ウイルス感染の程度を和らげることを表し、この中には、植物ウイルス感染を完全に防除することも当然に含まれる。
【0018】
本発明の目的に適合するかぎり、適用場面などを勘案し、前記した有効成分以外に他の除草剤、殺菌剤、抗生物質、植物ホルモン、殺虫剤、肥料、薬害軽減剤などと混用或いは併用することができ、この場合に一層優れた効果、作用性を示すことがある。
本発明の組成物は、有効成分である化合物A及び化合物Bを、通常の農薬の製剤方法に準じて各種補助剤と配合し、粉剤、粒剤、顆粒水和剤、水和剤、錠剤、丸剤、カプセル剤(水溶性フィルムで包装する形態を含む)、水性懸濁剤、油性懸濁剤、マイクロエマルジョン製剤、サスポエマルジョン製剤、水和剤、乳剤、液剤、ペースト剤などの種々の形態に製剤調製し、施用することができるが、本発明の目的に適合するかぎり、通常の当該分野で用いられているあらゆる製剤形態にすることができる。
【0019】
製剤調製に際しては、化合物Aと化合物Bとを一緒に混合し製剤調製しても、或はそれらを別々に製剤調製し施用時に混合してもよい。
【0020】
製剤に使用する補助剤としては、カオリナイト、セリサイト、珪藻土、消石灰、炭酸カルシウム、タルク、ホワイトカーボン、カオリン、ベントナイト、クレー、炭酸ナトリウム、重曹、芒硝、ゼオライト、澱粉のような固形担体;水、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アルコールのような溶剤;脂肪酸塩、安息香酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキル硫酸塩、アルキルアリール硫酸塩、アルキルジグリコールエーテル硫酸塩、アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルアリールリン酸塩、スチリルアリールリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩のような陰イオン系の界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ポリグリセライド、脂肪酸アルコールポリグリコールエーテル、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、オキシアルキレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルアリールエーテル、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステルのような非イオン系の界面活性剤;オリーブ油、カポック油、ひまし油、シュロ油、椿油、ヤシ油、ごま油、トウモロコシ油、米ぬか油、落花生油、綿実油、大豆油、菜種油、亜麻仁油、きり油、液状パラフィンのような植物油や鉱物油;メチル化ナタネ油、エチル化ナタネ油のようなエステル交換植物油;などが挙げられる。
これら補助剤の各成分は、本発明の目的から逸脱しないかぎり、1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。また、前記した補助剤以外にも当該分野で知られたものの中から適宜選んで使用することもできる。例えば、増量剤、増粘剤、沈降防止剤、凍結防止剤、分散安定剤、薬害軽減剤、防黴剤、発泡剤、崩壊剤、結合剤など通常使用される各種補助剤も使用することができる。本発明組成物における有効成分と各種補助剤との配合割合は重量%比で0.001:99.999〜95:5、望ましくは0.1:99.9〜90:10程度、さらに望ましくは1:99〜80:20とすることができる。
【0021】
本発明の組成物の施用方法は、種々の方法を採用でき、施用場所、製剤形態、望ましくない作物の種類や生育状況などの各種条件に応じて適宜使い分けることができるが、例えば以下のような方法が挙げられる。
1.化合物Aと化合物Bとを一緒に混合し、製剤調製したものをそのまま施用する。
2.化合物Aと化合物Bとを一緒に混合し、製剤調製したものを水等で所定濃度に希釈し、必要に応じて各種展着剤(界面活性剤、植物油、鉱物油など)を添加して施用する。
3.化合物Aと化合物Bとを別々に製剤調製し、各々をそのまま施用する。
4.化合物Aと化合物Bとを別々に製剤調製し、必要に応じて各々を水等で所定濃度に希釈し、必要に応じて各種展着剤(界面活性剤、植物油、鉱物油など)を添加して、各々施用する。
5.化合物Aと化合物Bとを別々に製剤調製したものを水等で所定濃度に希釈する時に混合し、必要に応じて各種展着剤(界面活性剤、植物油、鉱物油など)を添加して施用する。
【0022】
以下に本発明における望ましい態様の一例を記載するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
(1)(a)グリセリン酢酸脂肪酸エステルと、(b)ニテンピラム、ジノテフラン、ピリダベン、スピロメシフェン、ブプロフェジン、フェンピロキシメート、アセタミプリド、ミルベメクチン、トルフェンピラド、フロニカミド、ピメトロジン、ピリフルキナゾン及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の殺虫性化合物とを含有する、有翅害虫により伝播される植物ウイルスの感染抑制用組成物。
(2)(b)が、ニテンピラム、ジノテフラン、ピリダベン、スピロメシフェン、ブプロフェジン、フェンピロキシメート、アセタミプリド、ミルベメクチン、トルフェンピラド又はこれらの塩である、前記(1)の組成物。
(3)(b)が、ニテンピラム、ピリダベン、ブプロフェジン、フェンピロキシメート、ミルベメクチン又はこれらの塩である、前記(1)の組成物。
(4)(b)が、ブプロフェジンとフェンピロキシメート又はその塩である、前記(1)の組成物。
(5)有翅害虫がコナジラミ類である、前記(1)の組成物。
(6)有翅害虫がタバココナジラミである、前記(1)の組成物。
(7)有翅害虫が抵抗性タバココナジラミである、前記(1)の組成物。
(8)植物ウイルスがトマト黄化葉巻ウイルスである、前記(1)の組成物。
(9)(a)と(b)とを相乗作用を奏する量(相乗有効量)で含有する、前記(1)の組成物。
(10)(a)と(b)の重量比が1:30〜25,600:1である、前記(1)の組成物。
(11)(a)グリセリン酢酸脂肪酸エステルの有効量と、(b)ニテンピラム、ジノテフラン、ピリダベン、スピロメシフェン、ブプロフェジン、フェンピロキシメート、アセタミプリド、ミルベメクチン、トルフェンピラド、フロニカミド、ピメトロジン、ピリフルキナゾン及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の殺虫性化合物の有効量とを、植物に施用し、有翅害虫により伝播される植物ウイルスの感染を抑制する方法。
(12)(b)が、ニテンピラム、ピリダベン、ブプロフェジン、フェンピロキシメート、ミルベメクチン又はこれらの塩である、前記(10)の方法。
(13)(3)(b)が、ブプロフェジンとフェンピロキシメート又はその塩である、前記(10)の方法。
(14)有翅害虫がコナジラミ類である、前記(10)の方法。
(15)有翅害虫がタバココナジラミである、前記(10)の方法。
(16)有翅害虫が抵抗性タバココナジラミである、前記(10)の方法。
(17)施用対象の植物がミニトマト又はトマトである、前記(10)の方法。
(18)植物ウイルスがトマト黄化葉巻ウイルスである、前記(10)の方法。
(19)(a)と(b)を、あらかじめ植物に施用することを特徴とする、前記(10)の方法。
(20)(a)を400〜12,800ppm、(b)を0.5〜12,000ppmを施用する、前記(10)の方法。
【実施例】
【0023】
本発明をより詳しく述べるために、以下に実施例を記載するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0024】
試験例1
ミニトマト(品種:イエローペア)を小型ポットに移植し、2〜2.5葉期になるまで育苗した。所定濃度に希釈調整した薬剤を十分量(葉から薬液がしたたる程度)散布し、温室内遮蔽条件にて乾燥させた。アルミ製大型試験容器(縦×横×高さ=68×44×82cm、上面と4側面が通気のためメッシュとなっている)に薬剤を散布処理したミニトマトを均等に16ポット配置し、容器内の対角線上2箇所にタバココナジラミ成虫放飼用の設置台を配置した。有機リン系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、合成ピレスロイド系殺虫剤、昆虫脱皮調節系殺虫剤、ネオニコチノイド系殺虫剤等の薬剤に対する薬剤抵抗性タバココナジラミ成虫(以下、単にタバココナジラミ成虫という場合には、薬剤抵抗性のものをいう)は、TYLCV感染ミニトマトに3日間放飼して、吸汁させ、TYLCVを保毒させた。なお、薬剤抵抗性タバココナジラミは、熊本県農業研究センターから分譲されたものを用いた。感染ミニトマトに定着しているタバココナジラミ成虫をミニトマト葉ごときりだし、アルミ製容器内の飛来源2箇所に均等に静置した。葉の枯れ上がりとともにタバココナジラミ成虫が試験容器内に自然と拡散した。放飼個体数は、株あたり1頭相当または2.5頭相当となるように、2箇所の飛来源に均等にタバココナジラミ成虫を分配した(例:株あたりのタバココナジラミ成虫個体数を1頭相当とする場合は、8頭×2箇所=16頭/試験容器となる)。放飼期間は7日間とした。供試薬剤は何れも実用濃度で試験を行った。具体的には、グリセリン酢酸脂肪酸エステルを有効成分とする乳剤(化合物A)(希釈:500倍/終濃度:1600ppm)、ピリダベンを有効成分とするフロアブル剤(商品名:サンマイトFL、日産化学工業株式会社製)(希釈:1000倍/終濃度200ppm)、ニテンピラムを有効成分とする水溶剤(商品名:ベストガードSP、住友化学工業株式会社製)(希釈:1000倍/終濃度:100ppm)、ブプロフェジンとフェンピロキシメートとを有効成分とするフロアブル剤(商品名:アプロードエースFL、日本農薬株式会社製)(希釈:1000倍/終濃度:ブプロフェジン200ppm+フェンピロキシメート40ppm)、ミルベメクチンを有効成分とする乳剤(商品名:コロマイトEC、三井化学株式会社製)(希釈:1500倍/終濃度:6.7ppm)(以上、化合物B)を用いた。化合物Aとしては、商品名リケマールPL−004(グリセリンジアセトモノラウレート;理研ビタミン株式会社製)を用いた。また、各試験区で、化合物Aは製剤に使用する補助剤である脂肪酸ポリグリセライド(ジグリセリンモノオレエート;商品名DO−100;理研ビタミン株式会社製)と共に用いた。なお、供試薬剤は、化合物A80重量部に化合物B20重量部を加温後十分に混和した。
放飼期間終了後にミニトマト葉上の成虫を全て取り除き、コナジラミ成虫がいない人工気象室(25℃)に、ミニトマト葉を30日間置き、TYLCV特異的プライマーを用いたPCRとミニトマト病徴の両方にて感染の有無を調査した。
TYLCV感染抑制率の実数値を、非感染株数を全株数(16株)で割って求めた。試験結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
試験区1〜3の供試薬剤の補正値及び理論値を、試験区6における化合物A及び無処理の実測値を用いて算出した。また、試験区4の供試薬剤の補正値及び理論値を、試験区5における化合物A及び無処理の実測値を用いて算出した。その結果を表1に示す。
補正値及び理論値の計算方法は以下の通りである。
(1)補正値:
{((100-無処理の実測値)-(100-供試薬剤の実測値))/(100-無処理の実測値)}×100
(なお、上記式により求めた値が0より小さい場合、補正値は0とする。)
(2)理論値:
(化合物Aの補正値+化合物Bの補正値)-(化合物Aの補正値×化合物Bの補正値)/100
【0027】
例えば、試験区3における補正値及び理論値は、以下のようにして求められる。
化合物A単用でのTYLCV感染株率の補正値
= (((100-43.8)-(100-50))/(100-43.8))×100 = 11.1%
アプロードエースFL単用でのTYLCV感染株率の補正値
= (((100-43.8)-(100-6.3))/(100-43.8))×100 = 0%
化合物AとアプロードエースFLとを用いた場合のTYLCV感染抑制効果(理論値)
= (11.1+0)-(11.1×0)/100=11.1%
【0028】
2種の有効成分(化合物A及び化合物B)を組み合わせた場合の感染抑制率(補正値)が、その2種の有効成分各々の感染抑制率(補正値)から算出される感染抑制率(理論値)より大きい場合に、顕著な感染抑制効果を奏すると判断した。その結果、試験区1〜4のいずれにおいても、化合物Aと化合物Bを有する本発明の組成物が顕著な感染抑制効果を有することが判った。
本発明者は、化合物Aを散布処理しても、その後1週間はコナジラミ成虫が生存したことを確認している。しかしながら、本試験において化合物Aを散布したミニトマト葉上でタバココナジラミを7日間放飼したところ、TYLCVの感染がある程度抑制されることが判った(表1)。そして、その効果は、化合物Bと組み合わせることで著しく増強されることも判った(表1)。以上の点から、本発明は、化合物Aのもつ植物ウイルス感染抑制効果を著しく増強させているものと考えられる。